以下、本発明の実施形態について例を挙げて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態および実施例に限定されない。以下の説明では、特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。
[偏光フィルム用ポリビニルアルコールフィルム]
偏光フィルムの製造に用いられる本発明のPVAフィルム(以下、「PVAフィルム(P)」という場合がある)は、流れ方向と光軸とがなす角度が70°〜110°の範囲にある。また、PVAフィルム(P)は、幅方向の中央部における、フィルムの厚さ方向のレターデーションが15nm以上90nm以下である。以下、PVAフィルム(P)の幅方向の中央部における、フィルムの厚さ方向のレターデーションを、「レターデーション(R)」という場合がある。以下の説明において、レターデーションとは、フィルムの厚さ方向におけるレターデーションを意味する。
なお、原反PVAフィルムの全体が同じ条件で処理されてPVAフィルム(P)となるため、幅方向の中央部におけるレターデーション(R)の値は、PVAフィルム(P)全体のレターデーションの値を代表すると考えられる。典型的な一例では、PVAフィルム(P)の全体のレターデーションが、15nm以上90nm以下である。
「流れ方向」とは、PVAフィルムの製造時にフィルムが送られる方向である。PVAフィルムがロール状に巻かれた長尺のフィルムである場合、その長手方向と流れ方向とは平行である。流れ方向と光軸との関係を、図1(a)に示し、図1(a)の線Ib−Ibにおける断面図を図1(b)に示す。PVAフィルム(P)の製造時において、PVAフィルム10は、ローラ21および22(ローラの回転方向を図1(b)に示す)などによって製造装置内を移動するが、そのときに送られる方向が流れ方向31である。また、流れ方向31に直交する方向が、幅方向32である。図1(a)には、流れ方向31と、PVAフィルム10の光軸33とがなす角度αも示す。
高い偏光性能を発現させるためには、PVAフィルム(P)のレターデーション(R)は、20nm以上90nm以下であることがより好ましく、30nm以上90nm以下であることが特に好ましい。原反PVAフィルムの膨潤度が同じ場合のレターデーション(R)の制御は、乾熱延伸の延伸倍率で行うことができる。原反PVAフィルムの膨潤度が204〜215%である場合、乾熱延伸の温度を80℃にして、1.03〜1.07倍延伸することで15nm以上90nm以下のレターデーション(R)に調整することができる。しかし、原反PVAフィルムの膨潤度が185%と低い場合は、乾熱延伸の時にPVAフィルムにかかる張力が高くなるため、1.03〜1.07倍延伸しても、15nm以上90nm以下のレターデーション(R)に調整することができない。
同じく高い偏光性能を発現させるためには、PVAフィルム(P)の流れ方向と光軸とがなす角度は70°〜110°であることが必要である。PVAフィルム(P)を水中に浸漬すると、フィルムが光軸方向に収縮するという現象が起こる。例えば、レターデーション(R)を上記範囲に調整したPVAフィルム(P)を30℃の純水に2分間浸漬すると、フィルムが光軸方向にある程度収縮する。そのため、PVAフィルム(P)の流れ方向と光軸とがなす角度が70°より小さい、または110°より大きくなるとフィルムが湿式延伸工程において延伸方向に対して斜めに収縮するため、均一な延伸が困難となり、偏光性能が低下すると推測される。
PVAフィルム(P)から偏光フィルムを製造する際の湿式延伸工程における延伸後のフィルム幅(A)と延伸前のフィルム幅(B)との比(A)/(B)(以下、「ネックイン」という場合がある)を充分に小さくすることによって、高い偏光性能を有する偏光フィルムを得ることが可能になる。レターデーション(R)が10nmよりも小さいと、ネックインを充分に小さくすることが困難であり、高い偏光性能を有する偏光フィルムを製造することが難しい。また、レターデーション(R)が100nmよりも大きいと一軸延伸を行う際に充分な延伸を行うことが困難となり、高い偏光性能を有する偏光フィルムを製造することが難しい。
本発明のPVAフィルム(P)は、膨潤度が205〜218%の範囲にあることが好ましい。この膨潤度は通常、乾燥機中での熱処理で制御される。また、熱処理を行うと、PVAフィルムの熱収縮が起こるので、一般的には、流れ方向の両端部を固定、または、流れ方向と幅方向の4ヶ所を固定して行う。一例ではあるが、乾燥機中での熱処理は、120〜135℃の範囲で行うことが好ましい。熱処理時間は5分程度行うことが好ましい。このような条件で熱処理を行うことによって、PVAフィルム(P)の膨潤度を205〜218%の範囲に制御できる。
本発明のPVAフィルム(P)によれば、ネックインを小さくすることができる。たとえば、本発明のPVAフィルム(P)によれば、温度が50℃でほう酸濃度が4質量%であるほう酸水溶液中において延伸倍率5倍で湿式延伸したときの、湿式延伸後のフィルム幅(A)と湿式延伸前のフィルム幅(B)との比(A)/(B)を、0.46以下とすることが可能である。
[偏光フィルム用ポリビニルアルコールフィルムの製造方法]
PVAフィルム(P)を製造するための本発明の方法は、膨潤度(a)が204%〜215%の範囲にある原反PVAフィルムを乾熱延伸することによって、流れ方向と光軸とがなす角度を70°〜110°の範囲とするとともに、幅方向の中央部における厚さ方向のレターデーションを15nm以上90nm以下とする工程(I)を含む。この製造方法によって、本発明のPVAフィルム(P)を製造できる。
PVAフィルム(P)の工業的な製造方法の一例では、まず、T型スリットダイ、ホッパープレート、I−ダイ、リップコーターダイなどを用いる方法やキャスト製膜などによって、工程の最上流側に位置する回転する加熱した第1ロール(あるいはベルト)の周面上に、製膜用の原液を均一に吐出する(流延する)。次に、その第1ロール上に吐出(流延)された膜の一方の面から揮発分を蒸発させることによって、膜を乾燥する。次に、膜の他方の面を、回転する第2の加熱ロール(乾燥ロール)の周面上を通過させることによって乾燥する。次に、第2の加熱ロールの下流側に配置した1個または複数個の回転する加熱ロールの周面上で膜を更に乾燥するか、または熱風乾燥装置の中を通過させて膜を乾燥する。膜を乾燥することによって形成されたフィルムを、巻き取り装置で巻き取る。このようにして、PVAフィルム(P)が工業的に製造される。ロール乾燥と熱風乾燥とは、組み合わせて実施してもよい。工業的に製膜する場合は、種々のロールの速度比を調整することによってPVAフィルム(P)のレターデーション(R)を調整することができる。
実験室レベルで原反PVAフィルムの小片サンプルを作製する場合には、一般的に、ポリエステルフィルム上、あるいは金属上でPVA水溶液を乾燥して作製する。そのため、乾燥時にPVAフィルムにかかる応力が小さく、乾燥後のPVAフィルムのレターデーションはほぼゼロとなる。実験室レベルでの製造では、乾燥したPVAフィルムを、固定しないで、あるいは四方を金属枠で固定して熱処理を行うことが多い。固定しないで熱処理を行う場合はPVAフィルムに応力がかからないため、レターデーションはほぼゼロのままである。また、四方を金属枠に固定して熱処理をした場合も、等方向に応力がかかるため、レターデーションはほぼゼロのままである。
そのため、PVAフィルム(P)のレターデーション(R)を実験室レベルで調整するには、乾燥機中で原反PVAフィルムを延伸する方法や、金属枠の上下あるいは左右部分を固定して熱処理を行い熱収縮させる方法などを行う必要がある。以下、工業的な製造または実験室レベルでの製造において、乾燥機中で加熱しながらPVAフィルムを延伸する方法を、「乾熱延伸」という場合がある。
レターデーション(R)の調整方法について本願発明者が検討したところ、原反PVAフィルムの膨潤度(a)は、204〜215%の範囲にあることが好ましいことがわかった。膨潤度(a)が204%よりも小さいと、後に行う乾熱延伸工程や熱処理工程における延伸張力が高くなるのでレターデーションの調整が難しくなる。膨潤度(a)が215%よりも大きいと原反PVAフィルムが柔らかくなりすぎて、乾熱延伸において原反PVAフィルムに張力がかかりにくく、レターデーションを調整することが難しい。
原反PVAフィルムの膨潤度(a)(%)と、乾熱延伸後のPVAフィルム(P)の膨潤度(b)(%)とは、(a)+1≦(b)≦(a)+5を満たすことが好ましい。優れた偏光性能を発現させる観点から、(a)+2≦(b)≦(a)+4を満たすことがさらに好ましい。PVAフィルム(P)の膨潤度(b)が[(a)+1]より小さいと、偏光フィルムの製造工程に含まれる一軸湿式延伸において高倍率で延伸することが難しく、偏光性能の優れた偏光フィルムを作製することが困難となる場合がある。
膨潤度(b)が(a)+1≦(b)≦(a)+5を満たすようにPVAフィルムを乾熱延伸する際、乾熱延伸の延伸方向は、原反PVAフィルムを製膜したときの金属ロールの回転方向(流れ方向)に対して垂直方向(幅方向)であることが好ましい。そのように乾熱延伸を行うことによって、流れ方向と光軸とがなす角度が70°〜110°の範囲にあるPVAフィルム(P)を製造することができる。
工程(I)における乾熱延伸の延伸倍率は、1.02〜1.1倍の範囲にあることが好ましい。延伸倍率が1.02倍よりも低いとレターデーション(R)を調整する効果が充分でない。また、延伸倍率が1.1倍よりも高いとレターデーション(R)が高くなりすぎる。その結果、PVAフィルム(P)から偏光フィルムを製造する際の湿式延伸において高倍率の延伸が困難となり、偏光性能に優れた偏光フィルムを作製することが困難になる。したがって、延伸倍率は1.03〜1.09倍がより好ましく、1.04〜1.08倍がさらに好ましい。
工程(I)における乾熱延伸の温度は、60〜90℃の範囲にあることが好ましい。乾熱延伸の温度は、より好ましくは65〜85℃の範囲にあり、さらに好ましくは70〜80℃の範囲にある。乾熱延伸の温度が60℃より小さいと、乾熱延伸時の延伸張力が高くなりすぎてレターデーション(R)の調整が困難になる場合がある。乾熱延伸の温度が90℃より大きいと、加熱によるPVAフィルムの変化によってレターデーション(R)の調整が困難になる場合がある。
工程(I)によってレターデーション(R)を15nm以上90nm以下に調整したPVAフィルム(P)を水中に浸漬すると、フィルムが光軸方向に収縮するという現象が起こる。例えば、レターデーション(R)を上記範囲に調整したPVAフィルム(P)を30℃の純水に2分間浸漬すると、フィルムが光軸方向にある程度収縮する。一方、レターデーション(R)が15nmよりも小さいPVAフィルムを純水に浸漬しても、光軸方向への収縮は起こらず、フィルムがほとんど等方的に広がる。また、レターデーション(R)が90nmよりも大きいPVAフィルムを純水に浸漬しても、光軸方向へのフィルムの収縮が起こりにくく、本発明の効果を得ることができない。この原因は明確ではないが、レターデーション(R)が90nmよりも大きい場合には、PVAの配向結晶化の影響によってPVAフィルムの結晶化度が高くなり、その結果、光軸方向への収縮が起こりにくくなるものと推定される。
原反PVAフィルムの原料となるPVAは、例えば、ビニルエステルを重合して得られたポリビニルエステルをけん化することによって製造される。また、該PVAに対して、他の化合物(不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィンなど)を5モル%未満の割合でグラフト共重合した変性PVAを、原料PVAとして用いてもよい。また、ビニルエステルに対して他の化合物(不飽和カルボン酸またはその誘導体、不飽和スルホン酸またはその誘導体、炭素数2〜30のα−オレフィンなど)を15モル%未満の割合で共重合した変性ポリビニルエステルをけん化することによって製造される変性PVAを、原料PVAとして用いてもよい。また、未変性または変性PVAの水酸基の一部を、アルデヒド類(ホルマリン、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒドなど)によって架橋したいわゆるポリビニルアセタール樹脂などを、原料PVAとして用いてもよい。
一例の原料PVAは、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステルの1種または2種を重合することによって得られるポリビニルエステルを、ケン化することによって得られる。特に、ビニルエステルとして酢酸ビニルを用いて得られるPVAが、製造の容易性、入手の容易性、コストなどの点から好ましい。
原料PVAの原料となるビニルエステルは、通常はメタノールを溶媒として重合するため、メタノールの沸点近傍の60℃で重合することが多い。
原料PVAのけん化度は、98モル%以上であることが好ましく、99モル%以上がより好ましく、99.5モル%以上がさらに好ましく、99.8モル%以上が特に好ましい。けん化度が98モル%よりも低いと偏光フィルムの製造工程でPVAが溶出しやすくなり、溶出したPVAが偏光フィルムに付着する場合がある。その結果、高い偏光性能を有する偏光フィルムを製造することができない場合がある。
原反PVAフィルムを製造する方法として、含水PVAを使用した溶融押出方式による製膜法、流延製膜法、湿式製膜法(貧溶媒中への吐出)、ゲル製膜法(PVA水溶液を一旦冷却ゲル化した後、溶媒を抽出除去し、PVAフィルムを得る方法)、キャスト製膜法(PVA水溶液を基板上に流し、乾燥してPVAフィルムを得る方法)、およびこれらの組み合わせによる方法などを採用できる。これらの中でも、流延製膜法および溶融押出製膜法が、良好な原反PVAフィルムが得られる点で、好ましい。
原反PVAフィルムを製造する際に使用される溶剤としては、水、グリセリン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられるが、取扱いが容易である点で、水を単独で用いることが好ましい。
原反PVAフィルムを製造する際に使用される可塑剤としては、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコールなどが挙げられるが、取扱い性の観点からグリセリンを用いることが好ましい。
原反PVAフィルムを製造する際に使用される製膜原液(PVAを含む)の揮発分率は、製膜方法やPVAの分子量によっても変化するが、50〜95重量%の範囲にあることが好ましい。揮発分率は、60重量%以上であることがより好ましく、70重量%以上であることがさらに好ましい。揮発分率が50重量%より小さいと、製膜原液の粘度が高くなり過ぎて原液調製時の濾過や脱泡が困難となり、異物や欠点のないフィルムを得ることが困難となる傾向がある。また、揮発分率が95重量%よりも大きいと製膜原液の粘度が低くなり過ぎて、目的とする厚さや厚さ精度を有する原反PVAフィルムを製造することが困難になる傾向がある。
原反PVAフィルムの厚さは、10μm〜120μmの範囲にあることが好ましく、12μm〜80μmの範囲にあることがより好ましく、15μm〜75μmの範囲にあることがさらに好ましい。厚さが10μm未満になると、偏光フィルムの製造工程における延伸処理の際にフィルムの破断が発生しやすく、安定した製造が困難となる場合がある。また、厚さが120μmを超えると、延伸時に原反PVAフィルムにかかる応力が大きくなり、充分な延伸を行うことができない場合がある。
[偏光フィルムの製造方法]
偏光フィルムを製造するための本発明の方法は、工程(i)および(ii)を含む。工程(i)では、本発明のPVAフィルム(P)を、ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液で染色する(染色工程)。工程(ii)では、工程(i)を経たPVAフィルム(P)を、PVAフィルム(P)の流れ方向と延伸方向とがなす角度が−20°〜20°の範囲となるように、ホウ酸水溶液中で一軸延伸する(湿式延伸工程)。
偏光フィルムの製造は、水分調整工程、染色工程、延伸工程、および色調整工程を含む。偏光フィルムを製造できる限り、これらの工程の順序に限定はない。このとき、ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液中で延伸を行った後に、ほう酸水溶液中で延伸(架橋処理)を行うことが好ましい。また、ほう酸水溶液中での延伸を行った後にほう酸およびヨウ化カリウムを含む水溶液中で色調整を行ってもよい。このような工程を行った後に乾燥処理が行われる。これらの工程によって、偏光フィルムが製造される。
工程(ii)では、PVAフィルム(P)の流れ方向と湿式延伸の方向とがほぼ平行となるように(すなわち、両者のなす角度が−20〜20°(一例では0°)となるように)、PVAフィルム(P)が湿式延伸される。別の観点では、PVAフィルム(P)は、工程(ii)における湿式延伸の方向とPVAフィルム(P)の光軸とが70°〜110°(一例では90°)の角度をなすように延伸治具に取付けられる。一例では、工程(I)における乾熱延伸の方向と工程(ii)における湿式延伸の方向とがほぼ直交するように(たとえば両者のなす角度が70〜110°(一例では90°)となるように)、PVAフィルム(P)が工程(ii)において湿式延伸される。
PVAフィルム(P)の水分調整は、純水や蒸留水等の水中で行うことが好ましい。水分調整における水の温度は、20〜40℃の範囲にあることが好ましい。水の温度が20℃よりも低い場合には、PVAフィルムに充分な水分を含ませることが難しくなる。その結果、ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液中における延伸時にフィルムにかかる張力が高くなるため、好ましくない。また、水の温度が40℃よりも高いとPVAフィルムの吸水性が高くなりすぎるため、水分調整およびそれ以降の工程において、PVAフィルムにしわや端部のカールが発生しやすくなる。その結果、一軸延伸時にPVAフィルムが破断し易くなるため、ほう酸水溶液中において高倍率で延伸することが困難となり、偏光フィルムの偏光性能が低くなる。PVAフィルムの水分調整における水の温度は、25〜35℃の範囲にあることがより好ましく、27〜33℃の範囲にあることがさらに好ましい。
PVAフィルム(P)の染色は、ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液で行うことが好ましい。ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液は、ヨウ素の濃度が0.01〜0.1質量%の範囲にあり、ヨウ化カリウムの濃度が1〜10質量%の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、ヨウ素の濃度が0.02〜0.08質量%の範囲にあり、ヨウ化カリウムの濃度が2〜8質量%の範囲にある。さらに好ましくは、ヨウ素の濃度が0.03〜0.06質量%の範囲にあり、ヨウ化カリウムの濃度が3〜6質量%の範囲にある。染色は、ほう酸水溶液中における延伸の前に行うことが好ましい。ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液の温度については特に限定がないが、30〜40℃の範囲にあることが好ましい。
続いて、ほう酸水溶液中での湿式延伸工程について説明する。ほう酸水溶液におけるほう酸の濃度は2〜6質量%の範囲にあることが好ましい。ほう酸の濃度が2質量%よりも低いと偏光フィルムの色斑が多くなる。ほう酸の濃度が6質量%よりも多いと、PVA−ほう酸架橋が必要以上に起こるので高倍率まで延伸することが困難となり、偏光フィルムの偏光性能も低くなる。ほう酸の濃度は、2〜5質量%の範囲にあることがより好ましく、2〜4質量%の範囲にあることがさらに好ましい。また、ほう酸に加えて鉄やジルコニウムなどの金属化合物を添加した水溶液中で延伸を行ってもよい。
偏光フィルムの色相をニュートラルグレーに近づけるため、ほう酸水溶液にヨウ化カリウムを添加することが好ましい。ヨウ化カリウムの濃度は3〜10質量%の範囲にあることが好ましく、4〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。ヨウ化カリウムの添加量が少ないと青味の強い偏光フィルムとなり、ヨウ化カリウムの添加量が多いと赤みの強い偏光フィルムとなるので、必要に応じてヨウ化カリウムの濃度を調整することが好ましい。
湿式延伸の温度に特に制限はないが、高い偏光性能を発現させるためには、45℃以上で延伸することが好ましい。さらに高い偏光性能を発現させるため47.5℃以上で延伸することがより好ましく、50℃以上で延伸することがさらに好ましい。湿式延伸の温度が60℃を超えると偏光フィルムの透過率が低下することがあるため、湿式延伸の温度は60℃以下であることが好ましい。
工程(ii)の湿式延伸工程における延伸倍率は4.5〜7.0倍の範囲にあることが好ましく、4.7〜6.5倍の範囲にあることがより好ましく、5.0〜6.0倍の範囲にあることがさらに好ましい。延伸倍率が4.5倍よりも低いと高い偏光性能を有する偏光フィルムを作製することが難しい場合がある。また、延伸倍率が7.0倍を超えると、フィルムの破断が多発して偏光フィルムを安定して作製することが困難になる場合があるとともに、得られた偏光フィルムの色斑が多くなる場合がある。
本発明のPVAフィルム(P)を用いることによって、工程(ii)の湿式延伸工程後のフィルム幅(A)と湿式延伸工程前のフィルム幅(B)との比(A)/(B)であるネックインの値を小さくすることが可能である。一例では、温度が50℃でほう酸濃度が4質量%であるほう酸水溶液中において延伸倍率5倍で湿式延伸したときのネックインを、0.46以下とすることが可能である。
色調整は、ほう酸とヨウ化カリウムとを含有する水溶液を用いて行うことが好ましい。このとき、偏光フィルムの色調整のため、塩化亜鉛やヨウ化亜鉛などの金属化合物を水溶液に添加してもよい。偏光性能の低下を防ぐため、色調整の温度は、湿式延伸の温度よりも低い方が好ましい。色調整の温度は、20〜50℃の範囲にあることが好ましく、30〜40℃の範囲にあることがより好ましい。色調整工程の時間に特に制限はない。
作製された偏光フィルムの乾燥は、乾燥機を用いた、バッチ式乾燥、連続フロート式乾燥、および連続ロール上接触式乾燥などの方法で行うことができる。PVAフィルムからのヨウ素の昇華を防ぐために、および、PVAと架橋したホウ酸の脱離反応を抑えるために、乾燥温度は、40〜80℃の範囲にあることが好ましく、45〜70℃の範囲にあることがより好ましく、50〜60℃の範囲にあることがさらに好ましい。乾燥時間に特に制限はない。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。PVAフィルムのレターデーションおよび光軸、ならびに偏光フィルムの偏光性能の評価方法について、以下に述べる。
(1)PVAフィルムのレターデーションと光軸
乾熱延伸前後のPVAフィルムについて、大塚電子株式会社製RETS−1100を用いて、測定波長550nmにおけるレターデーションと光軸とを測定した。この測定は、フィルムの幅方向の中央部について行った。
(2)PVAフィルムの膨潤度
PVAフィルムを10cm×20cmにカットして、30℃の蒸留水に30分浸漬した。次に、PVAフィルムを蒸留水から取り出し、フィルム表面の水滴をろ紙でふき取り、フィルムの重量(X)を測定した。このフィルムを105℃の乾燥機で16時間乾燥し、乾燥後のフィルムの重量(Y)を測定した。そして、膨潤度(%)=(X)×100/(Y)の式に基づいて膨潤度を算出した。
(3)偏光フィルムの偏光性能
(i)透過率
以下の実施例または比較例で得られた偏光フィルムの幅方向の中央部から、4cm×4cmの正方形のサンプルを2枚採取した。1枚のサンプルについて、湿式延伸の延伸方向に対して45°傾けた場合の光の透過率と、湿式延伸の延伸方向に対して−45°傾けた場合の光の透過率とを測定して、それらの平均値(Y1)(%)を求めた。もう1枚の偏光フィルムサンプルについても、同様に、45°傾けた場合の光の透過率と−45°傾けた場合の光の透過率とを測定して、それらの平均値(Y2)(%)を求めた。透過率の測定には、日立製作所製の分光光度計U−4100(積分球付属)を用いた。透過率の測定は、JIS Z 8722(物体色の測定方法)に準拠した方法で行い、C光源を用いて、2°視野の可視光領域の視感度補正を行った。
上記の方法で求められたY1とY2とを以下の式で平均して偏光フィルムの透過率(Y)(%)とした。
透過率(Y)(%)=(Y1+Y2)/2
(ii)偏光度
上記の「(i)透過率」の測定において採取した2枚の偏光フィルムを、それらの湿式延伸の延伸方向が平行になるように重ねた場合の光の透過率(Y‖(%))、および、それらの湿式延伸の延伸方向が直交するように重ねた場合の光の透過率(Y⊥(%))を測定した。透過率Y‖およびY⊥は、上記の「(i)透過率」における測定方法と同様の方法で測定した。透過率Y‖およびY⊥から、以下の式に基づいて偏光度(V)(%)を求めた。
V(%)={(Y‖−Y⊥)/(Y‖+Y⊥)}1/2×100
[実施例1]
(1)重合度2400、ケン化度99.9モル%のPVA100重量部とグリセリン(可塑剤)12重量部とを含むPVA水溶液(PVA濃度:11重量%)を調製した。このPVA水溶液を60℃の金属ロール上で60分乾燥して、厚さ75μmのPVAフィルムを得た。得られたPVAフィルムの上下左右の4辺を金属枠に固定して130℃で5分間熱処理を行い、原反PVAフィルムを得た。以下、この原反PVAフィルムを「原反PVAフィルム(1)」という場合がある。原反PVAフィルム(1)の膨潤度(a)は204%であった。原反PVAフィルム(1)のレターデーションは5nmであり、その光軸と流れ方向(金属ロールの回転方向)とがなす角度は0°であった。
次に、原反PVAフィルム(1)から、35cm(幅方向)×15cm(流れ方向)の大きさのサンプルを切り取った。切り取った原反PVAフィルムの幅方向の両端部の15×5cmの領域を延伸治具に固定して80℃の乾燥機に投入し、そのまま3分間保持した。その後、80℃の乾燥機内において、0.1m/minの速度で原反PVAフィルムを1.05倍の延伸倍率で乾熱延伸し、そのまま80℃で5分間緊張状態を保って熱固定処理を行った。
次に、乾熱延伸したPVAフィルムを乾燥機から取り出し、このPVAフィルムから、10cm×11cmのサンプルを切り取った。具体的には、乾熱延伸方向に10cm、乾熱延伸方向に対して垂直な方向に11cmの大きさに切り取った。このようにして、実施例1の偏光フィルム用PVAフィルム(サイズ:10×11cm)を得た。実施例1の偏光フィルム用PVAフィルムのレターデーションは40nmであり、その光軸と流れ方向とがなす角度は92.3°であった。また、実施例1の偏光フィルム用PVAフィルムの膨潤度(b)は207%であった。
(2)実施例1の偏光フィルム用PVAフィルムを、湿式延伸方向と光軸とがなす角度が92.3°になるように(すなわち、流れ方向と湿式延伸方向とが平行になるように)延伸治具(チャック間隔:4cm)に取り付け、30℃の純水に30秒間浸漬した。続いて、ヨウ素を0.04質量%、ヨウ化カリウムを4質量%、ほう酸を4質量%の割合で含有する染色液(温度30℃)にフィルムを浸漬することによって、ヨウ素をフィルムに吸着させた。続いて、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度50℃)において、0.13m/minの速度でフィルムを5.7倍の延伸倍率で湿式延伸した。なお、PVAフィルムが破断する倍率を予め調査し、PVAフィルムが破断しない延伸倍率で湿式延伸を行った(以下の実施例および比較例においても同様である)。
続いて、ヨウ化カリウム濃度が6質量%でほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度35℃)にフィルムを4分間浸漬し、偏光フィルムの色調整を行った。その後、延伸方向を固定したまま50℃で4分間フィルムを乾燥した。このようにして、実施例1の偏光フィルムを作製した。湿式延伸におけるネックイン(A)/(B)は、0.45であった。実施例1の偏光フィルムは、透過率(Y)が44%であり、偏光度が99.85%であった。
[実施例2]
(1) 実施例1と同じ原料および方法によって、原反PVAフィルム(1)を作製した。次に、原反PVAフィルム(1)から、35cm(幅方向)×15cm(流れ方向)の大きさのサンプルを切り取った。切り取った原反PVAフィルムの幅方向の両端部の15×5cmの領域を延伸治具に固定して80℃の乾燥機に投入し、そのまま3分間保持した。その後、80℃の乾燥機内において、0.1m/minの速度で原反PVAフィルムを1.07倍の延伸倍率で乾熱延伸し、そのまま80℃で5分間緊張状態を保って熱固定処理を行った。
次に、乾熱延伸したPVAフィルムを乾燥機から取り出し、このPVAフィルムから、10cm×11cmのサンプルを切り取った。具体的には、乾熱延伸方向に10cm、乾熱延伸方向に対して垂直な方向に11cmの大きさに切り取った。このようにして得られた実施例2の偏光フィルム用PVAフィルムのレターデーションは90nmであり、その光軸と流れ方向とがなす角度は92.8°であった。また、実施例2の偏光フィルム用PVAフィルムの膨潤度(b)は209%であった。
(2)実施例2の偏光フィルム用PVAフィルムを、湿式延伸方向と光軸とがなす角度が92.8°になるように(すなわち、流れ方向と湿式延伸方向とが平行になるように)延伸治具(チャック間隔:4cm)に取り付け、30℃の純水に30秒間浸漬した。続いて、ヨウ素を0.04質量%、ヨウ化カリウムを4質量%、ほう酸を4質量%の割合で含有する染色液(温度30℃)にフィルムを浸漬することによって、ヨウ素をフィルムに吸着させた。続いて、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度50℃)において、0.13m/minの速度でフィルムを5.5倍の延伸倍率で湿式延伸した。
続いて、ヨウ化カリウム濃度が6質量%で、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度35℃)にフィルムを4分間浸漬し、偏光フィルムの色調整を行った。その後、延伸方向を固定したまま、50℃で4分間フィルムを乾燥した。このようにして、実施例2の偏光フィルムを作製した。湿式延伸におけるネックイン(A)/(B)は、0.46であった。実施例2の偏光フィルムは、透過率(Y)が44%であり、偏光度が99.85%であった。
[実施例3]
(1)重合度2400、ケン化度99.9モル%のPVA100重量部と、可塑剤としてグリセリン12重量部からなる11重量%PVA水溶液を60℃の金属ロール上で60分乾燥して、厚さ75μmのPVAフィルムを得た。得られたPVAフィルムの上下左右4辺を金属枠に固定して125℃で5分間熱処理を行い、原反PVAフィルムを得た。この原反PVAフィルムの膨潤度(a)は215%であった。原反PVAフィルムのレターデーションは5nmであり、その光軸と金属ロールの回転方向(流れ方向)とがなす角度は0°であった。
次に、原反PVAフィルムから、35cm(幅方向)×15cm(流れ方向)の大きさのサンプルを切り取った。切り取った原反PVAフィルムの幅方向の両端部の15×5cmの領域を延伸治具に固定して80℃の乾燥機に投入し、そのまま3分間保持した。その後、80℃の乾燥機内において、0.1m/minの速度で原反PVAフィルムを1.05倍の延伸倍率で乾熱延伸し、そのまま80℃で5分間緊張状態を保って熱固定処理を行った。
次に、乾熱延伸したPVAフィルムを乾燥機から取り出し、このPVAフィルムから、10cm×11cmのサンプルを切り取った。具体的には、乾熱延伸方向に10cm、乾熱延伸方向に対して垂直な方向に11cmの大きさに切り取った。このようにして得られた実施例3の偏光フィルム用PVAフィルムのレターデーションは30nmであり、その光軸と流れ方向とがなす角度は92.0°であった。また、実施例3の偏光フィルム用PVAフィルムの膨潤度(b)は218%であった。
(2)実施例3の偏光フィルム用PVAフィルムを、湿式延伸方向と光軸とがなす角度が92.0°になるように(すなわち、流れ方向と湿式延伸方向とが平行になるように)延伸治具(チャック間隔:4cm)に取り付け、30℃の純水に30秒間浸漬した。続いて、ヨウ素を0.04質量%、ヨウ化カリウムを4質量%、ほう酸を4質量%の割合で含有する染色液(温度30℃)にフィルムを浸漬することによって、ヨウ素をフィルムに吸着させた。続いて、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度50℃)において、0.13m/minの速度でフィルムを5.4倍の延伸倍率で湿式延伸した。
続いて、ヨウ化カリウム濃度が6質量%で、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度35℃)にフィルムを4分間浸漬して、偏光フィルムの色調整を行った。その後、延伸方向を固定したまま50℃で4分間フィルムを乾燥し。このようにして、実施例3の偏光フィルムを作製した。湿式延伸におけるネックイン(A)/(B)は、0.48であった。実施例3の偏光フィルムは、透過率(Y)が44%であり、偏光度が99.80%であった。
[実施例4]
(1)実施例1と同じ原料および方法によって、原反PVAフィルム(1)を作製した。次に、原反PVAフィルム(1)から、35cm(幅方向)×15cm(流れ方向)の大きさのサンプルを切り取った。切り取った原反PVAフィルムの幅方向の両端部の15×5cmの領域を延伸治具に固定して80℃の乾燥機に投入し、そのまま3分間保持した。その後、80℃の乾燥機内において、0.1m/minの速度で原反PVAフィルムを1.03倍の延伸倍率で乾熱延伸し、そのまま80℃で5分間緊張状態を保って熱固定処理を行った。
次に、乾熱延伸したPVAフィルムを乾燥機から取り出し、このPVAフィルムから、10cm×11cmのサンプルを切り取った。具体的には、乾熱延伸方向に10cm、乾熱延伸方向に対して垂直な方向に11cmの大きさに切り取った。このようにして得られた実施例4の偏光フィルム用PVAフィルムのレターデーションは15nmであり、その光軸と流れ方向とがなす角度は92.0°であった。また、実施例4の偏光フィルム用PVAフィルムの膨潤度(b)は205%であった。
(2)実施例4の偏光フィルム用PVAフィルムを、湿式延伸方向と光軸とがなす角度が92.0°になるように(すなわち、流れ方向と湿式延伸方向とが平行になるように)延伸治具(チャック間隔:4cm)に取り付け、30℃の純水に30秒間浸漬した。続いて、ヨウ素を0.04質量%、ヨウ化カリウムを4質量%、ほう酸を4質量%の割合で含有する染色液(温度30℃)にフィルムを浸漬することによって、ヨウ素をフィルムに吸着させた。続いて、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度50℃)において、0.13m/minの速度でフィルムを5.4倍の延伸倍率で湿式延伸した。
続いて、ヨウ化カリウム濃度が6質量%で、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度35℃)にフィルムを4分間浸漬し、偏光フィルムの色調整を行った。その後、延伸方向を固定したまま、50℃で4分間フィルムを乾燥した。このようにして、実施例4の偏光フィルムを作製した。湿式延伸におけるネックイン(A)/(B)は、0.49であった。実施例4の偏光フィルムは、透過率(Y)が44%であり、偏光度が99.80%であった。
[実施例5]
(1)実施例1と同じ原料および方法によって、原反PVAフィルム(1)を作製した。次に、原反PVAフィルム(1)から、35cm(幅方向)×15cm(流れ方向)の大きさのサンプルを切り取った。切り取った原反PVAフィルムの幅方向の両端部の15×5cmの領域を延伸治具に固定して80℃の乾燥機に投入し、そのまま3分間保持した。その後、80℃の乾燥機内において、0.1m/minの速度で原反PVAフィルムを1.05倍の延伸倍率で乾熱延伸し、そのまま80℃で5分間緊張状態を保って熱固定処理を行った。
次に、乾熱延伸したPVAフィルムを乾燥機から取り出し、このPVAフィルムから、10cm×11cmのサンプルを切り取った。具体的には、乾熱延伸方向の延伸軸に対して−15°の軸方向に10cm、乾熱延伸方向に対して−105°の軸方向に11cmの大きさに切り取った。このようにして、実施例5の偏光フィルム用PVAフィルム(サイズ:10×11cm)を得た。実施例5の偏光フィルム用PVAフィルムのレターデーションは40nmであり、その光軸と流れ方向とがなす角度は75°であった。また、実施例5の偏光フィルム用PVAフィルムの膨潤度(b)は207%であった。
(2)実施例5の偏光フィルム用PVAフィルムを、湿式延伸方向と光軸とがなす角度が75°になるように延伸治具(チャック間隔:4cm)に取り付け、30℃の純水に30秒間浸漬した。続いて、ヨウ素を0.04質量%、ヨウ化カリウムを4質量%、ほう酸を4質量%の割合で含有する染色液(温度30℃)にフィルムを浸漬することによって、ヨウ素をフィルムに吸着させた。続いて、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度50℃)において、0.13m/minの速度でフィルムを5.4倍の延伸倍率で湿式延伸した。
続いて、ヨウ化カリウム濃度が6質量%でほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度35℃)にフィルムを4分間浸漬し、偏光フィルムの色調整を行った。その後、延伸方向を固定したまま50℃で4分間フィルムを乾燥した。このようにして、実施例5の偏光フィルムを作製した。湿式延伸におけるネックイン(A)/(B)は、0.48であった。実施例5の偏光フィルムは、透過率(Y)が44%であり、偏光度が99.80%であった。
[実施例6]
(1)実施例1と同じ原料および方法によって、原反PVAフィルム(1)を作製した。次に、原反PVAフィルム(1)から、35cm(幅方向)×15cm(流れ方向)の大きさのサンプルを切り取った。切り取った原反PVAフィルムの幅方向の両端部の15×5cmの領域を延伸治具に固定して80℃の乾燥機に投入し、そのまま3分間保持した。その後、80℃の乾燥機内において、0.1m/minの速度で原反PVAフィルムを1.05倍の延伸倍率で乾熱延伸し、そのまま80℃で5分間緊張状態を保って熱固定処理を行った。
次に、乾熱延伸したPVAフィルムを乾燥機から取り出し、このPVAフィルムから、10cm×11cmのサンプルを切り取った。具体的には、乾熱延伸方向の延伸軸に対して+15°の軸方向に10cm、乾熱延伸方向に対して−75°の軸方向に11cmの大きさに切り取った。このようにして、実施例6の偏光フィルム用PVAフィルム(サイズ:10×11cm)を得た。実施例6の偏光フィルム用PVAフィルムのレターデーションは40nmであり、その光軸と流れ方向とがなす角度は105°であった。また、実施例6の偏光フィルム用PVAフィルムの膨潤度(b)は207%であった。
(2)実施例6の偏光フィルム用PVAフィルムを、湿式延伸方向と光軸とがなす角度が105°になるように延伸治具(チャック間隔:4cm)に取り付け、30℃の純水に30秒間浸漬した。続いて、ヨウ素を0.04質量%、ヨウ化カリウムを4質量%、ほう酸を4質量%の割合で含有する染色液(温度30℃)にフィルムを浸漬することによって、ヨウ素をフィルムに吸着させた。続いて、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度50℃)において、0.13m/minの速度でフィルムを5.4倍の延伸倍率で湿式延伸した。
続いて、ヨウ化カリウム濃度が6質量%でほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度35℃)にフィルムを4分間浸漬し、偏光フィルムの色調整を行った。その後、延伸方向を固定したまま50℃で4分間フィルムを乾燥した。このようにして、実施例6の偏光フィルムを作製した。湿式延伸におけるネックイン(A)/(B)は、0.48であった。実施例6の偏光フィルムは、透過率(Y)が44%であり、偏光度が99.80%であった。
[比較例1]
(1)実施例1と同じ原料および方法によって、原反PVAフィルム(1)を作製した。次に、原反PVAフィルム(1)から、35cm(幅方向)×15cm(流れ方向)の大きさのサンプルを切り取った。切り取った原反PVAフィルムの幅方向の両端部の15×5cmの領域を延伸治具に固定して80℃の乾燥機に投入し、そのまま3分間保持した。その後、80℃の乾燥機内において、0.1m/minの速度で原反PVAフィルムを1.15倍の延伸倍率で乾熱延伸し、そのまま80℃で5分間緊張状態を保って熱固定処理を行った。
次に、乾熱延伸したPVAフィルムを乾燥機から取り出し、このPVAフィルムから、10cm×11cmのサンプルを切り取った。具体的には、乾熱延伸方向に10cm、乾熱延伸方向に対して垂直な方向に11cmの大きさに切り取った。このようにして得られた比較例1の偏光フィルム用PVAフィルムのレターデーションは150nmであり、その光軸と流れ方向とがなす角度は90.0°であった。また、比較例1の偏光フィルム用PVAフィルムの膨潤度(b)は212%であった。
(2)比較例1の偏光フィルム用PVAフィルムを、湿式延伸方向と光軸とがなす角度が90.0°になるように(すなわち、流れ方向と湿式延伸方向とが平行になるように)延伸治具(チャック間隔:4cm)に取り付け、30℃の純水に30秒間浸漬した。続いて、ヨウ素を0.04質量%、ヨウ化カリウムを4質量%、ほう酸を4質量%の割合で含有する染色液(温度30℃)にフィルムを浸漬することによって、ヨウ素をフィルムに吸着させた。続いて、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度50℃)において、0.13m/minの速度でフィルムを5.0倍の延伸倍率で湿式延伸した。
続いて、ヨウ化カリウム濃度が6質量%で、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度35℃)にフィルムを4分間浸漬して、偏光フィルムの色調整を行った。その後、延伸方向を固定したまま50℃で4分間フィルムを乾燥した。このようにして、比較例1の偏光フィルムを作製した。湿式延伸におけるネックイン(A)/(B)は、0.51であった。比較例1の偏光フィルムは、透過率(Y)が44%であり、偏光度が99.65%であった。
[比較例2]
(1)実施例1と同じ原料および方法によって、原反PVAフィルム(1)を作製した。次に、原反PVAフィルム(1)から、35cm(幅方向)×15cm(流れ方向)の大きさのサンプルを切り取った。切り取った原反PVAフィルムの幅方向の両端部の15×5cmの領域を延伸治具に固定して80℃の乾燥機に投入し、そのまま3分間保持した。その後、80℃の乾燥機内において、0.1m/minの速度で原反PVAフィルムを1.40倍の延伸倍率で乾熱延伸し、そのまま80℃で5分間緊張状態を保って熱固定処理を行った。
次に、乾熱延伸したPVAフィルムを乾燥機から取り出し、このPVAフィルムから、10cm×11cmのサンプルを切り取った。具体的には、乾熱延伸方向に10cm、乾熱延伸方向に対して垂直な方向に11cmの大きさに切り取った。このようにして得られた比較例2の偏光フィルム用PVAフィルムのレターデーションは450nmであり、その光軸と流れ方向とがなす角度は91.9°であった。また、比較例2の偏光フィルム用PVAフィルムの膨潤度(b)は213%であった。
(2)比較例2の偏光フィルム用PVAフィルムを、湿式延伸方向と光軸とがなす角度が91.9°になるように(すなわち、流れ方向と湿式延伸方向とが平行になるように)延伸治具(チャック間隔:4cm)に取り付け、30℃の純水に30秒間浸漬した。続いて、ヨウ素を0.04質量%、ヨウ化カリウムを4質量%、ほう酸を4質量%の割合で含有する染色液(温度30℃)にフィルムを浸漬することによって、ヨウ素をフィルムに吸着させた。続いて、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度50℃)において、0.13m/minの速度でフィルムを4.4倍の延伸倍率で湿式延伸した。
続いて、ヨウ化カリウム濃度が6質量%で、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度35℃)にフィルムを4分間浸漬して、偏光フィルムの色調整を行った。その後、延伸方向を固定したまま50℃で4分間フィルムを乾燥した。このようにして、比較例2の偏光フィルムを作製した。湿式延伸におけるネックイン(A)/(B)は、0.53であった。比較例2の偏光フィルムは、透過率(Y)が44%であり、偏光度が99.65%であった。
[比較例3]
(1)実施例1と同じ原料および方法によって、原反PVAフィルム(1)を作製した。次に、原反PVAフィルム(1)から、35cm(幅方向)×15cm(流れ方向)の大きさのサンプルを切り取った。切り取った原反PVAフィルムの幅方向の両端部の15×5cmの領域を延伸治具に固定して80℃の乾燥機に投入し、そのまま3分間保持した。その後、乾熱延伸を行うことなく、そのまま5分間緊張状態を保って熱処理を行った。
次に、熱処理後のPVAフィルムを乾燥機から取り出し、このPVAフィルムから、10cm×11cmのサンプルを切り取った。具体的には、流れ方向に10cm、流れ方向に対して垂直な方向に11cmの大きさに切り取った。このようにして得られた比較例3の偏光フィルム用PVAフィルムのレターデーションは9nmであり、その光軸と流れ方向とがなす角度は92.0°であった。また、比較例3の偏光フィルム用PVAフィルムの膨潤度(b)は204%であった。
(2)比較例3の偏光フィルム用PVAフィルムを、湿式延伸方向と光軸とがなす角度が92.0°となるように(すなわち、流れ方向と湿式延伸方向とが平行になるように)延伸治具(チャック間隔:4cm)に取り付け、30℃の純水に30秒間浸漬した。続いて、ヨウ素を0.04質量%、ヨウ化カリウムを4質量%、ほう酸を4質量%の割合で含有する染色液(温度30℃)にフィルムを浸漬することによって、ヨウ素をフィルムに吸着させた。続いて、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度50℃)において、0.13m/minの速度でフィルムを5.6倍の延伸倍率で湿式延伸した。
続いて、ヨウ化カリウム濃度が6質量%で、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度35℃)にフィルムを4分間浸漬して、偏光フィルムの色調整を行った。その後、延伸方向を固定したまま、50℃で4分間フィルムを乾燥した。このようにして、比較例3の偏光フィルムを作製した。湿式延伸におけるネックイン(A)/(B)は、0.50であった。比較例3の偏光フィルムは、透過率(Y)が44%であり、偏光度が99.70%であった。
[比較例4]
(1)重合度2400、ケン化度99.9モル%のPVA100重量部とグリセリン(可塑剤)12重量部とを含むPVA水溶液(PVA濃度:11重量%)を調製した。このPVA水溶液を60℃の金属ロール上で60分乾燥して、厚さ75μmのPVAフィルムを得た。得られたPVAフィルムの上下左右の4辺を金属枠に固定して140℃で5分間熱処理を行い、比較例4の原反PVAフィルムを得た。比較例4の原反PVAフィルムの膨潤度(a)は185%であった。比較例4の原反PVAフィルムのレターデーションは5nmであり、その光軸と金属ロールの回転方向(流れ方向)とがなす角度は0°であった。
次に、比較例4の原反PVAフィルムから、35cm(幅方向)×15cm(流れ方向)の大きさのサンプルを切り取った。切り取った原反PVAフィルムの幅方向の両端部の15×5cmの領域を延伸治具に固定して80℃の乾燥機に投入し、そのまま80℃で3分間保持した。その後、80℃の乾燥機内において、0.1m/minの速度で原反PVAフィルムを1.05倍の延伸倍率で乾熱延伸し、そのまま80℃で5分間緊張状態を保って熱固定処理を行った。
次に、乾熱延伸したPVAフィルムを乾燥機から取り出し、このPVAフィルムから、10cm×11cmのサンプルを切り取った。具体的には、流れ方向に10cm、流れ方向に対して垂直な方向に11cmの大きさに切り取った。このようにして得られた比較例4の偏光フィルム用PVAフィルムのレターデーションは120nmであり、その光軸と流れ方向とがなす角度は93.0°であった。また、比較例4の偏光フィルム用PVAフィルムの膨潤度(b)は192%であった。
(2)比較例4の偏光フィルム用PVAフィルムを、湿式延伸方向と光軸とがなす角度が93.0°になるように(すなわち、流れ方向と湿式延伸方向とが平行になるように)延伸治具(チャック間隔:4cm)に取り付け、30℃の純水に30秒間浸漬した。続いて、ヨウ素を0.04質量%、ヨウ化カリウムを4質量%、ほう酸を4質量%の割合で含有する染色液(温度30℃)にフィルムを浸漬して、ヨウ素をフィルムに吸着させた。続いて、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度50℃)において、0.13m/minの速度でフィルムを5.0倍の延伸倍率で湿式延伸した。
次に、ヨウ化カリウム濃度が6質量%で、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度35℃)に4分間フィルムを浸漬して、偏光フィルムの色調整を行った。その後、延伸方向を固定したまま50℃で4分間フィルムを乾燥した。このようにして、比較例4の偏光フィルムを作製した。湿式延伸におけるネックイン(A)/(B)は、0.51であった。比較例4の偏光フィルムは、透過率(Y)が44%であり、偏光度が99.65%であった。
[比較例5]
(1)実施例1と同じ原料および方法によって、原反PVAフィルム(1)および偏光フィルム用PVAフィルムを作製した。実施例1の偏光フィルム用PVAフィルムと同様に、比較例5の偏光フィルム用PVAフィルムのレターデーションは40nmであり、その光軸と流れ方向とがなす角度は92.3°であった。また、比較例5の偏光フィルム用PVAフィルムの膨潤度(b)は207%であった。
(2)比較例5の偏光フィルム用PVAフィルムを、湿式延伸方向と光軸とがなす角度が2.3°になるように(すなわち、流れ方向と湿式延伸方向とが直交するように)延伸治具(チャック間隔:4cm)に取り付け、30℃の純水に30秒間浸漬した。続いて、ヨウ素を0.04質量%、ヨウ化カリウムを4質量%、ほう酸を4質量%の割合で含有する染色液(温度30℃)にフィルムを浸漬して、ヨウ素をフィルムに吸着させた。続いて、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度50℃)において、0.13m/minの速度でフィルムを5.0倍の延伸倍率で湿式延伸した。
続いて、ヨウ化カリウム濃度が6質量%で、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度35℃)にフィルムを4分間浸漬して、偏光フィルムの色調整を行った。その後、延伸方向を固定したまま50℃で4分間フィルムを乾燥した。このようにして、比較例5の偏光フィルムを作製した。湿式延伸におけるネックイン(A)/(B)は0.50であった。比較例5の偏光フィルムは、透過率(Y)が44%であり、偏光度が99.70%であった。
[比較例6]
(1)実施例1と同じ原料および方法によって、原反PVAフィルム(1)を作製した。次に、原反PVAフィルム(1)から、35cm(幅方向)×15cm(流れ方向)の大きさのサンプルを切り取った。切り取った原反PVAフィルムの幅方向の両端部の15×5cmの領域を延伸治具に固定して80℃の乾燥機に投入し、そのまま3分間保持した。その後、80℃の乾燥機内において、0.1m/minの速度で原反PVAフィルムを1.05倍の延伸倍率で乾熱延伸し、そのまま80℃で5分間緊張状態を保って熱固定処理を行った。
次に、乾熱延伸したPVAフィルムを乾燥機から取り出し、このPVAフィルムから、10cm×11cmのサンプルを切り取った。具体的には、乾熱延伸方向の延伸軸に対して+25°の軸方向に10cm、乾熱延伸方向に対して−65°の軸方向に11cmの大きさに切り取った。このようにして、比較例6の偏光フィルム用PVAフィルム(サイズ:10×11cm)を得た。比較例6の偏光フィルム用PVAフィルムのレターデーションは40nmであり、その光軸と流れ方向とがなす角度は115°であった。また、比較例6の偏光フィルム用PVAフィルムの膨潤度(b)は207%であった。
(2)比較例6の偏光フィルム用PVAフィルムを、湿式延伸方向と光軸とがなす角度が115°になるように延伸治具(チャック間隔:4cm)に取り付け、30℃の純水に30秒間浸漬した。続いて、ヨウ素を0.04質量%、ヨウ化カリウムを4質量%、ほう酸を4質量%の割合で含有する染色液(温度30℃)にフィルムを浸漬することによって、ヨウ素をフィルムに吸着させた。続いて、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度50℃)において、0.13m/minの速度でフィルムを5.4倍の延伸倍率で湿式延伸した。
続いて、ヨウ化カリウム濃度が6質量%でほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度35℃)にフィルムを4分間浸漬し、偏光フィルムの色調整を行った。その後、延伸方向を固定したまま50℃で4分間フィルムを乾燥した。このようにして、比較例6の偏光フィルムを作製した。湿式延伸におけるネックイン(A)/(B)は、0.50であった。比較例6の偏光フィルムは、透過率(Y)が44%であり、偏光度が99.70%であった。
[比較例7]
(1)実施例1と同じ原料および方法によって、原反PVAフィルム(1)を作製した。次に、原反PVAフィルム(1)から、35cm(幅方向)×15cm(流れ方向)の大きさのサンプルを切り取った。切り取った原反PVAフィルムの幅方向の両端部の15×5cmの領域を延伸治具に固定して80℃の乾燥機に投入し、そのまま3分間保持した。その後、80℃の乾燥機内において、0.1m/minの速度で原反PVAフィルムを1.05倍の延伸倍率で乾熱延伸し、そのまま80℃で5分間緊張状態を保って熱固定処理を行った。
次に、乾熱延伸したPVAフィルムを乾燥機から取り出し、このPVAフィルムから、10cm×11cmのサンプルを切り取った。具体的には、乾熱延伸方向の延伸軸に対して−25°の軸方向に10cm、乾熱延伸方向に対して−115°の軸方向に11cmの大きさに切り取った。このようにして、比較例7の偏光フィルム用PVAフィルム(サイズ:10×11cm)を得た。比較例7の偏光フィルム用PVAフィルムのレターデーションは40nmであり、その光軸と流れ方向とがなす角度は65°であった。また、比較例7の偏光フィルム用PVAフィルムの膨潤度(b)は207%であった。
(2)比較例7の偏光フィルム用PVAフィルムを、湿式延伸方向と光軸とがなす角度が65°になるように延伸治具(チャック間隔:4cm)に取り付け、30℃の純水に30秒間浸漬した。続いて、ヨウ素を0.04質量%、ヨウ化カリウムを4質量%、ほう酸を4質量%の割合で含有する染色液(温度30℃)にフィルムを浸漬することによって、ヨウ素をフィルムに吸着させた。続いて、ほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度50℃)において、0.13m/minの速度でフィルムを5.4倍の延伸倍率で湿式延伸した。
続いて、ヨウ化カリウム濃度が6質量%でほう酸濃度が4質量%の水溶液中(温度35℃)にフィルムを4分間浸漬し、偏光フィルムの色調整を行った。その後、延伸方向を固定したまま50℃で4分間フィルムを乾燥した。このようにして、比較例7の偏光フィルムを作製した。湿式延伸におけるネックイン(A)/(B)は、0.50であった。比較例7の偏光フィルムは、透過率(Y)が44%であり、偏光度が99.70%であった。
上記の結果を表1および表2に示す。
表2に示すように、比較例の偏光フィルムに比べて、実施例の偏光フィルムは偏光度が高かった。すなわち、本発明の偏光フィルム用PVAフィルムを用いることによって、高い偏光性能を有する偏光フィルムが得られた。また、実施例1および2に示すように、本発明の偏光フィルム用PVAフィルムを用いることによって、偏光フィルムを製造する際の湿式延伸工程におけるネックイン(A)/(B)の値を小さくすることができた。
以上、本発明の実施の形態について例を挙げて説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されず本発明の技術的思想に基づき他の実施形態に適用できる。