JP4166384B2 - 積層フィルムおよび偏光フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光度や透過度等の光学特性および耐久性能に優れる偏光フィルムの製造原料として有用な積層フィルム、並びに該積層フィルムからなる偏光フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに、液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。このLCDの適用分野も、初期の頃の電卓および腕時計等の小型機器から、ラップトップパソコン、ワープロ、液晶カラープロジェクター、車載用ナビゲーションシステム、液晶テレビおよび屋内外の計測機器等の広範囲に広がり、使用条件も幅広い温度条件や湿度条件で使用されることから、従来品以上に偏光性能が高くかつ耐湿熱性に優れた偏光板が求められている。
【0003】
偏光板は一般にポリビニルアルコール系重合体フィルム(以下、ポリビニルアルコール系重合体を「PVA」、ポリビニルアルコール系重合体フィルムを「PVAフィルム」と略記することがある)を一軸延伸し、染色して作成した偏光フィルムの両外面に、三酢酸セルロース(TAC)膜などの支持板を貼り合わせた構成をしている。従来の偏光フィルムは、PVAフィルムを、一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、ホウ素化合物で固定処理を行うことによって製造されている。
【0004】
高偏光性と高耐湿熱性を有する偏光フィルムを得る方法として、シンジオタクティシティを高めたPVAフィルムを用いる方法が提案されている(特開平3−206402号公報、特開平3−274508号公報参照)。しかしながら、高シンジオタクティシティPVAは高結晶性のために二色染料の染色が悪く、また一軸延伸性が低いために、該高シンジオタクティシティPVAを単独で使用した場合には、従来の偏光膜の製造技術では、十分な高偏光性を有する偏光膜が得られないという問題点があった。
【0005】
さらに、特開平6−281817号公報には、シンジオタクティシティが55%以上の高シンジオタクティシティPVAの染色性と延伸性を向上させるために、シンジオタクティシティが48〜54%の低シンジオタクティシティPVAを配合したPVA組成物からなる偏光膜が記載されているが、低シンジオタクティシティPVAを混合することにより、高シンジオタクティシティPVAが本来有している耐湿熱性が損なわれるという問題点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、偏光度や透過度等の光学特性および耐久性能に優れる偏光フィルムの製造原料として有用な積層フィルム、並びに該積層フィルムからなる偏光フィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために誠意研究した結果、シンジオタクティシティが48〜54%のPVAからなるフィルム層の片面または両面に、高シンジオタクティシティのPVAからなるフィルム層を積層することにより、目的とする偏光フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、シンジオタクティシティが48〜54%のPVAからなるフィルム層(A)の片面または両面に、シンジオタクティシティが55%以上のPVAからなるフィルム層(B)を有する積層フィルムおよび該積層フィルムからなる偏光フィルムに関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
フィルム層(A)を構成するPVAのシンジオタクティシティは48〜54%であり、好ましくは50〜53%である。本明細書におけるタクティシティ値は、すべて重水素化ジメチルスルホキシド(d6−DMSO)溶媒中での水酸基の1H−NMRスペクトル測定より求まるトライアッドタクティシティ、すなわちアイソタクティシティ(I)、ヘテロタクティシティ(H)、およびシンジオタクティシティ(S)を用いてi=I+H/2、s=S+H/2なる計算式によって算出したダイアッド表示によるシンジオタクティシティ(s)で表した値である。なおiはダイアッド表示によるアイソタクティシティを表す。
【0010】
シンジオタクティシティが48〜54%のPVA(以下、該PVAを「低シンジオPVA」と略記することがある)は、例えば、酢酸ビニルを重合して得られたポリ酢酸ビニルをけん化することにより製造されるPVAおよび該PVAに不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィン等を15モル%未満の割合で共重合した変性PVAを挙げることができる。
【0011】
低シンジオPVAの重合度は、フィルム強度の点から500以上が好ましく、偏光性能の点から1000以上がより好ましく、2400以上がさらに好ましい。PVAの重合度の上限はフィルムの製膜性の点から8000以下が好ましい。
【0012】
低シンジオPVAのけん化度は、耐久性の点から90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、98モル%以上がさらに好ましい。
【0013】
フィルム層(B)を構成するPVAのシンジオタクティシティは55%以上であり、好ましくは57%以上である。シンジオタクティシティの増加は、偏光膜の耐湿熱性や耐熱性を向上させ、さらに偏光性能を向上させるものであるが、あまりシンジオタクティシティが高くなり過ぎると、PVA自体の製造が困難になることから、シンジオタクティシティの上限は好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下である。
【0014】
シンジオタクティシティ55%以上のPVA(以下、該PVAを「高シンジオPVA」と略記することがある)は、例えば、ピバリン酸ビニル、トリフロロ酢酸ビニル、トリクロロ酢酸ビニル、ギ酸ビニルのように、側鎖の嵩高いビニルエステルまたは極性の高いビニルエステルの重合体の加水分解、もしくはt−ブチルビニルエーテルやトリメチルシリルビニルエーテルの分解によって得られる。これらの中でも、高シンジオタクティシティおよび高重合度のポリマーが得られやすく、かつ得られるPVAの耐水性が良好な、ピバリン酸ビニルの単独重合体または共重合体から得られるPVAが好適である。ここで共重合体の場合のコモノマー単位は、けん化によってビニルアルコール単位を生成する単位とそれ以外の単位に分けられる。
【0015】
前者の単位はシンジオタクティシティの制御を目的に共重合されるもので、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類であり、共重合量はシンジオタクティシティとの関係で設定される。
【0016】
一方、後者のコモノマーは、主として変性を目的に共重合されるもので、本発明の趣旨を損なわない範囲で使用される。このような単位として、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタドデシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステル;イタコン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等を挙げることができる。
【0017】
高シンジオPVAの重合度は、フィルム強度の点から500以上が好ましく、偏光性能の点から1000以上がより好ましく、2400以上がさらに好ましい。PVA重合度の上限は8000以下が好ましい。
【0018】
高シンジオPVAのけん化度は、耐久性の点から90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、98モル%以上がさらに好ましい。
【0019】
低シンジオPVAを使用してフィルム層(A)を製造する方法としては、例えば、PVAを溶媒に溶解したPVA溶液を使用して、キャスト製膜法、押出製膜法、乾式製膜法、湿式製膜法(貧溶媒中への吐出)、乾湿式製膜法、ゲル製膜法(PVA水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去し、フィルムを得る方法)、およびこれらの組み合わせによる方法で製造することができる。これらのなかでもキャスト製膜法および乾式製膜法が高偏光性および高耐湿熱性を有する偏光フィルムが得られることから好ましい。
【0020】
フィルム層(A)を製造する際に使用される低シンジオPVAを溶解する溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、水等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらのなかでも、ジメチルスルホキシド、水、あるいはジメチルスルホキシドと水の混合溶媒が好適に使用される。
【0021】
フィルム層(A)を製造する際に使用される低シンジオPVA溶液の濃度は、3〜50重量%が好適である。このPVA溶液には、必要に応じて可塑剤、界面活性剤、二色性染料等を含有させてもよい。
【0022】
フィルム層(A)の厚みは好ましくは5〜150μmであり、より好ましくは30〜100μmである。
【0023】
高シンジオPVAからなるフィルム層(B)を、低シンジオPVAからなるフィルム層(A)に積層する方法は、均一な層が構成できるのであれば特に限定されず、従来公知の積層体の製造方法を用いることができる。例えば、グラビアロールコーティング、マイヤーバーコーティング、リバースロールコーティング、エアーナイフコーティング、あるいはスプレー式等の方法が挙げられる。
【0024】
フィルム層(B)は、フィルム層(A)の片面のみ、またはフィルム層(A)の両面に積層される。初期の偏光性能の点からは、フィルム層(A)の片面のみにフィルム層(B)を積層すれば充分であるが、偏光性能の耐久性(特に、耐湿熱性)の点からは、フィルム層(A)の両面にフィルム層(B)を積層するのが好ましい。
【0025】
高シンジオPVAからなるフィルム層(B)の厚みは、0.5〜5μmが好ましく、1〜3μmがより好ましい。フィルム層(B)の厚みをこのように比較的薄く設定すると、積層フィルムの染色性と一軸延伸性がより向上し、高偏光性能と高耐湿熱性を有する偏光膜が得られるので好ましい。
【0026】
本発明の積層フィルムの厚みは5.5〜160μmが好ましく、30〜110μmがより好ましい。
【0027】
本発明の積層フィルムから、偏光フィムルを製造するには、例えば、該積層フィルムを染色、一軸延伸、固定処理、および乾燥処理、さらに必要に応じて熱処理を行えばよい。
【0028】
染色は一軸延伸の前、一軸延伸中、一軸延伸後のいずれでも可能である。染色に用いる染料としては、ヨウ素−ヨウ化カリウムあるいはDirect black 17、19、154;Direct brown 44、106、195、210、223;Direct red 2、23、28、31、37、39、79、81、240、242、247;Direct blue 1、15、22、78、90、98、151、168、202、236、249、270;Direct violet 9、12、51、98;Direct green 1、85;Direct yellow 8、12、44、86、87;Direct orange 26、39、106、107等の二色性染料などが使用できる。染色は、通常積層フィルムを上記染料を含有する液体中に浸漬させることにより行うことができるが、その処理条件や処理方法は特に制限されるものではない。
【0029】
一軸延伸は湿式延伸法あるいは乾熱延伸法が使用でき、温水中または吸水後のフィルムを用いて空気中で行うことができる。延伸温度は特に限定されないが、フィルムを温水中で延伸(湿式延伸)する場合は30〜90℃が、また乾熱延伸する場合は50〜180℃が好適である。また一軸延伸の延伸倍率は、偏光性能の点から4倍以上が好ましく、4.5倍以上がさらに好ましい。延伸倍率の上限は特に制限はないが、7倍以下であると均一な延伸が得られやすいので好ましい。延伸後の積層フィルムの厚みは、3〜75μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
【0030】
積層フィルムへの上記染料の吸着を強固にすることを目的に、固定処理を行う。固定処理に使用する処理浴には、通常ホウ酸およびホウ素化合物が添加される。また、必要に応じて処理浴中にヨウ素化合物を添加してもよい。
【0031】
乾燥処理は30〜80℃で行うのが好ましく、また熱処理は50〜150℃で行うのが好ましい。
【0032】
以上のようにして得られた本発明の偏光フィルムは、通常、その両面あるいは片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有した保護膜を張り合わせて偏光板として使用される。保護膜としては、通常セルロースアセテート系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルム等が使用される。
【0033】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例中の二色性比は以下の方法により評価した。
【0034】
二色性比:
得られた偏光膜の偏光性能を評価する指標として二色性比を使用した。この二色性比は、日本電子機械工業会規格(EIAJ)LD−201−1983に準拠し、分光光度計を用いて、C光源、2℃視野にて測定・計算して得た透過率Ts(%)と偏光度P(%)を使用して下記の式から求めた。
【0035】
二色性比=log(Ts/100−Ts/100×P/100)/log(Ts/100+Ts/100×P/100)
【0036】
実施例1
けん化度99.9モル%、重合度1750、シンジオタクティシティ52.2%のポリビニルアルコール(低シンジオPVA)100重量部と、グリセリン10重量部を含有する、濃度が15重量%の水溶液を、90℃の金属ロールに流延製膜して乾燥し、厚さ75μmの低シンジオPVAフィルムを得た。けん化度99.9%、重合度1700、シンジオタクティシティ61.3%のポリビニルアルコール(高シンジオPVA)の10重量%水溶液を、ダイレクトグラビアロールコーターを用いて速度75m/分で塗布し、150℃乾燥機で乾燥を行い、それを繰り返して両面にコートした。得られた積層フィルムの厚みは81μmであった。
この積層フィルムを予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光フィルムを作成した。すなわち、積層フィルムを30℃の水中に5分間浸漬して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸漬した。続いて、ホウ酸濃度4%の40℃の水溶液中で5.5倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。フィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光フィルムの厚みは22μmであった。また、透過度は43.5%、偏光度は99.4%であり、二色性比は41.8であった。
得られた偏光フィルムを定長下で、60℃、90%RHの雰囲気下に24時間保管しておいたところ、透過度は56.1%、偏光度は68.1%であり、二色性比は29.3であった。二色性比の変化率(耐久試験後の二色性比/初期の二色性比)は70%であった。
【0037】
実施例2
けん化度99.9モル%、重合度4000、シンジオタクティシティ52.0%のポリビニルアルコール(低シンジオPVA)100重量部と、グリセリン10重量部を含有する、濃度が15重量%の水溶液を、90℃の金属ロールに流延製膜して乾燥し、厚さ75μmの低シンジオPVAフィルムを得た。けん化度99.9%、重合度1700、シンジオタクティシティ61.3%のポリビニルアルコール(高シンジオPVA)の10重量%水溶液を、ダイレクトグラビアロールコーターを用いて速度75m/分で塗布し、150℃乾燥機で乾燥を行い、それを繰り返して両面にコートした。得られた積層フィルムの厚みは81μmであった。
この積層フィルムを予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光膜を作成した。すなわち、積層フィルムを30℃の水中に5分間浸漬して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸漬した。続いて、ホウ酸濃度4%の45℃の水溶液中で5.1倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。フィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光フィルムの厚みは23μmであった。また、透過度は43.0%、偏光度は99.9%であり、二色性比は51.2であった。
得られた偏光フィルムを定長下で、60℃、90%RHの雰囲気下に24時間保管しておいたところ、透過度は55.2%、偏光度は72.8%であり、二色性比は40.1であった。二色性比の変化率は78%であった。
【0038】
比較例1
けん化度99.9モル%、重合度1700、シンジオタクティシティ61.3%のポリビニルアルコール(高シンジオPVA)100重量部と、グリセリン10重量部を含有する、濃度15重量%の水溶液を、90℃の金属ロールに流延製膜して乾燥し、厚さ75μmの高シンジオPVAフィルムを得た。
このフィルムを予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光フィルムを作成した。すなわち、フィルムを30℃の水中に5分間浸漬して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸漬した。続いて、ホウ酸濃度4%の50℃の水溶液中で4.7倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。フィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光フィルムの厚みは24μmであった。また、透過度は44.1%、偏光度は95.0%であり、二色性比は25.3であった。
得られた偏光フィルムを定長下で、60℃、90%RHの雰囲気下に24時間保管しておいたところ、透過度は49.8%、偏光度は81.1%であり、二色性比は22.8であった。二色性比の変化率は90%であった。
【0039】
比較例2
けん化度99.9モル%、重合度1700、シンジオタクティシティ52.2%のポリビニルアルコール(低シンジオPVA)100重量部と、グリセリン10重量部を含有する、濃度が15重量%の水溶液を、90℃の金属ロールに流延製膜して乾燥し、厚さ75μmの低シンジオPVAフィルムを得た。
このフィルムを予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光フィルムを作成した。すなわち、フィルムを30℃の水中に5分間浸漬して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸漬した。続いて、ホウ酸濃度4%の35℃の水溶液中で5.0倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。フィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光フィルムの厚みは23μmであった。また、透過度は43.2%、偏光度は98.5%であり、二色性比は32.8であった。
得られた偏光フィルムを定長下で、60℃、90%RHの雰囲気下に24時間保管しておいたところ、透過度は87.8%、偏光度は10.6%であり、二色性比は8.2であった。二色性比の変化率は20%であった。
【0040】
比較例3
けん化度99.9モル%、重合度4000、シンジオタクティシティ52.0%のポリビニルアルコール(低シンジオPVA)100重量部と、グリセリン10重量部を含有する、濃度が15重量%の水溶液を、90℃の金属ロールに流延製膜して乾燥し、厚さ75μmの低シンジオPVAフィルムを得た。
このフィルムを予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光フィルムを作成した。すなわち、フィルムを30℃の水中に5分間浸漬して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸漬した。続いて、ホウ酸濃度4%の40℃の水溶液中で5.3倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。フィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光フィルムの厚みは22μmであった。また、透過度は42.5%、偏光度は99.7%であり、二色性比は40.6であった。
得られた偏光フィルムを定長下で、60℃、90%RHの雰囲気下に24時間保管しておいたところ、透過度は80.3%、偏光度は22.1%であり、二色性比は23.7であった。二色性比の変化率は58%であった。
【0041】
比較例4
けん化度99.9モル%、重合度1750、シンジオタクティシティ52.2%のポリビニルアルコール(低シンジオPVA)80重量部とけん化度99.9モル%、重合度1700、シンジオタクティシティ61.3%のポリビニルアルコール(高シンジオPVA)20重量部とグリセリン10重量部を水1000重量部に溶解してなるPVA溶液を、ドラム乾燥製膜機のドラム上に流延製膜し、80℃で乾燥させた後、熱風炉で120℃で熱処理して厚さ75μmのフィルムを得た。
このフィルムを予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光フィルムを作成した。すなわち、フィルムを30℃の水中に5分間浸漬して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸漬した。続いて、ホウ酸濃度4%の40℃の水溶液中で6.0倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。フィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光フィルムの厚みは20μmであった。また、透過度は43.4%、偏光度は99.3%であり、二色性比は40.0であった。
得られた偏光フィルムを定長下で、60℃、90%RHの雰囲気下に24時間保管しておいたところ、透過度は52.3%、偏光度は76.0%であり、二色性比は25.0であった。二色性比の変化率は63%であった。
【0042】
【発明の効果】
本発明の積層フィルムから製造された偏光フィルムは、偏光度や透過度等の光学特性および耐久性能(特に、耐湿熱性)に優れている。
Claims (3)
- シンジオタクティシティが48〜54%のポリビニルアルコール系重合体からなるフィルム層(A)の片面または両面に、シンジオタクティシティが55%以上のポリビニルアルコール系重合体からなるフィルム層(B)を有する積層フィルム。
- フィルム層(B)の厚みが0.5〜5μmである請求項1記載の積層フィルム。
- 請求項1または2記載の積層フィルムからなる偏光フィルム。
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