JP7348753B2 - 真空ポンプ、および連結型ネジ溝スペーサ - Google Patents
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Description
このようなシグバーン型分子ポンプ、あるいはシグバーン型分子ポンプ部を有する真空ポンプを工業的に利用するためには、回転円板と固定円板の段が単段では圧縮比が不足するので多段化がなされている。求められる圧縮性能を満たすために段数を増やすと、それだけポンプ自体の大きさが大きくなってしまう。
また、多段化する場合には、回転円板を半割れ形状にする必要が生じる。すると、ポンプの外筒(ケーシング)をシグバーン部(シグバーンポンプ部)を覆う長さにまで長くする必要があり、この場合もポンプ自体の大きさが大きくなってしまう。
しかしながら、ネジ長を長くすることで排気構造の周囲構造(ケーシングなど)の部分が大きくなったり、あるいは、パラレルパスにすることで複雑な部品が増えるなどして、製造コストが大きくなってしまっていた。
図8は、従来の1Passネジタイプの真空ポンプを説明するための図である。
例えば、流路が1つである1Passネジ溝スペーサ2001が備わる従来の真空ポンプ1001では、圧縮性能を良くしたい場合、ネジ溝部の軸方向の長さを長くする必要があった。このようにネジ溝部の軸方向の長さを長くすると、その分だけベース3を大きくする必要が生じるため、製造コストが大きくなってしまっていた。
ところで、真空ポンプを組み立てる際、下側(排気口側)から徐々に積み上げて組み立てる方が組み立て作業が容易である。すなわち、連結型ネジ溝スペーサを例えばベースに締結する際、連結型ネジ溝スペーサの排気流路部で固定ボルトで締結できると、真空ポンプの上側から作業を行えるので、作業中に真空ポンプを反転させたりする必要がなく、作業効率が向上する。
一方で、連結型ネジ溝スペーサの排気流路部に固定ボルトを設けると、当該固定ボルトの頭部が、排気ガスに対する抵抗となり、真空ポンプの性能に影響を及ぼす虞があった。
請求項2記載の本願発明では、前記ザグリ穴は、前記シグバーンポンプ部の前記谷部の半径方向外側に位置する前記排気流路面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプを提供する。
請求項3記載の本願発明では、前記ザグリ穴に配置された前記固定ボルトは、上部をキャップで覆われていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の真空ポンプを提供する。
請求項4記載の本願発明では、吸気口または排気口が形成された外装体と、前記外装体に内包される固定部品と、配設される固定円板または配設される回転円板の少なくともいずれか一方に、山部と谷部を有するスパイラル状溝が刻設されるシグバーンポンプ部と、ネジ溝ポンプ部とを有する真空ポンプに用いられる連結型ネジ溝スペーサであって、前記連結型ネジ溝スペーサは、前記シグバーンポンプ部と、前記ネジ溝ポンプ部とを連結させる構造を有し、前記連結型ネジ溝スペーサにおける前記シグバーンポンプ部の前記谷部の排気流路面に固定ボルトのためのザグリ穴が設けられており、前記固定ボルトにより、前記外装体または前記固定部品と締結されることを特徴とする連結型ネジ溝スペーサを提供する。
本発明の実施形態に係る連結型ネジ溝スペーサは、シグバーンポンプ部とネジ溝ポンプ部とを連結させる構造を備えている。この連結型ネジ溝スペーサの排気流路部(排気流路面)に予めザグリ穴を設けて固定ボルトで、例えばベースと締結することにより、固定ボルトの頭部が突出して抵抗となり、真空ポンプの排気性能が低下することを抑制できる。
また、連結型ネジ溝スペーサの排気流路部にザグリ穴を設けて固定ボルトで締結するので、真空ポンプの組み立て作業時に、真空ポンプの上方(吸気口側)から徐々に積み上げて取り付け作業を行うことができるので、作業効率を向上させることができる。
本発明の実施形態の真空ポンプは、配設される固定円板または配設される回転円板の少なくともいずれか一方に、山部と谷部を有するスパイラル状溝が刻設(配設)されるシグバーンポンプ部と、さらに、回転円筒との対向面にスパイラル状溝が形成され、所定のクリアランスを隔てて回転円筒の外周面に対向するネジ溝スペーサが備えられ、回転円筒が高速回転することでガスが回転円筒の回転に伴ってネジ溝(らせん溝)にガイドされながら排気口側へ送り出される気体移送機構であるネジ溝ポンプ部を有する。
そして、シグバーンポンプ部とネジ溝ポンプ部とは、連結型ネジ溝スペーサで連結されている。この連結型ネジ溝スペーサを例えばベースに締結する際、予めザグリ穴を設けておき、固定ボルトで締結した後、固定ボルトの頭部が排気流路に突出し、排気の障害となることを防止できる。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1から図7を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る真空ポンプ1の概略構成例を示した図であり、真空ポンプ1の軸線方向の断面図を示している。
なお、本発明の実施形態では、便宜上、回転翼の直径方向を「径(直径・半径)方向」、回転翼の直径方向と垂直な方向を「軸線方向(または軸方向)」として説明する。
真空ポンプ1の外装体を形成するケーシング(外筒)2は、略円筒状の形状をしており、ケーシング2の下部(排気口6側)に設けられたベース3と共に真空ポンプ1の筐体を構成している。そして、この筐体の内部には、真空ポンプ1に排気機能を発揮させる構造物である気体移送機構が収納されている。
本実施形態では、この気体移送機構は、大きく分けて、回転自在に支持された回転部(ロータ部/シグバーン部)と筐体に対して固定された固定部(ネジ溝ポンプ部)から構成されている。
また、図示しないが、真空ポンプ1の外装体の外部には、真空ポンプ1の動作を制御する制御装置が専用線を介して接続されている。
また、ベース3には、当該真空ポンプ1から気体を排気するための排気口6が形成されている。
各回転翼9は、シャフト7の軸線に対して垂直に放射状に伸びた円板形状の円板部材により構成される。なお、本実施形態では、回転翼9の最下段(排気口6側)は円盤にし、シグバーン部の圧縮を行う構成にする。
また、ロータ円筒部10は、ロータ8の回転軸線と同心の円筒形状をした円筒部材により構成される。
さらに、ステータコラム80内には、シャフト7のモータ部に対して吸気口4側と排気口6側に、シャフト7をラジアル方向(径方向)に非接触で支持するための径方向磁気軸受装置が設けられている。また、シャフト7の下端には、シャフト7を軸線方向(アキシャル方向)に非接触で支持するための軸方向磁気軸受装置が設けられている。
なお、回転翼9と固定翼50は互い違いに配置され、軸線方向に複数段形成されるが、真空ポンプに要求される排出性能を満たすために、必要に応じて任意の数のロータ部品およびステータ部品を設けることができる。
連結型ネジ溝スペーサ20には、従来のネジ溝スペーサと同様に、ロータ円筒部10との対向面にはネジ溝(らせん溝)が形成されている。
連結型ネジ溝スペーサ20におけるロータ円筒部10との対向面側(すなわち、真空ポンプ1の軸線に平行な内周面)は、所定のクリアランスを隔ててロータ円筒部10の外周面に対面しており、ロータ円筒部10が高速回転すると、真空ポンプ1で圧縮されたガスがロータ円筒部10の回転に伴ってネジ溝にガイドされながら排気口6側へ送出されるようになっている。すなわち、ネジ溝は、ガスを輸送する流路となっている。
このように、連結型ネジ溝スペーサ20におけるロータ円筒部10との対向面と、ロータ円筒部10とが、所定のクリアランスを隔てて対向することにより、連結型ネジ溝スペーサ20の軸線方向側内周面に形成されたネジ溝でガスを移送する気体移送機構を構成している。
なお、ガスが吸気口4側へ逆流する力を低減させるために、このクリアランスは小さければ小さいほど好ましい。
また、らせん溝の深さは、排気口6に近づくにつれて浅くなるようになっており、らせん溝を輸送されるガスは排気口6に近づくにつれて圧縮されるようになっている。
上述した構成により、真空ポンプ1では、吸気口4から吸引されたガスは、シグバーン部で圧縮された後、ネジ溝式ポンプ部でさらに圧縮されて排気口6から排出されるので、真空ポンプ1は、当該真空ポンプ1に配設される真空室(図示しない)内の真空排気処理を行うことができる。
この連結型ネジ溝スペーサ20は、ガスの排気流路に固定ボルト700のためのザグリ穴800を予め設けてあり、固定ボルト700により、ベース3に締結されている。予めザグリ穴800を設けているのは、固定ボルト700の頭部710が、突出して排気流路においてガスの排気抵抗となることを防止するためである。
ベース3には、内部を加熱するカートリッジ型ヒータ900が、ボルト910により固定され、配設されている。真空ポンプ1の内部を加熱して、排気ガスが真空ポンプ1内で析出することを防止している。このカートリッジ型ヒータ900は、単数でもよいが、複数個を所定の位相で配置してもよい。また、このカートリッジ型ヒータ900に代えて、帯状のバンドヒータを用いてもよい。
上述した連結型ネジ溝スペーサ20について、詳細を説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る連結型ネジ溝スペーサ20を説明するための図である。
図2に示したように、本実施形態に係る連結型ネジ溝スペーサ20は、ネジ溝スペーサ軸垂直部201とネジ溝スペーサ軸平行部202とを有する。
ネジ溝スペーサ軸垂直部201は、真空ポンプ1の軸線方向に対して略垂直(水平)に構成される。そして、当該ネジ溝スペーサ軸垂直部201の吸気口4側の面は、シグバーン部の回転翼9と所定のクリアランスを隔てて対向(対面)し、かつ、山部と谷部を有するスパイラル状溝が刻設されている。一方、当該ネジ溝スペーサ軸垂直部201の吸気口4側とは反対側の面は、ベース3側に配設される。
ネジ溝スペーサ軸平行部202は、真空ポンプ1の軸線方向に対して略平行に構成される。そして、当該ネジ溝スペーサ軸平行部202には、所定のクリアランスを隔ててロータ円筒部10と対向する面である内周面に、ネジ溝が形成されている。
図3は、本実施形態に係る連結型ネジ溝スペーサ20を説明するための図である。
上述したように、ネジ溝スペーサ軸垂直部201には、垂直部山部300と垂直部谷部400を有するスパイラル状溝が刻設され、一方、ネジ溝スペーサ軸平行部202には、平行部山部500と平行部谷部600を有するネジ溝が形成されている。
ここで、本実施形態の連結型ネジ溝スペーサ20は、図3に示したように、例えば鋳造で製造することにより、ネジ溝スペーサ軸垂直部201とネジ溝スペーサ軸平行部202が一体型で形成された連結型ネジ溝スペーサ20とした。
このように、ネジ溝スペーサ軸垂直部201とネジ溝スペーサ軸平行部202を一体型の構成にすることで、別部品にして締結させる構成にするよりも、締結に要する手間や製造コストを低減させることができる。
このように、本実施形態に係る真空ポンプ1では、連結型ネジ溝スペーサ20が、ガスの流路を、軸方向に対して垂直方向から平行方向へと繋ぐ役割を担っているので、ケーシング2の軸線方向の長さ(n)(図2参照)やベース3の軸線方向の長さ(m)(図2参照)を長くすることなく(すなわち、真空ポンプ1の全体の高さが高くなるのを抑えつつ)、ガスを圧縮する流路を長くすることができる。なお、垂直方向から平行方向へと繋がれた流路は、軸線方向断面で見ると、アルファベットの「L」の逆形をした流路となる。
図4は、本実施形態に係る固定ボルト700を連結型ネジ溝スペーサ20の排気流路部に配置したところを示した図である。図5は、本実施形態に係る固定ボルト700を連結型ネジ溝スペーサ20の排気流路部に配置したところを示した斜視図である。
これらの図に示すように、固定ボルト700は、連結型ネジ溝スペーサ20の排気流路部に所定の個数(複数個)、等間隔で配置されている。
連結型ネジ溝スペーサ20の排気流路部には、予め固定ボルト700を収容するザグリ穴800が開けられており、固定ボルト700を締結後、固定ボルト700の頭部710が、排気流路部へ突出しないようになっている。
この固定ボルト700は、カートリッジ型ヒータ900に近接して配置され、このカートリッジ型ヒータ900からの熱を受け、周囲より低温にならないようにしてある。
なお、連結型ネジ溝スペーサ20を固定するのに、連結型ネジ溝スペーサ20の排気流路部と関係のないところに、例えばフランジを設けて締結することも可能であるが、部品点数が増加したり、真空ポンプ1自体のサイズが大きくなってしまうので、本実施形態では採用していない。
固定ボルト700の頭部710と連結型ネジ溝スペーサ20の排気流路部との設置面Xが、可能な限り、平面となるようにする。すなわち、設置面Xは、連結型ネジ溝スペーサ20の排気流路部が、内径側に傾斜している構造のため、完全な平面とすることはできない。そのため、ザグリ穴800のザグリの深さを適切に調整し、設置面Xが、平面に近く、固定ボルト700の頭部710とザグリにより生じる溝とが排気抵抗とならないようにする。
こうすることで、固定ボルト700の頭部710が、排気抵抗となり、真空ポンプの排気性能に影響を与えることを防止できる。
連結型ネジ溝スペーサ20の排気流路部を通過する排気ガスは、内側(内径側)の壁面を伝って流れる性質がある。よって、固定ボルト700の配置位置は、外側の壁面近く、すなわち、半径方向外側(回転中心から離れる方向)が望ましい。
このような位置に固定ボルト700を配置することで、真空ポンプ1の排気性能に影響を与えることをより防止できる。
そのため、固定ボルト700を熱源(カートリッジ型ヒータ900)からの熱を受け易い場所に配置する。
また、固定ボルト700は、連結型ネジ溝スペーサ20と全面で接触しているわけではないので、他の箇所より低温となる虞がある。そのため、可能な限り熱伝導性が優れた材料であることが望ましい。
具体的な材料として、SUSやアルミニウムをあげることができる。固定ボルト700の材料は、現実に市販されているものに限らず、熱伝導に優れた金属から選択するようにしてもよい。具体的には、鉄系のボルトよりも熱伝導に優れた金属、例えばアルミニウム製のボルトが好ましい。
また、ザグリ穴800の径を固定ボルト700に対する規定の径よりも小さくすることで、固定ボルト700の頭部710の径との隙間を低減させる。こうすることによっても、ザグリした部分における排気ガスのガス分子の移動抵抗を低減することができる。
次に、図7を参照して本実施形態の変形例を説明する。
図7は、設置した固定ボルト700の上部をキャップ550で覆う本実施形態の変形例を示した図である。
上記したように、固定ボルト700に、六角穴のボルトを用いると、連結型ネジ溝スペーサ20の排気流路部に六角の穴が露出したままになる。そして、その六角の穴に排気ガスのガス分子が滞留したり、排気の抵抗となることが考えられる。
そこで、固定ボルト700の頭部710をキャップ550で覆うようにしている。このキャップ550を配置するために、ザグリ穴800は、予め若干大きめにしておく。
このキャップ550は、周囲より低温となることを防止するため、熱伝導性の優れた金属を材料とすることが望ましい。
なお、本発明の実施形態および各実施形態は、必要に応じて組み合わせる構成にしても良い。
2 ケーシング
3 ベース
4 吸気口
5 フランジ部
6 排気口
7 シャフト
8 ロータ
9 回転翼
10 ロータ円筒部
20 連結型ネジ溝スペーサ
50 固定翼
80 ステータコラム
201 ネジ溝スペーサ軸垂直部
202 ネジ溝スペーサ軸平行部
300 垂直部山部
400 垂直部谷部
500 平行部山部
550 キャップ
600 平行部谷部
700 固定ボルト
710 頭部
800 ザグリ穴
900 カートリッジ型ヒータ
910 ボルト
X 設置面
1001 従来の真空ポンプ
2001 従来の1Passネジ溝スペーサ
Claims (4)
- 吸気口または排気口が形成された外装体と、前記外装体に内包される固定部品と、配設される固定円板または配設される回転円板の少なくともいずれか一方に、山部と谷部を有するスパイラル状溝が刻設されるシグバーンポンプ部と、ネジ溝ポンプ部とを有する真空ポンプにおいて、
前記シグバーンポンプ部と、前記ネジ溝ポンプ部とを連結させる構造を有する連結型ネジ溝スペーサを備え、
前記連結型ネジ溝スペーサにおける前記シグバーンポンプ部の前記谷部の排気流路面にザグリ穴を設け、該ザグリ穴に配置された固定ボルトにより、前記連結型ネジ溝スペーサと前記外装体または前記固定部品を締結したことを特徴とする真空ポンプ。 - 前記ザグリ穴は、前記シグバーンポンプ部の前記谷部の半径方向外側に位置する前記排気流路面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の真空ポンプ。
- 前記ザグリ穴に配置された前記固定ボルトは、上部をキャップで覆われていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の真空ポンプ。
- 吸気口または排気口が形成された外装体と、前記外装体に内包される固定部品と、配設される固定円板または配設される回転円板の少なくともいずれか一方に、山部と谷部を有するスパイラル状溝が刻設されるシグバーンポンプ部と、ネジ溝ポンプ部とを有する真空ポンプに用いられる連結型ネジ溝スペーサであって、
前記連結型ネジ溝スペーサは、前記シグバーンポンプ部と、前記ネジ溝ポンプ部とを連結させる構造を有し、
前記連結型ネジ溝スペーサにおける前記シグバーンポンプ部の前記谷部の排気流路面に固定ボルトのためのザグリ穴が設けられており、前記固定ボルトにより、前記外装体または前記固定部品と締結されることを特徴とする連結型ネジ溝スペーサ。
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