JP4378948B2 - 酸無水物、液晶配向膜および液晶表示素子 - Google Patents

酸無水物、液晶配向膜および液晶表示素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な酸無水物、これを原料成分の一部として用いて得られるポリマー、このポリマーの少なくとも1つを含有するワニス、このワニスを用いた配向膜、およびこの配向膜を構成要素として有する液晶表示素子に関する。なお、本明細書においては、液晶表示素子を単に「素子」で表記することがある。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開昭58−109479号公報
【特許文献2】
特開平10−010535号公報
【特許文献3】
特開平01−238576号公報
【特許文献4】
米国特許第4160770号
液晶表示素子は、画面の拡大、カラー化、表示品位(コントラスト、発色など)の向上、応答速度の向上などの要求を受けてきた。そしてこれらの要求に対応するため、液晶表示素子は、TN(Twisted Nematic)素子から、STN(Super Twisted Nematic)素子、さらに画素1つ1つに薄膜トランジスタ(Thin Filmed Transistor)を取り付けたTFT素子へと発展してきている。近年では、TFT素子の駆動方式の改良が進み、例えばより広い視野角を獲得するため、IPS(In Plain Switching)素子やVA(Vertical Alignment、垂直配向)素子が開発されている。さらに、動画対応可能な応答速度を持つOCB(Optically Compensated Bend)素子が開発されている。
【0003】
配向膜は、素子において液晶分子を一定方向に配向させることと、基板平面に対して傾けること(プレチルト角を付与すること)の2つの役割を果たしている。配向膜の経時的劣化、化学的劣化、および熱的劣化を最小限に抑えるため、ポリイミド薄膜がその材料として主に使用されている。その理由は、ポリイミド薄膜が、高いガラス転移点(Tg)を有し、耐薬品性や耐熱性に優れているからである。配向膜を形成させるには、例えばポリアミド酸またはポリイミドの溶液をスピンナー法や印刷法などにより電極付ガラス基板に塗布する。次に、塗布された電極付ガラス基板を加熱することによって、脱水閉環または乾燥してポリイミドの薄膜とする。そして、ラビング等の配向処理を行って配向膜とする。
【0004】
このような配向膜に要求される特性は、次の各項である。
(1)適切なプレチルト角を有すること。しかもこのプレチルト角が、ラビング時の押込み強度や加熱時の温度の差による変化が小さいこと。
(2)素子を作製したときに配向の欠陥が発生しないように、配向処理できること。
(3)適切な電圧保持率を素子に与えることができること。
(4)焼き付きが起きにくいこと。焼き付きは、素子を駆動させ、任意の画像を長時間表示させてから別の画像に変えた時、前の表示が残像として残る現象のことである。
特に、TFT素子に用いられる配向膜には、高い電圧保持率を有し、しかも焼き付きを起こしにくいことが要求されている。
【0005】
配向膜用ポリイミドの原料として使用されている酸無水物として、式(6)および(7)で表される化合物が一般的に知られている。式(8)で表される化合物が特許文献1に記載されている。
Figure 0004378948
【0006】
しかしながら、式(6)で表される酸無水物を出発原料として得られた配向膜を有する素子では、電圧保持率が低下しやすく、また焼き付きも起こり易い。式(7)の酸無水物を出発原料として得られた配向膜を有する素子では、電圧保持率が高く、焼き付きも起こり難い。しかしながら、ラビング時の押込み強度や加熱時の温度の差によりプレチルト角が変化する。式(8)の酸無水物は、その合成に際してオゾンを使用するため、製造時に特別な装置が必要である。これらの化合物の他、特許文献1〜3にも酸無水物の例が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記の要求特性(1)〜(4)を満足するような配向膜を得ることができ、しかも容易に合成できる新規な酸無水物を提供することである。この酸無水物を出発原料の1つとして使用することにより得られる、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリマーを提供することである。これらのポリアミド酸、ポリイミド、およびポリアミドイミドの少なくとも1つを含有するワニスを用いて得られる配向膜を提供することである。そして、この配向膜を構成要素として有する液晶表示素子を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究開発を進めた結果、本発明の酸無水物は特別な反応装置を必要とせず、容易に合成できること、本発明の酸無水物を出発原料として得られる配向膜を用いると、高い電圧保持率を有し、しかも焼き付きを起こしにくい電気特性を有する液晶表示素子が得られること、この配向膜がプレチルト角の安定性に優れていることなどを見出した。そして、これらの知見に基づいて本発明を完成した。なお、本発明で用いる用語「任意の」は、位置のみでなく個数についても任意であることを示す。このとき個数が0である場合は含まれない。
【0009】
本発明は、以下に示す構成を有する。
[1]式(1)で表される酸無水物。
Figure 0004378948
式(1)において、A1,4−シクロヘキシレン、5−(4−(4−n−プロピルシクロヘキシル)ベンジル)−1,3−フェニレンまたは5−(4−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)ベンジル)−1,3−フェニレンであり、Bおよび は式(a)で表される基または式(b)で表される基である。
Figure 0004378948
式(a)および式(b)において、式(a)中のR11および式(b)中のR12は独立して水素またはメチルである;式(a)中のR31および式(b)中の 32 は水素である。
但し、Aが芳香環を有する基である場合には、R11およびR12どちらもメチルである。
[2]式(2)で表される、[1]項に記載の酸無水物。
Figure 0004378948
式(2)において、Aは式(1)中のAと同一の意味を有する;R12およびR32は、式(b)におけるこれらの記号と同一の意味を有する。
[3]式(3)で表される、[1]項に記載の酸無水物。
Figure 0004378948
式(3)において、Aは式(1)中のAと同一の意味を有する;R11およびR31は、式(a)におけるこれらの記号と同一の意味を有する。
][1]〜[]のいずれか1項に記載の酸無水物を原料成分の1つとして用いて得られるポリアミド酸。
][1]〜[]のいずれか1項に記載の酸無水物を原料成分の1つとして用いて得られるポリイミド。
][1]〜[]のいずれか1項に記載の酸無水物を原料成分の1つとして用いて得られるポリアミドイミド。
][]項に記載のポリアミド酸、[]項に記載のポリイミド、および[]項に記載のポリアミドイミドの少なくとも1つを含有するワニス。
][]項に記載のワニスを用いて得られる配向膜。
][]項に記載の配向膜を有する液晶表示素子。
10]フッ素系液晶組成物を含有することを特徴とする、[]項に記載の液晶表示素子。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下の説明では、「式(1)で表される化合物」を「化合物(1)」で表記することがある。他の式で表される化合物についても、同様にして簡略化された名称で表記することがある。
本発明の酸無水物は、式(1)で表される。式(1)中のBおよび は式(a)で表される基または式(b)で表される基である。
Figure 0004378948
Figure 0004378948
【0011】
即ち、式(1)は次の式(2)および式(3)に展開される。
Figure 0004378948
Figure 0004378948

【0012】
式(1)〜式()中のA1,4−シクロヘキシレン、5−(4−(4−n−プロピルシクロヘキシル)ベンジル)−1,3−フェニレンまたは5−(4−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)ベンジル)−1,3−フェニレンである。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
式(2)および式(3)において、R11は式(a)中のR11と同じ意味を持ち、R12は式(b)中のR12と同じ意味を持つ。式(2)中の2つのR12は同じでもよく、異なってもよい。式(3)中の2つのR11は同じでもよく、異なってもよい。R 11 およびR12は独立して、水素またはメチルである。しかしながら、式(2)および式(3)においては、Aが芳香環を有する基である場合には、R11およびR12のどちらもメチルである。
【0017】
式(2)および式(3)において、R31は式(a)中のR31と同じ意味を持ち、R32は式(b)中のR32と同じ意味を持つ。R31およびR32どちらも水素である。
【0018】
次のスキーム(A)〜スキーム(C)は、化合物(1)の合成方法についての説明である。
スキーム(A)
式(1)において、BおよびBがともに式(a)で表される基または式(b)で表される基であり、式(a)および式(b)において、R11、R12、R31およびR32がいずれも水素である化合物の合成
Figure 0004378948
このスキームにおいて、Aは式(1)中のAと同じ意味を持ち、nは0または1であり、Aは4価の有機基である。
【0019】
市販の脂環式ジケトンを、常法に従いジアルデヒド誘導体(1−a)に変換する。この化合物をJ. Polym .Sci., A-1, Vol.25, 31(1987)などに記載の方法に従って変換することにより、式(1)においてBおよびBがともに式(b)で表される基であり、式(b)中のR12およびR32がともに水素である化合物が得られる(経路A)。化合物(1−b)を、市販の2−ブロモメチル−1,3−ジオキソランから誘導したグリニヤー試薬と反応させ、酸処理するとアルデヒド誘導体が生成する。生成したアルデヒド誘導体を、酸化銀などにより酸化することによって、化合物(1−d)に変換できる。この化合物を経路Aの方法と同様に処理することにより、式(1)においてBおよびBが共に式(a)で表される基であり、式(a)中のR11およびR31がともに水素である化合物が得られる(経路B)。式(1)においてBとBが同一でない化合物は、経路Bにおける最初の反応において、反応のモル比を調整することにより、化合物(1−b)の片側のみを変性し、次いで経路Aの化合物(1−b)からの反応を行うことにより合成することができる。
【0020】
上記の化合物(1)は、J. Polym. Sci., A-1, Vol.25, 31(1987)、J. Org. Chem., Vol.55, 5165(1990)、J. Org. Chem., Vol.63, 1342(1998)などに記載の方法を応用することによっても合成することができる。この場合には化合物(1−g)または化合物(1−h)が得られる。化合物(1−g)は、R11およびR31が共に水素である化合物(3)である。そして、化合物(1−h)を、特開平03−176484号公報に記載の方法などに従って水素添加すれば、R12およびR32が共に水素であり、Aがシクロヘキシレン環を有する基である化合物(2)が得られる。化合物(1−g)に水素添加して、Aがシクロヘキシレン環を有する基である化合物(3)とすることもできる。
Figure 0004378948
これらの式において、Aは式(1)中のAと同様に定義される基であり、Rは水素またはメチルである。
【0021】
スキーム(B)
式(1)において、BおよびBがともに式(a)で表される基または式(b)で表される基であり、式(a)または式(b)において、R31またはR32が水素であり、R11またはR12がアルキルである化合物の合成
Figure 0004378948
このスキームにおいて、Aは式(1)におけるAと同じ意味を持ち、Rはアルキルであり、Yは−CNまたは−CHCOEtであり、そしてXはハロゲンである。化合物(1−b)を、J. Org. Chem., Vol.47, 2840(1982)などに記載の方法に従って変換すると化合物(1−e)が得られる。化合物(1−e)は、化合物(1−d)をエステル化することによっても得られる。化合物(1−e)をアルキルハライドでアルキル化することにより、化合物(1−f)が得られる。化合物(1−f)を上記の方法と同様に加水分解処理することにより、首記の化合物が得られる。
【0022】
スキーム(C)
式(1)において、BおよびBがともに式(a)で表される基または式(b)で表される基であり、式(a)または式(b)において、R11またはR12が水素であり、R31またはR32がアルキルである化合物の合成
Figure 0004378948
このスキームにおいて、Aは式(1)におけるAと同じ意味を持ち、Rはアルキルである。化合物(1−a)と式(1−i)で表されるグリニヤール試薬とを反応させ、得られた化合物(1−j)をスワン酸化することにより、化合物(1−k)が得られる。この化合物(1−k)を原料として、上記のスキーム(A)およびスキーム(B)の方法と同様に変換することにより、首記の化合物を合成することができる。
【0023】
化合物(1)の好ましい例を以下の表1〜表に示す。化合物(1)の例は、式(2)において2つのR12が同じ基であり、2つのR32が同じ基である化合物の例、式(3)において2つのR11が同じ基であり、2つのR31が同じ基である化合物の例である。以下の表においては、RはR11およびR12を代表する記号であり、RはR31およびR32を代表する記号である。トランスと記載されているものは、環構造における立体配置が全てトランスであるものを示す。Bzはベンジルであり、Meはメチルであり、Etはエチルである。式で表されたアルキルは直鎖アルキルである。
【0024】
(表1)
Figure 0004378948
上記の例のうち、No.1、No.2、No.10およびNo.11を除く例は参考例である。
【0025】
(表2)
Figure 0004378948
上記の例のうち、No.16、No.19およびNo.26を除く例は参考例である。
【0026】
(表3)
Figure 0004378948
上記の例のうち、No.27、No.35およびNo.36を除く例は参考例である。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
これら好適例の酸無水物を用いて得られる配向膜は、いずれも高い電圧保持率を有し、焼き付きを起こしにくい特性を有する。プレチルト角の安定性もよい。No.1、No.2、No.10、No.11、No.16またはNo.19の酸無水物を用いて得られる配向膜は、非常に高い電圧保持率を有するため、低電圧用液晶表示素子の材料として特に好適である。No.26、No.27、No.35またはNo.36の化合物を用いて得られる配向膜を使用すれば、液晶表示素子の焼き付きを抑えることができるので、全てのTFT表示素子用材料として特に好適である。No.1、No.2、No.10またはNo.11の酸無水物を用いて得られる配向膜は、比較的小さなプレチルト角が要求されるIPS用として特に好適である
【0032】
配向膜に要求される特性をさらに効果的に発現させるため、薄膜化したときの表面エネルギーの値が異なるポリマーを2種類以上混合する方法(ポリマーブレンド)が、しばしば採用されている。例えば、特開平8−43831号公報には、2成分以上のポリマーを含有するワニスから樹脂塗膜を形成させると、表面張力の低い成分が膜表面に偏析しやすいことを利用する方法が開示されている。即ち、良好な液晶配向性を有する樹脂塗膜の表面張力を、良好な電気的特性を有する樹脂塗膜の表面張力よりも2dyne/cm以上小さくすることによって、配向膜表面に良好な液晶配向性を有する樹脂塗膜を形成させ、良好な電気的特性を有する樹脂成分をこの膜の支持体とする構造の配向膜を得る方法である。No.1、No.2、No.10、No.11、No.16およびNo.19の酸無水物は、相対的に大きな表面張力を有する。これらは、本発明の化合物をこの方法に応用する場合に特に好適である。
【0033】
No.26、27、35または36の酸無水物から得られる配向膜を使用すると、液晶のプレチルト角を大きくすることができる。TN型素子、OCB型素子およびVA型素子では、比較的大きなプレチルト角が要求される。従ってこれらは、これらの素子用として特に好適である。
【0034】
【0035】
本発明の酸無水物とジアミンとを有機溶剤中で反応させることによって、反応生成物の溶液が得られる。この反応生成物は、ポリアミド酸、ポリイミド、またはそれらの混合物である。このとき本発明の酸無水物を単独で使用してもよく、本発明の酸無水物を2種類以上組み合わせて使用してもよく、更に本発明の酸無水物と公知の酸無水物とを組み合わせて使用してもよい。本発明の酸無水物と公知のジカルボン酸またはその誘導体との混合物を、ジアミンと反応させるとポリアミドイミドが得られる。更に特性を改善するために、このポリアミドイミドを用いることができる。このポリアミドイミドは単独で用いてもよいし、前記反応生成物と併用してもよい。このポリアミドイミドを併用する場合の添加量は、ポリアミド酸またはポリイミドに対する割合で0.01〜30重量%である。好ましい割合は0.01〜10重量%であり、より好ましい割合は0.1〜5重量%である。配向膜のガラス基板への密着性の改善や硬さの調節などを行うために、有機ケイ素化合物などをこれらに添加してもよい。このようにして、本発明のワニスが得られる。
【0036】
本発明の酸無水物と反応させることができるジアミンとして、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミンおよびシロキサン系のジアミンを挙げることができる。脂肪族ジアミンの例は、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミンなどである。脂環式ジアミンの例は、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタンなどである。芳香族ジアミンの例は、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,4−ジアミノ−2−ブチルベンゼン、1,4−ジアミノ−2−ドデシルオキシベンゼン、ビス(4−アミノフェニル)エーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’,5,5’−テトラメチルジフェニルメタン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、1,2−ビス(4−アミノ−2−メチルフェニル)エタン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)サルファイド、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ベンジジン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノ−3−オクチルジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,1−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)−4−プロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−(4−アミノベンジル)フェニル)シクロヘキサン、4−n−ブチル−1,1−ビス(4−(4−アミノベンジル)フェニル)シクロヘキサン、1,3−ビス(4−(4−アミノベンジル)フェニル)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス−p−アミノフェニルアニリン、4−n−プロピルシクロヘキシル−3’,5’−ジアミノジフェニルメタン、4−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)シクロヘキシル−3’,5’−ジアミノジフェニルメタンなどである。これらの化合物を2種類以上併用してもよい。なお、本発明に使用する脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンまたは芳香族ジアミンは、上記の例に制限されない。
【0037】
シロキサン系のジアミンの例は、式(9)で表される化合物である。
Figure 0004378948
式(9)において、RおよびRは独立して、炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり、これらは同じでも異なってもよい。Rはメチレン、フェニレンまたは任意の水素がアルキルで置き換えられたフェニレンである。xは1〜6の整数であり、yは1〜10の整数である。
【0038】
本発明の酸無水物と併用することができる公知の酸無水物の例は、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ビス(ジカルボキシシクロヘキシル)エーテル二無水物、ビス(ジカルボキシシクロヘキシル)スルホン二無水物、ビス(ジカルボキシシクロヘキシル)メタン二無水物、1,2−ジカルボキシ−4−スクシニック−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン二無水物、1,2−ジカルボキシ−4−メチル−4−スクシニック−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンタン酢酸二無水物、5,6−ジカルボキシ−1−メチル−3−スクシニック−1−シクロヘキセン二無水物、2,3,5,6−テトラカルボキシビシクロ[2.2.1]シクロペンタン二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3,−ヘキサフルオロプロパン二無水物などである。これらの化合物はその異性体との混合物であってもかまわない。これらの化合物を2つ以上併用してもよい。そして、本発明の酸無水物と併用することができる酸無水物は、上記の化合物に限定されない。
【0039】
ガラス基板への密着性を改善するためのケイ素化合物の例は、シランカップリング剤およびシリコーンオイルである。シランカップリング剤の例は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどである。シリコーンオイルの例は、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサンなどである。この有機ケイ素化合物のワニスへの添加量は、ワニスに含有される反応生成物に対し、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%である。
【0040】
本発明の配向膜の酸無水物を反応させるときに使用する有機溶剤の例は、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレングリコールモノブチルエーテル(BC)、エチレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチロラクトンなどである。これらの2つ以上を混合して用いてもよい。そしてこれらの溶剤は、ワニス中の固形分濃度を調整するためにも用いられる。本発明で用いる有機溶剤は、これらの例に限定されない。
【0041】
以下の説明では、本発明の酸無水物を用いて得られるポリアミド酸、ポリイミドおよびポリアミドイミドの少なくとも1つを「ポリマー成分」で表記することがある。ポリマー成分およびその他の成分の使用量は、ワニス全量を基準とする割合で0.1〜30重量%である。その好ましい割合は、1〜10重量%である。このワニスを基板上に塗布するには、浸漬法、スピンナー法、スプレー法、印刷法などの方法を用いる。ワニスを塗布後に溶剤を蒸発させる。この時の温度は50〜150℃であり、好ましい温度は80〜120℃である。その後に、更に150〜400℃で加熱して被膜を形成させる。この時の好ましい温度は180〜280℃である。ワニスを塗布する前に、基板の表面をシランカップリング剤で処理し、その上に被膜を形成させれば、被膜と基板との接着性を改善できる。被膜形成後、その表面を布などで一方向にラビングし配向膜が得られる。本発明の配向膜を使用することにより、公知のほとんどすべての液晶表示素子に関し、その特性を改善できる。本発明の配向膜は、高い電圧保持率が要求される分野において特に好適であり、しかも焼き付き改善の効果が大きい。
【0042】
本発明の配向膜を有する液晶表示素子(TFT素子、TN素子、IPSモ素子、VA素子、またはOCB素子)に使用できる液晶組成物の例は、特許第3086228号、特許第2635435号、特表平5−501735号公報、特開平8−199168号公報、特開平9−235552号公報、特開平9−241643号公報、特開平9−255956号公報、特開平10−176167号公報、特開平10−204016号公報、特開平10−204436号公報、特開平10−231482号公報、特開平11−228966号公報、特開2000−087040公報、特開2001−48822公報、および特開2001−192657公報などに記載された液晶組成物である。これらに記載された液晶組成物は、末端に−OCFを有する化合物や側鎖にフッ素原子を有する化合物などを含有する組成物であり、高い電圧保持率を有する。本発明の液晶配向膜は、これらのフッ素系液晶組成物と組み合わせて用いるのが特に好ましい。これらの液晶組成物には、更に1つ以上の光学活性化合物が加えられてもよい。
【0043】
本発明の酸無水物は、液晶配向膜用ポリマーの原料としてだけでなく、コーティング剤、樹脂成型品、フィルム、繊維などに用いられるポリマーの原料としても利用することができる。
【0044】
【実施例】
実施例により、本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例において、NMRはすべて重クロロホルム中で測定した。分子量の測定はGPCを用い、ポリスチレンを標準溶液とし、DMFを溶出液として用いた。実施例中に記載された諸物性の測定値は、特に断りのない限り25℃で測定した値である。なお、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
【0045】
<液晶表示素子の評価法>
実施例で用いた液晶表示素子の評価法を説明する。
(1)プレチルト角
クリスタルローテーション法により行った。
(2)焼き付き(残留電荷)
三宅他、信学技報、EID91−111、p19に記載の方法により、残留電荷を測定した。この残留電荷を焼き付きの指標にした。つまり残留電荷が多いほど焼き付きやすいとした。測定時液晶セルに印加した電圧は、50mV、1kHzの交流と、周波数0.0036Hzの三角波を重畳させた交流電圧である。
(3)電圧保持率
「水嶋他、第14回液晶討論会予稿集 p78」に記載の方法により行った。測定は、ゲート幅69μs、周波数60Hz、波高±4.5Vの矩形波をセルに印可して行った。
【0046】
実施例1
トランス−1,4−シクロヘキシレンビスコハク酸無水物(化合物No.1)の合成
1,4−シクロヘキサンジオン(50g,0.44mol)、シアノ酢酸エチル(110g,0.97mol)、酢酸ナトリウム(5.7g,74mmol)、および酢酸(90g)を用い、J.Org.Sci.,Vol.63,3452(1941)に記載の方法に準じて、1,4−シクロヘキシリデンビスシアノ酢酸エチル(中間体1a)を得た。
【0047】
この中間体1a(111g,0.36mol)をNaBH(9.0g,0.24mol)を用いて、エタノール(670ml)中において、0℃で水素添加反応させた。反応液を3N塩酸水(340ml)に0℃で注ぎ、生じた沈殿をろ別した。この沈殿を酢酸エチル−エタノール混合溶剤(容量比1:1)で再結晶することにより、トランス−1,4−シクロヘキシレンビスジシアノ酢酸エチル(中間体1b)を得た(収率26%)。
【0048】
この中間体1b(22.5g,73mmol)のTHF(100ml)溶液に水素化ナトリウム(60%,11g,0.17mol)を加え、加熱して30分還流させた。冷却後、ブロモ酢酸エチル(35g,0.21mol)を加え、加熱して1時間還流させた。冷却後、溶剤を減圧下で留去し、水―塩化メチレンで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過した。溶剤を減圧下で留去した後、残さをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により、溶出剤として最初に塩化メチレンを用い、次に塩化メチレン−酢酸エチル混合溶剤(容量比10:1)を用いて精製することにより、トランス−1,4−シクロヘキシレンビス(2−シアノコハク酸ジエチル)(中間体1c)を得た。(収率90%)。
【0049】
この中間体1c(33g,69mmol)を濃塩酸(200ml)中で加熱して、50時間還流させた。塩酸を減圧留去後、メタノール(200ml)および濃硫酸を加えエステル化した。酢酸エチル−炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出操作を行った後、上記と同様な操作を行い粗生成物を得た。この粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/トルエン−酢酸エチル混合溶剤(容量比5:1))で精製することによって、トランス−1,4−シクロヘキシレンビスコハク酸ジメチル(中間体1d)を得た。(収率20%)。
1H NMR δ(ppm); 3.69, 3.66 (s, 12H), 2.69-2.74 (m, 4H), 2.41-2.47 (m, 2H), 1.67-1.72 (m, 4H), 1.50-1.60 (m, 2H), 1.00-1.10 (m, 4H).
融点;115−137℃。
【0050】
この中間体1dを6N塩酸水中で加熱して還流させ、カルボン酸に変換した後、塩酸を減圧留去した。残さを無水酢酸中で還流することにより、目的とするトランス-1,4-シクロヘキシレンビスコハク酸無水物を得た。(収率85%)。
融点;197.4−204.3℃。
【0051】
実施例2
2−(トランス−1,4−シクロヘキシレン)ビスグルタル酸無水物(化合物No.10)の合成
J. Chem. Soc., C, 2730(1971)に記載の方法に従って、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボアルデヒドを合成した。この化合物を用い、J. Polym. Sci., A-1, Vol.25, 31(1987)に記載の方法に準じて、化合物No.10を合成した。即ち、まず、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボアルデヒドを水酸化ナトリウム水溶液を塩基として用いてメルドラム酸と反応させた。次にこの反応生成物を塩酸で加水分解し、得られたテトラカルボン酸を無水酢酸で閉環して、化合物No.10を得た。
【0052】
実施例3(参考例)
1,4−フェニレンビス(2−メチルコハク酸無水物)(化合物No.21)の合成
J. Org. Chem., Vol.55, 5165(1990)に記載の方法に準じて1,4−フェニレンビス(2−メチルマレイン酸無水物)を得た。そしてこの化合物をTHF中、Pd/Cを触媒として水素添加反応することによって化合物No.21が得られた。
【0053】
実施例4
5−(4−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)フェニルメチル)−1,3−フェニレンビス(2メチルコハク酸無水物)(化合物No.26)の合成
3Lの三口フラスコに3,5−ジニトロベンゾイルクロライド(41g;180mmol)を入れ塩化メチレン400mlに溶解させた。これを氷浴で5℃以下に冷却しながら、無水塩化アルミニウム(35g;260mmol)を加え、さらに塩化メチレン(100ml)に溶解させた4−(4−n−プロピルシクロヘキシル)ベンゼン(30g;150mmol)を加えた。反応液を室温で一晩攪拌後、氷の入ったビーカーに流し入れ、3N−HCl水溶液(300ml)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(300ml)、および水(300ml)を順次用いて洗浄した。無水硫酸マグネシウムで溶液を乾燥し、溶剤を減圧留去した。残さをトルエン−ヘプタン混合溶剤から再結晶することにより、3,5−ジニトロ−4’−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)ベンゾフェノンを得た。(収率49%)。
【0054】
1リットルの三口フラスコに上記化合物(29g;73mmol)を入れ、塩化メチレン300mlに溶解させた。これを氷浴で10℃以下に冷却しながら、無水四塩化チタン(10ml;91mmol)を加えた後、さらにトリエチルシラン(33ml;200mmol)を加えた。液温を10℃以下に保ちながら反応液を2時間攪拌した後、氷の入ったビーカーに流し入れ、3N−HCl水溶液(300ml)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(300ml)、および水(300ml)を順次用いて洗浄した。無水硫酸マグネシウムで溶液を乾燥し、溶剤を減圧留去した。残さをトルエンから再結晶することにより、3,5−ジニトロ−4’−(トランス−4−nープロピルシクロヘキシル)ジフェニルメタンを得た。この化合物は精製せずにそのまま次の反応に用いた。
【0055】
上記の化合物をトルエン−エタノール混合溶剤(容量比1:1、200ml)に溶かし、5%−Pd/C(2.2g)を加えて、室温で4時間水素添加した(水素圧780kPa)。反応液をろ過後、溶剤を減圧留去した。残さをカラムクロマトグラフィー(アルミナ/塩化メチレン)および再結晶(トルエン)で精製することにより、3,5−ジアミノ−4’−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)ジフェニルメタンを得た。(収率34%)。
1H NMR; δ(ppm) 7.11(s, 4H), 5.96(d, 2H, J=2.10Hz), 5.88(d, 1H, J=1.95Hz), 3.74(s, 2H), 3.50(brs, 4H), 2.41(tt, 1H, J=12.0, 3.25Hz), 1.9-0.8(m, 16H).
融点; 164.2-165.0℃
【0056】
上記の化合物(13g;37mmol)を3N−HCl水溶液(130ml)に溶かし、0〜5℃で亜硝酸ナトリウム(6.1g;88mmol)を純水(20ml)に溶解した溶液を加えた。0〜5℃で1時間攪拌後、ヨウ化カリウム(61g;0.37mol)を純水(100ml)に溶解した溶液を加えた。室温で1晩攪拌後、トルエン(200ml)を加え抽出を行った。上記と同様な処理を行い、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル/ヘプタン)で精製して、3,5−ジヨード−4’−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)ジフェニルメタンを得た。(収率75%)。
【0057】
J. Chem. Soc., 2704(2001)に記載の方法に従い、上記の化合物(10g;18mmol)、マロン酸ジエチル(6.5g;40mmol)、炭酸セシウム(60g;180mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(42mg;0.046mmol)、およびトリ−t−ブチルホスフィン(19mg;0.094mmol)の混合物をエチレングリコールジメチルエーテル(50ml)に加え加熱して、70時間還流させた。冷却後、沈殿をろ過し、溶剤を減圧留去した。上記と同様にして、残さをトルエン−水系で抽出した後、5−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)フェニルメチル−1,3−フェニレン二酢酸 ジエチルエステルの粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/トルエン−酢酸エチル(容量比10:1)で精製した。(収率 52%)。
【0058】
上記の化合物(4.3g;9.2mmol)、および3N−塩酸(30ml)をアセトン(150ml)中で加熱して、3時間還流させた。アセトンを減圧留去した後、生じた結晶をろ過し、5−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)フェニルメチル−1,3−フェニレン二酢酸を得た。この化合物は精製せずに次の反応に用いた。
【0059】
上記の化合物(3.8g;9.3mmol)、およびピルビン酸カリウム(2.4g;5.9mmol)を無水酢酸(50ml)中で加熱し、1時間還流させた。無水酢酸を減圧留去した後、エタノール(80ml)および硫酸(0.05ml)を加えて加熱し、5時間還流させた。溶剤を減圧留去した後、残さをトルエンに溶解し、NaHCO水で洗浄した後、上記と同様にして、5−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)フェニルメチル−1,3−フェニレンビス(2−メチルマレイン酸 ジエチルエステル)の粗生成物を得た。これをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/トルエン−酢酸エチル混合溶剤(容量比5:1)で精製した。(収率 21%)。
【0060】
上記の化合物(1.2g;18mmol)にパラジウム活性炭を用いて水素添加した(水素圧750kPa)。触媒をろ別した後、残さをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/トルエン−酢酸エチル混合溶剤(容量比5:1))で精製することにより、5−(トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)フェニルメチル−1,3−フェニレンビス(2−メチルコハク酸 ジエチルエステル)を得た。(収率 94%)。
【0061】
この化合物をアセトンに溶解し、3N塩酸で処理してジカルボン酸を得た。このジカルボン酸を10倍量の無水酢酸中で3時間加熱攪拌した。反応液を冷蔵庫中で1晩放置し、生じた結晶をろ過することにより、目的とする5−((トランス−4−n−プロピルシクロヘキシル)フェニルメチル)−1,3−フェニレンビス(2メチルコハク酸無水物)を得た。(収率 63%)。
【0062】
実施例5
トランス−1,4−シクロヘキシレンビス(1-メチルコハク酸無水物)(化合物No.16)の合成
J. Med. Chem., 8, 401(1965)に記載の方法に従い、1,4−シクロヘキシレンビスアセチルを合成した。この1,4−シクロヘキシレンビスアセチル(25g;150mmol)をシアノ酢酸エチル(40g、35mmol)、酢酸ナトリウム(2.0g,26mmol)、および酢酸(33g)を用い、実施例1と同様な方法に従って反応させ、トルエンからの再結晶で精製して、トランス−1,4−シクロヘキシレンビス(2−シアノ−2−エトキシカルボニル−1−メチルエテン)を得た。(収率32%)。
【0063】
上記の化合物(28g;7.8mmol)を酢酸エチル(200ml)−純水(200ml)混合溶剤に溶かし、シアン化ナトリウム(7.7g、16mmol)を加えて、室温で1時間反応させた。水層を分離し、有機層を2回純水で洗った。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、ろ過し、溶剤を減圧留去した。残さをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/トルエン−酢酸エチル混合溶剤(5:1))で精製して、トランス−1,4−シクロヘキシレンビス(1,2−ジシアノ−2−エトキシカルボニル−1−メチルエタン)を得た。(収率74%)。
【0064】
上記の化合物を実施例1と同様な方法に従って変換し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル/トルエン−酢酸エチル混合溶剤(5:1))で精製して、トランス−1,4−シクロヘキシレンビス(1−メチルコハク酸ジメチル)を得た。(収率36%)。
【0065】
上記のエステルを、実施例1と同様な方法に従って加水分解し、更に無水物化して、トランス−1,4−シクロヘキシレンビス(1−メチルコハク酸無水物)を得た。(収率64%)。
【0066】
実施例6(参考例)
1,10−ドデカニルビス(2−メチルコハク酸無水物)(化合物No.77)の合成
J. Org. Chem., Vol.63, 1342(1998)に記載の方法に従って、1,10−ドデカニルビス(2−メチルマレイン酸酸無水物)を合成した。この化合物(3.0g;8.9mmol)にパラジウム活性炭を用いて水素添加した(水素圧750kPa)。触媒をろ別した後、トルエンで再結晶することにより、化合物No.77を得た。(収率67%)。
【0067】
実施例7(ポリアミド酸の合成)
攪拌機、窒素導入口、温度計、および原料導入口を供えた100mlの4つ口フラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DDM)(890mg;4.5mmol)を入れ、NMP(10g)に溶解した。トランス−1,4−シクロヘキシレンビスコハク酸無水物(化合物No.1、1.3g;4.5mmol)を加え、6時間攪拌した。その後この溶液をNMP(34g)で希釈して、ポリアミド酸を約5重量%含有する透明溶液とした。この溶液の25℃での粘度は80mPa・sであった。そして、この溶液中のポリアミド酸の重量平均分子量は4.8万であった。この溶液をワニスAとする。
【0068】
実施例8(ポリアミドイミドの合成)
攪拌機、窒素導入口、温度計、および原料導入口を供えた100mlの4つ口フラスコに、化合物No.1(1.68g;6.0mmol)、テレフタル酸クロリド(TPC、300mg;1.5mmol)、およびプロピレンオキシド(87mg;1.5mmol)を入れ、NMP(10g)に溶解した。これにDDM(890mg;4.5mmol)および4−n−ブチル−1,1−ビス(4−(4−アミノフェニルメチル)フェニル)シクロヘキサン(BuBDMA、1.51g;3.0mmol)のNMP(10g)溶液を加え、室温で6時間攪拌した。その後、この溶液をNMP(20g)で希釈した後、水(200ml)に注いで再沈殿を行った。得られた沈殿をNMP(10g)に溶かし、無水酢酸10mlを加えて、100℃で2時間攪拌した。冷却後、水(200ml)に注いで再沈殿を行った。この沈殿をメタノール(100ml)で煮沸洗浄し、目的とするポリアミドイミドを得た。このポリイミドアミドはNMP等の適当な溶剤に溶解し、以下の実施例で使用した。
【0069】
実施例9〜19、比較例1および2
実施例7および8に準じて、表8に示すワニスおよびポリアミドを調製した(実施例7および8を再掲する)。
(表8)ワニスおよびポリアミドイミドの原料組成
Figure 0004378948
上記のうち、No.15、17および19は参考例である。
【0070】
表8において、PAIはポリアミドイミドを示し、酸無水物およびジアミンの欄における括弧内の数値はモル%である。CBDAは1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物であり、PMDAはピロメリット酸無水物である。他の酸無水物の欄におけるTPCのみは酸クロライドである。そして、BuBDMAおよびPnDMAは下記の化合物である。
Figure 0004378948
【0071】
表8に記載したワニスの粘度およびそれに含まれるポリマー成分の分子量を表9に示す。
(表9)
Figure 0004378948
上記のうち、No.15、17および19は参考例である。
【0072】
実施例20
スクリューバイアルにワニスA(18.2ml)およびワニスB(0.18ml)を入れ、室温で1時間攪拌した。その後BC(12ml)を加え、ポリマー濃度が約3重量%のワニスを得た。片面にITO電極を設けた透明ガラス基板上に、このワニスを滴下し、スピンナー法により塗布した(2500rpm、15秒)。80℃で5分間加熱して溶剤を蒸発させた後、オーブン中で250℃、30分間加熱処理を行い、膜厚約60nmのポリイミド薄膜が形成された基板を得た。この薄膜の表面をラビング処理して配向膜を有する基板とした。そして、同じようにして得た2枚の基板を、ラビング方向が逆平行になるように貼り合わせ、セル厚20μmの液晶セルを組み立てた。このセルに液晶組成物Aを注入し、110℃で30分間アイソトロピック処理を行い、その後室温まで冷却して液晶表示素子を得た。この液晶表示素子の残留電荷は0.02V(25℃)であり、20、60、および90℃における電圧保持率はそれぞれ98.2、97.5、96.1%であった(この値を初期値とする)。この素子のプレチルト角は7.5度であった。この素子を110℃で20時間加熱し、その後室温まで冷却してから、これらの値を再測定した(この値を加熱後値とする)。その結果、残留電荷は0.02V(25℃)であり、電圧保持率は98.1(20℃)、97.5(60℃)、95.9%(90℃)、プレチルト角は7.4度であった。
【0073】
(液晶組成物A)
Figure 0004378948
【0074】
実施例21
ワニスBの代わりにワニスCを用いた以外は、実施例20と同様な方法で液晶表示素子を作成し、特性を測定した。
残留電荷(V):初期値0.03、加熱後値0.02
電圧保持率(%)
20℃:初期値97.8、加熱後値97.4
60℃:初期値97.1、加熱後値97.0
90℃:初期値96.0、加熱後値95.8
プレチルト角(度):初期値6.9、加熱後値6.6
【0075】
実施例22〜24
ワニスBの代わりに、ワニスD、ワニスE、およびワニスJをそれぞれ用いた以外は実施例20と同様にして、液晶表示素子を作成した。これらの素子の特性を測定した結果を表10に示す。
(表10)
Figure 0004378948
上記のうち、No.24は参考例である。
【0076】
実施例25および26
ワニスAの代わりに、ワニスHおよびワニスKをそれぞれ用いた以外は実施例20と同様にして、液晶表示素子を作成した。これらの素子の特性を測定した結果を表11に示す。
(表11)
Figure 0004378948
上記のうち、No.25は参考例である。
【0077】
実施例27および28
ワニスAの代わりにワニスIおよびワニスLをそれぞれ用い、ワニスBを添加しなかった以外は、実施例20と同様にして液晶表示素子を作成した。これらの素子の特性を測定した結果を表12に示す。
(表12)
Figure 0004378948
上記のうち、No.28は参考例である。
【0078】
実施例29
液晶組成物Aの代わりに液晶組成物Bを用いた以外は、実施例20と同様にして液晶表示素子を作成し、特性を測定した。
残留電荷(V):初期値0.03、加熱後値0.03
電圧保持率(%)
20℃:初期値98.8、加熱後値98.1
60℃:初期値97.6、加熱後値97.0
90℃:初期値95.7、加熱後値95.9
プレチルト角(度):初期値8.1、加熱後値7.8
【0079】
(液晶組成物B)
Figure 0004378948
【0080】
比較例3および4
ワニスBの代わりに、ワニスMおよびワニスNをそれぞれ用いた以外は、実施例20と同様にして、液晶表示素子を作成した。これらの素子の特性を測定した結果を表13に示す。
(表13)
Figure 0004378948
【0081】
【発明の効果】
本発明の酸無水物は、公知の反応を組み合わせて、特別な反応設備を用いずに製造することができるので、産業上有利である。この酸無水物を用いて得られる配向膜を有する液晶表示素子は、電圧保持率が高く、焼き付きが少なく、しかも液晶のプレチルト角が加熱に対して安定している。本発明により、高機能な液晶表示素子を提供することが可能になった。本発明の酸無水物は、液晶配向膜用途以外に用いられる、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリマーの原料としても使用できる。

Claims (10)

  1. 式(1)で表される酸無水物。
    Figure 0004378948
    式(1)において、A1,4−シクロヘキシレン、5−(4−(4−n−プロピルシクロヘキシル)ベンジル)−1,3−フェニレンまたは5−(4−(4−n−ペンチルシクロヘキシル)ベンジル)−1,3−フェニレンであり、Bおよび は式(a)で表される基または式(b)で表される基である。
    Figure 0004378948
    式(a)および式(b)において、式(a)中のR11および式(b)中のR12は独立して水素またはメチルである;式(a)中のR31および式(b)中の 32 は水素である。
    但し、Aが芳香環を有する基である場合には、R11およびR12どちらもメチルである。
  2. 式(2)で表される、請求項1に記載の酸無水物。
    Figure 0004378948
    式(2)において、Aは式(1)中のAと同一の意味を有する;R12およびR32は、式(b)におけるこれらの記号と同一の意味を有する。
  3. 式(3)で表される、請求項1に記載の酸無水物。
    Figure 0004378948
    式(3)において、Aは式(1)中のAと同一の意味を有する;R11およびR31は、式(a)におけるこれらの記号と同一の意味を有する。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の酸無水物を原料成分の1つとして用いて得られるポリアミド酸。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載の酸無水物を原料成分の1つとして用いて得られるポリイミド。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の酸無水物を原料成分の1つとして用いて得られるポリアミドイミド。
  7. 請求項に記載のポリアミド酸、請求項に記載のポリイミド、および請求項に記載のポリアミドイミドの少なくとも1つを含有するワニス。
  8. 請求項に記載のワニスを用いて得られる配向膜。
  9. 請求項に記載の配向膜を有する液晶表示素子。
  10. フッ素系液晶組成物を含有することを特徴とする、請求項に記載の液晶表示素子。
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