JP4447684B2 - ターボ分子ポンプ - Google Patents

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JP4447684B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体製造装置等に装備され、上部ケーシング内に設けられた静翼とロータに設けられた動翼とで構成された動静翼段を備え、吸気口からのガスを排気口へ真空排気するターボ分子ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
図12は従来のターボ分子ポンプの1例を示し、図12において、1及び16は、ボルト21によりOリング15を介して一体的に組付けられている上部ケーシング及び下部ケーシングである。
該上部ケーシング1の上部開口はガス吸気口2となすとともに、その内側には複数のスペーサ13が軸方向に連設されている。
該スペーサ13は上端を前記上部ケーシング1の内端面に当接され、下端を前記下部ケーシング16の上端部にインロー嵌合されており、各スペーサ13の間には静翼4がその外周部を挟持固定されて、多段状に設けられている。
【0003】
6はロータで、該ロータ6には動翼5が多段状に設けられ、各動翼5と静翼4とが交互に設けられての翼段を構成している。
前記ロータ6の下部にはねじ溝ポンプ段8が設けられている。
14はせん断され難い複数のボルト18により前記下部ケーシング16の上面に固定されたテーパ状のシールリングで、前記ねじ溝ポンプ段8の外周と微小間隙を介して対向配置され、圧縮効果を上げている。
【0004】
前記下部ケーシング16の下方側部には排気口3が開口され、前記ねじ溝ポンプ段8を通ってきた流体が該排気口3から外部に送出されるようになっている。
17は前記下部ケーシング16の支持筒であり、該支持筒17の内周には上部から順に、玉軸受からなる上部保護軸受19、ラジアル軸受である上部磁気軸受9、モータ12のステータ部12a、ラジアル軸受である下部磁気軸受10、玉軸受からなる下部保護軸受20、並びに後述する回転軸7の下端のスラストディスク7aを挟んで設けられたスラスト磁気軸受11が配設されている。
【0005】
7は回転軸で、上部から順に、上部磁気軸受9及び下部磁気軸受10に、半径方向荷重をそれぞれ支承され、下端に設けられた円盤状の磁性板からなるスラストディスク7aが前記スラスト磁気軸受11に挟まれて、スラスト方向(軸心方向)の位置制御を行なっている。
【0006】
前記ロータ6及び回転軸7は、前記上部磁気軸受9と下部磁気軸受10との間に設けられた前記モータ12のステータ12aに対向して回転子12bが固着されている。
【0007】
また、該回転軸7の前記上部磁気軸受9の上側は、前記上部保護軸受19が設けられて該回転軸7と上部保護軸受19とのラジアル方向の間隔を所要値に設定している。
さらに、該回転軸7の前記下部磁気軸受10の下側は、前記下部保護軸受20が設けられて、該回転軸7と下部保護軸受20とのラジアル方向及びスラスト方向の間隔を所要値に設定している。
【0008】
次に上部磁気軸受9及び下部磁気軸受10は、回転軸7の軸心(Z軸)と直交する面内において、左右(X軸)及び前後(Y軸)方向に夫々一対づつ配設され、前記回転軸7が倒れを生じることなく中心軸線上に維持可能に構成されている。
従って、該回転軸7は、該上部磁気軸受9及び下部磁気軸受10により左右(X軸)及び前後(Y軸)方向を、前記スラスト磁気軸受11により軸心(Z軸)方向を、つまり5軸方向を支持、かつ制御されて回転することとなる。
【0009】
そして、前記上・下部磁気軸受9、10及びスラスト磁気軸受11の磁気制御に異常をきたし、前記回転軸7が片側に偏心した際には、前記上部保護軸受19もしくは下部保護軸受20に該回転軸7の外周が当接することにより、該回転軸7及びロータ6を保護する。
【0010】
上記のように構成されたターボ分子ポンプの運転時において、
前記各磁気軸受9、10、11に通電し回転軸7、動翼5を有するロータ6等のポンプ回転部を浮上した状態で、モータ12を駆動し、前記ポンプ回転部を例えば10,000〜100,000r.p.m.で高速回転させる。該ポンプ回転部の高速回転により動翼5が静翼4の間を回転し、かつねじ溝ポンプ段8がテーパ状のシールリング14の内周面と対面しながら回転することによって、真空排気されるガスが上方のガス吸気口2から動翼5と静翼4との間で第1段の圧縮がなされた後、ねじ溝ポンプ段8の螺旋状溝通路で第2段階圧縮がなされ、ポンプ内ガス通路を経て排気口3の方向に流れることによって、ガス吸気口2側が高真空に保持される。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
かかるターボ分子ポンプにあっては、大容量、大型化するにつれて、ロータ6、回転軸7、ねじ溝ポンプ段8等の回転体の質量がこれに比例して大きくなり、前記のように10,000〜100,000 r.p.m.という高速回転中には前記回転体が極めて大きな回転エネルギで以って回転する。
【0012】
かかる高速回転をするターボ分子ポンプにおいては、ポンプの外部からの許容値を超える異常振動が発生した場合や、ポンプ内部で異常事態が発生した場合には、前記のように大きな回転エネルギを持った回転体が破壊して飛散し、この飛散片が上部ケーシングに大きな衝撃力を与えてこれを変形あるいは破壊させ、またターボ分子ポンプ取付用のボルトが破断するという事故の発生をみる。
【0013】
しかしながら図12に示される従来技術に係るターボ分子ポンプにあっては、かかる回転体の破壊に対する上記ケーシング類や取付ボルトの変形あるい破損防止策が充分になされていないのが実態である。
【0014】
そこで本発明の発明者らは、特願平9−223606号にて、前記回転体の破壊時における外部ケーシングや取付ボルトの変形あるいは破損を防止する手段を提案した。
【0015】
かかる発明は、内側に静翼を備えた上部ケーシングを二重ケーシング構造とし、動翼が固定されているロータが破壊してその破片が内部に飛散しても、これらの破片を内部ケーシングに当てて破片の運動エネルギを吸収し、外部ケーシングを保護するように構成されている。
【0016】
しかしながら、かかる発明の場合は、ケーシングを二重構造としているために動翼を含むロータの温度が高くなり、該ロータの強度が低下し、また二重ケーシングであるので、ケーシングの外径が大きくなり装置が大型化してコスト高となる、等の問題点がある。
【0017】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、大容量、大型のターボ分子ポンプであっても、高速回転中の回転体が万一破壊しても、ケーシング側に伝達される回転エネルギ、つまり破壊の運動エネルギを減衰あるいは吸収させ、ケーシング類や取付ボルト類の二次的破壊、あるいは変形の発生を未然に防止したターボ分子ポンプを提供することを目的とする。
【0018】
本発明の他の目的はロータ温度の上昇が抑制されてロータの耐久性が保持され、ケーシング外径が小さくなって低コストなるターボ分子ポンプを提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明はかかる課題を解決するため、本発明は、モータにより回転駆動される回転軸と、該回転軸に連結され外周の軸方向に沿って動翼及びねじ溝ポンプ段が設けられたロータと、
ケーシングの内側に固定されて前記動翼とともに翼段を構成する静翼と、前記ねじ溝ポンプ段の外周に微小間隙を介して設けられたシールリングとを備えたターボ分子ポンプであって、
前記ターボ分子ポンプにおいて前記ロータを軸支する支持筒の外周に固定されて前記ねじ溝ポンプ段の下部内周に微小間隙を介して対向する環状のストッパリングを備え、そしてより好ましくは該ストッパリングと、前記回転軸の上端部に設けられて前記ロータの中心上部を前記回転軸に固定するストッパ部材とを併設してなることを特徴とするターボ分子ポンプを提案する。
なお、前記支持筒と前記ストッパリングとは一体化されているが、別体に構成しても良い。
【0020】
かかる発明によれば、ターボ分子ポンプの運転中、許容値を超える振動等の異常事態によってロータが破壊すると、ロータの破片は上方に飛び出そうとするが、ロータの上部中央部がストッパ部材によって堅固に回転軸に固定されてロータを押さえているので、上方への飛散が低減され、ロータは半径方向に飛散あるいは変形して該ロータのねじ溝ポンプ段の外周がこれと微小間隙のシールリングに衝突する。
【0021】
これにより、ロータの運動エネルギは、シールリングとねじ溝ポンプ段との接触によって該シールリングに吸収され、シールリングに回転を生じ、シールリングの取付用ボルトにせん断力を付与し、該ボルトの破断によって前記運動エネルギを吸収する。従って、前記ロータ破片の上部ケーシング側への飛散及びエネルギ伝達が低減される。
【0022】
従ってかかる発明によれば、ロータの中央上部をストッパ部材によって回転軸に堅固に固定してロータを押さえているので、ロータ破壊時の破片が上方に飛散するのが低減されるとともに、ロータ端部のねじ溝ポンプ段がこれと微小間隙で以って設けられたシールリングに接触して、破壊による運動エネルギをシールリングに伝達し、最終的にシールリングの変形、シールリング取付用ボルトの切断及びシールリングが下部ケーシングに摩擦しながら回転することによって吸収させることができる。
【0023】
また、かかる発明によれば、ロータの一部であるねじ溝ポンプ段の下端内周が、支持筒に固定されたストッパリングの外周に微小間隙を介して対向しているので、ロータの破壊時に、ねじ溝ポンプ段の内周面がストッパリングの外周面と衝突することによって、ロータ破片が傾斜するのが阻止されるとともに、前記衝突によってロータの運動エネルギが吸収される。
【0024】
これにより、ロータ破片の上部ケーシング側への飛散が低減するとともに、シールリング部でエネルギ吸収されるので、上部ケーシングへのエネルギ伝達が軽減され、安全性が確保される。
又シールリング部より上の破片は上部ケーシングに飛散するが、飛散するには破片が動翼とねじ溝ポンプ段の境界で破断する必要があり、直接的に飛散することを防止し、エネルギを少しでも消費させる事が出来、やはり安全性が確保される。
【0025】
又前記ストッパ部材は、その下面に環状の突起部が設けられ、該突起部を前記ロータに設けられた溝内に嵌入して構成するのがよい。
【0026】
かかる発明によれば、ストッパ部材の下面に設けた環状の突起物をロータに設けた溝内に嵌入させているので、該突起部が、ロータの破壊時において、その破片が外周側に飛散するときの抵抗となって、ロータの破壊による半径方向への運動エネルギーを吸収し、ロータの半径方向への飛散を低減できるとともに、エネルギ吸収され、安全性が確保される。
【0027】
更に、前記回転軸と前記ロータとの夫々の接触面上に、回転軸線と同心上にリング円状の嵌合溝と嵌合凸部を設け、該嵌合溝と嵌合凸部を嵌着して前記回転軸と前記ロータとの連結を図ることによっても、ロータの破壊時において、前記嵌合部が抵抗となって、ロータの破壊による半径方向への運動エネルギーを吸収し、ロータの半径方向への飛散を低減できるとともに、エネルギ吸収され、安全性が確保される。
【0028】
更に、前記シールリングを厚肉に形成するとともに、その外周に環状突起部を設け、該環状突起部を下部ケーシングにインロー嵌合し、さらに前記シールリングをせん断強度の小さいボルトにより前記下部ケーシングに取付けてなる。
【0029】
かかる発明によれば、シールリングが厚肉、大形であるので、シールリングはロータとの接触によってそれ自体の変形が少なくなって、破壊による運動エネルギを少ない変形で吸収し、環状突起部をガイドとして回転し、かかる回転によって、小径のボルトが切断される。従って、かかる発明によれば、シールリングの変形を少なくして、ロータの破壊の運動エネルギの殆どをシールリングの変形、ボルトの切断及びシールリングが下部ケーシングに摩擦しながら回転することによって吸収できる。
なお、当然のことながら、シールリングが外周側に変形してもすぐさま拘束されないように、下部ケーシングとの隙間を十分確保している。
【0030】
本発明の第2発明は、モータにより回転駆動される回転軸と、該回転軸に連結され外周の軸方向に沿って動翼及びねじ溝ポンプ段が設けられたロータと、ケーシングの内側に固定されて前記動翼とともに翼段を構成する静翼と、前記ねじ溝ポンプ段の外周に微小間隙を介して設けられたシールリングとを備えたターボ分子ポンプであって、前記シールリングは、その内周の内径が、上端部あるいはその近傍で最も小さく、下部になるに従がい大きくなるような下部側が拡開したテーパ状に形成されるとともに、前記ロータのねじ溝ポンプ段は、前記シールリングの内周に対向する外周の外径が上部近傍で最も小さく下部になるに従がい大きくなるように構成されてなることを特徴とする。この場合、前記シールリングは、その円周方向において2つ割りにされた半円環状体を押え板及びボルトによって締着してなるのがよい。
【0031】
かかる発明によれば、ターボ分子ポンプの運転中、許容値を超える振動等の異常事態によってロータが破壊すると、ロータの破片は上方に跳び出そうとするが、該ロータの破片はねじ溝ポンプ段部において最も間隙の小さいシールリングの内周面に接触する。
然るにシールリングの内周面とこれに対向するねじ溝ポンプ段の外周面とは、上部が小径の逆テーパに形成されているので、ロータはシールリングとの上記接触部において上方への飛散が低減されるとともに、ロータ破片の運動エネルギはシールリングとの衝突及びシールリングの変形によって吸収される。
これにより、ロータ破片の上部ケーシングへの飛散は低減されるとともに安全性が確保される。
【0032】
そして前記発明は、好ましくは前記シールリングに加えて、前記ロータを軸支する支持筒の外周に固定されて前記ねじ溝ポンプ段の下部内周に微小間隙を介して対向する環状のストッパリングを備えてなるのがよい。
【0033】
かかる発明によれば、ロータの一部であるポンプ段の下端内周が、支持筒に固定されたストッパリングの外周に微小間隙を介して対向しているので、ロータの破壊時にねじ溝ポンプ段の内周面がストッパリングの外周面と衝突することによって、ロータ破片が傾斜するのが阻止されるとともに、前記衝突によってロータの運動エネルギが吸収される。
【0034】
又本発明は前記ターボ分子ポンプにおいて、前記ロータを軸支する支持筒の外周に、前記ねじ溝ポンプ段の下部内周と微小間隙を介してストッパ部を設けるとともに、前記ねじ溝ポンプ段の下端部には、前記ロータが上方へ移動したとき前記ストッパ部に当接可能にされた凸部が設けられてなるように構成する事も出来る。そして、前記ストッパ部が、前記支持筒の外周に固定されたリング部材からなるのがよい。
【0035】
更に、前記シールリングを厚肉に形成するとともに、その外周に環状突起部を設け、該環状突起部を下部ケーシングにインロー嵌合し、さらに前記シールリングをせん断強度の小さいボルトにより前記下部ケーシングに取付けてなるのがよい。
【0036】
かかる発明によれば、ロータの破壊時に、該ロータが上方に飛び出そうとした際、ねじ溝ポンプ段下部の凸部がストッパ部に衝突してロータの上方への飛散が低減されるとともに、ロータ破片の運動エネルギは前記衝突により支持筒側に吸収され、安全性が確保される。
【0037】
また、前記ロータの破壊時に該ロータが半径方向に飛び出すと、微小間隙のねじ溝ポンプ段の外周とシールリングの内周とが衝突し、これにより、ロータの運動エネルギはシールリングとねじ溝ポンプ段との衝突によって該シールリングに吸収され、シールリングに吸収され、シールリングに回転を生じ、シールリングの取付用ボルトにせん断力を付与し、該ボルトの破断とシールリングが摩擦しながら回転することによって前記運動エネルギを吸収する。
【0038】
従って、かかる発明によれば、ロータの破壊時において、ねじ溝ポンプ段の凸部とストッパ部との衝突によりロータ破片の上方への飛散が低減され、前記厚肉大形のシールリングとねじ溝ポンプ段との衝突及び該シールリングの回転に伴なうボルトの切断によりロータ破片の上部ケーシングへの直接的な飛散が阻止される。
これにより、外部にあるケーシングや取付ボルト類への上記破片による運動エネルギの伝達が低減され、ターボ分子ポンプの固定、支持部材(装置)をコンパクトにできる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を例示的に詳しく説明する。但しこの実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がないかぎりは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0040】
図1は本発明の第1実施形態に係るターボ分子ポンプの縦断面図、図2は図1のZ部拡大図である。
図1において、1及び16は、複数のボルト21によりOリング15を介して一体的に組付けられている上部ケーシングおよび下部ケーシングである。これにより上部・下部ケーシング1、16内は完全な密閉空間に保持されている。
該上部ケーシング1の上部開口はガス吸気口2となすとともに、その内側には複数のスペーサ13が軸方向に連設されている。
該スペーサ13は上端を、前記上部ケーシング1の内端面に当接され、下端を前記下部ケーシング16の上端部にインロー嵌合されており、各スペーサ13の間には静翼4が外周部を挟持固定されて、多段状に設けられている。
【0041】
6はロータで、該ロータ6の上部には動翼5が多段状に設けられ、各動翼5と静翼4とが交互に設けられて複数の翼段を構成している。
前記ロータ6の下部にはねじ溝ポンプ段8が設けられている。
140は複数のボルト34により前記下部ケーシング16に固定されたテーパ状のシールリングで、前記ねじ溝ポンプ段8の外周と微小間隙を介して対向配置され、圧縮効果を上げている。該シールリング140の詳細については後述する。
【0042】
前記下部ケーシング16の下方側部には排気口3が開口され、前記ねじ溝ポンプ段8を通ってきた流体が該排気口3から外部に送出されるようになっている。
【0043】
17は前記下部ケーシング16の支持筒であり、該支持筒17の内周には、上部から順に、玉軸受からなる上部保護軸受19、ラジアル軸受である上部磁気軸受9、モータ12のステータ部12a、ラジアル軸受である下部磁気軸受10、玉軸受からなる下部保護軸受20、並びに後述する回転軸7の下端のスラストディスク7aを挟んで設けられたスラスト磁気軸受11が配設されている。
【0044】
7は前記ロータ6の上部中心に後述する手段にて固定された回転軸で、上部から順に、上部磁気軸受9及び下部磁気軸受10に、半径方向荷重をそれぞれ支承され、下端に設けられた円盤状の磁性板からなるスラストディスク7aがスラスト磁気軸受11に挟まれて、スラスト方向(軸心方向)の位置制御を行なっている。
【0045】
前記ロータ6及び回転軸7は、前記上部磁気軸受9と下部磁気軸受10との間に設けられた前記モータ12のステータ12aに対向して回転子12bが固着されている。
【0046】
前記上部磁気軸受9及び下部磁気軸受10は、回転軸7の軸心(Z軸)と直交する面内において、左右(X軸)及び前後(Y軸)方向に夫々一対づつ配設され、前記回転軸7が倒れを生じることなく中心軸線上に維持可能に構成されている。
従って、該回転軸7は、該上部磁気軸受9及び下部磁気軸受10により左右(X軸)及び前後(Y軸)方向を、前記スラスト磁気軸受11により軸心(Z軸)方向を、つまり5軸方向を支持かつ制御されて回転することとなる。
【0047】
また、該回転軸7の前記上部磁気軸受9の上側は、前記上部保護軸受19が設けられて該回転軸7と上部保護軸受19とのラジアル方向の間隔を所要値に設定している。
さらに該回転軸7の前記下部磁気軸受10の下側は、前記下部保護軸受20が設けられて該回転軸7と下部保護軸受20とのラジアル方向及びスラスト方向の間隔を所要値に設定している。
【0048】
そして、前記上・下部磁気軸受9、10及びスラスト磁気軸受11の磁気制御に異常をきたし、前記回転軸7が片側に偏心した際には、前記上部保護軸受19もしくは下部保護軸受20に該回転軸7の外周が当接することにより、該回転軸7及びロータ6を保護する。
以上に示すターボ分子ポンプの基本構成はシールリング140を除いて図12に示す従来技術と同様である。
【0049】
7bは前記回転軸7の上端部の前記上部保護軸受19の取付部から上方に延設された嵌合部で、該嵌合部7bが前記ロータ6の嵌合穴6aに嵌合されている。
【0050】
31は上部ストッパで、前記回転軸7の嵌合部7bからさらに上方に延設された軸部7cに嵌合された環状体からなり、32のナットで締め付けている。
22は前記ロータ6と回転軸7との締結用ボルトである。
【0051】
33は環状のストッパリングで、図2に示すように、前記支持筒17の外周の、前記ねじ溝ポンプ段8の下端部に対向する位置に圧入されている。17aは前記支持筒17に設けられた該ストッパリング33の係止部である。
また前記ねじ溝ポンプ段8の内周面8aと前記ストッパリング33の外周面33aとの間には微小間隙t(0.5mm〜1.0mmが好適)が形成され、前記ロータ6の破壊時において、該ロータ6が傾こうとした際にねじ溝ポンプ段8の下端部円周面8aがストッパリング33の外周面33aに衝突するようになっている。
なお、33のストッパリングは支持筒17と一体形成されていてもよい。
【0052】
また前記シールリング140は図12に示す従来技術に較べて大形かつ厚肉に形成されている。
即ち、図1において、140は前記ねじ溝ポンプ段8の外周と対向して配置されたシールリングで、前記下部ケーシング16の取付面16aに当接されるとともに、その外周下部に設けられた軟剛性の環状突起部141を前記下部ケーシング16の上部に設けられた嵌合部36にインロー嵌合し、複数のボルト34によって下部ケーシング16に固定されている。
前記ボルト34はせん断に必要なエネルギが小さくて済むように、小径に構成されている。
【0053】
かかる構成からなるターボ分子ポンプの運転時において、前記各磁気軸受9、10、11に通電し、回転軸7、動翼5を有するロータ6等のポンプ回転部を浮上した状態で、モータ12を駆動し、前記ポンプ回転部を例えば、10,000〜100,000 r.p.m.で高速回転させる。該ポンプ回転部の高速回転により動翼5が静翼4の間を回転し、かつねじ溝ポンプ段8がテーパ状のシールリング140の内周面と対面しながら回転することによって、真空排気されるガスが上方のガス吸気口2から動翼5と静翼4との間で第1段の圧縮がなされた後、ねじ溝ポンプ段8の螺旋状溝通路で第2段階圧縮がなされ、ポンプ内ガス通路を経て排気口3の方向に流れることによって、ガス吸気口2側が高真空に保持される。
【0054】
かかるターボ分子ポンプの運転時において、許容値を超える過大振動や内部での異常状態によって大きな運動エネルギを持ったロータ6が破壊すると、該ロータ6の破片は上方に飛び出そうとするが、該ロータ6の中央部が上部ストッパ31によって堅固に回転軸7に固定されてロータ6を押さえているので、上方(上部ケーシング)への直接的な飛散が阻止され、ロータ6は半径方向に飛散あるいは変形して、該ロータ6のねじ溝ポンプ段8の外周が、これと対向して微小間隙で以って配設されているシールリング140の内周に衝突する。
【0055】
これにより、ロータ6の運動エネルギはシールリング140とねじ溝ポンプ段8との接触によってシールリング140に伝達される。
該シールリング140は、前記のように、厚肉、大形に構成されているためそれ自体は大きく変形せず、環状突起部141をガイドとして回転する。
【0056】
かかる回転によって、ボルト34にせん断力が作用し、該せん断力によって破断し易いように小径に構成されたボルト34は切断される。
かかるシールリング140の変形、ボルト34の切断及び下部ケーシング16に適度に摩擦しながら回転することにより、前記ロータ6の破壊による運動エネルギが吸収され、外部の上部ケーシング1や下部ケーシング16及び取付用のボルト21等へのエネルギ伝達が低減される。
【0057】
また、前記ねじ溝ポンプ段8の下端部内周面8aは、支持筒17に圧入されたストッパリング33の外周面33aに微小間隙tを介して対向しているので、ロータ6の破壊時において該ロータ6が傾斜しようとした際に、前記ねじ溝ポンプ段8の下端の内周面8aがストッパリング33の外周面33aに衝突することによって、該ロータ6の傾斜が阻止されるとともに、前記ストッパリング33への衝突によってロータ6の運動エネルギが吸収される。
【0058】
図3は本発明の第2実施形態を示す要部拡大断面図である。
この実施形態においては、第1実施形態における上部ストッパを改良している。
【0059】
即ち図3において、41は上部ストッパで回転軸7の上端7bに組み付け、ロック用のナット32により締め付けられている点は第1実施形態と同様であるが、外周部に環状の突起部41aを設けている。
一方ロータ6の上面には環状の溝42が刻設され、該溝42内に前記突起部41aが嵌入されている。
【0060】
かかる実施形態において、ロータ6が破壊されると、該上部ストッパ41によってロータ6の中央部を堅固に固定しているので、該ロータ6の破片が上方へ飛散するのを低減できる点は第1実施形態と同様であるが、この実施形態においては、上部ストッパ41に突起部41aを設け、ロータ6の溝42に嵌入しているので、該突起部41aがロータ6の破片が外周側に飛散するときの抵抗となり、該突起部41aと溝42との嵌合部にてロータ6の破片の半径方向への運動エネルギを吸収する。
【0061】
かかる実施形態においては、上部ストッパ41に突起部41aを設け、これをロータ6の溝42に嵌入することによって前記ロータ6の破片の半径方向への飛散を低減することが可能となる。
【0062】
図4は本発明の第3実施形態を示す要部拡大断面図である。
この実施形態においては、第3実施形態における回転軸とロータとの結合状態を改良している。
本実施形態において、図3の実施形態との相違点のみ説明するに、
締結用ボルト22が締め付けられる回転軸7のフランジ7d上面内周側には、回転軸線と同心上にリング円状の嵌合溝7eを設ける。
又前記ロータ6の回転軸7と嵌合する部位の下面の、前記嵌合溝7eと対向する位置にリング円状の嵌合凹部6bを設け、該嵌合溝7eと嵌合凸部6bがきっちり嵌着可能に構成する。
【0063】
かかる構成によれば、前記回転軸7のフランジ7d上面と前記ロータ6内周側下面の夫々の接触面上に設けた、嵌合溝7eと嵌合凸部6bとを嵌着して前記回転軸7と前記ロータ6との連結を図ることによっても、ロータ6の破壊時において、前記嵌合部7eと6bが抵抗となって、ロータ6の破壊による半径方向への運動エネルギーを吸収し、ロータ6の半径方向への飛散を低減できるとともに、エネルギ吸収され、安全性が確保される。
【0064】
図5は本発明の第4実施形態に係るターボ分子ポンプの縦断面図、図6は図5のA−A矢視図で外郭部を省略した図、図7は図5のY部拡大図、図8は図5のX部拡大図である。
図5において、図12に示す従来技術との差異を中心に説明する。
【0065】
8は前記ロータ6の下部に形成されたねじ溝ポンプ段で、該ねじ溝ポンプ段8の外側には環状のシールリング150が設置されている。
該ねじ溝ポンプ段8は、その外周面が、図12に示す従来技術のものとは逆に上部で小さく下部になるに従がい大きくなる、いわゆる逆テーパ状に形成されている。
【0066】
そして、前記シールリング150は、その内周面と前記ねじ溝ポンプ段8との間に微小間隙を介して配設されるとともに、該内周面が前記ねじ溝ポンプ段8と同方向のテーパ、即ち、その上端部の内径が最も小さく、下部になるに従がい内径が大きくなるような逆テーパに形成されている。
尚、気体を流すねじ溝は、ねじ溝ポンプ段8のロータ外周に設けてもシールリング150の内周に設けてもよい。
【0067】
前記シールリング150は、前記のように逆テーパに形成されていることから、ターボ分子ポンプ内への組み込みを可能とするため、図6に示すように半環状の2つのピース150a、150bを接合面150cにて接合してなる2つ割りのリングに構成されている。
45は前記2つ割りのピース150aと150bとを締着するためのボルトであり、該ボルト45を締めることによって前記ピース150aと150bとが接合面150cにて圧接され、環状のシールリング150を形成している。
【0068】
図5、図6、図8において、39は円環状の押え板で、該押え板39は、前記2つ割りのシールリング150を組立後、該シールリング150の外周に嵌挿され、円周方向に沿って複数個(この側では4個)設けられたボルト46を前記下部ケーシング16にねじ込み、その下面で前記シールリング150の肩部150dを押さえることにより、該シールリング150を下部ケーシング16に固定している。
【0069】
33は環状のストッパリングで、図7に示すように、前記支持筒17の外周の、前記ねじ溝ポンプ段8の下端部に対向する位置に圧入されている。17aは前記支持筒17に設けられた該ストッパリング33の係止部である。
また前記ねじ溝ポンプ段8の内周面8aと前記ストッパリング33の外周面33aとの間には微小間隙t(0.5mm〜1.0mmが好適)が形成され、前記ロータ6の破壊時において、該ロータ6が傾こうとした際にねじ溝ポンプ段8の下端部内周面8aがストッパリング33の外周面33aに衝突するようになっている。
【0070】
かかる構成からなるターボ分子ポンプの運転時において、前記各磁気軸受9、10、11に通電し、回転軸7、動翼5を有するロータ6等のポンプ回転部を浮上した状態で、モータ12を駆動し、前記ポンプ回転部を例えば、10,000〜100,000 r.p.m.で高速回転させる。該ポンプ回転部の高速回転により動翼5が静翼4の間を回転し、かつねじ溝ポンプ段8がこれと微小間隙を介して設けられたシールリング150の内周面と対面しながら回転することによって、真空排気されるガスが上方のガス吸気口2から動翼5と静翼4との間で第1段の圧縮がなされた後、ねじ溝ポンプ段8の螺旋状溝通路で第2段階圧縮がなされ、ポンプ内ガス通路を経て排気口3の方向に流れることによって、ガス吸気口2側が高真空に保持される。
【0071】
かかるターボ分子ポンプの運転時において、許容値を超える過大振動や内部での異常状態によって大きな運動エネルギを持ったロータ6が破壊すると、上方に飛び出そうとするロータ6の破片は、ねじ溝ポンプ段8部において、最も間隙の小さいシールリング150の内周面に接触する。然るに前記シールリング150の内周面とこれに対するねじ溝ポンプ段8の外周面とは、上部が小径で下部になるほど大径となるような逆テーパに形成されているので、ロータ6は上記シールリング150との上記接触部において、上方(上部ケーシング)への直接的な飛散が阻止される。
【0072】
これにより、ロータ6破片の運動エネルギはシールリング150との上記衝突及びシールリング150の変形によって吸収され、外部にある上部ケーシング1や下部ケーシング16及び取付用のボルト21等へのエネルギ伝達が低減され、ターボ分子ポンプの固定、支持部材(装置)をコンパクトにできる。
【0073】
また、前記ねじ溝ポンプ段8の下端部内周面8aは、支持筒17に圧入されたストッパリング33の外周面33aに微小間隙tを介して対向しているので、ロータ6の破壊時において該ロータ6が傾斜しようとした際に、前記ねじ溝ポンプ段8の下端の内周面8aがストッパリング33の外周面33aに衝突することによって、該ロータ6の傾斜が阻止されるとともに、前記ストッパリング33への衝突によってロータ6の運動エネルギが吸収される。
【0074】
図9〜図11は本発明の第5実施形態を示し、図9はターボ分子ポンプの要部縦断面図(回転軸心に対し半分の断面図)、図10は図9のV部拡大図、図11は他の例を示す上記V部拡大図である。
【0075】
図9〜図11において、160はねじ溝ポンプ段8の外周と対向して配置されたシールリングで図8に示す従来技術に較べて厚肉、大形に形成されている。
該シールリング160は、前記下部ケーシング16の取付面16aに当接されるとともに、その外周下部に設けられた軟剛性の環状突起部161を前記下部ケーシング16の上部に設けられた嵌合部36aにインロー嵌合し、複数のボルト34によって下部ケーシング16に固定されている。
前記ボルト34はせん断に必要なエネルギが小さくて済むように、小径に構成されている。
【0076】
51は前記支持筒17の外周に形成されたストッパ部で、前記ロータ6のねじ溝ポンプ段8の下端近傍内周に対向して設けられている。
また、図10に示すように、前記ねじ溝ポンプ段8の前記ストッパ部51の外周直下部に該ねじ溝ポンプ段8の内周面8aから内周側に突出した凸部8bが設けられている。
該凸部8bは、前記ストッパ部51の下側面から微小距離b(1mm以下)の位置に設けられ、その内周面8cと前記ストッパ部51の外周面51aとの間には組み立てに要する微小間隙(0.1〜0.2mm程度)tを設けている。
【0077】
かかる実施形態において、ロータ6が破壊した際に、該ロータ6が上方に飛び出そうとすると、ねじ溝ポンプ8下端部に設けられた凸部8bが前記ストッパ部51に衝突し、ロータ6の上方への飛散が低減され、ロータ破片の運動エネルギは前記衝突により支持筒17側に吸収される。
【0078】
この場合、ロータ6の組み立てのための間隙tが設けられているが、該ロータ6の破壊時には、ロータ破片は前記間隙t(0.1〜0.2mm)以上半径方向に移動するので、前記凸部8bとストッパ部51とは確実に衝突する。
【0079】
また、前記ロータ6の破壊により破片が半径方向に飛び出すと、ねじ溝ポンプ段8の外周とシールリング160の内周とが衝突する。
これにより、ロータ6の運動エネルギは、前記シールリング160とねじ溝ポンプ段8との接触によってシールリング160に伝達される。
該シールリング160は、前記のように、厚肉、大形に構成されているため、それ自体は大きく変形せず、環状突起部161をガイドとして回転する。
【0080】
かかる回転によって、ボルト34にせん断力が作用し、該せん断力によって破断しやすいように小径に構成されたボルト34は切断される。
かかるボルト34の切断、及びシールリング160が摩擦しながら回転することで前記ロータ6の破壊による運動エネルギが吸収される。
【0081】
従って、かかる実施形態によればロータ6の破壊時において、ねじ溝ポンプ段8の凸部8bとストッパ部51との衝突によりロータ破片の上方への飛散が低減され、前記厚肉大形のシールリング160へのねじ溝ポンプ段8の衝突及び該シールリング160の回転によるボルト34の切断、及びシールリング160が摩擦しながら回転することで運動エネルギが吸収され、ロータ破片の上部ケーシング1への直接的な飛散が阻止される。
【0082】
これにより、外部にある上部ケーシング1や下部ケーシング16及び取付用のボルト21等への上記運動エネルギの伝達が低減され、ターボ分子ポンプの固定、支持部材(装置)をコンパクトにできる。
上記以外の構成は前記第1実施形態と同様であり、これと同一の部材は同一の符号にて示す。
【0083】
図11は前記第5実施形態におけるストッパ部51の変形例で、該ストッパ部51に代えて、図2と同様なストッパリング33を支持筒17に圧入している。その他の構成は図10の例と同様であり、これと同一の部材は同一の符号にて示す。
【0084】
尚、上記第5実施形態におけるシールリング160に代えて、図12に示される従来技術と同様なシールリング14を用いてもよい。
【0085】
【発明の効果】
以上記載のごとく本発明によれば、ロータの破壊時にねじ溝ポンプ段の内周面がストッパリングの外周面と衝突することによって、ロータが傾斜するのを阻止することができるとともに、前記衝突によってロータの運動エネルギを吸収することができる。
【0086】
而も発明によれば、ロータの中央上部をストッパ部材によって回転軸に堅固に固定してロータを押さえているので、ロータ破壊時の破片が上方(上部ケーシング)に直接的に飛散するのが阻止されるとともに、ロータ端部のねじ溝ポンプ段がこれと微小間隙で以って設けられたシールリングに接触して、破壊による運動エネルギをシールリングに伝達し、最終的にシールリングの変形、シールリング取付用ボルトの切断及びシールリングが下部ケーシングに摩擦しながら回転することによって吸収させることができ、これにより、ロータ破片の上部ケーシング側への直接的な飛散が防止され、上部ケーシングへのエネルギ伝達が軽減されて安全性が確保される。
【0087】
また発明によれば、ストッパ部材に設けた環状の突起部をロータの溝内に固定することにより、ロータの破壊時においてその破片が外周側に飛散するときの抵抗となり、ロータ破壊による半径方向への運動エネルギを吸収し、ロータの半径方向への飛散が低減でき、安全性が確保できる。
【0088】
さらに発明によれば、シールリングを厚肉、大形とすることにより、それ自体の変形が少なくなる。これにより、ロータとの接触によって破壊による運動エネルギが環状突起部をガイドとして該シールリングを回転させ、小径のボルトを切断させることにより、該運動エネルギを吸収することができる。
【0089】
更に発明によれば、前記回転軸と前記ロータに設けた嵌合溝と嵌合凸部を嵌着して前記回転軸と前記ロータとの連結を図ることによって、ロータの破壊時において、前記嵌合部が抵抗となって、ロータの破壊による半径方向への運動エネルギーを吸収し、ロータの半径方向への飛散を低減できるとともに、エネルギ吸収され、安全性が確保される。
【0090】
更に発明によれば、シールリングの内周面とこれに対向するねじ溝ポンプ段の外周面とが、下部側が拡開した逆テーパ状に形成されているので、ロータの破壊時において、該ロータはシールリングとねじ溝ポンプ段との接触(衝突)によって上方(上部ケーシング)への直接的な飛散が阻止され、該接触によって破片の運動エネルギが吸収される。
【0091】
また、動翼の外側は、従来技術と同様に静翼支持用のスペーサと外部ケーシングとよりなるので、内部ケーシングを用いた二重ケーシングのポンプのような温度上昇を伴なうことなく、またケーシングの外形を大きくすることなく、外部のケーシングやボルト類への破片による運動エネルギの伝達が低減される。
【0092】
また、発明によれば、ロータの破壊時に、ねじ溝ポンプ段の内周面がストッパリングの外周面と衝突することによって、ロータが傾斜するのを阻止することができるとともに、前記衝突によってロータの運動エネルギを吸収することができる。
【0093】
また発明によれば、ロータの破壊時に、ねじ溝ポンプ段下部に設けられた凸部と支持筒に固定されたストッパ部との衝突によってロータの上方への飛散が低減され、ロータ破片の運動エネルギは前記衝突により支持筒側に吸収される。また、厚肉大形のシールリングとねじ溝ポンプ段との衝突及びシールリングの回転に伴なうボルトの切断により、ロータ破片の半径方向への飛散の低減が図れる。これによりロータ破片の上部ケーシング(上方向及び半径方向)への直接的な飛散が防止され、ケーシング、ボルト等の外郭部材へのロータ破片による運動エネルギの伝達が低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係るターボ分子ポンプの縦断面図である。
【図2】 図1のZ部拡大図である。
【図3】 本発明の第2実施形態を示すターボ分子ポンプの要部縦断面図である。
【図4】 本発明の第3実施形態を示すターボ分子ポンプの要部縦断面図である。
【図5】 本発明の第4実施形態に係るターボ分子ポンプの縦断面図である。
【図6】 図5のA−A矢視図で、押え板及びシールリングを示した図である。
【図7】 図5のY部拡大図である。
【図8】 図5のX部拡大図である。
【図9】 本発明の第5実施形態に係るターボ分子ポンプの要部縦断面図である。
【図10】 図9のV部拡大図の第1例である。
【図11】 図9のV部拡大図の第2例である。
【図12】 従来技術に係るターボ分子ポンプの縦断面図である。
【符号の説明】
1 上部ケーシング
2 ガス吸気口
3 排気口
4 静翼
5 動翼
6 ロータ
7 回転軸
8 ねじ溝ポンプ段
8b 凸部
9 上部磁気軸受
10 下部磁気軸受
11 スラスト磁気軸受
12 モータ
14、140、150、160 シールリング
16 下部ケーシング
17 支持筒
19 上部保護軸受
20 下部保護軸受
21、22、34、45、46 ボルト
31、41 上部ストッパ
32 ナット
33 ストッパリング
36 嵌合部
39 押え板
41a 突起部
42 溝
51 ストッパ部
161 環状突起部

Claims (3)

  1. モータにより回転駆動される回転軸と、該回転軸に連結され外周の軸方向に沿って動翼及びねじ溝ポンプ段が設けられたロータと、ケーシングの内側に固定されて前記動翼とともに翼段を構成する静翼と、前記ねじ溝ポンプ段の外周に微小間隙を介して設けられたシールリングとを備えたターボ分子ポンプにおいて、前記ロータを軸支する支持筒の外周に、前記ねじ溝ポンプ段の下部内周と微小間隙を介してストッパ部を設けるとともに、前記ストッパ部の外周直下部に前記ねじ溝ポンプ段の内周面から内周側に突出した凸部を設け、前記ロータが破壊した際に該ロータが上方に移動すると、前記凸部が前記ストッパ部に衝突するようにしたことを特徴とするターボ分子ポンプ。
  2. 前記ストッパ部が、前記支持筒の外周に固定されたリング部材からなる請求項1記載のターボ分子ポンプ。
  3. 前記シールリングを厚肉に形成するとともに、その外周に環状突起部を設け、該環状突起部を外部ケーシングにインロー嵌合し、さらに前記シールリングをせん断強度の小さいボルトにより前記外部ケーシングに取付けてなる請求項1または2記載のターボ分子ポンプ。
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