以下、本発明に係るゴルフボールの実施形態について説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係るゴルフボールの断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るゴルフボールは、コア1を、中間層10及びカバー7で被覆したゴルフボールである。コア1は、球状に形成され、板状の支持片111を複数組み合わせた支持部11、及び支持片111間の凹部に充填されるアウターコア層12とで構成されている。ゴルフボールの直径は、規則(R&A、及びUSGA参照)の定めるところにより、42.67mm以上にする必要がある。但し、空力特性等を考慮するとボール径はできるだけ小さくすることが好ましく、例えば42.7〜43.7mmとすることができる。
図2は、支持部11(a),及び支持部11にアウターコア層12を充填したコア1(b)を示す斜視図である。図2(a)に示すように、支持部11は、扇形の支持片111を12枚組み合わせ、各支持片111の円弧部分が直交する大円を通過するように配置することで構成されている。これら支持片111によってコア1は8個の領域に等分割され、各領域、つまり支持片111間に形成される凹部にアウターコア層12が充填されることで球形のコア1を形成している。支持片111はコア1の表面に露出しており、中間層10に接触している。コア1の直径は20〜30mmにすることが好ましい。また、支持片111の肉厚は、1〜4mmであることが好ましい。そして、支持片111の弾性率は、20〜60MPa、アウターコア層12の弾性率は、2〜40MPaであることが好ましい。なお、弾性率の定義については、後述する。
中間層10は、コア1の周囲を同心円状に覆っており、その層厚は、5.0〜11.0mmであることが好ましく、7.0〜9.0mmにすることがさらに好ましい。また、中間層10の弾性率は20〜100MPaであることが好ましい。
カバー7は、中間層10を覆うとともに、その表面には図示を省略する所定のディンプルが形成されている。カバー7の層厚は0.8〜2.6mmとするのが好ましく、1.6〜2.0mmとするのがさらに好ましい。この範囲外も可能ではあるが、その理由は、カバー7の層厚が0.8mmより小さくなると、カバー7の耐久性が著しく低下するとともに成形が困難になる一方、2.6mmを越えると打感が硬くなり過ぎるからである。また、その弾性率は80〜240MPaとするのが好ましく、100〜140MPaとすることがさらに好ましい。なお、カバー7の層厚とは、ディンプルが形成されていない径方向の最も外側の任意の一点から、中間層と接する任意の一点までの距離を法線に沿って計測した値である。
上記のように、支持部11、アウターコア層12、中間層10、及びカバー7は、それぞれ弾性率が設定されているが、アウターコア層12の弾性率は、支持部11及び中間層10の弾性率よりも小さくなっている。特に、中間層10の弾性率は、アウターコア層12の1.5〜10倍にすることが好ましく、5〜10倍にすることがさらに好ましい。また、中間層10の弾性率は、支持部11と同等かそれよりも大きい弾性率を有している。この点についての利点などは、後述する。
次に、上記ゴルフボールの各部材を構成する材料について詳細に説明する。但し、以下に示すものはあくまで例示である。アウターコア層12は、基材ゴム、架橋材、不飽和カルボン酸の金属塩、充填剤等を配合した公知のゴム組成物で製造することができる。基材ゴムとしては、天然ゴム、ポリイソブレンゴム、スチレンブタジエンゴム、EPDM等を使用できるが、シス1,4結合を少なくとも40%以上、好ましくは80%以上を有するハイシスポリブタジエンを使用することが特に好ましい。
架橋剤としては、例えばジクミルパーオキサイドやt−ブチルパーオキサイドのような有機過酸化物を使用することができるが、ジクミルパーオキサイドを使用するのが特に好ましい。配合量は、基材ゴム100重量部に対して0.3〜5重量部であり、好ましくは0.5〜2重量部である。
不飽和カルボン酸の金属塩としては、アクリル酸又はメタクリル酸のような炭素数3〜8の一価又は二価の不飽和カルボン酸の金属塩を使用することが好ましいが、アクリル酸亜鉛を使用するとボールの反発性能を向上することができ、特に好ましい。配合量は、基材ゴム100重量部に対して5〜40重量部にするのが好ましい。
充填剤は、アウターコア層12に通常配合されるものを使用することができ、例えば酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を使用することができる。配合量は、基材ゴム100重量部に対して2〜50重量部にするのが好ましい。また、必要に応じて老化防止剤、またはしゃく解剤等を配合してもよい。
なお、アウターコア層12を構成する材料は、上記ゴム組成物の他、公知のエラストマーを用いることができる。
支持部11及び中間層510は、ゴム組成物で構成することができ、上記したアウターコア層12と同様の材料で構成することができる。但し、本実施形態においては、不飽和カルボン酸や有機過酸化物の配合量をアウターコア層12の場合と異ならせる等して、アウターコア層12の弾性率と、支持部11及び中間層10の弾性率とが異なるように設定される。例えば、不飽和カルボン酸および有機過酸化物の配合量を多くすることにより、支持部11及び中間層10の弾性率をアウターコア層12の弾性率よりも高くすることができる。
また、支持部11及び中間層10は、エラストマーで構成することもできる。例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー(SEPS)のようなスチレン系熱可塑性エラストマー;ポリエチレンまたはポリプロピレンをハードセグメントとし、ブタジエンゴム、アクリルニトリルブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴムをソフトセグメントとするオレフィン系熱可塑性エラストマー;結晶ポリ塩化ビニルをハードセグメントとし、非晶ポリ塩化ビニルまたはアクリロニトリル・ブタジエンゴムをソフトセグメントとする塩化ビニル系熱可塑性エラストマー;ポリウレタンをハードセグメントとし、ポリエーテルまたはポリエステルをソフトセグメントとするウレタン系熱可塑性エラストマー;ポリエステルをハードセグメントとし、ポリエーテルまたはポリエステルをソフトセグメントとするポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリアミドをハードセグメントとし、ポリエーテルまたはポリエステルをソフトセグメントとするポリアミド系熱可塑性エラストマー;アイオノマー樹脂などを使用することができる。
カバー7は、公知のエラストマーで構成され、上記中間層10と同じものを使用することができる。
以上のように、本実施形態によれば、次の効果を得ることができる。本実施形態に係るゴルフボールでは、カバー7に近く体積の大きい中間層10の弾性率が高いため、反発性能が高く、これにより飛距離を伸ばすことができる。特に、遅いヘッドスピードでボールを打撃した場合であっても、高い反発性能を得ることができるため、飛距離を伸ばすことが可能となる。一方、中間層10の内側のアウターコア層12は、中間層10よりも弾性率が小さいため、打撃を受けたときの変形から元の形状にねじれながら戻るのが中間層10よりも遅くなるという特徴があり、これによって飛び出し角度が高くバックスピンの少ない弾道を得ることができる。
ここで、アウターコア層12は、中間層10よりも弾性率が小さいため、中間層10の反発性能を低下させるという懸念があるが、これに対して、本実施形態は、次のような特有の構成を有している。すなわち、コア1を、径方向外方に延びる板状の支持片111と、支持片111間に充填されたアウターコア層12とで構成し、さらにアウターコア層12の弾性率を、支持部11及びアウター中間層5よりも低くしている。そのため、アウターコア層12の弾性率が低いことによる中間層10の反発性能の低下を、弾性率の高い支持部11によって補完することができ、反発性能の低下を防止することができる。その結果、飛距離を向上することができる。また、アウターコア層12は、支持部11よりも広い面積で中間層10と接触しているため、支持部11を設けているにもかかわらず、低スピン性能を維持することができ、その結果、長い飛距離を得ることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明に係るゴルフボールの第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。図3は本実施形態に係るゴルフボールの断面図である。
本実施形態が、第1実施形態と異なるのは、中間層の構成であり、中間層が単一の層ではなく、リブとアウター中間層とから構成されている。なお、その他の構成は、同一であるので、同一構成には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態に係るゴルフボールは、コア1を、リブ(突条)3、アウター中間層5及びカバー7で被覆したゴルフボールである。
図4は、コア1(a)、コア1にリブ3を配置した半成品(b)、及びこれにさらにアウター中間層5を被覆した半成品(c)を示す斜視図である。図4(a)に示すコアは、第1実施形態と同一の構成であり、このコア1の表面に描かれ相互に直交する大円に沿って、リブ3が形成されている。そして、これらリブ3によってコア1の表面には8個の凹部4が形成されている。リブ3の高さは、5.0〜11.0mmであることが好ましく、7.0〜9.0mmにすることがさらに好ましい。なお、リブ3の高さは上記範囲外も可能ではあるが、リブの高さを11.0mm以内にしておくと、製造時にリブが倒れるのを防止することができる。なお、リブ3の弾性率は、20〜60MPaであることが好ましい。
また、図3及び図4(b)に示すように、各リブ3は、コア1側にいくにしたがってその幅が増大するように断面台形状に形成されている。リブ3の径方向外方の上端部の幅aは1.5〜3.0mmにすることが好ましく、またリブ3の径方向内方の下端部の幅bは7〜12mmにすることが好ましい。これ以外も可能ではあるが、このようにリブ3の各端部の下限を設定すると、後述するように、製造時にアウター中間層用の材料を充填する際に、成形型を締めるときの圧力からくる材料の充填圧によってリブ3が変形するのを防止することができる。その結果、コア1を成形型の中心に正確に保持することができる。また、上記のようにリブ3の各端部の上限を設定することにより、弾性率の低いリブ3とカバー7内面とが接する部分が広くなりすぎず、打撃時の反発性能を適度に保つことができる。このようなリブ3の形状によって、各凹部4は3つのリブ3と、僅かに露出するコア1の表面とによって囲まれる三角錐状に形成されている。
アウター中間層5は、リブ3の高さとほぼ同じ層厚を有し、リブ3によって囲まれる8つの凹部4に充填されて、その外形が略球形をなしている。このとき、アウター中間層5は、各凹部4に充填されることにより三角錐状に形成されている。また、図4(c)に示すように、リブ3の上端面は中間層5から露出した状態になっている。そして、リブ3の上端面とアウター中間層5とを覆うように、第1実施形態と同様のカバー7が形成されている。なお、アウター中間層5の弾性率は、60〜100MPaであることが好ましい。
続いて、リブ3及びアウター中間層5を構成する材料について説明する。リブ3は、ゴム組成物で構成されており、上記したコア1と同様の材料で構成することができる。但し、本実施形態においては、不飽和カルボン酸や有機過酸化物の配合量をアウターコア層12の場合と異ならせる等して、アウターコア層コア12の弾性率とリブ3の弾性率とが異なるように設定される。例えば、リブ3における不飽和カルボン酸および有機過酸化物の配合量を多くすることにより、リブ3の弾性率をアウターコア層12の弾性率よりも高くすることができる。
アウター中間層5は、リブ3とほぼ同様の成分のゴム組成物またはエラストマーで構成することができる。ゴム組成物で構成する場合には、リブ3より弾性率を高くするため、不飽和カルボン酸および有機過酸化物の配合量を多くすることが好ましい。アウター中間層5をエラストマーで構成する場合には、第1実施形態で示したような支持部11と同じ材料で構成することができる。
上記のように構成されたゴルフボールは、第1実施形態と同一構成のコア1を有しているので、上述したのと同様の効果を得ることができる。これに加えて、本実施形態のゴルフボールは、コア1の表面に、その幅がコア1に近づくにしたがって大きくなるように延びるリブ3が形成されている。そして、このリブ3によって囲まれる凹部4にアウター中間層5が充填されているため、次のような効果を得ることができる。つまり、上記リブの形状により、凹部4は漏斗状に形成され、コア1とカバー7との間の領域では、径方向外方にいくにしたがって、コア1と同心の球面におけるアウター中間層5の割合R2が大きくなる(図3参照)。すなわち、コア1の近傍ではリブ3の割合R1が大きい一方、カバー7に近づくにつれてアウター中間層5の割合R2が多くなり、コア1とカバー7との間の領域において、リブ3とアウター中間層5に2つの性質が徐々に変化する傾斜機能を持たせることができる。本実施形態では、アウター中間層5の弾性率がリブ3よりも大きいため、コア1からカバー7にいくにしたがってボールの弾性率は徐々に高くなっていく。そのため、単に弾性率の高い層を径方向外方に配置したのではなく、径方向内方に向かって弾性率が徐々に低くなっていくため、打撃の初期には、高い弾性率が反映されることによる高反発性能が得られるとともに、打撃が進むと低弾性率が反映されるため、打感が硬くなるのを防止することができる。
また、次のような利点もある。一般的に、ゴルフボールとゴルフクラブとが接触すると、クラブフェース面との摩擦によりボールは周方向にねじれた状態となる。そして、ねじれたボールは弾性抵抗により元の状態に復元しつつバックスピンとは反対向きの力をボールに作用させる。このとき、ねじれたボールの変形が大きいほどバックスピンが抑制され飛距離を伸ばすことが可能になる。
ここで、本実施形態に係るゴルフボールでは、リブ3によってボールが元の状態に戻ろうとする弾性抵抗が助長されるため、バックスピンを効果的に抑制することができる。より詳細に説明すると、図5(a)に示すように、このゴルフボールでは、リブ3の弾性率がアウター中間層5の弾性率よりも低いため、クラブCによる打撃によってアウター中間層5よりもリブ3が大きく変形する。この打撃によりボール自体にはバックスピンBを生じさせる応力が働く。そして、ボールがクラブCから離れる際には、図5(b)に示すように、弾性率の低いリブ3の変形が復元されるため、この復元によってバックスピンBを相殺する方向に力Fが作用する。その結果、スピンが減り、飛び出し角度が高くなるため、飛距離をさらに伸ばすことができる。特に、本実施形態では、リブ3が単なる突出部ではなく、アウター中間層5の周囲を囲む壁のように構成されているため、リブ3が復元する際の力は、この壁全面によってアウター中間層5の周囲から大きく作用し、これによって、バックスピンBと反対向きの力Fが助長される。したがって、バックスピン量が減少し、飛距離を大きく伸ばすことが可能となる。このような効果は、特にドライバー等の飛距離を狙ったクラブを使用したときに顕著になる。そして、このような効果を得るためには、上述したように、リブ3とアウター中間層5との弾性率差を設定しておくことが好ましい。なお、図5では、現在の状態を実線で表し、その直前の状態を破線で表している。
ところで、上述したリブは、種々の形状にすることができるが、製造時にアウター中間層を効率よく成形する観点からは、次のような切欠部をリブに形成することが好ましい。図6に示すように、リブ3の一部に切欠部31を形成することもできる。この例では、各リブ3は大円上の交点付近に切欠部31を有している。より詳細には、図7に示すように、切欠部31は、大円の交点Pを通るコア131の法線nと垂直な平面Hに沿って延びる底面31aを有するように形成されている。すなわち、この切欠部31は、上記平面Hでリブ3を切り取ることによって形成される。なお、この切欠部31の深さD、つまり切欠部31がない仮想的なリブ3の上端から切欠部31の最深部までの長さは、1.2〜2.4mmにすることが好ましい。
このように切欠部31を形成することにより、大円の交点Pを中心として配置される4つの凹部4が連通し、アウター中間層用の材料を切欠部31を介して各凹部4に容易に行き渡らせることができる。この場合、図8に示すように、平面Hからリブ11の中央側へ1〜3度傾斜した平面H1、つまりコア1の法線nと正面視において91〜93°の角度をなす平面に沿って切欠部31の底面31aを形成するようにしてもよい。このようにすると、上記傾斜が抜き勾配となり、例えば成形型が上型と下型の2つの型から構成されている場合に、コア1を成形型から容易に取り出すことができる。
また、リブ3において各交点Pによって区切られた各円弧セクションSの中間に切欠部を設けることもできる。すなわち、図9に示すように、円弧セクションSの円弧方向の中心点を通るコア1の法線m上の一点Qから両端の交点P側へ延びる2つの底面32aを有するように切欠部32を形成することもできる。この場合、底面32aと法線mとが正面視で45〜48度をなすようにすることが好ましい。このようにすると、上記したように、コア3を成形型から容易に抜き出すことができる。
また、切欠部は、円弧セクションSが、図6、図7,または図8に示す切欠部31、及び図9に示す切欠部32の両方を有するようにしてもよい。
次に、上記のように構成されたゴルフボールの製造方法の一例について説明する。ここでは、第2実施形態のゴルフボールの製造方法について図10〜図13を参照しつつ説明する。
まず、図2(a)に示すような支持部11を形成し、これを図10に示す第1の成形型20のキャビティ21に配置する。このキャビティ21の内径は、コア1の径と同じである。そして、各キャビティ21の内壁面と、支持部11の凹部との間の空間にアウターコア層12の材料を充填し、コア1を形成する。アウターコア層12は、プレス加工で形成してもよいし、射出成形で形成することもできる。
次に、こうして成形されたコア1を、図11(a)に示す第2の成形型2内に配置する。第2の成形型2は、上型2a及び下型2bから構成されており、それぞれにキャビティが形成されている。各キャビティは、コア1の表面と対応する半球状の受入部21と、この受入部の壁面に形成された溝22とから構成されている。溝22は、受入部21の大円に沿って深さが略同一に形成されているが、3つの大円の各交点部分の溝は他の部分に比べて浅くなっている。これにより、リブ3に上記切欠部が形成されるようになっている。また、溝22の表面は荒研磨により粗く仕上げられており、これによって成形されたリブ3の表面に微細な凹凸を形成することができ、アウター中間層5との密着性を向上することができる。
そして、図11(b)に示すように、第2の成形型2の受入部21にコア1を配置するとともに、溝22に中間層用の材料である未加硫のゴム組成物を配置し、例えば140〜165℃で5〜25分間全加硫してプレス成形を行い、コア1の表面に複数のリブ3を形成する。
続いて、コア1及びリブ3からなる半成品を第2の成形型2から取り出し、第3の成形型6内に配置する。図12(a)に示すように、この第3の成形型6は、上型6a及び下型6bからなり、これらには上記リブ3の最外径と対応する半球状のキャビティ61がそれぞれ形成されている。すなわち、このキャビティ61の壁面にリブ3の上端面が接するようになっている。また、上型6a及び下型6bのキャビティ61は、第2の成形型2と同様に表面が粗く仕上げられるとともに、各キャビティ61の周囲には複数の凹状のバリを溜める部分62が形成されている。
そして、図12(a)に示すように、下型6bのキャビティ61に未加硫のゴム組成物N2を挿入するとともに、上記のように形成した半成品の上部にゴム組成物N2を配置し、この半成品を上型6a及び下型6bの間に配置する。続いて、図12(b)に示すように、上型6a及び下型6bを当接させ、ゴム組成物N2を140〜165℃で5〜25分間全加硫してプレス成形を行い、アウター中間層5を形成する。
このとき、半成品の上部及び下型6aのキャビティ141に配置されたゴム組成物N2は、半成品の表面にプレスされながら、凹部4に充填されていく。上記したように隣接する各凹部4は切欠部31を介して連通しているため、ゴム組成物N2はすべての凹部4に行き渡り、均一に充填される。なお、アウター中間層5は、図13に示すように、射出成形により形成することもできる。この場合、リブ3に切欠部がなければ、すべての凹部4に対してゲート81を設けなければゴム組成物Nが均一に充填されないが、上記のようにリブ3に切欠部を設けることにより、1箇所のゲート81からゴム組成物を注入しても、切欠部31を介して各凹部4にゴム組成物が均一に充填される。
このように、リブ3に切欠部31が形成され、隣接する凹部4が切欠部31を介して連通しているため、ゴム組成物N2がコア1の表面のいずれの位置からプレスされても、すべての凹部4に行き渡って充填される。したがって、アウター中間層5を容易に被覆することができ、製造時間を大幅に短縮することができる。なお、ここでは、アウター中間層5をゴム組成物を用いて構成しているが、エラストマーを用いることもできる。この場合、射出成形によってアウター中間層5を形成することができる。
こうしてアウター中間層5の成形が完了すると、コア1、リブ3及びアウター中間層5からなる半成品を第3の成形型104から取り出す。これに続いて、この半成品の表面に、カバー7をプレス成形或いは射出成形により所定のディンプルを備えた状態に被覆すると、第2実施形態に係るゴルフボールが完成する。
なお、上記の説明では、切欠部が形成されたリブ3を有するゴルフボールの製造方法について説明したが、切欠部がないものもほぼ同様の方法で製造することができる。但し、切欠部がない場合には、各凹部に中間層の材料が充填されるように材料を配置してプレス成形したり、射出成形の場合には各凹部に対応する複数のゲートを設ける必要がある。これについては、コア1の作製でも同様である。また、上記製造方法の説明では、第2実施形態に係るゴルフボールを例にして説明したが、リブ3及びアウター中間層5の形成方法以外は、第1実施形態のゴルフボールも同様の製造方法を用いることができる。第1実施形態の中間層10は、公知の方法で製造することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、コア1については、アウターコア層12を8分割するように支持部11を構成しているが、その他、種々の構成をとることができる。例えば、図14(a)〜(e)は、支持部11、及びコア1の種々の形態を示す斜視図である。これらの図では、図14(a)〜(e)の順に、コア1が2,3,4,5,及び6分割されるように支持部11の形態を変えている。いずれの支持部11を構成する支持片111もコア1の大円を通過するように板状に形成されている。このとき、図15に示すように、各支持片111に少なくとも一つの貫通孔13を形成することもできる。貫通孔の形状13は、同図に示すように、円形(図15(a)(b))、扇形(図15(c))、矩形状(図15(d))など種々の形状が可能であり、またその数も特には限定されない。こうすることで、図6に示すような切欠31付きのリブ3を有するゴルフボールにおいてアウター中間層5を形成する場合と同様に、射出成型時にアウターコア層12を供給するゲートを一つにすることができる(図13参照)。また、図16に示すように、板状の支持片以外にも、支持片111を棒状に形成し、コア1の中心から放射状に延びるように配置することもできる。この場合、支持片111は角柱状であっても、円柱状であってもよい。
また、第2実施形態では、アウター中間層5の弾性率を、リブ3よりも大きくしているが、これを反対にすることもできる。このようにすると、アウター中間層5の変形が、これを囲むリブ3によって制限されるため、アウター中間層5の大きい変形を防止でき、これによって反発性能の低下を防止することができる。
また、上記各実施形態においては、各部材の特性を弾性率を用いて説明したが、例えば、本願発明中の弾性率は、原則として下記の方法によって求められた材料の剛性をあらわす指標である。即ち、
JIS K7113 プラスチックの引張試験方法に準拠し、
試験片の形状は2号ダンベルとし、
試験速度は500mm/minとし、
引張割線弾性率:規定した歪(ここでは10%として)に対する引張強度から下記の式で算出した。
弾性率=(10%歪に要する荷重)/(歪10%×試験片の平均断面積)
のように測定される。
引張弾性率を用いた場合、支持部の引張弾性率は、20〜60MPaであることが好ましく、アウターコア層の引張弾性率は、2〜40MPaであることが好ましく、中間層の引張弾性率は、20〜100MPaであることが好ましく、リブの引張弾性率は、20〜60MPaであることが好ましく、アウター中間層の引張弾性率は、60〜100MPaであることが好ましく、カバーの引張弾性率は、80〜240MPaであることが好ましい。
(実施例)
以下、本発明の実施例及びこれと対比する比較例を示す。まず、本発明の実施例に係るゴルフボール、及び比較例に係るゴルフボールについて説明する。実施例1,2は、それぞれ第1実施形態及び第2実施形態で示したゴルフボールと同様の形態である。一方、比較例1,2は、実施例1,2と対応するゴルフボールであり、比較例1は実施例1とはコアのみが異なる形態であり、単一の材料からなる一層のコアを有している。また、比較例2も実施例2とは異なり、単一の材料からなる一層のコアを有している。
まず、実施例及び比較例を構成する各部材の物性値を、表1〜表4に示す。
そして、実施例及び比較例の寸法については表5及び表6に示す通りである。
以上のように構成された実施例及び比較例に係るゴルフボールを想定し、コンピュータによる打撃シミュレーションを行った。クラブは1番ウッド(1W:ミズノ株式会社製MP300S、ロフト角10°、長さ45インチ(約114cm)、シャフト硬さS)を想定し、ヘッドスピードを48.8m/sとした。なお、ゴルフクラブヘッドとボールの衝突応答解析に用いたソフトウエアは、「LS−DYNA(LSTC社製)」であり、弾道シミュレーションにはミズノ株式会社製オリジナル弾道シミュレーションプログラムを用いた。この弾道シミュレーションプログラムは、ミズノ株式会社の鳴尾らが2004年日本機械学会発表の「一様気流中で高速回転するゴルフボールの空気力測定と飛翔実験;日本機械学会論文集B編、第70巻、第698号、第2371頁〜第2377頁」論文などから作成したものである。結果は、以下の表7及び表8の通りである。
上記解析の結果、実施例1及び実施例2ともに、コアを支持部とアウターコア層とで構成しているため、キャリー、ランともに延びている。また、実施例2では、リブを設けているため、その効果から、実施例1に比べ、バックスピンが低減していることが分かる。