JP5528649B1 - 炭素繊維製造用アクリル繊維処理剤及びその用途 - Google Patents

炭素繊維製造用アクリル繊維処理剤及びその用途 Download PDF

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Abstract

本発明の目的は、炭素繊維製造における繊維間の融着防止と安定した操業性とを両立させることができ、さらに繊維の断糸や、毛羽の発生を抑制できる炭素繊維製造用アクリル繊維処理剤と、該処理剤を用いた炭素繊維製造用アクリル繊維とその製造方法と、該処理剤を用いた炭素繊維の製造方法とを提供することにある。
本発明は、下記一般式(1)で示される含硫黄エステル化合物(A1)、界面活性剤及び水を含有する、炭素繊維製造用アクリル繊維処理剤である。
【化1】
Figure 0005528649
(式中、m及びnは、それぞれ独立して、1〜4の整数であり、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数12〜16の炭化水素基である。)

Description

本発明は、炭素繊維製造用アクリル繊維処理剤及びその用途に関する。より詳しくは、炭素繊維製造用アクリル繊維(以下、プレカーサーと称することがある)を製造する際に使用する処理剤(以下、プレカーサー処理剤と称することがある)と、該処理剤を用いたプレカーサー繊維とその製造方法と、該処理剤を用いた炭素繊維の製造方法とに関する。
炭素繊維はその優れた機械的特性を利用して、マトリックス樹脂と称されるプラスチックとの複合材料用の補強繊維として、航空宇宙用途、スポーツ用途、一般産業用途等に幅広く利用されている。
炭素繊維を製造する方法としては、プレカーサーを200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換し、続いて300〜2000℃の不活性雰囲気中で炭素化する方法が一般的である。これらの高熱による焼成時には、単繊維同士の融着が発生し、得られた炭素繊維の品質、品位を低下させるという問題がある。
この融着を防止するため、優れた耐熱性および繊維−繊維間の平滑性による優れた剥離性を有するシリコーン系処理剤、特に架橋反応により耐熱性をさらに向上できるアミノ変性シリコーン系処理剤をプレカーサーに付与する技術が多数提案され(例えば、特許文献1等)、工業的に広く利用されている。
しかしながら一方で、付着処理したシリコーン系処理剤は、繊維から脱落して粘着物となり、それがプレカーサー製造工程における乾燥ローラーやガイド等に堆積し、繊維が捲き付いたり断糸したりする等の操業性低下を引き起こす原因になるという問題があった。また、耐炎化工程の酸化性雰囲気中でその一部が酸化ケイ素を、炭素化工程の不活性雰囲気中で不活性ガスとして窒素が使用される場合窒化ケイ素を生成し、これらスケールが堆積して、操業性や稼働性を低下させたり、焼成炉の損傷を招いたりするという問題を有していた。
さらに、シリコーン系処理剤の持つ繊維−繊維間平滑性による優れた剥離性は、単繊維間の融着防止には有効に働く一方で、非常に多数の繊維束が同時に平行に走行する焼成工程においては、各々の繊維束幅がシリコーン系処理剤の平滑性で拡がることにより、隣接する繊維束との間隔が狭くなり、場合によってはその干渉により毛羽が生じるという不都合がある。
これらの問題を回避するため、シリコーン系化合物の含有量を低減した処理剤や、シリコーン系化合物を使用しない処理剤等が提案されている。たとえば、ビスフェノールA系の芳香族化合物とアミノ変性シリコーンとを組み合わせた処理剤(例えば、特許文献2等)や、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステルを主成分とする処理剤(例えば、特許文献3等)がある。
しかしながらこれらの処理剤は、シリコーン系化合物に起因する上記の操業性等の問題を抑制することには効果があるが、処理剤組成中に、内分泌撹乱物質(いわゆる環境ホルモン)に該当する疑いのあるビスフェノールA系化合物を含有するという使用上の安全性に劣るとの欠点があった。また、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステルを主成分とする処理剤では、繊維−金属間の摩擦が高すぎる為に繊維の断糸や、毛羽が発生するという問題がある。
日本国特開2002−371477号公報 日本国特開2005−89884号公報 日本国特開2004−143645号公報
かかる従来の技術背景に鑑み、本発明の目的は、内分泌撹乱物質に該当する又は疑いのある成分を用いない処理剤であって、炭素繊維製造における繊維間の融着防止と安定した操業性とを両立させることができ、さらに繊維の断糸や、毛羽の発生を抑制できる炭素繊維製造用アクリル繊維処理剤と、該処理剤を用いた炭素繊維製造用アクリル繊維とその製造方法と、該処理剤を用いた炭素繊維の製造方法とを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、特定のエステル化合物、界面活性剤及び水を含有する炭素繊維製造用アクリル繊維処理剤であれば、上記問題点を解決できるという知見を得て、本発明に到達した。
すなわち、本発明の炭素繊維製造用アクリル繊維処理剤は、下記一般式(1)で示される含硫黄エステル化合物(A1)、界面活性剤及び水を含有するものである。
Figure 0005528649
(式中、m及びnは、それぞれ独立して、1〜4の整数であり、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数12〜16の炭化水素基である。)
本発明の処理剤は、下記一般式(2)で示される含硫黄エステル化合物(A2)をさらに含有することが好ましい。
Figure 0005528649
(式中、m及びnは、それぞれ独立して、1〜4の整数であり、Rは炭素数12〜16の炭化水素基である。)
前記含硫黄エステル化合物(A1)と前記含硫黄エステル化合物(A2)との重量比(A1/A2)は、99.9/0.1〜50/50であることが好ましい。
処理剤の不揮発分に占める、前記含硫黄エステル化合物(A1)及び前記含硫黄エステル化合物(A2)の合計の重量割合又は前記含硫黄エステル化合物(A2)を含まない場合は前記含硫黄エステル化合物(A1)の重量割合は30〜98.9重量%であることが好ましい。同様に、前記界面活性剤の重量割合は1〜40重量%であることが好ましい。
本発明の処理剤は、窒素原子を含む変性基を持つ変性シリコーン(B)をさらに含有することもできる。
前記含硫黄エステル化合物(A1)及び前記含硫黄エステル化合物(A2)の合計と前記変性シリコーン(B)との重量比((A1+A2)/B)、又は前記含硫黄エステル化合物(A2)を含まない場合は前記含硫黄エステル化合物(A1)と前記変性シリコーン(B)との重量比(A1/B)は、99.9/0.1〜50/50であることが好ましい。
前記変性シリコーン(B)はアミノ変性シリコーンであることが好ましい。
本発明の処理剤は、水中に分散したエマルジョンとなっていることが好ましい。
本発明の炭素繊維製造用アクリル繊維は、炭素繊維製造用アクリル繊維の原料アクリル繊維に、上記の処理剤を付着させて製糸したものである。
本発明の炭素繊維製造用アクリル繊維の製造方法は、炭素繊維製造用アクリル繊維の原料アクリル繊維に上記の処理剤を付着させて製糸する製糸工程を含むものである。
本発明の炭素繊維の製造方法は、炭素繊維製造用アクリル繊維の原料アクリル繊維に上記の処理剤を付着させて、炭素繊維製造用アクリル繊維を製糸する製糸工程と、付着処理後の炭素繊維製造用アクリル繊維を200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する耐炎化処理工程と、前記耐炎化繊維をさらに300〜2000℃の不活性雰囲気中で炭化させる炭素化処理工程とを含むものである。
本発明の炭素繊維製造用アクリル繊維処理剤は、内分泌撹乱物質に該当する又は疑いのある成分を用いなくても、炭素繊維製造における繊維間の融着防止と安定した操業性とを両立させることができ、さらに繊維の断糸や、毛羽の発生を抑制できる。
本発明の炭素繊維製造用アクリル繊維及びその製造方法に得られた炭素繊維製造用アクリル繊維を用いれば、炭素繊維製造における繊維間の融着防止と安定した操業性とを両立させることができ、さらに繊維の断糸や、毛羽の発生を抑制できる。
本発明の炭素繊維の製造方法は、繊維間の融着防止と安定した操業性とを両立させることができ、さらに繊維の断糸や、毛羽の発生を抑制できる。また、高強度の炭素繊維を製造することができる。
F/F摩擦力の測定法を説明する模式図。
本発明の炭素繊維製造用アクリル繊維処理剤(プレカーサー処理剤)は、炭素繊維製造に用いられるアクリル繊維(炭素繊維のプレカーサー)に付与することを目的とした処理剤であり、特定の含硫黄エステル化合物(A1)、界面活性剤及び水を含有するものである。まず、プレカーサー処理剤を構成する各成分を説明する。
〔含硫黄エステル化合物(A1)〕
含硫黄エステル化合物(A1)は、上記一般式(1)で示される化合物であり、本発明のプレカーサー処理剤の必須成分である。含硫黄エステル化合物(A1)は、炭素繊維の製造において、製糸時操業性を維持しつつ、焼成時操業性を高めることができる成分である。この含硫黄エステル化合物(A1)を用いることにより、繊維−繊維間摩擦を高めて、繊維束の集束性を向上させることができる。その結果、良好な焼成時操業性を実現する。
一般式(1)の式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数12〜16の炭化水素基である。R及びRは同一であってもよく、異なっていてもよい。R及びRは、直鎖状、分岐鎖状のどちらでもよいが、集束性や焼成時操業性の観点から、分岐鎖状が好ましい。炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。炭化水素基の炭素数は、12〜16であり、14〜16が好ましい。該炭素数が12未満であると、繊維−金属間摩擦が高くなり、単繊維の断糸や、毛羽が発生する。一方、炭素数が16を超えると、焼成時タール化物が多量に発生し繊維間が融着する。
一般式(1)の式中、m及びnは、それぞれ独立して、1〜4の整数であり、2〜3が好ましい。m又はnが4を超えると繊維−繊維間摩擦が低くなり、集束性不足が発生し、焼成時操業性が悪化することがある。
直鎖状の炭化水素基の具体例としては、例えば、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基等が挙げられる。また、分岐鎖状の炭化水素基の具体例としては、例えば、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基等が挙げられる。これらの中でも、集束性や焼成時操業性の観点から、n−ドデシル基、2−ヘキシルデシル基が好ましい。
含硫黄エステル化合物(A1)としては、例えば、ジ(n−ドデシル)チオジエタネート、ジ(n−トリデシル)チオジエタネート、ジ(n−テトラデシル)チオジエタネート、ジ(n−ペンタデシル)チオジエタネート、ジ(n−ヘキサデシル)チオジエタネート等のチオジエタン酸ジ直鎖型エステル;ジ(イソドデシル)チオジエタネート、ジ(イソトリデシル)チオジエタネート、ジ(イソテトラデシル)チオジエタネート、ジ(イソペンタデシル)チオジエタネート、ジ(イソヘキサデシル)チオジエタネート、ジ(2−ヘキシルデシル)チオジエタネート等のチオジエタン酸ジ分岐鎖型エステル;ジ(n−ドデシル)チオジプロピオネート、ジ(n−トリデシル)チオジプロピオネート、ジ(n−テトラデシル)チオジプロピオネート、ジ(n−ペンタデシル)チオジプロピオネート、ジ(n−ヘキサデシル)チオジプロピオネート等のチオジプロピオン酸ジ直鎖型エステル;ジ(イソドデシル)チオジプロピオネート、ジ(イソトリデシル)チオジプロピオネート、ジ(イソテトラデシル)チオジプロピオネート、ジ(イソペンタデシル)チオジプロピオネート、ジ(イソヘキサデシル)チオジプロピオネート、ジ(2−ヘキシルデシル)チオジプロピオネート等のチオジプロピオン酸ジ分岐鎖型エステル;ジ(n−ドデシル)チオジブタネート、ジ(n−トリデシル)チオジブタネート、ジ(n−テトラデシル)チオジブタネート、ジ(n−ペンタデシル)チオジブタネート、ジ(n−ヘキサデシル)チオジブタネート等のチオジブタン酸ジ直鎖型エステル;ジ(イソドデシル)チオジブタネート、ジ(イソトリデシル)チオジブタネート、ジ(イソテトラデシル)チオジブタネート、ジ(イソペンタデシル)チオジブタネート、ジ(イソヘキサデシル)チオジブタネート、ジ(2−ヘキシルデシル)チオジブタネート等のチオジブタン酸ジ分岐鎖型エステル;ジ(n−ドデシル)チオジペンタネート、ジ(n−トリデシル)チオジペンタネート、ジ(n−テトラデシル)チオジペンタネート、ジ(n−ペンタデシル)チオジペンタネート、ジ(n−ヘキサデシル)チオジペンタネート等のチオジペンタン酸ジ直鎖型エステル;ジ(イソドデシル)チオジペンタネート、ジ(イソトリデシル)チオジペンタネート、ジ(イソテトラデシル)チオジペンタネート、ジ(イソペンタデシル)チオジペンタネート、ジ(イソヘキサデシル)チオジペンタネート、ジ(2−ヘキシルデシル)チオジペンタネート等のチオジペンタン酸ジ分岐鎖型エステル;等が挙げられる。これらの中でも、集束性や焼成時操業性の観点から、チオジプロピオン酸ジ直鎖型エステル、チオジプロピオン酸ジ分岐鎖型エステルが好ましく、ジ(n−ドデシル)チオジプロピオネート、ジ(2−ヘキシルデシル)チオジプロピオネートがさらに好ましい。
これらの含硫黄エステル化合物(A1)は、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
含硫黄エステル化合物(A1)の製造方法としては、特に限定なく、公知の手法を採用できる。例えば、チオジプロピオン酸と脂肪族アルコールのエステル化反応を行うことで製造することができる。具体的な例としては、チオジプロピオン酸に対して脂肪族アルコール2〜2.5倍モルの仕込み比率で、生成してくる水を抜きながらエステル化反応を行う方法が挙げられる。
エステル化条件として、例えば、エステル化反応温度としては、通常120〜250℃であり、130℃〜230℃が好ましい。また、反応時間としては、通常1〜10時間であり、2〜8時間が好ましい。反応は無触媒で行っても後述するエステル化触媒を用いて反応を行ってもよい。
脂肪族アルコールの具体例としては、n−ドデカノール、n−トリデカノール、n−テトラデカノール、n−ペンタデカノール、n−ヘキサデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソペンタデカノール、イソヘキサデカノール、2−ヘキシルデカノール等が挙げられる。これらの中でも、n−ドデカノール、2−ヘキシルデカノールが好ましい。
これらの脂肪族アルコールは、単独であるいは二種以上組み合わせて使用することができる。
エステル化触媒としては、ルイス酸類、スルホン酸類等が挙げられる。より具体的には、ルイス酸類としては、アルミニウム誘導体、錫誘導体、チタン誘導体等が、更にスルホン酸類としては、パラトルエンスルホン酸、メタスルホン酸、硫酸等が挙げられる。これらの中でも、チタン誘導体、スルホン酸類が好ましい。その使用量は、例えば原料の総重量に対して、0.05〜5重量%程度が好ましい。
エステル化反応では、必要に応じて、生成してくる水をベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の水同伴剤を用いて系外に共沸留去させてもよい。
エステル化反応終了後、反応に応じて、過剰の脂肪族アルコールを減圧化又は常圧下にて留去させ、また、慣用の精製方法、例えば、水洗、減圧蒸留、活性炭等の吸着剤精製を行い、チオジプロピオン酸ジエステルを得ることができる。
〔含硫黄エステル化合物(A2)〕
本発明のプレカーサー処理剤は、上記一般式(2)で示される含硫黄エステル化合物(A2)をさらに含有することが好ましい。前述した含硫黄エステル化合物(A1)に加え、含硫黄エステル化合物(A2)を含有することにより、繊維−繊維間摩擦を保ちつつ、繊維−金属間摩擦を効果的に下げることができる。その結果、繊維束の集束性を向上させかつ単繊維の断糸や、毛羽の発生をより一層抑制できる。さらには、処理剤を水系乳化した際の乳化安定性が良好になり、繊維に処理剤を均一に付着させることができる。
一般式(2)の式中、Rは炭素数12〜16の炭化水素基であり、直鎖状、分岐鎖状のどちらでもよいが、集束性や焼成時操業性の観点から、分岐鎖状が好ましい。炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。炭化水素基の炭素数は、12〜16であり、14〜16が好ましい。炭素数が12未満であると、繊維−繊維間摩擦が低くなり、集束性不足が発生し、焼成時操業性が悪化することがある。一方、炭素数が16を超えると、焼成時タール化物が多量に発生し繊維間が融着することがある。
直鎖状の炭化水素基や分岐鎖状の炭化水素基の具体例については、前述のR及びRの項目で説明した例と同様である。
一般式(2)の式中、m及びnは、それぞれ独立して、1〜4の整数であり、2〜3が好ましい。m又はnが4を超えると繊維−繊維間摩擦が低くなり、集束性不足が発生し、焼成時操業性が悪化することがある。
含硫黄エステル化合物(A2)としては、例えば、チオジエタン酸モノ(n−ドデシル)エステル、チオジエタン酸モノ(n−トリデシル)エステル、チオジエタン酸モノ(n−テトラデシル)エステル、チオジエタン酸モノ(n−ペンタデシル)エステル、チオジエタン酸モノ(n−ヘキサデシル)エステル等のチオジエタン酸モノ直鎖型エステル;チオジエタン酸モノ(イソドデシル)エステル、チオジエタン酸モノ(イソトリデシル)エステル、チオジエタン酸モノ(イソテトラデシル)エステル、チオジエタン酸モノ(イソペンタデシル)エステル、チオジエタン酸モノ(イソヘキサデシル)エステル、チオジエタン酸モノ(2−ヘキシルデシル)エステル等のチオジエタン酸モノ分岐鎖型エステル;チオジプロピオン酸モノ(n−ドデシル)エステル、チオジプロピオン酸モノ(n−トリデシル)エステル、チオジプロピオン酸モノ(n−テトラデシル)エステル、チオジプロピオン酸モノ(n−ペンタデシル)エステル、チオジプロピオン酸モノ(n−ヘキサデシル)エステル等のチオジプロピオン酸モノ直鎖型エステル;チオジプロピオン酸モノ(イソドデシル)エステル、チオジプロピオン酸モノ(イソトリデシル)エステル、チオジプロピオン酸モノ(イソテトラデシル)エステル、チオジプロピオン酸モノ(イソペンタデシル)エステル、チオジプロピオン酸モノ(イソヘキサデシル)エステル、チオジプロピオン酸モノ(2−ヘキシルデシル)エステル等のチオジプロピオン酸モノ分岐鎖型エステル;チオジブタン酸モノ(n−ドデシル)エステル、チオジブタン酸モノ(n−トリデシル)エステル、チオジブタン酸モノ(n−テトラデシル)エステル、チオジブタン酸モノ(n−ペンタデシル)エステル、チオジブタン酸モノ(n−ヘキサデシル)エステル等のチオジブタン酸モノ直鎖型エステル;チオジブタン酸モノ(イソドデシル)エステル、チオジブタン酸モノ(イソトリデシル)エステル、チオジブタン酸モノ(イソテトラデシル)エステル、チオジブタン酸モノ(イソペンタデシル)エステル、チオジブタン酸モノ(イソヘキサデシル)エステル、チオジブタン酸モノ(2−ヘキシルデシル)エステル等のチオジブタン酸モノ分岐鎖型エステル;チオジペンタン酸モノ(n−ドデシル)エステル、チオジペンタン酸モノ(n−トリデシル)エステル、チオジペンタン酸モノ(n−テトラデシル)エステル、チオジペンタン酸モノ(n−ペンタデシル)エステル、チオジペンタン酸モノ(n−ヘキサデシル)エステル等のチオジペンタン酸モノ直鎖型エステル;チオジペンタン酸モノ(イソドデシル)エステル、チオジペンタン酸モノ(イソトリデシル)エステル、チオジペンタン酸モノ(イソテトラデシル)エステル、チオジペンタン酸モノ(イソペンタデシル)エステル、チオジペンタン酸モノ(イソヘキサデシル)エステル、チオジペンタン酸モノ(2−ヘキシルデシル)エステル等のチオジペンタン酸モノ分岐鎖型エステル;等が挙げられる。これらの中でも、集束性や焼成時操業性の観点から、チオジプロピオン酸モノ直鎖型エステル、チオジプロピオン酸モノ分岐鎖型エステルが好ましく、チオジプロピオン酸モノ(n−ドデシル)エステル、チオジプロピオン酸モノ(2−ヘキシルデシル)エステルがさらに好ましい。
これらの含硫黄エステル化合物(A2)は、単独であるいは二種以上組み合わせて使用することができる。
含硫黄エステル化合物(A2)の製造方法としては、特に限定なく、公知の手法を採用できる。例えば、チオジプロピオン酸と脂肪族アルコールのエステル化反応を行うことで製造することができる。具体的な例としては、チオジプロピオン酸に対して脂肪族アルコールを等モル程度仕込み、生成してくる水を抜きながらエステル化反応を行い、蒸留・精製する等の方法が挙げられる。
なお、脂肪族アルコールの仕込み量は、チオジプロピオン酸に対して、1〜1.2倍モルを仕込み比率で仕込むことが好ましい。エステル化条件、脂肪族アルコールの具体例、エステル化触媒等については、前述の含硫黄エステル化合物(A1)の製造方法の項目で説明したものと同様である。
含硫黄エステル化合物(A1)と含硫黄エステル化合物(A2)は、前述の方法でそれぞれエステル化合物を調製して用いてもよく、チオジプロピオン酸と脂肪族アルコールのエステル化反応を行い、含硫黄エステル化合物(A1)及び含硫黄エステル化合物(A2)を含むエステル混合物を調製して用いてもよい。
含硫黄エステル化合物(A1)及び含硫黄エステル化合物(A2)のエステル混合物を調製する方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。
1)チオジプロピオン酸と脂肪族アルコールとのエステル化反応を行う時に、脂肪族アルコールのモル比をチオジプロピオン酸に対して、1.5〜1.99倍モル、好ましくは1.8〜1.9倍モル仕込みエステル化反応を行う方法が挙げられる。エステル化条件、脂肪族アルコールの具体例、エステル化触媒等については、前述の含硫黄エステル化合物(A1)の製造方法の項目で説明したものと同様である。
2)前述の含硫黄エステル化合物(A1)の製造方法において、エステル混合物が所望の全酸価になるようにエステル化反応を途中で終了させる方法が挙げられる。
なお、エステル混合物中の含硫黄エステル化合物(A1)と含硫黄エステル化合物(A2)の重量比は次の方法により算出できる。得られたエステル混合物を、ガスクロマトグラフィー分析により分析し原料であるチオジプロピオン酸の含有量を測定し、エステル混合物中のチオジプロピオン酸由来の酸価を求める。次に、エステル混合物の全酸価を測定する。全酸価からチオジプロピオン酸由来の酸価を差し引いた値と含硫黄エステル化合物(A2)の分子量から、エステル混合物中の含硫黄エステル化合物(A1)と含硫黄エステル化合物(A2)の重量比を算出することができる。
本発明の効果をより発揮させるためには、含硫黄エステル化合物(A1)と含硫黄エステル化合物(A2)を単に併用するだけではなく、含硫黄エステル化合物(A1)と含硫黄エステル化合物(A2)とを特定の割合で併用することが好ましい。含硫黄エステル化合物(A1)と含硫黄エステル化合物(A2)の重量比(A1/A2)は、99.9/0.1〜50/50が好ましく、99.9/0.1〜70/30がより好ましく、99/1〜80/20がさらに好ましく、98/2〜90/10が特に好ましい。該重量割合が99.9/0.1超の場合、繊維−金属間の摩擦が高くなり、繊維の断糸や毛羽が発生することがある。さらに、水系乳化した際のエマルジョンの乳化安定性が悪くなることがある。一方、該重量割合が50/50未満の場合、繊維−繊維間摩擦が低くなり、集束性不足が発生し、焼成時操業性が悪化することがある。
〔界面活性剤〕
本発明のプレカーサー処理剤は、界面活性剤を含有する。界面活性剤は乳化剤として使用され、前述の含硫黄エステル化合物(A1)や含硫黄エステル化合物(A2)、後述の変性シリコーン等を水に乳化、分散させることを可能とする。界面活性剤としては、特に限定されず、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤から、公知のものを適宜選択して使用することができる。界面活性剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等のポリオキシアルキレン直鎖アルキルエーテル;ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル等のポリオキシアルキレン分岐第一級アルキルエーテル;ポリオキシエチレン1−ヘキシルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン1−オクチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン1−ヘキシルオクチルエーテル、ポリオキシエチレン1−ペンチルへプチルエーテル、ポリオキシエチレン1−へプチルペンチルエーテル等のポリオキシアルキレン分岐第二級アルキルエーテル;ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアリールフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノミリスチレート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジオレート、ポリオキシエチレンジミリスチレート、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレート等のソルビタンエステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンひまし油エーテル等のポリオキシアルキレンひまし油エーテル;ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル等のポリオキシアルキレン硬化ひまし油エーテル;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル;オキシエチレン−オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体;オキシエチレン−オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体の末端アルキルエーテル化物;オキシエチレン−オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体の末端ショ糖エーテル化物;等を挙げることができる。
これら非イオン性界面活性剤の中でも、エステル及びシリコーン化合物の水系乳化力に特に優れるという理由で、ポリオキシアルキレン分岐第一級アルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐第二級アルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体の末端アルキルエーテル化物が好ましく、更に焼成工程で、繊維上でタール化して繊維に損傷を与え難いという理由で、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体の末端アルキルエーテル化物がより好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸、パルミチン酸、オレイン酸ナトリウム塩、パルミチン酸カリウム塩、オレイン酸トリエタノールアミン塩等の脂肪酸(塩);ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ酢酸カリウム塩、乳酸、乳酸カリウム塩等のヒドロキシル基含有カルボン酸(塩);ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸(ナトリウム塩)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸(塩);トリメリット酸カリウム、ピロメリット酸カリウム等のカルボキシル基多置換芳香族化合物の塩;ドデシルベンゼンスルホン酸(ナトリウム塩)等のアルキルベンゼンスルホン酸(塩);ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテルスルホン酸(カリウム塩)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸(塩);ステアロイルメチルタウリン(ナトリウム)、ラウロイルメチルタウリン(ナトリウム)、ミリストイルメチルタウリンN(ナトリウム)、パルミトイルメチルタウリン(ナトリウム)等の高級脂肪酸アミドスルホン酸(塩);ラウロイルサルコシン酸(ナトリウム)等のN−アシルサルコシン酸(塩);オクチルホスホネート(カリウム塩)等のアルキルホスホン酸(塩);フェニルホスホネート(カリウム塩)等の芳香族ホスホン酸(塩);2−エチルヘキシルホスホネートモノ2−エチルヘキシルエステル(カリウム塩)等のアルキルホスホン酸アルキルリン酸エステル(塩);アミノエチルホスホン酸(ジエタノールアミン塩)等の含窒素アルキルホスホン酸(塩);2−エチルヘキシルサルフェート(ナトリウム塩)等のアルキル硫酸エステル(塩);ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテルサルフェート(ナトリウム塩)等のポリオキシアルキレン硫酸エステル(塩);ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩;等を挙げる事ができる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロライド、パルミチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オレイルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシ油アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、牛脂アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヤシ油アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、オレイルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルジエチルメチルアンモニウムサルフェート、等のアルキル第四級アンモニウム塩;(ポリオキシエチレン)ラウリルアミノエーテル乳酸塩、ステアリルアミノエーテル乳酸塩、ジ(ポリオキシエチレン)ラウリルメチルアミノエーテルジメチルホスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ラウリルエチルアンモニウムエトサルフェート、ジ(ポリオキシエチレン)硬化牛脂アルキルエチルアミンエトサルフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ラウリルメチルアンモニウムジメチルホスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ステアリルアミン乳酸塩等の(ポリオキシアルキレン)アルキルアミノエーテル塩;N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N-ジメチル−N−ステアロイルアミドプロピルアンモニウムナイトレート、ラノリン脂肪酸アミドプロピルエチルジメチルアンモニウムエトサルフェート、ラウロイルアミドエチルメチルジエチルアンモニウムメトサルフェート等のアシルアミドアルキル第四級アンモニウム塩;ジパルミチルポリエテノキシエチルアンモニウムクロライド、ジステアリルポリエテノキシメチルアンモニウムクロライド等のアルキルエテノキシ第四級アンモニウム塩;ラウリルイソキノリニウムクロライド等のアルキルイソキノリニウム塩;ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等のベンザルコニウム塩;ベンジルジメチル{2−[2−(p−1,1,3,3−テトラメチルブチルフェノオキシ)エトオキシ]エチル}アンモニウムクロライド等のベンゼトニウム塩;セチルピリジニウムクロライド等のピリジニウム塩;オレイルヒドロキシエチルイミダゾリニウムエトサルフェート、ラウリルヒドロキシエチルイミダゾリニウムエトサルフェート等のイミダゾリニウム塩;N−ココイルアルギニンエチルエステルピロリドンカルボン酸塩、N−ラウロイルリジンエチルエチルエステルクロライド等のアシル塩基性アミノ酸アルキルエステル塩;ラウリルアミンクロライド、ステアリルアミンブロマイド、硬化牛脂アルキルアミンクロライド、ロジンアミン酢酸塩等の第一級アミン塩;セチルメチルアミンサルフェート、ラウリルメチルアミンクロライド、ジラウリルアミン酢酸塩、ステアリルエチルアミンブロマイド、ラウリルプロピルアミン酢酸塩、ジオクチルアミンクロライド、オクタデシルエチルアミンハイドロオキサイド等の第二級アミン塩;ジラウリルメチルアミンサルフェート、ラウリルジエチルアミンクロライド、ラウリルエチルメチルアミンブロマイド、ジエタノールステアリルアミドエチルアミントリヒドロキシエチルホスフェート塩、ステアリルアミドエチルエタノールアミン尿素重縮合物酢酸塩等の第三級アミン塩;脂肪酸アミドグアニジニウム塩;ラウリルトリエチレングリコールアンモニウムハイドロオキサイド等のアルキルトリアルキレングリコールアンモニウム塩等を挙げることができる。
両性界面活性剤としては、例えば、2−ウンデシル−N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N−ラウリルグリシン、N−ラウリルβ−アラニン、N−ステアリルβ−アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられる。
これらの界面活性剤のなかでも、経時安定性に優れ、更には含硫黄エステル化合物(A1)、含硫黄エステル化合物(A2)、変性シリコーンの乳化力にも優れるという理由から、非イオン性界面活性剤が好ましい。イオン性界面活性剤は、非イオン性界面活性剤と比較し、静電気発生による繊維束のバラケを抑制することができる制電性に優れるという利点があるため、非イオン界面活性剤と併用することが好ましい。イオン性界面活性剤としては、上記のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができるが、これの中でもカチオン性界面活性剤が好ましく、カチオン界面活性剤の中でも、アルキル第四級アンモニウム塩、(ポリオキシアルキレン)アルキルアミノエーテル塩、アシルアミノアルキル第四級アンモニウム塩、アルキルエテノキシ第四級アンモニウム塩、第一級アミン塩、第二級アミン塩、第三級アミン塩等がさらに好ましい。
〔窒素原子を含む変性基を持つ変性シリコーン(B)〕
本発明のプレカーサー処理剤は、窒素原子を含む変性基を持つ変性シリコーン(B)をさらに含有することができる。本発明のプレカーサー処理剤は、前述の含硫黄エステル化合物(A1)を含有することから、繊維−金属間摩擦を上げることなく繊維−繊維間摩擦を高めることができ、焼成工程において繊維束幅の拡がりを防ぐことで繊維束の干渉による毛羽の発生を効果的に下げることができる。つまり、含硫黄エステル化合物(A1)を含有する本発明のプレカーサー処理剤は、変性シリコーン(B)による不具合を抑制でき、変性シリコーン(B)を併用することが可能となる。
このような効果をより発揮させるためには、変性シリコーン(B)を単に併用するだけではなく、上記含硫黄エステル化合物(A1)及び含硫黄エステル化合物(A2)の合計と変性シリコーン(B)とを、又は前記含硫黄エステル化合物(A2)を含まない場合は前記含硫黄エステル化合物(A1)と前記変性シリコーン(B)とを特定の割合で併用することが好ましい。含硫黄エステル化合物(A1)及び含硫黄エステル化合物(A2)の合計と変性シリコーン(B)との重量比((A1+A2)/B)、又は前記含硫黄エステル化合物(A2)を含まない場合は前記含硫黄エステル化合物(A1)と前記変性シリコーン(B)との重量比(A1/B)は、99.9/0.1〜50/50が好ましく、95/5〜60/40がより好ましく、90/12〜70/30がさらに好ましい。該重量割合が99.9/0.1超の場合、繊維−金属間の摩擦が高くなり繊維の断糸や、毛羽が発生することがある。さらに、水系乳化した際のエマルジョンの乳化安定性が悪くなることがある。一方、該重量割合が50/50未満の場合、繊維−繊維間摩擦が低くなることにより、集束性不足が発生し、焼成時操業性が悪化することがある。
変性シリコーン(B)は窒素原子を含む変性基であれば変性基の種類は特に限定されない。窒素原子を含む変性基としては、アミノ結合やイミノ結合を含有する変性基(即ち、アミノ基)や、アミド結合を含有する変性基(即ち、アミド基)などが挙げられ、アミノ結合とアミド結合など異なる結合が複数存在する変性基でもよい。窒素原子を含む変性基は、主鎖であるシリコーンの側鎖と結合していてもよいし、末端と結合していてもよいし、また両方と結合していてもよい。また、分子中にポリオキシアルキレン基(例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基等)を有していてもよい。
窒素原子を含む変性基を持つ変性シリコーン(B)としては、例えば、アミノ変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、アマイド変性シリコーン、アマイドポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられ、一種類の変性シリコーンを用いてもよいし、複数の変性シリコーンを併用してもよい。
また、変性シリコーン(B)における窒素原子の含有量は、0.35〜3.2重量%が好ましく、0.37〜2.2重量%がより好ましく、0.40〜1.3重量%がさらに好ましい。窒素原子の含有量が0.35重量%より低い場合、水系乳化した際にエマルジョンの乳化安定性が悪くなることがある。一方、窒素原子の含有量が3.2重量%より高い場合、熱架橋により変性シリコーン(B)の粘着性が高くなり、ガムアップの原因となる。
水系乳化した際のエマルジョンの乳化安定性に優れ、また含硫黄エステル化合物(A1)との併用による効果が優れる点から、これら変性シリコーン(B)の中でも、アミノ変性シリコーンが好ましい。
変性シリコーン(B)がアミノ変性シリコーンである場合、そのアミノ変性シリコーンの構造は特に限定されるものではない。即ち、変性基であるアミノ基は、主鎖であるシリコーンの側鎖と結合していてもよいし、末端と結合していてもよいし、また両方と結合していてもよい。また、そのアミノ基は、モノアミン型であってもポリアミン型であってもよく、1分子中に両者が併存していてもよい。
アミノ変性シリコーンにおけるアミノ基(NH)の含有量(以下、「アミノ重量%」という)は、0.4〜3.7重量%が好ましく、0.42〜2.5重量%がより好ましく、0.46〜1.5重量%が更に好ましい。アミノ重量%が0.4重量%より低いと、水系乳化した際にエマルジョンの乳化安定性が悪くなることがある。一方、3.7重量%より高い場合、熱架橋によりアミノ変性シリコーンの粘着性が高くなり、ガムアップの原因となる。
アミノ変性シリコーンの25℃における粘度については、特に限定はないが、低粘度過ぎると、処理剤が飛散しやすくなり、また水系乳化した際にエマルジョンの乳化安定性が悪くなり、処理剤を繊維へ均一に付与することが出来なくなる。その結果、繊維の融着を防止できないことがある。また逆に高粘度すぎると、粘着性に起因するガムアップが問題となることがある。これらの問題を防止する観点から、アミノ変性シリコーンの25℃での粘度は、100〜15,000mm/sが好ましく、500〜10,000mm/sがより好ましく、1,000〜5,000mm/sがさらに好ましい。
〔その他成分〕
本発明のプレカーサー処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記した成分以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、酸性リン酸エステル、フェノール系、アミン系、硫黄系、リン系、キノン系等の酸化防止剤;高級アルコール・高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、スルホン酸塩、高級アルコール・高級アルコールエーテルのリン酸エステル塩、第4級アンモニウム塩型カチオン系界面活性剤、アミン塩型カチオン系界面活性剤等の制電剤;高級アルコールのアルキルエステル、高級アルコールエーテル、ワックス類等の平滑剤;抗菌剤;防腐剤;防錆剤;および吸湿剤等が挙げられる。
酸化防止剤は、耐炎化処理工程における加熱によってプレカーサー処理剤の熱分解を効果的に抑制し、繊維−繊維間の融着防止効果を高める成分である。
酸化防止剤としては、特に限定はないが、焼成炉汚染防止の観点から、有機酸化防止剤が好ましい。有機酸化防止剤としては、たとえば、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール、トリオクタデシルフォスファイト、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、トリエチレングリコールビス[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]、ジオレイル−チオジプロピオネート等を挙げることができる。これらの有機酸化防止剤は1種または2種以上を併用してもよい。
また、本発明のプレカーサー処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、窒素原子を含む変性基を持つ変性シリコーン(B)以外のシリコーン成分を含んでいてもよい。具体的には、ジメチルシリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルキレンオキサイド変性シリコーン(ポリエーテル変性シリコーン)、エポキシポリエーテル変性シリコーン(例えば、特許4616934号参照)、カルボキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、メタクリレート変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
〔プレカーサー処理剤〕
本発明のプレカーサー処理剤は、前述の含硫黄エステル化合物(A1)、界面活性剤及び水を必須に含有し、必要に応じて含硫黄エステル化合物(A2)を含有するものである。処理剤の不揮発分に占める含硫黄エステル化合物(A1)及び含硫黄エステル化合物(A2)の合計の重量割合又は前記含硫黄エステル化合物(A2)を含まない場合は前記含硫黄エステル化合物(A1)の重量割合は30〜98.9重量%であることが好ましい。45〜95重量%がより好ましく、55〜85重量%がさらに好ましく、65〜75重量%が特に好ましい。該重量割合が30重量%未満の場合、繊維−繊維間摩擦が低くなり、集束性不足が発生し、焼成時操業性が悪化することがある。一方、98.9重量%超の場合、水系乳化した際のエマルジョンの乳化安定性が悪くなることがある。
処理剤の不揮発分に占める界面活性剤の重量割合は、1〜40重量%が好ましく、5〜30重量%がより好ましく、8〜25重量%がさらに好ましい。該重量割合が1重量%未満となると、良好な乳化安定性が得られにくくなることがある。また、該重量割合が40重量%を超えると、処理剤の耐熱性が低下し、焼成工程における炭素繊維の融着を抑制できない場合がある。
本発明のプレカーサー処理剤が変性シリコーン(B)を含有する場合、処理剤の不揮発分に占める変性シリコーン(B)の重量割合は、5〜40重量%がより好ましく、10〜30重量%がさらに好ましく、15〜25重量%が特に好ましい。
本発明のプレカーサー処理剤は、乳化剤として界面活性剤を含み、含硫黄エステル化合物(A1)、必要に応じて含硫黄エステル化合物(A2)、変性シリコーンを水に乳化又は分散させて、水中に分散したエマルジョンとなっている状態が好ましい。
プレカーサー処理剤全体に占める水の重量割合、不揮発分の重量割合については、特に限定はない。例えば、本発明のプレカーサー処理剤を輸送する際の輸送コストや、エマルジョン粘度に因るところの取扱い性等を考慮して適宜決定すればよい。プレカーサー処理剤全体に占める水の重量割合は、0.1〜99.9重量%が好ましく、10〜99.5重量%がさらに好ましく、50〜99重量%が特に好ましい。プレカーサー処理剤全体に占める不揮発分の重量割合(濃度)は、0.01〜99.9重量%が好ましく、0.5〜90重量%がさらに好ましく、1〜50重量%が特に好ましい。
プレカーサー処理剤における乳化物の平均粒子径は、0.05〜0.30μmが好ましく、0.06〜0.20μmがより好ましく、0.07〜0.10μmがさらに好ましい。該平均粒子径が0.05μm未満の場合、処理剤が繊維内部へ浸透し易くなり得られた炭素繊維の強度が低くなることがある。一方、該平均粒子径が0.30μm超の場合、処理剤が繊維表面に均一に付着することができず得られた炭素繊維の強度が低くなることがある。なお、本発明でいう平均粒子径とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製LA−910)で測定された粒度分布より算出された平均値をいう。
本発明のプレカーサー処理剤は、上記で説明した成分を混合することによって製造することができる。上記で説明した成分を乳化・分散させる方法については特に限定されず、公知の手法が採用できる。このような方法としては、たとえば、プレカーサー処理剤を構成する各成分を攪拌下の温水中に投入して乳化分散する方法や、プレカーサー処理剤を構成する各成分を混合し、ホモジナイザー、ホモミキサー、ボールミル等を用いて機械せん断力を加えつつ、水を徐々に投入して転相乳化する方法等が挙げられる。
また、本発明のプレカーサー処理剤を用いて、プレカーサー及び炭素繊維を製造することができる。本発明のプレカーサー処理剤を用いたプレカーサー及び炭素繊維の製造方法は、特に限定されないが、たとえば、以下の製造方法を挙げることができる。
〔プレカーサーとその製造方法及び炭素繊維の製造方法〕
本発明の炭素繊維製造用アクリル繊維(プレカーサー)は、プレカーサーの原料アクリル繊維に上記のプレカーサー処理剤を付着させて製糸したものである。本発明のプレカーサーの製造方法は、プレカーサーの原料アクリル繊維に上記のプレカーサー処理剤を付着させて製糸する製糸工程を含むものである。
本発明の炭素繊維の製造方法は、プレカーサーの原料アクリル繊維に上記のプレカーサー処理剤を付着させて、プレカーサーを製糸する製糸工程と、その製糸工程で製造されたプレカーサーを200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する耐炎化処理工程と、前記耐炎化繊維をさらに300〜2000℃の不活性雰囲気中で炭化させる炭素化処理工程とを含むものである。
製糸工程は、プレカーサーの原料アクリル繊維にプレカーサー処理剤を付着させてプレカーサーを製糸する工程であり、付着処理工程と延伸工程とを含む。
付着処理工程は、プレカーサーの原料アクリル繊維を紡糸した後、プレカーサー処理剤を付着させる工程である。つまり、付着処理工程でプレカーサーの原料アクリル繊維にプレカーサー処理剤を付着させる。またこのプレカーサーの原料アクリル繊維は紡糸直後から延伸されるが、付着処理工程後の高倍率延伸を特に「延伸工程」と呼ぶ。延伸工程は高温水蒸気をもちいた湿熱延伸法でもよいし、熱ローラーをもちいた乾熱延伸法でもよい。
プレカーサーは、少なくとも95モル%以上のアクリロニトリルと、5モル%以下の耐炎化促進成分とを共重合させて得られるポリアクリロニトリルを主成分とするアクリル繊維から構成される。耐炎化促進成分としては、アクリロニトリルに対して共重合性を有するビニル基含有化合物が好適に使用できる。プレカーサーの単繊維繊度については、特に限定はないが、性能と製造コストのバランスから、好ましくは0.1〜2.0dTexである。また、プレカーサーの繊維束を構成する単繊維の本数についても特に限定はないが、性能と製造コストのバランスから、好ましくは1,000〜96,000本である。
プレカーサー処理剤は、製糸工程のどの段階でプレカーサーの原料アクリル繊維に付着させてもよいが、延伸工程前に一度付着させておくことが好ましい。延伸工程前の段階であればどの段階でも、例えば紡糸直後に付着させてもよい。さらに延伸工程後のどの段階で再度付着させてもよく、例えば、延伸工程直後に再度付着させてもよいし、巻取り段階で再度付着させてもよいし、耐炎化処理工程の直前に再度付着させてもよい。その付着方法に関しては、ローラー等を使用して付着してもよいし、浸漬法、スプレー法等で付着してもよい。
付着処理工程において、プレカーサー処理剤の付与率は、繊維−繊維間の膠着防止効果や融着防止効果を得ることと、炭素化処理工程において処理剤のタール化物によって炭素繊維の品質低下を防止することとのバランスからは、プレカーサーの重量に対して好ましくは0.1〜2重量%であり、さらに好ましくは0.3〜1.5重量%である。プレカーサー処理剤の付与率が0.1重量%未満であると、単繊維間の膠着、融着を十分に防止できず、得られる炭素繊維の強度が低下することがある。一方、プレカーサー処理剤の付与率が2重量%超であると、プレカーサー処理剤が単繊維間を必要以上に覆うため、耐炎化処理工程において繊維への酸素の供給が妨げられ、得られる炭素繊維の強度が低下することがある。なお、ここでいうプレカーサー処理剤の付与率とは、プレカーサー重量に対するプレカーサー処理剤の付着した不揮発分重量の百分率で定義される。
耐炎化処理工程は、プレカーサー処理剤が付着したプレカーサーを200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する工程である。酸化性雰囲気とは、通常、空気雰囲気であればよい。酸化性雰囲気の温度は好ましくは230〜280℃である。耐炎化処理工程では、付着処理後のアクリル繊維に対して、延伸比0.90〜1.10(好ましくは0.95〜1.05)の張力をかけながら、20〜100分間(好ましくは30〜60分間)にわたって熱処理が行われる。この耐炎化処理では、分子内環化および環への酸素付加を経て、耐炎化構造を持つ耐炎化繊維が製造される。
炭素化処理工程は、耐炎化繊維をさらに300〜2000℃の不活性雰囲気中で炭化させる工程である。炭素化処理工程では、まず、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中、300℃から800℃まで温度勾配を有する焼成炉で、耐炎化繊維に対して、延伸比0.95〜1.15の張力をかけながら、数分間熱処理して、予備炭素化処理工程(第一炭素化処理工程)を行うのが好ましい。その後、より炭素化を進行させ、且つグラファイト化を進行させるために、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中で、第一炭素化処理工程に対して延伸比0.95〜1.05の張力をかけながら、数分間熱処理して、第二炭素化処理工程を行い、耐炎化繊維が炭素化される。第二炭素化処理工程における熱処理温度の制御については、温度勾配をかけながら、最高温度を1000℃以上(好ましくは1000〜2000℃)とすることがよい。この最高温度は、所望する炭素繊維の要求特性(引張強度、弾性率等)に応じて適宜選択して決定される。
本発明の炭素繊維の製造方法では、弾性率がさらに高い炭素繊維が所望される場合は、炭素化処理工程に引き続いて、黒鉛化処理工程を行うこともできる。黒鉛化処理工程は、通常、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中、炭素化処理工程で得られた繊維に対して張力をかけながら、2000〜3000℃の温度で行われる。
このようにして得られた炭素繊維には、目的に応じて、複合材料とした時のマトリックス樹脂との接着強度を高めるための表面処理を行うことができる。表面処理方法としては、気相または液相処理を採用でき、生産性の観点からは、酸、アルカリなどの電解液による液相処理が好ましい。さらに、炭素繊維の加工性、取り扱い性を向上させるために、マトリックス樹脂に対して相溶性の優れる各種サイジング剤を付与することもできる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、ここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例に示されるパーセント(%)、部は特に限定しない限り、「重量%」、「重量部」を示す。各特性値の測定は以下に示す方法に基づいて行った。なお、実施例1及び2は、参考例1及び2とする。
<エステル混合物中の含硫黄エステル化合物(A1)と含硫黄エステル化合物(A2)の重量比の算出方法>
(1)ガスクロマトグラフィー分析
内部標準法によりエステル混合物1g中のチオジプロピオン酸含有量(S(g))を定量した。ガスクロマトグラフィー分析の分析条件は下記に示した。
機器:島津製作所製 GC―2010
カラム:J&W製TC−5 30m×0.25m
カラム温度:80〜300℃(昇温速度10℃/min)
インジェクション温度/検出器温度:300℃/300℃
検出器:FID
キャリアガス:ヘリウム
(2)エステル混合物中のチオジプロピオン酸の酸価(T(mgKOH/g))
S×112220/178.21=T
S:ガスクロマトグラフィー分析より求めたエステル混合物1g中のチオジプロピオン酸含有量(g)
(3)全酸価
エステル混合物をJIS K2501(2003年)に準拠して測定した。
(4)重量比の計算方法
含硫黄エステル化合物(A1):含硫黄エステル化合物(A2)
=(100―X):X
X:(A−T)×M/561.1
A:エステル混合物の全酸価(mgKOH/g)
T:エステル混合物中のチオジプロピオン酸の酸価(mgKOH/g)
M:含硫黄エステル化合物(A2)の分子量
<平均粒子径(乳化安定性)>
プレカーサー処理剤を透過率が90%以上になるように水で希釈し、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製LA−910)で測定された粒度分布より平均値を算出した。
<処理剤の付与率>
プレカーサー処理剤の付与率は、ソックスレー抽出器によるエタノール抽出法により算出した。但し、シリコーン系化合物を含む実施例11〜16、比較例1については、以下の方法で付与率を算出した。
処理剤付与後のプレカーサーを水酸化カリウム/ナトリウムブチラートでアルカリ溶融した後、水に溶解して塩酸でpH1に調整した。これを亜硫酸ナトリウムとモリブデン酸アンモニウムを加えて発色させ、ケイモリブデンブルーの比色定量(波長815mμ)を行い、ケイ素の含有量を求めた。ここで求めたケイ素含有量と予め同法で求めた処理剤中のケイ素含有量の値を用いて、プレカーサー処理剤の付与率(重量%)を算出した。
<繊維−繊維間の摩擦>
炭素繊維ストランドを図1に示す繊維−繊維摩擦測定機にセッティングし、撚り存在下(撚り回数2回)荷重により50gの初期張力をかけて30cm/分の速度で引っ張った時の張力(g)を繊維−繊維摩擦力とした。
<繊維‐金属間の摩擦>
炭素繊維ストランドを脱脂後に、処理剤付与量(OPU)が1.0重量%となるよう各処理剤を付与し、走糸法摩擦測定機を使用して測定した張力(g)を繊維−金属摩擦力とした。
<測定条件>
糸速:50m/min
荷重:50g
摩擦体:梨地クロムピン
<耐擦過性>
TM式摩擦抱合力試験機TM−200(大栄科学精機社製)により、ジグザクに配置した鏡面クロムメッキステンレス針3本を介して50gの張力で炭素繊維ストランドを1000回擦過させ(往復運動速度300回/分)、炭素繊維ストランドの毛羽立ちの状態を下記基準で目視判定した。
◎:擦過前と同じく毛羽発生が全く見られない
○:数本の毛羽が見られるが耐擦過性良好
△:毛羽立ちがやや多く若干耐擦過性に劣る
×:毛羽立ちが多く、著しい単糸切れが見られる 耐擦過性不良
<製糸操業性(ローラー汚れ)>
プレカーサー50kgに処理剤を付与した後の乾燥ローラーの汚染度合い(ガムアップ)を下記の評価基準で判定した。
◎ :ガムアップによるローラー汚染が無く、製糸操業性問題無し
○ :ガムアップによるローラー汚染が少なく、製糸操業性問題無し
△ :ガムアップによるローラー汚染があり、やや製糸操業性に劣る
× :ガムアップによるローラー汚染が著しく、製糸時に単糸取られ、捲き付きあり
<融着防止性>
炭素繊維から無作為に20カ所を選び、そこから長さ10mmの短繊維を切り出し、その融着状態を観察し、下記の評価基準で判定した。
◎:融着無し
○:ほぼ融着無し
△:融着少ない
×:融着多い
<炭素繊維強度>
JIS-R-7601に規定されているエポキシ樹脂含浸ストランド法に準じ測定し、測定回数10回の平均値を炭素繊維強度(GPa)とした。
〔実施例1〕
含硫黄エステル化合物(A1)である下記エステル化合物a1を、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン7mol付加アルキルエーテル(アルキル基の炭素数は12〜14)、ポリオキシエチレン12mol付加トリスチレン化フェニルエーテル、およびエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド(50/50)ブロック共重合体)により水系乳化し、処理剤不揮発分組成として、エステル化合物a1/非イオン性界面活性剤=70/30の重量比率よりなる処理剤エマルジョン(プレカーサー処理剤)を得た。なお、処理剤不揮発分濃度は3.0重量%とした。
この処理剤エマルジョンをプレカーサー(単繊維繊度0.8dtex,24,000フィラメント)に付与率1.0重量%となるように付着し、100〜140℃で乾燥して水分を除去した。この処理剤付着後のプレカーサーを250℃の耐炎化炉にて60分間耐炎化処理し、次いで窒素雰囲気下300〜1400℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維に転換した。各特性値の評価結果を表1に示す。
〔実施例2〜10及び比較例1〜7〕
実施例1において、それぞれ表1、2、4に示す処理剤不揮発分組成(重量%)になるように、処理剤エマルジョンを調製した以外は、実施例1と同様にした。その評価結果を表1、2、4に示す。
〔実施例11〕
含硫黄エステル化合物(A1)と含硫黄エステル化合物(A2)のエステル混合物である下記エステル混合物a5、下記シリコーン系化合物b1を非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン7mol付加アルキルエーテル(アルキル基の炭素数は12〜14)、ポリオキシエチレン12mol付加トリスチレン化フェニルエーテル及びエチレンオキサイド/プロピレンオキサイド(50/50)ブロック共重合体)により水系乳化し、処理剤不揮発分組成として、エステル混合物a5/シリコーン系化合物b1/非イオン性界面活性剤=50/20/30の重量比率よりなる処理剤エマルジョン(プレカーサー処理剤)を得た。なお、処理剤不揮発分濃度は3.0重量%とした。
この処理剤エマルジョンをプレカーサー(単繊維繊度0.8dtex,24,000フィラメント)に付与率1.0重量%となるように付着し、100〜140℃で乾燥して水分を除去した。この処理剤付着後のプレカーサーを250℃の耐炎化炉にて60分間耐炎化処理し、次いで窒素雰囲気下300〜1400℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維に転換した。各特性値の評価結果を表3に示す。
〔実施例12〜16〕
実施例11において、それぞれ表3に示す処理剤不揮発分組成(重量%)になるように、処理剤エマルジョンを調製した以外は、実施例11と同様にした。その評価結果を表3に示す。
なお、下記のエステル混合物の例示及び表1〜4において、「A1:A2」は、含硫黄エステル化合物(A1)と含硫黄エステル化合物(A2)との重量比(A1:A2)を示し、「(A1+A2):B」は、含硫黄エステル化合物(A1)及び含硫黄エステル化合物(A2)の合計と変性シリコーン(B)との重量比((A1+A2):B)を示す。
〔含硫黄エステル化合物(A1)〕
a1:チオジプロピオン酸ジ(n−ドデシル)エステル
a2:チオジプロピオン酸ジ(2−ヘキシルデシル)エステル
なお、表1〜4において、含硫黄エステル化合物(A1)はエステル化合物A1と示す。
〔含硫黄エステル化合物(A1)と含硫黄エステル化合物(A2)のエステル混合物〕
a3:チオジプロピオン酸ジ(n−ドデシル)エステルとチオジプロピオン酸モノ(n−ドデシル)エステルの混合物(A1:A2=95:5)
a4:チオジプロピオン酸ジ(2−ヘキシルデシル)エステルとチオジプロピオン酸モノ(2−ヘキシルデシル)エステルの混合物(A1:A2=99.6:0.4)
a5:チオジプロピオン酸ジ(2−ヘキシルデシル)エステルとチオジプロピオン酸モノ(2−ヘキシルデシル)エステルの混合物(A1:A2=95:5)
a6:チオジプロピオン酸ジ(2−ヘキシルデシル)エステルとチオジプロピオン酸モノ(2−ヘキシルデシル)エステルの混合物(A1:A2=85:15)
a7:チオジプロピオン酸ジ(2−ヘキシルデシル)エステルとチオジプロピオン酸モノ(2−ヘキシルデシル)エステルの混合物(A1:A2=75:25)
なお、表1〜4において、含硫黄エステル化合物(A1)と含硫黄エステル化合物(A2)のエステル混合物は単にエステル混合物A1・A2と示す。
〔変性シリコーン(B)〕
b1:アミノ変性シリコーン(25℃粘度:1300mm2/s、アミノ当量:2000g/mol、変性タイプ:ジアミン)
b2:アミノ変性シリコーン(25℃粘度:4500mm2/s、アミノ当量:1000g/mol、変性タイプ:ジアミン)
b3:アミノ変性シリコーン(25℃粘度:120mm2/s、アミノ当量:5000g/mol、変性タイプ:モノアミン)
〔エステル化合物(C)〕
c1:ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物のジラウリルエステル
c2:チオジプロピオン酸ジ(n−オクチル)エステルとチオジプロピオン酸モノ(n−オクチル)エステルの混合物(ジエステルとモノエステルと重量比は95:5)
c3:チオジプロピオン酸ジオレイルエステルとチオジプロピオン酸モノオレイルエステルの混合物(ジエステルとモノエステルと重量比は95:5)
c4:チオジプロピオン酸ジ(n−オクチル)エステル
c5:チオジプロピオン酸ジオレイルエステル
c6:チオジプロピオン酸モノ(2−ヘキシルデシル)エステル
Figure 0005528649
Figure 0005528649
Figure 0005528649
Figure 0005528649
表1〜4にあるように、実施例のプレカーサー処理剤を処理した炭素繊維は、いずれも繊維間の融着防止と安定した操業性とを両立させることができ、さらには、繊維の断糸や、毛羽の発生を抑制し、炭素繊維強度についても非常に良好な結果が得られた。
一方、比較例のプレカーサー処理剤を処理した炭素繊維は、比較例1のように、炭素繊維強度は比較的良好であるが、ローラー汚れが発生し安定した操業性を得られない場合や、比較例2、3、5のように、繊維−金属摩擦が高く、耐擦過性が悪化し炭素繊維強度が劣ることがわかる。特に比較例2、5では、平均粒子径がやや大きい為に、繊維に処理剤を均一に付着させることができずに、処理剤の性能を発揮できなかったと考えられる。また、比較例4、6、7はエステル成分がタール化し繊維の融着が多く発生し炭素繊維強度が劣る結果になった。特に比較例7では繊維−繊維間摩擦が低くなり、集束性不足が発生し、処理剤の性能を発揮できなかったと考えられる。
本発明の炭素繊維製造用アクリル繊維処理剤は、炭素繊維製造用アクリル繊維を製造する際に使用される処理剤であり、高品位の炭素繊維を製造するために有用である。本発明の炭素繊維製造用アクリル繊維は、本発明の処理剤が処理されており、高品位の炭素繊維を製造するために有用である。本発明の炭素繊維の製造方法によって、高品位の炭素繊維が得られる。
1 張力測定器
2 ガイドローラー
3 荷重
4 炭素繊維ストランド

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)で示される含硫黄エステル化合物(A1)、下記一般式(2)で示される含硫黄エステル化合物(A2)、界面活性剤及び水を含有し、前記含硫黄エステル化合物(A1)と前記含硫黄エステル化合物(A2)との重量比(A1/A2)が99.9/0.1〜50/50である、炭素繊維製造用アクリル繊維処理剤。
    Figure 0005528649
    (式中、m及びnは、それぞれ独立して、1〜4の整数であり、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数12〜16の炭化水素基である。)
    Figure 0005528649
    (式中、m及びnは、それぞれ独立して、1〜4の整数であり、Rは炭素数12〜16の炭化水素基である。)
  2. 処理剤の不揮発分に占める前記含硫黄エステル化合物(A1)及び前記含硫黄エステル化合物(A2)の合計の重量割合が30〜98.9重量%であり、前記界面活性剤の重量割合が1〜40重量%である、請求項1記載の処理剤。
  3. 窒素原子を含む変性基を持つ変性シリコーン(B)をさらに含有する、請求項1又は2に記載の処理剤。
  4. 前記含硫黄エステル化合物(A1)及び前記含硫黄エステル化合物(A2)の合計と前記変性シリコーン(B)との重量比((A1+A2)/B)が99.9/0.1〜50/50である、請求項に記載の処理剤。
  5. 前記変性シリコーン(B)がアミノ変性シリコーンである、請求項又はに記載の処理剤。
  6. 水中に分散したエマルジョンとなっている、請求項1〜のいずれかに記載の処理剤。
  7. 炭素繊維製造用アクリル繊維の原料アクリル繊維に、請求項1〜のいずれかに記載の処理剤を付着させて製糸した、炭素繊維製造用アクリル繊維。
  8. 炭素繊維製造用アクリル繊維の原料アクリル繊維に請求項1〜のいずれかに記載の処理剤を付着させて製糸する製糸工程を含む、炭素繊維製造用アクリル繊維の製造方法。
  9. 炭素繊維製造用アクリル繊維の原料アクリル繊維に請求項1〜のいずれかに記載の処理剤を付着させて、炭素繊維製造用アクリル繊維を製糸する製糸工程と、その製糸工程で製造された炭素繊維製造用アクリル繊維を200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する耐炎化処理工程と、前記耐炎化繊維をさらに300〜2000℃の不活性雰囲気中で炭化させる炭素化処理工程とを含む、炭素繊維の製造方法。
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