JP3021494B2 - 偏光フイルムおよびその製造法 - Google Patents

偏光フイルムおよびその製造法

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【発明の詳細な説明】 A.産業上の利用分野 本発明は偏光フイルムおよびその製造法に関する。
更に詳しくは耐熱性、耐湿熱性および耐久性に優れ、
かつ光学特性に優れた偏光フイルムおよびその製造法に
関する。
B.従来の技術 従来、液晶表示装置は時計、電卓、ワープロおよび機
械の計器類等の比較的小画面の表示装置として用いら
れ、表示品質に対する要求は特に厳しくなかつた。しか
し、近年液晶表示装置がテレビやラツプトツプパソコン
用のデイスプレイとしてや自動車、航空機のインパネ用
デイスプレイ等として幅広く利用されるようになり、大
型化、表示品質の高級化、耐久性の向上等が要求されて
いる。したがつて、液晶表示装置の構成要素である偏光
フイルムに関しても、上記課題を達成するために、大面
積化、高偏光度かつ高透過度といつた光学特性の向上や
耐水性、耐熱性、耐湿熱性および耐久性等の向上が求め
られている。
従来、偏光フイルムとしてはヨウ素や二色性色素を吸
着させたポリビニルアルコールの一軸延伸フイルムがよ
く用いられているが、この偏光フイルムは偏光度は優れ
ているものの、耐水性、耐湿熱性および耐久性に乏し
い。これに対して、高重合度のポリビニルアルコールの
一軸延伸フイルムを基材として使用する提案(例えば、
特開平1-105204等)や一軸延伸ポリエステルフイルムを
基材とした偏光フイルムが提案(例えば特開昭58-68008
等)されている。しかし、前者においては、重合度の効
果は認められるものの必ずしも十分ではなく、後者で
は、ポリビニルアルコール基材の偏光フイルムの欠点は
ある程度改善されているが、偏光度が不十分であり、上
記要求に充分に応えられるものではない。
C.発明が解決しようとする課題 このような状況下、本発明は偏光度、透過度等の光学
特性に優れ、かつ耐水性、耐湿熱性および耐熱性が改善
された高耐久性の偏光フイルムおよびその製造法を提供
するものである。
D.課題を解決するための手段 本発明者らは上記課題解決に向けて鋭意検討を重ねた
結果、1,2−グリコール結合量が1.5モル%以下のポリビ
ニルアルコール(以下、ポリビニルアルコールをPVAと
略記することがある)系重合体からなる一軸延伸フイル
ムを基材として用いることにより上記目的を達成するこ
とを見い出し、本発明を完成したものである。
従来、偏光フイルムの基材として使用されているPVA
の1,2−グリコール結合量はおよそ1.7モル%である。そ
れに対して、本発明の偏光フイルムは1,2−グリコール
結合量が1.5モル%以下のPVA系重合体からなる一軸延伸
フイルムを基材としているために、水や熱による光学特
性の低下を抑制し、あわせてヨウ素や染料等の二色性物
質の配向を向上せしめることが可能であり、その結果、
光学特性に優れ、かつ耐久性が著しく優れている。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の偏光フイルムは従来の偏光フイルムに用いら
れてきたPVAよりも1,2−グリコール結合量の低いPVA系
重合体の一軸延伸フイルムを基材とすることを特徴とす
る。
本発明においてPVA系重合体の1,2−グリコール結合量
は0.5〜1.5モル%の範囲にすることが必要であり、好ま
しくは0.5〜1.2モル%、さらに好ましくは0.5〜1.0モル
%の範囲である。偏光フイルムの耐水性、耐熱性、耐久
性および光学特性の向上の目的からすれば、PVA系重合
体の1,2−グリコール結合量は低いほど好ましいが、1,2
−グリコール結合量が低くすぎるものは、該PVA系重合
体の製造が困難となることから、1,2−グリコール結合
量は概ね0.5モル%以上であることが必要である。
該PVA系重合体の重合度やけん化度についても本発明
の偏光フイルムの性能に影響を与える。
重合度はフイルム強度や加工特性の点からは500以上
にする必要があり、好ましくは1000以上、さらに好まし
くは1500以上であり、成膜や延伸等の加工特性の点から
30000以下であることが必要である。ここでPVA系重合体
の重合度は該PVA系重合体を再酢化したポリ酢酸ビニル
のアセトン中、30℃で測定した極限粘度から次式により
求めた粘度平均重合度で表したものである。
=([η]×1000/7.94)(1/0.62) PVA系重合体におけるケン化度は、85モル%以上であ
ることが必要であり、好ましくは95モル%以上、さらに
好ましくは98モル%以上である。
本発明の1,2−グリコール結合量が1.5モル%以下のPV
A系重合体は通常のPVAの製造法である酢酸ビニルモノマ
ーの沸点重合からは得られない。本発明で用いられるよ
うな低1,2−グリコール結合量のPVA系重合体は50℃以下
で重合されたポリビニルエステル系重合体を原料として
得られる。
該ポリビニルエステル系重合体の重合法としては低温
塊状重合法、低温懸濁重合法および低温乳化重合法が挙
げられる。低温重合法においてはビニルエステルのよう
に連鎖移動が大きい系では重合温度の低下とともに連鎖
移動がおさえられるために、通常では重合度が高くなる
が、重合速度等の調節および連鎖移動剤の併用により、
目的とする重合度で、かつ1,2−グリコール結合量が1.5
モル%以下のポリビニルアルコール系重合体を得ること
が出来る。
かかるポリビニルエステル系重合体としてはギ酸ビニ
ル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニ
ル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン
酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバ
ーサテイツク酸ビニル等のビニルエステル類のポリマー
が挙げられるが、とりわけ酢酸ビニルのポリマーが好ま
しい。
また上記のビニルエステルモノマー類に共重合可能な
モノマーを共重合した共重合体であることも差しつかえ
なく、本発明の趣旨を損なわない範囲で使用される。こ
のような共重合単位としては、たとえばエチレン、プロ
ピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフイン類、ア
クリル酸およびその塩とアクリル酸メチル、アクリル酸
エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロ
ピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、
アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシ
ル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等の
アクリル酸エステル類、メタクリル酸およびその塩、メ
タクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸
n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル
酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸
t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタク
リル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタク
リル酸エステル類、アクリルアミド、n−メチルアクリ
ルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチル
アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリル
アミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミ
ドプロピルジメチルアミンおよびその塩またはその4級
塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体等
のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、N−メチ
ルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタ
クリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタク
リルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩または
その4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその
誘導体等のメタクリルアミド誘導体、メチルビニルエー
テル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエー
テル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニル
エーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニ
ルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニ
ルエーテル等のビニルエーテル類、アクリロニトリル、
メタクリロニトリル等のニトリル類、塩化ビニル、塩化
ビニリデン、フツ化ビニル、フツ化ビニリデン等のハロ
ゲン化ビニル類、酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化
合物、マレイン酸およびその塩またはそのエステル、イ
タコン酸およびその塩またはそのエステル、ビニルトリ
メトキシシラン等のビニルシリル化合物、酢酸イソプロ
ペニル等が挙げられる。
本発明のPVA系重合体は、上記の方法等によつて得ら
れた1,2−グリコール結合量が1.5モル%以下のポリビニ
ルエステル系重合体を公知の方法によりケン化すること
により得られる。
本発明の偏光フイルムに使用される二色性物質は、よ
う素のほか、いわゆる二色性染料が単独または混合して
用いられる。代表的なものとしてたとえばblack17,19,1
54;brown44,106,195,210,223;red2,23,28,31,37,39,79,
81,240,242,247;bluel,15,22,78,90,98,151,168,202,23
6,249,270;violet9,12,51,98;green1,85;yellow8,12,4
4,86,87;orange26,39,106,107等が挙げられる。フイル
ム中の該二色性物質の量は、少なすぎると偏光フイルム
の光学的性質を発揮できず、多すぎても光学的性質や耐
水性、耐熱性を低下させる要因となることから通常ポリ
ビニルアルコール系重合体に対して、0.01重量%から1
重量%の範囲に調整される。
本発明の偏光フイルムは、従来のPVA系偏光フイルム
の最大の欠点である水や熱による光学特性の低下が改善
されるだけでなく、光学特性の向上をもたらすなど極め
て有用である。偏光フイルムにおける光学特性の理想値
は、透過度50%における偏光度が100%となることであ
る。しかし、二色性分子の二色性比が有限の値を有し、
基材ポリマー中における該分子の配向が完全には行なわ
れないことから、従来の偏光フイルムの場合には偏光度
99.9%のものでは透過度は40%程度であつた。それに対
して、本発明の偏光フイルムは、従来の偏光フイルムよ
りも低い濃度の二色性物質で充分な偏光特性が得られ、
高偏光度かつ高透過度が達成される。例えば透過度42〜
44%のときには、偏光度98〜100%、更に好ましくは透
過度44〜48%のときには、偏光度99〜100%の偏光フイ
ルムが得られる。
本発明の偏光フイルムは、たとえば以下の方法によつ
て製造される。
一つの方法としては、1,2−グリコール結合量が1.5モ
ル%以下のPVA系重合体のフイルムを調整した後に、ヨ
ウ素や染料等の二色性物質の吸着と一軸延伸を行なう方
法であり、二色性物質の吸着と延伸操作の順序は任意で
ある。もう一つの方法としては、フイルムの製造時に二
色性物質を添加し一軸延伸する方法であり、本発明の偏
光フイルムはどちらの方法でも製造可能である。
まず、1,2−グリコール結合量が1.5モル%以下のPVA
系重合体溶液の調整であるが、この時に使用される溶剤
としてはジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミ
ド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エ
チレングリコール、プロピレングリコール、グリセリ
ン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンおよび水
等が単独もしくは組合せて使用される。また塩化リチウ
ム、塩化カルシウム等の無機塩の水溶液も単独もしくは
前記有機溶媒と組合せて使用できる。この中でもジメチ
ルスルホキシドやジメチルホルムアミドと水の混合溶媒
およびグリセリンが好適に使用される。製膜時の該PVA
系重合体の濃度は製膜方法によつて異なるが、通常1〜
50重量%、好ましくは2〜30重量%である。
本発明の偏光フイルムに偏光素子を含有させる一つの
方法としては、PVA溶液にヨウ素または二色性色素を溶
解した溶液を調整する方法が挙げられるが、この時に使
用される偏光素子の濃度は偏光素子の種類によつても異
なるが、通常PVA系重合体に対して0.01〜1重量%の範
囲に調整される。かかる偏光素子を溶解したPVA系重合
体溶液は、通常室温から120℃の温度において調整され
る。この場合、使用される溶媒にもよるが、PVA系重合
体の分解による重合度低下を抑えるために、調整温度は
上記の温度範囲内で、低めの温度を採用することが好ま
しい。
次に、該PVA系重合体溶液からフイルムを製膜する。
フイルムの製膜方法としては、該PVA系重合体溶液か
らのキヤスト成膜、空気中や窒素等の不活性気体中への
押し出しによる乾式製膜が挙げられる。また、該PVA系
重合体溶液からの貧溶媒中への押し出しによる湿式製膜
を行なうこともできる。また、該PVA系重合体溶液を一
旦空気中や窒素等の不活性気体中へ押し出し、液膜を形
成した後に凝固液中に導入してフイルムを形成する乾湿
式製膜も可能である。この乾湿式製膜を更に詳しく説明
すると、雰囲気中にて該PVA系重合体溶液の液膜を形成
し、次いでこの液膜をデカリン、パラフイン、トリクロ
ロエチレン、四塩化炭素等の冷却媒体により冷却凝固し
ゲル化させた後、脱溶剤液中に導入して脱溶剤し、フイ
ルムを形成することもできる。更に、該液膜を冷凍室等
の冷却空間に導入し、冷却凝固しゲル化させた後に、脱
溶剤し、フイルムを形成することももちろん可能であ
る。凝固剤としては、該PVA系重合体溶液の溶剤に対し
て相溶性を有し、該PVA系重合体に対して貧溶媒のも
の、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等の
アルコール類、アセトン、ベンゼン、トルエン、または
これらと該PVA系重合体溶液の溶剤との混合溶媒並びに
無機塩類水溶液が用いられる。該PVA系重合体溶液の液
膜は、該PVA系重合体溶液の溶剤によつても異なるが、
通常−30〜120℃で調整される。
このようにして得られた1,2−グリコール結合量が1.5
モル%以下のPVA系重合体からなるフイルム(以下、原
反フイルムと略記する)は二色性物質の吸着と一軸延伸
が行なわれるか、もしくは一軸延伸だけが施される。吸
着操作と延伸操作は同時に行なつても別々に行なつても
問題はなく、その順序も任意である。また原反フイルム
への二色性物質の吸着を強固にすることを目的にホウ酸
やホウ砂等のホウ素化合物を添加することがあるが、こ
れは吸着や延伸と同時に実施しても、これら操作の前後
の間のどの時点で実施しても任意である。
二色性物質の原反フイルムへの吸着は、通常二色性物
質を含有する液体中に原反フイルムを浸漬させることに
より行なわれるが、その操作条件や方法等に特に制限は
なく、たとえば通常ヨウ素を用いる場合にはヨウ素−ヨ
ウ化カリウム水溶液が用いられ、染料の場合には染料水
溶液が用いられる。
延伸は湿式延伸や乾熱延伸および両者を組合わせた延
伸で行なわれ、一軸方向に3倍以上延伸することが好ま
しい。また延伸速度は、原反フイルムの元の長さを基準
として、10〜300%/分であることが好ましい。延伸時
の温度は延伸条件によつて異なるが、通常10℃から260
℃の間である。また乾熱延伸時は不活性気体中で操作を
実施するのが好ましい。延伸操作後に吸着を実施する場
合には、吸着の前に一軸延伸したフイルムを160〜260℃
で空気中または不活性気体中で熱処理を施すことが好ま
しい。延伸後のフイルムの厚さについては特に制限はな
いが5〜100μmが好ましく、10〜40μmが特に好まし
い。
吸着と延伸が実施された原反フイルムは定長下、空気
中または窒素気流中で乾燥熱処理される。
このようにして得られた本発明の偏光フイルムは、そ
れ単独で利用することもできるし、その両面あるいは片
面に光学的に透明で、かつ機械的強度を有した保護フイ
ルムを貼合わせて使用することもできる。保護フイルム
としては通常セルロースアセテート系フイルム、アクリ
ル系フイルム、ポリエステル系フイルム等が使用され
る。
E.実施例 以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する
が、本発明はこれらによつて何ら限定されるものではな
い。なお、実施例中の「%」および「部」は特にことわ
りのない限りそれぞれ「重量%」および「重量部」をあ
らわす。
なお透過度および偏光度は分光光度計を用いて測定し
た。透過度はJIS-Z-8701に準拠して測定し、偏光度は下
式により計算した。
ここでT1およびT2は、それぞれ2枚の偏光フイルムを
延伸軸を互いに平行および直交するように重ねて測定し
た透過度である。偏光フイルムは通常保護フイルムをラ
ミネートした状態で使用されるが、以下の実施例および
比較例では、保護フイルムのない偏光フイルム単独につ
いて測定した。
実施例1 撹拌機を備えた反応容器に、酢酸ビニルモノマー300
部、メタノール60部を仕込み、窒素ガスバブリングによ
り系中を充分に窒素置換した。別途メタノール5部に、
開始剤として2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジ
メチルバレロニトリル)0.011部を溶解した溶液を調整
し、窒素ガスによるバブリングで窒素置換した。反応容
器を昇温し、内温が40℃に達したところで開始剤を溶解
したメタノール溶液を注入し、重合を開始した。300分
後に重合率が30%に達したところで、重合禁止剤を溶解
したメタノールを添加し、さらに冷却して重合を停止し
た。その後、減圧下にメタノールを添加しながら未反応
酢酸ビニルモノマーを除去し、ポリ酢酸ビニルのメタノ
ール溶液を得た。この溶液の一部をとり、濃度10%、
[NaOH]/[VAc](モル比)=0.1、温度40℃でケン化
し、得られたPVAの0.1部を無水酢酸8部とピリジン2部
の混合液中120℃で20時間、ときどき撹拌しながら再酢
化し、アセトン−エーテル、アセトン−水系で再沈精製
をくり返し、精製された再酢化されたポリ酢酸ビニルを
得た。得られたPVAをd6-DMSOに溶解し、NMRを測定した
ところ、ケン化度99.7モル%、1,2−グリコール結合量
1.40モル%、再酢化して得たポリ酢酸ビニルのアセトン
中30℃で測定した[η]から求めた粘度平均重合度は35
50であつた。
このPVAを、PVA濃度が7重量%になるように、ジメチ
ルスルホキシドに充分系中の窒素置換を行なつた後、80
℃の加温下で溶解し、PVA溶液を得た。該溶液をポリエ
チレンテレフタレートフイルム上に流延し、メタノール
凝固浴に浸漬してフイルム化した後に、メタノール抽出
浴に導入し、ジメチルスルホキシドの脱溶液化を行なつ
た。次いで、室温で自然乾燥し、150℃で8倍に一軸延
伸し、更に定長下で窒素ガス雰囲気中190℃で3分間熱
固定した。該延伸フイルムをヨウ素0.2g/l、ヨウ化カリ
ウム50g/lを溶解した水溶液中に、30℃で2分間浸漬し
た。つづいて、ホウ酸60g/l、ヨウ化カリウム30g/lを溶
かした水溶液中で室温にて5分間のホウ酸処理を行なつ
た後、定長下で40℃の熱風下に乾燥して、厚さ18μmの
偏光フイルムを得た。該偏光フイルム中のヨウ素量をチ
オ硫酸ナトリウムで滴定して求めたところ、I2として、
0.3重量%であつた。得られた偏光フイルムの透過度は4
7.5%、偏光度は99.9%であつた。該偏光フイルムを60
℃、90%RH下に、10時間放置した後の透過度は49.5%、
偏光度は97.4%であつた。
比較例1 PVAとして重合度3500、ケン化度99.7、1,2−グリコー
ル結合量1.70モル%のものを使用する以外は、実施例1
と全く同様にして偏光フイルムを調整した。該偏光フイ
ルムの透過度は42.5%、偏光度は99.3%であつた。また
60℃、90%RHに10時間放置した後の透過度は60.5%、偏
光度は84.0%であつた。
実施例2 延伸フイルムをヨウ素およびヨウ化カリウムの混合水
溶液中に浸漬するかわりに、二色性色素であるダイレク
トスカイブルー(住友化成(株)製)5.0g/lを溶かした
染色液に浸漬する以外は実施例1と同様にして、厚さ18
μmの偏光フイルムを得た。波長650nmにおける透過度
は46.0%、偏光度は98.5%であつた。また60℃、90%RH
下に10時間放置した後の波長650nmにおける透過度は46.
1%、偏光度は98.3%であつた。
実施例3 実施例1と同様のPVAを用いて、PVA濃度が7重量%に
なるように、95℃の加温下蒸留水に溶解し、PVA水溶液
を得た。該水溶液をポリエチレンテレフタレートフイル
ム上に流延し、室温下で自然乾燥してフイルム化した。
上記のフイルムの調整方法以外は実施例1と同様にし
て、厚さ18μmの延伸された偏光フイルムを得た。該偏
光フイルムの透過度は47.0%、偏光度は99.9%であつ
た。また60℃、90%RH下に10時間放置した後の透過度は
50.3%、偏光度は96.4%であつた。
比較例2 重合度3500、ケン化度99.7モル%、1,2−グリコール
結合量1.70モル%のPVAを使用する以外は実施例3と全
く同様にして、厚さ18μmの偏光フイルムを調整した。
該偏光フイルムの透過度は42.5%、偏光度は99.3%であ
り、60℃、90%RH下に10時間放置した後の透過度は62.0
%、偏光度は82.6%であつた。
実施例4 実施例1で調整した原反フイルムをヨウ素0.2g/l、ヨ
ウ化カリウム50g/lを溶解した水溶液中に、30℃で3分
浸漬した。つづいて、ホウ酸60g/l、ヨウ化カリウム30g
/lを溶かした水溶液中で、5倍に一軸延伸し、5分間の
ホウ酸処理を行なつた後、定長下で40℃の熱風下に乾燥
して、厚さ18μmの偏光フイルムとした。該偏光フイル
ム中のヨウ素量をチオ硫酸ナトリウムで滴定した求めた
ところ、I2として、0.3重量%であつた。得られた偏光
フイルムの透過度は47.5%、偏光度は99.9%であり、該
偏光フイルムを60℃、90%RH下に、10時間放置した後の
透過度は49.5%、偏光度97.0%であつた。
実施例5 撹拌機、温度計、窒素導入管および冷却管を備え付け
た反応器に、イオン交換水200部、酢酸ビニル200部、ポ
リオキシエチレン[POE(40)]ノニルフエニルエーテ
ル(ノニポール400、三洋化成(株)製)を6部、FeSO4
・7H2Oを0.0120部、ロンガリツトを0.27部および2−メ
ルカプトエタノール0.053部をはかりとり、30分間煮沸
したのち、窒素を導入しながら5℃まで冷却し、別途脱
気したイオン交換水で調整した0.060%の過酸化水素水
を1.0部/hrで均一に連続添加しながら重合を開始した。
更に、別途脱気したイオン交換水/メタノール=3/1
(重量比)の混合溶液で調整した1.0%の2−メルカプ
トエタノール溶液を1.0部/hrで均一に連続添加した。重
合中は系を窒素ガスでシールし酸素の侵入をおさえた。
5時間後に重合率60%のところで、メタノール2000部に
ヒドロキノンモノメチルエーテル0.5部を溶解した中
に、反応器中のエマルジヨンを投入し撹拌し溶解した。
その後、減圧下にメタノールを添加しながら未反応酢酸
ビニルモノマーを除去し、ポリ酢酸ビニル溶液を得た。
この溶液の一部をとり、実施例1と同様にして、再酢化
及び精製を行なつた。得られたPVAのケン化度は99.6モ
ル%、1,2−グリコール結合量1.01モル%、粘度平均重
合度は3570であつた。
該PVAを用いる以外は実施例1と同様にして、厚さ16
μmの偏光フイルムを調整した。得られた偏光フイルム
の透過度は48.0%、偏光度は99.9%であつた。該偏光フ
イルムを60℃、90%RH下に10時間放置した後の透過度は
49.7%で、偏光度は98.0%であつた。
実施例6 撹拌器、温度計、窒素導入管および冷却管を備え付け
た反応器にイオン交換水300部、酢酸ビニル350部、ポリ
オキシエチレン[POE(40)]ノニルフエニルエーテル
(ノニポール400、三洋化成(株)製)11部、FeSO4・7H
2Oを0.026部、ロンガリツトを0.65部および2−メルカ
プトエタノール0.16部をはかりとり30分間煮沸したの
ち、窒素を導入しながら−20℃まで冷却し、別途脱気し
たイオン交換水で調整した0.060%の過酸化水素水を1.8
部/hrで均一に連続添加しながら重合を開始した。ま
た、別途脱気したイオン交換水/メタノール=3/1(重
量比)の混合溶液で調整した1.0%の2−メルカプトエ
タノール溶液を2.0部/hrで均一に連続添加した。
重合中は系を窒素ガスでシールし酸素の侵入をおさ
え、6時間後に重合率63.8%のところで、重合を停止し
た。ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液の調整以降は実施
例5と同様に行ない、精製された再酢化ポリ酢酸ビニル
を得た。得られたPVAのケン化度は99.7モル%、1,2−グ
リコール結合量は0.75モル%、粘度平均重合度は3480で
あつた。
該PVAを用いる以外は実施例1と同様にして、厚さ16
μmの偏光フイルムを調整した。得られた偏光フイルム
の透過度は48.3%、偏光度は99.9%であつた。該偏光フ
イルムを60℃、90%RH下に10時間放置した後の透過度は
49.7%で、偏光度は98.3%であつた。
実施例7 使用する2−メルカプトエタノール量を変更する以外
は、実施例6と同様にして、−20℃エマルジヨン重合、
溶解、未反応モノマー除去、ケン化および再酢化を行な
い、ケン化度99.6モル%、1,2−グリコール結合量0.76
モル%、粘度平均重合度1800のPVAを得た。得られたPVA
を用いて実施例1と同様にして、厚さ18μmの偏光フイ
ルムを調整した。透過度は47.9%、偏光度は99.9%であ
り、該偏光フイルムを60℃、90%RH下に10時間放置した
後の透過度は49.7%で偏光度は98.3%であつた。
実施例8 実施例7と同様にして、ケン化度99.5モル%、1,2−
グリコール結合量0.75モル%、粘度平均重合度8000のPV
Aを得た。得られたPVAを用いて実施例7と同様にして、
厚さ14μmの偏光フイルムを調整したところ、透過度は
48.5%、偏光度は99.9%であり、60℃、90%RH下に10時
間放置した後の透過度は49.8%、偏光度は98.5%であつ
た。
比較例3 重合度1750、ケン化度99.9、1,2−グリコール結合量
1.70モル%のPVAを使用する以外は、実施例1と同様に
して厚さ18μmの偏光フイルムを調整した。該偏光フイ
ルムの透過度は42.5%、偏光度は96.4%、また60℃、90
%RH下に10時間放置した後の透過度は62.7%、偏光度は
72.4%であつた。
実施例9 実施例1と同様のPVAを用いて、PVA濃度が7重量%に
なるように、80℃の加温下ジメチルスルホキシド/水=
90/10(重量比)の混合溶剤に溶解し、PVA溶液を得た。
上記のPVA溶液の調整方法以外は実施例1と同様にして
厚さ18μmの偏光フイルムを得た。該偏光フイルムの透
過度は47.7%、偏光度は99.9%であつた。該偏光フイル
ムを60℃、90%RH下に、10時間放置した後の透過度は4
9.5%、偏光度は97.4%であつた。
F.発明の効果 上記の実施例により明らかなとおり、本発明のPVA系
重合体から得られたフイルムは従来のPVA系重合体フイ
ルムに比べ、高強度で耐水性、耐熱性が優れている。こ
れは、PVA系重合体の1,2−グリコール結合量が1.5モル
%以下のPVA系重合体を用いることによつてはじめて達
成されたものである。
この理由は明らかではないが、本発明の偏光フイルム
は、1,2−グリコール結合量が従来の偏光フイルムより
も少ないPVA系重合体から成ることに関係していると推
される。
本発明で得られたPVA系重合体フイルムは上記の特徴
を生かして各種包装材料、ガスバリヤー材料、偏光フイ
ルム基材やフイルター基材等の光学用フイルムおよび各
種分離膜等に使用されるなど工学的な価値が極めて高い
ものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き 合議体 審判長 森 正幸 審判官 河原 英雄 審判官 橋本 栄和 (56)参考文献 特開 平1−105204(JP,A) 特開 平1−84203(JP,A) 特開 昭61−148209(JP,A) 特開 平1−197504(JP,A) 特開 平1−197505(JP,A) 特開 平1−197506(JP,A) J.Poly.Sci.,Part A,Vol.1,(1963)P.951−964 高分子化学,第16巻(1959)P.115 −119 長野浩一ら著「ポバール」(改訂新 版)、昭和56年4月1日、株式会社高分 子刊行会発行、第212〜221頁 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02B 5/30 G02B 1/08 C08L 29/04 C08F 16/06

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】1,2−グリコール結合量が0.5〜1.5モル
    %、重合度が500〜30000及びケン化度が85モル%以上の
    ポリビニルアルコール系重合体からなる一軸延伸フイル
    ムを基材とする偏光フイルム。
  2. 【請求項2】1,2−グリコール結合量が0.5〜1.2モル%
    である請求項1記載の偏光フイルム。
  3. 【請求項3】ビニルエステルモノマーを50℃以下の温度
    で重合した後、ケン化して得られる1,2−グリコール結
    合量が0.5〜1.5モル%、重合度が500〜30000及びケン化
    度が85モル%以上のポリビニルアルコール系重合体の溶
    液を用いて製膜し、得られたフイルムを一軸延伸するこ
    とを特徴とする請求項1又は2に記載の偏光フイルムの
    製造方法。
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