JP4463637B2 - 液晶性ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、特にコネクター製造に最適な液晶性ポリエステル樹脂組成物に関する。
液晶性ポリマーは、熱可塑性樹脂の中でも寸法精度、制振性、流動性に優れ、成形時のバリ発生が極めて少ない材料として知られている。従来、このような特徴を活かし、液晶性ポリマーが各種電子部品の材料として多く採用されてきた。
特に、近年のエレクトロニクス機器の高性能化に伴う、コネクターの高耐熱化(実装技術による生産性向上)、高密度化(多芯化)、小型化という時代の要請もあり、液晶性ポリマー組成物はコネクターに多く採用されている。
しかし、ある程度流動性の良い液晶性ポリマー組成物であっても、近年要求されている薄肉・狭ピッチのコネクターに使用するには不十分であった。
このような薄肉・狭ピッチのコネクターの代表例としては、印刷配線基板同士を接合するのに使用されるボードトゥボード(BtoB)コネクターや、フレキシブルプリント基板(FPC)とフレキシブルフラットケーブル(FFC)を接続するのに使用されるFPC用コネクター等が挙げられる。この種のBtoBコネクターやFPC用コネクターは、印刷配線基板を用いる電子機器の小型化に伴って、コネクターの実装面積の狭小化が要求され、また両印刷配線基板の間の距離を小さくするために低背化が要求されている。例えば、コネクターの端子のピッチを1mm以下に狭ピッチ化したものが提供されている。また、コネクターを嵌合した状態での厚み寸法(いわゆる、スタッキング高さ)が3mm以下である低背のコネクターも提供されている。
更に、最近は、端子の狭ピッチ化およびスタッキング高さの低背化に対する要求はより強くなり、端子のピッチは0.5mm以下のものが、スタッキング高さについては1.0mm未満のものが求められてきている。このような要求に応えようとすれば、端子を保持する液晶性ポリマー成形品の寸法を小さくしなければならず、コネクターの強度が非常に小さくなって実用強度を維持できなくなる可能性がある。つまり、コネクターが薄型化すると、取り扱い時あるいは実装時に生じる応力によって、コネクターに捻れや割れを生じる可能性が高くなる。
以上のように、BtoBコネクター、FPC用コネクターに代表される薄肉・狭ピッチのコネクターに使用される液晶性ポリマー材料には、優れた流動性と寸法安定性が同時に要求される。例えば、0.1mmを切るような薄肉の部分へ樹脂を充填させるためには、充填剤の量を少なくする必要があるが、このような組成物では強度不足となり、実装時のリフローにより変形するという問題が生じている。例えば、寸法安定性に関して言えば、特許文献1にあるように液晶性ポリエステル及び/又は液晶性ポリエステルアミドに対し特定のマイカを加えることにより、寸法安定性に優れた液晶性ポリマー組成物が得られることが知られている。しかしながら、特許文献1に記載されているような液晶性ポリマー組成物では、耐熱性が十分でなく、実装時のリフローにより変形を起こすなど、不十分であった。
特開平4−202558号公報
このように、薄肉・狭ピッチのコネクターに用いる液晶性ポリマー材料に関しては様々な検討が行われているが、成形性・平面度・そり変形・耐熱性の全てに優れた材料は存在しなかった。
本発明者らは上記問題点に鑑み、性能バランスに優れたコネクターとなり得る液晶性ポリマー材料を提供すべく鋭意探索・検討を行ったところ、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸単位と4−ヒドロキシ安息香酸単位を特定の限定された比率で組み合わせた液晶性ポリエステルに対し、マイカと繊維状充填剤を一定の配合量加えた組成物は、成形性が良く、平面度、そり変形、耐熱性の全てに優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、必須の構成成分として下記一般式(I),(II),(III),(IV)で表される構成単位を含み、全構成単位に対して(I)の構成単位が40〜75モル%、(II)の構成単位が8.5 〜30モル%、(III) の構成単位が8.5 〜30モル%、(IV)の構成単位が0.1 〜8モル%である液晶性ポリエステル樹脂(A) 100重量部に対し、マイカ(B) を5〜80重量部、繊維状充填剤(C) を5〜35重量部配合したことを特徴とする液晶性ポリエステル樹脂組成物である。
Figure 0004463637
(ここで、Ar1 は2,6 −ナフタレン、Ar2 は1,2 −フェニレン、1,3 −フェニレン及び1,4 −フェニレンから選ばれる1種若しくは2種以上、Ar3 は1,3 −フェニレン、1,4 −フェニレン、あるいはパラ位でつながるフェニレン数2以上の化合物の残基の少なくとも1種、Ar4 は1,4 −フェニレンである。)
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で使用する液晶性ポリエステル(A) とは、光学異方性溶融相を形成し得る性質を有する溶融加工性ポリエステルを指す。異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することが出来る。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージに載せた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明に適用できる液晶性ポリマーは直交偏光子の間で検査したときに、たとえ溶融静止状態であっても偏光は通常透過し、光学的に異方性を示す。
本発明に使用する液晶性ポリエステルは上記のような光学異方性溶融相を形成し得る性質を有しているだけでは十分でなく、ある特定の構成単位を有していることが必要になる。
以下に本発明に用いる液晶性ポリエステルを形成するために必要な原料化合物について順を追って詳しく説明する。上記(I)〜(IV)の構成単位を具現化するには通常のエステル形成能を有する種々の化合物が使用される。
構成単位(I)は、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸から導入される。
構成単位(II)は、ジカルボン酸単位であり、Ar2 としては1,2 −フェニレン、1,3 −フェニレン、1,4 −フェニレンから選択されるが、好ましくは耐熱性の点でテレフタル酸から導入されるものである。
構成単位(III)は、ジオール単位であり、原料化合物としては、ハイドロキノン、ジヒドロキシビフェニル等が用いられるが、ジヒドロキシビフェニル、特に4,4'−ジヒドロキシビフェニルが耐熱性の点で好ましい。
また、構成単位(IV)は、4−ヒドロキシ安息香酸から導入される。
本発明では、上記構成単位(I)〜(IV)を含み、全構成単位に対して(I)の構成単位が40〜75モル%(好ましくは40〜60モル%、より好ましくは45〜60モル%)、(II)の構成単位が8.5 〜30モル%(好ましくは17.5〜30モル%)、(III) の構成単位が8.5 〜30モル%(好ましくは17.5〜30モル%)、(IV)の構成単位が0.1 〜8モル%(好ましくは1〜6モル%)の範囲にあることが必要である。
特開昭56−10526号公報には、構成単位(I)、(II)、(III)を夫々10〜90モル%、5〜45モル%、5〜45モル%の割合で含む共重合ポリエステルが提案されているが、このポリエステルは冷却時の固化速度が速く、重合釜の排出口でポリマーが固化し易いという問題があった。本発明では、この問題を解決し、冷却時の固化速度を遅くし、重合釜からのポリマーの排出を可能にするため、構成単位(IV)を0.1 〜8モル%含ませ、構成単位(I)〜(III)の割合を上記範囲に制御したのである。
また、特開昭55−144024号公報には、構成単位(I)、(II)、(III)、(IV)を夫々20〜40モル%、5〜30モル%、5〜30モル%、10〜50モル%の割合で含む共重合ポリエステルが提案されているが、構成単位(I)の割合が少なく、構成単位(IV)の割合が多いため耐熱性が低下し、また構成単位(I)の割合が少ないため重合釜の排出口でポリマーが固化し易いという問題があった。
これに対し、本発明では、冷却時の固化速度を適度に遅くし、重合釜からのポリマーの排出を可能にしつつ、且つ耐熱性を高めるために、ポリマーの結晶化状態を最適に制御すべく、構成単位(I)、(II)、(III)、(IV)の比率を前記範囲、特に(I)の構成単位と(IV)の構成単位の比率(I)/(IV)を5〜750 (好ましくは6〜150 )の範囲内に保つことで、これまでの問題点を解決し、耐熱性、製造性、成形性の何れにも優れた全芳香族ポリエステルを得ることができたのである。
本発明の全芳香族ポリエステルは、直接重合法やエステル交換法を用いて重合され、重合に際しては、溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法、固相重合法等が用いられる。
本発明では、重合に際し、重合モノマーに対するアシル化剤や、酸塩化物誘導体として末端を活性化したモノマーを使用できる。アシル化剤としては、無水酢酸等の酸無水物等が挙げられる。
これらの重合に際しては種々の触媒の使用が可能であり、代表的なものはジアルキル錫酸化物、ジアリール錫酸化物、二酸化チタン、アルコキシチタンけい酸塩類、チタンアルコラート類、カルボン酸のアルカリ及びアルカリ土類金属塩類、BF3 の如きルイス酸塩等が挙げられる。触媒の使用量は一般にはモノマーの全重量に基いて約 0.001乃至1重量%、特に約0.003 乃至 0.2重量%が好ましい。
また、溶液重合又はスラリー重合を行う場合、溶媒としては流動パラフィン、高耐熱性合成油、不活性鉱物油等が用いられる。
反応条件としては、反応温度200 〜380 ℃、最終到達圧力0.1 〜760 Torr(即ち、13〜101,080 Pa)である。特に溶融反応では、反応温度260 〜380 ℃、好ましくは300 〜360 ℃、最終到達圧力1〜100 Torr(即ち、133 〜13,300 Pa )、好ましくは1〜50 Torr(即ち、133 〜6,670 Pa)である。
反応は、全原料モノマー、アシル化剤及び触媒を同一反応容器に仕込んで反応を開始させる(一段方式)こともできるし、原料モノマー(I)、(III) 及び(IV)のヒドロキシル基をアシル化剤によりアシル化させた後、(II)のカルボキシル基と反応させる(二段方式)こともできる。
溶融重合は、反応系内が所定温度に達した後、減圧を開始して所定の減圧度にして行う。撹拌機のトルクが所定値に達した後、不活性ガスを導入し、減圧状態から常圧を経て、所定の加圧状態にして反応系からポリマーを排出する。
上記重合方法により製造されたポリマーは更に常圧又は減圧、不活性ガス中で加熱する固相重合により分子量の増加を図ることができる。固相重合反応の好ましい条件は、反応温度230 〜350 ℃、好ましくは260 〜330 ℃、最終到達圧力10〜760 Torr(即ち、1,330 〜101,080 Pa)である。
次に、本発明の重要な構成要素であるマイカ(B) について説明する。マイカとは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄等を含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物である。マイカには、白雲母、金雲母、黒雲母、人造雲母等があり、本発明のマイカとしては何れのものも使用できるが、好ましくは白雲母である。金雲母、黒雲母は、白雲母に比べてそれ自体が柔軟であり、また金雲母、黒雲母は、白雲母に比べて主成分中にFeが多く含まれているため、それ自体の色相が黒っぽくなる。また、人造雲母は天然金雲母のOH基がFに置換されたものであるが、それ自体が高価であり実用的でない。
また、マイカの製造に際しての粉砕法としては、湿式粉砕法と乾式粉砕法が知られている。湿式粉砕法とは、マイカ原石を乾式粉砕機にて粗粉砕した後、水を加えてスラリー状態にて湿式粉砕で本粉砕し、その後、脱水、乾燥を行う方法である。乾式粉砕法のほうが低コストで一般的であるが、マイカを薄く細かく粉砕することが困難であるため、本発明においては湿式粉砕法により製造されたマイカを使用するのが好ましい。
また、湿式粉砕を行うときには、被粉砕物を水に分散させることが必要となるため、被粉砕物の分散効率を高めるため、凝集沈降剤・沈降助剤を加えることが一般的である。これら凝集沈降剤・沈降助剤としては、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化コッパラス、ポリ硫酸鉄、ポリ塩化第二鉄、鉄−シリカ無機高分子凝集剤、塩化第二鉄−シリカ無機高分子凝集剤、消石灰(Ca(OH)2)、苛性ソーダ(NaOH)、ソーダ灰(Na2CO3)等が挙げられる。しかしながら、これらの凝集沈降剤・沈降助剤は、pHがアルカリ性あるいは酸性に傾いているため、凝集沈降剤・沈降助剤で処理されたマイカを液晶性ポリエステルに配合すると、ポリマーの分解を引き起こし、多量のガス発生、あるいはポリマーの分子量低下を引き起こすため、本発明の企図する薄肉コネクターの性能に悪影響をおよぼす。そのため、本発明で使用するマイカは、湿式粉砕する際に凝集沈降剤・沈降助剤を使用していないものが好ましい。
本発明に用いるマイカは、マイクロトラックレーザー回折法により測定した平均粒径が10〜100μmのものが好ましく、特に好ましくは平均粒径が20〜80μmのものである。マイカの平均粒径が10μm未満では剛性の改良効果が十分ではなく、100μmを超えても剛性の向上が十分でなく、ウエルド強度も十分でない。更には、100μmを超えると、本発明の目的とするコネクターを成形するのに十分な流動性を確保できない。
また、マイカの厚みとしては、電子顕微鏡の観察により実測した厚みが0.01〜1μmのものの使用が好ましく、特に好ましくは0.03〜0.3μmである。マイカの厚みが0.01μm未満のものは溶融加工の段階でマイカが割れやくなるため、それ以上の剛性の向上が認められず、1μmを超えると剛性に対する改良効果が十分ではない。更に、かかるマイカは、シランカップリング剤等で表面処理されていてもよく、更に結合剤で造粒し顆粒状とされていてもよい。本発明に使用するのに適したマイカの具体例としては、(株)山口雲母工業所製雲母粉(マイカ粉)AB−25S等があり、これらは市場で容易に入手できる。
本発明において、高い寸法精度のコネクターを得るためには、マイカの添加量は多いほど良いが、添加量過多は、比重の増加、押出性及び成形性、特に流動性を悪化させるため、所望とする狭ピッチコネクターが得られない。また、添加量が少なすぎても、本発明の目的とする優れた寸法安定性が得られない。そのため、マイカ(B) の添加量は、液晶性ポリエステル(A) 100重量部に対し5〜80重量部、好ましくは15〜50重量部である。
次に、本発明の構成成分の一つである繊維状充填剤(C) について説明する。繊維状充填剤は液晶性ポリエステルに配合することにより、コネクターの強度を向上させ、そり変形を抑える機能を有しており、本発明の必須成分である。
繊維状充填剤としてはガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、ウォラストナイトの如き珪酸塩の繊維、硫酸マグネシウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物などの無機質繊維状物質が挙げられる。特に代表的な繊維状充填剤はガラス繊維である。尚、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの高融点有機質繊維状物質も使用することが出来る。
これらの繊維状充填剤は一種又は二種以上併用することが出来る。また、これらの繊維状充填剤の使用にあたっては必要ならば収束剤又は表面処理剤を使用することができる。
本発明において、繊維状充填剤の重量平均長さは300μm以下であることが好ましい。重量平均長さが300μmを超えると配合量を少なくしても流動性が悪化し、優れた平面度のコネクターとはならない。流動性、機械的物性のバランスを考慮すると、重量平均長さが150μm以下のミルドガラスファイバーが特に好ましい。尚、本発明で言う繊維状充填剤の重量平均長さとは、成形品中の値であり、後記する手法により測定できる。また、繊維状充填剤の繊維径は特に制限されないが、一般的に5〜15μm程度のものが使用される。
本発明において、これらの繊維状充填剤の添加量が多いほど材料も強度・剛性が高くなり、高い寸法安定性を得ることができるが、添加量過多は、比重の増加、押出性及び成形性、特に流動性を悪化させるため、所望とする狭ピッチコネクターが得られない。また、添加量が少なすぎても、本発明の目的とする優れた寸法安定性が得られない。そのため、繊維状充填剤(C) の添加量は、液晶性ポリエステル(A) 100重量部に対し5〜35重量部、好ましくは10〜30重量部である。
更に本発明の液晶性ポリエステル組成物には、本発明の企図する目的を損なわない範囲で他の熱可塑性樹脂を補助的に添加してもよい。
この場合に使用する熱可塑性樹脂の例を示すと、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ジカルボン酸とジオール等からなる芳香族ポリエステル、ポリアセタール(ホモ又はコポリマー)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ABS、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、フッ素樹脂等を挙げることができる。またこれらの熱可塑性樹脂は2種以上混合して使用することができる。
尚、液晶性ポリエステル組成物に対し、核剤、カーボンブラック、無機焼成顔料等の顔料、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤および難燃剤等の添加剤を添加して、所望の特性を付与した組成物も本発明で言う液晶性ポリエステル組成物の範囲に含まれる。
本発明の液晶性ポリエステル組成物を製造するには、前記成分を前記組成割合で配合し、混練すればよい。通常、押出機で混練し、ペレット状に押出し、射出成形等に用いるが、この様な押出機による混練に限定されるものではない。本発明の液晶性ポリエステル組成物は、射出成形等の公知の成形加工手段により成形品とされる。前述の通り、本発明の液晶性ポリエステル組成物は、コネクターのような電子部品に好適であり、特にピッチが1mm以下であり、基板に組み付けた際のスタッキング高さが3mm以下であるような薄肉・狭ピッチのコネクターに最適である。また、成形性が改善されているので、電気・電子等の諸工業用部品の成形時の金型保護、無人運転等、生産性向上を図る上で有効である。
以下に実施例をもって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例中の物性測定の方法は以下の通りである。
[融点]
パーキンエルマー社製DSC にて測定した。
[充填圧力]
図1に示すFPCコネクターモデル型(ピッチ0.5mmピッチ、高さ1.16mm、最小肉厚0.12mm)を用い、下記条件で成形を行い、成形品が充填する最小の圧力を測定した。充填圧力が低いほど流動性に優れた材料であるといえる。
(成形条件)
・成形機;FANUC ROBOSHOT α-50C
・金型温度;80℃
・シリンダー温度;370℃−370℃−360℃−350℃(実施例1〜、比較例1〜3
350℃−350℃−340℃−330℃(比較例
330℃−330℃−320℃−310℃(比較例
300℃−300℃−290℃−280℃(比較例
・射出速度;200mm/sec
・保圧力;49MPa
・保圧時間;1sec
・冷却時間;5sec
・スクリュー回転数;150rpm
・スクリュー背圧;4MPa
[ガラス繊維の重量平均長さの測定]
樹脂組成物ペレット5gを600℃で2時間加熱し、灰化した。灰化残渣を5%ポリエチレングリコール水溶液に十分分散させた後、スポイトでシャーレに移し、顕微鏡でガラス繊維を観察した。同時に画像解析装置((株)ニレコ製 LUZEX FS)を用いてガラス繊維の重量平均長さを測定した。尚、画像解析の際には、重なり合った繊維を別々の繊維に分離し、それぞれの長さを求めるようなサブルーチンを適用した。尚、10μm以下のガラス繊維は除外して測定している。
[曲げ試験]
ISO178に準拠し、曲げ強度の測定を行った。
[ブリスター試験]
長さ124mm、幅12mm、厚み0.8mmの成形品を以下の条件で成形し、ブリスター評価用試験片とした。得られた試験片を任意の温度のシリコーンオイル中に5分間浸漬した後、表面を観察した。表面に膨れが出ない最大の温度をBlister Free Temp.(BFT)とした。この温度が高いほど耐熱性が高いといえる。
(成形条件)
・成形機;日鋼J75SSII−A
・金型温度;90℃
・シリンダー温度;370℃−370℃−360℃−350℃(実施例1〜、比較例1〜3
350℃−350℃−340℃−330℃(比較例
330℃−330℃−320℃−310℃(比較例
300℃−300℃−290℃−280℃(比較例
・射出速度;2.3m/sec
・保圧力;46MPa
・保圧時間;7sec
・冷却時間;27sec
・スクリュー回転数;100rpm
・スクリュー背圧;4MPa
また、実施例・比較例で使用した液晶性ポリエステルは以下の通り、調製・準備した。
(液晶性ポリエステル−1)
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、金属触媒、アシル化剤を投入した。
・(I)2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸166g(48モル%)(HNA)
・(II)テレフタル酸76g(25モル%)(TA)
・(III) 4,4'−ジヒドロキシビフェニル86g(25モル%)(BP)
・(IV)4−ヒドロキシ安息香酸5g(2モル%)(HBA)
・酢酸カリウム触媒(触媒量)
・無水酢酸(HNA、BP、HBAの総モル量に対して1.1倍モル)
次いで、窒素気流下、140℃で1時間撹拌後、撹拌を続けながら360℃まで5.5時間かけて昇温した。次に、30分かけて5Torr(即ち667Pa)まで減圧にし、酢酸等の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して加圧状態とし、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてペレット化した。得られたペレットを窒素気流下、300℃で8時間熱処理したものを液晶性ポリエステル−1とした。液晶性ポリエステル−1の融点は352℃であった。
(液晶性ポリエステル−2(比較品))
液晶性ポリエステル−2として、ポリプラスチックス(株)製ベクトラE950iを使用した。
(液晶性ポリエステル−3(比較品))
液晶性ポリエステル−1の製造に用いた重合容器に、4−ヒドロキシ安息香酸994g、4,4'−ジヒドロキシビフェニル126g、無水酢酸960g、テレフタル酸112g、及び濃度0.1g/dl、温度60℃のペンタフルオロフェノール中で測定した固有粘度が0.6dl/gのポリエチレンテレフタレート216gを仕込み、次の条件で脱酢酸重縮合を行った。即ち、窒素ガス雰囲気下に100〜250℃で6時間、250〜315℃で2時間反応させた後、315℃、2時間で0.5mmHgに減圧し、更に1時間反応させ、重縮合を完結させた後にほぼ理論量の酢酸が流出し、液晶性ポリエステルが得られた。この液晶性ポリエステル−3の融点は314℃であった。
(液晶性ポリエステル−4(比較品))
液晶性ポリエステル−1の製造に用いた重合容器に、4−ヒドロキシ安息香酸994g、4,4'−ジヒドロキシビフェニル223g、2,6−ジアセトシキナフタレン147g、テレフタル酸299g、及び無水酢酸1077gを仕込み、次の条件で脱酢酸重縮合を行った。即ち、窒素ガス雰囲気下に100〜250℃で5時間、250〜330℃で1.5時間反応させた後、330℃、1.5時間で0.5mmHgに減圧し、更に1時間反応させ、重縮合を完結させた後にほぼ理論量の酢酸が流出し、液晶性ポリエステルが得られた。この液晶性ポリエステル−4の融点は296℃であった。
実施例1〜
液晶性ポリエステル−1に、マイカ((株)山口雲母工業所製AB−25S、平均粒径25μm)と、ガラス繊維−1(日東紡(株)製PF70E001、繊維径10μm、重量平均長さ70μmのミルドガラスファイバー)を表1に示す割合でドライブレンドした後、二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX−30α型)にて溶融混練し、ペレット化した。このペレットから各種試験片を成形し評価した。結果を表1に示す。
比較例1〜
比較例として、ガラス繊維−2(旭ファイバーガラス(株)製CS03J416、繊維径10μm、長さ3mmのチョップストランドのガラス繊維)を用いた場合(比較例1〜2)、マイカの代わりにタルク(松村産業(株)製クラウンタルクPP、平均粒径10μm)を使用した場合(比較例)、液晶性ポリエステルとして比較品の液晶性ポリエステル2〜4を使用した場合(比較例4〜6)、繊維状充填剤を添加しない場合(比較例)、繊維状充填剤の添加量が過大の場合(比較例)について、実施例と同様に評価した。結果を表1に示す。
Figure 0004463637
実施例で充填圧力の測定に用いたFPCコネクターモデル型を示す図であり、(a) は正面図、(b) は上面図、(c) は底面図、(d) は端面図である。尚、図中の数値の単位はmmである。 図1(a) のA−A断面図である。 図1(a) のB部の詳細を示す図である。

Claims (5)

  1. 必須の構成成分として下記一般式(I),(II),(III),(IV)で表される構成単位を含み、全構成単位に対して(I)の構成単位が40〜75モル%、(II)の構成単位が8.5 〜30モル%、(III) の構成単位が8.5 〜30モル%、(IV)の構成単位が0.1 〜8モル%である液晶性ポリエステル樹脂(A) 100重量部に対し、マイカ(B) を5〜80重量部、繊維状充填剤(C) を5〜35重量部配合してなり、繊維状充填剤(C) の重量平均長さが300μm以下であることを特徴とする液晶性ポリエステル樹脂組成物。
    Figure 0004463637
    (ここで、Ar1 は2,6 −ナフタレン、Ar2 は1,2 −フェニレン、1,3 −フェニレン及び1,4 −フェニレンから選ばれる1種若しくは2種以上、Ar3 は1,3 −フェニレン、1,4 −フェニレン、あるいはパラ位でつながるフェニレン数2以上の化合物の残基の少なくとも1種、Ar4 は1,4 −フェニレンである。)
  2. 繊維状充填剤(C) がガラス繊維である請求項1記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物。
  3. 請求項1又は2記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物からなる成形品。
  4. 請求項1又は2記載の液晶性ポリエステル樹脂組成物からなるコネクター。
  5. ピッチが1mm以下であり、基板に組み付けた際のスタッキング高さが3mm以下である請求項4記載のコネクター。
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