JPH0792320A - 位相差フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

位相差フィルムおよびその製造方法

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JPH0792320A
JPH0792320A JP5233193A JP23319393A JPH0792320A JP H0792320 A JPH0792320 A JP H0792320A JP 5233193 A JP5233193 A JP 5233193A JP 23319393 A JP23319393 A JP 23319393A JP H0792320 A JPH0792320 A JP H0792320A
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film
retardation
pva
titanium
vinyl
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JP5233193A
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Inventor
Masahiro Nagao
昌浩 長尾
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Kuraray Co Ltd
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Kuraray Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐湿熱性が著しく優れた位相差フィルムを提
供する。 【構成】 無機または有機チタン化合物およびジルコウ
ム化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有
し、かつ温度40℃、相対湿度90%の雰囲気下に10
日間放置して自由収縮させた後の複屈折位相差の変化が
放置前の位相差を基準としたときの5%以下であること
を特徴とするポリビニルアルコール系重合体よりなる位
相差フィルム。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐湿熱性に優れたポリ
ビニルアルコール(以下、PVAと略記することがあ
る)系重合体位相差フイルム及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】位相
差フィルムまたは位相差板とは複屈折性を有するフイル
ム又はシート状物であり、位相差板を透過する光は互い
に直交する二方向の屈折率が異なるため、透過後におい
て、直交する光線の電場ベクトルに位相差が生じるもの
を言う。位相差板として、現在市販され実用に供されて
いるものとして1/4λ板がある。この1/4λ板は入
射光線の波長λに対して1/4λの位相差を生じるもの
であり、直線偏光板の光学主軸に対して45度傾けて張
り合わせると円偏光板となる。円偏光板は、反射光をカ
ットする防眩機能があるため、VDTフイルターをはじ
めとして、各種の防眩材料に使用されている。一方、従
来の液晶表示装置は、液晶分子のねじれ角が90度であ
り、液晶セルの上下に一対の偏光板を設け、その吸収軸
が直交または平行になるように配置されたものであつ
て、時計、電卓等に使用されてきた(一般にTN型液晶
表示装置と言われている)。このTN型液晶表示装置に
位相差板を適用し表示品質を向上させる試みもなされて
いる(例えば、特開昭61−186937号公報、特開
昭60−26322号公報等)。近年、表示容量の増大
および液晶画面の拡大に伴つて、液晶分子のねじれ角を
90度以上、具体的には180〜270度にした液晶表
示装置が開発された(一般にSTN型液晶表示装置と呼
ばれている)。しかしながら、従来のTN型液晶表示装
置では可能であつた白黒表示が、STN型液晶表示装置
では、液晶分子の複屈折に起因する着色が生じ、白黒表
示ができなくなる。その一例として、背景色が黄緑色で
あり、表示色が濃紺色である。表示装置がこのような色
相を有していると、マルチカラー、フルカラーといつた
カラー表示を行う際に制約を受けることが多い。この問
題を解決するためSTN型液晶セルにもう一枚色消し用
の液晶セルを光学補償板として加え、着色を解消し、白
黒表示を可能にする方法が示されている。しかし、上述
した方法では白黒表示は可能になるものの液晶セルを光
学補償板に用いるために、値段が高い、重い、厚いとい
つた問題点がある。そこで、異方性屈折率を有する、す
なわち複屈折率を有する有機高分子フイルムが光学補償
板として開発されてきた。これらの有機高分子重合体と
してはポリカーボネート系樹脂、ポリアクリレート、ポ
リビニルアルコール系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹
脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフイン系樹脂、セル
ロース系樹脂等が挙げられ、通常これらのフイルムを一
軸延伸したものが用いられる。中でもポリビニルアルコ
ール系樹脂は光学的な透明性に優れており、また加工性
が良いために、きわめて有望な高分子化合物である。し
かしながら、従来ポリビニルアルコール系重合体よりな
るフイルムは、耐水性、耐湿性また高温高湿下での寸法
安定性や位相差の安定性に劣るという欠点があり、高温
・高湿下に放置すると収縮したり位相差が変化する。こ
の様な状況下、本発明は耐水性、耐湿熱性(高温・高湿
下での安定性)が改善された高耐久性である位相差フイ
ルム及びその製造法を提供するものである。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決するため鋭意検討を重ねた結果、チタン化合物およ
びジルコウム化合物から選ばれた少なくとも1種の化合
物を含有し、かつ温度40℃、相対湿度90%の雰囲気
下に10日間放置して自由収縮させた後の複屈折位相差
の変化が放置前の位相差を基準としたときの5%以下で
あるポリビニルアルコール系重合体よりなる位相差フィ
ルムを見出し、本発明を完成させたものである。
【0004】以下本発明について詳細に説明する。本発
明の位相差フィルムは、ポリビニルアルコール系重合体
中に、チタン化合物およびジルコウム化合物から選ばれ
た少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とす
る。含有されるチタン化合物またはジルコニウム化合物
の含有率は得られる位相差フィルムの性能に大きく影響
する。チタン化合物またはジルコニウム化合物の効果を
充分に発揮するためには、Ti原子またはZr原子の含
有率が両者を合わせて1×10↑(-4)モル/g以上が好
ましく、2×10↑(-4)モル/g以上がより好ましい。
1×10↑(-4)モル/g未満では、耐湿熱性の向上に対
する効果が不十分であり、チタニウムまたはジルコニウ
ム化合物の含有率が高いことは耐湿熱性を向上させるも
のであるが、含有率が高くなると製膜や延伸等の加工工
程において問題を生じることがあり、含有率は6×10
↑(-3)モル/g以下が好ましい。
【0005】本発明においてPVA系重合体の重合度も
位相差フィルムの性能に影響し、2400以上にするこ
とが好ましく、さらに好ましくは3000以上、最も好
ましくは8000以上である。位相差フイルムの耐熱性
および耐湿熱性の目的からすれば、PVA系重合体の重
合度は高いほど好ましいが高すぎるとPVAの溶解ある
いはフィルムの成膜等の加工特性が低下するので、25
000以下が好ましく、20000以下がより好まし
い。ここでPVA系重合体の重合度は該PVA系重合体
水溶液の30℃で測定した極限粘度から桜田の式により
求めた粘度平均重合度で表したものである。該PVA系
重合体のケン化度についても本発明の位相差フイルムの
性質に影響を与える。ケン化度が低いと、耐熱性、耐湿
熱性および耐水性が低下するので、PVA系重合体にお
けるケン化度は、少なくとも85モル%以上、好ましく
は98モル%以上、99モル%以上であることが最も好
ましい。
【0006】本発明のPVA系重合体の製造方法は特に
制限はないが、通常はポリビニルエステル系共重合体ま
たはポリビニルエーテル系重合体を原料として得られ
る。該ポリビニルエステル系共重合体及びポリビニルエ
ーテル系重合体の重合法としては、塊状重合法、懸濁重
合法及び乳化重合法が挙げられる。高重合度物を得るた
めには、50℃以下の低温重合を行うこともできる。低
温重合法においては、ビニルエステルのように連鎖移動
が大きい系では重合温度の低下にともない連鎖移動が抑
制されるために、通常は重合度が高くなるが、重合速度
の調節および連鎖移動剤の併用により、目的とする重合
度のポリビニルアルコール系重合体を得ることができ
る。かかるポリビニルエステル系重合体としてはギ酸ビ
ニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビ
ニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリ
ン酸ビニル、安息香酸ビニル及びバーサテイック酸ビニ
ル、ピバリン酸ビニル等よりなるポリビニルエステル系
重合体が挙げられるがとりわけ酢酸ビニルからの重合体
が好んで用いられる。またポリビニルエーテル系重合体
としてはビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテ
ル、ビニルイソプロピルエーテル、ビニルn−プロピル
エーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルt−ブチ
ルエーテル、ビニルn−アミルエーテル、ビニルイソア
ミルエーテル、ビニル2−エチルヘキシルエーテル、ビ
ニルn−オクタデシルエーテル等よりなるポリビニルエ
ーテル系重合体が挙げられる。
【0007】本発明のPVA系重合体は、上記の方法等
により得られたポリビニルエステル系重合体又はポリビ
ニルエーテル系重合体から公知の方法によって得られ
る。具体的にはポリビニルエステル系重合体をNaO
H、KOH等のアルカリを用いてエステル結合を加水分
解する方法またはメタノール、エタノール溶媒中でNa
OH、KOH等を触媒としてエステル交換反応によりエ
ステル結合を水酸基とする方法によりポリビニルアルコ
ール系重合体を得る。また、ポリビニルエーテル系重合
体を塩化水素、臭化水素等を用いてエーテル結合を加水
分解しポリビニルアルコール系重合体を得る。
【0008】上記のビニルエステルモノマー類に共重合
可能なモノマーを共重合した共重合体であることも差し
支えなく、本発明の趣旨をを損なわない範囲で使用され
る。このような共重合体単位としては、例えばエチレ
ン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフイ
ン類、アクリル酸、及びその塩、アクリル酸メチル、ア
クリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸
i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エ
チルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタ
デシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸及びそ
の塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタ
クリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−ブチル、メタ
クリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシ
ル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル
等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−メ
チルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,
N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミ
ド、アクリルアミドプロパンスルポン酸およびその塩、
アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩ま
たはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよび
その誘導体等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミ
ド、N−メチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプ
ロパンスルホン酸およびその塩またはその4級塩、n−
メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のメタク
リルアミド誘導体、メチルビニルエーテル、エチルビニ
ルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピ
ルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブ
チルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデ
シルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビ
ニルエーテル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリ
ル等のニトリル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フツ
化ビニル、フツ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、
酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物、マレイン酸
およびその塩またはソノエステル、イタコン酸およびそ
の塩またはそのエステル、ビニルトリメトキシシラン等
のビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニル等が挙げら
れる。
【0009】本発明の位相差フイルムの製造法は特に限
定はないが例えば以下の方法で製造される。PVA系重
合体は、溶液に調整された後に、この溶液からフイルム
を形成し、得られたフイルムを一軸延伸または二軸延伸
する。先ず、PVA系重合体溶液の調整であるが、この
時に使用される溶剤としてはジメチルスルホキシド、ジ
メチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチ
ルピロリドン、エチレングリコール、プロピレングリコ
ール、グリセリン、エチレンジアミン、ジエチレントリ
アミン、および水等が単独もしくは組み合わせて使用さ
れる。また塩化リチウム、塩化カルシウム等の無機塩の
水溶液も単独もしくは前記有機溶媒と組み合わせて使用
できる。この中でも水単独またはジメチルスルホキシド
やジメチルホルムアミドと水の混合溶媒およびグリセリ
ンが好適に使用される。さらには水単独よりも有機溶媒
単独または水と有機溶媒の混合系方が耐湿熱性、耐熱
性、耐水性の点で好ましい。製膜時の該PVA系重合体
の濃度は使用するPVA系重合体の重合度および製膜方
法によつて異なるが、通常1〜50重量%、好ましくは
1.5〜30重量%である。PVA系重合体溶液は、通
常室温から200℃の温度において調整される。この場
合、使用される溶媒にもよるが、PVA系重合体の分解
による重合度の低下や熱による変性を抑えるために、調
整温度は上記の範囲内で、低めの温度を採用することが
好ましい。PVAフィルム中にジルコニウム化合物また
はチタニウム化合物を均一に分散させるため、この溶液
中にチタニウム化合物またはジルコニウム化合物を添加
するのが好ましい。このときの添加量はPVAの重合
度、溶液濃度による加工性および位相差フィルムとして
の性能から、最適な濃度を選択することが必要であり、
たとえば後述するPVA水溶液から乾式製膜する場合に
はPVAに対して1×10↑(-4)モル/g〜1×10↑
(-2)モル/gが好ましい。1×10↑(-4)モル/g未満
では位相差フィルムとしての性能が不十分であり、1×
10↑(-2)モル/gより大ではPVA溶液の粘度が高く
なり製膜等が困難になる傾向が有る。
【0010】次に、該PVA系重合体溶液からフイルム
を製膜する。フイルムの製膜方法としては、該PVA系
重合体溶液からのキヤスト製膜、空気中や窒素等の不活
性気体中への押し出しによる乾式製膜法、溶融成形法が
挙げられる。また、該PVA系重合体溶液からの貧溶媒
中への押し出しによる湿式製膜を行うこともできる。ま
た、該PVA系重合体溶液を一旦空気中や窒素等の不活
性気体中へ押し出し、液膜を形成した後に凝固浴中に導
入してフイルムを形成する乾湿式製膜法も可能である。
更にはこれらの製膜法を組合せ且つ生成する液膜を冷却
ゲル化したものからフイルムを得るゲル製膜法を行なう
こともできる。このゲル製膜法をさらに詳しく説明する
と、気体雰囲気中にて該PVA系重合体溶液の液膜を形
成し、次いで、この液膜をデカリン、パラフイン、トリ
クロロエチレン、四塩化炭素、メタノール等の冷却媒体
により冷却しゲル化させた後、脱溶剤液中に導入して脱
溶媒し、フイルムを形成する事もできる。更に、該液膜
を冷凍室等の冷却空間に導入し、冷却凝固しゲル化させ
た後に、脱溶媒してフイルムを形成することももちろん
可能であり、また気体雰囲気中を介せず上記冷却媒体中
に直接液膜を投入し冷却ゲル化した後に脱溶媒しフイル
ムを形成することを可能である。凝固剤としては、該P
VA系重合体溶液の溶剤に対して相溶性を有し、該PV
A系重合体に対して貧溶媒のもの、例えばメタノール、
エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセト
ン、ベンゼン、トルエン、またはこれらと該PVA系重
合体溶液の溶剤との混合溶液並びに無機塩類水溶液が用
いられる。該PVA系重合体溶液の液膜は、該PVA重
合体溶液の溶剤によつても異なるが、通常−30〜12
0℃で調整される。一般的にはPVA水溶液からの乾式
製膜法が広く採用されており、5〜70重量%のPVA
水溶液を、回転するロール表面またはエンドレスベルト
表面にキャストし、液膜を形成した後これを乾燥してフ
ィルムを得る。得られたフィルムは必要に応じて熱処理
を施してもよい。
【0011】延伸は湿式延伸法、乾熱延伸法、湿熱延伸
法及びこれらを組み合わせた延伸法が可能であり、自由
幅一軸延伸、固定幅一軸延伸あるいは二軸延伸で行われ
る。延伸倍率は目的とする位相差とフイルムの厚みによ
つて制御され、一軸延伸の場合には実用上1.1〜3.0
倍が好ましい。また延伸速度は、フイルムの元の長さを
基準として、10〜5000%/分であることが好まし
い。延伸時の温度は延伸条件によつて異なるが、通常1
0〜250℃の間である。また乾熱延伸は不活性気体中
で操作をするのが好ましい。延伸が実施されたフイルム
は、定長下または収縮下で、空気中または窒素等の不活
性気体中で乾燥及び熱処理される。耐水性、耐熱性、耐
湿熱性の目的からは、延伸したフイルムを100〜25
0℃の空気中または不活性気体中で熱処理を実施するこ
とが好ましい。延伸後のフイルムの厚さについては特に
制限はないが3〜100μmが好ましく5〜80μmが
特に好ましい。
【0012】本発明の特徴はチタン化合物またはジルコ
ニウム化合物を含有することにあり、その添加方法に特
に制限はなく、位相差フィルムを製造する過程の任意の
工程でチタン化合物またはジルコニウム化合物をフィル
ムに含有させることができる。たとえば延伸工程の前ま
たは後にチタン化合物またはジルコニウム化合物の溶液
にフィルムを浸漬し、含浸させるさせる方法、延伸をチ
タン化合物やジルコニウム化合物の溶液中で行い、延伸
による配向処理と同時にチタン化合物またはジルコニウ
ム化合物を含有せしめる方法、あるいは前述したように
PVA水溶液に前もって添加しフィルムを形成する方法
等がある。いずれの方法でもチタン化合物またはジルコ
ニウム化合物を含有させることが可能であるが、その添
加法は延伸・配向処理工程またはその前後の固定処理工
程において、チタン化合物またはジルコニウム化合物を
含有する溶液を使用してフィルム中に含浸させることが
好ましく、さらに好ましくはPVA水溶液に前もって添
加しフィルムを形成する方法であり、これらの方法を併
用することが最も好ましい。使用するチタン化合物また
はジルコニウム化合物水溶液の温度や濃度は、含有させ
るチタン化合物やジルコニウム化合物のフィルム中での
濃度や用いる化合物によって設定されることが望まし
く、例えば温度は20〜80℃、濃度は0.1〜60重
量%が好ましい。このとき使用されるチタン化合物とし
ては、有機チタン化合物や無機チタン化合物の各種のも
のが使用可能であるが、例えば各種のチタンアルコキシ
ド、チタンキレート、チタンキレートアンモニウム塩お
よびチタンアシレートや硫酸チタンなどが挙げられる。
なかでもチタンラクテートあるいはチタンラクテートア
ンモニウム塩が好適であり、チタンラクテートアンモニ
ウム塩が特に好ましい。また、ジルコニウム化合物につ
いても、有機あるいは無機ジルコニウム化合物の様々な
ものが使用可能であるが、例えば各種のジルコニルアル
コキシド、ジルコニルキレート、ジルコニルキレートア
ンモニウム塩およびジルコニルアシレートなどが挙げら
れ、中でも炭酸ジルコニウムあるいは炭酸ジルコニウム
アンモニウム塩が好適であり、炭酸ジルコニルアンモニ
ウム塩が特に好ましい。
【0013】本発明の位相差フィルムにおいて、チタン
化合物およびジルコニウム化合物が、位相差フィルムの
耐湿熱性を向上させる理由は、必ずしも明らかでない
が、これ等の金属化合物がPVA分子と強固な結合を生
じてPVA分子間に架橋効果を発現するためと推察され
る。
【0014】さらに延伸時あるいは延伸後に、PVA系
重合体に対する架橋剤、例えばほう酸、ほう砂、イソシ
アネート類等の水溶液に浸漬することにより、あるいは
延伸後のフイルムをホルマル化、アセタール化等の耐水
処理を施すことによつて、更に耐水性および耐久性を付
与することもできる。このようにして得られた本発明の
位相差フイルムは、それ単独で用いることもできるし、
その両面あるいは片面に光学的に透明である、または光
学的に透明であり且つかつ機械的強度を有した保護フイ
ルムや偏光フイルムまたは偏光板を貼合わせて使用する
こともできる。保護フイルムとしては通常セルロースト
リアセテート系フイルム、ポリアクリレート系フイル
ム、ポリエステル系フイルム等が使用される。また、複
数の位相差フイルムを貼合わせて使用することも可能で
ある。
【0015】
【実施例】以下、実施例により本発明をより具体的に説
明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではな
い。なお、以下で「部」または「%」は特に断りのない
限り、「重量部」または「重量%」を意味する。また位
相差は偏光顕微鏡とベレックのコンペンセイターを用い
て測定した値であり、フィルム中のチタニウム原子、ジ
ルコニウム原子の含有率は蛍光X線分析法によって定量
した値である。
【0016】実施例1 押出機、ダイ、ベルトの表裏両面を熱風乾燥炉で覆って
なる乾燥装置および熱風炉式の熱処理装置からなる製膜
機を用いて、重合度1750、鹸化度99.9モル%の
PVA41重量部、水54重量部およびグリセリン5重
量部からなるペレットを押出機に仕込み、ダイよりベル
ト表面にキャストし、熱風温度70度で乾燥し、熱風温
度120度で熱処理して、膜厚75μmのPVAフイル
ムを作成した。次にこのフイルムを一軸延伸、固定処
理、乾燥の順に処理して位相差フィルムを作成した。こ
のときの一軸延伸の延伸倍率は(=浴出口速度/浴入口
速度)は1.5倍、延伸浴水中のホウ酸濃度は4重量%
で、固定処理浴水中の添加物組成はチタンラクテートア
ンモニウム塩の濃度4重量%、ヨウ化カリウムの濃度4
重量%とした。延伸浴および固定処理浴の水温はいずれ
も35℃で実施し、位相差フィルムの乾燥は50℃の熱
風で行った。得られた位相差フィルムの厚みは52μ
m、位相差は521nmであった。また蛍光X線分析法
によるチタニウムの含有率は2.3×10↑(-4)モル/
gであった。この位相差フィルムを40℃、90%RH
に10日間放置したときの位相差の変化率は4.1%で
あった。
【0017】実施例2 実施例1と同じ製膜機を用いて、重合度4400、鹸化
度99.7モル%のPVA35重量部、水61重量部お
よびグリセリン4重量部からなるペレットを押出機に仕
込み、ダイよりベルト表面にキャストし、熱風温度80
度で乾燥し、熱風温度120度で熱処理して膜厚73μ
mのPVAフイルムを作成した。次にこのフイルムを実
施例1と同様にして、1.4倍に一軸延伸、固定処理、
乾燥を行い、位相差フィルムを作成した。得られた位相
差フィルムは厚み54μm、位相差518nmであっ
た。また蛍光X線分析法によるチタニウムの含有率は
3.2×10↑(-4)モル/gであった。この位相差フィ
ルムを40℃、90%RHに10日間放置したときの位
相差の変化率は3.8%であった。
【0018】実施例3 押出機、ダイ、ベルトの表裏両面を熱風乾燥炉で覆って
なる乾燥装置および熱風炉式の熱処理装置からなる製膜
機を用いて、重合度1750、鹸化度99.9モル%の
PVA25重量部、水54重量部およびグリセリン3重
量部、チタンラクテートアンモニウム塩の濃度0.05
重量部からなるPVA水溶液をダイよりベルト表面にキ
ャストし、熱風温度70度で乾燥し、熱風温度120度
で熱処理して、膜厚76μmのPVAフイルムを作成し
た。次にこのフイルムを実施例1と同様な操作を行い位
相差フィルムを得た。得られた位相差フィルムは厚み5
3μm、位相差525nmであった。また蛍光X線分析
法によるチタニウムの含有率は5.2×10↑(-4)モル
/gであった。この位相差フィルムを40℃、90%R
Hに10日間放置したときの位相差の変化率は3.2で
あった。
【0019】実施例4 実施例1と同じ製膜機を用いて、重合度4400、鹸化
度99.7モル%のPVA35重量部、水61重量部お
よびグリセリン4重量部からなるペレットを押出機に仕
込み、ダイよりベルト表面にキャストし、熱風温度80
度で乾燥し、熱風温度120度で熱処理して、膜厚73
μmのPVAフイルムを作成した。次にこのフイルムを
固定処理浴水中の添加物組成が炭酸ジルコニルアンモニ
ウム塩濃度が2重量%、ヨウ化カリウムの濃度が4重量
%であること以外は実施例1と同様にして、1.4倍に
一軸延伸、固定処理、乾燥を行い、位相差フィルムを作
成した。得られた位相差フィルムは厚み58μm、位相
差507nmであった。また蛍光X線分析法によるチタ
ニウムの含有率は2.6×10↑(-4)モル/gであっ
た。この位相差フィルムを40℃、90%RHに10日
間放置したときの位相差の変化率は4.1%であった。
【0020】比較例1 実施例1で得られたPVAフイルムを用いて、固定浴の
添加物組成をホウ酸4重量%に変更(チタン化合物を含
有しない組成)した以外は、実施例2と同様にして、位
相差フィルムを作成した。得られ位相差フィルムは厚み
54μm、位相差503nmの位相差フィルムであっ
た。この位相差フィルムを40℃、90%RHに10日
間放置したときの位相差の変化率は8.3%であった。
【0021】比較例2 実施例2で得られたPVAフイルムを用いて、固定浴の
添加物組成をホウ酸4重量%に変更(チタン化合物を含
有しない組成)した以外は、実施例2と同様にして、位
相差フィルムを作成した。得られ位相差フィルムは厚み
54μm、位相差522nmの位相差フィルムであっ
た。この位相差フィルムを40℃、90%RHに10日
間放置したときの位相差の変化率は9.6%であった。
【0022】
【発明の効果】上記の実施例より明らかなとうり、本発
明の位相差フイルムは従来のPVA系重合体よりなる位
相差フイルムに比べ、耐湿熱性が優れている。これは無
機または有機チタン化合物およびジルコウム化合物から
選ばれた少なくとも1種の化合物を含有し、かつ温度4
0℃、相対湿度90%の雰囲気下に10日間放置して自
由収縮させた後の複屈折位相差の変化が放置前の位相差
を基準としたときの5%以下であることによりはじめて
達成されたものである。この理由は明らかでないが、こ
れ等の金属化合物の金属イオンがPVA分子と強固な結
合を生じてPVA分子間に架橋効果を発現するためと推
察される。本発明で得られたPVA系重合体よりなる位
相差フィルムは上記の特徴を活かして、たとえばLCD
ナビゲーションシステムあるいはLCDテレビなどの温
度、湿度変化の大きい社債LCD用の位相差フィルムと
して相差フイルムとして従来の位相差フィルムでは達成
できなかった耐湿熱性を有するものである。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チタン化合物およびジルコウム化合物か
    ら選ばれた少なくとも1種の化合物を含有し、かつ温度
    40℃、相対湿度90%の雰囲気下に10日間放置して
    自由収縮させた後の複屈折位相差の変化が放置前の位相
    差を基準としたときの5%以下であることを特徴とする
    ポリビニルアルコール系重合体よりなる位相差フィル
    ム。
  2. 【請求項2】 ポリビニルアルコール系フイルムを延伸
    ・配向処理および固定処理して位相差膜を製造するに際
    し、延伸・配向処理および固定処理のうちの少なくとも
    一つの処理において、チタン化合物およびジルコニウム
    化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物を使用する
    ことを特徴とする請求項1記載の位相差フィルムの製造
    方法。
  3. 【請求項3】 チタン化合物およびジルコニウム化合物
    から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するポリビ
    ニルアルコール系重合体溶液から得られたフィルムを延
    伸・配向処理することを特徴とする請求項1記載の位相
    差フィルムの製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001138637A (ja) * 1999-08-31 2001-05-22 Kuraray Co Ltd 感熱記録材料

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JP2001138637A (ja) * 1999-08-31 2001-05-22 Kuraray Co Ltd 感熱記録材料

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