JP4419026B2 - マルチピースゴルフボール及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多層構造のマルチピースゴルフボール、及びその製造方法に関するものである。
近年、ゴルフボールは、高い反発性及び打撃時のソフトフィーリングを兼ね備えた種々のものが提案されており、その一種にボールを複数の層で構成する多層構造のマルチピースゴルフボールがある。一般に、多層構造のゴルフボール、特に3層構造以上のゴルフボールでは、剛性の高いコアに、比較的剛性の低い中間層を被覆し、その外側を硬質のカバーで覆うことにより、コアの剛性と中間層の軟質性とを生かして、高反発性と打撃時のソフトフィーリングとを両立させようとしている。このようなマルチピースゴルフボールとしては、例えば特許文献1に記載のものがある。
特公平3−52310号公報
しかしながら、このような従来の多層構造のゴルフボールであっても、打撃時のソフトフィーリングは必ずしも十分ではなく、さらに良好なソフトフィーリングが要求されている。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、十分なソフトフィーリングと高反発性能を有するマルチピースゴルフボール及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係るマルチピースゴルフボールは、コア、中間層、及びカバーを備えたマルチピースゴルフボールであって、前記コアは、球状の本体部と、この本体部上に形成される複数のリブとを備え、前記中間層は、前記リブによって囲まれる凹陥部に充填され、前記リブとほぼ同じ高さの層厚を有し、前記リブは、その幅が前記カバー側からコア側にいくにしたがって増大するように延びており、前記凹陥部は、前記リブの側面によって錐体状に形成され、前記中間層の硬度は、前記コアの硬度よりも低くなっている。
この構成によれば、コアが複数のリブを備え、中間層はこのリブによって囲まれる凹陥部に充填されている。そして、リブは、その幅がコアの本体部に近づくにしたがって大きくなるように延びており、これによって凹陥部が錐体状に形成されている。そのため、本体部とカバーとの間の領域では、カバーから本体部にいくにしたがって、コアと同心の球面におけるリブの占める割合が大きくなる。すなわち、カバーの近傍では中間層の割合が大きい一方、本体部に近づくにつれてリブの割合が大きくなるため、本体部とカバーとの間に2つの性質が徐々に変化する傾斜機能を持たせることができる。
ここで、本発明では、コアの硬度が、中間層の硬度より高くなっているため、カバーから本体部にいくにしたがってボールの硬度は徐々に高くなっていく。そのため、打撃の初期にはソフトフィーリングとしての性質が大きく反映されつつ、打撃が進むにしたがって反発性能が高くなる。したがって、本発明に係るマルチピースゴルフボールによれば、このような相反する性質が打撃中にスムーズに変化するため、良好なソフトフィーリングが得られつつ、高い反発性能を得ることもでき、ボールの性能のバランスを向上することができる。
また、上記のようにコアの硬度を、中間層の硬度より高いものとすると、硬度の高いリブに囲まれた凹陥部に、硬度の低い中間層が充填されているため、打撃時における中間層の球面方向の変形がリブによって制限される。そのため、ボールに付与された打撃力が球面方向に分散するのを防止することができ、打撃力を高い効率でボールの中心方向へ伝達することができる。その結果、ソフトな打球感を得ることができるにも関わらず、大きい飛距離を得ることができる。
なお、本発明でいう「錐体状」とは、凹陥部がリブの側面によって囲まれて錐体状の領域を形成し、この領域がコアと同心の球面によって切り取られる面分の面積が、カバーからコアにいくにしたがって小さくなるような形状を意味している。この場合、上記面分の形状は特には限定されず、多角形状であっても円形状であってもよい。また、凹陥部はリブのみによって囲まれて錐体状に形成されている場合もあるし、その奥端部から本体部が露出しリブの側面と本体部とによって錐体状に形成される場合もある。本体部が外部に露出しない場合であっても、本発明におけるコアは、球状の本体部に基づいてリブが配置されるように設計される。なお、本体部が露出している場合であっても、その露出する部分は少なく、全体としては錐体状に形成される。
また、上記のゴルフボールにおいては、リブの高さを4.6〜11.2mmにすることが好ましい。このようにすると、本体部とカバーとの間の領域、つまりリブ及び中間層の径方向に占める領域が大きくなり、上記したソフトフィーリングと高反発性能とのバランスが向上する。すなわち、打撃時のフィーリングが適度に柔らかくなり、しかも大きい飛距離を得ることができる。この場合、本体部の直径が小さくなるため、コアを成型しやすくなるという利点もある。つまり、従来はコアの径が大きいと、例えばコアがゴム組成物で形成されている場合、その中心まで十分に加硫することが困難であり、コアの硬度が径方向においてばらつくということがあった。これに対して、上記のようにコアの本体部の直径が比較的小さいと、コアをその中心まで十分に加硫することが可能となり、硬度が均一なコアを成型することができる。
上記ゴルフボールにおいて、コアに設けられるリブは種々の態様にすることができる。例えば、リブが、本体部上で相互に直交する3つの大円に沿って延びるように構成することができる。このようにすると、 コアの表面でリブの占める割合が比較的小さくなり、中間層の領域が大きくなる。したがって、 クラブが中間層に当たりやすくなり、ソフトフィーリングを得やすくなる。
また、各リブが、隣接する凹陥部間を連通する少なくとも1つの切欠部を備えるようにすることができる。このように、リブに切欠部を形成すると、製造時に次のような利点がある。例えば、コアを形成した後、これを中間層用の材料とともに成形型に挿入しプレス成形する場合において、本発明に係るゴルフボールでは、隣接する凹陥部が切欠部の箇所で互いに連通しているため、プレス成形を行うと、中間層用の材料は切欠部を介して各凹陥部に行き渡る。したがって、各凹陥部にそれぞれ中間層用の材料を直接充填する必要がなく、製造設備の簡素化及び製造時間の短縮が可能となる。また、射出成形により中間層を形成する場合にも、1つまたは少数のゲートで中間層を形成することができ、設備コストを低減することもできる。
ここで、各リブが、本体部上で相互に直交する3つの大円に沿って延びており、大円の交点を通る前記コアの法線と垂直な平面によって、リブを切り取ることで、大円の交点を共有する4つの凹陥部を連通させる切欠部が形成されるようにすることができる。このようにすると、 切欠部がコアの法線に対して90°をなすため、 この角度が抜き勾配を形成し、例えば上型及び下型の2つの成形型でコアを成形するときに、コアを成形型から抜き出しやすくなる。
また、前記各リブが、本体部上に描かれ相互に直交する3つの大円に沿ってそれぞれ延び、各大円の交点で区切られたリブの各円弧セクションに前記切欠部が形成され、該切欠部が、前記大円の交点を通る前記コアの法線上の一点から前記円弧セクションに沿って延びる面を有し、当該面が、前記法線に対し90°以上の角度をなしていることが好ましい。こうすることで、前記面が法線に対して90°以上の角度をなしているため、この角度が抜き勾配を形成し、上記と同様に、 例えば上型及び下型の2つの成形型でコアを成形するときに、コアを成形型から抜き出しやすくなる。
また、隣接する凹陥部を連通させるという観点からは、切欠部を、円弧セクションにおける円弧方向の中間部に形成することもできる。このとき、切欠部が、各円弧セクションにおける円弧方向の中心点を通る本体部の法線上の一点から前記交点側へそれぞれ延びる2つの面を有しており、これら各面と前記法線とのなす角が45〜48度であることが好ましい。このようにすると、前記各面と法線とのなす角が抜き勾配となり、成形型からコアを抜き出しやすくなる。
また、本発明に係るマルチピースゴルフボールの製造方法は、コア、中間層、及びカバーを備えたマルチピースゴルフボールの製造方法であって、球状の壁面を有する基部、及び前記基部の壁面に沿って形成され当該壁面からの深さが略同一で、しかも深くなるにしたがって幅が狭くなる複数の溝を有するキャビティを備え、前記溝部によって囲まれる隆起部が錐体状に形成されている第1の成形型を準備する工程と、前記第1の成形型のキャビティにコア用の材料を充填し、複数のリブを備えたコアを成形する工程と、前記コアの最外径に対応する球状のキャビティを有する第2の成形型を準備する工程と、前記第1の成形型から取り出したコアを前記第2の成形型のキャビティに配置し、前記リブによって囲まれた凹陥部に前記中間層用の材料を充填して前記コアよりも硬度の低い中間層を形成する工程と、前記中間層上にカバーを形成する工程とを備えている。
この製造方法によれば、上記のようにカバーとコアとの間の領域に傾斜機能を持たせた高性能なマルチピースゴルフボールを製造することができる。また、第2の成形型において、キャビティがコアの最外径に対応しているので、リブがキャビティの壁面に当接した状態で中間層が充填される。したがって、コアの芯出しを容易に行うことができ、各層の中心を正確に、しかも確実に一致させることもできる。
上記製造方法では、第1の成形型におけるキャビティが、基部の直交する3つの大円に沿って延びていることが好ましい。
また、第1の成形型においてキャビティを構成する溝の少なくとも一部には、他の部分より浅い部分が形成されていることが好ましく、こうすることで、この浅い部分が切欠部を形成するため、中間層を形成する工程において、その材料を各凹陥部に容易に行き渡らせることができる。
また、第1の成形型においてキャビティを構成する溝の基部からの深さを、4.6〜11.2mmにすると、リブの高さが高くなり、上記のようなソフトフィーリングと高反発性能とをバランス良く備えたゴルフボールを製造することができる。また、コアがゴム組成物で形成される場合、その中心まで十分に加硫することができるため、中心付近の硬度が低下することなく、全体として硬度のバラツキのないコアを成型することができる。
本発明に係るゴルフボールの一実施形態を示す断面図である。 図1のゴルフボールのコア(a)、及びコア及び中間層からなる半成品(b)を示す斜視図である。 図1のゴルフボールのコアの他の例を示す斜視図である。 図3に示すコアの断面図である。 図3に示すコアの他の例を示す一部断面図である。 図3に示すコアの他の例を示す断面図である。 図2に示すコアの他の例を示す斜視図及び正面図である。 図3に示すコアを有するゴルフボールの製造方法を示す図である。 図3に示すコアを有するゴルフボールの製造方法を示す図である。 図7に示すゴルフボールの製造方法の他の例を示す図である。
符号の説明
1 ゴルフボール
3 コア
31 本体部
32 リブ
321 切欠部
5 中間層
7 カバー
以下、本発明に係るマルチピースゴルフボールの一実施形態を図面を参照して説明する。図1は本実施形態に係るゴルフボールの断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るゴルフボール1は、コア3を中間層5及びカバー7で被覆したいわゆるスリーピースゴルフボールである。ゴルフボールの直径は、規則(R&A、及びUSGA参照)の定めるところにより、42.67mm以上にする必要がある。但し、空力特性等を考慮するとボール径はできるだけ小さくすることが好ましく、例えば42.7〜43.7mmとすることができる。
図2は、コア(a)、及びコアに中間層を被覆した半成品(b)を示す斜視図である。図2(a)に示すように、コア3は、ゴム組成物で形成され、球状の本体部31と、その表面に形成される3つのリブ32とを備えている。本体部31の直径は15.0〜32.0mmにすることが好ましく、17.8〜29.6mmにすることがさらに好ましい。
また、上記各リブ32は、本体部31の表面に描かれ相互に直交する大円に沿って延びている。そして、これらリブ32によって本体部31の表面には8個の凹陥部33が形成されている。リブ32の高さは、4.6〜11.2mmであることが好ましく、5.4〜10.2mmであることがさらに好ましく、7.2〜8.8mmにすることが特に好ましい。このようにすると、後述する傾斜機能領域の径方向の長さを適切なものとすることができる。すなわち、上記リブ32は、これ以外の長さにすることも可能ではあるが、例えば、4.6mmより低くなると、十分な傾斜機能を付与することができなくなり、ソフトフィーリングが得られにくくなる傾向にある。一方、11.2mmより大きくなると後述するように柔らかい領域が多すぎて反発性能が低下するとともに、製造時にリブが折れ曲がるおそれがある。
また、図1に示すように、各リブ32は、本体部31側にいくにしたがってその幅が増大するように断面台形状に形成されている。リブ32の径方向外方の上端部の幅aは1.5〜3.0mmにすることが好ましく、またリブ32の径方向内方の下端部の幅bは5〜12mmにすることが好ましい。このようにリブ32の各端部の下限を設定すると、後述するように、製造時に中間層用の材料を充填する際に、成形型を締めるときの圧力からくる材料の充填圧によってリブ32が変形するのを防止することができる。その結果、本体部31を成形型の中心に正確に保持することができる。また、上記のようにリブ32の各端部の上限を設定することにより、硬度の高いリブ32とカバー7内面とが接する部分が広くなりすぎず、打撃時のソフトフィーリングを適度に保つことができる。
このようなリブ32の形状によって、各凹陥部33は3つのリブ32と、僅かに露出する本体部31の表面とによって囲まれる三角錐状に形成されている。
このように形成されたコア3は、基材ゴム、架橋材、不飽和カルボン酸の金属塩、充填剤等を配合した公知のゴム組成物で製造することができる。基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリイソブレンゴム、スチレンブタジエンゴム、EPDM等を使用できるが、シス1,4結合を少なくとも40%以上、好ましくは80%以上を有するハイシスポリブタジエンを使用することが特に好ましい。
架橋剤としては、例えばジクミルパーオキサイドやt−ブチルパーオキサイドのような有機過酸化物を使用することができるが、ジクミルパーオキサイドを使用するのが特に好ましい。配合量は、基材ゴム100重量部に対して0.3〜5重量部であり、好ましくは0.5〜2重量部である。
不飽和カルボン酸の金属塩としては、アクリル酸又はメタクリル酸のような炭素数3〜8の一価又は二価の不飽和カルボン酸の金属塩を使用することが好ましいが、アクリル酸亜鉛を使用するとボールの反発性能を向上することができ、特に好ましい。配合量は、基材ゴム100重量部に対して10〜40重量部にするのが好ましい。充填剤は、コアに通常配合されるものを使用することができ、例えば酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を使用することができる。配合量は、基材ゴム100重量部に対して2〜50重量部にするのが好ましい。また、必要に応じて老化防止剤、またはしゃく解剤等を配合してもよい。
なお、コア3を構成する材料は、上記ゴム組成物の他、公知のエラストマーを用いることができる。以上のような材料からなるコアの硬度は、例えばショアD硬度48〜58であることが好ましい。
図1に示すように、中間層5は、リブ32の高さとほぼ同じ層厚を有し、リブ32によって囲まれる8つの凹陥部33に充填されてその外形が略球形をなしている。このとき、中間層5は、各凹陥部33に充填されることにより三角錐状に形成されている。また、図2(b)に示すように、リブ32の上端面は中間層5から露出した状態になっている。なお、中間層5の硬度は、コア3よりも低くなっており、例えばショアD硬度35〜50であることが好ましい。また、コア3の硬度と中間層5の硬度との差(ショアD硬度)は、2〜10であることが好ましく、4〜8であることがさらに好ましい。
中間層5は、コア3とほぼ同様の成分のゴム組成物またはエラストマーで構成することができる。但し、ゴム組成物で構成する場合には、コア3より硬度を下げるため、不飽和カルボン酸および有機過酸化物の配合量を少なくすることが好ましい。
また、中間層5をエラストマーで構成する場合には、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)のようなスチレン系熱可塑性エラストマー;ポリエチレンまたはポリプロピレンをハードセグメントとし、ブタジエンゴムまたはエチレン・プロピレンゴムをソフトセグメントとするオレフィン系熱可塑性エラストマー;結晶ポリ塩化ビニルをハードセグメントとし、非晶ポリ塩化ビニルまたはアクリロニトリル・ブタジエンゴムをソフトセグメントとする塩化ビニル系熱可塑性エラストマー;ポリウレタンをハードセグメントとし、ポリエーテルまたはポリエステルをソフトセグメントとするウレタン系熱可塑性エラストマー;ポリエステルをハードセグメントとし、ポリエーテルまたはポリエステルをソフトセグメントとするポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリアミドをハードセグメントとし、ポリエーテルまたはポリエステルをソフトセグメントとするアミド系熱可塑性エラストマー;アイオノマー樹脂などを使用することができる。
図1に示すように、カバー7は、リブ32の上端面と中間層5とを覆うとともに、その表面には図示を省略する所定のディンプルが形成されている。カバー7の層厚は0.8〜2.6mmとするのが好ましく、1.2〜2.2mmとするのがさらに好ましい。カバー7の層厚はこれ以外にすることも可能であるが、層厚が0.8mmより小さくなると、カバーの耐久性が低下するとともに成形が困難になる傾向にある一方、2.6mmを超えると打感が硬くなりやすいからである。また、その硬度はショアD硬度52〜68とするのが好ましい。このカバー7は公知のエラストマーで構成され、上記中間層5と同じものを使用することができる。なお、カバー7の層厚とは、ディンプルが形成されていない径方向の最も外側の任意の一点から、中間層と接する任意の一点までの距離を法線に沿って計測した値である。
以上のように構成されたゴルフボール1は、コア3の表面に3本のリブ32を備え、中間層5がこのリブ32によって囲まれる8つの凹陥部33に充填されている。そのため、コア3の本体部31とカバー7との間の領域では、カバー7から本体部31にいくにしたがって、本体部31と同心の球面におけるリブ32の占める割合が大きくなる。すなわち、図1に示すように、カバー7の近傍では中間層5の割合R2が大きい一方、本体部31に近づくにつれてリブ32の割合R1が大きくなる。ここで、本実施形態に係るマルチピースゴルフボールでは、リブ32の硬度が中間層5の硬度よりも大きいため、カバー7付近では中間層5の性質が強く反映されて柔らかくなり、本体部31に近づくにつれて徐々にリブ32の性質が強く反映されて硬くなる。そのため、カバー9付近では中間層5の硬度が低いため打撃の初期にはソフトフィーリングを得ることができ、打撃が進むにしたがって硬度が高くなって高い反発性能を得ることができる。このように、本実施形態に係るゴルフボール1は、カバー7と本体部31との間の領域は硬度がスムーズに変化する傾斜機能を有しているため、良好なソフトフィーリングと高反発性能とをバランス良く兼ね備えることができる。
さらに、このような構成にすると、硬度の高いリブ32に囲まれた凹陥部33に、硬度に低い中間層5が充填されているため、打撃時における中間層5の球面方向の変形がリブ32によって制限される。そのため、ボールに付与された打撃力が球面方向に分散するのを防止することができ、打撃力を高い効率でボールの中心方向へ伝達することができる。その結果、ソフトな打球感を得ることができるにも関わらず、大きい飛距離を得ることができる。
特に、ドライバーでの打撃のように打撃力がコアの中心方向に向いている場合には、コア3の中心に向かうにつれて、つまり打撃力の伝達方向に進むにつれて、中間層5の割合が小さくなるため、反発性能が高くなり、飛距離が大きくなる。一方、アイアンで打撃をした場合には、打撃力はボールの接線方向に大きく作用するが、このとき、ボールの表面に近い位置では、硬度の低い中間層5の割合が大きいので、打感が軟らかくなる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、リブ32を大円に沿って形成しているが、必ずしもこのようにする必要はなく、中間層5を充填可能な複数の凹陥部52が形成されていればよい。ただし、大円に沿って形成すると、コア3の表面においてリブ32の占める割合が小さくなる一方、中間層5の占める割合が大きくなるため、クラブが中間層5に当たりやすくなり、ソフトフィーリングが得やすくなるという利点がある。
また、図3に示すように、リブ32の一部に切欠部を形成することもできる。この例では、各リブ32は大円上の交点付近に切欠部321を有している。より詳細には、図4に示すように、切欠部321は、大円の交点Pを通る本体部31の法線nと垂直な平面Hに沿って延びる底面321aを有するように形成されている。つまり、この切欠部321は、平面Hによってリブ32が切り取られることによって形成されている。なお、この切欠部321の深さD、つまり切欠部321がない仮想的なリブ32の上端から切欠部321の最深部までの長さは、1.2〜2.4mmにすることが好ましい。
このように切欠部321を形成することにより、大円の交点Pを中心として配置される4つの凹陥部33が連通し、後述するように、中間層用の材料を切欠部321を介して各凹陥部33に容易に行き渡らせることができる。この場合、図5に示すように、平面Hからリブ11の中央側へ1〜3度傾斜した平面H、つまり本体部31の法線nと正面視において91〜93°の角度をなす平面に沿って切欠部321の底面321aを形成するようにしてもよい。このようにすると、上記傾斜が抜き勾配となり、例えば成形型が上型と下型の2つの型から構成されている場合に、コア3を成形型から容易に取り出すことができる。
また、リブ32において各交点Pによって区切られた各円弧セクションSの中間に切欠部を設けることもできる。すなわち、図6に示すように、円弧セクションSの円弧方向の中心点Qを通る本体部31の法線m上の一点から両端の交点P側へ延びる2つの底面322aを有するように切欠部322を形成することもできる。この場合、底面322aと法線mとが正面視で45〜48度をなすようにすることが好ましい。このようにすると、上記したように、コア3を成形型から容易に抜き出すことができる。
また、凹陥部はリブのみによって囲まれて錐体状に形成されている場合もあるし、その奥端部から本体部が露出しリブの側面と本体部とによって錐体状に形成される場合もある。リブの高さが低い場合には、本体部の露出部分が多くなり、図7に示すように、凹陥部が三角錐台状に形成されることもある。したがって、本発明の凹陥部の形状は、このような錐体台も含むものとする。
次に、上記のように構成されたゴルフボールの製造方法の一例を図面を参照して説明する。以下においては、中間層をゴム組成物で形成する場合の製造方法について説明する。図8及び図9は、図3に示すコアを有するスリーピースのゴルフボールの製造方法を示す図である。
まず、図8(a)に示す第1の成形型によってコアを形成する。この第1の成形型2は、上型2a及び下型2bから構成されており、それぞれに半球状の壁面を有する基部21と、この基部21の壁面に形成された溝22とからなるキャビティが形成されている。基部21は、上記本体部31と対応し、その壁面の内径が、15.0〜32.0mmとなっている。溝22は、上記リブ32を形成する部分であり、基部21壁面の大円に沿って形成されているが、3つの大円の各交点部分は他の部分に比べて浅くなっている。これにより上記した切欠部321が形成されるようになっている。また、溝22によって囲まれる隆起部は、溝の先端に行くにしたがって末広がりの三角錐状に形成されており、この隆起部によって上述した凹陥部が形成される。さらに、キャビティの表面は荒研磨により粗く仕上げられており、これによって成形されたリブ32の表面に微細な凹凸を形成することができ、中間層5との密着性を向上することができる。
そして、図8(b)に示すように、上記キャビティに未加硫のゴム組成物N1を配置し、例えば140〜165℃で6〜25分間全加硫してプレス成形を行い、コア3を形成する。このとき、コア3は上述のようにエラストマーによって構成してもよく、この場合、プレス成形の他、射出成形でコアを形成することができる。
続いて、コア3を第1の成形型2から取り出し、第2の成形型4内に配置する。図9(a)に示すように、この第2の成形型4は、上型4a及び下型4bからなり、これらは上記リブ31の最外径と対応する半球状のキャビティ41を備えている。すなわち、このキャビティ41の壁面にリブ32の上端面が接するようになっている。また、上型4a及び下型4bのキャビティ41は、第1の成形型2と同様に表面が粗く仕上げられるとともに、各キャビティ41の周囲には複数の凹状のバリを溜める部分42が形成されている。
そして、図9(a)に示すように、下型4bのキャビティ41に未加硫のゴム組成物N2を挿入するとともに、上記のように形成したコアの上部にゴム組成物N2を配置し、このコアを上型4a及び下型4bの間に配置する。続いて、図9(b)に示すように、上型4a及び下型4bを当接させ、ゴム組成物N2を140〜165℃で6〜25分間全加硫してプレス成形を行い、中間層5を形成する。
このとき、コア3の上部及び下型4aのキャビティ41に配置されたゴム組成物N2は、コア3の表面にプレスされながら、凹陥部33に充填されていく。上記したように隣接する各凹陥部33は切欠部321を介して連通しているため、ゴム組成物N2はすべての凹陥部52に行き渡り、均一に充填される。なお、第2の中間層5は、例えば図10に示すような成形型6を用いて、射出成形により成形することもできる。この場合、切欠部321がなければすべての凹陥部33に対してゲートを設けなければゴム組成物N2が均一に充填されないが、上記のようにリブ32に切欠部321を設けることにより、成形型6a,6bに半成品を挿入した後、1箇所のゲート61からゴム組成物を注入しても、上記と同様に切欠部321を介して各凹陥部33にゴム組成物が均一に充填される。
このように、リブ32に切欠部321が形成され、隣接する凹陥部33が切欠部321を介して連通しているため、ゴム組成物N2が半成品の表面のいずれの位置からプレスされても、すべての凹陥部33に行き渡って充填される。したがって、1工程のプレス成形で、中間層5を半成品に被覆することができ、その結果、製造時間を大幅に短縮することができる。なお、ここでは、中間層5をゴム組成物を用いて構成しているが、エラストマーを用いることもできる。このようにすると、射出成形によって中間層5を形成することができる。
こうして中間層5の成形が完了すると、コア3及び中間層5からなる半成品を第2の成形型4から取り出す。これに続いて、この半成品の表面に、カバー7をプレス成形或いは射出成形により所定のディンプルを備えた状態に被覆するとスリーピースゴルフボールを得ることができる。
なお、上記の説明では、切欠部が形成された中間層を有するゴルフボールの製造方法について説明したが、切欠部がないものもほぼ同様の方法で製造することができる。但し、切欠部がない場合には、各凹陥部に中間層が充填されるように材料を配置してプレス成形したり、射出成形の場合には各凹陥部に対応する複数のゲートを設ける必要がある。
以上のような製造方法によれば、第1の成形型2における基部21の内径が比較的小さいため、コア3の中心まで十分に加硫することができる。これにより、次の効果を得ることができる。例えば、コアの径が大きすぎると、その中心まで十分に加硫することができず、中心付近の硬度が低くなることがあった。これに対して、上記のような第1の成形型を用いて本体部の直径が比較的小さくなるようにすると、硬度のバラツキのないコア3を成形することができる。
また、第2の成形型4において、キャビティ41がリブ32の最外径に対応しているので、リブ32がキャビティ41の壁面に当接した状態で中間層用の材料が充填される。したがって、コア3の芯出しを容易に行うことができ、各層の中心を正確に、しかも確実に一致させることもできる。
以下、本発明の実施例及びこれと対比する比較例を示す。ここでは、本発明の実施例に係る8種類のゴルフボールと、比較例に係る2種類のゴルフボールとを比較する。実施例に係る各ゴルフボールは、図5に示すコアを有するものである。各実施例及び比較例のゴルフボールを構成する材料を表1に示す。
また、各実施例及び比較例に係るゴルフボールの中間層の厚さ(リブ有りの場合は、リブの高さと略同じ)、リブの有無、各部材の硬度を表2に示す。なお、各部材の硬度は、ショアD硬度で示している。
以上の実施例及び比較例に係るゴルフボールを用い、打撃ロボット(ミヤマエ株式会社製SHOT ROBO v)による1番ウッド(1W:ミズノ株式会社製ミズノMP−001、仕様:ロフト角度9.5°、シャフト長さ45インチ(114.3cm)、シャフト硬さS、ツアースピリットMPカーボンシャフト装着)及び5番ミドルアイアン(5I:ミズノ株式会社製T−ZOID・MX−15、ロフト角27°、長さ37.5インチ(95.25cm)、シャフト硬さS)を使用した打撃テストを行い飛距離(キャリー)を測定した。ここで、1番ウッドのヘッドスピードは45m/sとし、5番アイアンのヘッドスピードは35m/sとした。また、アマチュア10人による1Wでの実打フィーリング(打感)テストを行った。この実打フィーリングテストでは、被験者に5段階評価(1:柔らか、2:やや柔らか、3:普通、4:やや硬い、5:硬い)を行ってもらい、その平均値を各例のフィーリング値とした。結果は、表3に示す通りである。
表3から明らかなように、実施例1〜5は、いずれも良好な飛距離と実打フィーリング値を示している。実施例6は、コアの硬度と中間層の硬度との差が大きいために硬度バランスが若干悪くなっており、同様の形状を有する実施例1に比べて、飛距離が低下し、フィーリングは特にドライバー使用時において硬くなっている。実施例7は、コアの硬度が大きいため、飛距離は良好である一方、実施例1〜5に比べてフィーリングが硬くなっている。実施例8は、コアの硬度が小さいため、フィーリングは良好である一方、実施例1〜5に比べて飛距離が低下している。
これに対し、比較例1は、コアと中間層との硬度差がないため、中間層の変形をリブが効果的に受け止めていないと考えられ、その結果、同じ形状を有する実施例1と比較して、ドライバー使用時にはフィーリングが同程度であるにも拘わらず飛距離が低下しており、アイアン使用時には飛距離が同程度であるにも拘わらずフィーリングが硬くなっている。
また、比較例2は、リブが形成されていないことから、中間層の変形によって打撃力が球面方向に分散して、 打撃力にロスが生じていると考えられ、その結果、リブの有無以外は同一条件である実施例1と比較して、飛距離が低下している。
本発明によれば、十分なソフトフィーリングと高反発性能を有するマルチピースゴルフボール及びその製造方法を提供することができる。

Claims (11)

  1. コア、中間層、及びカバーを備えたマルチピースゴルフボールであって、
    前記コアは、球状の本体部と、この本体部上に形成される複数のリブとを備え、
    前記中間層は、前記リブによって囲まれる凹陥部に充填され、前記リブとほぼ同じ高さの層厚を有し、
    前記リブは、その幅が前記カバー側からコア側にいくにしたがって増大するように延びており、
    前記凹陥部は、前記リブの側面によって、前記カバーから本体部にいくにしたがって、前記中間層の占める割合が小さくなる錐体状に形成されるとともに、前記凹陥部を構成する前記リブの基端部によって、錐体状に形成された前記凹陥部の頂部が形成され、
    前記本体部の直径は、17.8〜29.6mmであり、
    前記中間層の硬度は、前記コアの硬度よりも低い、マルチピースゴルフボール。
  2. 前記リブの本体部からの高さは、4.6〜11.2mmである請求項1に記載のマルチピースゴルフボール。
  3. 前記各リブは、前記本体部上で相互に直交する3つの大円に沿って延びている、請求項1に記載のマルチピースゴルフボール。
  4. 前記各リブは、隣接する前記凹陥部間を連通する少なくとも1つの切欠部を備えている請求項1に記載のマルチピースゴルフボール。
  5. 前記各リブは、前記本体部上で相互に直交する3つの大円に沿って延びており、
    前記大円の交点を通る前記コアの法線と垂直な平面によって、前記リブを切り取ることで、前記大円の交点を共有する4つの凹陥部を連通させる切欠部が形成されている、請求項1に記載のマルチピースゴルフボール。
  6. 前記各リブは、前記本体部上で相互に直交する3つの大円に沿って延びており、
    前記各大円の交点で区切られた前記リブの各円弧セクションには前記切欠部が形成されており、
    当該切欠部は、前記大円の交点を通る前記コアの法線上の一点から前記円弧セクションに沿って延びる面を有し、当該面は、前記法線に対し90°以上の角度をなしている請求項1に記載のマルチピースゴルフボール。
  7. 前記リブは、前記コア上で相互に直交する3つの大円に沿って延び、
    前記各大円の交点で区切られた前記リブの各円弧セクションには前記切欠部が形成されており、
    当該切欠部は、前記円弧セクションにおける円弧方向の中間部に形成されるとともに、前記各円弧セクションにおける円弧方向の中心点を通る前記コアの法線上の一点から前記交点側へそれぞれ延びる2つの面を有しており、
    前記各面と前記法線とのなす角が45〜48°である請求項1に記載のマルチピースゴルフボール。
  8. コア、中間層、及びカバーを備えたマルチピースゴルフボールの製造方法であって、
    球状の壁面を有する基部、及び前記基部の壁面に沿って形成され当該壁面からの深さが略同一で、しかも深くなるにしたがって幅が狭くなる複数の溝を有するキャビティを備え、前記基部の内径が17.8〜29.6mmであり、前記溝部によって囲まれる隆起部が、前記溝の先端にいくにしたがって末広がりの錐体状に形成され、前記複数の溝の基端部の間に錐体状に形成された前記隆起部の頂部が形成されている第1の成形型を準備する工程と、
    前記第1の成形型のキャビティにコア用の材料を充填し、複数のリブを備えたコアを成形する工程と、
    前記コアの最外径に対応する球状のキャビティを有する第2の成形型を準備する工程と、
    前記第1の成形型から取り出したコアを前記第2の成形型のキャビティに配置し、前記リブによって囲まれた凹陥部に前記中間層用の材料を充填して前記コアよりも硬度の低い中間層を形成する工程と、
    前記中間層上にカバーを形成する工程と
    を備えていることを特徴とするマルチピースゴルフボールの製造方法。
  9. 前記第1の成形型におけるキャビティは、前記基部の直交する3つの大円に沿って延びている、請求項8に記載のマルチピースゴルフボールの製造方法。
  10. 前記第1の成形型においてキャビティを構成する溝の少なくとも一部には、他の部分より浅い部分が形成されている請求項8に記載のマルチピースゴルフボールの製造方法。
  11. 前記第1の成形型においてキャビティを構成する溝の前記基部からの深さは、4.6〜11.2mmである請求項8に記載のマルチピースゴルフボールの製造方法。
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