JP4450119B2 - 多層構造ゴルフボール - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コアに2層以上の被覆層が形成された多層構造ゴルフボールに関し、特に上記被覆層のうち互いに隣接する2層の内側層に凹部を、外側層にこの凹部と対応して凹部内に侵入する凸部を設けた多層構造ゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、ゴルフボールの飛距離の増大と良好なフィーリング性能を両立させるために、様々な検討及び提案が試みられており、中でもソリッドコアとカバーからなるソリッドゴルフボールにおいては、コア及びカバーを多層とし、その硬度や大きさ(直径、厚み)などを調整することが一般的に行われている。
【0003】
例えば、特許第2616385号公報には、コアと内層カバーと外層カバーとからなるスリーピースボールにおいて、内層カバーより外層カバーを硬く形成したスリーピースゴルフボールが提案されている。
【0004】
一方、ゴルフボールを構成する各層の表面形状は滑らかな球面が主流であるが、米国特許第5,882,567号公報には、コアの周囲にカバーをインジェクション成形する時にコアの偏芯を抑制する目的で、コアに突起を有するゴルフボールが提案されている。
【0005】
しかしながら、上記ゴルフボールの突起は、インジェクション成形時のサポートピンの代用を図るためのものであり、このサポートピン突起の形状効果について積極的に活用を試みたものではない。
【0006】
また最近、ツーピースボールのソリッドコアとカバー、多層構造ソリッドコアの隣接する層、及び多層カバー間などに凹凸を設けたゴルフボールが提案されている(特開平9−285565号公報、同10−337340号公報、同11−89970号公報)。このゴルフボールは、打撃時にボールに加わる外力の方向によってプレーヤーに異なる打感を与えることができるものである。
【0007】
しかしながら、上記ゴルフボールは、打感の点は改良されているが、飛び性能の向上、耐久性、打点位置による均一性などの点で十分なものではなく、更なる改良の余地を残していた。
【0008】
本発明は、上記事情を改善するためになされたもので、飛距離が大きいと共にそのばらつきが小さく、かつ良好な打球感を与える多層構造ゴルフボールを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、コアに2層以上の被覆層が形成され、そのうち互いに隣接する2層の内側層に凹部を、外側層にこの凹部に対応してこれに侵入する凸部を形成した多層構造ゴルフボールについて鋭意検討を進めた結果、凹凸形状を内包する構造においては、凹凸そのもののゴルフボール性能への効用を期待して構造設計を行うと、反面、凹凸形状の効果が打球面ごとによってばらつきを生じてしまうことを見出した。凹凸形状による性能への効果が大きければ大きい程、配列そのものの均一性が必要になってくる。その点を鑑み、本発明者は種々検討を進め、上記凹部と接することのない内側層外周と同じ長さの大円状の稜線が1本形成できると共に、この大円状稜線と直角に交差し、内側層外周長さの少なくとも1/4の長さの円弧状の稜線が、極地点と上記大円状稜線との間に、この大円状稜線と極地点から30度の位置との間は少なくとも上記凹部と接することなく、片側半球でそれぞれ少なくとも2本形成でき、かつ、上記大円状稜線によって分けられたそれぞれの半球部において、上記円弧状の稜線によって区画された領域に上記凹部をこの円弧状稜線において線対称に配置した場合、飛距離が大きく、外観が良好なゴルフボールが得られること、特に工程上で比較的安定的に作成しやすく、性能そのものにもばらつきが少ないゴルフボールが得られることを見出した。つまり、内側層表面に凹部を形成することが必要とされるために、作成上、どうしても成形後、離型時にアンダーカットが生じ、従来の射出成形型技術のみでは達成が困難である。予め内側層を凹部を形成することなく作成し、そこから凹部を追加工する手段もあるが、比較的安定して安価に作成するには、金型技術で問題解決する方が望ましい。本発明では、金型を分割し、割型として形成し、従来の射出成形の範疇で形成可能とし、更に配置の制約となる分割線を考慮した配列方法を用い、より均一な性能が得られるような設計を行ったものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記多層構造ゴルフボールを提供する。
請求項1:
コアに2層以上の被覆層が形成され、上記被覆層のうち互いに隣接する2層の内側層に多数の凹部を、外側層に上記凹部に対応してこれら凹部に侵入する凸部を形成した多層構造ゴルフボールであって、上記凹部と接することのない内側層外周と同じ長さの大円状の稜線が1本形成できると共に、この大円状稜線と直角に交差し、内側層外周長さの少なくとも1/4の長さの円弧状の稜線が、極地点と上記大円状稜線との間に、この大円状稜線と極地点から30度の位置との間は少なくとも上記凹部と接することなく、片側半球でそれぞれ少なくとも2本形成でき、かつ上記大円状稜線によって分けられたそれぞれの半球部において、上記円弧状の稜線によって区画された領域に上記凹部がこの円弧状稜線において線対称に配置されたことを特徴とする多層構造ゴルフボール。
請求項2:
上記凹部の内側層外面における開口部の寸法がすべて同一寸法である請求項1記載の多層構造ゴルフボール。
請求項3:
上記円弧状稜線が片側半球において2〜10本形成できると共に、これら円弧状稜線が極地点において互いに等角度で大円状稜線に向けて垂下されている請求項1又は2記載のゴルフボール。
請求項4:
上記互いに隣接する2層の界面がボール表面から0.5〜8mmの位置にある請求項1,2又は3記載のゴルフボール。
請求項5:
上記内側層に、この内側層に凹部を形成しない状態における仮想球表面積をSn(mm2)、この内側層に形成された凹部の表面側開口部面積の総和をSb(mm2)とした場合、その比率Sb/Snが0.02≦Sb/Sn≦0.6となるように凹部を形成した請求項1乃至4のいずれか1項記載のゴルフボール。
請求項6:
上記互いに隣接する内側層と外側層とのショアD硬度での硬度差が20以上60以下であり、かつ外側層が硬いものである請求項1乃至5のいずれか1項記載のゴルフボール。
請求項7:
上記内側層が形成された状態における球体の直径をDn(mm)、この内側層に形成された凹部の表面側開口部面積の総和をSb(mm2)とした場合、
15−0.3×Dn≦Sb≦60−0.3×Dn
の関係を満たすように凹部を形成した請求項1乃至6のいずれか1項記載のゴルフボール。
請求項8:
上記互いに隣接する2層が内層カバーと外層カバーである請求項1乃至7のいずれか1項記載のゴルフボール。
請求項9:
ゴルフボールが、コアを覆って包囲層が形成され、かつこの包囲層を覆って2層以上のカバー層が形成されたものであり、上記互いに隣接する2層が包囲層と最内層カバーである請求項1乃至7のいずれか1項記載のゴルフボール。
【0011】
本発明のゴルフボールにおいては、多層構造のいずれかの互いに隣り合う内外層において、内側層に凹部を形成し、それに相応する凸部を外側層に形成している構造に特徴を有するが、更に本発明は、凹部、凸部の配列に上記配列方法を用いることによって、種々性能のばらつきを少なく抑えることができる。
【0012】
また、隣り合う2つの層に凹凸を設けることによって、凹部を形成する層の素材特性と凸部を形成する層の素材特性とを混合させた効果を得ることができる。本発明においては、特に内側層を外側層よりもショアD硬度で20〜60軟らかい構成とすること、また凹凸を正多面体配列する場合、球面を正多面体分割し、この正多面体の基本ユニットとなる分割面に凹凸を配置するものであるが、この際、互いに隣接する分割面の境界線において、これら隣接する分割面に配置される凹凸が線対称となるような配置態様とすれば、更にその効果を均等に発揮し得る。なお、上記正多面体の基本ユニットは、例えば正4面体、正8面体、正20面体では三角形、正6面体では正方形、正12面体では正五角形となる。また更には、凹部を形成する内側層表面における凹部の面積比率が2〜60%の範囲にあると、その効果が更に助長される。
【0013】
本発明者は、更にゴルフボールの変形に着目して、実際に打撃された時の変形を考慮して検討を重ねた結果、ゴルフボールは、設定するコンプレッションによっても異なるが、打撃時におおよそ3.5〜6cm2くらいの接触面積を有し、圧縮方向の変形は3〜6mm程度になる。従って、この凹凸構造の効果は、ゴルフボール表面から0.5〜8mmの範囲に設定することがより効果的であることを知見したものである。また、このように変形を考慮して凹凸を形成する内外層界面の位置を規定したが、更に本発明においては、内層球の大きさと凹部形成面の占有率の概念とを考慮して、各々の関係を、上限として(60−0.3×内層球の直径)、下限として(15−0.3×内層球の直径)の関係式とを規定することによって、更に効果的な範囲を見出したものである。
【0014】
以下、本発明につき更に詳しく説明すると、本発明のゴルフボールは、コアに2層以上の被覆層が形成されたもので、コアはソリッドコアでも糸巻きコアでもよい。被覆層は、コアを被覆する包囲層、コアを直接又は上記包囲層を介して被覆する1層又は2層以上のカバー層とすることができる。
【0015】
図1は、本発明の多層構造ゴルフボールの一実施例を示す概略断面図であり、この多層ゴルフボール1は、ソリッドコア2と、該コア2を被覆する包囲層3と、この包囲層3を被覆する内層カバー4及びこれを被覆する外層カバー5から構成されている。この場合、包囲層3を省略することができる。
【0016】
上記ソリッドコアは、ポリブタジエンゴムを主成分とする基材ゴムを主材とするゴム組成物から形成される。ポリブタジエンとしては、シス構造を少なくとも40%以上有する1,4−シスポリブタジエンが好適である。また、この基材ゴム中には、所望により上記ポリブタジエンに天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴムなどを適宜配合することができるが、ゴルフボールの反発性を維持するためには、これらポリブタジエン以外のゴム成分は、ポリブタジエン100重量部に対し10重量部以下とすることが好ましい。
【0017】
上記ゴム組成物には、ゴム成分以外に架橋材としてメタクリル酸亜鉛、アクリル酸亜鉛等の不飽和脂肪酸の亜鉛塩、マグネシウム塩やトリメチルプロパンメタクリレート等のエステル化合物などを配合し得るが、特に反発性の高さからアクリル酸亜鉛を好適に使用し得る。これら架橋材の配合量は、基材ゴム100重量部に対し15〜40重量部であることが好ましい。
【0018】
また、加硫剤の配合量は、基材ゴム100重量部に対し0.1〜5重量部とすることができる。
【0019】
ゴム組成物には、更に必要に応じて、老化防止剤や比重調整用の充填剤として酸化亜鉛や硫酸バリウム等を配合することができ、充填剤の配合量は、基材ゴム100重量部に対し5〜130重量部とすることができる。
【0020】
ソリッドコア用ゴム組成物の好適な実施態様は、以下に示す通りである。
シス−1,4−ポリブタジエン 100重量部
酸化亜鉛 5〜40重量部
アクリル酸亜鉛 15〜40重量部
硫酸バリウム 0〜40重量部
パーオキサイド 0.1〜5.0重量部
加硫条件:好ましくは150±10℃の条件で5〜20分間加硫を行う。
【0021】
上記コア用ゴム組成物は、通常の混練機(例えばバンバリーミキサー、ニーダー及びロール等)を用いて混練し、得られたコンパウンドをコア用金型を用いてインジェクション成形又はコンプレッション成形により形成することができる。
【0022】
このようにして得られたソリッドコアは、その直径が好ましくは27mm以上、特に29mm以上であり、41mm以下、特に40mm以下であることが好ましい。
【0023】
また、コアの100kg荷重負荷時の変形量は、好ましくは2.5〜7.0mm、より好ましくは3.0〜6.0mmである。重量は、通常12〜40g程度である。
【0024】
なお、コアは、1種類の材料からなる単層構造としてもよく、異種の材料からなる層を積層した2層以上からなる多層構造としても構わない。
【0025】
上記包囲層は、ポリエステル樹脂、ポリエステルエラストマー、アイオノマー樹脂、スチレン系エラストマー、ポリウレタンエラストマー、水添ブタジエン樹脂及びこれらの混合物などを用いて形成でき、特に熱可塑性ポリエステルエラストマーが好ましい。具体的には、ハイトレル(東レ・デュポン社製)等の市販品を用いることができる。
【0026】
この包囲層のショアD硬度は15以上、特に20以上であり、55以下、特に50以下とすることができる。また、その厚さは0.5mm以上、特に1.5mm以上であり、6mm以下、特に5mm以下とすることができる。
【0027】
カバー(内層カバー、外層カバー)の形成に用いるカバー材は、特に制限されず、公知のカバー材を用いることができ、例えばアイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルエラストマー、スチレン系エラストマー、ポリウレタンエラストマー、水添ブタジエン樹脂、バラタゴム等から任意に選択することができるが、特にアイオノマー樹脂が好ましい。具体的には、「サーリン」(デュポン社製)、「ハイミラン」(三井・デュポンポリケミカル社製)などの市販品を用いることができる。
【0028】
このカバー材には、所望により二酸化チタン、硫酸バリウム等を添加して、比重などを調整することができる。更に、必要に応じてUV吸収剤、酸化防止剤、金属石鹸等の分散剤などを添加することもできる。なお、カバーは1種の材料からなる単層構造としてもよく、異種の材料からなる層を積層した2層以上の多層構造としてもよい。
【0029】
上記カバーの総厚みは0.5mm以上、特に1.0mm以上であり、8mm以下、特に7mm以下とすることができる。なお、内層カバーと外層カバーの2層構造の場合、内層カバー厚さを0.3mm以上、特に1.0mm以上とし、7mm以下、特に6mm以下とすると共に、外層カバーを0.5mm以上、特に1.0mm以上とし、6mm以下、特に4mm以下とすることが好ましい。
【0030】
カバーの硬度は、通常ショアD硬度として15〜80の範囲から選定される。また、内層カバーと外層カバーの2層構造に形成する場合、いずれが硬くてもよい。
【0031】
而して、本発明にあっては、上記2層以上の被覆層が形成された多層構造ゴルフボールにおいて、上記被覆層のうち互いに隣接する2層、例えば図1のゴルフボールにあっては、内層カバーと外層カバー、あるいは包囲層と内層カバーの内側層に多数の凹部を形成すると共に、外側層に上記凹部に対応してこれら凹部に侵入する凸部を形成する。なお、図1は、内層カバーに凹部4aが形成され、これに外層カバーの凸部が侵入した状態を示す。
【0032】
この場合、凹部(凸部)の個数は50個以上、好ましくは70個以上、更に好ましくは120個以上であり、500個以下、好ましくは460個以下、更に好ましくは410個以下とすることが推奨される。少なすぎると作用効果が得にくく、ばらつきも多くなる。多すぎると作用効果が得にくく、従来の多層ゴルフボールと大きな相違がなくなる。
【0033】
凹部の深さは、その内側層の厚さに対応するが、内側層の厚さの1/2以上、より好ましくは2/3以上、更に好ましくは内側層を貫通して形成することが好ましい。また凹部の形状は特に制限されないが、円柱、円錐、角柱、角錐、円錐台、角錐台状等の適宜な形状に形成し得る。なお、凹部を内側層を貫通した状態で形成する場合、貫通した状態とは、内側層の内面において凹部が点状に集束した状態を含むものであるが、最も好ましくは内側層内面において開口した状態であることが凸部の補強効果の増大、即ち作用効果を十分得るために好適である。
【0034】
また、凹部の内側層外面における開口部の寸法(大きさ;平面円形の場合は直径、三角形の場合は最も長い辺、四角形その他の場合は最も長い対角線)は0.5mm以上、好ましくは1.0mm以上であり、5.0mm以下、好ましくは4.0mm以下とすることがよい。
【0035】
更に、上記内側層に、この内側層に凹部を形成しない状態における仮想球表面積をSn(mm2)、この内側層に形成された凹部の表面側開口部面積の総和をSb(mm2)とした場合、その比率Sb/Snが0.02以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.04以上であり、0.6以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.45以下となるように凹部を形成することが好ましい。
【0036】
また、上記内側層の外面(内側層と外側層との界面)は、ゴルフボール表面(ディンプルが形成されていない部分)から0.5〜8mm、特に1〜6mmの位置にあることが好ましいが、上記内側層が形成された状態における球体の直径をDn(mm)、この内側層に形成された凹部の表面側開口部面積の総和をSb(mm2)とした場合、
15−0.3×Dn≦Sb≦60−0.3×Dn
の関係を満たすように凹部を形成することが好ましい。
【0037】
ここで、凹部を内側層の外面に配列する場合、上記凹部と接することのない内側層外周と同じ長さの大円状の稜線が1本形成できると共に、この大円状稜線と直角に交差し、内側層外周長さの少なくとも1/4の長さの円弧状の稜線が、極地点と上記大円状稜線との間に、この大円状稜線と極地点から30度の位置との間は少なくとも上記凹部と接することなく、片側半球でそれぞれ少なくとも2本形成でき、かつ上記大円状稜線によって分けられたそれぞれの半球部において、上記円弧状の稜線によって区画された領域に上記凹部をこの円弧状稜線において線対称に配置する。
【0038】
図2はこれを示すもので、図中11は内側層、12は凹部と接することのない上記大円状の稜線で、これは通常赤道線となる。また、13は極地点14から上記大円状の稜線12に垂直に垂下された内側層外周長さの1/4の長さの円弧状の稜線であり、この円弧状稜線(1/4稜線)13は、片側半球に少なくとも2本、好ましくは2〜10本、より好ましくは3〜10本、更に好ましくは3〜8本形成される。この場合、これら円弧状稜線13は、極地点14において互いに等角度で等配されていることが好ましい。また、これら円弧状稜線13は、上記大円状稜線12と上記極地点14から30度の位置Pとの間は上記凹部と接しないものであり、好ましくは該稜線13全長において凹部と接しないものである。
【0039】
なお、図2においては、片側半球11aに円弧状稜線13が形成された状態を示しているが、他の片側半球11bにも同様に円弧状稜線13が形成されるものである。この場合、他の片側半球11bにおける円弧状稜線の態様は上記と同じであるが、両半球11a,11bにおいて、円弧状稜線の数は同じでも異なっていてもよいが、同じである方が均一性の点から好ましい。また、一方の片側半球11aの円弧状稜線が大円状稜線において他の片側半球11bの円弧状稜線と連続していてもよく、また他の片側半球11bの円弧状稜線と非連続状態にあってもよい。なお、一方の片側半球11aにおいて、極地点14で2本の円弧状稜線が互いに180度の位相差を持つ場合、これら2本の円弧状稜線は半円状稜線を形成し、これが他方の半球11bにおける半円状稜線と連続している場合、大円状稜線を形成するものである。
【0040】
また、凹部は、上記円弧状の稜線によって区画された領域(例えば、図2においてAとB)にそれぞれ円弧状稜線において線対称に配置される。
【0041】
なお、上記のように内側層に凹部を、外側層に凸部を形成する場合、互いに隣接する内側層と外側層とのショアD硬度での硬度差は20以上、特に25以上であり、60以下、特に55以下であり、かつ外側層を硬いものとすることが好ましい。
【0042】
本発明においては、上記内側層を通常のインジェクション成形又はコンプレッション成形により形成することができ、この場合、内側層の成形と同時にその表面に多数の凹部を形成することが好ましい。具体的には、内側層用金型のキャビティ内表面に多数の凹部に対応した多数の凸部を形成し、この金型を用いて通常のインジェクション成形により表面に多数の凹部を有する内側層を形成することができる。なお、場合によっては、内側層を形成後、その表面をくり抜くことにより凹部を形成することも可能である。そして、これら凹部の形成に対応して、これら凹部間に凸部が形成される。
【0043】
本発明においては、表面に凹部を多数形成した内側層を覆って外側層を通常のインジェクション成形又はコンプレッション成形することで、内側層内に凸部を有する外側層が形成される。
【0044】
本発明のゴルフボールは、ボール直径及び重量はR&Aのゴルフ規則に従い、直径42.67mm以上、重量45.93g以下に形成することができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明の多層構造ゴルフボールは、スピン性能が減少し、これによってゴルフボール飛翔中の余分な揚抗力を減じることができ、結果的に飛距離増大につながるものである。また、打球感に関しては、従来タイプの球平面のみで互いに接しあった構造では達し得なかった軟らかさ、快い軽さ、軽快な打球音等を同時に満足することができる。同時に、正多面体配列することによって、ボールのどの位置を打撃しても同様な打球感、スピン性能、飛距離を得ることができる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0047】
〔実施例,比較例〕
表1に示した配合処方のコア用ゴム組成物をニーダーで混練し、コア用金型内で155℃の温度で約15分間加硫することにより、ソリッドコアを作成した。また、表1に示した配合処方の包囲層、内層カバー、外層カバーを上記コアの周囲に射出成形で被覆した。この場合、実施例1〜7,比較例1,2,4の内層カバー又は包囲層用金型には、キャビティ内周面に多数の凸形状(円柱)を形成することにより、凹部が表2,図3〜10及び表4に示した態様で形成される。なお、図3〜10において、20は凹部を示す。
【0048】
【表1】
Figure 0004450119
【0049】
【表2】
Figure 0004450119
【0050】
次いで、得られたゴルフボールの飛距離及び打感を下記のようにして評価した。結果を表5,6に示す。
【0051】
飛距離の評価
ミヤマエ社製スイングロボットを用い、ブリヂストンスポーツ社製ゴルフクラブ(ドライバー(#W1),230チタン,Sシャフト,ロフト10.5度)を使用して、ボール1種類当たり、ヘッドスピード45m/secで30個打撃して、平均値、最大値、最小値にて評価した。
打球感の評価
アマチュア,プロ各2名ずつ合計4名で評価した。いずれも、#W1,#I5によってテストし、各々のボールを適宜組み合わせ、最低3個ずつ打撃した。
評価には、従来技術(比較例3)に対する相対評価を点数化して平均値で表した。
【0052】
【表3】
Figure 0004450119
【0053】
【表4】
Figure 0004450119
【0054】
【表5】
Figure 0004450119
【0055】
【表6】
Figure 0004450119

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るゴルフボールの概略断面図である。
【図2】本発明の稜線形成態様の説明図である。
【図3】凹部配列態様Iの斜視図である。
【図4】凹部配列態様IIの斜視図である。
【図5】凹部配列態様IIIの斜視図である。
【図6】凹部配列態様IVの斜視図である。
【図7】凹部配列態様Vの斜視図である。
【図8】凹部配列態様VIの斜視図である。
【図9】凹部配列態様VIIの斜視図である。
【図10】凹部配列態様VIIIの斜視図である。
【符号の説明】
1 ゴルフボール
2 コア
3 包囲層
4 内層カバー
5 外層カバー

Claims (9)

  1. コアに2層以上の被覆層が形成され、上記被覆層のうち互いに隣接する2層の内側層に多数の凹部を、外側層に上記凹部に対応してこれら凹部に侵入する凸部を形成した多層構造ゴルフボールであって、上記凹部と接することのない内側層外周と同じ長さの大円状の稜線が1本形成できると共に、この大円状稜線と直角に交差し、内側層外周長さの少なくとも1/4の長さの円弧状の稜線が、極地点と上記大円状稜線との間に、この大円状稜線と極地点から30度の位置との間は少なくとも上記凹部と接することなく、片側半球でそれぞれ少なくとも2本形成でき、かつ上記大円状稜線によって分けられたそれぞれの半球部において、上記円弧状の稜線によって区画された領域に上記凹部がこの円弧状稜線において線対称に配置されたことを特徴とする多層構造ゴルフボール。
  2. 上記凹部の内側層外面における開口部の寸法がすべて同一寸法である請求項1記載の多層構造ゴルフボール。
  3. 上記円弧状稜線が片側半球において2〜10本形成できると共に、これら円弧状稜線が極地点において互いに等角度で大円状稜線に向けて垂下されている請求項1又は2記載のゴルフボール。
  4. 上記互いに隣接する2層の界面がボール表面から0.5〜8mmの位置にある請求項1,2又は3記載のゴルフボール。
  5. 上記内側層に、この内側層に凹部を形成しない状態における仮想球表面積をSn(mm2)、この内側層に形成された凹部の表面側開口部面積の総和をSb(mm2)とした場合、その比率Sb/Snが0.02≦Sb/Sn≦0.6となるように凹部を形成した請求項1乃至4のいずれか1項記載のゴルフボール。
  6. 上記互いに隣接する内側層と外側層とのショアD硬度での硬度差が20以上60以下であり、かつ外側層が硬いものである請求項1乃至5のいずれか1項記載のゴルフボール。
  7. 上記内側層が形成された状態における球体の直径をDn(mm)、この内側層に形成された凹部の表面側開口部面積の総和をSb(mm2)とした場合、
    15−0.3×Dn≦Sb≦60−0.3×Dn
    の関係を満たすように凹部を形成した請求項1乃至6のいずれか1項記載のゴルフボール。
  8. 上記互いに隣接する2層が内層カバーと外層カバーである請求項1乃至7のいずれか1項記載のゴルフボール。
  9. ゴルフボールが、コアを覆って包囲層が形成され、かつこの包囲層を覆って2層以上のカバー層が形成されたものであり、上記互いに隣接する2層が包囲層と最内層カバーである請求項1乃至7のいずれか1項記載のゴルフボール。
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