JP3871289B2 - 合成繊維用潤滑剤及び合成繊維の処理方法 - Google Patents

合成繊維用潤滑剤及び合成繊維の処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は合成繊維用潤滑剤及び合成繊維の処理方法に関する。ポリアミド繊維やポリエステル繊維等の合成繊維はその製糸工程で該合成繊維に毛羽や糸切れが発生しないようにすることが重要である。なかでもタイヤコード、シートベルト、エアバッグ等の産業資材用の合成繊維は、その製糸工程において該合成繊維が高温且つ高接圧の過酷な条件下で製糸され、該合成繊維に毛羽や糸切れが発生し易いため、かかる毛羽や糸切れが発生しないようにすることが特に重要である。このため合成繊維に付着する合成繊維用潤滑剤(以下、単に潤滑剤という)には、それが高温且つ高接圧下で製糸される場合であっても、該合成繊維に毛羽や糸切れが発生するのを充分に抑制できる高度の潤滑性を与えるものであることが要求される。本発明はかかる要求に応える潤滑剤及び合成繊維の処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、それが高温且つ高接圧下で製糸される場合であっても合成繊維に潤滑性を与える潤滑剤として、1)多価ヒドロキシ化合物と二塩基酸とから得られるポリエステルの末端を脂肪族アルコール若しくはそのアルキレンオキサイド付加物或は脂肪族カルボン酸で封鎖したポリエステルを用いる例(特開平3−871、特開平5−339875)、2)数平均分子量1000以上のポリオキシアルキレングリコールを用いる例(特開平6−158538)、3)脂肪族アミンにアルキレンオキサイドを付加した数平均分子量1000〜20000の含窒素化合物を用いる例(特開平6−228885)、4)ジンク(ジn−ブチルホスホロジチオエート)等のホスホロジチオエート金属塩類を用いる例(特開平3−14671)、5)γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン化合物を用いる例(特開平3−241073)等が提案されている。ところが、これら従来の潤滑剤ではいずれも、合成繊維に高度の潤滑性を付与することができず、なかでも高温且つ高接圧下で製糸される産業資材用の合成繊維に対しては潤滑性の付与度合いが不充分であって、そのため製糸工程で該合成繊維に毛羽や糸切れが発生するのを充分に防止できない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、従来の潤滑剤では、合成繊維に高度の潤滑性を付与することができず、なかでも高温且つ高接圧下で製糸される産業資材用の合成繊維に対しては潤滑性の付与度合いが不充分であって、そのため製糸工程で該合成繊維に毛羽や糸切れが発生するのを充分に防止できない点である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
しかして本発明者らは、上記課題を解決するべく研究した結果、特定の脂肪族含窒素アルカノール化合物に所定の結合順序で特定のポリエーテルブロックと特定のポリエステルブロックとを形成させた特定構造のポリエーテルポリエステル含窒素化合物が潤滑剤として正しく好適であることを見出した。
【0005】
すなわち本発明は、下記の脂肪族含窒素アルカノール化合物の水酸基に炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを開環重合してポリエーテルブロックを形成させ、次いで該ポリエーテルブロックの末端水酸基にε−カプロラクトンを開環重合してポリエステルブロックを形成させたポリエーテルポリエステル含窒素化合物であって、該ポリエーテルブロックが該脂肪族含窒素アルカノール化合物の水酸基1個当たり4〜100個のアルコキシ単位で構成され、該ポリエーテルブロックを構成するアルコキシ単位の数/該ポリエステルブロックを構成するカルボニルペントキシ単位の数=1/1〜6/1の割合であり、数平均分子量が500〜20000であるポリエーテルポリエステル含窒素化合物から成る潤滑剤、このポリエーテルポリエステル含窒素化合物を特定のアシル化剤でアシル化したアシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物から成る潤滑剤、これらの含窒素化合物と特定の脂肪酸エステルとがそれぞれ所定割合から成る潤滑剤、及びこれらの潤滑剤を所定条件下で合成繊維に付着させる合成繊維の処理方法に係る。
【0006】
脂肪族含窒素アルカノール化合物:脂肪酸の炭素数が8〜24である脂肪酸モノアルカノールアミド、脂肪酸の炭素数が8〜24である脂肪酸ジアルカノールアミド、ヒドロキシ脂肪酸の炭素数が6〜24であるヒドロキシ脂肪酸モノアルカノールアミド及びヒドロキシ脂肪酸の炭素数が6〜24であるヒドロキシ脂肪酸ジアルカノールアミドから選ばれる一つ又は二つ以上の脂肪族含窒素アルカノール化合物
【0007】
本発明のポリエーテルポリエステル含窒素化合物は、後述する脂肪族含窒素アルカノール化合物の水酸基にアルキレンオキサイドを開環重合してポリエーテルブロックを形成させ、次いで該ポリエーテルブロックの末端水酸基にε−カプロラクトンを開環重合してポリエステルブロックを形成させたものである。
【0008】
上記の脂肪族含窒素アルカノール化合物としては、1)ラウリン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノプロパノールアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸モノプロパノールアミド、オレイン酸モノエタノールアミド等の脂肪酸の炭素数が8〜24である脂肪酸モノアルカノールアミド、2)ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジプロパノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸の炭素数が8〜24である脂肪酸ジアルカノールアミド、3)12ーヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミド、12−ヒドロキシステアリン酸モノプロパノールアミド、リシノレイン酸モノエタノールアミド等のヒドロキシ脂肪酸の炭素数が6〜24であるヒドロキシ脂肪酸モノアルカノールアミド、4)12−ヒドロキシステアリン酸ジエタノールアミド、12−ヒドロキシステアリン酸ジプロパノールアミド、リシノレイン酸ジエタノールアミド等のヒドロキシ脂肪酸の炭素数が6〜24であるヒドロキシ脂肪酸ジアルカノールアミドが挙げられるが、なかでも脂肪酸の炭素数が16〜22である脂肪酸モノアルカノールアミド、ヒドロキシ脂肪酸の炭素数が16〜22であるヒドロキシ脂肪酸モノアルカノールアミドが好ましい。
【0009】
本発明において、ポリエーテルポリエステル含窒素化合物のポリエーテルブロックを形成するアルコキシ単位は、エトキシ単位、プロポキシ単位、ブトキシ単位或はこれらを混合した炭素数2〜4のアルコキシ単位であるが、該アルコキシ単位としてエトキシ単位を50モル%以上の割合で有するものが好ましく、エトキシ単位のみから成るものが更に好ましい。
【0010】
ポリエーテルポリエステル含窒素化合物のポリエーテルブロックを構成する上記のようなアルコキシ単位の数は、前記した脂肪族含窒素アルカノール化合物の水酸基1個当たり4〜100とするが、8〜50とするのが好ましい。
【0011】
本発明のポリエーテルポリエステル含窒素化合物は、脂肪族含窒素アルカノール化合物の水酸基に炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを開環重合してポリエーテルブロックを形成させ、次いでこのポリエーテルブロックの末端水酸基にε−カプロラクトンを開環重合してポリエステルブロックを形成させたものであり、したがってこのポリエステルブロックはカルボニルペントキシ単位の繰り返しで構成される。かかるカルボニルペントキシ単位の数は、ポリエーテルブロックを構成するアルコキシ単位の数/ポリエステルブロックを構成するカルボニルペントキシ単位の数=1/1〜6/1の割合とするが、2/1〜4/1の割合とするのが好ましい。
【0012】
本発明は、脂肪族含窒素アルカノール化合物の水酸基にポリエーテルブロックを形成させ、次いで該ポリエーテルブロックの末端水酸基にポリエステルブロックを形成させる方法を特に制限するものではなく、これには公知の方法が適用できる。例えば、1)脂肪酸モノアルカノールアミドのような分子中に1個の水酸基を有する脂肪族含窒素アルカノール化合物の場合には、これに水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の塩基性触媒存在下でエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等の炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを逐次開環重合して1個のポリエーテルブロックを形成させ、次いで1個のポリエーテルブロックの末端水酸基にアニオン重合触媒、配位アニオン重合触媒、カチオン重合触媒存在下でε−カプロラクトンを逐次開環重合して1個のポリエステルブロックを形成させて、分子中に1個のポリエーテルポリエステルブロックを有するポリエーテルポリエステル含窒素化合物を得る方法、2)脂肪酸ジアルカノールアミドのような分子中に2個の水酸基を有する脂肪族含窒素アルカノール化合物の場合には、これに上記1)と同様にして炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを逐次開環重合して2個のポリエーテルブロックを形成させ、次いで2個のポリエーテルブロックの各末端水酸基に上記1)と同様にしてε−カプロラクトンを開環重合してそれぞれポリエステルブロックを形成させて、分子中に2個のポリエーテルポリエステルブロックを有するポリエーテルポリエステル含窒素化合物を得る方法、3)ヒドロキシ脂肪酸ジアルカノールアミドのような分子中に3個の水酸基を有する脂肪族含窒素アルカノール化合物の場合には、これに前記1)と同様にして炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを逐次開環重合して3個のポリエーテルブロックを形成させ、次いで3個のポリエーテルブロックの各末端水酸基に上記1)と同様にしてε−カプロラクトンを開環重合してそれぞれポリエステルブロックを形成させて、分子中に3個のポリエーテルポリエステルブロックを有するポリエーテルポリエステル含窒素化合物を得る方法等が挙げられる。
【0013】
かくして得られるポリエーテルポリエステル含窒素化合物はその数平均分子量が500〜20000のものとするが、1000〜10000のものとするのが好ましい。
【0014】
以上説明したポリエーテルポリエステル含窒素化合物はそのまま潤滑剤として使用できるが、このポリエーテルポリエステル含窒素化合物のポリエステルブロックの末端水酸基にアシル化剤を反応させたアシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物も潤滑剤として使用できる。かかるアシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物には、1)ポリエーテルポリエステル含窒素化合物のポリエステルブロックの末端水酸基の全部をアシル化剤によりアシル化した完全アシル化物、2)ポリエーテルポリエステル含窒素化合物のポリエステルブロックの末端水酸基の一部をアシル化剤によりアシル化した部分アシル化物が包含される。アシル化剤としては炭素数2〜22のものを用い、したがってかかるアシル化剤によって形成されるアシル基としては、1)アセチル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基等の炭素数8〜22のアルカノイル基、2)ヘキサデセノイル基、エイコセノイル基、オクタデセノイル基等の炭素数16〜22のアルケノイル基等が挙げられる。
【0015】
ポリエーテルポリエステル含窒素化合物のポリエステルブロックの末端水酸基をアシル化する方法としては、塩基の存在下にアシルハライドを反応させるという公知の方法が適用できる。
【0016】
以上説明したポリエーテルポリエステル含窒素化合物やアシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物はそのまま潤滑剤として使用できるが、これらに特定の脂肪酸エステルを併用したものも潤滑剤として使用できる。
【0017】
ポリエーテルポリエステル含窒素化合物やアシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物と併用する脂肪酸エステルはオレイン酸エステル及びオレイルアルコールエステルから選ばれる一つ又は二つ以上の脂肪酸エステルとするが、なかでもオレイン酸エステルとしてはイソペンタコシルオレート、1,6ーヘキサンジオールジオレートが好ましく、またオレイルアルコールエステルとしてはジオレイルアジペートが好ましい。
【0018】
脂肪酸エステルを併用する場合、脂肪酸エステル/ポリエーテルポリエステル含窒素化合物又はアシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物=50/50〜95/5(重量比)の割合とする。
【0019】
本発明の潤滑剤を合成繊維に付着させる場合、本発明の潤滑剤を40〜80℃に加温して均一な液状としたものをニート状態で紡糸以降延伸迄の間の合成繊維に対し0.1〜3重量%の割合となるよう付着させる。付着方法としては、ローラー給油法、ガイド給油法、スプレー給油法等公知の給油法が適用できる。
【0020】
本発明の潤滑剤及び合成繊維の処理方法を適用する合成繊維としては、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維等が挙げられるが、ポリアミド繊維又はポリエステル繊維に適用するのがより有効である。なかでも本発明の潤滑剤及び合成繊維の処理方法は、高温且つ高接圧下で製糸される産業資材用のポリアミド繊維又はポリエステル繊維に適用する場合に特に有効である。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に係る潤滑剤の実施形態としては、次の1)〜14)が挙げられる。
1)ステアリン酸モノエタノールアミドの水酸基にポリエーテルブロックを形成させ、次いで該ポリエーテルブロックの末端水酸基にポリエステルブロックを形成させたポリエーテルポリエステル含窒素化合物であって、該ポリエーテルブロックがステアリン酸モノエタノールアミドの水酸基1個当たり30個のエトキシ単位で構成され、該ポリエーテルブロックを構成するエトキシ単位の数/該ポリエステルブロックを構成するカルボニルペントキシ単位の数=2/1の割合である数平均分子量3300のポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−1)から成る潤滑剤(T−1)。
【0022】
2)オレイン酸ジエタノールアミドの各水酸基にポリエーテルブロックを形成させ、次いで該ポリエーテルブロックの各末端水酸基にポリエステルブロックを形成させたポリエーテルポリエステル含窒素化合物であって、該ポリエーテルブロックがオレイン酸ジエタノールアミドの水酸基1個当たり10個のエトキシ単位で構成され、該ポリエーテルブロックを構成するエトキシ単位の数/該ポリエステルブロックを構成するカルボニルペントキシ単位の数=1/1の割合である数平均分子量3400のポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−2)から成る潤滑剤(T−2)。
【0023】
3)オレイン酸ジエタノールアミドの各水酸基にポリエーテルブロックを形成させ、次いで該ポリエーテルブロックの各末端水酸基にポリエステルブロックを形成させたポリエーテルポリエステル含窒素化合物であって、該ポリエーテルブロックがオレイン酸ジエタノールアミドの水酸基1個当たり45個のエトキシ単位で構成され、該ポリエーテルブロックを構成するエトキシ単位の数/該ポリエステルブロックを構成するカルボニルペントキシ単位の数=3/1の割合である数平均分子量7600のポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−3)から成る潤滑剤(T−3)。
【0024】
4)12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミドの各水酸基にポリエーテルブロックを形成させ、次いで該ポリエーテルブロックの各末端水酸基にポリエステルブロックを形成させたポリエーテルポリエステル含窒素化合物であって、該ポリエーテルブロックが12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミドの水酸基1個当たり20個のエトキシ単位で構成され、該ポリエーテルブロックを構成するエトキシ単位の数/該ポリエステルブロックを構成するカルボニルペントキシ単位の数=2/1の割合である数平均分子量4300のポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−4)から成る潤滑剤(T−4)。
【0025】
5)12−ヒドロキシステアリン酸ジエタノールアミドの各水酸基にポリエーテルブロックを形成させ、次いで該ポリエーテルブロックの各末端水酸基にポリエステルブロックを形成させたポリエーテルポリエステル含窒素化合物であって、該ポリエーテルブロックが12−ヒドロキシステアリン酸ジエタノールアミドの水酸基1個当たり20個のエトキシ単位で構成され、該ポリエーテルブロックを構成するエトキシ単位の数/該ポリエステルブロックを構成するカルボニルペントキシ単位の数=1/1の割合である数平均分子量6200のポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−5)から成る潤滑剤(T−5)。
【0026】
6)前記1)のポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−1)のポリエステルブロックの末端水酸基をオレオロイルクロライドでアシル化した数平均分子量3500のアシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−6)から成る潤滑剤(T−6)。
【0027】
7)前記4)のポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−4)のポリエステルブロックの末端水酸基をステアロイルクロライドでアシル化した数平均分子量4700のアシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−7)から成る潤滑剤(T−7)。
【0028】
8)前記3)のポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−3)のポリエステルブロックの末端水酸基をオレオロイルクロライドでアシル化した数平均分子量8100のアシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−8)から成る潤滑剤(T−8)。
【0029】
9)前記1)のポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−1)20重量部とイソペンタコシルオレート80重量部とから成る潤滑剤(T−9)。
【0030】
10)前記4)のポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−4)10重量部と1,6ーヘキサンジオールジオレート90重量部とから成る潤滑剤(T−10)。
【0031】
11)前記3)のポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−3)20重量部とジオレイルアジペート80重量部とから成る潤滑剤(T−11)。
【0032】
12)前記6)のアシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−6)20重量部とイソペンタコシルオレート80重量部とから成る潤滑剤(T−12)。
【0033】
13)前記7)のアシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−7)10重量部と1,6ーヘキサンジオールジオレート90重量部とから成る潤滑剤(T−13)。
【0034】
14)前記3)のポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−3)20重量部と1,6ーヘキサンジオールジオレート80重量部とから成る潤滑剤(T−14)。
【0035】
また本発明に係る合成繊維の処理方法の実施形態としては、次の15)が挙げられる。
15)前記1)〜14)のいずれかの潤滑剤を60℃に加温して均一な液状とし、そのままのニート状態で紡糸直後のポリエステル糸に対し0.8〜1.8重量%となるようガイド給油法で付着させる合成繊維の処理方法。
【0036】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的に示すため実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例等において、部は重量部を、また%は重量%を意味する。
【0037】
【実施例】
・ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−1)の合成
ステアリン酸モノエタノールアミド327g(1モル)及び水酸化カリウム4gをオートクレーブに仕込み、窒素ガスでパージ後、120〜140℃に温度を保ちながらエチレンオキサイド1320g(30モル)を圧入した。1時間の熟成反応後、触媒を除去して反応物を得た。ここで得られた反応物は、ステアリン酸モノエタノールアミドの水酸基にポリエーテルブロックを形成させたポリエーテル含窒素化合物であって、該ポリエーテルブロックがステアリン酸モノエタノールアミドの水酸基1個当たり30個のエトキシ単位で構成された、数平均分子量が1600のポリエーテル含窒素化合物であった。次いでこのポリエーテル含窒素化合物320g(0.2モル)及びテトラブトキシチタネート3gをフラスコに仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら150℃に加温した。140〜150℃に温度を保ち、ε−カプロラクトン342g(3モル)を20分かけて滴下した。滴下終了後、150℃で3時間反応を続けて合成を終了し、合成物を得た。ここで得られた合成物は上記ポリエーテル含窒素化合物のポリエーテルブロックの末端水酸基にポリエステルブロックを形成させたポリエーテルポリエステル含窒素化合物であって、該ポリエーテルブロックがステアリン酸モノエタノールアミドの水酸基1個当たり30個のエトキシ単位で構成され、該ポリエーテルブロックを構成するエトキシ単位の数/該ポリエステルブロックを構成するカルボニルペントキシ単位の数=2/1の割合である数平均分子量3300のポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−1)であった。
【0038】
・ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−2)、(P−3)及び(R−1)〜(R−10)の合成
ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−1)の合成と同様にして、ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−2)、(P−3)及び(R−1)〜(R−10)を得た。
【0039】
・ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−4)の合成
12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミド343g(1モル)及び水酸化カリウム5gをオートクレーブに仕込み、窒素ガスでパージ後、120〜140℃に温度を保ちながらエチレンオキサイド1760g(40モル)を圧入した。1時間の熟成反応後、触媒を除去して反応物を得た。ここで得られた反応物は、12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミドの各水酸基にポリエーテルブロックを形成させたポリエーテル含窒素化合物であって、該ポリエーテルブロックが12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミドの水酸基1個当たり20個のエトキシ単位で構成された、数平均分子量が2100のポリエーテル含窒素化合物であった。次いでこのポリエーテル含窒素化合物420g(0.2モル)及びテトラブトキシチタネート4gをフラスコに仕込み窒素ガス気流下で攪拌しながら150℃に加温した。140〜150℃に温度を保ち、ε−カプロラクトン456g(4モル)を20分かけて滴下した。滴下終了後、150℃で3時間反応を続けて合成を終了し、合成物を得た。ここで得られた合成物は上記ポリエーテル含窒素化合物のポリエーテルブロックの各末端水酸基にポリエステルブロックを形成させたポリエーテルポリエステル含窒素化合物であって、該ポリエーテルブロックが12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミドの水酸基1個当たり20個のエトキシ単位で構成され、該ポリエーテルブロックを構成するエトキシ単位の数/該ポリエステルブロックを構成するカルボニルペントキシ単位の数=2/1の割合である数平均分子量4300のポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−4)であった。
【0040】
・ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−5)及び(R−11)の合成 ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−4)の合成と同様にして、ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−5)及び(R−11)を得た。以上で得た各ポリエーテルポリエステル含窒素化合物の内容を表1にまとめて示した。
【0041】
・アシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−6)の合成
前記で得られたポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−1)330g(0.1モル)とトリエチルアミン12g(0.12モル)とをトルエン600mlに加え、加温して溶解させた。これにオレオロイルクロライド33g(0.11モル)を徐々に加えて反応させ、反応系を50〜60℃に4時間保持して反応を終了した。反応終了後、析出したトリエチルアミン塩酸塩を濾別し、得られた濾液からトルエンを減圧下に留去して合成物を得た。ここで得られた合成物はポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−1)のポリエステルブロックの末端水酸基をオレオロイルクロライドでアシル化した数平均分子量3500のアシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−6)であった。
【0042】
・アシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−7)及び(P−8)の合成
アシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−6)の合成と同様にして、アシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−7)及び(P−8)を得た。以上で得た各アシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物の内容を表2にまとめて示した。
【0043】
【表1】
Figure 0003871289
【0044】
表1において、
AMー1:ジステアリルモノエタノールアミン
AMー2:ラウリルジエタノールアミン
ADー1:ステアリン酸モノエタノールアミド
ADー2:オレイン酸ジエタノールアミド
AHー1:12ーヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミド
AHー2:12ーヒドロキシステアリン酸ジエタノールアミド
amー1:カプリルメチルモノエタノールアミン
amー2:カプリルジエタノールアミン
adー1:カプロン酸モノエタノールアミド
adー2:カプロン酸ジエタノールアミド
ahー1:乳酸モノエタノールアミド
ahー2:乳酸ジエタノールアミド
EO:エトキシ単位
【0045】
【表2】
Figure 0003871289
【0046】
表2において、
AD−1,AD−2,AH−1,EO:表1と同じ
ACー1:ステアロイル基
ACー2:オレオロイル基
【0047】
試験区分2(潤滑剤の調製)
・潤滑剤(T−1)〜(T−8)及び(t−1)〜(t−11)の調製
試験区分1で得た(アシル化)ポリエーテルポリエステル含窒素化合物をそのまま潤滑剤として用いた。
【0048】
・潤滑剤(T−9)の調製
試験区分1で得たポリエーテルポリエステル含窒素化合物(P−1)20部とイソペンタコシルオレート80部とを70〜80℃で均一になるまで混合して潤滑剤(T−9)を調製した。
【0049】
・潤滑剤(T−10)〜(T−14)の調製
潤滑剤(T−9)の調製と同様にして、潤滑剤(T−10)〜(T−14)を調整した。以上で調製した各潤滑剤の内容を表3及び表4にまとめて示した。
【0050】
試験区分3(合成繊維への潤滑剤の付着及びその評価等)
・合成繊維への潤滑剤の付着
固有粘度1.10、カルボキシル末端濃度15当量/106gのポリエチレンテレフタレートのチップを孔数500個の口金を装着したエクストルーダー型紡糸機で溶融紡糸した。口金から紡出した紡出糸に、表3或は表4に記載の潤滑剤を60℃に加温し、計量ポンプを用いたガイド給油法で付着させた後、潤滑剤を付着した紡出糸をガイドで集束させて表面速度3500m/分の引取りロールで引き取った後、引き続き第1延伸ロール、第2延伸ロール、第3延伸ロール、弛緩ロールを介して全延伸倍率1.7倍となるように延伸させた。弛緩ロールを通過した延伸糸の繊度は1500デニールであり、これを10kg捲チーズとして捲き取り、処理済み合成繊維を得た。
【0051】
・評価等
・・潤滑剤の付着量の測定
JIS−L1073(合成繊維フィラメント糸試験方法)に準拠し、抽出溶剤としてノルマルヘキサン/エタノール(50/50容量比)混合溶剤を用いて、前記の処理済み合成繊維の潤滑剤付着量を測定した。結果を表3及び表4にまとめて示した。
【0052】
・・断糸回数の評価
処理済み合成繊維1トン当たりの断糸回数を測定し、測定値を下記の基準で評価した。結果を表3及び表4にまとめて示した。
◎ :断糸回数が0.5回未満
○〜◎:断糸回数が0.5回以上〜1.0回未満
○ :断糸回数が1.0回以上〜1.5回未満
△ :断糸回数が1.5回以上〜2.0回未満
× :断糸回数が2.0回以上
【0053】
・毛羽数の評価
処理済み合成繊維の10kg捲チーズ100チーズについて表面毛羽数を測定し、測定値を下記の基準で評価した。結果を表3及び表4にまとめて示した。
◎ :50個未満
○〜◎:50個以上〜200個未満
○ :200個以上〜500個未満
△ :500個以上〜1000個未満
× :1000個以上
【0054】
【表3】
Figure 0003871289
【0055】
表3において、
E−1:ジオレイルアジペート
E−2:イソペンタコシルオレート
E−3:1,6−ヘキサンジオールジオレート
【0056】
【表4】
Figure 0003871289
【0057】
表4において、
r−1:トリエタノールアミン1モルにエチレンオキサイド30モルを開環重合したものに、更にε−カプロラクトンを15モル開環重合した数平均分子量3000のポリエーテルポリエステルブロック共重合体
r−2:エチレンジアミン1モルにエチレンオキサイド20モルを開環重合したものに、更にε−カプロラクトンを20モル開環重合した数平均分子量3000のポリエーテルポリエステルブロック共重合体
r−3:水添ひまし油1モルにエチレンオキサイド25モルを開環重合したもの/アジピン酸/ドトリアコンタン酸=2/1/2(モル比)の割合で縮重合した数平均分子量6000のポリエステル33部と、水添ひまし油1モルにエチレンオキサイド25モルを開環重合したもの{以下、水添ひまし油POE(25モル)付加体という}67部との混合物
r−4:水添ひまし油1モルにエチレンオキサイド25モルを開環重合したもの/無水マレイン酸/ステアリン酸=2/1/2(モル比)の割合で縮重合した数平均分子量6000の重合体23部と、水添ひまし油POE(25モル)付加体77部との混合物
r−5:PO/EO=25/75(モル比)である数平均分子量8000のポリエーテル共重合体23部と、水添ひまし油POE(25モル)付加体77部との混合物
【0058】
【発明の効果】
既に明らかなように、以上説明した本発明には、高温且つ高接圧下で製糸される場合であっても合成繊維に優れた潤滑性を与え、その製糸工程で毛羽や糸切れの発生の少ない優れた合成繊維を得ることができるという効果がある。

Claims (7)

  1. 下記の脂肪族含窒素アルカノール化合物の水酸基に炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを開環重合してポリエーテルブロックを形成させ、次いで該ポリエーテルブロックの末端水酸基にε−カプロラクトンを開環重合してポリエステルブロックを形成させたポリエーテルポリエステル含窒素化合物であって、該ポリエーテルブロックが該脂肪族含窒素アルカノール化合物の水酸基1個当たり4〜100個のアルコキシ単位で構成され、該ポリエーテルブロックを構成するアルコキシ単位の数/該ポリエステルブロックを構成するカルボニルペントキシ単位の数=1/1〜6/1の割合であり、数平均分子量が500〜20000であるポリエーテルポリエステル含窒素化合物から成ることを特徴とする合成繊維用潤滑剤。
    脂肪族含窒素アルカノール化合物:脂肪酸の炭素数が8〜24である脂肪酸モノアルカノールアミド、脂肪酸の炭素数が8〜24である脂肪酸ジアルカノールアミド、ヒドロキシ脂肪酸の炭素数が6〜24であるヒドロキシ脂肪酸モノアルカノールアミド及びヒドロキシ脂肪酸の炭素数が6〜24であるヒドロキシ脂肪酸ジアルカノールアミドから選ばれる一つ又は二つ以上の脂肪族含窒素アルカノール化合物
  2. ポリエーテルブロックが脂肪族含窒素アルカノール化合物の水酸基1個当たり8〜50個のアルコキシ単位で構成され、該ポリエーテルブロックを構成するアルコキシ単位の数/ポリエステルブロックを構成するカルボニルペントキシ単位の数=2/1〜4/1の割合であり、数平均分子量が1000〜10000であるポリエーテルポリエステル含窒素化合物から成る請求項1記載の合成繊維用潤滑剤。
  3. 脂肪族含窒素アルカノール化合物が、脂肪酸の炭素数が16〜22である脂肪酸モノアルカノールアミド及び/又はヒドロキシ脂肪酸の炭素数が16〜22であるヒドロキシ脂肪酸モノアルカノールアミドである請求項1又は2記載の合成繊維用潤滑剤。
  4. 請求項1、2又は3記載のポリエーテルポリエステル含窒素化合物のポリエステルブロックの末端水酸基に炭素数2〜22のアシル化剤を反応させたアシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物から成ることを特徴とする合成繊維用潤滑剤。
  5. 請求項1、2又は3記載のポリエーテルポリエステル含窒素化合物と、オレイン酸エステル及びオレイルアルコールエステルから選ばれる一つ又は二つ以上の脂肪酸エステルとから成り、該脂肪酸エステル/該ポリエーテルポリエステル含窒素化合物=50/50〜95/5(重量比)の割合から成ることを特徴とする合成繊維用潤滑剤。
  6. 請求項4記載のアシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物と、オレイン酸エステル及びオレイルアルコールエステルから選ばれる一つ又は二つ以上の脂肪酸エステルとから成り、該脂肪酸エステル/該アシル化ポリエーテルポリエステル含窒素化合物=50/50〜95/5(重量比)の割合から成ることを特徴とする合成繊維用潤滑剤。
  7. 請求項1、2、3、4、5又は6記載の合成繊維用潤滑剤を40〜80℃に加温し、ニート状態で紡糸以降延伸迄の間の合成繊維に対し0.1〜3重量%となるよう付着させることを特徴とする合成繊維の処理方法。
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