JP4367874B2 - 炭素繊維製造用合成繊維処理剤及び炭素繊維製造用合成繊維の処理方法 - Google Patents

炭素繊維製造用合成繊維処理剤及び炭素繊維製造用合成繊維の処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は炭素繊維製造用合成繊維処理剤(以下、単に処理剤という)及び炭素繊維製造用合成繊維の処理方法(以下、単に処理方法という)に関する。ピッチ繊維やアクリル繊維から炭素繊維を製造する場合、高品質の炭素繊維を低コストで製造するため、耐炎化工程では耐炎化繊維相互の融着防止を図ることが要求され、また炭素化工程では焼成炉内汚染物質の発生防止を図ることが要求される。本発明はかかる要求に応える処理剤及び処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、処理剤としては、その潤滑剤としてシリコーンを含有するものが使用されている。ところが、かかる処理剤には、耐炎化工程において耐炎化繊維相互の融着を防止できるものの、耐炎化工程後の炭素化工程において、焼成炉内に、処理剤の分解による酸化珪素や窒化珪素等の汚染物質が生成し、堆積するため、焼成炉内の清掃を頻繁に行なう必要があり、生産性を著しく低下させるという欠点がある。そこで従来、潤滑剤としてシリコーンを含有しない処理剤が提案されている。これには例えば、潤滑剤として、1)ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステルと、アミド化合物のアルキレンオキサイド付加物との混合物を含有するもの(特開平9−78340)、2)二塩基酸とオキシアルキレン単位を有するポリオールの縮合物と脂肪族アルカノールアミドとを反応させて得られる末端にアミド基を有する化合物と、アミド化合物のアルキレンオキサイド付加物との混合物を含有するもの(特開平9−78341)がある。ところが、これらの処理剤には、炭素化工程において焼成炉内汚染物質の発生を防止できるものの、炭素化工程前の耐炎化工程において、耐炎化繊維相互の融着を充分に防止できないという欠点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、従来の処理剤では、ピッチ繊維やアクリル繊維から炭素繊維を製造する場合に、耐炎化工程での耐炎化繊維相互の融着防止と炭素化工程での焼成炉内汚染物質の発生防止とを同時に且つ充分に図ることができない点である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
しかして本発明者らは、上記の課題を解決するべく研究した結果、潤滑剤として特定の脂肪酸アミド架橋体を含有する処理剤が好適であること、またかかる処理剤を炭素繊維製造用合成繊維に所定割合で付着させる処理方法が好適であることを見出した。
【0005】
すなわち本発明は、潤滑剤として下記の式1で示される脂肪酸アミド架橋体を含有して成ることを特徴とする処理剤及びこの処理剤を炭素繊維製造用合成繊維に対し0.2〜1.5重量%となるよう付着させることを特徴とする処理方法に係る。
【0006】
【式1】
Figure 0004367874
【0007】
式1において、
1,R2,R3,R4:炭素数18〜22の脂肪酸アミド基
p,q:1又は2
m,n,s,t:2
A:下記の式2で示される2価の有機基
【0008】
【式2】
Figure 0004367874
【0009】
式2において、
u:1〜16の整数
【0010】
本発明において、潤滑剤として用いる式1で示される脂肪酸アミド架橋体は、ポリアルキレンポリアミンと脂肪酸とをアミド化反応させて得られる中間体としてのポリアルキレン(ポリ)アミン・ジ脂肪酸アミド2分子を架橋反応させたものである。
【0011】
式1で示される脂肪酸アミド架橋体において、合成に供するポリアルキレンポリアミンは、分子中に2又は3個の炭素数2のアルキレン基と3又は4個のアミノ基とを有する直鎖のポリアルキレンポリアミンである。これには例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンのようなポリエチレンポリアミンが挙げられる。
【0012】
式1で示される脂肪酸アミド架橋体において、合成に供する脂肪酸としては、1)ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸等の炭素数18〜22の飽和脂肪酸、2)オレイン酸、エルシン酸等の炭素数18〜22の不飽和脂肪酸が挙げられるが、なかでも炭素数18〜22の飽和脂肪酸が好ましい。
【0013】
式1で示される脂肪酸アミド架橋体において、合成に供する中間体としてのポリアルキレン(ポリ)アミン・ジ脂肪酸アミドは上記のポリアルキレンポリアミンと脂肪酸とをアミド化反応させたものであるが、かかるアミド化反応において、ポリアルキレンポリアミンと脂肪酸との割合は、ポリアルキレンポリアミンの1級アミノ基が脂肪酸で総てアミド化される割合とする。
【0014】
ポリアルキレンポリアミンと脂肪酸とをアミド化反応させる方法それ自体は、公知の方法、例えば特公昭42−2635に記載された方法を適用できる。
【0015】
式1で示される脂肪酸アミド架橋体は、以上説明した中間体としてのポリアルキレン(ポリ)アミン・ジ脂肪酸アミド2分子を架橋反応させたものである。かかる架橋反応に用いる架橋剤は、ポリアルキレン(ポリ)アミン・ジ脂肪酸アミド2分子を架橋し、前記の式2で示される2価の有機基を形成することとなるものである。これには例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル縮合物が挙げられるが、なかでもビスフェノールAジグリシジルエーテル及び縮合度が2又は3のビスフェノールAジグリシジルエーテル縮合物が好ましい。
【0016】
ポリアルキレン(ポリ)アミン・ジ脂肪酸アミド2分子を架橋反応させる方法それ自体は、公知の方法、例えば、2分子のポリアルキレン(ポリ)アミン・ジ脂肪酸アミドのイミノ基相互間にビスフェノールAジグリシジルエーテル化合物を開環付加反応させる方法を適用できる。
【0017】
以上説明した式1で示される脂肪酸アミド架橋体の含有割合は、処理剤中、15〜75重量%とするのが好ましく、30〜70重量%とするのがより好ましい。
【0018】
本発明の処理剤は、潤滑剤として、式1で示される脂肪酸アミド架橋体を含有するものであるが、更にアミノ変性ポリシロキサンを含有することができる。かかるアミノ変性ポリシロキサンとしては数平均分子量4000〜50000のものが好ましく、数平均分子量10000〜30000のものがより好ましい。アミノ変性ポリシロキサンの含有割合は、処理剤中、20〜75重量%とするが、25〜70重量%とするのが好ましい。
【0019】
本発明の処理剤は、潤滑剤として、式1で示される脂肪酸アミド架橋体或はまたアミノ変性ポリシロキサンの外に、更に界面活性剤を含有することができる。かかる界面活性剤としては非イオン性界面活性剤が好ましい。これには例えば、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、脂肪族アルコールのポリオキシアルキレングリコールエーテル、脂肪族アミンのポリオキシアルキレングリコールエーテル、アルキル置換フェノールのポリオキシアルキレングリコールエーテル及び多価アルコール部分脂肪酸エステル等が挙げられる。かかる非イオン性界面活性剤は、処理剤の水性液を調製する場合に有用である。界面活性剤の含有割合は、処理剤中、5〜60重量%とするが、7〜55重量%とするのが好ましい。
【0020】
以上、本発明の処理剤について説明したが、処理剤を式1で示される脂肪酸アミド架橋体、アミノ変性ポリシロキサン及び界面活性剤で構成する場合、脂肪酸アミド架橋体を30〜60重量%、アミノ変性ポリシロキサンを25〜45重量%及び界面活性剤を7〜35重量%(合計100重量%)の割合とするのが最も好ましい。
【0021】
本発明の処理方法では、本発明の処理剤を炭素繊維製造用合成繊維に対し0.2〜1.5重量%となるよう、好ましくは0.3〜1.2重量%となるよう付着させる。
【0022】
本発明の処理剤を炭素繊維製造用合成繊維に付着させる方法としては、浸漬給油法、ローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、スプレー給油法等の公知の方法が挙げられるが、浸漬給油法、ローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法が好ましい。
【0023】
本発明の処理剤を炭素繊維製造用合成繊維に付着させるに当たり、該処理剤はその水性液、その有機溶剤溶液、又は40〜80℃に加温して均一な液体としたものをそのままの形で用いることができるが、水性液として用いるのが好ましい。処理剤の炭素繊維製造用合成繊維への付着に際しては、合目的的に他の成分、例えば抗酸化剤、防腐剤、防錆剤等を併用することができるが、その使用量は可及的に少量とするのが好ましい。
【0024】
本発明の処理剤及び処理方法は炭素繊維製造用のピッチ繊維或はアクリル繊維に適用できるが、アクリル繊維に適用する場合により効果が高い。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明に係る処理剤及び処理方法の実施形態としては、次の1)〜4)が挙げられる。
1)下記の潤滑剤(M−1)70重量%、及び下記の界面活性剤(N−1)30重量%(合計100重量%)から成る処理剤(P−1)。そしてこの処理剤(P−1)を水性液となし、炭素繊維製造用アクリルフィラメントに、処理剤(P−1)として1.0重量%となるよう付着させる処理方法。
潤滑剤(M−1):式1で示される脂肪酸アミド架橋体であって、式1中のR1〜R4がベヘニン酸アミド基、m,n,s,tが2、p,qが1、Aが式2で示される有機基であって、uが1の場合の脂肪酸アミド架橋体。
界面活性剤(N−1):ポリオキシエチレン(10モル)ラウリルエーテル
【0026】
2)下記の潤滑剤(M−2)60重量%、及び下記の界面活性剤(N−2)40重量%(合計100重量%)から成る処理剤(P−2)。そしてこの処理剤(P−2)を水性液となし、炭素繊維製造用アクリルフィラメントに、処理剤(P−2)として0.8重量%となるよう付着させる処理方法。
潤滑剤(M−2):式1で示される脂肪酸アミド架橋体であって、式1中のR1,R2がステアリン酸アミド基、R3,R4がベヘニン酸アミド基、m,n,s,tが2、p,qが1、Aが式2で示される有機基であって、uが3の場合の脂肪酸アミド架橋体。
界面活性剤(N−2):ポリオキシエチレン(6モル)ノニルフェニルエーテル
【0027】
3)前記の潤滑剤(M−1)50重量%、数平均分子量8000のアミノ変性ポリシロキサン(S−1)30重量%、及び前記の界面活性剤(N−1)20重量%(合計100重量%)から成る処理剤(P−8)。そしてこの処理剤(P−8)を水性液となし、炭素繊維製造用アクリルフィラメントに、処理剤(P−8)として0.8重量%となるよう付着させる処理方法。
【0028】
4)前記の潤滑剤(M−2)40重量%、数平均分子量20000のアミノ変性ポリシロキサン(S−2)40重量%、及び前記の界面活性剤(N−1)20重量%(合計100重量%)から成る処理剤(P−9)。そしてこの処理剤(P−9)を水性液となし、炭素繊維製造用アクリルフィラメントに、処理剤(P−9)として0.4重量%となるよう付着させる処理方法。
【0029】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例等において、別に記載しない限り、部は重量部、%は重量%である。
【0030】
【実施例】
試験区分1(脂肪酸アミド架橋体の合成)
・脂肪酸アミド架橋体(M−1)の合成
ベヘニン酸694g(2.04モル)及びジエチレントリアミン103g(1.0モル)をフラスコに仕込み、180℃に保持して、生成する水を窒素気流により留去しながら4時間反応を行ない、中間体としてジエチレントリアミン・ジベヘニン酸アミド(MP−1)を得た。このジエチレントリアミン・ジベヘニン酸アミド1494g(2モル)を90〜110℃で溶融状態とし、これにビスフェノールAジグリシジルエーテル340g(1モル)を滴下して、架橋反応を行ない、脂肪酸アミド架橋体(M−1)を得た。反応物を分析したところ、式1中の、R1〜R4がベヘニン酸アミド基、m,n,s,tが2、p,qが1、Aが式2で示される有機基であって、uが1の場合の脂肪酸アミド架橋体(M−1)であった。
【0031】
・脂肪酸アミド架橋体(M−2)の合成
脂肪酸アミド架橋体(M−1)と同様にして、中間体として得たジエチレントリアミン・ジステアリン酸アミド635g(1モル)とジエチレントリアミン・ジベヘニン酸アミド747g(1モル)とを溶融状態とし、これに縮合度が3のビスフェノールAジグリシジルエーテル縮合物908g(1モル)を滴下して、架橋反応を行ない、脂肪酸アミド架橋体(M−2)を得た。
【0032】
・脂肪酸アミド架橋体(M−3)の合成
脂肪酸アミド架橋体(M−1)と同様にして、中間体として得たジエチレントリアミン・ジステアリン酸アミド1270g(2モル)を溶融状態とし、これにエピクロルヒドリン92.5g(1モル)を滴下して、架橋反応を行ない、脂肪酸アミド架橋体(M−3)を得た。
【0033】
・脂肪酸アミド架橋体(M−4)の合成
脂肪酸アミド架橋体(M−1)と同様にして、中間体として得たジエチレントリアミン・ジベヘニン酸アミド1494g(2モル)を溶融状態とし、これにメチレン−ビス−(4−フェニルイソシアネート)250g(1モル)を滴下して、架橋反応を行ない、脂肪酸アミド架橋体(M−4)を得た。
【0034】
・脂肪酸アミド架橋体(M−5)の合成
脂肪酸アミド架橋体(M−1)と同様にして、中間体として得たジエチレントリアミン・ジステアリン酸アミド1270g(2モル)を溶融状態とし、これに尿素60g(1モル)を滴下して、架橋反応を行ない、脂肪酸アミド架橋体(M−5)を得た。
【0035】
・脂肪酸アミド架橋体(M−6)の合成
脂肪酸アミド架橋体(M−1)と同様にして、中間体として得たジプロピレントリアミン・ジラウリン酸アミド990g(2モル)を溶融状態とし、これにエチレングリコールジグリシジルエーテル174g(1モル)を滴下して、架橋反応を行ない、脂肪酸アミド架橋体(M−6)を得た。
【0036】
・脂肪酸アミド架橋体(M−7)の合成
脂肪酸アミド架橋体(M−1)と同様にして、中間体として得たトリエチレンテトラミン・ジラウリン酸アミド510g(1モル)とトリエチレンテトラミン・ジステアリン酸アミド1356g(1モル)とを溶融状態とし、これにエチレングリコールジグリシジルエーテル348g(2モル)を滴下して、架橋反応を行ない、脂肪酸アミド架橋体(M−7)を得た。
【0037】
・脂肪酸アミド架橋体(m−1)及び(m−2)の合成
脂肪酸アミド架橋体(M−1)の合成と同様にして、脂肪酸アミド架橋体(m−1)及び(m−2)を合成した。以上で合成した脂肪酸アミド架橋体の内容を表1にまとめて示した。
【0038】
【表1】
Figure 0004367874
【0039】
表1において、
a−1:式2で示される有機基であって、u=1の場合の有機基
a−2:式2で示される有機基であって、u=3の場合の有機基
a−3:2−ヒドロキシトリメチレン基
a−4:−CONH−C64−CH2−C64−CONH−で示される有機基
a−5:カルボニル基
a−6:−CH2−CH(OH)−CH2−O−C24O−CH2−CH(OH)−CH2−で示される有機基
【0040】
試験区分2(処理剤の調製)
・処理剤(P−1)〜(P−14)、(Q−1)〜(Q−4)、(Q−7)、(Q−8)及び(Q−10)〜(Q−13)の調製
試験区分1で得た脂肪酸アミド架橋体(M−1)70部と表2に記載の界面活性剤(N−1)30部とを混合して実施例1の処理剤(P−1)を調製した。同様にして、実施例又は参考例に相当する処理剤(P−2)〜(P−14)、比較例に相当する(Q−1)〜(Q−4)、(Q−7)、(Q−8)及び(Q−10)〜(Q−13)を調製した。
【0041】
・処理剤(Q−5)、(Q−6)及び(Q−9)の調製
ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とラウリン酸とを反応させたモノエステルに更にアジピン酸を反応させたエステル/ジエチレントリアミン1モルとステアリン酸2モルとを反応させたアミド化合物に更にエチレンオキサイド10モルを反応させた付加物=60/40(重量比)の割合で混合して比較例に相当する処理剤(Q−4)を調製した。同様にして、比較例に相当する処理剤(Q−5)及び(Q−8)を調製した。以上で調製した各処理剤の内容を表2及び表3にまとめて示した。
【0042】
試験区分3(炭素繊維製造用アクリルフィラメントへの処理剤の付着及び評価)
・炭素繊維製造用アクリルフィラメントへの処理剤の付着
試験区分2で調製した処理剤30部に水70部を加え、ホモジナイザーを用いて水性エマルジョンとした。この水性エマルジョンを常法により製造したアクリルフィラメント{0.11Nm(12000de)/12000フィラメント}に浸漬給油法にて付着させ後、乾熱ローラーを用い、115℃×4秒間乾燥してプレカーサートウとした。このプレカーサートウを240℃の強制循環式オーブン中で60分間耐炎化処理して耐炎化繊維とし、次いでこの耐炎化繊維を窒素雰囲気中300〜1800℃の温度勾配を持つ焼成炉で50分間焼成して炭素繊維とした。
【0043】
・処理剤の付着量の測定
JIS−L1073(合成繊維フィラメント糸試験方法)に準拠し、抽出溶剤としてノルマルヘキサン/エタノール=70/30(容量比)の混合溶剤を用いて、前記プレカーサートウへの処理剤の付着量を測定した。結果を表2及び表3にまとめて示した。
【0044】
・融着防止性の評価
前記耐炎化繊維について任意の10ケ所から2cm長の短繊維10片を切り出し、試料片とした。この試料片を白紙上で軽く振盪して、その融着状態を肉眼観察した。同様の試験を5回行ない、下記の基準で融着防止性を評価した。
◎:融着なし
○:融着ごく僅かあり
△:融着ややあり
×:融着大
【0045】
・焼成炉内汚染物質の発生防止性の評価
前記耐炎化繊維50kgを炭素繊維とする際の焼成炉内の汚染状態を肉眼観察した。同様の試験を5回行ない、次の基準で評価した。
◎:汚染はなく、工程通過性に問題なし
○:汚染はごく僅かあるが、工程通過性に問題なし
△:汚染が明らかにあり、工程通過性に問題あり
×:汚染が著しく、工程通過性に問題あり
【0046】
【表2】
Figure 0004367874
【0047】
【表3】
Figure 0004367874
【0048】
表2及び表3において、
評価1:融着防止性
評価2:焼成炉内汚染物質の発生防止性
付着量:アクリルフィラメントに対する処理剤の付着量(%)
比率:重量比
【0049】
脂肪酸アミド架橋体(M−1)〜(M−7),(m−1),(m−2):試験区分1で合成した脂肪酸アミド架橋体
MP−1:ジエチレントリアミン・ジベヘニン酸アミド
S−1:数平均分子量8000のアミノ変性ポリシロキサン
S−2:数平均分子量20000のアミノ変性ポリシロキサン
S−3:数平均分子量45000のアミノ変性ポリシロキサン
N−1:ポリオキシエチレン(10モル)ラウリルエーテル
N−2:ポリオキシエチレン(6モル)ノニルフェニルエーテル
N−3:ポリオキシエチレン(25モル)硬化ヒマシ油
【0050】
C−1:ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とラウリン酸とを反応させたモノエステルに更にアジピン酸を反応させたエステル/ジエチレントリアミン1モルとステアリン酸2モルとを反応させたアミド化合物に更にエチレンオキサイド10モルを反応させた付加物=60/40(重量比)の混合物
C−2:アジピン酸1.5モルと硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド20モル付加物1モルとを反応させた縮合物に更にオレイン酸ジエタノールアミド0.8モルを反応させた末端アミド化合物/ジエチレントリアミン1モルとステアリン酸2モルとを反応させたアミド化合物に更にエチレンオキサイド10モルを反応させた付加物=70/30(重量比)の混合物
C−3:ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とオレイン酸とを反応させたジエステル
C−4:トリベンジルフェノールのエチレンオキサイド10モル付加物とフタル酸とを反応させたジエステル
C−5:α−メチルスチリルフェノールのエチレンオキサイド49モル付加物とアジピン酸とを反応させたジエステル
C−6:ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物と乳酸とラウリン酸とを反応させたテトラエステル
C−7:パラクミルフェニルオキシエチレート1モルとエチルアルコール1モルとアジピン酸1モルとを反応させたジエステル
C−8:オレイルアルコールのエチレンオキサイド5モル付加物と安息香酸とを反応させたエステル
C−9:椰子油還元アルコールと安息香酸とを反応させたエステル
【0051】
【発明の効果】
既に明らかなように、以上説明した本発明には、炭素繊維の製造において、耐炎化工程での耐炎化繊維相互の融着防止と炭素化工程での焼成炉内汚染物質の発生防止とを同時に且つ充分に図ることができるという効果がある。

Claims (10)

  1. 潤滑剤として下記の式1で示される脂肪酸アミド架橋体を含有して成ることを特徴とする炭素繊維製造用合成繊維処理剤。
    【式1】
    Figure 0004367874
    (式1において、
    1,R2,R3,R4:炭素数18〜22の脂肪酸アミド基
    p,q:1又は2
    m,n,s,t:
    A:下記の式2で示される2価の有機基)
    【式2】
    Figure 0004367874
    (式2において、
    u:1〜16の整数)
  2. 脂肪酸アミド架橋体が、式2中のuが1〜3である場合のものである請求項記載の炭素繊維製造用合成繊維処理剤。
  3. 脂肪酸アミド架橋体を15〜75重量%の割合で含有する請求項1又記載の炭素繊維製造用合成繊維処理剤。
  4. 更に、潤滑剤としてアミノ変性ポリシロキサンを20〜75重量%の割合で含有する請求項記載の炭素繊維製造用合成繊維処理剤。
  5. アミノ変性ポリシロキサンが、数平均分子量4000〜50000のものである請求項記載の炭素繊維製造用合成繊維処理剤。
  6. 更に、界面活性剤を5〜60重量%の割合で含有する請求項3、4又は記載の炭素繊維製造用合成繊維処理剤。
  7. 脂肪酸アミド架橋体を30〜60重量%、アミノ変性ポリシロキサンを25〜45重量%及び界面活性剤を7〜35重量%(合計100重量%)の割合で含有する請求項記載の炭素繊維製造用合成繊維処理剤。
  8. 請求項1,2、3、4、5、6又記載の炭素繊維製造用合成繊維処理剤を、炭素繊維製造用合成繊維に対し0.2〜1.5重量%となるよう付着させることを特徴とする炭素繊維製造用合成繊維の処理方法。
  9. 炭素繊維製造用合成繊維処理剤をその水性液とした後、炭素繊維製造用合成繊維に付着させる請求項記載の炭素繊維製造用合成繊維の処理方法。
  10. 炭素繊維製造用合成繊維がアクリル繊維である請求項又は記載の炭素繊維製造用合成繊維の処理方法。
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