JP4498667B2 - 内部寄生虫駆除性ゲル組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内部寄生虫駆除性ゲル組成物およびその製造方法、ならびに恒温動物における内部寄生虫の感染および発生を治療および防除する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
恒温動物の家畜およびコンパニオン動物に内部寄生虫が感染および発生することは、ペット所有者や畜産業者などにとって、重大な悩みおよび経済的な損失の原因である。該寄生虫の効果的な防除は、それゆえ、非常に望ましく、適当な内部寄生虫駆除薬(例えば、モキシデクチンおよびプラジカンテル)の投与により達成しうる。
【0003】
モキシデクチンは、ミルベマイシン系の大環状ラクトン化合物からなる第二世代の内外部寄生虫駆除薬(endectocide)である。この化合物は、家畜およびコンパニオン動物(例えば、ウマ)における内部および外部寄生虫の防除のための様々な製剤として登録され、市販されている。ウマ用の2%経口ゲル製剤(エクエスト(EQUEST)、クエスト(QUEST))は、世界的に市販されている。この製品は、ウマおよびポニーに見出される内部寄生虫の広いスペクトルに対して非常に効果的である。
【0004】
ウマ科動物の条虫は、世界中のウマに一般に見出される。有虫率は品種または年齢の関係しているとは思えない。調査で見出される最も一般的な種は、アノプロセファラ・ペルフォリアータ(Anoplocephala perfoliata;葉状条虫)である。エイ・マグナ(A. magna;大条虫)およびパラノプロセファラ・マミルラナ(Paranoplocephala mamillana;乳頭条虫)に関連する報告は少ない。最近まで、ウマの条虫は、ウマ科動物の消化管の比較的無害な寄生虫であるとみなされてきた。しかし、最近の研究によれば、保有数が多いと、ウマが様々な種類の疝痛を感じうることや、リスクは存在する条虫の数と共に増大することを示唆している。
【0005】
モキシデキチンは、他の大環状ラクトンと同様に、条虫に対して活性を有さず、ウマ科動物の条虫の防除には、別の種類の駆虫薬(例えば、ピランテルまたはプラジカンテル)が必要である。ピランテルは、胃腸線虫の防除に通常推奨される投与量の2倍で与えた場合に効果的である。プラジカンテルは、ピラジノイソキノレン類の化合物に属する駆虫薬である。それは、動物およびヒトにおける条虫および吸虫の感染に対して効果的である。プラジカンテルは、オーストラリアでは、ウマにおける条虫感染の防除に対して、2.5mg/kg体重の用量で登録されている。
【0006】
現代の内部寄生虫駆除薬(例えば、モキシデクチンおよびプラジカンテル)は、安全範囲が広く、未成熟または幼生期の寄生虫に対して活性がかなり高く、かつ活性スペクトルが広い。それにもかかわらず、内部寄生虫駆除薬の有用性は、薬物それ自体の固有の効力、その作用機序、その薬物動態学の性質、宿主動物に関する特徴、標的寄生虫に関する特徴および投与の形態により制限される。
【0007】
「理想的な」内部寄生虫駆除薬の投与形態は、成熟および未成熟な寄生虫に対する活性スペクトルが広く、多数の動物に投与するのが容易であり、安全範囲が広く、他の化合物と相性が良く、残留物質ゆえの長い残留期間を必要とせず、かつ経済的であるべきである。ウマ科動物用の駆虫組成物は米国特許第5,824,653号に記載されている;しかし、該組成物は有効な薬剤の濃度が制限されており、従って、有効な結果を得るには複数回投与が必要である。駆虫製剤は米国特許第6,165,987号にも記載されている;しかし、経口投与に適するこれらの製剤は、汚染物の肉眼による同定および計量された用量の正確な投与を困難にしうるペーストに限定されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
それゆえ、本発明の目的は、均質で透明であり、かつ従来公知の製剤より高濃度の駆虫薬または殺寄生虫薬を可能にする内部寄生虫駆除性ゲル組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、従来公知の製剤に比べてより長期間にわたる保護のより速い開始を与える、恒温動物における内部寄生虫の感染および発生を治療および防除する方法を提供することにある。
【0010】
本発明のこれらおよび他の特徴、目的および利点は、特許請求の範囲および以下に記載の詳細な説明から当業者に明らかである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、約1.0%〜3.5%wt/wtのモキシデクチン;約10.0%〜15.0%wt/wtのプラジカンテル;約4.0%〜24.0%wt/wtのベンジルアルコール;約1.0%〜34.0%wt/wtのエタノール;約2.0%〜15.0%wt/wtのコロイド状二酸化ケイ素;約1.0%〜20.0%wt/wtの界面活性剤;および約35.0%〜61.0%wt/wtの油を含有することを特徴とする内部寄生物駆除性ゲル組成物を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、恒温動物における内部寄生虫の感染および発生を治療および防除する方法ならびに内部寄生虫駆除性ゲル組成物の製造方法を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
モキシデクチンおよびプラジカンテルなどの内部寄生虫駆除性薬剤は、濃縮飼料、飼料添加物、錠剤、オブレット(oblet)、ボーラス、ゲル、ペーストなどの形態で経口的に投与してもよいし、注射可能物質として非経口的に投与してもよい。上記の製剤タイプのうち、内部寄生虫駆除性薬剤のモキシデクチンおよびプラジカンテルの投与の容易性、十分かつ効果的な用量、および経済的かつ実際的な使用にとっておそらく間違いなく最も適当なのは、経口ゲルまたはペーストである。飼料添加物および濃縮飼料は、該内部寄生虫駆除性薬剤の安定性が欠けるので、不適当である。錠剤、ボーラス、オブレットおよび水薬は、多数の動物に効果的に投与するのに煩わしく、非経口的な注射は動物および取扱者にとってよりストレスが多い。
【0014】
透明で使用し易いゲル形態はペーストより好ましい。動物および動物取扱者の両方にとってより容易であり、汚染が容易に目視でき、ゲルの物理的状態が剪断の作用または上昇した温度により容易に液体に変化するからである。ゲルから液体へのこの変化は、その口腔への挿入により、経口ゲルの動物の口内での急速な分散を助ける。この過程は、口から胃腸管への剤形の移行を容易にする。すなわち、製品は容易に嚥下される。対照的に、ペースト製剤は、それらの構造を保持し、動物の口から吐き出されることが多い。野外での臨床試験では、ゲル形態の有効成分で治療された動物は、ペースト形態の有効成分で治療された動物の特徴である、頭を振ったり、舌を丸めたり、吐き出したり、食べなかったりなどの嫌悪および不快の徴候をいずれも示さないことが立証されている。
【0015】
驚くべきことに、今回、モキシデクチンおよびプラジカンテルが透明で均質なゲル組成物に製剤化されうることが見出された。本発明の内部寄生虫駆除性ゲル組成物は、約1.0%〜3.5%wt/wt、好ましくは約1.5%〜2.5%wt/wt、より好ましくは約1.9%〜2.0%wt/wtのモキシデクチン;約10%〜15%wt/wt、好ましくは約12.0%〜13.0%wt/wt、より好ましくは約12.0%〜12.5%wt/wtのプラジカンテル;約4.0%〜24.0%wt/wt、好ましくは約18.0%〜22.0%wt/wt、より好ましくは約22.0%wt/wtのベンジルアルコール;約1.0%〜34.0%wt/wt、好ましくは約5.0%〜7.5%wt/wtのエタノール;約2.0%〜15.0%wt/wt、好ましくは約6.5%〜8.5%wt/wtのコロイド状二酸化ケイ素;約1.0%〜20.0%wt/wt、より好ましくは約3.0%〜6.0%wt/wtの界面活性剤;および約35.0%〜61.0%wt/wt、より好ましくは約42.0%〜48.0%wt/wtの油を含有する。
【0016】
本発明の組成物中に存在してもよい選択的な成分としては、保存剤、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ソルビン酸、2-ヒドロキシ-ビフェニルなど、好ましくはブチル化ヒドロキシトルエン;増粘剤、例えば、エチルセルロース、キサンタンガム、カラギーナン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど、好ましくはエチルセルロース;または動物の健康組成物に一般的に用いられる従来の不活性な賦形剤が挙げられる。
【0017】
本発明の組成物に用いるのに適当な界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、好ましくはポリソルベート80、ポリエチレングリコール660ヒドロキシステアレート、ポリオキシル35ひまし油などが挙げられ、好ましくはポリオキシエチレンソルビタンエステル、より好ましくはポリソルベート80である。
【0018】
本発明の組成物に用いるのに適当な油としては、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコール、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリドなどが挙げられ、好ましくはジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである。
【0019】
有利なことには、本発明の透明で均質な内部寄生虫駆除性ゲル組成物は、動物および動物取扱者の両方に対してストレスを与えることが少なく、完全かつ正確な投与を確実にする。さらに、本発明のゲル組成物は、より高濃度の有効成分を可能にし、それゆえ、複数回投与の必要性を最少限にする。従って、本発明は、恒温動物における内部寄生虫の感染および発生を治療または防除する方法を提供する。かかる方法は、該動物に、有効量のゲル組成物を経口投与することからなる。該ゲル組成物は、約1.5%〜3.5%wt/wtのモキシデクチン;約10.0%〜15.0%wt/wtのプラジカンテル;約4.0%〜24.0%wt/wtのベンジルアルコール;約1.0%〜34.0%wt/wtのエタノール;約2.0%〜15.0%wt/wtのコロイド状二酸化ケイ素;約1.0%〜20.0%wt/wtの界面活性剤;および約35.0%〜61.0%wt/wtの油を含有する。
【0020】
有効量は、動物の身体全体の健康、感染または発生の程度、寄生虫の種類、動物の年齢、感染または発生した臓器などによって変化する。一般に、動物の体重あたり約0.3mg/kg〜0.5mg/kg、好ましくは約0.4mg/kgのモキシデクチンおよび動物の体重あたり約2.0mg/kg〜3.0mg/kg、好ましくは約2.5mg/kgのプラジカンテルを与えるのに十分な上記ゲル組成物の量が適当である。
【0021】
本発明の方法で治療するのに適当な恒温動物としては、ウマ科、ウシ科、ヒツジ科、ブタ科、ヤギ科、イヌ科、ネコ科などの動物が挙げられ、好ましくはウマ科動物、より好ましくはウマである。
【0022】
また、本発明は、以下の工程の1つまたはそれ以上からなる内部寄生虫駆除性ゲル組成物の製造方法を提供する。
1)増粘剤、例えば、エチルセルロースをベンジルアルコールとエタノールとの混合物に溶解して、溶液Aを形成すること;
2)プラジカンテルを約80℃に予め加熱しておいた油、例えば、ジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールに懸濁して、懸濁液Bを形成すること;
3)溶液Aを懸濁液Bと50℃以下の温度で、室温で均質な溶液Cが得られるまで混合すること;
4)界面活性剤および所望によりブチル化ヒドロキシトルエンを溶液Cと混合して、溶液Dを形成すること;
5)モキシデクチンおよびコロイド状二酸化ケイ素を溶液Dに順次混合して、ゲルEを形成すること;および
6)ゲルEを真空下で攪拌して、実質的に空気を含まない透明で黄色の内部寄生虫駆除性ゲル組成物を形成すること。
【0023】
【実施例】
本発明のいくつかの好ましい具体例を下記の実施例に記載する。これらの実施例は単なる例示であって、本発明の範囲または基礎原理をいかようにも限定することを意図しない。実際、本発明の様々な変更は、ここに示され記載されたものに加えて、下記の実施例および上記の説明から当業者に明らかになる。かかる変更は、やはり本発明の範囲および特許請求の範囲内に属することが意図される。
【0024】
実施例1
内部寄生虫駆除性ゲル組成物Aの製造
成分の記載 %wt / wt
モキシデクチン、効力90% 1.95
プラジカンテル、効力100% 12.17
ベンジルアルコール 22.00
ブチル化ヒドロキシトルエン 0.08
ポリソルベート80 5.00
コロイド状二酸化ケイ素 7.50
エチルセルロース(粘度4) 0.25
脱水アルコール、USP 5.00
ジカプリル酸 / ジカプリン酸プロピレングリコール 45.84(q.s.)
クリルラット(CRILLAT;登録商標)4HP、クローダ・インク(Croda Inc.;ニュージャージー州パーシッパニー)製
マイグリオール(Miglyol;登録商標)840、コンディア・ヴィスタ(Condea Vista;ニュージャージー州クランフォード)製
全体を100%wt/wtにするのに十分な量
【0025】
製造の方法
工程1 エチルセルロースをベンジルアルコールとエタノールとの混合物に攪拌しながら徐々に溶解させる。
工程2 80℃の予め加熱しておいたジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールをプラジカンテルとスラリーにして、懸濁液を形成する。懸濁液の温度が50℃未満であるとき、工程1で得た溶液を加え、プラジカンテルが溶解するまで、攪拌を続け、得られた混合物を室温に冷却する。
工程3 工程2で得られた混合物に攪拌し続けながらブチル化ヒドロキシトルエンおよびポリソルベート80を加える。
工程4 工程3で得られた混合物に攪拌しながらモキシデクチンを加える。
工程5 工程4で得られた混合物にコロイド状二酸化ケイ素を加え、空気を含まない透明で黄色のゲルが形成されるまで、適当な攪拌機を用いて、真空下で攪拌を続ける。
【0026】
実施例2
組成物Aの効力に関する野外での比較評価
この評価では、円虫の発生が知られているウマを、投与量が0.4mg/kgモキシデクチンおよび2.5mg/kgプラジカンテルであるゲル(組成物A)または投与量が0.2mg/kgアバメクチンおよび2.5mg/kgプラジカンテルであるペースト(エクイマックス(EQUIMAX;登録商標)、ヴィルバック(Virbac;オーストラリア、ニューサウスウェールズ州)製)で経口的に治療するか、あるいは治療を与えない(対照)。各治療はウマ10頭からなる。治療後、二週間おきに、糞中の卵数(FEC)を数え、記録する。データを平均する。結果を表Iに示す。
【0027】
【表1】
Figure 0004498667
【0028】
表Iに示すデータから明らかなように、本発明のゲル組成物は、類似した市販のペースト組成物より長期間にわたって、有意に増大した効力を与えた。
【0029】
実施例3
組成物Aの内部寄生虫駆除効力の評価
この評価では、ウマ12頭のグループを、0.4mg/kgモキシデクチンおよび2.5mg/kgプラジカンテル(組成物A)の投与量で経口的に治療し、ウマ12頭のグループを無治療のままとする(対照)。治療2週間後、寄生虫の保有数を求めて、治療した動物の%効力を算出する。データを平均する。結果を表IIに示す。
寄生虫
各列の見出し 学名
G. intest. ジー・インテスティナリス(G. intestinalis)
G. nasalis ジー・ナサリス(G. nasalis)
Paranopl. パラノプロックフィラ(Paranoplocchphila)
Anoplo. Spp. アノプロセファラ種(Anoplocephala Spp.)
【0030】
【表2】
Figure 0004498667
【0031】
表IIのデータから明らかなように、本発明のゲル組成物は、内部寄生虫の広いスペクトルに対して高い程度の効力を示す。
【0032】
実施例4
ゲル製剤の効力
年齢が約1〜2年のニューフォーレスト交雑種の雄ポニー26頭をこの研究に用いた。ガステロフィラス種(Gasterophilus spp.)およびエイ・ペルフォリアータ(A. perfoliata)に感染していることが知られている動物が放牧されているニューフォーレストの地域からすべて調達された。これは臨床試験前に実施されたサウスウェスト・イングランドのウマ屠殺場における材料の検死解剖により評価されていた。
【0033】
ウマは、4〜6頭の小さいグループで治療前の18日間飼育した。各ウマは、臨床試験での使用に対するその適性を決定するために、獣医による身体検査を受けさせた。治療の7日前に2頭の無作為に選択された追跡動物の検死解剖は、ピー・マミルラナ(P. mamillana)およびエイ・ペルフォリアータ(A. perfoliata)の中程度の保有数ならびにL2およびL3齢の両方のジー・インテスティナリス(G. intestinalis)およびジー・ナサリス(G. nasalis)の中程度から多い保有数を明らかにした。
【0034】
残り24頭の動物は、体重が増加する順に並べて、12対を形成した後、無治療対照またはモキシデクチン/プラジカンテルゲル・グループのいずれかに無作為に割り当てた。後者は、0.5ml/25kg体重の割合で投与して、0.4mgモキシデクチン/kgおよび2.5mgプラジカンテル/kg体重を与えた。治療は、舌の根元における口の奥への1回の経口投与から構成されていた。動物は、ほぼ25kgに目盛りを付けた充填済シリンジを用いて治療した。シリンジは治療の前後で重さを量って、与えられた実際の投与量を求めた。
【0035】
治療後13〜14日目に、すべての動物を検死し、それらのウマバエの幼虫および条虫の保有数を求めた。治療14日前および治療後13〜14日目の検死の時点で、糞試料を採取し、改良マクマスター(McMaster)浮選法を用いて、条虫の卵および円虫の卵の存在について調べた。検死では、胃から大腸までの消化管を取り出し、別々に処理するために、結紮法により、胃、小腸、盲腸、腹側および背側の結腸に分割した。
【0036】
胃粘膜上および胃内容物中に存在するガステロフィラス種(Gasterophilus spp.)の幼虫を数えるために取り出した。個々の種および齢の同定は、ウェルズ(Wells)およびニプリング(Knipling)(1937年)に記載されている検索表に従って行った。
【0037】
腸の各部分を切開し、内容物を採取した。腸壁に残存している目視可能な条虫を同定および計数のために同様に取り出した。個々の条虫種の同定は、好みの部位、寸法および他の形態学的な特徴に従って行った。検死で採取した無治療対照グループ由来の大量の糞試料を培養して、存在する線虫の種/属を同定した。
【0038】
ウマバエの幼虫および条虫の数を分析前にY=ln(数+1)変換により変換した。2つのグループを二元配置の分散分析を用いて比較した。有意水準は5%レベルに設定した。モキシデクチン/プラジカンテルを組み合せたウマ科動物用ゲル製剤は、以下の3つの条件の各々を満足すれば、特定の種類の寄生虫に対して活性を有すると判定した:
1.幾何平均により求めた効力が90%以上である;
2.少なくとも6頭の対照動物が同じ種類の寄生虫に感染する;および
3.治療効果はP<0.05レベルで有意である。
【0039】
結果
治療後の治療動物のいずれにも、副作用は観察されなかった。また、ゲル製剤は味がよいと思われた。シリンジを噛むことにより推奨される投与量の2倍を偶然に接種した1頭のウマを除いて、投与された実際の投与量は目的の投与量の94〜102(平均99)%の範囲内であった。
【0040】
24頭のポニーは、いずれも治療前に陽性の円虫卵数を有していた。卵数は60〜1050の範囲内であり、1gあたりの平均の卵数(EPG)は252個であった。治療後、これらの数字は、対照では288(範囲は0〜980)EPG、治療グループでは0.3EPG(陽性の動物1頭)であり、99.9%の低下を示した。屠殺時の対照グループ由来のプールした糞の培養物は、円虫の集団が68%のシアトストーマ種(Cyathostoma spp.)および32%のストロンギラス種(Strongylus spp.)から構成されていることを明らかにした。
【0041】
表IIIに示すように、12頭の対照は、いずれも検死時にエイ・ペルフォリアータ(A. perfoliata)を保有していた。数は1〜36の範囲内であり、幾何平均は6.7であった。対照的に、治療グループは数がゼロであった。12頭のポニーのうち10頭は、ピー・マミルラナ(P. mamillana)(平均11.2、範囲は1〜133)にも感染していたのに対し、治療グループでは、1頭の動物に唯一の条虫(平均0.1)が見出されただけであり、効力の数字としては、99.9%(P<0.001)を与える。エイ・マグナ(A. magna)は、どのウマにも見出されなかった。糞検査は、治療前後のどの動物にも条虫の卵を検出できなかった。これは、糞中における条虫の卵の存在を調べるマクマスター(McMaster)の浮選法の感度の欠如を反映している。
【0042】
対照動物は、いずれもジー・インテスティナリス(G. intestinalis)およびジー・ナサリス(G. nasalis)に感染していることが見出された。L2およびL3期の両方が存在した。ジー・インテスティナリス(G. intestinalis)の場合、数は、それぞれ13〜278(平均91.9)および2〜312(平均89.4)の範囲内であった。治療グループの対応する数は、0〜24(平均2.3)および0〜17(平均3.9)であり、それぞれL2およびL3期について、97.5%(P<0.001)および95.6%(P<0.001)の%減少の数字を与える。対照におけるジー・ナサリス(G. nasalis)の数は、L2については12〜400(平均46.7)、L3については25〜140(平均80.8)の範囲内であった。治療グループでは、これらの数字は、それぞれL2およびL3期に対して、0〜10(平均1.4)および0〜8(平均0.3)であり、97%(P<0.001)および99.6%(P<0.001)の効力を与えた。
【0043】
この研究の結果は、0.4mgモキシデクチン/kgおよび2.5mgプラジカンテル/kg体重でのモキシデクチン/プラジカンテルのウマ科動物用ゲルは、英国における天然に感染したウマの条虫およびウマバエの幼虫に対して非常に有効であることを確認する。それは、エイ・ペルフォリアータ(A. perfoliata)およびピー・マミルラナ(P. mamillana)に対しては99〜100%、L2およびL3齢のジー・インテスティナリス(G. intestinalis)およびジー・ナサリス(G. nasalis)に対しては95.6〜99.6%有効である。この製品は、動物により十分に許容され、受け入れられた。糞中における円虫の卵の数が99.9%減少したことは、モキシデクチンがプラジカンテルと組み合わせて、胃腸内の線虫に対して優れた活性を有し続けることを示唆している。
【0044】
【表3】
Figure 0004498667
【0045】
実施例5
2つのパートからなる野外での研究には、合計して、線虫用のウマ43頭[パート(I)]と条虫用の別のウマ8頭[パート(II)]を用いた。パートI:グループA(N=26)はモキシデクチン/プラジカンテルゲルで治療し、グループB(N=10)にはアバメクチン/プラジカンテルペーストを与え、グループCのウマ9頭は無治療対照グループのままであった。1gあたりの糞中の卵(epg)を求めることにより、効力をモニターした。グループCにおける平均のチャレンジは773.3〜2928.9epgの範囲内であった。グループ内におけるウマの50%がepg≧200である場合に治療するという一般的な勧告に従えば、グループBのウマは、サンプリングした8頭のうち6頭のウマがepg≧200であった第6週〜第8週の間に治療しなければならなかった。グループAのウマは、14週間にわたる研究期間のどの時点においても治療を必要としなかった。グループCは、動物の福祉上の理由から第12週に治療しなければならなかった。条虫に対する効力は、100%であった。3週齢〜7週齢の若い子ウマ14頭による安全性の研究は、モキシデクチン2%/プラジカンテル12.5%のウマ用ゲルが推奨される投与量率の3倍まで安全であることを示した。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、長期間にわたって内部寄生虫に対する広い効力スペクトルを有し、かつ単回使用で高濃度の殺寄生虫薬の混合物を可能にする均質で透明な獣医用ゲル組成物が得られる。かかるゲル組成物は、恒温動物における内部寄生虫の感染および発生を治療および防除するのに有用である。

Claims (22)

  1. 経口ゲルであり、1.0%〜3.5%wt/wtのモキシデクチン;10.0%〜15.0%wt/wtのプラジカンテル;4.0%〜24.0%wt/wtのベンジルアルコール;1.0%〜34.0%wt/wtのエタノール;2.0%〜15.0%wt/wtのコロイド状二酸化ケイ素;1.0%〜20.0%wt/wtの界面活性剤;および35.0%〜61.0%wt/wtの油を含有することを特徴とする内部寄生虫駆除性ゲル組成物。
  2. 油がジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールまたはジカプリル酸/ジカプリン酸トリグリセリドである請求項1記載の組成物。
  3. モキシデクチンが1.5%〜2.5%wt/wtで存在する請求項1記載の組成物。
  4. プラジカンテルが12.0%〜13.0%wt/wtで存在する請求項1記載の組成物。
  5. ベンジルアルコールが18.0%〜22.0%wt/wtで存在する請求項1記載の組成物。
  6. エタノールが5.0%〜7.5%wt/wtで存在する請求項1記載の組成物。
  7. 界面活性剤が3.0%〜6.0%で存在する請求項5記載の組成物。
  8. 界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタンエステルを含有する請求項7記載の組成物。
  9. エタノールが5.0%〜7.5%wt/wtで存在する請求項8記載の組成物。
  10. 油がジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールである請求項9記載の組成物。
  11. モキシデクチンが1.9%〜2.0%wt/wtで存在し、かつプラジカンテルが12.0%〜12.5%wt/wtで存在する請求項10記載の組成物。
  12. 恒温動物における内部寄生虫の感染および発生の治療および防除のための方法であって、該動物に請求項1記載の組成物を経口投与することを特徴とする方法。
  13. 前記動物がウマ科動物である請求項12記載の方法。
  14. 前記組成物が前記ウマ科動物に体重あたり0.3mg/kg〜0.5mg/kgのモキシデクチンの量でモキシデクチンを与えるように投与される請求項13記載の方法。
  15. モキシデクチンの量が体重あたり0.4mg/kgのモキシデクチンである請求項14記載の方法。
  16. プラジカンテルの量が体重あたり2.5mg/kgのプラジカンテルである請求項15記載の方法。
  17. 前記組成物が前記ウマ科動物に体重あたり2.0mg/kg〜3.0mg/kgのプラジカンテルの量でプラジカンテルを与えるように投与される請求項13記載の方法。
  18. 請求項1記載の組成物の製造方法であって、
    a)増粘剤をベンジルアルコールとエタノールとの混合物に溶解して、溶液Aを形成する工程;
    b)油をプラジカンテルと混合して、懸濁液Bを形成する工程;
    c)溶液Aを懸濁液Bと50℃以下の温度で、室温で均質な溶液Cが得られるまで混合する工程;
    d)界面活性剤および所望によりブチル化ヒドロキシトルエンを溶液Cと混合して、溶液Dを形成する工程;および
    e)モキシデクチンおよびコロイド状二酸化ケイ素を溶液Dに順次混合して、ゲルEを形成する工程;
    からなることを特徴とする製造方法。
  19. さらに、f)ゲルEを真空下で攪拌して、実質的に空気を含有しない透明な黄色の内部寄生虫駆除性ゲル組成物を形成する工程を包含する請求項18記載の方法。
  20. 油がジカプリル酸/ジカプリン酸プロピレングリコールであり、かつ増粘剤がエチルセルロースである請求項18記載の方法。
  21. 界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタンエステルを含有する請求項20記載の方法。
  22. 前記エステルがポリソルベート80である請求項21記載の方法。
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