JP4242021B2 - 積層フィルムおよび偏光フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、偏光度や透過度等の光学特性および耐久性能に優れる偏光フィルムの製造原料として有用な積層フィルム、並びに該積層フィルムからなる偏光フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
光の透過および遮蔽機能を有する偏光板は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに、液晶ディスプレイ(LCD)の基本的な構成要素である。このLCDの適用分野も、初期の頃の電卓および腕時計等の小型機器から、ラップトップパソコン、ワープロ、液晶カラープロジェクター、車載用ナビゲーションシステム、液晶テレビおよび屋内外の計測機器等の広範囲に広がり、使用条件も幅広い温度条件や湿度条件で使用されることから、従来品以上に偏光性能が高くかつ耐湿熱性に優れた偏光板が求められている。
【0003】
偏光板は、一般に、ポリビニルアルコール系重合体フィルム(以下、ポリビニルアルコール系重合体を「PVA」、ポリビニルアルコール系重合体フィルムを「PVAフィルム」と略記することがある)を一軸延伸し、染色することにより製造した偏光フィルムの両外面に、三酢酸セルロース(TAC)膜などの支持板を貼り合わせた構成をしている。しかし、一般のPVAフィルムは、熱や湿度に対して不安定であり、偏光板の製造に使用した場合には、変形したり、偏光性能が低下するなどの問題点があった。そこで耐久性(特に、耐湿熱性)を向上させるため、PVAにエチレンを共重合させたエチレン変性ポリビニルアルコール系重合体(以下、「エチレン変性PVA」と略記することがある)を用いて製造された偏光フィルムを用いて偏光板を製造する方法が試みられている。しかしながら、この方法では、エチレンの共重合割合を増加させると、耐久性(特に耐湿熱性)は向上するものの、光学性能が低下するという問題点があった。そこで、光学性能を低下させることなく、耐久性(特に耐湿熱性)を向上させる方法が求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、偏光度や透過度等の光学特性および耐久性能に優れる偏光フィルムの製造原料として有用な積層フィルム、並びに該積層フィルムからなる偏光フィルムを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために誠意研究した結果、PVAからなるフィルム層(A)の片面または両面に、特定のエチレン変性PVAからなるフィルム層(B)を積層することにより、フィルムの染色性、一軸延伸性および耐水性が向上し、高偏光性能と高耐湿熱性を有する偏光フィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、PVAからなるフィルム層(A)の片面または両面に、1〜25モル%エチレン変性PVAからなるフィルム層(B)を有する積層フィルムおよび該積層フィルムからなる偏光フィルムに関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
フィルム層(A)を構成するポリビニルアルコール系重合体(PVA)としては、ビニルエステル系モノマーをラジカル重合して得られたポリビニルエステル系重合体をけん化し、ビニルエステル単位をビニルアルコール単位としたものを用いることができる。該ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサテイツク酸ビニル等を挙げることができ、これらのなかでも酢酸ビニルを用いるのが好ましい。
【0008】
さらに、上記のビニルエステル系モノマーをラジカル重合する際に、必要に応じて、上記のビニルエステル系モノマーと共重合可能なモノマーを、発明の効果を損なわない範囲内(好ましくは15モル%以下、より好ましくは5モル%以下の割合)で共重合させることもできる。このようなビニルエステル系モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数3〜30のオレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ドデシルアクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタドデシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステル;イタコン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等を挙げることができる。
【0009】
フィルム層(A)を構成するPVAの重合度は、フィルムの強度の点から500以上が好ましく、偏光性能の点から1000以上がより好ましく、2000以上がさらに好ましい。さらに、PVAの重合度の上限は、フィルムの製膜性の点から6000以下が好ましい。なお、PVAの重合度(P)はJIS−K6726に準じて測定される。すなわちPVAを再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η](単位:dl/g)から次式により求められる。
【0010】
P=([η]×103/8.29)(1/0.62)
【0011】
フィルム層(A)を構成するPVAのけん化度は、偏光フィルムの耐久性の点から90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、98モル%以上がさらに好ましい。さらに、フィルムの染色性の点から99.95モル%以下が好ましい。なお、本明細書でいうけん化度とは、けん化によりビニルアルコール単位に変換されうる単位の中で、実際にビニルアルコール単位にけん化されている単位の割合を示したものであり、JIS−K6726に準じて測定された値である。
【0012】
フィルム層(B)を構成するエチレン変性ポリビニルアルコール系重合体(エチレン変性PVA)としては、エチレンとビニルエステル系モノマーとを共重合して得られたエチレン−ビニルエステル系重合体をけん化し、ビニルエステル単位をビニルアルコール単位としたものを用いることができる。該ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサテイツク酸ビニル等を挙げることができ、これらのなかでも酢酸ビニルを用いるのが好ましい。
【0013】
エチレン変性PVAにおいて、エチレン変性量(エチレンの共重合量)は1〜25モル%であり、好ましくは3〜20モル%であり、より好ましくは3〜15モル%である。エチレン変性量が1モル%未満の場合には、得られる偏光フィルムの耐久性の向上が見込めない。一方、エチレン変性量が25モル%を越える場合には、得られるフィルムの耐水性向上効果は大きいが、エチレン変性PVAと偏光素子であるヨウ素錯体の安定性が低下するため、得られる偏光フィルムの色調が青み〜緑みを帯びてしまい実用的に好ましくない。
【0014】
さらに、エチレンとビニルエステル系モノマーを共重合させる際に、必要に応じて、共重合可能なモノマーを、発明の効果を損なわない範囲内(好ましくは15モル%以下、より好ましくは5モル%以下の割合)で共重合させることもできる。このような共重合可能なモノマーとして、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等の炭素数3〜30のオレフィン類;アクリル酸およびその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ドデシルアクリル酸オクタデシル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸およびその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタドデシル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸およびその塩またはそのエステル;イタコン酸およびその塩またはそのエステル;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等を挙げることができる。
【0015】
フィルム層(B)を構成するエチレン変性PVAの重合度は、フィルムの光学性能、耐水性、耐湿熱性、耐久性等の点から500以上が好ましく、1000以上がより好ましく、2000以上がさらに好ましい。さらに、フィルムの製膜や延伸等の加工特性の点から30000以下が好ましい。なお、エチレン変性PVAの重合度は、GPC法から求めた重量平均重合度である。この重量平均重合度は単分散ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を標品として、移動相に20ミリモル/リットルのトリフルオロ酢酸ソーダを加えたヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、40℃で測定した値である。
【0016】
エチレン変性PVAのけん化度は、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、98モル%以上がさらに好ましい。なお、エチレン変性PVAのけん化度は、DMSO−d6溶媒を用いてNMR法により測定した値である。
【0017】
フィルム層(A)を製造する方法としては、例えば、PVAを溶媒に溶解したPVA溶液を使用して、キャスト製膜法、押出製膜法、乾式製膜法、湿式製膜法(貧溶媒中への吐出)、乾湿式製膜法、ゲル製膜法(PVA水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去し、フィルムを得る方法)、およびこれらの組み合わせによる方法で製造することができる。これらのなかでもキャスト製膜法および乾式製膜法が高偏光性および高耐湿熱性を有する偏光フィルムが得られることから好ましい。
【0018】
フィルム層(A)を製造する際に使用される、PVAを溶解する溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、水等を挙げることができ、これらのうち1種または2種以上を使用することができる。これらのなかでも、ジメチルスルホキシド、水、あるいはジメチルスルホキシドと水の混合溶媒が好適に使用される。
【0019】
フィルム層(A)を製造する際に使用されるPVA溶液の濃度は、3〜50重量%が好適である。このPVA溶液には、必要に応じて可塑剤、界面活性剤、二色性染料等を含有させてもよい。
【0020】
フィルム層(A)の厚みは5〜150μmが好ましく、30〜100μmがより好ましい。
【0021】
エチレン変性PVAからなるフィルム層(B)を、フィルム層(A)に積層する方法は、均一な層が構成できるのであれば特に限定されず、従来公知の積層体の製造方法を用いることができる。例えば、グラビアロールコーティング、マイヤーバーコーティング、リバースロールコーティング、エアーナイフコーティング、溶融押出コーティングあるいはスプレー式等の方法が挙げられる。また、フィルム層(B)をフィルム層(A)と同様の方法で製膜した後に、フィルム層(B)をフィルム層(A)に貼り合わせて積層することもできる。
【0022】
フィルム層(B)は、フィルム層(A)の片面のみ、またはフィルム層(A)の両面に積層される。初期の偏光性能の点からは、フィルム層(A)の片面のみにフィルム層(B)を積層すれば充分であるが、偏光性能の耐久性(特に、耐湿熱性)の点からは、フィルム層(A)の両面にフィルム層(B)を積層するのが好ましい。フィルム層(B)の厚みは0.1〜30μmが好ましく、1〜10μmがより好ましい。
【0023】
本発明の積層フィルムの厚みは6〜151μmが好ましく、31〜101μmがより好ましい。
【0024】
本発明の積層フィルムから、偏光フィムルを製造するには、例えば、該積層フィルムを染色、一軸延伸、固定処理、および乾燥処理、さらに必要に応じて熱処理を行えばよい。
【0025】
染色は一軸延伸の前、一軸延伸中、一軸延伸後のいずれでも可能であるが、フィルム層(B)を形成するエチレン変性PVAは、一軸延伸により結晶化度が上がりやすく染色性が低下することがあるため、一軸延伸に先立つ任意の工程あるいは一軸延伸工程中において染色するのが好ましい。染色に用いる染料としては、ヨウ素−ヨウ化カリウムあるいはDirect black 17、19、154;Direct brown 44、106、195、210、223;Direct red 2、23、28、31、37、39、79、81、240、242、247;Direct blue 1、15、22、78、90、98、151、168、202、236、249、270;Direct violet 9、12、51、98;Direct green 1、85;Direct yellow 8、12、44、86、87;Direct orange 26、39、106、107等の二色性染料などが使用できる。染色は、通常積層フィルムを上記染料を含有する液体中に浸漬させることにより行うことができるが、その処理条件や処理方法は特に制限されるものではない。
【0026】
一軸延伸は湿式延伸法あるいは乾熱延伸法が使用でき、温水中または吸水後のフィルムを用いて空気中で行うことができる。延伸温度は特に限定されないが、フィルムを温水中で延伸(湿式延伸)する場合は30〜90℃が、また乾熱延伸する場合は50〜180℃が好適である。また一軸延伸の延伸倍率は、偏光性能の点から4倍以上が好ましく、4.5倍以上がさらに好ましい。延伸倍率の上限は特に制限はないが、7倍以下であると均一な延伸が得られやすいので好ましい。延伸後の積層フィルムの厚みは、3〜75μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
【0027】
積層フィルムへの上記染料の吸着を強固にすることを目的に、固定処理を行う。固定処理に使用する処理浴には、通常ホウ酸およびホウ素化合物が添加される。また、必要に応じて処理浴中にヨウ素化合物を添加してもよい。
【0028】
乾燥処理は30〜80℃で行うのが好ましく、また熱処理は50〜150℃で行うのが好ましい。
【0029】
以上のようにして得られた本発明の偏光フィルムは、通常、その両面あるいは片面に、光学的に透明で、かつ機械的強度を有した保護膜を張り合わせて偏光板として使用される。保護膜としては、通常セルロースアセテート系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエステル系フィルム等が使用される。
【0030】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、実施例中の二色性比は以下の方法により評価した。
【0031】
二色性比:
得られた偏光膜の偏光性能を評価する指標として二色性比を使用した。この二色性比は、日本電子機械工業会規格(EIAJ)LD−201−1983に準拠し、分光光度計を用いて、C光源、2℃視野にて測定・計算して得た透過率Ts(%)と偏光度P(%)を使用して下記の式から求めた。
【0032】
二色性比=log(Ts/100−Ts/100×P/100)/log(Ts/100+Ts/100×P/100)
【0033】
実施例1
けん化度99.9モル%、重合度1750のポリビニルアルコール100重量部と、グリセリン10重量部を含有する、濃度が15重量%の水溶液を、90℃の金属ロールに流延製膜して乾燥し、厚さ75μmのPVAフィルムを得た。得られたフィルムに、エチレン変性量10モル%、けん化度98%、重合度1700のエチレン変性PVAの10重量%水溶液(30℃)を、ダイレクトグラビアロールコーターを用いて速度75m/分で塗布し、150℃乾燥機で乾燥を行い、それを繰り返して両面にコートした。得られた積層フィルムの厚みは81μmであった。
この積層フィルムを予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光フィルムを作成した。すなわち、積層フィルムを30℃の水中に5分間浸漬して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸漬した。続いて、ホウ酸濃度4%の40℃の水溶液中で5.1倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。フィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光フィルムの厚みは22μmであった。また、透過度は43.5%、偏光度は98.5%であり、二色性比は34.2であった。
得られた偏光フィルムを定長下で、60℃、90%RHの雰囲気下に12時間保管しておいたところ、透過度は44.5%、偏光度は96.2%であり、二色性比は30.1であった。二色性比の変化率(耐久試験後の二色性比/初期の二色性比)は88%であった。
【0034】
実施例2
けん化度99.7モル%、重合度2400のポリビニルアルコール100重量部と、グリセリン10重量部を含有する、濃度が15重量%の水溶液を、90℃の金属ロールに流延製膜して乾燥し、厚さ75μmのPVAフィルムを得た。得られたフィルムに、エチレン変性量15モル%、けん化度99%、重合度1000のエチレン変性PVAの10重量%水溶液(30℃)を、ダイレクトグラビアロールコーターを用いて速度75m/分で塗布し、150℃乾燥機で乾燥を行い、それを繰り返して両面にコートした。得られた積層フィルムの厚みは80μmであった。
この積層フィルムを予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光膜を作成した。すなわち、積層フィルムを30℃の水中に5分間浸漬して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸漬した。続いて、ホウ酸濃度4%の40℃の水溶液中で5.2倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。フィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光フィルムの厚みは21μmであった。また、透過度は43.3%、偏光度は99.4%であり、二色性比は40.5であった。
得られた偏光フィルムを定長下で、60℃、90%RHの雰囲気下に12時間保管しておいたところ、透過度は44.9%、偏光度は97.3%であり、二色性比は36.4であった。二色性比の変化率は90%であった。
【0035】
比較例1
エチレン変性量10モル%、けん化度98%、重合度1700のエチレン変性PVA100重量部と、グリセリン10重量部を含有する、濃度が15重量%の水溶液を、90℃の金属ロールに流延製膜して乾燥し、厚さ75μmのPVAフィルムを得た。
このフィルムを予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光フィルムを作成した。すなわち、偏光フィルムを30℃の水中に5分間浸漬して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸漬した。続いて、ホウ酸濃度4%の45℃の水溶液中で4.8倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。フィルムを取り出し、定長下、40℃で熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光フィルムの厚みは25μmであった。また、透過度は44.1%、偏光度は95.0%であり、二色性比は25.3であった。
得られた偏光フィルムを定長下で、60℃、90%RHの雰囲気下に12時間保管しておいたところ、透過度は43.5%、偏光度は93.5%であり、二色性比は20.7であった。二色性比の変化率は82%であった。
【0036】
比較例2
けん化度99.9モル%、重合度1700のポリビニルアルコール100重量部と、グリセリン10重量部を含有する、濃度が15重量%の水溶液を、110℃の金属ロールに流延製膜して乾燥し、厚さ75μmのPVAフィルムを得た。このフィルムを予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光膜を作成した。すなわち、フィルムを35℃の水中に5分間浸漬して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸漬した。続いて、ホウ酸濃度4%の35℃の水溶液中で5.0倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。フィルムを取り出し、定長下、40℃の熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光フィルムの厚みは23μmであった。また、透過度は43.3%、偏光度は98.4%であり、二色性比は32.8であった。
得られた偏光フィルムを定長下で、60℃、90%RHの雰囲気下に12時間保管しておいたところ、透過度は49.1%、偏光度は84.0%であり、二色性比は25.1であった。二色性比の変化率は77%であった。
【0037】
比較例3
けん化度99.9モル%、重合度2400のポリビニルアルコール100重量部と、グリセリン10重量部を含有する、濃度が15重量%の水溶液を、90℃の金属ロールに流延製膜して乾燥し、75μmのPVAフィルムを得た。
このフィルムを予備膨潤、染色、一軸延伸、固定処理、乾燥、熱処理の順に処理して偏光膜を作成した。すなわち、フィルムを30℃の水中に5分間浸漬して予備膨潤し、ヨウ素濃度0.4g/リットル、ヨウ化カリウム濃度40g/リットルの35℃の水溶液中に3分間浸漬した。続いて、ホウ酸濃度4%の40℃の水溶液中で5.3倍に一軸延伸を行い、ヨウ化カリウム濃度40g/リットル、ホウ酸濃度40g/リットル、塩化亜鉛濃度10g/リットルの30℃の水溶液中に5分間浸漬して固定処理を行った。フィルムを取り出し、定長下、40℃の熱風乾燥し、さらに100℃で5分間熱処理を行った。得られた偏光フィルムの厚みは22μmであった。また、透過度は42.5%、偏光度は99.4%であり、二色性比は36.1であった。
得られた偏光フィルムを定長下で、60℃、90%RHの雰囲気下に12時間保管しておいたところ、透過度は47.3%、偏光度は90.0%であり、二色性比は28.6であった。二色性比の変化率は79%であった。
【0038】
【発明の効果】
本発明の積層フィルムから製造された偏光フィルムは、偏光度や透過度等の光学特性および耐久性能(特に、耐湿熱性)に優れている。

Claims (2)

  1. ポリビニルアルコール系重合体からなるフィルム層(A)の片面または両面に、1〜25モル%エチレン変性ポリビニルアルコール系重合体からなるフィルム層(B)を有する積層フィルムを、延伸して得られる偏光フィルム
  2. ポリビニルアルコール系重合体のけん化度が90〜99.95モル%であり、かつ重合度が500〜6000である請求項1記載の偏光フィルム
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