(第1実施形態)
本発明に係るゴルフボールの第1実施形態を、図面を参照して説明する。図1は本実施形態に係るゴルフボールの断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るゴルフボールは、最内層の球状のコア1を、中間層(中間体)5及びカバー7で被覆したいわゆるスリーピースのゴルフボールである。カバー7とは、後述するディンプル(図示せず)を有する最外層を指している。ゴルフボールの直径は、規則(R&A及びUSGAを参照)の定めるところにより、42.67mm以上にする必要がある。但し、空力特性等を考慮するとボール径はできるだけ小さくすることが好ましく、例えば42.7〜43.7mmとすることができる。
コア1は、本実施形態では球状に形成され、ゴム組成物で形成されている。コア1と中間層5の比重差を付け、ボールの慣性モーメントを効果的に低減せしめるには、コア1の径が小さい方が良い。一方で、コア1があまりに小さすぎると、生産時の不良が起き易くなる、或いは、コア1に比重が非常に大きな材料を用意する必要があるなどの問題が生じる。従って、コア1の直径は、15〜32mmにすることが好ましく、20〜25mmにすることがさらに好ましい。また、内軟外硬構造としては、その硬度差を大きくつけた方が、その効果をより効果的に発現せしめることとなるので、コア1の硬度は可能な範囲で許される限り柔らかい方が良い。従って、コア1の表面の硬度は、例えばJIS−C硬度で25〜85であることが好ましいが、柔らかい材料を用いると反発の低下も無視できなくなることから、50〜80であることがさらに好ましい。
中間層5は、ゴム組成物又はエラストマーで構成されている。中間層5の層厚は、ボールのサイズをルールに適合させる意図から、コア1の直径とカバー7の厚みにより決まるもので、2.3〜13mmにすることが好ましく、2.3〜9mmにすることがさらに好ましい。また、内軟外硬構造としては、その硬度差を大きくつけた方が、その効果をより効果的に発現せしめることとなるので、中間層5の表面の硬度は、可能な範囲で許される限り硬い方が良い。従って、中間層5の表面硬度は、コア1よりも大きくなっており、JIS−C硬度で35〜100であることが好ましく、60〜100であることがより好ましいが、JIS−C硬度でコア1の硬度よりも10以上大きいことがさらに好ましく、17以上大きいことがさらに好ましい。これは、例えば中間体をゴム組成物にて成型した場合において、単一層とした構造においても、中間体の表面と内部に、内部の硬度の方が柔らかいという、ある程度の意図しない硬度差が生じる場合が見受けられるからである。
カバー7は、エラストマーで構成されている。そして、その表面には、図示を省略するが、所定形状のディンプルが形成されている。カバー7の層厚は0.5〜2.6mmとするのが好ましく、1.6〜2.0mmとするのがさらに好ましい。この範囲外も可能ではあるが、その理由は、カバー7の層厚が0.8mmより小さくなると、カバー7の耐久性が著しく低下するとともに成形が困難になる一方、2.6mmを越えると打感が硬くなり過ぎるからである。また、その表面の硬度はJIS−C硬度で60〜100であるのが好ましく、70〜100であることがさらに好ましい。なお、カバー7の層厚とは、ディンプルが形成されていない径方向の最も外側の任意の一点から、中間層5と接する任意の一点までの距離を法線に沿って計測した値である。
なお、本実施形態においては、カバー7を単一層としているが、アウターカバー、及びインナーカバーよりなるダブルカバー構造、あるいはそれ以上の複数層カバー構造としてもよい。ここで、カバー材料の比重調整を行わなければ、カバーに一般的に利用される樹脂比重は0.97〜1.15程度である。慣性モーメントを低減せしめるには、0.97程度の比重の材料である、アイオノマーを使用するほうが好ましく、この場合、複数カバーの採用によるカバー厚の増加があっても、本発明の作用効果に影響は与えない。
上述した硬度は、次のように測定することができる。まず、ボールを2分割する。そして、各部材の表面、つまり他の部材との界面から約1mm内側において硬度を測定する。カバーについては、表面においてディンプルとディンプルの間の硬度を測定する。部材の層厚が1mm未満の場合はその中間を測定する。また、計測値のバラツキを考慮して、少なくとも5箇所以上でなるべく等間隔に離して計測しその平均値とした方が、望ましい。なお、測定機器としては、例えばASKER CL−150(高分子計器株式会社製)を用いることができ、この場合、ボールが針の重みでずれないようしっかりと固定したうえで測定を行なう。
また、コア1、中間層5、及びカバー7の比重は、次のように調整される。まず、コア1の比重は、中間層5よりも大きくなっている。ここで、コアの比重は本発明の主旨からは可能な限り大きければ良いのだが、比重を高める為にゴム或いはエラストマーに高比重の充填剤を多量に添加することが必要となる。この高比重の充填剤の添加量が増えすぎると、コア1の反発が低下するという問題が生じる為、例えば、コア1の比重は、1.35〜3.75にするが好ましく、1.5〜2.55にすることがさらに好ましい。中間層5の比重は、ボールの重量をルールに適合させる意図から、コア1の重量とカバー7の重量とにより自ずと決まるものなので、コア1よりも低く、0.9〜1.11にすることが好ましく、0.95〜1.11にすることがさらに好ましい。このようにすると、後述するように、ボールの中心付近の重量が径方向外側付近の重量に比べて重くなるため、ボールの慣性モーメントを低くすることができる。また、カバー7の比重は少なくともコア1よりも小さいことが好ましいが、中間層5と同等にすることもできる。よって、本発明の主旨から、ボールの慣性モーメントとしては可能な限り小さければ好ましいが、前述のとおりの比重の材料と、径或いは厚みを用いれば、例えば、69〜79が好ましく、69〜77.5であることがさらに好ましいこととなる。
次に、上記ゴルフボールの各部材を構成する材料について詳細に説明する。
コア1は、基材ゴム、架橋材、不飽和カルボン酸の金属塩、充填剤等を配合した公知のゴム組成物で製造することができる。基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、EPDM等を使用できるが、シス1,4結合を少なくとも40%以上、好ましくは80%以上を有するハイシスポリブタジエンを使用することが特に好ましい。
架橋剤としては、例えばジクミルパーオキサイドやt−ブチルパーオキサイドのような有機過酸化物を使用することができるが、ジクミルパーオキサイドを使用するのが特に好ましい。配合量は、基材ゴム100重量部に対して0.3〜5重量部であり、好ましくは0.5〜2重量部である。
不飽和カルボン酸の金属塩としては、アクリル酸又はメタクリル酸のような炭素数3〜8の一価又は二価の不飽和カルボン酸の金属塩を使用することが好ましいが、アクリル酸亜鉛を使用するとボールの反発性能を向上することができ、特に好ましい。配合量は、基材ゴム100重量部に対して1〜50重量部にするのが好ましい。
充填剤は、コア1に通常配合されるものを使用することができ、例えば酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を使用することができる。上記のようにコア1の比重を大きくするためには、特に、酸化亜鉛、硫酸バリウムを用いることが好ましい。その他、高比重の充填剤も使用することができる。配合量は、基材ゴム100重量部に対して例えば酸化亜鉛を用いた場合、80重量部以上とすることができるが、ミキサー、ロール等で混練可能なできるだけ多くの量にすることができる。また、必要に応じて老化防止剤、またはしゃく解剤、軟化材等を配合してもよい。このような充填剤を添加することで、コア1の比重を向上することができる。また、コアを上述したゴムで形成する場合、充填材を高比重フィラーに入れ替えることも可能である。
なお、コア1を構成する材料は、上記ゴム組成物の他、公知のエラストマーを用いることができる。
中間層5は、ゴム組成物またはエラストマー等で構成されており、ゴム組成物で形成する場合には、上記したコア1と同様の材料で構成することができる。但し、本実施形態においては、不飽和カルボン酸や有機過酸化物の配合量をコア1の場合と異ならせる等して、コア1の硬度と中間層5の硬度とが異なるように設定される。例えば、中間層5における不飽和カルボン酸および有機過酸化物の配合量を多くすることにより、中間層5の硬度をコア1の硬度よりも高くすることができる。
中間層5をエラストマーで構成する場合には、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)のようなスチレン系熱可塑性エラストマー;ポリエチレンまたはポリプロピレンをハードセグメントとし、ブタジエンゴム、アクリルニトリルブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴムをソフトセグメントとするオレフィン系熱可塑性エラストマー;結晶ポリ塩化ビニルをハードセグメントとし、非晶ポリ塩化ビニルまたはアクリロニトリル・ブタジエンゴムをソフトセグメントとする塩化ビニル系熱可塑性エラストマー;ポリウレタンをハードセグメントとし、ポリエーテルまたはポリエステルをソフトセグメントとするウレタン系熱可塑性エラストマー;ポリエステルをハードセグメントとし、ポリエーテルまたはポリエステルをソフトセグメントとするポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリアミドをハードセグメントとし、ポリエーテルまたはポリエステルをソフトセグメントとするポリアミド系熱可塑性エラストマー;アイオノマー樹脂などを使用することができる。また、中間層5の比重を低下させるには、例えば、発泡剤を用いることができ、これにより、比重を1.1以下にすることができる。
カバー7は、公知のエラストマーで構成され、上記中間層5と同じものを使用することができる。
以上のように、本実施形態によれば、中間層5の硬度がコア1の硬度よりも大きいこと、及び、中間層5の比重がコア1の比重よりも低いことから、次の効果を得ることができる。以下では、図2から図4を用いて作用効果のメカニズムを説明するが、各図においては便宜上、カバーを省略している。
一般的に、ゴルフクラブによる打撃を行った場合、図2に示すように、ボールが瞬時に変形すると同時に、クラブフェース面Sの法線方向Nに作用する力Yと、クラブフェース面Sに平行な方向V(ボールの接線方向)に作用する力(摩擦力X)とに分けられる打撃力Fが生み出される。摩擦力Xはボールのバックスピンに関連付けられ、先の2つの力の合力Fの水平線とのなす角度が、ボールの飛び出し角度αと関連付けられる。ボールの変形が少ないショットの場合、打撃力は、フェースの表層で受け止めることとなり、結果ボールとフェースとの摩擦力Xが大きくなり、バックスピンを増大させる効果となる。また、摩擦力Xが大きい為、フェース面法線方向Nに作用する力との合力が下向きに振られ飛び出し角αを下げる効果となる。反対に、ボールの変形が大きいショットの場合での打撃力は、ボールがフェースに張り付くような格好となって、摩擦力Xは小さくなりバックスピンを減少させる効果となる。また、変形の少ない場合とは反対に飛び出し角を高める効果となる。
加えて、図3に示すように、ボールは打撃により生じるクラブフェース面Sとの摩擦により、周方向に捩れた状態となる。このボールがクラブフェース面Sから離れる過程においては、コアの弾性力により捩れた状態から元に戻ろうとする作用(捩れ戻り作用)が働く。このとき発生するコアが元に戻ろうとする力(捩れ戻り力)Kは、バックスピンBとは正反対の向きであることから、ボールに生じるスピン量を低減させることになる。この捩れ戻り力Kは、打撃時のボールの変形が大きいほど大きくなる。また、捩れ戻り力Kの上向きの力が作用することとなるので、ボールの飛び出し角も大きくなる。この効果は、ボールの変形により生み出されるものなので、変形の大きいドライバーショットでは大きく作用し、変形の少ないウェッジショットでは少なくなる。
ここで、ドライバーショットにて、ボールを高い飛び出し角と少ないバックスピンで飛び出させる為に、本発明のようにコアの硬度が中間体の硬度よりも低い内軟外硬構造であると、ボールのクラブとの接触時間が長く持続して、上記捩れ戻り作用が働く時間が増長される。その結果、ボールがクラブから離れるまでにボールに生じるスピン量が低減される。また、捩れ戻り力Kの上向きの力が上記理由により長い時間作用することとなるので、ボールの飛び出し角も大きくなる。
加えて、本発明に係るゴルフボールでは、コアの比重が中間体において少なくとも最も外側にある層の比重よりも大きいため、ボールの慣性モーメントを低くすることができる。ボールの慣性モーメントを低くすることで、捩れ戻り方向への回転が掛かり易くなるので、内軟外硬構造にて増長された捩れ戻り力Kによるスピンを低減する効果がさらに増す。
よって、上述のように、本願発明に係るゴルフボールでは、ドライバー打撃時にはボールに生じるスピン量を低減でき、且つ、ボールの飛び出し角が大きくなるため、飛距離を伸ばすことができる。このように、ボールの慣性モーメントを小さくすると、一般的には打撃時にボールに生じるスピンの量はどのようなクラブを使っても増大すると考えられていたが、本願発明のような内軟外硬構造のゴルフボールでは、慣性モーメントを小さくすることによりスピン量の増加を抑制できることが明らかにされた。
一方、ウェッジショットのように、バックスピンを多く掛けたいショットでは、図4に示すように、本発明に係るゴルフボールでは、ショットによるボールの変形が少ない為、内軟外硬構造による捩れ戻り効果の発現はドライバーショットによるそれより軽微である。逆に大きな効果を占めてくるのが、インパクト時のクラブのロフト角が大きいことと相まって、フェースとボールとの間に生じる摩擦力Xである。そこで、本発明にように、コアの比重が中間体において少なくとも最も外側にある層の比重よりも大きいことで、ボールの慣性モーメントが低いことより、摩擦力Xによる回転がかかりやすくなり、すなわちバックスピンが増える。その結果、バックスピンによりボールの転がりを小さくすることができる。また、慣性モーメントの低下に伴ってスピンが掛かり易くなり、少ない摩擦力Xでスピンが掛かることになるため、ボールの飛び出し角も大きくなる。
このように、本実施形態に係るゴルフボールでは、ドライバー、ウェッジといった使用するクラブの目的に応じた挙動を創出することができる。
(第2実施形態)
本発明に係るゴルフボールの第2実施形態を、図面を参照して説明する。図5は本実施形態に係るゴルフボールの断面図である。
本実施形態に係るゴルフボールが第1実施形態と相違するのは、コアの外周面にリブを設けている点である。これ以外の点は、第1実施形態と同じであるため、以下では、主として相違点のみを説明する。
図5に示すように、本実施形態に係るゴルフボールは、球状のコア1を、リブ(支持部)3、中間層5及びカバー7で被覆したいわゆるフォーピースゴルフボールである。
図6は、コア1(a)、及びコア1にリブ3を配置した半成品(b)、及びこれにさらに中間層5を被覆した半成品(c)を示す斜視図である。各リブ3は、ゴム組成物又はエラストマーで構成されており、コア1の表面に描かれ相互に直交する大円に沿って延びている。そして、これらリブ3によってコア1の表面には8個の凹部4が形成されている。リブ3の高さは、2.3〜13.0mmであることが好ましく、2.3〜9.0mmにすることがさらに好ましい。なお、リブ3の高さは上記範囲外も可能ではあるが、リブの高さを13.0mm以内にしておくと、製造時にリブが倒れるのを防止することができる。
また、図5に示すように、各リブ3は、コア1側にいくにしたがってその幅が増大するように断面台形状に形成されている。リブ3の径方向外方の上端部の幅aは1.5〜3.0mmにすることが好ましく、またリブ3の径方向内方の下端部の幅bは7〜12mmにすることが好ましい。これ以外も可能ではあるが、このようにリブ3の各端部の下限を設定すると、後述するように、製造時に中間層用の材料を充填する際に、成形型を締めるときの圧力からくる材料の充填圧によってリブ3が変形するのを防止することができる。その結果、コア1を成形型の中心に正確に保持することができる。また、上記のようにリブ3の各端部の上限を設定することにより、硬度の低いリブ3とカバー7内面とが接する部分が広くなりすぎず、打撃時の反発性能を適度に保つことができる。このようなリブ3の形状によって、各凹部4は3つのリブ3と、僅かに露出するコア1の表面とによって囲まれる三角錐状に形成されている。そして、このコア1の露出部分は、中間層5と接触している。
中間層5は、リブ3の高さとほぼ同じ層厚を有し、リブ3によって囲まれる8つの凹部4に充填されてその外形が略球形をなしている。このとき、中間層5は、各凹部4に充填されることにより三角錐状に形成されている。また、図6(c)に示すように、リブ3の上端面は中間層5から露出した状態になっており、カバーに接触している。また、リブ3の硬度は、コア1よりも小さいが、中間層5と同じであってもよいし、あるいは中間層5の硬度をリブ3の硬度よりも高くすることもできる。具体的には、リブ3の表面の硬度は、JIS−C硬度で65〜100であることが好ましく、70〜100あることがさらに好ましい。なお、本実施の形態2に係るゴルフボールのコア1、リブ3、及び中間層5のショアD硬度の測定方法は以下の通りである。まず、中間層5については、上述した実施の形態1と同様に、ボールを2分割し、中間層のボール表面側、つまりカバー部材との界面から約1mm内側において硬度を測定する。カバーについては、その表面においてディンプルとディンプルの間の硬度を測定する。またコア1については、ボールを2分割し、コア1のボール表面側、つまりリブ3、あるいは中間層5との界面から約1mm内側の硬度を測定する。一方、リブ3については、ボールを2分割し、カバー7、あるいは中間層5との界面から約1mm内側の硬度を測定すればよい。これは、通常、コア形成時の温度や圧力は、コアのリブとリブ以外の部分とに同様にかかるため、リブの上端部でもそれ以外の部分の表面部でも硬度は同等であることによるものである。
リブ3の比重は、コア1よりも小さいなっている。また、リブ3と中間層5の比重は同じでもよいが、慣性モーメントを低くするという観点から、中間層5よりもリブ3の比重を高くすることができる。したがって、例えば、リブ3の比重は、0.9〜1.11であることが好ましく、0.95〜1.11とすることがさらに好ましい。
リブ3は、ゴム組成物またはエラストマーで構成することができ、ゴム組成物で形成する場合には、上記したコア1と同様の材料で構成することができる。但し、本実施形態においては、不飽和カルボン酸や有機過酸化物の配合量をコア1の場合と異ならせる等して、コア1の硬度とリブ3の硬度とが異なるように設定される。例えば、リブ3における不飽和カルボン酸および有機過酸化物の配合量を多くすることにより、リブ3の硬度をコア1の硬度よりも高くすることができる。
以上のように、本実施形態によれば、リブ3の端部がカバー7に接触しているため、コア1は、リブ3によって最外層であるカバー7に支持されることになる。さらに中間層5の端部がコア1に接触しているため、中間層5によってもコア1が支持されることになる。コア1がボールの中心に強固に保持されるため、偏心を防止することができる。
ところで、上述したリブは、種々の形状にすることができるが、製造時に中間層を効率よく成形する観点からは、次のような切欠部をリブに形成することが好ましい。図7に示すように、リブ3の一部に切欠部31を形成することもできる。この例では、各リブ3は大円上の交点付近に切欠部31を有している。より詳細には、図8に示すように、切欠部31は、大円の交点Pを通るコア1の法線nと垂直な平面Hに沿って延びる底面31aを有するように形成されている。すなわち、この切欠部31は、上記平面Hでリブ3を切り取ることによって形成される。なお、この切欠部31の深さD、つまり切欠部31がない仮想的なリブ3の上端から切欠部31の最深部までの長さは、1.2〜3.6mmにすることが好ましい。
このように切欠部31を形成することにより、大円の交点Pを中心として配置される4つの凹部4が連通し、中間層用の材料を切欠部31を介して各凹部4に容易に行き渡らせることができる。この場合、図9に示すように、平面Hからリブ11の中央側へ1〜3度傾斜した平面H1、つまりコア1の法線nと正面視において91〜93°の角度をなす平面に沿って切欠部31の底面31aを形成するようにしてもよい。このようにすると、上記傾斜が抜き勾配となり、例えば成形型が上型と下型の2つの型から構成されている場合に、コア1を成形型から容易に取り出すことができる。
また、リブ3において各交点Pによって区切られた各円弧セクションSの中間に切欠部を設けることもできる。すなわち、図10に示すように、円弧セクションSの円弧方向の中心点を通るコア1の法線m上の一点Qから両端の交点P側へ延びる2つの底面32aを有するように切欠部32を形成することもできる。この場合、底面32aと法線mとが正面視で45〜48度をなすようにすることが好ましい。このようにすると、上記したように、コア3を成形型から容易に抜き出すことができる。
また、切欠部は、円弧セクションSが、図7、図8,または図9に示す切欠部31、及び図10に示す切欠部32の両方を有するようにしてもよい。
次に、上記のように構成されたゴルフボールの製造方法の一例について図11〜図13を参照しつつ説明する。まず、ゴム組成物を成形型内で、例えば140〜165℃で5〜25分間、プレスしてコア1を形成する。このとき、コア1は上述のようにエラストマーによって構成してもよく、この場合、プレス成形の他、射出成形でコア1を形成することができる。次に、こうして成形されたコア1を、図11(a)に示す第1の成形型2内に配置する。第1の成形型2は、上型2a及び下型2bから構成されており、それぞれにキャビティが形成されている。各キャビティは、コア1の表面と対応する半球状の受入部(基部)21と、この受入部の壁面に形成された溝22とから構成されている。溝22は、受入部21の大円に沿って深さが略同一に形成されているが、3つの大円の各交点部分の溝は他の部分に比べて浅くなっている。これにより、リブ3に上記切欠部が形成されるようになっている。また、溝22の表面は荒研磨により粗く仕上げられており、これによって成形されたリブ3の表面に微細な凹凸を形成することができ、中間層5との密着性を向上することができる。
そして、図11(b)に示すように、第1の成形型2の受入部21にコア1を配置するとともに、溝22に中間層用の材料である未加硫のゴム組成物を配置し、例えば140〜165℃で5〜25分間全加硫してプレス成形を行い、コア1の表面に複数のリブ3を形成する。
続いて、コア1及びリブ3からなる半成品を第1の成形型2から取り出し、第2の成形型6内に配置する。図12(a)に示すように、この第2の成形型6は、上型6a及び下型6bからなり、これらには上記リブ3の最外径と対応する半球状のキャビティ61がそれぞれ形成されている。すなわち、このキャビティ61の壁面にリブ3の上端面が接するようになっている。また、上型6a及び下型6bのキャビティ61は、第1の成形型2と同様に表面が粗く仕上げられるとともに、各キャビティ61の周囲には複数の凹状のバリを溜める部分62が形成されている。
そして、図12(a)に示すように、下型6bのキャビティ61に未加硫のゴム組成物N2を挿入するとともに、上記のように形成した半成品の上部にゴム組成物N2を配置し、この半成品を上型6a及び下型6bの間に配置する。続いて、図12(b)に示すように、上型6a及び下型6bを当接させ、ゴム組成物N2を140〜165℃で5〜25分間全加硫してプレス成形を行い、中間層5を形成する。
このとき、コア1の上部及び下型6aのキャビティ141に配置されたゴム組成物N2は、半成品の表面にプレスされながら、凹部4に充填されていく。上記したように隣接する各凹部4は切欠部31を介して連通しているため、ゴム組成物N2はすべての凹部4に行き渡り、均一に充填される。なお、中間層5は、図13に示すように、射出成形により形成することもできる。この場合、リブ3に切欠部がなければ、すべての凹部4に対してゲート81を設けなければゴム組成物Nが均一に充填されないが、上記のようにリブ3に切欠部を設けることにより、1箇所のゲート81からゴム組成物を注入しても、切欠部31を介して各凹部4にゴム組成物が均一に充填される。
このように、リブ3に切欠部31が形成され、隣接する凹部4が切欠部31を介して連通しているため、ゴム組成物N2がコア1の表面のいずれの位置からプレスされても、すべての凹部4に行き渡って充填される。したがって、中間層5を容易に被覆することができ、製造時間を大幅に短縮することができる。なお、ここでは、中間層5をゴム組成物を用いて構成しているが、エラストマーを用いることもできる。この場合、射出成形によって中間層5を形成することができる。このとき、半成品は、リブ3によって、金型に支持されているため、コア1を金型の中心に保持することができる。これにより、コア1の偏心を防止することができる。
こうして中間層5の成形が完了すると、コア1、リブ3及び中間層5からなる半成品を第2の成形型104から取り出す。これに続いて、この半成品の表面に、カバー7をプレス成形或いは射出成形により所定のディンプルを備えた状態に被覆すると、本実施形態のゴルフボールが完成する。
なお、上記の説明では、切欠部が形成された中間層5を有するゴルフボールの製造方法について説明したが、切欠部がないものもほぼ同様の方法で製造することができる。但し、切欠部がない場合には、各凹部に中間層の材料が充填されるように材料を配置してプレス成形したり、射出成形の場合には各凹部に対応する複数のゲートを設ける必要がある。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、中間層は複数設けることもできる。図14に示す例では、2つの中間層、つまり第1中間層51と,第2中間層52を設けており、第2中間層がリブ3を覆っている。このほか、さらに、外側に中間層を設けてもよいし、凹部に複数の中間層を充填することもできる。このように、複数の中間層を設けることは、リブを設けない形態においても同様である。そして、硬度及び比重に関しては、少なくとも最外の中間層の硬度及び比重が、コアの硬度及び比重よりも小さければよい。
また、図15に示すように、コア1とリブ3とを一体化したコアとすることができ、これによりスリーピースのゴルフボールとすることもできる。この場合もコア1とリブ3とは同じ材料で形成されるが、中間層5よりも比重が高いため、上述した低い慣性モーメントによる効果を得ることができる。また、コア1及びリブ3の表面のJIS−C硬度を中間層よりも低くすることができる。
リブの形状は、種々の形態があるが、リブは、コアを挟んで対称な位置に配置されることが好ましい。例えば、図16(a)に示すように、コアを挟んで2つのリブを配置することができる。図16(b)は図16(a)のコアとリブとを一体化したものである。図16(c)は、4つのリブを設けたものであり、図16(d)はコアとリブとを一体化したものである。また、リブ3は、周方向に延びる形態のほか、単なる突出部としてもよい。
以下、本発明の実施例及びこれと対比する比較例を示す。ここでは、本発明の実施例に係る8種類のゴルフボールと、比較例に係る8種類のゴルフボールとを比較する。実施例1〜6は、図1に示す実施形態と同様の形状であり、実施例7,8は、図5に示す実施形態と同様の形状である。以下の表1は各ゴルフボールの形状を示しており、表2は各部材の硬度及び比重を示している。なお、硬度差は、コアと中間層との硬度差を示している。また、表2中の「Comp.」とは、コンプレッションを意味している。
また、表3は、コア、リブ、中間層、及びカバーを構成する材料の組成を示しており、数値は重量部を示している。なお、表3で、HPF-1000は、ディポン製アイオノマーHPF-1000を示し、9910は、デュポン社製サーリン9910を示し、8940は、デュポン社製サーリン8940を示し、8320は、デュポン社製サーリン8320を示している。
以上のように構成された実施例及び比較例に係るゴルフボールを用い、打撃ロボット(ミヤマエ株式会社製SHOT ROBO IV)による1番ウッド(1W:ミズノ株式会社製MP Craft425、ロフト角9.5°、シャフト QUAD 6 Buttスタンダード長さ45インチ、シャフト硬さS)、サンドウェッジ(SW:ミズノ株式会社製MP Tシリーズ、56°クロムメッキ、シャフト ダイナミックゴールド Wedgeフレックス 長さ35.25インチ)を使用した打撃テストを行い、ドライバーについては、飛び出し角、スピン量、及びキャリーを測定した。またサンドウェッジについては、飛び出し角とスピン量とを測定した。ここで、1番ウッドのヘッドスピードは48.8m/s、44.3m/s、38.8m/sとし、サンドウェッジのヘッドスピードは21.2m/sとした。結果は、以下の表4〜表7の通りである。
なお、表4〜表7において、Comp.100補正とは、ボールのコンプレッションを100としたときに予想される飛び出し角、及びスピン量の値を示している。すなわち、ボールの飛び出し角、及びスピン量は、ボールのコンプレッションの値により影響を受けるので、実施例と比較例の結果をComp.100とした場合の値に補正した上で、それぞれを比較評価の対象とすることとした。Comp.100補正の方法としては、例えば、同一構造でコンプレッションの異なる複数のボールを準備し、それぞれのボールについて、様々なヘッドスピードに設定したロボットにて、ドライバー、アイアン、及びウェッジの各ショットにおける、飛び出し条件(初速、飛び出し角、スピン)を測定する。そして、クラブ種類やヘッドスピードなどを変化させた様々な条件においてコンプレッションの違いが飛び出し条件に与える影響をそれぞれ予め把握しておき、この関係に基づいて、本発明に係る実施例のボールのコンプレッションを100とした場合の飛び出し角、スピン量、及びキャリーを算出すればよい。
図17〜図24は、表4〜表7の結果をグラフに示した図であり、実施例、及び比較例に係る各ボールの飛び出し角、あるいはスピン量(いずれもComp.100補正値)を示している。各図において、縦軸は各ボールの飛び出し角、あるいはスピン量を示し、横軸はコアと中間層の硬度差を示しており、実施例、及び比較例に係る各ボールは、この硬度差をもって特定している。図17〜図24のうち、図17〜図19は、各ボールを1Wの各ヘッドスピードで打撃した際の飛び出し角を示し、図20は、各ボールをウェッジで打撃した際の飛び出し角を示している。また、図21〜図23は、各ボールを1Wの各ヘッドスピードで打撃した際のスピン量を示し、図24は、各ボールをウェッジで打撃した際のスピン量を示す。
まず、飛び出し角に関し、図17〜図19示されるように、慣性モーメントが低い実施例のボールは、1Wのいずれのヘッドスピードにおいても、慣性モーメントが大きい比較例のボールに比べて飛び出し角は大きくなっている。また、実施例のボールを見ると、硬度差が大きいほど、飛び出し角が大きくなることが分かる。また、ウェッジによる打撃の場合も、図20に示されるように、実施例のボールのほうが、比較例のボールよりも飛び出し角は大きく、さらに実施例のボールにおいても、硬度差が大きくなるほど飛び出し角は大きくなる。
次に、スピン量に関し、1Wでの打撃においては、ヘッドスピードが高い48.8m/s(図21)、及び44.3m/s(図22)では、実施例のスピン量は、比較例よりも大幅に低減されている。さらに実施例のボールを見ると、硬度差が大きくなるほどスピン量は低くなることが分かる。また、ヘッドスピードが低い38.8m/s(図23)においては、実施例のボールと比較例のボールのスピン量は同等の値を示すが、実施例のボールのほうが飛び出し角が大きい分、表6に示すようにキャリーは優れている。さらにウェッジによる打撃になると、実施例と比較例のスピン量は、1Wによる打撃の場合から逆転し(図24)、いずれのボールにおいても、実施例のスピン量は比較例に比べて多くなっていることが確認された。
以上から明らかなように、本実施例に係るゴルフボールによれば、ドライバーショットにおいては飛距離を伸ばすことができるとともに、アプローチショットにおいては適度なバックスピンを生じさせることができ、狙った位置に止めることができる。