JP4305447B2 - 積層体、記録材料及びそれらの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、セルロース繊維を主体とする紙支持体を含む積層体、記録材料及びこれらの製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、紙支持体の表面平滑性を改良しようというものであり、さらに、表面の吸水性、印刷適性などの基本性能や、紙そのものの剛性など力学的な物性も、従来にない飛躍的な向上を可能とする微細な繊維を含む層を有する積層体及びインクジェット記録紙である。
近年、コンピューターの性能向上及びコンピューターの普及とともに、各種のハードコピー方式が提案されてきた。ハードコピーの記録方式としては、昇華転写記録方式、電子写真方式、溶融熱転写方式、インクジェット方式等が知られている。
インクジェット方式は、ノズルから被記録紙に向けてインク液滴を高速で吐出する方式である。この方式のプリンターは、カラー化、小型化が容易であること、印字音が低いこと、装置の構造が簡単でメンテナンスしやすいこと等の利点から、オフィスや家庭で、パーソナルコンピューター等の端末として急速に普及してきている。装置性能の向上も著しく、画像品質の向上が著しく進み、銀塩写真に迫る勢いである。
インクジェット方式による印刷は、プリンターの装置性能だけでなく、インクの性質、記録材の性質等によって画像品質が大きく変化するため、記録材の選定が品質決定の重要な要素となる。更にはインクと記録材との依存性が高いので、個々の材料選定だけでなく、その組み合わせの仕方も品質決定の要素になる。
インクジェットに使われているインク成分は、染料系インクと顔料系インクに大別され、またそれぞれが水性インクと油性インクとに分けられる。
染料系の水性インクとして、水溶性の直接染料、酸性染料、塩基性染料、食用色素などが主として使われるが、その他に、2度印字を記録紙上で行ない反応硬化させるプロセスで使われる反応型染料もある。その他のインク構成材料としては界面活性剤、染料溶解剤、粘度調整剤、PH調整剤、防カビ剤、乾燥速度調整剤があり、必要に応じて組み合わせて使われる。また、油性インクとしては、油溶性染料とオイルを主成分とした油性インクジェットなどがある。
顔料系の水性インクは、顔料の超微分散粉末を界面活性剤等を用いて水分散させたもので、染料系インクと同様に粘度調整剤、PH調整剤、防カビ剤、乾燥速度調整剤等を必要に応じて組み合わせて使われる。
これらの各種インクを受容する記録材の性質として重要なのは、表面の均一性とインク吸収性であり、これら2つの性質によって印字の品質(記録性)が影響を受ける。
しかし、インクジェット記録紙に用いられている紙、板紙などの紙支持体は、一次元のセルロース繊維を構成要素として集合させ、二次元素材としたものであり、紙支持体の表面の均一性は、その構成要素、例えばセルロース繊維の太さ、長さ、集合状態の不均一性などに支配されている。そのため、紙支持体は通常、数十ミクロンから数百ミクロンあるいは数ミリにも及ぶ空隙を有している。
このような空隙は、紙支持体の表面均一性を損ない、塗工やインクジェット記録等の印刷をする際、様々な問題を引き起こす。例えば、空隙が紙支持体の厚み方向にわたって形成され、貫通孔が形成されると、紙支持体の表面に塗工やインクジェット記録を行ったとき、表面と反対側の面にまでインキが達し、印字の裏抜けやロール汚れなど面欠陥を引き起こす。
また、貫通孔とならないまでも、セルロース繊維の集合状態の不均一性に由来して、紙支持体の表面に空隙分布が発生すると、インクジェット記録等の印刷や表面加工の際に、記録面が不均一になったり、表面加工がうまくいかないようなことが起こる。この一因としては、表面に空隙がある部分とない部分とでは、紙支持体表面に吸液性の高い部分と低い部分とが出来てしまい、水やインクがしみこむ際に量的なばらつきが生じる結果、記録したときにムラが発生することが挙げられる。
そのため、グラビア印刷などの美粧印刷を紙そのものに施そうなどとは考えもされず、そのような美粧印刷は多量の無機系材料を紙支持体に塗工して空隙を埋める処方を施したアート紙、コート紙等に施されているだけである。
したがって、紙支持体表面の不均一性及び表面平滑性を改善することは、紙支持体の製造における抄紙の基本技術課題として現在も多くの資金と知恵が注がれている。
例えば、従来より、紙支持体表面におけるセルロース繊維の集合状態の不均一性を回避する目的で、抄紙する際に、セルロース繊維の表面から微細な繊維素を生じさせ、繊維間の結合力を強める叩解処理が行われている。さらに、この繊維を出来るだけ均一に分布させてシート形成させるために、抄紙機ワイヤー上での機械的振動を起こしたり、脱水工程に工夫が施されている。
しかし、このような処理によっては、本当にランダムな配向性を繊維同士が示すような、充分な表面均一性を有する紙支持体を得ることができなかった。また、叩解処理によりセルロース繊維が切断されて短繊維化し、紙支持体の剛性が低下するなどの問題もあった。
また、紙支持体の表面均一性を高めるために、紙支持体の抄紙段階で微細な繊維や顔料を添加して、セルロース繊維の形成する空隙を埋めたり、抄紙後、あるいは湿紙状態でサイズプレスやゲートロールで紙に顔料を表面塗工したり、できあがった紙に樹脂や顔料を含む塗工液を含浸あるいは塗工して空隙を埋めようという方法も一般的に行われている。
例えば、特開昭58−214595号公報、特開平4−194097号公報、特開2001−288692号公報には紙支持体の表面に微細化パルプ等の微細繊維を塗布することが開示されている。これらの微細繊維は、繊維長が非常に短く、数ミクロン〜数百ミクロン程度であり、空隙内部に入って空隙を埋めることにより、表面平滑性を改善すると考えられる。
しかし、いずれの方法も、充分な表面平滑性を有する紙支持体を得ることは困難である。例えば特開昭58−214595号及び特開平4−194097号の場合、空隙を充分に充填できる量の微細繊維を塗布しなければ、空隙が充分に埋まらず、紙支持体の表面平滑性を改善できない。そのため、その上に単純に印刷しようとしても良好な印刷面は得られない。したがって、塗工液や微細繊維の量を必要以上に多量にしたり、紙の抄紙後や塗工液の塗布後、強力な圧力を印加したキャレンダーロール間を多数回通したりする必要があり、材料費のみならず、乾燥の負荷の上昇や過大な設備が必要となる。
その一方で、空隙を完全に埋めると、インク吸収性やインク乾燥性などの印字特性が低下してしまうという問題も生じるため、多量の塗工液を塗工することは望ましくない。また、インクジェット記録紙においては、薄くて腰のある用紙が要求されるが、均一な表面の紙支持体を得るためにキャレンダーロール等により圧力をかけてプレスすると、得られる紙支持体は、厚みの低下によって剛性が低下してしまい、この要求に応じられないものとなる。したがって、限られた坪量で充分な表面均一性を有する紙支持体を得ることは困難であるのが現状である。
また、多量に積層して表面平滑性をよくすることも出来るが、空隙部分に充填された微細繊維の量とセルロース上に積層された微細繊維量に大幅な差が出来るため、印刷した場合インク吸収性に大幅な差が出来良好な印刷面は得られない。さらに、多量に処理した場合、強力な圧力を加えたキャレンダーロール間を多数回通したりする必要があり、材料費のみならず、乾燥の負荷の上昇や過大な設備が必要となる。
サイズプレスやゲートロールで微量の樹脂や顔料を塗工して平滑性とインク受理性を良くしようとすることも通常行われることではあるが、上記微細繊維と同じように微少な量でセルロース繊維間の空隙を埋めることは出来ず、単に表面平滑性を得ようとして、空隙を完全に埋めると、樹脂皮膜のバリアー性が高いためインク受理性やインク乾燥性などの印刷特性が低下してしまうという問題も生じ、多量の塗工液を塗工することは望ましくない。
また、新聞用紙や印刷用紙などの用紙においては、薄くて腰のある用紙が要求されるが、平滑な表面の紙支持体を得るためにキャレンダーロール等により圧力をかけてプレスすると、得られる紙支持体は、厚みの低下によって剛性が低下してしまい、この要求に応じられないものとなる。したがって、充分な表面平滑性を有する紙支持体を得ることは困難であるのが現状である。
このように、今までの各種の方法は長い技術の歴史の上に立って進歩しているが、革新的な技術進歩とは言い難い側面をもっており、表面平滑性の高い紙支持体を製造することは困難であった。
一方、インクジェット記録紙のインク吸収性を改善することにより記録性を向上させる方法も数多く提案されている。
例えば特開2001−205921号公報では、インク滲みによるドット歪みのない高品位の画像のインクジェット用紙を得るために、インクジェット用紙の主要材料である製紙用パルプ自身に吸水性物質、水溶性物質を化学修飾させることにより、ドット径の良好な優れたインクジェット用紙を得る方法が記載されており、また、特開平7−61110号公報では、インク受容性及び印字品位の向上のため、無塩素漂白のパルプを用いる方法が記載されており、特開平10−100533号公報では、インクジェット記録紙中への着色剤の浸透を都合よく、且つ経済的に低減させ、それによってインキセットを再生できる色域を増大させ、インクを紙表面に安定に保持できるインクジェット用紙を得るために、パルプ繊維のピット(pit、細胞の壁孔)内に、インクの着色剤を溶解するか又は分散させるインク媒質の分散作用を止めさせる金属塩を都合よく供給する方法がそれぞれ提案されている。
これらの方法は、パルプシートを主体とする非塗工紙にインクジェットの適性を付与させようとするものである。しかしながら、いずれの方法も抄紙段階のパルプの集合状態を制御するのでなく、化学的にパルプ表面を修飾してインキのなじみをよくしようとする物であり、その効果には限界がある。
また、最近では、水性インクジェット方式のプリンター性能のうち、特にプリント速度、解像度、彩度等の向上によって、インクジェット記録紙に対しても優れた色彩と画像の鮮明性、高速印字性、高吸収性、インキ滲みが少ない等の高度な記録性が要求されるようになっている。これに対応するため、インク受容層を特別に支持体表面に設けたインクジェット記録紙の開発努力がなされている。
例えば特開平10−309863号公報、特開平10−329409号公報には、プライマー層を設けた後、その表面に吸水性樹脂層を設ける2層構成で、高い水性インク吸収性、色再現性及び高い濃度を持つインクジェット記録紙を製造することが開示されている。特開昭55−5830号公報には、支持体表面にインク吸収性の塗膜を設けたインクジェット記録紙が開示されている。また、特開昭55−11829号公報では、インク吸収速度の異なる2層構造を持つ塗工紙が開示されている。
このようなインク受容層を支持体表面に設けたインクジェット記録紙の場合、インク受容層を形成する塗工液が紙支持体に浸透して固定化される。しかしながら、その塗工液の浸透度合いは、紙支持体内のセルロース繊維の分散不均一性に依存しており、むらがある。そのため、例えば、セルロース繊維が集中していない部分では、インク受容に十分すぎる被覆膜厚になって、記録濃度が低下したり、セルロース繊維が集中している部分では、受容したインク量に不十分な膜厚になり、にじみや乾燥不足でプリンター走行時に汚れるなどの不具合が発生する。
このように、インクジェット記録紙には、その表面に顔料や合成樹脂を含む塗工液を多量に塗工したり、サイズプレス、含浸などの手法を用いて、その表面性をより均一化する処理や、パルプの化学的修飾や支持体上にインク受容層を形成することによりインク吸収性を向上させる処理が行われている。しかしながら、これらの方法は長い技術の歴史の上に立って進歩しているものの、革新的な技術進歩とは言い難い側面をもっており、いまだ、表面均一性とインク吸収性が共に良好なインクジェット記録紙は得られていない。
一方、近年、半導体などの固体物理学の分野では、ナノテクノロジーの研究、開発が盛んに行われている。その1つとして、最近、質量分析法で用いられているエレクトロスプレー法という技術を、ナノファイバーのようなミクロンオーダー以下の繊維からなる不織布の製造技術に応用することが研究されるようになっている。例えば、繊維学会誌Vol.59,No.1 p3(2003)、及び高分子論文集Vol.59,No.11,pp.706−709(Nov.,2002)には、エレクトロスプレー法を用いたナノファイバーやそれを利用した薄膜コーティング技術が紹介されている。また、特開2000−508008号公報には、電圧印加条件下で溶液を油滴にして噴霧して基材表面をコーティングする方法が記載されている。これらは、それ単独で不織布にしたり、織り布や不織布を基材としてその表面にナノファイバー層を形成してフィルターを作ろうと言うものであったり、基材表面を液滴で覆った後に乾燥して皮膜を得ようとするものであり、そこには本発明の概念は存在しない。
エレクトロスプレー法とは、2〜20kV程度の高電圧を高分子溶液の入ったノズルの先端と基盤上との間に加え、荷電した高分子をノズルの先端から噴射して基盤上にデポジットさせる方法であり、この方法による不織布の製造法はエレクトロスピニング法と呼ばれている。
エレクトロスピニングの方法は特許文献米国特許第4043331号、米国特許第4044404号、米国特許第1975504号等が最初と言われており、その歴史は古いが、工業的に検討された例はほとんどない。1990年代初頭にアメリカで、生物兵器用のガスフィルターを製造するための軍事研究の1つとして研究されており、その他にもエレクトロスピニング技術に関する様々な報告がなされている。例えば、米国特許第6110590号、米国特許第6308509号、米国特許第6382526号には、各種のナノファイバーやそれを製造する方法としてエレクトロスピニング法が紹介されている。また、Journal of Polymer Science:Partb:Polymer Physics,Vol.37,3488−3493(1999)には、エレクトロスピニングでナノファイバーを製造する際に好適な材料として、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体が研究されている。
しかしながら、フィルターなどの機能性不織布部材という概念での応用例しかなく、米国特許US2002/0192468号、米国特許US2002/0100725号には紙素材やろ紙の上に微細繊維を形成する技術が公開されているが、フィルターあるいはフィルター装置への応用であり、エレクトロスピニング技術を紙パルプ産業に応用するということは考えられていないのが実情である。
したがって、本発明は、全く新しい概念による表面平滑性の高い積層体及び記録材料並びにエレクトロスピニング法を用いた積層体及び記録材料の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、
(1)紙支持体の表面に、微細な長繊維を含む層が積層された積層体(記録材料)が、表面平滑性の高いものであること、及び
(2)該積層体(記録材料)の製造方法として、オリフィスを備えた容器内に充填された長繊維の原料溶液に接する電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、前記オリフィスから前記原料溶液を噴射し、前記電極板上に配置された紙支持体表面に、長繊維を含む層を形成する方法が好適であることを見いだし、本発明を完成させた。
この積層体は、表面平滑性が良好であるだけでなく、剛性向上や低密度化、表面におけるインク受理性など印刷特性の不均一性の改善も可能である。
この積層体(記録材料)は、表面均一性とインク吸収性が良好であるだけでなく、剛性向上や低密度化、表面におけるインク受理性など印字特性の不均一性の改善も可能である。
すなわち、本発明は以下の実施様態を含む。
(1) セルロース繊維を主体とする紙支持体と、該紙支持体の少なくとも片面に積層される微細な長繊維を含む層とからなる積層体。
(2) 前記長繊維が、1nm〜10μmの繊維径と、1mm以上の長さを有する(1)記載の積層体。
(3) 前記長繊維が網目構造を形成している(1)又は(2)に記載の積層体。
(4) 印刷用であって、前記長繊維が、少なくとも1種の撥インク性高分子を含む(1)〜(3)のいずれかに記載の積層体。
(5) 前記長繊維が水素結合形成可能な官能基を有する直鎖状高分子であり、該官能基が分子量40〜5000の化合物と化学的に結合している(1)〜(4)のいずれかに記載の積層体。
(6) オリフィスを備えた容器内に充填された長繊維の原料溶液に接する電極と前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら前記オリフィスから前記原料溶液を噴射する工程と、噴射された前記原料溶液により前記電極板上に配置された紙支持体表面に長繊維を含む層を形成する工程とを含む積層体の製造方法。
(7) セルロース繊維を主体とする紙支持体と、該紙支持体の少なくとも片面に積層される微細な長繊維を含む層とからなる記録材料。
(8) 前記長繊維が、1nm〜10μmの繊維径と、1mm以上の繊維長さを有する(7)記載の記録材料。
(9) 前記長繊維が網目構造を形成している(7)又は(8)に記載の記録材料。
(10) 印刷用であって、前記長繊維が、少なくとも1種の撥インク性高分子を含む(7)〜(9)のいずれかに記載の記録材料。
(11) 前記長繊維を含む層の上に積層される塗工層をさらに含む(7)〜(10)のいずれかに記載の記録材料。
(12) 前記長繊維が水素結合形成可能な官能基を有する直鎖状高分子であり、該官能基が分子量40〜5000の化合物と化学的に結合している(7)〜(11)のいずれかに記載の記録材料。
(13) (7)〜(12)のいずれかに記載の記録材料からなるインクジェット記録紙。
(14) オリフィスを備えた容器内に充填された長繊維の原料溶液に接する電極と前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、前記オリフィスから前記原料溶液を噴射する工程と、噴射された前記原料溶液により前記電極板上に配置された紙支持体表面に長繊維を含む層を形成する記録材料の製造方法。
図1A〜Cは長繊維の網目構造の一例を示す模式図である。
図2A及びBは本発明において好ましく用いられるエレクトロスピニング装置の概略図である。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の積層体(記録材料、インクジェット記録紙)は、セルロース繊維を主体とする紙支持体の片面又は両面に、微細な長繊維を含む層(以下、長繊維層という)が積層されているものである。
このような長繊維を含む長繊維層が紙支持体表面に積層されていることにより、空隙によって紙支持体表面に形成される細孔が、長繊維によって橋掛けされ、紙支持体の表面平滑性が改善される。また、例えばインクジェット記録等の印刷を行った際に細孔の上にインクが受容された場合でも、該細孔上の長繊維によってインクが受理されるため、インク吸収性が向上し、インクジェット記録等の印刷特性が改善される。
また、従来の塗工液が塗布されたものとは異なり、橋掛けされて層が形成されるため空隙内部が閉塞されないので、水やインクなどの液体の吸収性(液吸収性)もよい。また、軽量で、通気性もよい。
また、紙支持体は本来的に不均一な大きさの空隙を有しているため、紙支持体表面には、部位によって吸湿性やインク吸収性などの液吸収性にばらつきがある。しかし、本発明においては、長繊維の材料の種類や物性を選択することにより、液吸収性を均一化することが出来る。例えば、印刷をする場合、水性インクを用いる場合には疎水性の材料を用い、油性インクを用いる場合には親水性の材料を用いるなど、撥インク性の材料を用いれば、長繊維層がバリアーとなって、過剰なインク吸収を抑えることができる。また、該層上に塗工層を設けてもよい。
また、このような長繊維層の上にさらに塗工層が設けられているインクジェット記録紙においては、長繊維層の表面均一性が高く、液吸収性が均一であるため、その上に形成されるインク受容層の表面及び膜厚も均一なものである。したがって、にじみがなくドット再現性がよく、走行性等の記録特性にも優れている。
さらに、この長繊維層により、紙支持体の剛性も向上する。例えば、長繊維層の材料として剛性のある材料を選択することにより、紙支持体内部の密度や構造がどうであれ、紙支持体の剛性が飛躍的に向上する。
本発明において、紙支持体に含まれるセルロース繊維としては、各種パルプを用いて抄紙した紙であればどのようなものでも良い。パルプの種類としては針葉樹、広葉樹をクラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法などで蒸解した化学パルプ繊維、レファイナー、グラインダーなどの機械力によってパルプ化した機械パルプ繊維、薬品による前処理の後、機械力によってパルプ化したセミケミカルパルプ繊維、あるいは古紙パルプ繊維、ECFパルプ繊維、TCFパルプ繊維などを例示でき、それぞれ未晒もしくは晒の状態で使用することができる。草本類から製造される非木材繊維としては、例えば綿、マニラ麻、亜麻、藁、竹、パガス、ケナフなどを木材パルプと同様の方法でパルプ化した繊維が挙げられる。
本発明において、「セルロース繊維を主体とする紙支持体」とは、基本的にセルロース繊維によって構成される紙支持体であり、これらのセルロース繊維の他に、その特性を損なわない範囲でアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維等の無機繊維やアラミド繊維、ポリアリレート繊維、高強度ポリオレフィン繊維(例えば高重合度ポリエチレン繊維と呼ばれる高強度繊維等)の有機繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニリデン繊維などの合成樹脂繊維を含んでも良いものである。セルロース繊維は、紙支持体を構成する総固形分に対し、50質量%以上含まれていることが好ましい。これらの繊維を一次元素材として二次元のシートとした紙支持体は湿式抄紙で得られる紙や板紙であり、その坪量は問わない。また、一般に市販されているものが使用可能である。また、これらのパルプにサイズ剤、紙力剤、歩留まり向上剤等の薬品や、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ等の填料を内添及び/又は外添することができる。また、必要であれば紙支持体上にポリエチレン樹脂などの熱可塑性樹脂を溶融ラミした支持体も使用できる。
本発明における「微細な長繊維」とは、紙支持体を構成するセルロース繊維の繊維径よりも小さい繊維径を有し、かつ紙支持体中に形成される空隙により紙支持体表面に形成される開口部(細孔)の直径よりも長い繊維長を有する繊維である。長繊維の繊維径が、紙支持体のセルロース繊維の繊維径よりも小さいことにより、表面平滑性の高い積層体、記録材料またはインクジェット記録紙となる。
長繊維は、径方向の断面形状が、円形や楕円、扁平、星形などの様々な形状を有していてよいが、少ない層の厚みで平滑性を得るには、高いアスペクト比(紙支持体表面に対する水平方向の径/垂直方向の径)を有する平板状の断面を有するようなものが好ましい。長繊維の形状が複雑になるほど、長繊維の比表面積が大きくなる。長繊維の比表面積が大きいほど、該長繊維層に吸収されるインクの量(インク受容量)が大きくなり、用途によっては好ましい。本発明において、長繊維層の比表面積としては、10〜1000m/gであることが好ましく、100〜500m/gであることがより好ましい。
また、長繊維の繊維径、すなわち長繊維の断面の外周をすべて含む円で近似した繊維径は、紙支持体のセルロース繊維の繊維径よりも小さければ特に制限はないが、好ましくは1nm〜10μm、より好ましくは10nm〜1μmである。また、長繊維の繊維径は紙支持体のセルロース繊維の繊維系の1/2以下、好ましくは1/5以下、より好ましくは1/10以下である。長繊維の繊維径がこの範囲内であると、表面平滑性が高く、吸液性が均一な、印刷適性の良い積層体及び記録材料となる。また、繊維径が200nm以下好ましくは100nm以下であれば、繊維径が光の波長より小さいものとなるため、ほとんど透明の長繊維が得られる。長繊維の繊維系がセルロース繊維の繊維系の1/2を超えて大きくなると、表面平滑性向上の効果が期待できない。このような透明な長繊維を含む層で紙支持体の表面を覆うと、紙支持体本来の色や、奥行き、感触などの紙の持つ感性的な特性を損なうことなく積層体(記録材料)にすることが出来、ファンシーペーパーなどの本来必要な外観や風合いを損なうことなく平坦な面に印刷できるなど、従来技術では想像の出来ないような特性が得られる。
また、長繊維の繊維長は、紙支持体の細孔の直径よりも長ければ特に制限はないが、1mm以上の長さを有するものであれば、紙支持体表面に存在するほぼ全ての細孔に対する橋掛けが可能となるので好ましい。ここで言う繊維長とは、ある着目した繊維を一筆書きの要領でたどった場合の長さである。本発明では、1mm以上の長さを有していれば、セルロース繊維間を橋掛けして覆うことができ、均一な長繊維層となる。また、長繊維の長さが長いほど、折り畳まれた長繊維の集合体が形成されるため長繊維層による表面平滑性改善効果が高くなる。
なお、実際の長繊維層は、様々な繊維径及び繊維長の長繊維を複数含有していることが多いが、製造時の条件を選べば、含有する長繊維を均一なものに近づけることが出来る。
長繊維層の厚さは、坪量として0.01g/m〜30g/mの厚みにすることが好ましい。より好ましくは0.1g/m〜10g/mである。さらに好ましくは0.5g/m〜3g/mである。長繊維層の厚さをこの範囲内とすることにより、紙支持体表面の細孔や凹凸等を解消し、表面平滑性を改善することができる。また、剛性も改善される。坪量が0.01g/m以下になると、長繊維による紙支持体の細孔の橋かけ数が不足し表面平滑性向上の効果が得られない。また、30g/mを超えると、表面平滑性向上の効果が小さくなり不経済ばかりか、長繊維層の細孔が非常に緻密になりインク吸収性が極端に低下する場合があり好ましくない。
なお、長繊維層は、その上に新たに塗工層を設けない場合には0.1〜10μm程度の厚さで十分な表面均一性及びインク吸収性を有している。しかし、長繊維層だけで十分なインク吸収性を得ようとすれば繊維径が100nm以下のより細い長繊維を用い、長繊維層の厚さを20〜60μm程度とすると、非常に高い比表面積を有する長繊維層となる。このような長繊維層を設けることにより、さらに表面均一性及びインク吸収性が向上し、非常に高度な記録性を有するインクジェット記録紙とすることができる。
長繊維層中において、長繊維は、互いに全く重ならない状態(単繊維)で存在していてもよいが、網目構造を形成していることが好ましい。長繊維が網目構造を形成していることにより、表面平滑性がさらに向上する。また、引張り強度や、引き裂き強度、破裂強度など紙支持体表面の力学特性が向上する。
網目構造としては、例えば、図1A〜Cに示すような構造を例示することができる。
図1Aに示す網目構造は、1本ないし2本以上の直線状の長繊維が複数の交点を介して折り重なった格子状の構造である。この場合は、細い繊維径で構成されているため紙の表面の凹凸を埋めやすくより高い平滑性が得られる。
図1Bに示す網目構造は、螺旋状に旋回した繊維や部分扁平あるいは全扁平な断面を持つ繊維が絡みあった、マスクメロンの表面に見られるような樹状の構造である。長繊維が多数に分岐して複雑な網目構造を形成しており、実質的に、連続した1本の長繊維によって構成されている。このような構造の場合、単繊維の場合や図1Aの網目構造に比べて、引き抜き抵抗が大きく、引張り強度の向上が期待できる。
図1Cに示す網目構造は、図1Aに示す網目構造の長繊維上に複数のビーズが形成されている構造である。このような構造の場合、図1Bと同様、引き抜き抵抗が大きい。そのため、単に単繊維だけからなるものに比べると飛躍的な引張り強度の向上が期待できる。
実際は、これらの構造の繊維層が厚み方向に重なり合って層を形成している。そのため、本発明においては、このような網目構造の1種、又は複数の網目構造が複合したものが、長繊維層に含まれていることが好ましい。
長繊維を構成する材料(長繊維材料)としては、水及び/又は有機溶剤を加えて溶液又は乳化物とすることができる高分子や、加熱状態で溶融して液体状態を示す高分子、さらには常温で液体状態を示す高分子であれば特に制限はなく、分子量にすれば、数千のオリゴマーから百万にも及ぶ超高分子まで使用出来る。しかし、分子量によって出来る長繊維の形態や性質が異なるため適宜選択する必要がある。例えば、一般に紙塗工用の水溶性高分子や溶剤可溶性の有機樹脂や不織布の材料として公知の材料が使用可能である。これらの樹脂はエレクトロスピニングされる最終段階で繊維状になるために、エレクトロスピニングされる際の温度で成膜するような高分子である必要がある。これらの長繊維材料は、本発明の積層体(記録材料)の製造において、主に、水溶液や水乳化物の形態で利用されるが、アルコールやトルエン、メチルエチルケトン(MEK)、キシレン、酢酸エチルなどの有機溶剤に溶解した有機溶剤溶液や有機溶剤乳化物の形態で利用されてもよい。
水及び/又は有機溶剤を加えて溶液とすることができる高分子としては、エーテル基、エポキシ基、カルボキシ基、水酸基、スルホン酸基等の親水性基を有する天然又は合成の水溶性高分子、水分散型のエマルジョン樹脂等が好ましく用いられる。
水溶性高分子としては、例えば酸化デンプン、デキストリン等のデンプン類;ポリビニルアルコール及びその誘導体類;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、パルプ繊維を溶解したセルロースそのもの等の天然又は合成のセルロース;ゼラチン、カゼイン、でんぷん;ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリアクリロイルモルホリン、水溶性ポリビニルアセタール、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリ−N−ビニルホルムアミドなどがある。これらの中でも、ポリビニルアルコール及びその誘導体、並びにデンプン類などが安価であり、いろいろな目的にあった性状の長繊維が得られるため好ましい。
水溶性高分子の中でもポリビニルアルコールのような直鎖上の高分子が好ましい。ポリビニルアルコールの場合、単体でもエレクトロスピニング適性があるが、エレクトロスピニングの条件や溶液の物性などによってエレクトロスピニングできない場合が多い。特にケン化度が80%以上のポリビニルアルコールは、オリフィスから出て急激に細いフィラメントに引き伸ばされる時、急激な遠心に追随できずに微小な液滴となって噴霧される場合が非常に多い。この理由は、ケン化度の高いポリビニルアルコールは分子内の水素結合力が強く溶液中でマリ状になっており、急激に引き伸ばされた伸張応力場では、溶液中で分子一本が伸びきれず、伸張粘度が大きく低下してちぎれて液滴になると考えられる。特に溶液の供給力が多く(10μL以上)、水溶性高分子の濃度が5%以上の時に液滴となりやすい。
そこで本発明者らは、ポリビニルアルコールの水酸基による水素結合を弱めるために、水酸基やカルボン酸、アミノ基などの水素結合形成可能な官能基と化学的に結合する化合物を添加することで、ポリビニルアルコール水溶液のエレクトロスピニング適性を大幅に向上させることを見出した。特にオリフィスの径が0.1mm〜5mmという比較的大きな径で、電圧が10kV〜100kV、流量が10μL/sec〜10mL/secの条件の時に安定してエレクトロスピニングが可能となる。ここで化学的に結合するというのは、水素結合や共有結合、イオン結合などの分散力以外の因子で結合する状態を指す。ポリビニルアルコールだけでなく、デンプンやカルボキシメチルセルロール、ポリアクリルアミドなどの他の水溶性直鎖状高分子でも大きな効果を示すことが認められた。
水素結合形成可能な官能基と化学的に結合する化合物としてはシランカップリング剤、アルコキシドシラン、エポキシ化合物、カチオン性樹脂、グリオキザール、カルボン酸を有する有機化合物などが好ましい。水酸基と反応する化合物の分子量は分子量が30〜10000が好ましく、より好ましくは40〜3000、さらに好ましくは50〜1000である。分子量が10000を超えて大きい化合物が、直鎖状高分子の水素結合形成可能な官能基に結合すると、直鎖状高分子の直線性が失われ(枝分かれした球状高分子に近づく)、伸張粘度が急激に低下してしまい、エレクトロスピニング適性が悪くなり好ましくない。分子量が40未満であると、蒸発しやすいものが多く溶液中で不安定なため好ましくない。
水分散型のエマルジョン樹脂は、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、エチレン、ブタジエン、カルボン酸やマレイン酸など酸性分などをその重合体の構成要素として含む合成高分子重合体やそのラテックス等であり、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、ポリウレタン系ラテックス、ポリエステル系ラテックスなどがある。
エマルジョン(あるいはラテックス、分散物)の場合、その分散粒子径は1nm〜500nmが好ましく、より好ましくは5nm〜200nm以下であり、さらに好ましくは10nm〜100nmである。分散粒子径が500nmを超えると、得られる長繊維の繊維径が10μm以上となる場合があったり、エレクトロスピニングの状態にならず液滴の状態で噴霧される場合があり好ましくない。1nm未満のエマルジョンはエレクトロスピニング時にエマルジョンが不安定(凝集や粘度変化)になるため好ましくない。特に10nm〜100nmの粒子径の場合は粒子同士の相互作用が強くなるためエレクトロスピニングしやすくなるとともに、長繊維の繊維系をエレクトロスピニングの製造条件で制御しやすくなるので好ましい。
また、アルコールやトルエンなどの有機溶剤に溶解可能な疎水性樹脂、例えば、エチルセルロース、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸イソプロピル等のポリメタクリル酸エステル、またはポリメタクリル酸誘導体からなる樹脂、ポリスチレン系樹脂(PS)、アクリロニトリル/スチレン共重合樹脂(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂も利用可能である。
これらの中でも、ポリスチレンや液晶高分子など結晶性の高い高分子を用いると剛性が高くなり、剛性の高い材料を用いると、長繊維層を薄く、少量にしても剛性の高い積層体が得られるので好ましい。
また、長繊維を構成する材料中には、カチオン性樹脂を含んでいることが、印字画像耐水性を向上させるので好ましい。
カチオン性樹脂としては、下記のものを例示することができる。
1)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミンなどのポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、
2)第2級アミン基や第3級アミン基、第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、
3)ポリビニルアミン、ポリビニルアミジン類、
4)ジシアンジアミド−ホルマリン重縮合物に代表されるジシアン系カチオン樹脂、
5)ジシアンジアミド−ジエチレントリアミン重縮合物に代表されるポリアミン系カチオン樹脂、
6)エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、
7)ジメチルジアリルアンモニウムクロライド−SO共重合物、
8)ジアリルアミン塩−SO共重合物、
9)ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合物、
10)アリルアミン塩の重合物、
11)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩重合物、
12)アクリルアミド−ジアリルアミン塩共重合物等のカチオン性化合物。
さらに、紙支持体と長繊維層の密着性を向上させるため、粘着剤や接着剤に用いられるアクリル酸エステル重合体、エポキシ化合物、ウレタン化合物などを用いても良い。
また、紙支持体の水分(あるいは有機溶剤)を8%〜70%より好ましくは15%〜60%、さらに好ましくは20%〜50%である紙支持体上に長繊維を積層することで密着性が大幅に向上する。長繊維の径が小さいほど水分上記範囲で含んだときの密着性向上効果が大きい。密着性が向上する理由としては、長繊維の径が非常に小さいため、紙支持体表面の過剰な水分と接触する面積が増大するためと考えられる。また、長繊維が親水性の場合、長繊維の径が細いほど水に対する溶解性あるいは可塑化が劇的に増加するため、紙支持体に積層された長繊維の一部が溶解あるいは可塑化して紙支持体と強力に接着するためと推測される。
密着性を向上させる方法としては、長繊維の溶液の蒸発量を制御して、溶剤が残留した状態で紙支持体に積層させることも有効であるが、長繊維の繊維径や形態、あるいは装置上の制約(オリフィスから対抗電極までの距離やオリフィスの径など)や溶液の物性(表面張力や粘度、濃度、伝導度など)が制限されるため、紙支持体の水分を調整する方法の方が好ましい。
また、得られた積層体を熱処理したりプレス処理したりすることでも密着性を向上させることができる。また、得られた積層体に蒸気処理や溶剤を塗布し乾燥することでも密着性や長繊維層自体の強度を向上できる。溶剤(水を含む)を塗布する場合、長繊維層の網目構造を損なわない程度に粘着剤や先着剤、架橋剤などを含有させても良い。
加熱状態で溶融して液体状態を示す高分子としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレンやポリエステル、ポリアミドなどのプラスチック材料が使用できる。さらに、常温で液体状態を示す高分子としては、シリコーン樹脂や、電子線又は紫外線硬化用のオリゴマーやプレポリマー等の電子線硬化性不飽和有機化合物が使用できる。
電子線硬化性不飽和有機化合物としては、高架橋の樹脂層を形成しうるものであれば、単官能モノマー、多官能モノマーあるいはオリゴマーでもよく、これらは単独で使用しても、あるいはそれらを二種類以上混合したものであってもよい。例えば、オリゴマーとしては、(1)ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールF型、エポキシ化油型、フェノールノボラック型、脂環型などのエポキシアクリレート、(2)ウレタンアクリレート(3)不飽和ポリエステル(4)ポリエステルアクリレート(5)ポリエーテルアクリレート(6)ビニル/アクリルオリゴマー(7)ポリエン/チオール(8)シリコンアクリレート(9)ポリブタジエンアクリレート(10)ポリスチリルエチルメタクリレート等が挙げられる。また、シリコーン樹脂としては、ポリジメチルシロキサンが用いられる。
これらの長繊維材料はそれぞれ単独で用いてもよく、また、目的に応じて2種以上を混合して用いてもよい。2種以上の長繊維材料を混合して用いることにより、その相溶性や、製造時に用いられる溶剤(水又は有機溶剤)に対する溶解度の差等を調節して、得られる長繊維の親水性や疎水性、モルホロジー(長繊維の繊維径、繊維長、断面形状、繊維表面の形状など)を調節することができる。
長繊維が、長繊維材料としてセルロースを含む場合、紙支持体との相性がよく、また、透明な層を形成可能であるので、紙支持体の風合いを損なわないため好ましい。さらに、リサイクルも容易である等の利点を有する。
また、本発明の積層体が印刷用である場合には、長繊維が撥インク性高分子を含有することが好ましい。撥インク性高分子とは、例えばインクが疎水性の場合には親水性高分子であり、インクが親水性の場合には疎水性高分子である。撥インク性高分子を含有していると、インクジェット記録等の印刷を行った際に、長繊維層がバリアーとして機能し、インクが特定の部位、例えば空隙部分に過剰に吸収されるのを防ぐことができる。つまり、長繊維層のインクに対するバリアー性が向上し、印刷特性が向上する。また、長繊維層上にさらにインク受容性被覆層を設ける場合に、該インク受容性被覆層を形成するための塗工液に対するバリアー性も高まるので、インク受容性被覆層を、膜厚や形状がより均一なものとすることができ、印字特性が向上する。
親水性高分子としては、例えば、上述した水溶性高分子などを挙げられる。また、疎水性高分子としては、例えば、上述した疎水性樹脂が挙げられる。これらは単独で、又は混合して配合することができる。
また、長繊維は、上述のような繊維材料の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、長繊維材料を溶液又は乳化物とした際の該溶液又は乳化物の粘性や表面張力、導電率を変化させるため、長繊維材料と溶媒の比率である固形分濃度や長繊維の分子量を調整したり、NaCl、ポリリン酸塩等の無機塩、各種カルボン酸のナトリウム塩やアンモニウム塩などの有機塩、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などの界面活性剤、ポリカルボン酸やスルホコハク酸、ポリエチレングリコールなどの濡れ剤、消泡剤、さらには導電率を調整するためにスチレンスルフォン酸塩や第4級のカチオンやアミン化合物等の添加物を含んでもよい。
ポリエチレングリコール、ポリグルタミン酸、DNAのような高分子たんぱく質のような直鎖状高分子がエレクトロスピニング現象が安定するため好ましい。特に分子内で弱く結合し、溶液中でらせん構造をとるような直鎖状高分子が好ましい。
このような直鎖状高分子は長繊維の繊維材料に対して1〜30%、好ましくは3〜20%、より好ましくは5〜10%添加する。
本発明の積層体(記録材料)は、上述のような長繊維層が、紙支持体の片面又は両面に形成されたものであり、これら長繊維層が形成された紙支持体を2枚以上さらに積層した積層体(記録材料)や、紙支持体に長繊維層を積層し、さらに紙支持体を積層することを繰り返した積層体(記録材料)も含む。
さらに、本発明の積層体(記録材料)においては、長繊維層は多層であってもよい。繊維径や含有する樹脂など、異なる物性を示す長繊維を用いて、物性の異なる複数の長繊維層を複数積層した多層構造であってもよい。例えば、繊維径が次第に細くなっているような傾斜構造、例えば紙支持体上に、繊維径100nmの長繊維からなる網目構造を含む第1の長繊維層を形成した後、繊維径50nmの長繊維からなる網目構造を含む第2の長繊維層と、繊維径10nmの長繊維からなる網目構造を含む第3の長繊維層(最表層)とがこの順番で積層されている積層体(記録材料)は、最表層により非常に表面平滑性の高い緻密な表面を有するものとなるだけでなく、第1及び第2の長繊維層がインク等を吸収しやすく、印刷特性に優れている。
また、例えば紙支持体上に、疎水性の長繊維を含む第1の長繊維層と、親水性の長繊維を含む第2の長繊維層とがこの順番で積層されている積層体は、油性インクで印刷した場合に、第2の長繊維層のバリアー効果により、積層体表面に付着するインクの量のばらつきを防止し、第2の長繊維層に付着したインクを第1の長繊維層が素早く吸収するので、印刷特性に優れている。
さらに、本発明のインクジェット記録紙及び印刷紙等の記録材料においては、長繊維層の上にさらに、一般的にインクジェット記録紙及び印刷紙において形成されている塗工層が形成されているのが好ましい。インクジェット記録紙の場合、長繊維層の表面均一性が高く、液吸収性が均一であるため、その上に形成されるインク受容層の表面及び膜厚も均一なものである。したがってドット再現性等の印字特性も優れている。
インク受容層の構成に特に限定はないが、インク受容層に含まれる成分としては、一般的にインク受容層に含まれる成分と同様の成分が使用可能である。
<無機微粒子>
インク受容層中に含有せしめる無機微粒子の材料としては、例えばゼオライト、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、ケイ酸アルミニウム、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、アルミナ水和物、アルミノシリケート、ベーマイト、擬ベーマイト等が挙げられるが、インク吸収性の点で特にシリカ、アルミナ、アルミナ水和物およびアルミノシリケートが好ましく、とりわけシリカが好ましい。
また、無機微粒子は、BET法による比表面積が100m/g以上のものが好ましい。BET法による比表面積に上限はないが、1000m/g以下程度が好ましい。より好ましくは200〜400m/gである。
本発明で言うBET法とは、気相吸着法による粉体の表面測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、すなわち、比表面積を求める方法である。
無機微粒子は、一次粒子が凝集している凝集粒子(二次粒子)である場合、平均二次粒子径は、特に限定しないが0.05〜1.0μmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5μmである。
インク受容層中の無機微粒子の使用量としては、インク受容層の固形分に対して20〜90質量%程度であるのが好ましく、より好ましくは30〜80質量%程度である。なお、この範囲にすると、インク受容層の塗膜強度が低下するおそれがなく、インク吸収性やインク乾燥性に優れ、さらに高画質が得られる。
本発明においては、上述したように、無機微粒子としてシリカが好ましく用いられる。シリカは、石英などの天然のシリカを粉砕して得られる天然シリカと、合成により製造される合成シリカに大別され、合成シリカは気相法シリカと湿式法シリカとに大別される。本発明においては、高いインク吸収性、透明性、および光沢が得られる点から、気相法シリカ、および、湿式法シリカのうち、後述する湿式法微細シリカが好ましく用いられる。
気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素および酸素と共に燃焼して作られる。四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシラン、トリクロロシラン等のシラン類を単独あるいは四塩化ケイ素と混合して使用することもある。気相法シリカは、非常に嵩密度が低い粉体として市販されている。
気相法シリカの水分散物を乾燥すると、多孔質のシリカゲルとなり、そのゲルのBET法による細孔容積は、一般に、1.2〜1.6ml/gである。この細孔容積は、インクを吸収させるには都合が良い。しかし、乾燥時にひび割れが生じやすく、ひび割れの無いインク受容層を製造することが容易ではない。
湿式法シリカとしては、沈降法によるシリカとゲル法によるシリカが知られている。
沈降法シリカは、例えば、特開昭55−116613号公報に開示されているように、ケイ酸アルカリ水溶液に鉱酸を段階的に加え、沈降したシリカをろ過して製造されるものである。
ゲル法シリカはケイ酸アルカリ溶液に鉱酸を混合し、ゲル化させたのち、洗浄及び粉砕して得られるものである。
沈降法シリカとゲル法シリカは、シリカの一次粒子が結合して二次粒子を形成しており、一次粒子間と二次粒子間に多くの空隙を有しており、そのためにインク吸収量が大きい上、光を散乱する性質が小さいので高い印字濃度が得られる。
また、やや特殊な製造方法による湿式法シリカとして、例えば米国特許第2574902号明細書、特開2001−354408号公報、特開2002−145609号公報に記載されているような、活性ケイ酸を縮合させて製造される微細シリカ(以下、湿式法微細シリカという)がある。ここで、活性ケイ酸とは、例えばアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を水素型陽イオン交換樹脂でイオン交換処理して得られるpH4以下のケイ酸水溶液をさす。
米国特許第2574902号明細書記載の湿式法微細シリカは、ケイ酸ナトリウムの希釈水溶液をカチオン交換樹脂で処理してナトリウムイオンを除去することにより活性ケイ酸水溶液を調製し、この活性ケイ酸水溶液の一部にアルカリを添加して安定化させて重合することにより、シリカのシード粒子が分散した液(シード液)を作り、アルカリ条件を保持しながら活性ケイ酸水溶液の残部(フィード液)をこれに徐々に添加してケイ酸を重合させ、コロイダルシリカの粒子を成長させることにより製造される。
この微細シリカは、直径が3nm〜数百nmであり、二次凝集をしておらず、しかも粒度分布がきわめて狭いという特長を有している。通常、コロイダルシリカと呼ばれ、7nm〜100nmの製品が水分散液として市販されており、インク受容層に用いると、極めて高光沢で透明性が高い受容層が得られる。
一方、特開2001−354408号公報記載の湿式法微細シリカとは、「BET法による比表面積が300m/g〜1000m/gで、細孔容積が0.4ml/g〜2.0ml/gであるシリカ微粒子がコロイド状に分散した液をシード液とし、該シード液にアルカリを添加したのち、該シード液に対し活性ケイ酸水溶液及びアルコキシシランから選ばれる少なくとも一種類からなるフィード液を少量ずつ添加してシリカ微粒子を成長させることを特徴とする、BET法による比表面積が100m/g〜400m/g、平均二次粒子径が20nm〜300nm、かつ細孔容積が0.5ml/g〜2.0ml/gのシリカ微粒子がコロイド状に分散したシリカ微粒子分散液の製造方法。」、または「BET法による比表面積が300m/g〜1000m/gで、細孔容積が0.4ml/g〜2.0ml/gであるシリカ微粒子がコロイド状に分散した液をシード液とし、該シード液に対し活性ケイ酸水溶液及びアルコキシシランから選ばれる少なくとも一種類からなるフィード液とアルカリの混合物を少量ずつ添加するか、もしくは該フィード液とアルカリを少量ずつ同時に添加してシリカ微粒子を成長させることを特徴とする、BET法による比表面積が100m/g〜400m/g、平均二次粒子径が20nm〜300nm、かつ細孔容積が0.5ml/g〜2.0ml/gのシリカ微粒子がコロイド状に分散したシリカ微粒子分散液の製造方法」によって得られるシリカ微粒子である。
また、特開2002−145609号公報記載の湿式法微細シリカとは、「活性ケイ酸及びアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種を含有する水溶液を加熱することによってシリカ微粒子からなる凝集物を含む懸濁液を形成し、次に該懸濁液にアルカリの存在下に活性ケイ酸を含有する水溶液及びアルコキシシランから選ばれる少なくとも1種を少量ずつ添加して懸濁液中のシリカ微粒子を成長させた後、該懸濁液を湿式粉砕することを特徴とするシリカ微粒子分散液の製造方法」によって得られるシリカ微粒子である。
特開2001−354408号公報、特開2002−145609号公報に開示されている湿式法微細シリカは、沈降法シリカやゲル法シリカの長所とコロイダルシリカの長所を併せ持ったシリカである。このシリカは、シリカの一次粒子(例えば上述したコロイダルシリカ)が結合した二次粒子であり、しかも二次粒子径を光の波長以下に調節することが容易であるので、インク吸収量と光沢度に優れるインク受容層を容易に製造できることから本発明に最も好ましく用いられる。以下、これらの湿式法微細シリカを二次微細シリカという。
これらの中でも、特に、特開2001−354408号公報で開示されている縮合方法による二次微細シリカは、機械的手段によらずに直接、上記の平均二次粒子径(20nm〜300nm)や細孔容積(0.5ml/g〜2.0ml/g)を有する二次微細シリカを製造でき、かつ粒度分布が狭いので、得られるインク受容層の透明度や光沢が良好であり、本発明に好ましく用いることができる。
特開2001−354408号公報で開示されている縮合方法において、活性ケイ酸としては、例えばアルカリ金属ケイ酸塩水溶液を水素型陽イオン交換樹脂でイオン交換処理して得られるpH4以下のケイ酸水溶液(活性ケイ酸水溶液)が好ましく用いられる。
活性ケイ酸水溶液は、SiO濃度として1〜6質量%が好ましく、より好ましくは2〜5質量%であり、かつpH2〜4であることが望ましい。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、市販工業製品として入手できるものでよく、より好ましくはSiO/MO(但し、Mはアルカリ金属原子を表す)モル比として2〜4程度のナトリウム水ガラスを用いるのが好ましい。
活性ケイ酸の縮合方法としては、熱水に上記活性ケイ酸水溶液を滴下するか、活性ケイ酸水溶液を加熱してシード粒子を生成させ、分散液が沈殿を生じる前、若しくはゲル化する前にアルカリを添加してシード粒子を安定化し、次いで該安定状態を保ちながら活性ケイ酸水溶液をシード粒子に含まれるSiO1モルに対してSiOに換算して好ましくは0.001〜0.2モル/分の速度で添加してシード粒子の一次粒子を成長させることが好ましい。
また、湿式法微細シリカは、BET法による比表面積が100〜400m/gであり、かつ細孔容積が0.5〜2.0ml/gであることが好ましい。この範囲にある微細シリカは、インク受容層のひび割れ、インク吸収性、及び光沢のバランスが非常に優れている。
<カチオン性化合物>
本発明に用いられるカチオン性化合物としては、カチオンポリマー、水溶性アルミニウム化合物、水溶性ジルコニウム化合物、水溶性チタニウム化合物等の、インクジェット記録用シートの分野で公知公用の各種カチオン性化合物が適宜使用される。特に、耐水性の観点から、カチオンポリマー、水溶性アルミニウム化合物及び水溶性ジルコニウム化合物が好ましく用いられ、それらの中でも特にカチオンポリマーが好ましく用いられる。
これらのカチオン性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
カチオンポリマーとしては、例えばモノアリルアミン塩、ビニルアミン塩、N−ビニルアクリルアミジン塩、ジシアンジアミド・ホルマリン重縮合物、ジシアンジアミド・ポリエチレンアミン重縮合物等の1級アミン塩を構成単位として有する1級アミン型カチオンポリマー、ジアリルアミン塩、エチレンイミン塩等の2級アミン塩を構成単位として有する2級アミン型カチオンポリマー、ジアリルメチルアミン塩等の3級アミン塩を構成単位として有する3級アミン型カチオンポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物等の4級アンモニウム塩を構成単位として有する4級アンモニウム型カチオンポリマー等が挙げられる。
水溶性アルミニウム化合物としては、塩基性塩化アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、塩基性脂肪酸アルミニウム等が挙げられる。
水溶性ジルコニウム化合物としては、塩化ジルコニル、塩基性塩化ジルコニル、硝酸ジルコニル、脂肪酸ジルコニル等が挙げられる。
なお、塩基性脂肪酸アルミニウム、脂肪酸ジルコニル等における脂肪酸の具体例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、グリコール酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、4−ヒドロキシブタン酸、グリシン、β−アラニン、4−アミノブタン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等が挙げられるが、中でも酢酸が特に好ましい。
<シリカ−カチオン性化合物>
また、インク受容層には、非晶質シリカとカチオン性化合物を混合し凝集させることによって得られたシリカ−カチオン性化合物凝集体粒子を平均粒子径0.7μm以下に粉砕したシリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子が好ましく用いられる。
このシリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子を用いることによって、インク受容層を、透明性、インク吸収性、インクの発色性、耐候性等が良好な多孔質層とすることができる。
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子は、実質的に1次粒子が凝集してできた2次粒子からなるシリカコロイド粒子溶液である。1次粒子が単分散したようなシリカゾル(例えば:一般市販のコロイダルシリカ)の場合、基材に塗布して得られる多孔質層が比較的緻密なものになり、透明性を失いやすく、十分なインク吸収性をもたすためには高塗布量が避けられない。しかし、高塗布量になると、塗膜にひび割れが入りやすく、また塗布工程も煩雑になりやすい。勿論、シリカコロイド粒子溶液中に部分的に1次粒子が含まれても構わない。
本発明において、インク受容層中に、バインダー(特にポリビニルアルコールが好ましい)とともにシリカ−カチオン性化合物凝集体粒子を配合すると、印字部の透明感が得られ、写真並の光沢を得ることが可能である。また、インク受容層全体が透明であるため、OHP用シート等としても使用が可能である。
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子は、非晶質シリカとカチオン性化合物を混合し凝集させることによって得られたシリカ−カチオン性化合物凝集体粒子を平均粒子径0.7μm以下に粉砕して得られるものである。
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子は、平均粒子径が0.7μm以下、最大粒子径が1000nm程度以下の微粒子が均一に分散した状態をいう。
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子は、例えば一般市販の合成無定型シリカ(数ミクロン)等の非晶質シリカとカチオン性化合物との混合物に対し、機械的手段で強い力を与えることにより得られる。つまり、breaking down法(塊状原料を細分化する方法)によって得られる。シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子はスラリーであってもよい。機械的手段としては、超音波、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌ミル、ジェットミル、擂解機、サンドグラインダー等の機械的手法が挙げられる。
本発明でいう平均粒子径はすべて電子顕微鏡(SEMとTEM)で観察した粒径である(1万〜40万倍の電子顕微鏡写真を撮り、5cm四方中の粒子のマーチン径を測定し平均したもの。「微粒子ハンドブック」、朝倉書店、p52、1991年等に記載されている)。
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子(実質的に2次粒子)の平均粒子径は0.7μm以下であり、好ましくは10〜300nm、より好ましくは20〜200nmに調整される。平均粒子径が0.7μmを越えるシリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子を使用すると、透明感が著しく失われ、印字濃度が著しく低下し、印字後の高光沢を有するインクジェット記録用シートが得られないおそれがある。一方、平均粒子径が極めて小さいシリカコロイド粒子を使用すると、充分なインク吸収速度が得られないおそれがある。
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子を構成する非晶質シリカは、平均1次粒子径が3nm〜40nmであることが好ましい。3nm未満になると1次粒子間の空隙が極端に小さくなり、インク中の溶剤やインクを吸収する能力が著しく低下する。一方、40nmを越えると、凝集した2次粒子が大きくなり、インク受容層の透明性が低下するおそれがある。
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子に用いられるカチオン性化合物としては、一般にインクジェット用紙で用いられる各種公知のカチオン性化合物が使用可能であり、例えば、モノアリルアミン塩、ビニルアミン塩、N−ビニルアクリルアミジン塩、ジシアンジアミド・ホルマリン重縮合物、ジシアンジアミド・ポリエチレンアミン重縮合物等の1級アミン塩を構成単位として有する1級アミン型カチオンポリマー、ジアリルアミン塩、エチレンイミン塩等の2級アミン塩を構成単位として有する2級アミン型カチオンポリマー、ジアリルメチルアミン塩等の3級アミン塩を構成単位として有する3級アミン型カチオンポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物等の4級アンモニウム塩を構成単位として有する4級アンモニウム型カチオンポリマー、塩基性ポリ塩化アルミニウム、塩基性ポリ脂肪酸アルミニウム等のアルミニウム化合物、塩化ジルコニル、塩基性塩化ジルコニル、脂肪酸ジルコニル等のジルコニル化合物等が挙げられる。なお、カチオン性化合物の添加量としては、非晶質シリカ100質量部に対して、1〜30質量部、より好ましくは5〜20質量部の範囲で調節される。
本発明において、無機微粒子としてシリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子を用いる場合、バインダーとしては、分散適性、塗料安定性からPVAが最も有効である。特に分散性、インク吸収性を得るためには重合度2000以上のPVAが好ましく使用される。PVAの重合度は、より好ましくは2000〜5000である。また、耐水性を得るためには、ケン化度95%以上のPVAが有効である。
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子とバインダーとの固形分質量比は、特に限定しないが、10/1〜10/10、好ましくは10/2〜10/6の範囲に調節される。バインダーの添加量が多いと、粒子間の細孔が小さくなり、充分なインク吸収速度が得られない場合があり、一方、バインダーが少ないと塗被層にひび割れが入り、使用し得ない状態になる場合もある。
<バインダー>
インク受容層に配合されるバインダーとしては、例えば酸化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆タンパク等のタンパク質類、完全(部分)ケン化ポリビニルアルコール、ケイ素変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、スチレン−無水マレイン酸共重合体の塩、スチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリル系ラテックス、ポリエステルポリウレタン系ラテックス、酢酸ビニル系ラテックス等の水性接着剤、或いはポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂等の有機溶剤可溶性樹脂が挙げられる。これらのバインダーは、単独あるいは複数を混合して用いられる。
これらのバインダーの中でも、ポリビニルアルコール類は、透明性が高く、耐水性が高く、非イオン性で各種の材料との混合が可能であり、室温付近で膨潤性が比較的低いため好ましい。またインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわない利点がある。
ポリビニルアルコール類の中でも、完全(部分)ケン化ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコールまたはケイ素変性ポリビニルアルコールが特に好ましく用いられる。
完全(部分)ケン化ポリビニルアルコールとしては、ケン化度が80%以上、とりわけ95%以上の部分ケン化ポリビニルアルコールまたは完全ケン化ポリビニルアルコールが好ましく、また、その平均重合度としては200〜5,000が好ましく、500〜5,000がより好ましい。
ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化ポリビニルアルコールが好ましい理由は耐水性に優れるためである。また、平均重合度として200〜5,000が好ましい理由は、この範囲の重合度のものを用いると、耐水性に優れ、かつ取り扱い易い粘度となるためである。
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、1級、2級あるいは3級アミノ基や第4級アンモニウム塩基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールが好ましい。
バインダーは、無機微粒子100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは5〜50質量部の範囲で使用される。
<その他>
上記中に含有させる水溶液中に、架橋剤を併用することは、ひび割れ抑制の観点からより好ましい。
架橋剤の具体例としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂、ホウ酸塩等のホウ素化合物、グリオキザール、メラミン・ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、メチロールウレア、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、ジヒドラジド化合物、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられる。これらのうちでもホウ素化合物が好ましく、特にホウ砂が好ましい。
ホウ砂とポリマー(A)の混合液を塗工することにより、とりわけ画像の耐熱湿性が高く、ひび割れ抑制効果が高い。
また、インク受容層には、必要に応じて、消泡剤、界面活性剤、架橋剤等の公知の添加物を含有させることが出来る。
本発明の積層体及びインクジェット記録紙及び印刷紙等の記録材料は、下記本発明の製造方法により製造することができる。
≪積層体(記録材料)の製造方法≫
本発明の積層体(記録材料)の製造方法は、前述したエレクトロスピニングを用いた方法であり、オリフィスを備えた容器内に充填された長繊維の原料溶液に接する電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、前記オリフィスから前記原料溶液を噴射し、前記電極板上に配置された紙支持体表面に、長繊維を含む層を形成することを特徴とする。
エレクトロスピニングでは、オリフィスの先端に滲み出た液滴が対向に配置された電極板との間に印加された電圧による電場により帯電する。液滴の表面張力が液滴表面に乗った電荷による反発力より大きい場合は液の吐出は起こらないが、液の表面張力にうち勝つ電荷密度にまで電圧を上げると吐出が始まる。吐出した液滴からは溶媒の蒸発が始まり液体の表面積が小さくなる結果、液体表面の電荷密度がさらに大きくなって吐出力が加速され安定な連続吐出がえられる。吐出される液はオリフィスの直径よりも細い状態で一本の連続的な状態になる。そして、ある長さまで連続な状態が続くと細い液体の状態は不安定になりフラッシュ的に広がりながら、溶媒の蒸発が起こり細い長繊維が網目状に電極上に着地する。
図2に示すエレクトロスピニング装置を用いて、本発明の製造方法の第1実施形態を説明する。
図2Aに示すように、エレクトロスピニング装置1は、オリフィス2を備えた容器3と、オリフィス2から所定の距離離れた位置に対向配置された電極板4とを備えており、オリフィス2及び電極板4にはそれぞれアース5,6が接続されている。本発明において、オリフィス2を備えた容器3としては、容器内に充填された原料溶液に対して印加が可能であり、該原料溶液をオリフィス2から押し出すことができるものであれば特に制限はなく、例えば金属製、又はガラス製の注射器、ピペット等を用いることができる。
また、容器3と電極板4は、オリフィス2と電極板が対向するような関係であれば上下、左右いかなる方向にも配置することが出来る。
オリフィス2の大きさ及び数としては、特に制限はなく、得ようとする長繊維の繊維径、長繊維を積層する紙支持体の大きさ等に応じて適宜決定すればよい。
オリフィス2の内径は10μm〜10mm、さらに好ましくは100μm〜1mmである。細径のオリフィスは粘性の低い溶液を扱い、広いものは高粘度の溶液に好適である。また、エレクトロスピニングではこれらのオリフィス径よりも細い径の長繊維が得られるため、オリフィスのつまりなどのトラブルを引き起こしにくい。
オリフィス2と電極板4との距離は、好ましくは数ミリから数十センチに設定する。この距離を変化させることによって、長繊維の繊維径や繊維長、網目構造の形態などを変化させることが出来る。
例えば、オリフィス2と電極板4との距離が遠いほど、得られる長繊維の繊維径が小さくなり、繊維長が長くなる。一方、該距離が近いほど、得られる長繊維の繊維径が大きくなり、繊維長が小さくなる。もちろん、原料溶液の表面張力や粘度あるいは導電性と印加する電圧との間には一定の関係があるため、電極間距離だけで繊維径と繊維長が決まるわけではない。例えば、オリフィスと電極間の距離を一定にした場合、一般的に、表面張力を低くしたり粘度を小さくすると細い繊維径の長い繊維長が得られる。また、表面張力が一定であれば、印加電圧が高いほど細い繊維径と長い繊維長が得られる。
また、長繊維を網目構造とする場合、オリフィス2と電極板4との距離が遠いほど、得られる長繊維の形態が上述した図1Aに近くなり、オリフィス3と電極板4との距離が近いほど、得られる長繊維の形態が上述した図1Bに近くなる。図1Cは、オリフィス2と電極板4の距離がさらに短くなり液滴が完全に繊維状態になる前に電極板4に着地したものを含んだ物と想像される。
まず、上述した長繊維材料及び任意の添加物に溶剤を加えてあるいは加熱して原料溶液7を得る。原料溶液7の粘度は、1cps〜10000cpsとすることが好ましく、10cps〜1000cpsとすることがより好ましい。
溶剤としては、好ましくは水が用いられるが、アルコールやトルエンなどの有機溶剤を用いてもよい。また、長繊維材料としてセルロースを用いる場合は、銅−アンモニア溶液、銅−エチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液として用いることが好ましい。必要に応じて液を加温することも有効である。
原料溶液7は、長繊維材料及び任意の添加物が完全に溶解し、溶剤と完全に混合した溶液の形態であってもよく、溶解した液体粒子がコロイド粒子あるいはそれより粗大な粒子として溶剤中に分散した乳化物の形態であってもよい。
次に、原料溶液7を容器3内に充填し、電極板4上、容器3と電極板4の間に、紙支持体8を配置し、オリフィス2と電極板4との間に電圧を印加しながら、オリフィス2から原料溶液7を押し出し、吐出させる。
原料溶液の吐出量は、オリフィス2の先端に原料溶液7の液滴が現れる程度でよい。液滴が帯電して吐出が始まると容器3にある液体は自動的に連続供給されるが、目的によっては容器3内に加圧、減圧の圧力をかけることによって吐出する量を制御することも出来る。
オリフィス2と電極板4の間に印加する電圧は、好ましくは1kV〜500kV、より好ましくは2kV〜200kV、さらに好ましくは5kV〜100kVとする。電圧が1kV未満であると、電界による液滴の帯電が不十分になり、長繊維の吐出が起こらず、電圧が500kVを越えると、電極間で短絡しやすくなるおそれがあるばかりでなく、装置からの漏電や放電現象が発生しやすくなり、装置の絶縁のために大掛かりの装置となる。
また、アース5は、例えばオリフィス2が金属製の場合はオリフィス2に接続されていてもよく、また、容器3内に充填された原料溶液7中に銅線等を介してアース5に接続してもよい。
オリフィス2と電極板4との間に電圧を印加すると、図2Bに示すように、オリフィス2と電極板4の間に静電的な場が形成され、原料溶液7が帯電し、電極板4方向に移動する。帯電の極性は、長繊維材料の性質に応じて正負いずれかが選択される。また、直流のみならず交流やパルス電量でもかまわない。
エレクトロスピニング時に流れるオリフィス一本あたりの電流としては、0.1μA〜500μAが好ましく、より好ましくは1μA〜200μA、さらに好ましくは5μA〜100μAである。この電流値は溶液を供給していないときの電流値(リーク電流)とエレクトロスピニング時の電流値との差である。0.1μAより小さい場合は、エレクトロスピニングが不安定となり、繊維の形状が変形したり、ベッドと呼ばれる塊を形成したり、ひどいときには粒子状に形成されるため好ましくない。また、電流値が500μAを超える場合は、電圧を変化させても電界の変化が小さくなるため、安定的な製造が困難となるばかりか、放電する可能性が高くなる。特に5kV以上の電圧が500μA以上の電流で放電が起きると紙支持体に孔が空いたり、ひどいときには燃えたりするため好ましくない。
帯電した原料溶液7は、電極板4方向に移動する際の溶剤の蒸発につれて表面の電荷密度が高くなる。そして、原料溶液7の粘度あるいは表面張力と静電的な力が競争し、静電的な力が勝つと、原料溶液7に鞭を打ったようなしなり7aが発生する。さらに静電的な力が強まると、しなり7aの状態が更に変化し、液滴が噴霧されるような状態7bになる。原料溶液7は、この液滴が噴霧される状態7bから紙支持体8の表面までの間に溶剤が完全に蒸発して長繊維7cを形成する。形成された長繊維7cは、紙支持体8表面に積層され、長繊維層を形成する。
原料溶液の表面張力については特に制限はないが好ましくは10〜70ダイン、20〜60ダイン、30〜50ダインである。
原料溶液の導電率については1μS/m〜10mS/mが好ましく、より好ましくは10μS/m〜5mS/m、さらに好ましくは50μS/m〜2mS/mである。導電率が1μS/m未満だとエレクトロスピニングとならずに液滴で噴霧されやすい。また、10mS/mより大きくなると、鞭打ったようなしなり7aが発現せずに一本の太い液体で噴霧される。
一般に原料溶液の導電率が100μS/m、特に500μS/m以上になるとエレクトロスピニング現象が不安定になりやすい。これは液体の導電率が大きいとオリフィスから出た原料溶液表面に電荷が集中せずに、原料溶液内部に電荷が分散してしまい、粘度や表面張力が打ち勝ちエレクトロスピニング現象が発現しないためと考えられる。しかし、印加電圧が5kV以上で電流値が5μAであり、かつ溶液の表面張力が20〜60dyne/m、溶液の供給量が10μl/sec以上、オリフィスの内径が0.1mm以上である場合には、むしろ伝導率が高い方がエレクトロスピニング現象が安定することを見出した。
図2Aには、容器3を1個設けた例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、それぞれ電極が接続された容器を複数用意し、それぞれに異なる長繊維材料を含む原料溶液を充填する。そして、各容器に対し、順番に印加することにより、容易に長繊維層を多層とすることができる。
また連続した幅広の紙を支持体にしてその上に長繊維層を形成しようという場合、複数個の容器を幅方向に配置することにより紙支持体の全面を覆うように長繊維層を形成することも出来る。
また、図2Aでは、容器3と電極板4とを横に配置しているが、容器3の下方に電極板4を配置してもよい。この場合、原料溶液7は押し出さなくても、重力により自然にオリフィス2から吐出される。
また、本発明においては、紙製造において通常行われるように、これらの長繊維層を紙支持体上に形成した後に、ロールのニップ間を通して平滑化したり、加熱された平滑な鏡面に、積層体(記録材料)の長繊維層側をあてて乾燥して平滑な面を得たりすることも出来る。
また、長繊維を紙支持体上の特定の望みの場所のみに形成して、特定の部分だけに特異な物性を付与するようなことも出来る。
また、米国特許第6110590号、米国特許第6308509号、米国特許第6382526号には各種のナノファイバーやそれを製造する方法としてエレクトロスピニング法が紹介されているが、本発明においてはこれらの文献に記載される方法を用いても良い。
さらに、本発明においては、形成した長繊維層の上にさらに、顔料や樹脂を含む塗工液を塗布することにより、塗工層を形成してもよい。インクジェット記録紙の場合、長繊維層の表面が均一で、液吸収性も均一であるので、形成されるインク受容層の膜厚も容易に均一なものとすることができる。そのため、表面均一性が高く、インク吸収性も均一なインク受容層が得られる。同様に、印刷紙の場合もドット再現性の高い印刷が得られる。
例えば、塗工液の塗工方法等のインク受容層の形成方法としては、一般的にインク受容層の形成に用いられている方法が利用可能であり、例えば、エアーナイフコーター、バーコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、リップコーター、キャップコーター、ブレードコーター、キャストコーター等が挙げられる。また、これらを組合せて多層塗工するとよい。
なお、エレクトロスピニング法以外に、長い繊維素からなる層を乾式で形成する方法として、バルキーな不織布を製造する方法として知られているフラッシュ紡糸法、メルトブローン法がある。
フラッシュ紡糸法とは、溶媒に対する溶解性が、溶液に加える圧力で変化するような樹脂をノズルから噴出して瞬時に長繊維を得る方法である。しかし、特定の樹脂組成のものしか適用できず、セルロース繊維と比べれば同等かそれ以上の繊維径の長繊維しか得られないため本発明のような微細な長繊維による効果は期待できない。
メルトブローン法は、溶融したオレフィン系の樹脂をノズルから高い圧力で噴射させ、その周囲に空気流で乱流を作り噴射した繊維を目標とする基材に着弾させようと言うものである。しかし、得られる繊維の分布を空気流で制御することになり均一な薄い層を形成することは出来ないため好ましくない。
実施例:
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は本発明を限定するものではない。また、特に断らない限り実施例中の部は質量部を示し、固形分で示す。
ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製 PVA117)の2%水溶液(導電率10μS/m、表面張力48dyne/cm)を遠心分離(2000rpm、5分)で異物をのぞいた後、50ccの容量を持つ注射器(プラスティック製)の中に入れ、先端の断面を平坦に加工した金属製の針(内径0.5mm)を取り付けた。この針の先端から32cm離れた位置にステンレス製の板を置き、その上に、水をわずかに噴霧してしめらせた電子写真用の上質紙(米坪64g/m2水分12%)をおいた。注射器針にプラスとなるように高圧電源につなぎ、注射器の針とステンレス板の間に、0から100kVの電圧まで変化させながら徐々に電圧を上げると、10kVで針の先端から液の吐出が始まり、12kVで噴霧状態となって、上質紙の表面に細かい繊維状の固まり(長繊維層)が形成された。この時の電流値は5〜10μAであり、流量は5μL/secであった。
形成された長繊維層を電子顕微鏡(倍率:10万倍)で観察すると、図1Aのような繊維層が確認できた。各長繊維の繊維径は400nm程度であり、連続した繊維をたどった長さは、少なくとも2mm以上のものが大半であった。
しかし、電圧を20kV、流量を50μL/secにすると液滴状になってしまい、微細長繊維層を形成することができなかった。
実施例1記載のポリビニルアルコール水溶液100質量部にポリエチレングリコール(分子量10万)を0.1質量部を加えた水溶液(導電率12μS/m、表面張力42dyne/cm)を用いて実施例1と同様に微細長繊維層を形成した。このときの電圧は20kV、流量は50μ/sec、電流値は10〜20μAであった。形成された長繊維層を電子顕微鏡観察すると、繊維が600nm程度であり、連続した繊維をたどった長さは少なくとも2mm以上のものが大半であった。
ポリビニルアルコール水溶液の濃度を5%、流量100μ/sec、電圧を50kVにすると実施例2の条件では液滴状になってしまい微細長繊維層を形成することができなかった。
ポリビニルアルコール(クラレ株式会社製 PVA117)の10%水溶液100質量部にエポキシ変性シランカップリング剤(信越化学製 KBM403)を1質量部添加し、さらにスチレンブタジエンラテックス(日本ゼオン製、S1X2、Tg12℃、固形分50%)を5質量部加えた水性液(導電率20μS/m、表面張力45dyne/cm)を遠心分離(2000rpm、5分)で異物をのぞいた後、50ccの容量を持つ注射器(プラスティック製)の中に入れ、先端の断面を平坦に加工した金属製の針(内径0.5mm)を取り付けた。この針の先端から32cm離れた位置にステンレス製の板を置き、その上に、水をわずかに噴霧してしめらせた電子写真用の上質紙(米坪64g/m水分12%)をおいた。注射器針にプラスとなるように高圧電源につなぎ、注射器の針とステンレス板の間に、電圧70kV、流量200μ/secの条件で、長繊維層を形成した。
形成された長繊維層を電子顕微鏡(倍率:10万倍)で観察すると、各長繊維の繊維径は50〜200nm程度であり、連続した繊維をたどった長さは、少なくとも2mm以上のものが大半であった。
これらの手順を繰り返して上質紙の全面を覆うように塗工量として0.5g/mとなるよう処理し、長繊維層が積層された積層体について、以下の特性を下記の手順で評価した。その結果を以下に示す。
(表面平滑性)
王研平滑度計で表面平滑性を測定した。長繊維層が形成された部分はいずれも200秒〜300秒であったが、長繊維層が形成されていない部分は30秒であり、本発明のように長繊維層を形成した紙の平滑性は格段に向上していた。
(網点再現性)
積層体の印刷適性を調べるために、J.TAPPI紙パルプ試験法No.24m「紙のグラビア印刷適性試験方法(印刷局式)」に従って、その印字品質を評価したところ、本発明の積層体はドットににじみ太りが見られず品質も優れていたが、長繊維層が形成されていないものはドットににじみ太りが見られ実用上に問題があった。
(インキ乾燥性)
RI印刷適正評価機(明製作所製)を用い、オフセット枚葉印刷用墨インキ0.5ccを展色して積層体の長繊維層面に印刷し、印刷の20秒後に該積層体の印刷面に対し、上質紙を押し付け圧5MPaで押し付け、上質紙表面へのインキの転移性を評価した。本発明の積層体には印刷インキの転移はほとんど見られなかったが、長繊維層を形成していない上質紙ではインキの転移が顕著に見られた。
(剛性)
JIS P 8143の紙パルプ試験方法に規定される、クラーク剛度を測定した。本発明の長繊維を積層した上質紙の値は、CDで22〜26cm/100であったが、長繊維層を形成していない上質紙は18cm/100であった。一般に電子写真用の上質紙の剛度は電子写真複写機の通紙性を左右すると言われており、本発明の長繊維層を積層した電子写真用紙は格段に剛性が向上していることがわかる。
(白色度、不透明度)
白色度を測定したところ、本発明の長繊維を積層した上質紙の値は85〜90%であったが、長繊維層を形成していない上質紙は79%であった。本発明の長繊維層は白色度を大幅に向上させる効果がある。不透明度は長繊維を積層した上質紙の値は80〜85%であり、長繊維層を形成していない上質紙は75%であった。
これらの結果から、長繊維層が形成された本発明の積層体が、表面平滑性だけでなく、インク乾燥性・インク受理性といった印刷特性などの基本性能や、紙そのものの剛性など力学的な物性も、従来に比べて飛躍的に向上していることは明らかである。
ポリビニルアルコール(クラレ株式会社 PVA117)の3%水溶液を遠心分離(2000rpm、5分)で異物をのぞいた後、50mlの容量を持つ注射器(プラスティック製)の中に入れ、先端の断面を平坦に加工した孔径0.5mmの金属製の針を取り付けた。この針の先端から30cm離れた位置にステンレス製の板を置き、その上に、水をわずかに噴霧してしめらせた電子写真用の上質紙をおいた。注射器の針とステンレス板の間に、0から20kVの電圧まで変化させながら徐々電圧を上げると、18kVで針の先端から液の吐出が始まり、噴霧状態となって、上質紙の表面に細かい繊維状の固まり(長繊維層)が形成された。これを繰り返して均一な長繊維層を形成した。長繊維層の厚みは5μmであった。形成された長繊維層を電子顕微鏡(倍率:10万倍)で観察すると、図1Aに示したような網目構造が確認できた。各長繊維の繊維径は400nm程度であり、連続した繊維をたどった長さは、少なくとも2mm以上のものが大半であった。
長繊維層が積層されたインクジェット記録紙について、以下の特性を下記の手順で評価した。その結果を以下に示す。
(表面平滑性)
王研平滑度計で表面平滑性を測定した。長繊維層が形成された部分は200秒であったが、長繊維層が形成されていない部分は30秒であり、本発明のように長繊維層を形成した紙の平滑性は格段に向上していた。
(インク吸収性)
評価用プリンターとしては、市販のインクジェットプリンター(エプソン社製、商品名:PM−770C)を用いた。A4サイズの上質紙の中央部分に、寸法10×10cmの正方形の前記インクジェット記録紙を貼り付け、インク吐出量が15g/mとなるようにブラックインクをベタ印字し、インクが長繊維層からあふれる様子を観察した。長繊維層を有する本発明品はインクの裏抜けも表面にインク溶剤があふれて手で擦っても滲んだり手が汚れたりすることはなかった。一方、長繊維層を形成していない用紙では、斑点状に裏抜けし、記録直後に手で触れると滲んだり汚れたりした。
(ドット再現性)
インクジェット記録紙の印刷適性を調べるために、インク吸収性を調べた記録済み用紙の印字品質を評価したところ、本発明のインクジェット記録紙はドットににじみ太りが見られず品質も優れていたが、長繊維層が形成されていないものはドットににじみ太りが見られ実用上に問題があった。
〔剛性〕JIS P 8143の紙パルプ試験方法に規定される、クラーク剛度を測定した。本発明の長繊維を積層した上質紙の値は、CDで22cm/100であったが長繊維層を形成していない上質紙は15cm/100であった。一般にインクジェットプリンター用紙の剛度はプリンターの通紙性を左右すると言われており、本発明の長繊維層を積層したインクジェット用紙は格段に剛性が向上していることがわかる。
これらの結果から、長繊維層が形成された本発明のインクジェット記録紙が、表面均一性及びインク吸収性だけでなく、インク乾燥性・といった記録特性などの基本性能や、紙そのものの剛性など力学的な物性も、従来に比べて飛躍的に向上していることは明らかである。
カオリン(商標:アストラプラス、イメリス社製)100部に、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ(商標:アロンA−9、東亜合成社製)0.2部を加え、コーレス分散機を用いて水分散して顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに、酸化澱粉(商標:ペトロコートC−8、日澱化学社製)2.0部と、スチレン−ブタジエンラテックス(商標:T−2550K、日本合成ゴム社製)10部とを添加、撹拌し、さらに水を加えて、固形分濃度が50%の塗被液を調製した。
この塗被液を、実施例2の微細長繊維層上に、ブレードコータを用いて固形分としての塗工量が10g/mとなるように塗工し160℃で乾燥し、カレンダー処理を施して塗工紙を作製した。
比較例1
電子写真用の上質紙に実施例5と同様の塗料を塗工しカレンダー処理を施して塗工紙を作製した。
比較例2
LBKP(フリーネス(CSF)=550ml)100部を含む水性パルプスラリーに、軽質炭酸カルシウム(商標:PC、白石カルシウム)5部を添加し、さらにパルプ100部当たり、澱粉1.0部、アルケニル無水コハク酸0.1部、及び硫酸バンド0.6部を添加し、得られたパルプスラリーを長網抄紙機に供して抄紙し、得られた湿紙に、澱粉からなるサイズ剤を乾燥塗布量が1.0g/mとなるようにサイズプレスにて塗布し、坪量が60g/m、密度が0.60g/cmの原紙を作製した。
上記のようにして得られた原紙に実施例5と同様の塗料を塗工しカレンダー処理を施して塗工紙を作成した。
(マクロブリスターおよびミクロブリスター)
塗工紙をオフセット印刷機並びに電子写真方式の複写機及びプリンターに使用した場合には、インクの乾燥時及びトナー画像の加熱定着時に、ブリスターを発生するという問題が生ずる。塗工紙に発生するブリスターにはマクロブリスターとミクロブリスターの2種類があり、前者は原紙層に含まれる水分が膨張して原紙層及び塗工層を変形させるもので、画像部に膨れが発生する。また後者は、インク又はトナーと塗工層の間において発生した水蒸気が膨張し、画像部に細かな膨れ及び光沢低下を生ずる。
実施例5および比較例1、比較例2で得られた塗工紙に、RI試験機にてオフセットインキT13を用いて印刷しブリスターの発生状況を確認した。
マクロブリスターの発生状況を目視で確認し、下記の評価基準で評価した。
○:マクロブリスターが認められない。実用上問題なく、品質も優れている。
×:マクロブリスターが紙面全面に認められた。実用上問題あり、品質も著しく劣っている。
ミクロブリスターの発生状態を拡大ルーペ(30倍)で観察し、下記の評価基準により評価表示した。
◎:ミクロブリスターが認められない。実用上問題なく、品質も優れている。
○:ミクロブリスターがやや認められる。実用上問題ない。
×:ミクロブリスターが著しく認められた。実用上問題あり、品質も著しく劣っている。
Figure 0004305447
上述のように、本発明によって、高い表面平滑性を有する積層体及び高い表面均一性及びインク吸収性を有するインクジェット記録紙並びそれらの製造方法を提供することができる。

Claims (14)

  1. 積層体であって、
    セルロース繊維を主体とする紙支持体と、
    該紙支持体の少なくとも片面に積層される微細な長繊維を含む層とからなり、
    前記長繊維を含む層が、オリフィスを備えた容器内に充填された長繊維の原料溶液に接する電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、前記電極板上に配置された紙支持体表面に、前記オリフィスから前記原料溶液を噴射することにより形成されたものである積層体。
  2. 前記長繊維が、1nm〜10μmの繊維径と、1mm以上の長さを有する繊維である請求項1記載の積層体。
  3. 前記長繊維が網目構造を形成している請求項1又は2に記載の積層体。
  4. 前記長繊維が、少なくとも1種の撥インク性高分子を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体。
  5. 前記長繊維が水素結合形成可能な官能基を有する直鎖状高分子であり、該官能基が分子量40〜5000の化合物と化学的に結合している請求項1〜4いずれか一項に記載の積層体。
  6. 積層体の製造方法であって、
    オリフィスを備えた容器内に充填された長繊維の原料溶液に接する電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、前記オリフィスから前記原料溶液を噴射する工程と、
    噴射された前記原料溶液により前記電極板上に配置された紙支持体表面に、長繊維を含む層を形成する工程とを含む積層体の製造方法。
  7. 記録材料であって、
    セルロース繊維を主体とする紙支持体と、
    該紙支持体の少なくとも片面に積層される微細な長繊維を含む層とからなり、
    前記長繊維を含む層が、オリフィスを備えた容器内に充填された長繊維の原料溶液に接する電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、前記電極板上に配置された紙支持体表面に、前記オリフィスから前記原料溶液を噴射することにより形成されたものである記録材料。
  8. 前記長繊維が、1nm〜10μmの繊維径と、1mm以上の繊維長さを有する繊維である請求項7記載の記録材料。
  9. 前記長繊維が網目構造を形成している請求項7又は8に記載の記録材料。
  10. 前記長繊維が、少なくとも1種の撥インク性高分子を含む請求項7〜9のいずれか一項に記載の記録材料。
  11. 前記長繊維を含む層の上に積層される塗工層をさらに含む請求項7〜10のいずれか一項に記載の記録材料。
  12. 前記長繊維が水素結合形成可能な官能基を有する直鎖状高分子であり、該官能基が分子量40〜5000の化合物と化学的に結合している請求項7〜11のいずれか一項に記載の記録材料。
  13. 請求項7〜12のいずれか一項に記載の記録材料からなるインクジェット記録紙。
  14. オリフィスを備えた容器内に充填された長繊維の原料溶液に接する電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、前記オリフィスから前記原料溶液を噴射する工程と、
    噴射された前記原料溶液により前記電極板上に配置された紙支持体表面に、長繊維を含む層を形成する工程とを含む記録材料の製造方法。
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