JP4381578B2 - 感熱記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、感熱記録材料に関する。さらに詳しくは、耐水性および耐可塑剤性に優れた感熱記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ビニルアルコール系重合体(以下ビニルアルコール系重合体をPVAと略記することがある)は各種バインダー、接着剤あるいは表面処理剤として広く使用されており、造膜性および強度において他の水溶性樹脂の追随を許さぬ優れた性能を有することが知られている。しかしながらPVAは水溶性であるため、耐水性、特に低温で乾燥する場合の耐水性が低いという欠点があり、従来、この欠点を改良するための種々の方法が検討されてきた。例えばPVAをグリオキザール、グルタルアルデヒドあるいはジアルデヒドデンプン、水溶性エポキシ化合物、メチロール化合物等で架橋させる方法が知られている。しかしながら、この方法でPVAを十分耐水化するためには100℃以上、特に120℃以上の高温で長時間熱処理することが必要である。この場合、乾燥温度が高いために感熱記録材料表面保護層に応用しようとすると、乾燥時に感熱層が発色するために実質的に応用できない。また、乾燥時の発色を防ぐために低温乾燥で耐水化するためには、例えばpH2以下というような強酸性条件を用いることも知られているが、この場合にはPVA水溶液の粘度安定性が悪く使用中にゲル化する等の問題点を有している上、耐水性が不十分であるという欠点を有している。さらに、カルボキシル基含有PVAをポリアミドエピクロルヒドリン樹脂で架橋させる方法、アセトアセチル基含有PVAをグリオキザール等の多価アルデヒド化合物で架橋させる方法等も知られている。例えば、特開昭59−106995号公報ではアセトアセチル基含有PVAを用い架橋剤としてグリオキザールなどのアルデヒド類などを使用しているが、塗工液の粘度安定性などで問題があった。特開平9−11623号公報では、粘度安定性などでは幾分改善が見られるものの、依然としてアルデヒド類を架橋剤として用いていることから作業環境への配慮などが十分でない場合があり、さらに、場合によっては、保護層に求められる耐水性や耐可塑剤性などの性能の発現までに時間を要する場合があり必ずしも満足行くものではなかった。エピクロルヒドリンを用いる場合、それ自身が人体に有害な物質であるので使用すること自体好ましくない。また、カルボキシル基含有PVAとジルコニウム化合物を併用する方法(特開平1−101187)も知られているが、PVAに対してジルコニウム化合物を大量に加えなければ効果が認められない上、耐水化の程度も十分満足行くものではなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術の欠点を解消するために創案されたものであり、70℃以下、とくに室温から50℃程度の低温で乾燥する場合にも、製造直後から著しく耐水性に優れ、耐可塑剤性に優れる感熱記録材料を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、表面保護層、感熱発色層、アンダーコート層および基材のうち少なくとも1つに、ビニルアルコール系重合体(A)および有機チタン化合物(B)を、重量配合比率(B)/(A)が0.1/99.9〜20/80の範囲で含有する感熱記録材料を提供することによって達成される。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の感熱記録材料に用いるビニルアルコール系重合体(A)は、ビニルエステル重合体のけん化物またはビニルエステルと共重合可能な他のビニルモノマーとの共重合体をけん化することにより得られる。該重合を行うにあたっては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法を採用することができる。その中でも、無溶媒あるいはアルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が通常採用され、高重合度のものを得る場合には、乳化重合法が採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。重合に使用される開始剤としては、例えば、α,α'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、−30〜150℃の範囲が適当である。
【0006】
上述の方法で用いるビニルエステル系単量体としては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられるが、一般に酢酸ビニルが用いられる。
【0007】
本発明において、ビニルアルコール系重合体(A)としては、炭素数4以下のα―オレフィン単位を含有する変性PVA、分子内にシリル基を有する変性PVAおよび炭素数4以下のα―オレフィン単位と分子内にシリル基を有する変性PVAが、後述する実施例からも明らかなように、好適に用いられる。このうち炭素数4以下のα―オレフィン単位と分子内にシリル基を有する変性PVAが最適であり、炭素数4以下のα―オレフィン単位を含有する変性PVAが好適である。
炭素数4以下のα―オレフィン単位を含有する変性PVAの製造方法としては、ビニルエステルおよび炭素数4以下のα―オレフィンとの共重合体をけん化することにより得られる。炭素数4以下のα−オレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、nーブテン、イソブテン等が挙げられるが、本発明の目的とする感熱記録材料を得る点で、エチレンが好ましい。炭素数4以下のα−オレフィン単位の含有量は1〜20モル%が好適であり、1.5〜18モル%、さらには2〜15モル%がさらに好ましく、2〜13モル%が最良である。
【0008】
分子内にシリル基を含有する変性PVAの製造方法としては、PVAあるいはカルボキシル基又は水酸基を含有する変性ポリ酢酸ビニルに、シリル化剤を用いて後変性によりシリル基を導入する方法、ビニルエステルとシリル基含有オレフイン性不飽和単量体との共重合体をケン化する方法、シリル基を有するメルカプタンの存在下でビニルエステルを重合することによって得られる末端にシリル基を有するポリビニルエステルをケン化する方法が挙げられる。PVAあるいは変性ポリ酢酸ビニルにシリル化剤を用いて後変性する方法においては、例えば、シリル化剤と反応しない有機溶媒、たとえばベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、エーテル又はアセトンなどにシリル化剤を溶解させ、該溶液中に粉末状PVAあるいは上記変性ポリ酢酸ビニルを撹拌下に懸濁させ、常温からシリル化剤の沸点の範囲の温度においてシリル化剤とPVAあるいは上記変性ポリ酢酸ビニルを反応させることによって、あるいは更にアルカリ触媒等によって酢酸ビニル単位をケン化することによってシリル基含有変性PVAを得ることができる。後変性において用いられるシリル化剤としては、トリメチルクロルシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、ビニルトリクロルシラン、ジフェニルジクロルシラン、トリエチルフルオルシラン等のオルガノハロゲンシラン、トリメチルアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシランなどのオルガノシリコンエステル、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシランなどのオルガノアルコキシシラン、トリメチルシラノール、ジエチルシランジオール等のオルガノシラノール、N−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルキルシラン、トリメチルシリコンイソシアネート等のオルガノシリコンイソシアネート等が挙げられる。シリル化剤の導入率すなわち変性度は用いられるシリル化剤の量、反応時間によって任意に調節することができる。また得られるシリル基含有変性PVAの重合度、ケン化度は用いられるPVAの重合度、ケン化度あるいは上記変性ポリ酢酸ビニルの重合度およびケン化反応によって任意に調節することができる。
【0009】
またビニルエステルとシリル基含有オレフイン性不飽和単量体との共重合体をケン化する方法においては、例えば、アルコール中においてビニルエステルとシリル基含有オレフイン性不飽和単量体とをラジカル開始剤を用いて共重合せしめ、しかる後に該共重合体のアルコール溶液にアルカリあるいは酸触媒を加えて該共重合体をケン化せしめることによってシリル基含有変性PVAを得ることができる。上記の方法において用いられるビニルエステルとしては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ギ酸ビニル等が挙げられるが、経済的にみて酢酸ビニルが好ましい。また上記の方法において用いられるシリル基含有オレフイン性不飽和単量体としては下記の化1で示されるビニルシラン、化2で示される(メタ)アクリルアミド−アルキルシラン等が挙げられる。
【0010】
【化1】
【0011】
【化2】
【0012】
〔ここでnは0〜4、mは0〜2、R1は炭素数1〜5のアルキル基(メチル、エチルなど)、R2は炭素数1〜40のアルコキシル基またはアシロキシル基(ここでアルコキシル基又はアシロキシル基は酸素を含有する置換基を有していてもよい。)、R3は水素原子またはメチル基、R4は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、R5は炭素数1〜5のアルキレン基または連鎖炭素原子が酸素もしくは窒素によって相互に結合された2価の有機残基をそれぞれ示す。なおR1が同一単量体中に2個存在する場合はR1は同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。またR2が同一単量体中に2個以上存在する場合も、R2は同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。〕
【0013】
化1で示されるビニルシランの具体例としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス−(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルジメチルアセトキシシラン、ビニルイソブチルジメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリヘキシロキシシラン、ビニルメトキシジヘキシロキシシラン、ビニルジメトキシオクチロキシシラン、ビニルメトキシジオクチロキシシラン、ビニルトリオクチロキシシラン、ビニルメトキシジラウリロキシシラン、ビニルジメトキシラウリロキシシラン、ビニルメトキシジオレイロキシシラン、ビニルジメトキシオレイロキシシラン等が挙げられる。
【0014】
また化2で表される(メタ)アクリルアミド−アルキルシランの具体例としては例えば、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルエチルトリメトキシシラン、N−(2−(メタ)アクリルアミド−エチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリアセトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−エチルトリメトキシシラン、1−(メタ)アクリルアミド−メチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルジメチルメトキシシラン、3−(N−メチル−(メタ)アクリルアミド)−プロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミド−メトキシ)−3−ハイドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミド−メトキシ)−プロピルトリメトキシシラン、ジメチル−3−(メタ)アクリルアミド−プロピル−3−(トリメトキシシリル)−プロピルアンモニウムクロライド、ジメチル−2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピル−3−(トリメトキシシリル)プロピルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
また、下記の化3で表されるポリエチレングリコール化ビニルシラン等も挙げられる。
【0015】
【化3】
【0016】
(ここでR1、mは前記と同じ、xは1〜20を示す。)
【0017】
またシリル基を有するメルカプタンの存在下でビニルエステルを重合することによって得られる末端にシリル基を有するポリビニルエステルをケン化する方法においては、例えばビニルエステルをラジカル開始剤を用いて重合せしめる際、シリル基を有するメルカプタンを重合系に一括または分割あるいは連続して添加し、重合系中にシリル基を有するメルカプタンを存在せしめ、メルカプタンへの連鎖移動によって末端にシリル基を有するポリビニルエステルを生成せしめた後、該ポリビニルエステルのアルコール溶液にアルカリあるいは酸触媒を加えて該ポリビニルエステルをケン化せしめることによってシリル基を有する変性PVAを得ることができる。
【0018】
本方法で用いられるシリル基を有するメルカプタンとしては3−(トリメトキシシリル)−プロピルメルカプタン等が使用しうる。本方法で変性PVAを製造するにあたってはビニルエステルと共重合可能な不飽和単量体を少割合で存在させることも可能である。
【0019】
本発明において使用される分子内にシリル基を含有する変性PVAの上述した3つの製造方法においては、ビニルエステルとシリル基を含有するオレフイン性不飽和単量体との共重合体をケン化する方法およびシリル基を有するメルカプタンの存在下でビニルエステルを重合して得られる末端にシリル基を有するポリビニルエステルをケン化する方法が工業的製造の容易性および、得られる変性PVAの均質性の点で好ましく用いられる。
【0020】
本発明においてPVA中のシリル基の含有量、ケン化度あるいは重合度は目的に応じて適宜選択され特に制限はない。シリル基は比較的少量の含有率でも効果が発揮され、通常シリル基を含む単量体単位として0.01〜10モル%、好ましくは0.01〜2.5モル%、さらに好適には0.01〜1モル%の範囲から選ばれる。最適には、0.1〜1モル%である。
また、本発明においては、同一分子中に前記したα−オレフイン単位およびシリル基を有する変性PVAが最適であり、このような変性PVAは、たとえば前記した炭素数4以下のα−オレフイン、ビニルエステルおよびシリル基含有オレフイン性不飽和単量体を共重合し、さらにけん化することにより得られる。
【0021】
本発明に使用する上記PVAを水に溶解するにあたっては、通常変性PVAを水に分散後場合によっては水酸化ナトリウム等のアルカリを添加し、撹拌しながら加温することによって均一な水溶液を得ることができる。
【0022】
本発明に使用する上記PVAは、本発明の効果を損なわない範囲で、ビニルエステルと共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合してもよい。エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマール酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸などの不飽和酸類あるいはその塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類;アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩などのアクリルアミド類;メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩などのメタクリルアミド類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基含有のα−オレフィン等が挙げられる。これらの単位の含有量としては、20モル%以下が好ましい。
【0023】
また、本発明に使用するPVAの粘度平均重合度(以下重合度と略記する)に特に制限はないが、重合度としては通常50〜10000、好ましくは100〜8000、より好ましくは100〜4000の範囲から選ばれる。例えば、感熱発色層のバインダーとして用いられる場合には、通常500〜3000の重合度のPVAが好ましく、感熱記録材料の表面保護層やアンダーコート層として用いられる場合には、通常重合度1000〜4000の比較的中〜高重合度のPVAが好ましい。重合度が50未満の場合には、バインダーあるいは表面保護層として目的の性能が発現できないことから、満足な感熱記録材料が得られない。重合度が10000より大の場合には、バインダーとしては感熱記録材料の印字部の濃度が低下し、また水性分散液の粘度が高くなりすぎて取扱いが困難になり、水性分散液の固形分濃度を高くできなかったり、表面保護層としてはポリマー溶液の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難になり、均一な層が得られない。
【0024】
本発明に用いるPVAのけん化度は60〜99.99モル%であることが必要であり、70〜99.9モル%が好ましく、80〜99.5モル%がより好ましい。けん化度についても重合度の場合と同様に感熱記録材料の用途によって使い分けることができるが、一般的には、けん化度が60モル%未満の場合には、水溶性が低下するため、目的とする感熱記録材料が得られない。けん化度が99.99モル%より大の場合には、感熱記録材料の印字部の濃度が低下し、また水性分散液の粘度が高くなりすぎて取り扱いが困難になり、水性分散液の固形分濃度を高くできない。
【0025】
本発明の感熱記録材料を構成する有機チタン化合物(B)としては、チタンラクテート、その部分または完全中和物(たとえば、チタンラクテート一アンモニウム塩、チタンラクテート二アンモニウム塩、チタンラクテート一ナトリウム塩、チタンラクテート二ナトリウム塩、チタンラクテート一カリウム塩、チタンラクテート二カリウム塩)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミナート)、ジ−n−ブトキシシチタンビス(トリエタノールアミナート)、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ポリチタンビス(アセチルアセトナート)、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、チタンテトラステアリレートなどが挙げられる。これらのチタン化合物の中でもキレート型の配位子を有する有機チタン化合物で、水溶性のものが好ましく、具体的にはチタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミナート)、ジ−n−ブトキシチタンビス(トリエタノールアミナート)が好適なものとして挙げられる。これらのチタン化合物は必ずしも単独で使用する必要はなく、必要に応じて2種以上混合して用いることもできる。
【0026】
本発明の感熱記録材料は上述の如く、ビニルアルコール系重合体(A)および有機チタン化合物(B)よりなり、(A)と(B)の重量配合比率(B)/(A)が0.1/99.9〜20/80であることが必須の条件であり、好適には1/99〜15/85である。
【0027】
本発明の記録材料においては、上記ビニルアルコール系重合体(A)および有機チタン化合物(B)からなる組成物を表面保護層(オーバーコート層)に使用することが最適であるが、感熱発色層、アンダーコート層および基材のうち少なくとも1つの層に用いることもできる。ここで、感熱発色層とは感熱染料、顕色剤、分散剤を含有する層であり、表面保護層とは感熱発色層上に用いる表面保護層であり、アンダーコート層とは感熱発色層と基材の間に用いる層である。これらの層の少なくともいずれか1つの層にビニルアルコール系重合体(A)および有機チタン化合物(B)からなる組成物を含むものであり、好ましくはいずれか2つ以上の層、さらに好ましくは全ての層に含むのが効果的である。
感熱記録材料として、表面保護層を設けず、感熱発色層が最上層(表面層)となる感熱記録材料があり、この場合は感熱発色層に上記(A)および(B)からなる組成物を使用することが効果的である。このように本発明においては、感熱記録材料の最上層(表面保護層または感熱発色層)に上記(A)および(B)からなる組成物を使用するとき顕著な効果がみられる。
【0028】
感熱記録材料の感熱発色層中におけるビニルアルコール系重合体(A)および有機チタン化合物(B)の合計含有量としては、特に制限はないが、感熱染料または顕色剤100重量部に対して、0.1〜50重量部が好ましく、0.5〜40重量部がより好ましく、1〜30重量部がさらにより好ましい。
【0029】
感熱染料または顕色剤の分散は、平均径0.2〜3mm(好ましくは0.3〜0.8mm)の多数のガラスビーズが中に入ったサンドグラインダーを用いて行われる。分散時間は1時間〜1週間(好ましくは3時間〜4日間、特に平均径0.45μm以下の微粒子を得る場合には1〜4日間)の範囲で行われる。
この方法により、粒子径0.1〜1μm(好ましくは0.2〜0.8μm、より好ましくは0.2〜0.6μm、さらにより好ましくは0.2〜0.45μm)の感熱染料または顕色剤を分散質とする水性分散液が得られる。
【0030】
本発明に用いられる感熱染料としては、一般の感圧記録紙または感熱記録紙に用いられるものであれば特に制限されない。具体的な例を挙げれば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタル・バイオレット・ラクトン)、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス−(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド等のトリアリールメタン系化合物;4,4´−ビスジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニルロイコオーラミン等のジフェニルメタン系化合物;ローダミンB−アニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ブチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−エチル−トリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−シクロヘキシル−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−(β−エトキシエチル)アミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−(γ−クロロプロピル)アミノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等のキサンテン系化合物;ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等のチアジン系化合物;3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジルスルピロ−ジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシ−ベンゾ)−スピロピラン、6'−[エチル(3−メチルブチル)アミノ]−3'−メチル−2'−(フエニルアミノ)−スピロ[イソベンゾフラン−1−(3H),9'−(9H)キサンテン]−3−オン等のスピロ系化合物などがあり、これらは単独でまたは2種以上の混合物として用いられる。これらの感熱染料は、感熱記録材料の用途により適宜選択使用される。
【0031】
本発明に使用される顕色剤としては、フェノール誘導体、芳香族カルボン酸誘導体が好ましく、特にビスフェノール類が好ましい。具体的には、フェノール類として、p−オクチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチル−ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、芳香族カルボン酸誘導体としては、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、上記のカルボン酸の多価金属塩等が挙げられる。
【0032】
本発明において、感熱発色層を形成する方法としては、エアーナイフ法、プレート法、グラビア法、ロールコータ法、スプレー法、ディップ法、バー法、エクストルージョン法などの公知塗布方法が利用可能である。
【0033】
また、本発明において上記(A)および(B)の混合水溶液、あるいはこれに後述するような充填材、または各種高分子などを配合した水溶液を塗布して表面保護層(オーバーコート層)を形成する場合、表面保護層の塗布量(全固形分)は、サーマルヘッドから発色層への熱伝導が阻害されない程度で適宜選択されるものであるが、通常1〜20g/m2 、好ましくは2〜15g/m2 であり、また(A)および(B)の合計塗布量(固形分)は、0.1〜10g/m2 、好ましくは0.2〜7g/m2である。
【0034】
本発明の上記(A)および(B)からなる組成物は、基材と感熱発色層の間のアンダーコート層にも使用できる。
本発明の組成物を感熱記録材料のコート層、とくに表面保護層に使用することにより、後述する実施例からも明らかなように、塗工時における感熱発色層の発色を防止するための温度条件、すなわち、70℃以下、とくに室温〜50℃の比較的低温の乾燥条件においても充分な耐水性が付与されるため、感熱発色層の発色を防止しつつ、感熱紙を得ることができ、さらにまた、得られた感熱紙を感熱プリンターを用いて印字した場合、印字部分は鮮明であり、また耐可塑剤性、耐油性もともに優れている。
【0035】
本発明のビニルアルコール系重合体(A)および有機チタン化合物(B)を感熱発色層、表面保護層、アンダーコート層および基材のいずれかに用いる場合、これらの組成物に、本発明の目的が阻害されない範囲で、溶媒、充填材、界面活性剤(ノニオン性、アニオン性)、滑剤、消泡剤、分散剤、湿潤剤、圧力発色防止剤、シランカップリング剤、pH調節剤、各種高分子(水溶性高分子または高分子エマルジョンまたはラテックス等)を、用途または性能に応じて適宜配合するすることができる。
【0036】
溶媒としては、水あるいは水に各種アルコール、ケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の溶媒を併用したものが挙げられる。
滑剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0037】
また、充填材としては、カオリン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、焼成クレー、酸化チタン、ケイソウ土、シリカ、コロイダルシリカ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ケイ酸マグネシウム、ポリスチレン微粒子、、ポリ酢酸ビニル系微粒子、尿素−ホルマリン樹脂微粒子、小麦粉等が挙げられる。
【0038】
水溶性高分子または高分子分散体としては、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、アラビヤゴム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸のアルカリ塩(ソーダ塩等)、アクリル酸(またはメタクリル酸)エステル共重合体のアルカリ塩(ソーダ塩等)、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド(またはメタクリルアミド)/アクリル酸(またはメタクリル酸)エステル共重合体、アクリルアミド(またはメタアクリルアミド)/アクリル酸エステル(またはメタアクリル酸エステル)/アクリル酸(またはメタアクリル酸)三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩(ソーダ塩)、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩(ソーダ塩等)、ジイソブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩(ソーダ塩等)、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子;ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のエマルジョン、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体等のラテックス等が挙げられる。
【0039】
本発明の記録材料の基材としては、紙が代表的なものとして挙げられるが、さらに樹脂フイルムも使用できる。ここで、樹脂フイルムとしては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリイミドなどの樹脂フイルムが挙げられる。
【0040】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、実施例中、特に断りのない限り、「%」および「部」はそれぞれ「重量%」および「重量部」を意味する。
【0041】
実施例1
(1)塗工液の調製(感熱染料および顕色剤の分散)
A.感熱染料の水性分散液の調製
ロイコ染料(6'−[エチル(3−メチルブチル)アミノ]−3'−メチル−
2'−(フエニルアミノ)−スピロ[イソベンゾフラン−1−(3H),9'−(
9H)キサンテン]−3−オン:山田化学株式会社製、商品名:S−205)
20%
濃度10%のPVA203(クラレ製)水溶液 20%
水 59.9%
消泡剤(クラリアント社製、商品名:ジョルシンLB−D) 0.1%
B.顕色剤の水性分散液の調製
ビスフェノールA 20%
濃度10%のPVA203(クラレ製)水溶液 20%
水 59.9%
消泡剤(クラリアント社製、商品名:ジョルシンLB−D) 0.1%
C.顔料の水性分散液の調製
ステアリン酸アミド 10%
ミズカシルP−527(水沢化学株式会社製;シリカ粉末)
20%
濃度5%のPVA205(クラレ製)水溶液 30%
水 40%
【0042】
上記の水性分散液A、BおよびCをそれぞれ別々に調製し、15分間ビーカーで予備攪拌を行った。
次にそれぞれの水性分散液AおよびBをサンドグラインダー(関西ペイント株式会社製、バッチ式卓上サンドグラインダー)に移し、ガラスビーズ(直径0.5mmのソーダ石英ガラス)300ccを加え、高回転数(2170rpm)、冷却下にて、6時間かけて分散させた。得られた感熱染料の水性分散液Aの分散粒子径をレーザー回折式粒度測定機(島津株式会社製、型式:SALD−1000)により測定した結果、0.46μmであった。また、分散液の粘度は、30℃、BL型粘度計30rpmで測定した結果29.4mPa・sであった。
次に、水性分散液Cをホモジナイザー(10000rpm)を用いて、2分間分散させた。
【0043】
(2)感熱発色層のバインダー用塗工液の調製
エチレン単位5.1モル%、ビニルエステル部分のけん化度99.3モル%、重合度1550のビニルアルコール系重合体(A)に対して消泡剤(ジョルシンLB−D)を0.15wt%添加して10%水溶液(a)を作成した。室温で水溶液(a)95部を撹拌しながら、TC−310(松本製薬(株)製;チタンラクテート)(B)の10%溶液を5部ゆっくり加えて、変性ポリビニルアルコールおよび有機チタン化合物の10%混合溶液を作成した{重量配合比率:(B)/(A)=5/95}。30℃、BL型粘度計30rpmで測定した結果850mPa・sであった。30℃で2週間放置した後の粘度は、調製直後の1.10倍であり、ほとんど変化せず良好であった。
【0044】
(3)表面保護層用塗工液の調製
エチレン単位4.5モル%、ビニルエステル部分のけん化度98.4モル%、重合度1550のビニルアルコール系重合体(A)に対して、消泡剤(ジョルシンLB−D)を0.15wt%添加して12%水溶液(b)を作成した。プロノン104(日本油脂株式会社製;濡れ向上剤;エチレン−プロピレンオキサイド共重合体)を0.2部、ミズカシルP−527(水沢化学株式会社製)50部に水72.5部を加えて十分分散させながら、水溶液(b)690部をゆっくり室温で加えた後、ハイドリン(中京油脂株式会社製; 滑剤;ステアリン酸亜鉛の30%分散液)を7.5部加えて、変性ビニルアルコール系重合体のシリカ分散水溶液を作成した。TC−310(B)の10%溶液30部を変性ビニルアルコール系重合体のシリカ分散水溶液に室温で撹拌しながらゆっくり加え、固形濃度16%塗工液を調製した{重量配合比率:(B)/(A)=3.5/96.5}。30℃、BL型粘度計30rpmで測定した結果580mPa・sであった。30℃で2週間放置した後の粘度は、調製直後の1.09倍であり、ほとんど変化せず良好であった。
【0045】
(4)アンダーコート層用塗工液の調製
エチレン単位7.8モル%、ビニルエステル部分のけん化度98.3モル%、重合度550のビニルアルコール系重合体(A)に対して消泡剤(ジョルシンLB−D)を0.15wt%添加して12%水溶液(c)を作成した。ウルトラホワイト90(エンゲルハード社製;カオリンクレー)100部に水54部を加えて十分分散させながら、水溶液(c)830部をゆっくり室温で加えて、変性ビニルアルコール系重合体のクレー分散水溶液を作成した。10%のTC−310溶液(B)5部を変性ビニルアルコール系重合体のクレー分散水溶液に室温で撹拌しながらゆっくり加え、20%濃度の塗工液を調製した{重量配合比率:(B)/(A)=1/99}。30℃、BL型粘度計30rpmで測定した結果340mPa・sであった。30℃で2週間放置した後の粘度は、調製直後の1.07倍であり、ほとんど変化せず良好であった。
【0046】
(5)感熱記録紙の製造
基材である原紙(坪量:52g/m2 の上質紙)の表面に、ワイヤーバーコーターを用いて、上記(4)で作成したアンダーコート層用塗工液を2g/m2(固形分換算)塗工して、50℃にて5分間乾燥した。さらに、上記の水性分散液Aを1部、水性分散液Bを4部、水性分散液Cを2部および上記(2)で作成したバインダー用塗工液を2部混合攪拌して感熱発色層用の塗工液を調製し、ワイヤバーコーターを用いて、感熱発色層用塗工液を6g/m2 (固形分換算)塗工した後、50℃で、5分間乾燥した。さらにスーパーカレンダー(線圧:30kg/cm)にて表面処理した。続いて、ワイヤーバーコーターを用いて上記(3)で作成した表面保護層用塗工液を3g/m2(全固形分換算){PVA(A)とTC−310(B)の合計固形分換算では1.9g/m2 }塗布した後、50℃10分間乾燥して、さらにスーパーカレンダー(線圧:30kg/cm)にて表面処理して感熱記録紙を製造した。その結果、感熱発色層に発色はみられず、また耐水性も表2に示すとおり優れていた。
得られた感熱記録紙を製造直後に、感熱ファクシミリ用プリンター(リコー株式会社製、型式:リファックス300)を用いて感熱記録紙に印字して下記の方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0047】
・耐水性:30℃蒸留水中に24時間浸漬したのち、以下の評価をそれぞれ行っ
た。
記録濃度:蒸留水浸漬前後の印字部分の発色濃度をマクベス濃度計(マクベス社製、型式:RD−514)を用いて比較判定した。判定基準は次の通りである。
記録濃度比較(優秀)5〜1(劣)
(数字が大きいほど発色濃度が大きく、印字部分が鮮明)ウエットラブ:印字された部分および印字されていない部分の表面を指先で摩擦し、溶出状態を観察し判定した。判定基準は次の通りである。
耐水性(優秀)5〜1(劣)それぞれ状態観察を行った。
(数字が大きいほど、溶出がすくない)
【0048】
・耐油性試験:常法に従い、試験片に綿実油を塗布し、20℃、40℃の各温度下に24時間放置後の各印字濃度を、綿実油塗布前の印字濃度と比較判定した。判定基準は次の通りである。
着色濃度比較(優秀)5〜1(劣)
(数字が大きいほど、印字濃度の低下が少ない)
【0049】
・耐可塑剤性:得られた感熱記録紙を製造直後に印字し、以下の方法で耐可塑剤性をそれぞれ評価した。
耐塩ビフィルム性試験:試験片に可塑剤を含有する軟質ポリ塩化ビニルフィルムを重ね合わせ、
30℃、300g/m2 の荷重下で24時間両者を接触させた後の印字濃度を、試験前の印字濃度と比較判定した。判定基準は耐油試験と同様。
【0050】
実施例2〜7
実施例1において用いたエチレン変性ポリビニルアルコールに代えて、表1に示したポリビニルアルコールを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、塗工液を調製(バインダー、表面保護層、アンダーコート)し、感熱記録紙を製造した。その結果を表2に示す。
【0051】
比較例1
実施例1において、表面保護層用塗工液、バインダー用塗工液、アンダーコート層用塗工液のそれぞれに用いたTC−310(チタンラクテート)の代わりに酸化チタンを使用した以外は、実施例1と同様にして、塗工液を調製(バインダー、アンダーコート)し、感熱記録紙を製造した。その結果を表2に示す。なお、酸化チタンの配合量はTC−310(チタンラクテート)の配合量と同量である。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
表2から明らかなように、実施例1〜7は比較例1に比べ、50℃の低温処理においても、耐水性に優れ、さらに印字部の発色性(記録濃度)、耐可塑剤性、耐油性が向上していることが分かる。とくに実施例7(エチレン単位とシリル基を有するPVAを使用)が優れた効果を有していることがわかる。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた耐水性、とくに低温処理においても優れた耐水性を有する感熱記録材料が得られるので、感熱記録材料を製造する際の乾燥時に、感熱発色層の発色を防止することができ、さらに得られた感熱記録材料は、印字部の発色性が良好であり、かつ非印字部のカブリ(地肌部の着色)がほとんどなく、耐油性、耐可塑剤性に優れている。
Claims (4)
- 表面保護層、感熱発色層、アンダーコート層および基材を有し、該表面保護層に、ビニルアルコール系重合体(A)および有機チタン化合物(B)を、重量配合比率(B)/(A)が0.1/99.9〜20/80の範囲で含有することを特徴とする感熱記録材料。
- ビニルアルコール系重合体(A)が、炭素数4以下のα−オレフィン単位を1〜20モル%含有するビニルアルコール系重合体である請求項1記載の感熱記録材料。
- ビニルアルコール系重合体(A)が、分子内にシリル基を有する変性ポリビニルアルコールである請求項1または2記載の感熱記録材料。
- 有機チタン化合物(B)が、チタンラクテートまたはその部分または完全中和物である請求項1〜3のいずれかに記載の感熱記録材料。
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