JP3703279B2 - 炭素繊維製造用合成繊維処理剤及び炭素繊維製造用合成繊維処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は炭素繊維製造用合成繊維処理剤(以下、単に処理剤という)及び炭素繊維製造用合成繊維処理方法(以下、単に処理方法という)に関する。ピッチ繊維やアクリル繊維から炭素繊維を製造する場合、高品質の炭素繊維を低コストで製造するため、耐炎化工程では耐炎化繊維相互の融着防止を図ることが要求され、また炭素化工程では焼成炉内汚染物質の発生防止を図ることが要求される。本発明はかかる要求に応える処理剤及び処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、潤滑剤としてシリコーンを含有する処理剤が使用されている。ところが、かかる処理剤には、耐炎化繊維相互の融着を防止できるものの、耐炎化工程後の炭素化工程において、処理剤の分解による酸化珪素や窒化珪素等の焼成炉内汚染物質が生成し、堆積するため、焼成炉内の清掃を頻繁に行なう必要があり、生産性を著しく低下させるという欠点がある。そこで従来、潤滑剤としてシリコーンを含有しない処理剤が提案されている。これには例えば、1)ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステルとアミド化合物のアルキレンオキサイド付加物との混合物(特開平9−78340)、2)二塩基酸とオキシアルキレン単位を有するポリオールの縮合物と脂肪族アルカノールアミドとを反応させて得られる末端にアミド基を有する化合物とアミド化合物のアルキレンオキサイド付加物との混合物(特開平9−78341)がある。ところが、これらの処理剤には、耐炎化繊維相互の融着を充分に防止できないという欠点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、従来の処理剤では、ピッチ繊維やアクリル繊維から炭素繊維を製造する場合に、耐炎化工程での耐炎化繊維相互の融着防止と炭素化工程での焼成炉内汚染物質の発生防止とを同時に且つ充分に図ることができない点である。
【0004】
【課題を解決するための手段】
しかして本発明者らは、上記の課題を解決するべく研究した結果、潤滑剤として特定のクミルフェノール誘導体を含有する処理剤が正しく好適であることを見出した。
【0005】
すなわち本発明は、潤滑剤として下記の式1で示されるクミルフェノール誘導体を含有して成ることを特徴とする処理剤及びこの処理剤を用いる処理方法に係る。
【0006】
【式1】
【0007】
式1において、
X:炭素数2〜18の2価の飽和脂肪族炭化水素基、炭素数2〜18の2価の不飽和脂肪族炭化水素基又は炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基
A1,A2:炭素数2〜4のアルコキシ基
m,n:1〜10の整数
【0008】
本発明において、潤滑剤として用いる式1で示されるクミルフェノール誘導体は、クミルフェノールに低級アルキレンオキサイドを開環付加若しくは開環付加重合したクミルフェニルオキシ(ポリ)アルコキシレート2モルと、ジカルボン酸1モル又はジカルボン酸のエステル形成性誘導体1モルとを反応させて得られるジエステルである。
【0009】
式1で示されるクミルフェノール誘導体の合成に供する低級アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド等が挙げられる。クミルフェノールに低級アルキレンオキサイドを開環付加若しくは開環付加重合したクミルフェニルオキシ(ポリ)アルコキシレートとしては単一の低級アルキレンオキサイド付加物及び2乃至3種の低級アルキレンオキサイド混合付加物が挙げられるが、エチレンオキサイドを50モル%以上の割合で反応させたものが好ましく、エチレンオキサイドを単独で反応させたものが更に好ましい。かかるクミルフェニルオキシ(ポリ)アルコキシレートにおいて、低級アルキレンオキサイドの付加モル数は1〜10とするが、1又は2モルとするのが好ましい。
【0010】
式1で示されるクミルフェノール誘導体の合成に供するジカルボン酸、ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、1)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、α、ω−ドデカンジカルボン酸等の炭素数4〜20の飽和脂肪族ジカルボン酸、2)コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、セバシン酸ジメチル、コハク酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、アゼライン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライド等の前記1)のエステル形成性誘導体、3)マレイン酸、ドデセニルコハク酸、オクタデセニルジカルボン酸等の炭素数4〜20の不飽和脂肪族ジカルボン酸、4)マレイン酸ジメチル、ドデセニルコハク酸ジメチル、オクタデセニルジカルボン酸ジメチル、マレイン酸ジクロライド、ドデセニルコハク酸ジクロライド、オクタデセニルジカルボン酸ジクロライド等の前記3)のエステル形成性誘導体、5)テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、等の炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸、6)テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジエチル、1,4−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、テレフタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、1,4−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド等の前記5)のエステル形成性誘導体が挙げられる。なかでもコハク酸、アジピン酸等の炭素数4〜6の飽和脂肪族ジカルボン酸及びそれらのエステル形成性誘導体が有利に利用できる。
【0011】
本発明において、式1で示されるクミルフェノール誘導体は、前記したクミルフェニルオキシ(ポリ)アルコキシレートとジカルボン酸又はジカルボン酸のエステル形成性誘導体とのエステル化反応で得られるジエステルである。本発明はかかるエステル化反応を特に制限するものではなく、これには公知の方法が適用できる。例えば、1)クミルフェニルオキシ(ポリ)アルコキシレートとジカルボン酸とを、酸触媒であるパラトルエンスルホン酸の存在下に、生成水を加温・減圧下で留去して、エステル化反応させる方法、2)クミルフェニルオキシ(ポリ)アルコキシレートとジカルボン酸ジメチルとを、酸触媒であるパラトルエンスルホン酸の存在下に、生成メタノールを加温・減圧下で留去して、エステル化反応させる方法等が挙げられる。
【0012】
本発明は以上説明した式1で示されるクミルフェノール誘導体の含有割合を特に制限するものではないが、処理剤中、15〜75重量%とするのが好ましく、20〜70重量%とするのが更に好ましい。
【0013】
本発明の処理剤は式1で示されるクミルフェノール誘導体を潤滑剤として含有するものであるが、更に変性ポリシロキサンを含有することができる。かかる変性ポリシロキサンとしては、1)アミノ変性ポリシロキサン、2)ポリエーテル変性ポリシロキサン、3)エポキシ変性ポリシロキサン等が挙げられるが、なかでもアミノ変性ポリシロキサンが好ましく、平均分子量4000〜50000のアミノ変性ポリシロキサンが特に好ましい。
【0014】
本発明は上記の変性ポリシロキサンの含有割合を特に制限するものではないが、処理剤中、25〜75重量%とするのが好ましく、30〜70重量%とするのが更に好ましい。
【0015】
本発明の処理剤は式1で示されるクミルフェノール誘導体を潤滑剤として含有するものであり、或はまた前記した変性ポリシロキサンを含有するものであるが、更に界面活性剤を含有することができる。本発明はかかる界面活性剤を特に制限するものではないが、非イオン性界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリコール脂肪酸エステル、脂肪族アルコールのポリオキシアルキレングリコールエーテル、脂肪族アミンのポリオキシアルキレングリコールエーテル、アルキル置換フェノールのポリオキシアルキレングリコールエーテル及び多価アルコール部分脂肪酸エステル等が挙げられる。かかる非イオン性界面活性剤のオキシアルキレン単位の繰り返し数、オキシアルキレン単位の種類及びオキシアルキレン単位の繰り返しの形態は、処理剤の水性液を調製する場合、該水性液に所望の乳化性若しくは分散性が得られるよう適宜に選択することができる。
【0016】
本発明は上記の界面活性剤の含有割合を特に制限するものではないが、処理剤中、5〜50重量%とするのが好ましく、10〜40重量%とするのが更に好ましい。
【0017】
以上、本発明の処理剤について説明したが、処理剤を潤滑剤としてのクミルフェノール誘導体、変性ポリシロキサン及び界面活性剤で構成する場合、クミルフェノール誘導体を30〜45重量%、変性ポリシロキサンを30〜45重量%及び界面活性剤を10〜40重量%(合計100重量%)の割合で含有するものが最も好ましい。
【0018】
本発明の処理方法では、本発明の処理剤を炭素繊維製造用合成繊維に対し0.2〜1.5重量%となるように、好ましくは0.3〜1.2重量%となるように付着させる。
【0019】
本発明の処理方法は本発明の処理剤を炭素繊維製造用合成繊維に付着させる方法を特に制限するものではなく、かかる付着方法としては浸漬給油法、ローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、スプレー給油法等の公知の方法が挙げられるが、浸漬給油法、ローラー給油法若しくは計量ポンプを用いたガイド給油法が好ましい。
【0020】
本発明の処理剤を炭素繊維製造用合成繊維に付着させるに当たり、該処理剤は、その水性エマルジョン、その有機溶剤溶液、又は40〜80℃に加温して均一な液状としたものをそのままの形で用いることができるが、水性エマルジョンとして用いるのが好ましい。処理剤の炭素繊維製造用合成繊維への付着に際しては、合目的的に他の成分、例えば抗酸化剤、防腐剤、防錆剤等を併用することができるが、その使用量は可及的に少量とするのが好ましい。
【0021】
本発明の処理剤及び処理方法は炭素繊維製造用のピッチ繊維或はアクリル繊維に適用できるが、アクリル繊維に適用する場合により効果が高い。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明に係る処理剤及び処理方法の実施形態としては、次の1)〜8)が挙げられる。
1)潤滑剤(M−1)として式1中のXがエチレン基、A1及びA2がエトキシ基、m及びnが1である場合のクミルフェノール誘導体を90重量%、界面活性剤(N−1)としてポリオキシエチレン(オキシエチレン単位の繰り返し数が10)ラウリルエーテル{以下POE(v=10)ラウリルエーテルとする}を10重量%の割合で含有して成る処理剤(T−1)。そしてこの処理剤(T−1)を水性エマルジョンとなし、該水性エマルジョンを炭素繊維製造用アクリルフィラメントに対し1重量%となるように浸漬給油する処理方法。
【0023】
2)潤滑剤(M−2)として式1中のXがテトラメチレン基、A1及びA2がエトキシ基、m及びnが2である場合のクミルフェノール誘導体を90重量%、界面活性剤(N−2)としてPOE(v=6)ノニルフェニルエーテルを10重量%の割合で含有して成る処理剤(T−2)。そしてこの処理剤(T−2)を水性エマルジョンとなし、該水性エマルジョンを炭素繊維製造用アクリルフィラメントに対し1.2重量%となるように浸漬給油する処理方法。
【0024】
3)潤滑剤(M−3)として式1中のXがビニレン基、A1及びA2がエトキシ基/プロポキシ基=2/1(モル比)の混合、m及びnが3である場合のクミルフェノール誘導体を90重量%、界面活性剤(N−3)としてPOE(v=25)硬化ヒマシ油を10重量%の割合で含有して成る処理剤(T−3)。そしてこの処理剤(T−3)を水性エマルジョンとなし、該水性エマルジョンを炭素繊維製造用アクリルフィラメントに対し1.0重量%となるように浸漬給油する処理方法。
【0025】
4)潤滑剤(M−4)として式1中のXがフェニレン基、A1及びA2がエトキシ基、m及びnが5である場合のクミルフェノール誘導体を90重量%、界面活性剤(N−1)を10重量%の割合で含有して成る処理剤(T−4)。そしてこの処理剤(T−4)を水性エマルジョンとなし、該水性エマルジョンを炭素繊維製造用アクリルフィラメントに対し1.2重量%となるように浸漬給油する処理方法。
【0026】
5)潤滑剤(M−1)を45重量%、平均分子量8000のアミノ変性ポリシロキサン(S−1)を45重量%、界面活性剤(N−1)を10重量%の割合で含有して成る処理剤(T−5)。そしてこの処理剤(T−5)を水性エマルジョンとなし、該水性エマルジョンを炭素繊維製造用アクリルフィラメントに対し0.6重量%となるように浸漬給油する処理方法。
【0027】
6)潤滑剤(M−2)を40重量%、平均分子量20000のアミノ変性ポリシロキサン(S−2)を30重量%、界面活性剤(N−2)を30重量%の割合で含有して成る処理剤(T−6)。そしてこの処理剤(T−6)を水性エマルジョンとなし、該水性エマルジョンを炭素繊維製造用アクリルフィラメントに対し0.6重量%となるように浸漬給油する処理方法。
【0028】
7)潤滑剤(M−3)を24重量%、平均分子量45000のアミノ変性ポリシロキサン(S−3)を26重量%、界面活性剤(N−1)を50重量%の割合で含有して成る処理剤(T−7)。そしてこの処理剤(T−7)を水性エマルジョンとなし、該水性エマルジョンを炭素繊維製造用アクリルフィラメントに対し0.6重量%となるように浸漬給油する処理方法。
【0029】
8)潤滑剤(M−4)を45重量%、アミノ変性ポリシロキサン(S−1)を45重量%、界面活性剤(N−1)を10重量%の割合で含有して成る処理剤(T−8)。そしてこの処理剤(T−8)を水性エマルジョンとなし、該水性エマルジョンを炭素繊維製造用アクリルフィラメントに対し0.6重量%となるように浸漬給油する処理方法。
【0030】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例等において、別に記載しない限り、部は重量部、%は重量%である。
【0031】
【実施例】
試験区分1(クミルフェノール誘導体の合成)
・クミルフェノール誘導体(M−1)の合成
パラクミルフェノール212g(1モル)及びトリエチルアミン2gをオートクレーブに仕込み、窒素ガスでパージ後、120〜140℃に温度を保ちながらエチレンオキサイド44g(1モル)を圧入した。1時間の熟成反応後、触媒を除去して反応物を得た。得られた反応物は、パラクミルフェノール1モルにエチレンオサイド1モルが付加した(NMR分析法、以下同じ)、水酸基価219、平均分子量256(GPC法、ポリスチレン換算、以下同じ)のパラクミルフェニルオキシエチレートであった。次いでパラクミルフェニルオキシエチレート512g(2モル)、アジピン酸146g(1モル)及びパラトルエンスルホン酸1水和物2gをフラスコに仕込み、窒素ガス気流下で撹拌しながら120〜130℃に加温した。同温度で生成する水を減圧下に除去しながら2時間反応を続けて生成物を得た。得られた生成物を分析したところ、平均分子量622のアジピン酸ジパラクミルフェニルオキシエチルであるクミルフェノール誘導体(M−1)であった。
【0032】
・クミルフェノール誘導体(M−2)〜(M−4)、(m−1)、(m−2)の合成
クミルフェノール誘導体(M−1)の合成の場合と同様にして、クミルフェノール誘導体(M−2)〜(M−4)、(m−1)、(m−2)を合成した。これらの内容を表1にまとめて示した。
【0033】
【表1】
【0034】
表1において、
X,A1,A2,m,n:それぞれ式1中の記号に相当する
【0035】
試験区分2(処理剤の調製)
・処理剤(T−1)〜(T−8)及び(t−1)、(t−2)、(t−5)、(t−6)、(t−8)〜(t−11)の調製
試験区分1で得たクミルフェノール誘導体(M−1)90部とPOE(v=10)ラウリルエーテル10部とを30〜50℃で均一になるまで混合して処理剤(T−1)を調製した。同様にして、処理剤(T−2)〜(T−8)及び(t−1)、(t−2)、(t−5)、(t−6)、(t−8)〜(t−11)を調製した。これらの内容を表2及び表3にまとめて示した。
【0036】
・処理剤(t−3)、(t−4)、(t−7)の調製
ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とラウリン酸とのモノエステルに更にアジピン酸を反応させたエステル/ジエチレントリアミン1モルとステアリン酸2モルとのアミド化合物のエチレンオキサイド10モル付加物=60/40(重量比)の混合物として処理剤(t−3)を調製した。同様にして、処理剤(t−4)、(t−7)を調製した。これらの内容を表3にまとめて示した。
【0037】
試験区分3(炭素繊維製造用アクリルフィラメントへの処理剤の付着及び評価)
・炭素繊維製造用アクリルフィラメントへの処理剤の付着
試験区分2で調製した処理剤30部に水70部を加え、ホモジナイザーを用いて水性エマルジョンとした。この水性エマルジョンを常法により製造したアクリルフィラメント(16000デニール/12000フィラメント)に浸漬給油法にて付着させ後、乾熱ローラーを用い、115℃×4秒間乾燥してプレカーサートウとした。このプレカーサートウを240℃の強制循環式オーブン中で60分間耐炎化処理して耐炎化繊維とし、次いでこの耐炎化繊維を窒素雰囲気中300〜1800℃の温度勾配を持つ焼成炉で50分間焼成して炭素繊維とした。
【0038】
・処理剤の付着量の測定
JIS−L1073(合成繊維フィラメント糸試験方法)に準拠し、抽出溶剤としてノルマルヘキサン/エタノール(70/30容量比)混合溶剤を用いて、前記プレカーサートウへの処理剤の付着量を測定した。結果を表2及び表3にまとめて示した。
【0039】
・融着防止性の評価
前記耐炎化繊維について任意の10ヶ所から2cm長の短繊維10片を切り出し、試料片とした。この試料片を白紙上で軽く振盪して、その融着状態を肉眼観察し、下記の基準で融着防止性を評価した。
◎:融着なし
○:融着ごく僅かあり
△:融着ややあり
×:融着大
【0040】
・焼成炉内汚染物質の発生防止性の評価
前記耐炎化繊維50kgを炭素繊維とする際の焼成炉内の汚染状態を肉眼観察し、次の基準で評価した。
◎:汚染はなく、工程通過性に問題なし
○:汚染はごく僅かあるが、工程通過性に問題なし
△:汚染が明らかにあり、工程通過性に問題あり
×:汚染が著しく、工程通過性に問題あり
【0041】
【表2】
【0042】
表2において、
付着量:アクリルフィラメントに対する処理剤の付着量
比率:重量%
評価1:融着防止性
評価2:焼成炉内汚染物質の発生防止性
S−1:平均分子量8000のアミノ変性ポリシロキサン
S−2:平均分子量20000のアミノ変性ポリシロキサン
S−3:平均分子量45000のアミノ変性ポリシロキサン
N−1:POE(v=10)ラウリルエーテル
N−2:POE(v=6)ノニルフェニルエーテル
N−3:POE(v=25)硬化ヒマシ油
これらは以下同じ
【0043】
【表3】
【0044】
表3において、
C−1:ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とラウリン酸とのモノエステルに更にアジピン酸を反応させたエステル/ジエチレントリアミン1モルとステアリン酸2モルとのアミド化合物のエチレンオキサイド10モル付加物=60/40(重量比)の混合物
C−2:アジピン酸1.5モルと硬化ヒマシ油のエチレンオキサイド20モル付加物1モルとの縮合物にオレイン酸ジエタノールアミド0.8モルを反応させた末端アミド化合物/ジエチレントリアミン1モルとステアリン酸2モルとを反応させたアミド化合物のエチレンオキサイド10モル付加物=70/30(重量比)の混合物
C−3:ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とオレイン酸とのジエステル
C−4:トリベンジルフェノールのエチレンオキサイド10モル付加物とフタル酸とのジエステル
C−5:α−メチルスチリルフェノールのエチレンオキサイド49モル付加物とアジピン酸とのジエステル
C−6:ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物と乳酸とラウリン酸とのテトラエステル
C−7:パラクミルフェニルオキシエチレート1モルとエチルアルコール1モルとアジピン酸1モルとのジエステル
C−8:オレイルアルコールのエチレンオキサイド5モル付加物と安息香酸とのエステル
C−9:椰子油還元アルコールと安息香酸とのエステル
【0045】
【発明の効果】
既に明らかなように、以上説明した本発明には、炭素繊維の製造において、耐炎化工程での耐炎化繊維相互の融着防止と炭素化工程での焼成炉内汚染物質の発生防止とを同時に且つ充分に図ることができるという効果がある。
Claims (9)
- クミルフェノール誘導体が、式1中のXが炭素数2〜4の2価の脂肪族炭化水素基であり、A1がエトキシ基及び/又はプロポキシ基であって、A2がエトキシ基及び/又はプロポキシ基である場合のものである請求項1記載の炭素繊維製造用合成繊維処理剤。
- クミルフェノール誘導体が、式1中のmが1又は2であって、nが1又は2である場合のものである請求項1又は2記載の炭素繊維製造用合成繊維処理剤。
- クミルフェノール誘導体を15〜75重量%の割合で含有する請求項1、2又は3記載の炭素繊維製造用合成繊維処理剤。
- 更に変性ポリシロキサンを25〜75重量%の割合で含有する請求項4記載の炭素繊維製造用合成繊維処理剤。
- 変性ポリシロキサンが、平均分子量4000〜50000のアミノ変性ポリシロキサンである請求項5記載の炭素繊維製造用合成繊維処理剤。
- 更に界面活性剤を5〜50重量%の割合で含有する請求項4、5又は6記載の炭素繊維製造用合成繊維処理剤。
- 請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の炭素繊維製造用合成繊維処理剤を、炭素繊維製造用合成繊維に対し0.2〜1.5重量%となるよう付着させることを特徴とする炭素繊維製造用合成繊維処理方法。
- 炭素繊維製造用合成繊維がアクリル繊維である請求項8記載の炭素繊維製造用合成繊維処理方法。
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