JP4566363B2 - 耐水性組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の変性ビニルアルコール系重合体とキレート型の配位子を有する有機チタン化合物とからなる耐水性の優れた組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ビニルアルコール系重合体(以下ビニルアルコール系重合体をPVAと略記することがある)は各種バインダー、接着剤あるいは表面処理剤として広く使用されており、造膜性および強度において他の水溶性樹脂の追随を許さぬ優れた性能を有することが知られている。しかしながらPVAは水溶性であるため、耐水性、特に低温で乾燥する場合の耐水性が低いという欠点があり、従来この欠点を改良するための種々の方法が検討されてきた。例えばPVAをグリオキザール、グルタルアルデヒドあるいはジアルデヒドデンプン、水溶性エポキシ化合物、メチロール化合物等で架橋させる方法が知られている。しかしながらこの方法でPVAを十分耐水化するためには100℃以上、特に120℃以上の高温で長時間熱処理することが必要である。また低温乾燥で耐水化するためには、例えばpH2以下というような強酸性条件を用いることも知られているが、この場合にはPVA水溶液の粘度安定性が悪く使用中にゲル化する等の問題点を有している上、耐水性が不十分であるという欠点を有している。また、このような厳しい条件を用いることでPVAが着色を起こし、皮膜の外観が損なわれるという問題がある。さらに、カルボキシル基含有PVAをポリアミドエピクロルヒドリン樹脂で架橋させる方法、アセトアセチル基含有PVAをグリオキザール等の多価アルデヒド化合物で架橋させる方法等も知られているが、前者については十分な耐水性を得るためには多量のポリアミドエピクロルヒドリンを必要とし、後者については耐水性は高いもののPVA水溶液の粘度安定性が極端に悪い等の問題点を有している。また、ポリアミドエピクロルヒドリンや多価アルデヒドを使用することは安全性の点からも好ましくない。
【0003】
また、PVAを含む水系組成物にチタンラクテートを配合して耐水性を付与する方法も知られているが(特開昭49−94768号)、この組成物を成形後、または基材にコート後、室温付近の比較的低温で処理した場合、後述する比較例1に記載した通り、煮沸水中でシートが崩壊するなど十分な耐水性を付与できないし、またチタンラクテートを配合したPVA水溶液の低温放置粘度安定性も悪いという問題がある。
【0004】
また、エチレン単位の含有量3〜15モル%の変性PVAにアルカリ金属イオンを配合し感熱記録材料を得る際、酸化チタン等の充填剤を併用することも知られているが(特開平9−24016号)、酸化チタンを併用したのでは後述する比較例4に記載した通り耐水性は極めて悪い。
【0005】
また、エチレン単位の含有量1〜24モル%の変性PVAに硫酸チタンなどの無機充填剤を配合して接着剤を得ることも知られているが(特開平8−283682)、硫酸チタンを併用した場合でも後述する比較例5に記載した通り耐水性は極めて悪い。
【0006】
【発明が解決しようする課題】
本発明は、上記従来技術の欠点を解消したものであり、成膜後、または基材にコート後、70℃以下、とくに室温付近〜50℃、更には室温付近といった比較的低温で乾燥あるいは熱処理する場合にも、冷水のみならず温水、熱水に対しても著しく耐水性に優れ、粘度安定性等の問題点がなく、かつ安全性の点でも問題のない耐水性組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、エチレン単位を2〜13モル%有するビニルアルコール系重合体、およびエチレン単位を2〜13モル%およびシリル基を0.01〜1モル%有するビニルアルコール系重合体から選ばれる少なくとも一種の変性ビニルアルコール系重合体(A)および、チタンラクテート、その部分または完全中和物、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミナート)、ジ−n−ブトキシチタンビス(トリエタノールアミナート)、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)およびポリチタンビス(アセチルアセトナート)からなる群から選ばれる少なくとも一種の、キレート型の配位子を有する有機チタン化合物(B)の均一混合物からなり、(A)成分と(B)成分の重量配合比率(A)/(B)が99/1〜87/13である耐水性組成物を提供することによって達成される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の耐水性組成物におけるエチレン単位を2〜13モル%有する変性PVA(A)は、エチレンの存在下(エチレンガスの加圧下)においてビニルエステル系モノマーの重合を行って得られたエチレン−ビニルエステル共重合体をけん化することにより得られる。ビニルエステル系モノマーとしてはギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等が挙げられるが、通常酢酸ビニルが好んで用いられる。ビニルエステル系モノマーの重合方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など公知の重合方法が用いられるが、通常はメタノール等のアルコールを溶媒とした溶液重合法が用いられる。重合温度については特に制限はないが、通常0℃〜150℃の間で任意に選択される。ビニルエステル系重合体のけん化方法としては公知の種々の方法を用いることができるが、通常はアルコール溶媒(少量の水分を含んでいても良い)中においてナトリウムアルコラートや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを用いてけん化する方法が用いられる。
【0009】
また、上記変性PVA(A)は、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸、炭素数18以下のアルキルメルカプタンなどのチオール化合物の存在下でエチレンとビニルエステル系モノマーの共重合を行い、それをけん化することによって得られる末端にメルカプト基またはカルボキシル基などを有する変性物でもよい。
【0010】
上記変性PVA(A)中のエチレン単位の含有量は、2〜13モル%であることが重要である。エチレンの含有量が上記下限値を下回る場合、あるいは上限値を上回る場合には、後述の比較例11および比較例12から明らかなように本発明の目的が達成されない。
【0012】
次に本発明において変性PVA(A)としてエチレン単位を2〜13モル%およびシリル基を0.01〜1モル%有する変性PVA(A)が、挙げられるが、この変性PVAは後述する実施例からも明かなように、本発明の効果が顕著に向上することから、最良の変性PVAである。
【0013】
このようなエチレン単位及びシリル基を有するPVA(A)は種々の方法によって得ることが出来るが、通常は上述のエチレン単位を有する変性PVAの合成において、エチレンとビニルエステルの共重合時に下記シリル基(I)を有するか、または重合、けん化後にシリル基(I)を生成し得る基を有するオレフィン性不飽和単量体との共重合を行って得られたビニルエステル系共重合体をけん化することにより得られる。
【0014】
ここでシリル基としては、下記式(I)で示されるものが好適なものとしてあげられる。
【0015】
【化1】
Figure 0004566363
【0016】
{ここで、R1は水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数8以下の炭化水素基、好適にはアルキル基を表し、R2は炭素数1〜40のアルコキシル基またはアシロキシル基(ここでアルコキシル基、アシロキシル基は酸素を含有する置換基を有していてもよい)を表し、n+mは3以下でnは0〜2の整数、mは0〜3の整数を表し、Xは1価の金属を表す。1価の金属としてはナトリウム、カリウムがあげられ、これらは主にけん化時に導入される。}
【0017】
シリル基(I)は変性PVA(A)の側鎖または末端に有しており、シリル基(I)とPVA(A)の側鎖または末端の間には、けん化時に切断されない連結基が介していても良い。
【0018】
シリル基(I)を有するか、または重合、けん化後にシリル基(I)を生成し得る基を有するオレフィン性不飽和単量体の具体例としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス−(β−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルジメチルアセトキシシラン、ビニルイソブチルジメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリヘキシロキシシラン、ビニルメトキシジヘキシロキシシラン、ビニルジメトキシオクチロキシシラン、ビニルメトキシジオクチロキシシラン、ビニルトリオクチロキシシラン、ビニルメトキシジラウリロキシシラン、ビニルジメトキシラウリロキシシラン、ビニルメトキシジオレイロキシシラン、ビニルジメトキシオレイロキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルエチルトリメトキシシラン、N−(2−(メタ)アクリルアミド−エチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリアセトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−エチルトリメトキシシラン、1−(メタ)アクリルアミド−メチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルジメチルメトキシシラン、3−(N−メチル−(メタ)アクリルアミド)−プロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミド−メトキシ)−3−ハイドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−((メタ)アクリルアミド−メトキシ)−プロピルトリメトキシシラン、ジメチル−3−(メタ)アクリルアミド−プロピル−3−(トリメトキシシリル)−プロピルアンモニウムクロライド、ジメチル−2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピル−3−(トリメトキシシリル)−プロピルアンモニウムクロライドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。シリル基の含有量は0.01〜1モル%であることが重要であり、好適には0.1〜1モル%である。また、エチレン単位及びシリル基を有するPVA(A)において、エチレン単位の好適な範囲は、上記したエチレン単位を有するPVA(A)の好適範囲と同様である。
【0019】
エチレン単位及びシリル基(I)を有するビニルアルコール系重合体(A)を得るためのその他の方法としては、例えば上述のエチレン単位を有するビニルアルコール系重合体の合成において、エチレンとビニルエステルの重合をアリルグリシジルエーテルやブタジエンモノオキシドといったエポキシ基を有するコモノマーの存在下に行い、得られたエポキシ基を有するエチレン−ビニルエステル共重合体に、同一分子内にメルカプト基とシリル基を有する化合物、例えばトリメトキシシリルメチルメルカプタンなどを反応させた後けん化を行ってビニルアルコール系重合体とする方法があげられる。また、エチレン単位を有するビニルアルコール系重合体の合成において、同一分子内にメルカプト基とシリル基を有する化合物、例えばトリメトキシシリルメチルメルカプタンなどを連鎖移動剤として用いて重合を行い、得られたエチレン−ビニルエステル系重合体をけん化することによって、エチレン単位とシリル基(この場合は末端変性物)を有するビニルアルコール系重合体とする方法もあげられるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0020】
上記変性PVA(A)の重合度については、特に制限はないが、50〜10000であることが好ましく、100〜7000であることがより好ましく、150〜5000であることが更に好ましく、200〜4000であることが最適である。ここで重合度とは、JIS K6726に準じて測定されたものであり、PVAを再けん化し、精製したものを用いて、30℃の水中で測定した極限粘度から求められるものである。
【0021】
上記変性PVA(A)のけん化度については、特に制限はないが、65〜99.99モル%であることが好ましく、80〜99.8モル%であるのがより好ましく、90〜99.7モル%であるのが更に好ましい。
【0022】
上記変性PVA(A)は、本発明の趣旨を損なわない範囲であれば、1種又は2種以上のその他の単量体単位を有していても一向に構わない。このような単位を例示するとアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸などの不飽和酸類及びこれらの塩あるいは炭素数1〜18のモノまたはジアルキルエステル類;アクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩などのアクリルアミド類;メタクリルアミド、炭素数1〜18のN−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩などのメタクリルアミド類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;炭素数1〜18のアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;ポリエチレングリコールアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリプロピレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールアリルエーテル、などのポリ(オキシアルキレン)基を有するアリルエーテル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これら単量体単位の含有量については特に制限はなく、得られる重合体が水溶性であればよいが、通常これら成分の含有量は10モル%以下であるのが好ましい。
【0023】
本発明においては、上記変性PVAのうち、エチレン単位を2〜13モル%およびシリル基を0.01〜1モル%有するPVAが最良であり、次いでエチレン単位を2〜13モル%有するPVAが好適である。
【0024】
本発明の耐水性組成物を構成するキレート型の配位子を有する有機チタン化合物(B)は、チタンラクテート、その部分または完全中和物(たとえば、チタンラクテート一アンモニウム塩、チタンラクテート二アンモニウム塩、チタンラクテート一ナトリウム塩、チタンラクテート二ナトリウム塩、チタンラクテート一カリウム塩、チタンラクテート二カリウム塩)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミナート)、ジ−n−ブトキシチタンビス(トリエタノールアミナート)、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ポリチタンビス(アセチルアセトナート)からなる群から選ばれる少なくとも一種である。これらの有機チタン化合物の中でも水溶性のものが好ましく、具体的にはチタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミナート)、ジ−n−ブトキシチタンビス(トリエタノールアミナート)が挙げられる。これらの有機チタン化合物は必ずしも単独で使用する必要はなく、必要に応じて2種以上混合して用いることもできる。
【0025】
なお、ここでキレート型の配位子とは、1つのチタン原子に対して共有結合や水素結合などにより二座あるいはそれ以上の多座で配位することが可能な配位子を意味し、配位子としては乳酸またはその塩、アセチルアセトン、および、トリエタノールアミンがあげられる
【0026】
本発明の耐水性組成物において、変性PVA(A)とキレート型の配位子を有する有機チタン化合物(B)との重量配合比率[(A)/(B)]は99/1〜87/13であることが重要である。(A)/(B)が99/1を超える場合には後述する比較例3に示す通り耐水化効果が低く、87/13未満の場合には後述する比較例6に示す通り、溶液がゲル化するので好ましくない。
【0027】
このように本発明においては、特定の変性PVA、すなわちエチレン単位を2〜13モル%有するPVA、およびエチレン単位を2〜13モル%およびシリル基を0.01〜1モル%有するPVAから選ばれる少なくとも一種の変性PVA(A)と、特定の有機チタン化合物、すなわち、チタンラクテート、その部分または完全中和物、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミナート)、ジ−n−ブトキシチタンビス(トリエタノールアミナート)、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)およびポリチタンビス(アセチルアセトナート)からなる群から選ばれる少なくとも一種の、キレート型の配位子を有する有機チタン化合物(B)を均一に混合し、さらにこのような特定のPVA(A)と特定の有機チタン化合物(B)を特定の重量配合比率、すなわち[(A)/(B)]を99/1〜87/13の比率で使用することにより、(A)および(B)からなる組成物を基材にコート後、または成膜後比較的低温すなわち70℃以下、特に室温付近〜50℃、更には室温付近で処理した場合でも、優れた耐水性特に耐煮沸水性を示し、また(A)と(B)を均一混合した水溶液が優れた低温放置粘度安定性を示すことは驚くべきことである。
【0028】
本発明の耐水性組成物は、上記した特定の変性PVA(A)及びキレート型の配位子を有する有機チタン化合物(B)の均一混合物からなり、(A)と(B)の重量配合比率が(A)/(B)=99/1〜87/13であることが必須の条件であるが、用途に応じて溶媒、各種添加剤、他の水溶性樹脂あるいは高分子水性分散体等を含有させることができる。溶媒としては水が好ましく用いられるが、これに各種アルコール、ケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の溶媒を併用することもできる。添加剤としては、各種消泡剤、各種分散剤、ノニオン性あるいはアニオン性界面活性剤、シランカップリング剤、pH調節剤あるいは炭酸カルシウム、クレー、タルク、小麦粉などの充填剤等が挙げられる。水溶性樹脂としてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリヒドロキシ(メタ)アクリレートまたはその共重合体、ポリアクリルアミド等の(メタ)アクリル系重合体、ポリビニルピロリドンまたはその共重合体、ポリビニルアセトアミド、カルボキシル基含有変性PVA、硫酸基含有変性PVA、スルホン酸基含有変性PVA、リン酸基含有変性PVA、4級アンモニウム塩基含有変性PVA等のPVA誘導体、及び一般のPVA等が挙げられる。高分子水性分散体としてはアクリル重合体及び共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ビニルエステル系重合体及び共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体等の水性分散体が挙げられる。
【0029】
本発明においては、(A)成分と(B)成分とは均一に混合された組成物であることが重要であり、均一に混合する方法としては(A)成分と(B)成分を溶媒、好適には水に溶解するか分散させる方法、あるいは(A)成分の水溶液と(B)成分の水溶液を混合する方法が代表例としてあげられる。変性PVA(A)の成形物、たとえばフィルムをキレート型の配位子を有する有機チタン化合物(B)の水溶液に浸漬したりしたのでは(A)成分と(B)成分が均一に混合しないため、後述する比較例13からも明かなように本発明の目的とする耐水性の優れた成形物が得られない。
【0030】
本発明の上記(A)と(B)からなる組成物を、成膜後または基材にコート後、室温付近といった低温で乾燥あるいは熱処理を施すことで、冷水のみならず温水や煮沸水に対しても十分な耐水性の効果を得ることが出来るため、通常は特に高温での処理を必要としないが、より高い耐水性の効果を得るために高温で乾燥あるいは熱処理を施すことは、用途によっては何ら問題はない。ただしこの場合、まれに組成物の被膜等が着色を起こすことなどがあるため、極端に高い温度で処理を行うことは好ましくなく、通常は70℃程度での熱処理で十分である。
【0031】
本発明の上記(A)と(B)からなる組成物は、低温処理での耐水性を生かして、また優れた造膜性、皮膜強度を生かして、無機質材料、あるいは紙、各種樹脂基材などの有機質材料のコート剤、とくに紙の表面コート剤、各種樹脂フイルムの表面コート剤として有効に使用される。ここで、樹脂フイルムとしては、たとえばポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリイミド等のフイルムが挙げられる。
また、本発明の上記組成物は、記録材料、とりわけ高温で熱処理のできない感熱記録材料のコート層、とくにオーバーコート層に極めて有効に使用される。
本発明の耐水性組成物は、無機物あるいは有機物用接着剤あるいはバインダー、塗料用ビヒクル、顔料分散などの分散剤、架橋性エマルジョン用の重合安定剤や後添加剤、ゼラチンブレンドあるいは感光性樹脂等の画像形成材料、菌体固定ゲルあるいは酵素固定ゲル等のハイドロゲル用基材、さらには、従来水溶性樹脂が使用されていた用途にも広範に使用できる。さらに、フィルム、シート、繊維などの成形物にも使用できる。
【0032】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお実施例中特に断りのない限り、「%」および「部」はそれぞれ「重量%」および「重量部」を意味する。
【0033】
シート状物の膨潤度及び溶出率
以下の実施例中におけるシート状物の膨潤度及び溶出率は以下に従って算出した。
膨潤度(倍)= b/(a×e/d)
溶出率(%)= [{(a×e/d)−c}/(a×e/d)]×100
a:浸漬前のシート状物の重量(g)
b:20℃の水中に24時間浸漬後引き上げたシート状物の重量(g)
c:20℃の水中に24時間浸漬後引き上げ、105℃で24時間乾燥した後の重量(g)
d:別途切り出したシート状物の重量(g)
e:dで切り出したシート状物を、105℃で24時間乾燥した後の重量(g)
【0034】
以下に実施例で使用する代表的変性PVA(PVA−1およびPVA−5の2種類のPVA)の合成例について説明する。
合成例1 エチレン単位を有するPVAの合成例
撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に酢酸ビニル59.2kg、メタノール6.2kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が0.6MPaとなるようにエチレンを導入仕込みした。開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)をメタノールに溶解した濃度2.8g/L溶液を調製し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の反応槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液66mLを注入し、重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を0.6MPaに、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を200mL/hrで連続添加した。4時間後に重合率が40%に達したところで冷却して重合を停止した。反応槽を解放して脱エチレンしたあと窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去し、メタノール溶液とした。20%に調整した該溶液にモル比(NaOHのモル数/ポリ酢酸ビニル(PVAc)のモル数)0.05のNaOHメタノール溶液(10%濃度)を添加してけん化した。得られた変性PVA(PVA−1)のけん化度は98.4モル%であった。
【0035】
重合、未反応酢酸ビニルモノマーを除去して得られたPVAcのメタノール溶液をn−ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、60℃で減圧乾燥して精製PVAcを得た。該PVAcのプロトンNMR測定から求めたエチレン変性量は4.5モル%であった。上記のPVAcのメタノール溶液をアルカリモル比0.2でけん化した後、メタノールソックスレーを3日間実施し、次いで乾燥して精製PVAを得た。該PVAの平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ1550であった。
【0036】
合成例2 シリル基及びエチレン単位を有するPVAの合成例
撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に酢酸ビニル51.6kg、メタノール13.7kg、ビニルトリメトキシシラン111.0gを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が0.65MPaとなるようにエチレンを導入仕込みした。開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)をメタノールに溶解した濃度2.8g/L溶液を調製し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の反応槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液126mLを注入し、重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を0.65MPaに、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を390mL/hrで連続添加した。4時間後に重合率が50%に達したところで冷却して重合を停止した。反応槽を解放して脱エチレンしたあと窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去し、メタノール溶液とした。25%に調整した該溶液にモル比(NaOHのモル数/ポリ酢酸ビニルのモル数)0.05のNaOHメタノール溶液(10%濃度)を添加してけん化した。得られた変性PVA(PVA−5)のけん化度は98.2モル%であった。
【0037】
重合、未反応酢酸ビニルモノマー除去して得られたPVAcのメタノール溶液をn−ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、60℃で減圧乾燥して精製PVAcを得た。該PVAcのプロトンNMR測定から求めたエチレン変性量は6.5モル%、ビニルトリメトキシシラン変性量は0.25モル%であった。上記のPVAcのメタノール溶液をアルカリモル比0.2でけん化した後、メタノールソックスレーを3日間実施し、次いで乾燥して精製PVAを得た。該PVAの平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ1030であった。
【0038】
実施例1
合成例1で得られたPVA−1(重合度 1550 けん化度 98.4モル% エチレン変性量 4.5モル%)を水に溶解して4.5%水溶液を作成した。このPVA水溶液100部にTC−310(松本製薬工業株式会社製 チタンラクテートの45%溶液)1.1部(チタンラクテート純分として0.5部)を加えて、耐水性組成物の5%濃度の均一混合水溶液を作成した。この溶液を流延し、20℃で乾燥して無色透明のシート状物(厚み100μ)を得た。得られたシート状物を水中(20℃)に24時間浸漬した後の膨潤度及び溶出率を測定したところ、膨潤度は7.7倍、溶出率は26%であった。更に、煮沸水浴中の熱水に1時間浸漬した後引き上げたところ、シート状物はしっかりした形状を保っており表面のヌメり感もなかった。次に、PVA−1を水に溶解して9%水溶液としたもの100部に、TC−310を2.2部(チタンラクテート純分として1部)加えて耐水性組成物の10%濃度の均一混合水溶液を作成した。この溶液について、溶液作成直後のB型粘度計で測定した5℃での水溶液粘度(η0d)は1630mPa・sであった。該溶液を5℃で1週間放置した後再び粘度を測定したところ、水溶液粘度は(η7d)は3900mPa・sであり、増粘倍率(η7d/η0d)は2.4倍であり、低温放置粘度安定性は良好であった。
【0039】
比較例1
実施例1で用いたPVA−1(エチレン変性)にかえて、表1に示す、重合度1550、けん化度98.4モル%のPVA−9を用いる以外は実施例1と同様にしてシート状物(厚み100μ)を得た。このシート状物について実施例1と同様に膨潤度及び溶出率の測定を試みたところ、水中(20℃)での膨潤度は16倍、溶出率は45%であった。該シート状物を煮沸水浴中の熱水に1時間浸漬したところ、シート状物の形状は残っていたがかなり脆くなっており引き上げることが出来なかった。また、該組成物の10%水溶液を5℃で放置したところ、1日後には溶液はゲル化した。
【0040】
実施例2〜11、比較例2〜11
実施例1で用いたPVA−1およびTC−310及びその添加量を、表1及び表2に示すように変更した以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0041】
比較例12
実施例1で用いたPVA−1(エチレン変性)にかえて、重合度1550、けん化度98.4モル%、エチレン変性量23モル%のPVA−11を用いて、実施例1と同様にシート状物の作成を試みたが、PVA−11が水に完溶しなかったため水/メタノール=90/10(重量比)の混合溶媒を用いてPVA−11を溶解した以外は実施例1と同様にしてシート状物(厚み100μ)を得た。得られたシート状物は無色ではあったが、曇りガラス状で半透明であった。このシート状物について実施例1と同様に膨潤度及び溶出率の測定を試みたところ、水中(20℃)での膨潤度は8.6倍、溶出率は35%であった。該シート状物を煮沸水浴中の熱水に1時間浸漬したところ、シート状物は完全に崩壊しており引き上げることは出来なかった。また、該組成物の10%溶液(溶媒 水/メタノール=90/10)を5℃で放置したところ、1日後には溶液はゲル化した。
【0042】
比較例13
PVA−1を水に溶解してPVA−1の5%水溶液を作成した。この水溶液を流延し、20℃で乾燥して無色透明のシート状物(厚み100μ)を得た。このシート状物をチタンラクテート(TC−310)の5%水溶液に浸漬した後、20℃で乾燥した。得られたシート状物を実施例1と同様にして耐水性を測定したところ、膨潤度は8.3倍、溶出率は36%であった。該シート状物を煮沸水浴中の熱水に1時間浸漬したところ、シート状物は完全に崩壊しており引き上げることが出来なかった。
【0043】
【表1】
Figure 0004566363
【0044】
【表2】
Figure 0004566363
【0045】
1)◎…膨潤小さく形状保持 ○…膨潤は大きいが形状保持
△…引き上げ不可(崩壊) ×…完全に崩壊
2)放置後1日でゲル化
3)ジ−n−ブトキシチタンビス(トリエタノールアミナート)を加えた時点で溶液がゲル化
4)放置後2日でゲル化
5)曇りガラス状
6)チタンラクテート水溶液にPVAのシートを浸漬
7)シート状物の表面に無数の亀裂が発生
【0046】
【発明の効果】
本発明の耐水性組成物は、成膜後、または基材にコート後、70℃以下、とくに室温付近〜50℃、更には室温付近といった比較的低温で乾燥あるいは熱処理する場合にも、冷水のみならず温水、熱水に対しても著しく耐水性に優れ、粘度安定性等の問題点がなく、かつ安全性の点でも優れている。

Claims (4)

  1. エチレン単位を2〜13モル%有するビニルアルコール系重合体、およびエチレン単位を2〜13モル%およびシリル基を0.01〜1モル%有するビニルアルコール系重合体から選ばれる少なくとも一種の変性ビニルアルコール系重合体(A)および、チタンラクテート、その部分または完全中和物、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミナート)、ジ−n−ブトキシチタンビス(トリエタノールアミナート)、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)およびポリチタンビス(アセチルアセトナート)からなる群から選ばれる少なくとも一種の、キレート型の配位子を有する有機チタン化合物(B)の均一混合物からなり、(A)成分と(B)成分の重量配合比率(A)/(B)が99/1〜87/13である耐水性組成物。
  2. 変性ビニルアルコール系重合体(A)が、エチレン単位を2〜13モル%およびシリル基を0.01〜1モル%有するビニルアルコール系重合体である請求項1記載の耐水性組成物。
  3. キレート型の配位子を有する有機チタン化合物(B)が、チタンラクテート、チタンラクテートアンモニウム塩、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミナート)およびジ−n−ブトキシチタンビス(トリエタノールアミナート)からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1または2に記載の耐水性組成物。
  4. キレート型の配位子を有する有機チタン化合物(B)が、チタンラクテートおよびチタンラクテートアンモニウム塩から選ばれる少なくとも一種である請求項3に記載の耐水性組成物。
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