JP2004322440A - 積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低塗工量で、美粧な印刷適性に優れた積層体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】セルロース繊維を主体とする紙支持体の少なくとも片面に、微細な長繊維を含む層と、該層上に、少なくとも顔料及び/又は樹脂を含む層が積層されていることを特徴とする積層体である。また、オリフィスを備えた容器内に充填された長繊維の原料溶液に接する電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、前記オリフィスから前記原料溶液を噴射し、前記電極板上に配置された紙支持体表面に、長繊維を含む層を形成し、該層上に、塗工層を形成することを特徴とする積層体の製造方法である。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロース繊維を主体とする紙支持体を含む積層体及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、紙支持体に機能性の顔料及び/又は樹脂を含む塗工層を形成する際に、紙支持体表面の平滑性の不足や塗液の浸透の不均一性が改良された積層体である。得られた積層体は、従来のものに比べ格段に塗工量が少ない場合でも、平滑で均一な塗工面が得られるため、印刷適性や機能性が飛躍的に向上することを可能とする微細な繊維を含む層を有する積層体である。
【0002】
【従来の技術】
紙・板紙などの紙支持体上に塗工層を設け、機能性を発揮しようとすることは日常的に行われていることである。しかし、これら塗工紙の機能は紙支持体の地合いや平滑性あるいは液吸収性の不均一性などの要因に制限される場合がほとんどである。一般的に、印刷用紙の場合、微塗工紙からコート紙、さらにアート紙と美粧印刷を可能にするためには、塗工量を増加させていくのが現状である。
また、紙支持体を用いた場合、感熱紙やインクジェット用紙、ノーカーボン紙等の情報用紙などでも塗工層の均一性に依存した記録性を得るためには、液吸収性のないフイルム上に形成した塗工層などとは比べものにならない塗工量を必要としている。
これらのフィルム上への塗工量に比べて、紙支持体の塗工量の過剰さは、印刷用紙として、紙支持体上に顔料を塗工することを例にとると良く分かる。即ち、印刷用紙で顔料を塗工する場合、紙支持体の凹凸や液吸収性の不均一性から塗工量が、およそ10g/mを越えないと、紙支持体のパルプ繊維を完全に覆うことが出来ない。
また、一般的なコート紙は、15g/m以上が必要である。10g/m以下の塗工量では、パルプ繊維が塗工層表面に部分的に露出しており、印刷時には顔料を主体とする塗工層部分とパルプ繊維を主体とする部分が混在するためインキの受理性が異なり、不均一な印刷面しか得られない。このため、コート紙の下級グレードである微塗工紙などは5〜7g/m程度の塗工量しか付与されていないため、コート紙のような美粧印刷ができない。
一方、アート紙はコート紙より、さらに塗工量を10g/m程度増量したものであり、美粧印刷の最高位にあるグラビア印刷を可能にしている。このような現状では、印刷品位の要求に従って塗工量が選択されているのが現状であり、10g/m以下の塗工量でアート紙並みのグラビア印刷が可能であるものは考えられていないのが現状である。
【0003】
また、感熱紙やノーカーボン紙などの情報記録用紙において、その塗工量は1m当たり数グラムというものが殆どであるが、これら記録紙に与えられる熱や圧力などのエネルギーが記録紙中に含まれる染料系の化学反応を引き起こし可視情報として現れるものであるから、紙支持体上に繊維がある程度露出して、均一な塗工層が出来ていなくても、人間の目に必要な情報は得られるとの仮説に基づいている。しかし、同じ塗工量をフイルムのような染みこみのない基材上に形成した場合は紙に塗工した場合とは比較にならないような画像の良好な再現性を得ることが出来、写真画像などとは雲泥の差が生じる。しかし、紙や板紙を支持体にした場合、過大な塗工量を与えて支持体繊維を表に出さないようにすると、良好な画像の再現性が得られるが、塗工紙と同様の染みこみの不均一性による塗工膜厚の変動を回避することが出来ずフイルム並みの画像の再現性は得られない。
【0004】
紙、板紙などの紙支持体は、一次元のセルロース繊維を構成要素として集合させ、二次元素材としたものである。そのため、紙支持体の表面の平滑性は、構成要素、例えばセルロース繊維の太さ、長さ、集合状態の不均一性などに支配されており、通常、数十ミクロンから数百ミクロンあるいは数ミリにも及ぶ空隙を有している。
このような空隙は、紙支持体上に、顔料や樹脂からなる塗工層を設けようとすると、様々な問題を引き起こす。例えば、空隙が紙支持体の厚み方向にわたって形成され、貫通孔が形成されると、紙支持体の表面に塗工を行ったとき、塗工面から反対側の面まで塗工液が達し、汚れや面欠陥を引き起こす可能性がある。
また、貫通孔とならないまでも、セルロース繊維の集合状態の不均一性に由来して、紙支持体の表面に空隙分布が発生すると、塗工層の形成の際に、塗工層の厚みに不均一性が生じ、その結果、その上に印刷しようとするとインクの吸収が不均一になり、印刷べたの均一性や網点の欠落などの印刷欠陥が発生する。
この一因としては、表面に空隙がある部分とない部分とでは、紙支持体表面に液吸収性の高い部分と低い部分とが出来てしまい、塗工液がしみこむ際に厚み方向に量的なばらつきが生じ、その結果、塗工したときにムラが発生することが挙げられる。
実際には、これらの欠陥を回避するために厚い塗工層を形成する必要があり過大な費用を要しているのが現状である。
【0005】
したがって、紙支持体の表面平滑性を改善することは、紙支持体の製造における抄紙の基本的な技術課題として現在も多くの資金と知恵が注がれている。
例えば、従来より、紙支持体表面におけるセルロース繊維の集合状態の不均一性を回避する目的で、抄紙する際に、セルロース繊維の表面から微細な繊維素を生じさせ、繊維間の結合力を強める叩解処理が行われている。
さらに、この繊維素を出来るだけ均一に分布させてシートを形成させるために、抄紙機のワイヤー上での機械的振動を起こしたり、脱水工程に工夫が施されている。しかし、このような処理だけでは、本当にランダムな配向性を繊維同士が示すような、充分な表面平滑性を有する紙支持体を得ることができなかった。
また、叩解処理によりセルロース繊維が切断されて短繊維化し、紙支持体の剛性が低下するなどの問題もあった。
【0006】
また、紙支持体の表面平滑性を高めるために、紙支持体の抄紙段階で微細な繊維や顔料を添加して、セルロース繊維の形成する空隙を埋めたり、抄紙後、あるいは湿紙状態でサイズプレスやゲートロールで紙に顔料を表面塗工したり、できあがった紙に樹脂や顔料を含む塗工液を含浸あるいは塗工して空隙を埋めようという方法も一般的に行われている。
例えば、特許文献1〜3では、紙支持体の表面に微細化パルプ等の微細繊維を塗布することが行われている。これらの微細繊維は、繊維長が非常に短く、数ミクロン〜数百ミクロン程度であり、空隙内部に入って空隙を埋めることにより、表面平滑性を改善すると考えられる。
【0007】
しかし、いずれの方法も、低塗工量で充分な表面平滑性を有する紙支持体を得ることは困難である。例えば、特許文献1、2の場合、空隙を充分に充填できる量の微細繊維を塗布しなければ、空隙が充分に埋まらず、紙支持体の表面平滑性を改善できない。そのため、その上に塗工しても均一な塗工面は得られない。
また、多量に塗布して表面平滑性を良くすることも出来るが、空隙部分に充填された微細繊維の量とセルロース上に積層された微細繊維の量に大幅な差が生じるため、均一な塗工面は得られない。
さらに、サイズプレスやゲートロール等で微量の樹脂又は顔料を塗工して、平滑性と液吸収の均一性を良くしようとすることも通常行われることではあるが、上記微細繊維と同じように微量でセルロース繊維間の空隙を埋めることは出来ないため均一な塗工面が得られない。
このように、今までの各種の方法は長い技術の歴史の上に立って進歩しているが、革新的な技術進歩とは言い難い側面をもっており、表面が平滑で、塗工液の液吸収性が均一な紙支持体上に均一な塗工層を形成することは困難であった。
【0008】
一方、均一な塗工層を得るために、紙支持体上に繊維素からなる層を乾式で形成する方法には、バルキーな不織布を製造する方法として知られているフラッシュ紡糸法、メルトブローン法がある。フラッシュ紡糸法とは、溶媒に対する溶解性が、溶液に加える圧力で変化するような樹脂をノズルから噴出して瞬時に長繊維を得ることができるのがフラッシュ紡糸法である。しかし、特定の樹脂組成のものしか適用できず、セルロース繊維と比べれば同等かそれ以上の繊維径の長繊維しか得られないため、本発明のような微細な長繊維による効果は期待できない。また、メルトブローン法は、溶融したオレフィン系の樹脂をノズルから高い圧力で噴射させ、その周囲に空気流で乱流を作り噴射した繊維を目標とする基材に着弾させようとするものである。しかし、得られる繊維の分布を空気流で制御することになり、均一な薄い層を形成することは出来ない。
【0009】
近年、半導体などの固体物理学の分野では、ナノテクノロジーの研究、開発が盛んに行われている。その1つとして、最近、質量分析法で用いられているエレクトロスプレー法という技術を、ナノファイバーのようなミクロンオーダー以下の繊維からなる不織布の製造技術に応用することが研究されるようになっている。例えば、非特許文献1,2には、エレクトロスプレー法を用いたナノファイバーやそれを利用した薄膜コーティング技術が紹介されている。
また、特許文献4には、電圧印加条件下で溶液を油滴にして噴霧して基材表面をコーティングする方法が記載されている。これらは、それ単独で不織布にしたり、織り布や不織布を基材としてその表面にナノファイバー層を形成してフィルターを作ろうとするものであったり、基材表面を液滴で覆った後に乾燥して皮膜を得ようとするものであり、そこには本発明の概念は存在しない。
【0010】
エレクトロスプレー法とは、2〜20kV程度の高電圧を高分子溶液の入ったノズルの先端と対向電極板上間に加え、荷電した高分子をノズルの先端から噴射して基盤上にデポジットさせる方法であり、この方法による不織布の製造法はエレクトロスピニング法と呼ばれている。
エレクトロスピニング法は、特許文献8などが最初と言われておりその歴史は古い。しかし、工業的に検討された例はほとんどなく、1990年代初頭にアメリカで、生物兵器用のガスフィルターを製造するための軍事研究の1つとして研究されており、その他にもエレクトロスピニング技術に関する様々な報告がなされている。例えば、特許文献5〜7には、各種のナノファイバーやそれを製造する方法としてエレクトロスピニング法が紹介されている。また、非特許文献3には、エレクトロスピニング法でナノファイバーを製造する際に好適な材料として、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体が研究されている。
しかしながら、フィルターなどの機能性不織布部材という概念での応用例しかなく、エレクトロスピニング技術を紙パルプ産業に応用するということは考えられていないのが実情である。
【0011】
【特許文献1】
特開昭58−214595号公報
【特許文献2】
特開平4−194097号公報
【特許文献3】
特開2001−288692号公報
【特許文献4】
特開2000−508008号公報
【特許文献5】
米国特許第6110590号明細書
【特許文献6】
米国特許第6308509号明細書
【特許文献7】
米国特許第6382526号明細書
【特許文献8】
米国特許第1975504号明細書
【非特許文献1】
繊維学会誌 Vol.59,No.1p3(2003)
【非特許文献2】
高分子論文集,Vol.59,No.11,pp.706−709(Nov.,2002)
【非特許文献3】
Journal of Polymer Science:Partb:Polymer Physics,Vol.37,3488−3493(1999)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、全く新しい概念による表面平滑性の高い基材を使用し、前記基材上に塗工層が形成された積層体は、低塗工量でも、美粧印刷が可能で、さらに高平滑な積層体を提供する。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、
(1)紙支持体の表面に、微細な長繊維を含む層が積層された基材が、表面平滑性の高いものであり、その上に形成した塗工層が均一な印刷適性を得たり、格段に少ない塗工量で、機能性(特に、美粧印刷適性)を発揮すること、及び
(2)該積層体の製造方法として、オリフィスを備えた容器内に充填された長繊維の原料溶液に接する電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、前記オリフィスから前記原料溶液を噴射し、前記電極板上に配置された紙支持体表面に、長繊維を含む層を形成し、該層上に、塗工層を形成する方法が好適であること
を見いだし、本発明を完成させた。
この積層体は、表面平滑性が良好であるだけでなく、塗工層の印刷特性の不均一性の改善をも可能とし、さらに格段に少ない塗工量で機能性を発揮できるものである。
【0014】
すなわち、本発明は以下の実施様態を含む。
[1] セルロース繊維を主体とする紙支持体の少なくとも片面に、微細な長繊維を含む層と、該層上に、少なくとも顔料及び/又は樹脂を含む層が積層されていることを特徴とする積層体。
[2] 前記長繊維が、1nm〜10μmの繊維径と、1mm以上の繊維長さを有する上記[1]記載の積層体。
[3] 前記長繊維が網目構造を形成している上記[1]又は[2]に記載の積層体。
[4] オリフィスを備えた容器内に充填された長繊維の原料溶液に接する電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、前記オリフィスから前記原料溶液を噴射し、前記電極板上に配置された紙支持体表面に、長繊維を含む層を形成し、該層上に、塗工層を形成する積層体の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の積層体は、セルロース繊維を主体とする紙支持体の片面又は両面に、微細な長繊維を含む層(以下、長繊維層ともいう)と、該層上に、少なくとも顔料及び/又は樹脂を含む層が積層されているものである。
【0016】
本発明は、このように長繊維を含む長繊維層と、該層上に、少なくとも顔料及び/又は樹脂を含む層(以下、塗工層ともいう)が、紙支持体表面に積層されていることにより、紙支持体表面の細孔が、長繊維によって橋掛けされ、紙支持体の表面平滑性が改善され、更に塗工を行うことによって細孔の空隙上に塗工液が塗布されようとした場合でも、該細孔上に橋掛けされた長繊維によって塗工層が完全に浸透してしまう事がないため、塗工層の厚みの均一性が向上し、印刷特性が改善される。更には、空隙が橋掛けされているため、塗工液の顔料や樹脂の浸透を妨げ、少ない塗工量で均一な表面性をもった塗工面が得られる。
【0017】
本発明の基材の上に形成する顔料及び/又は樹脂とは、印刷用紙に用いられるものや、感熱紙やインクジェット用紙、又はノーカーボン紙などに用いられるものであれば、特に限定されない。
【0018】
本発明で使用される塗工層の顔料としては、例えば、カオリン、クレー、サチンホワイト、酸化チタン、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、シリカ、活性白土、レーキ、プラスチックピグメント、合成シリカ、気相法シリカ、炭酸カルシウム、等の紙・板紙用に使用されている無機顔料を使用することが出来る。
【0019】
また、本発明に使用される塗工層の樹脂としては、スチレン・ブタジエン系、酢ビ・アクリル系、エチレン・酢ビ系、ブタジエン・メチルメタクリル系、酢ビ・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、イソブテン・無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、カゼイン、大豆蛋白等の天然系接着剤などのような一般に知られた接着剤が挙げられる。また、必要に応じて、増粘剤、保水剤、耐水化剤、着色剤等の通常の塗被紙用顔料に配合される各種助剤が適宜使用できる。
【0020】
本発明の顔料と樹脂を含む塗工液とは、その他添加剤と共に水に溶解もしくは分散せしめた液であって、顔料を主成分とし、樹脂、その他添加剤の濃度が、10〜70質量%のものである。顔料、樹脂の配合割合は、一般に顔料100質量部に対し、樹脂が5質量部以上、好ましくは、10〜70質量部である。
【0021】
また、塗工層の塗工量としては、1〜 50g/mである。好ましくは、2〜10g/mである。0.1g/mより満たないと、塗工層が紙支持体の表面を覆うことができない。50g/mより大きいと、得られる特性に格段の差別化が出来ないおそれがある。
【0022】
また、本発明の積層体は、従来の塗工液が塗布されたものとは異なり、橋掛けされて層が形成されるため、空隙内部が閉塞されないので、塗工液の媒体の液吸収性もよいし、塗工液の乾燥の際に紙支持体側に水蒸気が逃げやすくなり塗工液の乾燥性を格段に向上させることが出来る。また、印刷時のインキ乾燥性やセット性に優れる。
【0023】
さらにまた、本発明の塗工層を均一な厚みに分布させるためには、長繊維が撥インク性高分子を含有することが好ましい。撥インク性高分子とは、例えば塗工液が疎水性の場合には親水性高分子であり、塗工液が親水性の場合には疎水性高分子である。撥インク性高分子を含有していると、印刷を行った際に、長繊維層がバリアー層として機能し、塗工層が特定の部位、例えば空隙部分に過剰に吸収されるのを防ぐことができる。即ち、長繊維層の塗工液に対するバリアー性が向上し、均一な塗工層が得られる。
ここで、親水性高分子としては、水及び/又は有機溶剤を加えて溶液とすることができる高分子などが挙げられる。また、疎水性高分子としては、アルコールやトルエンなどの有機溶剤に溶解可能な疎水性樹脂が挙げられる。これらは単独で、又は混合して配合することができる。
【0024】
本発明で使用される長繊維の材料の種類や物性としては、通常、紙支持体が、不均一な大きさの空隙を有しているため、表面には部位によって吸湿性や液吸収性にばらつきが生じているため、吸湿性や液吸収性を均一化することが出来るものであれば、特に限定されない。例えば、塗工する場合に、水性塗料を用いる場合には疎水性の材料を用い、有機溶剤系の塗工液を塗工する場合には親水性の材料を用いるなど、撥溶剤性の材料を用いれば、長繊維層がバリアーとなって、過剰な塗工液の吸収を抑えることができる。
【0025】
本発明の紙支持体に含まれるセルロース繊維としては、各種パルプを抄紙した紙であればどのようなものでも良い。パルプの種類としては針葉樹、広葉樹をクラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法などで蒸解した化学パルプ繊維、レファイナー、グラインダーなどの機械力によってパルプ化した機械パルプ繊維、薬品による前処理の後、機械力によってパルプ化したセミケミカルパルプ繊維、あるいは古紙パルプ繊維、ECFパルプ繊維、TCFパルプ繊維などを例示でき、それぞれ未晒もしくは晒の状態で使用することができる。草本類から製造される非木材繊維としては、例えば綿、マニラ麻、亜麻、藁、竹、パガス、ケナフなどを木材パルプと同様の方法でパルプ化した繊維が挙げられる。
【0026】
本発明のセルロース繊維を主体とする紙支持体とは、基本的にセルロース繊維によって構成される紙支持体であり、これらのセルロース繊維の他に、その特性を損なわない範囲で、アクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維等の無機繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、高強度ポリオレフィン繊維(例えば高重合度ポリエチレン繊維と呼ばれる高強度繊維等)の有機繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニリデン繊維などの合成樹脂繊維を含んでも良いものである。セルロース繊維は、紙支持体を構成する総固形分に対し、50質量%以上含まれていることが好ましい。これらの繊維を一次元素材として二次元のシートとした紙支持体は湿式抄紙で得られる紙や板紙であり、その坪量は問わない。また、これらのパルプにサイズ剤、紙力剤、歩留まり向上剤等の薬品や、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ等の填料を内添又は外添することができる。
【0027】
本発明の微細な長繊維とは、紙支持体を構成するセルロース繊維の繊維径よりも小さい繊維径を有し、かつ紙支持体中に形成される空隙により紙支持体表面に形成される開口部(細孔)の直径よりも長い繊維長を有する繊維である。長繊維の繊維径が、紙支持体のセルロース繊維の繊維径よりも小さいことにより、表面平滑性の高い積層体となる。
【0028】
長繊維は、径方向の断面形状が、円形や楕円、扁平、星形などの様々な形状を有していてよいが、少ない層の厚みで平滑性を得るには、高いアスペクト比(紙支持体表面に対する水平方向の径/垂直方向の径)を有する平板状の断面を有するようなものが好ましい。長繊維の形状が複雑になるほど、長繊維の比表面積が大きくなる。長繊維の比表面積が大きいほど、液吸収性があり、目的によっては好ましい。
【0029】
また、長繊維の繊維径、すなわち長繊維の断面の外周をすべて含む円で近似した繊維径は、紙支持体のセルロース繊維の繊維径よりも小さければ特に制限はないが、好ましくは1nm〜10μm、より好ましくは10nm〜1μmである。長繊維の繊維径がこの範囲内であると、塗工面の表面平滑性が高く、塗工液の吸液性が均一な積層体となる。
また、長繊維の繊維長とは、細孔の直径よりも長ければ特に制限はないが、1mm以上の長さを有するものであれば、紙支持体表面に存在するほぼ全ての細孔に対する橋掛けが可能となるので好ましい。さらに好ましくは、1.5mm以上が、製造上好ましい。ここで言う繊維長とはある着目した繊維を一筆書きの要領でたどった場合の長さであり、理論的には数メーターにも及ぶ物があってもおかしくないと言われている。本発明では、1mm以上の長さを有していれば、セルロース繊維間を橋掛けして覆うことができ均一な長繊維層となる。また、長繊維の長さが長いほど、折り畳まれた長繊維の集合体が形成されるため長繊維層による表面平滑性改善効果が高くし、塗工層の均一性が増し格段に塗工量が少なくても機能性が発揮できる。
なお、実際の長繊維層は、様々な繊維径及び繊維長の長繊維を複数含有していることが多いが、製造時の条件を選べば、均一な含有する長繊維を均一なものに近づけることが出来る。
【0030】
長繊維層の厚さは、坪量として0.01g/m〜30g/mに相当する厚み、即ち 0.1 〜30 μmにすることが好ましい。さらに好ましくは0.1g/m〜10g/mに相当する厚み、即ち0.1〜10μmである。長繊維層の厚さをこの範囲内とすることにより、紙支持体表面の細孔や凹凸等を解消し、表面平滑性を改善することができる。
【0031】
長繊維層中において、長繊維は、互いに全く重ならない状態(単繊維)で存在していてもよいが、網目構造を形成していることが好ましい。長繊維が網目構造を形成していることにより、表面平滑性がさらに向上する。また、引張り強度や、引裂強度、破裂強度など紙支持体表面の力学特性が向上する。
【0032】
網目構造としては、例えば、図1(a)〜(c)に示すような構造を例示できる。
図1(a)に示す網目構造は、1本ないし2本以上の直線状の長繊維が複数の交点を介して折り重なった格子状の構造である。この場合は、細い繊維径で構成されているため紙の表面の凹凸を埋めやすくより高い平滑性が得られる。
図1(b)に示す網目構造は、螺旋状に旋回した繊維や部分扁平あるいは全扁平な断面を持つ繊維が絡みあった、マスクメロンの表面に見られるような樹状の構造である。長繊維が多数に分岐して複雑な網目構造を形成しており、実質的に、連続した1本の長繊維によって構成されている。このような構造の場合、単繊維の場合や図1(a)の網目構造に比べて、引き抜き抵抗が大きく、引っ張り強度の向上が期待できる。
図1(c)に示す網目構造は、図1(a)に示す網目構造の長繊維上に複数のビーズが形成されている構造である。このような構造の場合、図1(b)と同様、引き抜き抵抗が大きい。そのため、単に単繊維だけからなるものに比べると飛躍的な引っ張り強度の向上が期待できる。実際は、これらの構造の繊維層が厚み方向に重なり合って層を形成している。そのため、本発明においては、このような網目構造の1種、又は複数の網目構造が複合したものが、長繊維層に含まれていることが好ましい。
【0033】
長繊維を構成する材料(以下、長繊維材料という。)としては、水及び/又は有機溶剤を加えて溶液又は乳化物とすることができる高分子や、加熱状態で溶融して液体状態を示す高分子、さらには常温で液体状態を示す高分子であれば特に制限はなく、分子量にすれば、数千のオリゴマーから百万にも及ぶ超高分子まで使用出来る。しかし、分子量によって出来る長繊維の形態や性質が異なるため適宜選択する必要がある。例えば、一般に紙塗工用の水溶性高分子や溶剤可溶性の有機樹脂や不織布の材料として公知の材料が使用可能である。これらの樹脂はエレクトロスピニングされる最終段階で繊維状になるために、エレクトロスピニングされる際の温度で成膜するような高分子である必要がある。
これらの長繊維材料は、本発明の積層体の製造において、主に、水溶液や水乳化物の形態で利用されるが、アルコールやトルエン、メチルエチルケトン(MEK)、キシレン、酢酸エチルなどの有機溶剤に溶解した有機溶剤溶液や有機溶剤乳化物の形態で利用されてもよい。
【0034】
長繊維材料の水及び/又は有機溶剤を加えて溶液とすることができる高分子としては、エーテル基、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基、スルホン酸基等の親水性基を有する天然又は合成の水溶性高分子が好ましく用いられる。
【0035】
本発明の水溶性高分子としては、特に限定されないが、例えば、酸化デンプン、デキストリン等のデンプン類;ポリビニルアルコール及びその誘導体類;カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、パルプ繊維を溶解したセルロースそのもの等の天然又は合成のセルロース;ゼラチン、カゼイン、でんぷん;ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリアクリロイルモルホリン、水溶性ポリビニルアセタール、ポリ−N−ビニルアセトアミド、ポリ−N−ビニルホルムアミド、等がある。
また、水分散型のエマルジョン樹脂としては、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、エチレン、ブタジエン、カルボン酸やマレイン酸など酸性分などをその重合体の構成要素として含む合成高分子重合体やそのラテックス、等があり、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、ポリウレタン系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、アクリロニトリル/スチレン共重合樹脂(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合樹脂(ABS)等がある。中でも、ポリビニルアルコール及びその誘導体、並びにデンプン類などが安価であり、いろいろな目的にあった性状の長繊維が得られるため好ましい。
また、アルコールやトルエンなどの有機溶剤に溶解可能な疎水性樹脂としては特に限定されないが、例えば、エチルセルロース、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸イソプロピル等のポリメタクリル酸エステル、またはポリメタクリル酸誘導体からなる樹脂、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂も利用可能である。
【0036】
さらに、紙支持体との密着性を向上させるため、粘着剤や接着剤に用いられるアクリル酸エステル重合体、エポキシ系化合物、ウレタン系化合物などを用いても良い。
【0037】
また、長繊維に用いる加熱状態で溶融して液体状態を示す高分子としては、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレンやポリエステル、ポリアミドなどのプラスチック材料が使用できる。
さらに、常温で液体状態を示す高分子としては、シリコーン系樹脂やエネルギー線硬化用のオリゴマーやプレポリマーが使用できる。
エネルギー線硬化性不飽和有機化合物としては、高架橋の樹脂層を形成しうるものであれば、単官能モノマー、多官能モノマーあるいはオリゴマーでもよく、これらは単独で使用しても、あるいはそれらを二種類以上混合したものであってもよい。例えば、オリゴマーとしては、(1)ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールF型、エポキシ化油型、フェノールノボラック型、脂環型などのエポキシ系アクリレート、(2)ウレタン系アクリレート(3)不飽和ポリエステル(4)ポリエステル系アクリレート(5)ポリエーテル系アクリレート(6)ビニル/アクリル系オリゴマー(7)ポリエン/チオール(8)シリコン系アクリレート(9)ポリブタジエン系アクリレート(10)ポリスチリルエチルメタクリレート等が挙げられる。また、シリコーン系樹脂としては、ポリジメチルシロキサン等が用いられる。
これらの長繊維材料はそれぞれ単独で用いてもよく、また、目的に応じて2種以上を混合して用いてもよい。2種以上の長繊維材料を混合して用いることにより、その相溶性や、製造時に用いられる溶剤(水又は有機溶剤)に対する溶解度の差等を調節して、得られる長繊維の親水性や疎水性、モルホロジー(長繊維の繊維径、繊維長、断面形状、繊維表面の形状など)を調節することができる。
【0038】
長繊維が、長繊維材料としてセルロースを含む場合、紙支持体との相性がよく、また、透明な層を形成可能であるので、紙支持体の風合いを損なわないため好ましい。さらに、リサイクルも容易である等の利点を有する。
【0039】
また、長繊維は、上述のような繊維材料の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、長繊維材料を溶液又は乳化物とした際の該溶液又は乳化物の粘性や表面張力、導電率を変化させるため、長繊維材料と溶媒の比率である固形分濃度や長繊維の分子量を調整したり、NaCl、ポリリン酸塩、等の無機塩、各種カルボン酸のナトリウム塩やアンモニウム塩などの有機塩、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤、ポリカルボン酸やスルホコハク酸などの濡れ剤、消泡剤、さらには導電率を調整するためにスチレンスルフォン酸塩や第4級のカチオンやアミン化合物等の添加物を含んでもよい。
【0040】
さらに、本発明の積層体においては、長繊維層は多層であってもよい。繊維径や含有する樹脂など、異なる物性を示す長繊維を用いて、物性の異なる複数の長繊維層を複数積層した多層構造であっても良い。
また、これら長繊維層が形成された紙支持体の2枚以上を、該層上に積層した積層体や、紙支持体に長繊維層を積層し、さらに紙支持体を積層することを繰り返した積層体であっても良い。例えば、繊維径が次第に細くなっているような傾斜構造、即ち、紙支持体上に、繊維径100nmの長繊維からなる網目構造を含む第1の長繊維層を形成した後、徐々に繊維径の小さい長繊維からなる網目構造を含む層を繊維径50nmの長繊維からなる網目構造を含む第2の長繊維層と、繊維径10nmの長繊維からなる網目構造を含む第3の長繊維層(最表層)とがこの順番で積層されている積層体は、最表層により非常に表面平滑性の高い緻密な表面を有するものとなるだけでなく、第1及び第2の長繊維層が塗工液等を吸収しやすく、均一性に優れているので好ましい。
【0041】
本発明の積層体は、下記の製造方法により製造することができる。
【0042】
≪積層体の製造方法≫
本発明の積層体の製造方法は、前述したエレクトロスピニングを用いた方法であり、オリフィスを備えた容器内に充填された長繊維の原料溶液に接する電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、前記オリフィスから前記原料溶液を噴射し、前記電極板上に配置された紙支持体表面に、長繊維を含む層を形成することを特徴とする。エレクトロスピニングでは、オリフィス2の先端に滲み出た液滴が対向に配置された電極板4との間に印加された電圧による電場により帯電する。液滴の表面張力が液滴表面に乗った電荷による反発力より大きい場合は液の吐出は起こらないが、液の表面張力にうち勝つ電荷密度にまで電圧を上げると吐出が始まる。吐出した液滴からは溶媒の蒸発が始まり液体の表面積が小さくなる結果、液体表面の電荷密度がさらに大きくなって吐出力が加速され安定な連続吐出がえられる。吐出される液はオリフィスの直径よりも細い状態で一本の連続的な状態になる。そして、ある長さまで連続な状態が続くと細い液体の状態は不安定になりフラッシュ的に広がりながら、溶媒の蒸発が起こり細い長繊維が網目状に電極上に着地する。
【0043】
図2に示すエレクトロスピニング装置を用いて、本発明の製造方法の第1実施形態を説明する。
図2(a)に示すように、エレクトロスピニング装置1は、オリフィス2を備えた容器3と、オリフィス3から所定の距離離れた位置に対向配置された電極板4とを備えており、オリフィス3及び電極板4にはそれぞれ電極5,6でアースに接続されている。
【0044】
本発明において、オリフィス2を備えた容器3としては、容器内に充填された原料溶液に対して印加が可能であり、該原料溶液をオリフィス2から押し出すことができるものであれば特に制限はなく、例えば金属製、又はガラス製の注射器、ピペット等を用いることができる。
また、容器3と電極板4は、オリフィス2と電極板が対向するような関係であれば上下、左右いかなる方向にも配置することが出来る。
オリフィス2の大きさ及び数としては、特に制限はなく、得ようとする長繊維の繊維径、長繊維を積層する紙支持体の大きさ等に応じて適宜決定すればよい。オリフィスの内径は10μm〜10mm、さらに好ましくは100μm〜1mmである。細径のオリフィスは粘性の低い溶液を扱い、広いものは高粘度の溶液に好適である。また、エレクトロスピニングではこれらのオリフィス径よりも細い径の長繊維が得られるため、オリフィスのつまりなどのトラブルを引き起こしにくい。
【0045】
オリフィス2と電極板4との距離は、好ましくは数ミリから数十センチに設定する。この距離を変化させることによって、長繊維の繊維径や繊維長、網目構造の形態などを変化させることが出来る。
例えば、オリフィス2と電極板4との距離が遠いほど、得られる長繊維の繊維径が小さくなり、繊維長が長くなる。一方、該距離が近いほど、得られる長繊維の繊維径が大きくなり、繊維長が小さくなる。もちろん、原料溶液の表面張力や粘度あるいは導電性と引加する電圧との間には一定の関係があるため、電極間距離だけで繊維径と繊維長が決まるわけではない。例えば、オリフィスと電極間の距離を一定にした場合、一般的に、表面張力を低くしたり粘度を小さくすると細い繊維径の長い繊維長が得られる。また、表面張力が一定であれば、印加電圧が高いほど細い繊維径と長い繊維長が得られる。
また、長繊維を網目構造とする場合、オリフィス3と電極板4との距離が遠いほど、得られる長繊維の形態が上述した図1(a)に近くなり、オリフィス3と電極板4との距離が近いほど、得られる長繊維の形態が上述した図1(b)に近くなる。図1(c)は、オリフィス3と電極板4の距離がさらに短くなり液滴が完全に繊維状態になる前に電極板4に着地したものを含んだ物と考えられる。
【0046】
まず、上述した長繊維材料及び任意の添加物に溶剤を加えて原料溶液7を得る。
原料溶液7の粘度は、10―2cps〜10000cpsとすることが好ましく、10―0cps〜1000cpsとすることがより好ましい。
溶剤としては、好ましくは水が用いられるが、アルコールやトルエンなどの有機溶剤を用いてもよい。また、長繊維材料としてセルロースを用いる場合は、銅−アンモニア溶液、銅−エチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液として用いることが好ましい。必要に応じて液を加温することも有効である。
原料溶液7は、長繊維材料及び任意の添加物が完全に溶解し、溶剤と完全に混合した溶液の形態であってもよく、溶解した液体粒子がコロイド粒子あるいはそれより粗大な粒子として溶剤中に分散した乳化物の形態であってもよい。
【0047】
次に、原料溶液7を容器3内に充填し、電極板4上、容器3と電極板4の間に、紙支持体8を配置し、容器3と電極板4との間に電圧を印加しながら、オリフィス2から原料溶液7を押し出し、吐出させる。
原料溶液の吐出量は、オリフィス2の先端に原料溶液7の液滴が現れる程度でよい。液滴が帯電して吐出が始まると容器3にある液体は自動的に連続供給されるが、目的によっては容器3内に加圧、減圧の圧力をかけることによって吐出する量を制御することも出来る。
容器3と電極板4とに印加する電圧は、好ましくは2kV〜50kVとする。電圧が2kV未満であると、電界による液滴の帯電が不十分になり、長繊維の吐出が起こらず、電圧が50kVを越えると、電極間で短絡しやすくなるおそれがある。
また、電極5は、例えばオリフィス2が金属製の場合はオリフィス2に接続されていてよく、また、容器3内に充填された原料溶液7中に直接電極5を入れてもよい。
【0048】
容器3と電極板4との間に電圧を印加すると、図2(b)に示すように、オリフィス2と電極板4との間に静電的な場が形成され、原料溶液7が帯電し、電極板4方向に移動する。帯電の極性は、長繊維材料の性質に応じて正負いずれかが選択される。
【0049】
帯電した原料溶液7は、電極板4方向に移動する際の溶剤の蒸発につれて表面の電荷密度が高くなる。そして、原料溶液7の粘度と静電的な力が競争し、静電的な力が勝つと、原料溶液7に鞭を打ったようなしなり7aが発生する。さらに静電的な力が強まると、しなり7aの状態が更に変化し、液滴が噴霧されるような状態7bになる。原料溶液7は、この液滴が噴霧される状態7bから紙支持体8の表面までの間に溶剤が完全に蒸発して長繊維7cを形成する。形成された長繊維7cは、紙支持体8表面に積層され、長繊維層を形成する。
【0050】
図2(a)には、容器3を1個設けた例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、それぞれ電極が接続された容器を複数用意し、それぞれに異なる長繊維材料を含む原料溶液を充填する。そして、各容器に対し、順番に印加することにより、容易に長繊維層を多層とすることができる。
また、連続した幅の広い紙を支持体にして、その上に長繊維層を形成しようとする場合、複数個の容器を幅方向に配置することにより紙支持体の全面を覆うように長繊維層を形成することも出来る。
また、図2(a)では、容器3と電極板4とを横に配置しているが、容器3の下方に電極板4を配置してもよい。
【0051】
また、本発明においては、紙製造において通常行われるように、これらの長繊維層を紙支持体上に形成した後に、ロールのニップ間を通して平滑化したり、加熱された平滑な鏡面に、紙支持体上の長繊維層側をあてて乾燥して平滑な面を得たりすることも出来る。
また、長繊維を紙支持体上の特定の望みの場所のみに形成して、特定の部分だけに特異な物性を付与するようなことも出来る。
【0052】
また、特許文献5〜7等には各種のナノファイバーやそれを製造する方法としてエレクトロスピニング法が紹介されているが、本発明においてはこれらの文献に記載される方法を用いても良い。
【0053】
次に、基材の上に塗工層を形成する方法としては、従来公知の塗工装置又は印刷装置であれば特に限定されない。塗工装置としては、例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、ブラシコーター、ダイコーター、カーテンコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、グラビヤコーター、ゲートロールサイズプレス、ビルプレードサイズプレス、ブレードメータリングサイズプレス、スライドビートコーター等の装置が適宜用いられる。これらの装置はオンマシンコーター或いはオフマシンコーターの形として慣用の方法で用いられるものであって、特に限定するものではない。また、これらの複数の塗被装置とキャレンダー装置等を配備した高速のオンマシンコーター等を用いると、極めて効率良く、且つ高品質の積層体を得ることができる。
また、印刷装置としては、例えば、オフセット印刷機、グラビア印刷機、凸版印刷機等を用いることができる。
【0054】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、下記の実施例は本発明を限定するものではない。また、特に断らない限り実施例中の部は質量部を示す。さらにまた、配合の部数は、特に断らない限り、固形での配合を示す。
【0055】
<実施例1>
ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ社製)の2%水溶液を遠心分離(2000rpm、5分)で異物を除いた後、50mlの容量を持つ注射器(プラスティック製)の中に入れ、先端の断面を平坦に加工した金属製の針(内径0.5mm)を取り付けた。この針の先端から32cm離れた位置にステンレス製の板を置き、その上に、水をわずかに噴霧して湿らせた上質紙(坪量64g/m)を置いた。注射器針がプラスとなるように高圧電源につなぎ、注射器の針とステンレス板の間に、0から20kVの電圧まで変化させながら徐々に電圧を上げると、10kVで針の先端から液の吐出が始まり、12kVで噴霧状態となって、上質紙の表面に細かい繊維状の固まり、長繊維層が形成された。
形成された長繊維層を電子顕微鏡(倍率:10万倍)で観察すると、図1(a)のような繊維層が確認できた。各長繊維の繊維径は400nm程度であり、連続した繊維をたどった長さは、少なくとも2mm以上のものが大半であった。
【0056】
これらの手順を繰り返して上質紙の全面を覆うため、塗工量として0.5g/mとなるように長繊維層を形成した基材を得た。得られた基材上に、炭酸カルシウム85部、スチレン−ブタジエンラテックス10部、酸化デンプン5部からなる固形分濃度55%塗料をメイアーバーを用いて塗工した後、120℃の熱風オーブンで乾燥して塗工量5g/mの印刷用の積層体を得た。その積層体をキャレンダーロールに通紙した。
【0057】
<実施例2>
実施例1において、長繊維層を形成した基材上に、塗工量10g/mとした以外は、実施例1と同様にして印刷用の積層体を作成した。
【0058】
<比較例1>
実施例1において、長繊維層を形成しない事以外は、実施例1と同様にして印刷用の積層体を作成した。
【0059】
<比較例2>
実施例2において、長繊維層を形成しない事以外は、実施例2と同様にして印刷用の積層体を作成した。
【0060】
得られた印刷用の積層体について、以下の特性を下記の手順で評価した。その結果を表1に示す。
【0061】
〔表面平滑性〕
王研式平滑度計で表面平滑性を測定した。
【0062】
〔網点再現性および官能評価〕
塗工用紙の印刷適性を調べるために、J.TAPPI紙パルプ試験法No.24m「紙のグラビア印刷適性試験方法(印刷局式)」に従って、その印字品質を評価した。
○ : 網点欠落は10〜30%で良好。
△ : 網点欠落が30%以上で不良。
× : 網点がドットを形成しない。
【0063】
【表1】
Figure 2004322440
【0064】
表1の結果から、長繊維層が形成された本発明の積層体は、表面平滑性や網点再現性などの印刷特性などの基本性能が、従来に比べて飛躍的に向上していることは明らかである。
【0065】
【発明の効果】
上述のように、本発明によって、低塗工量で、高い印刷適性を有する積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】長繊維の網目構造の一例を示す模式図である。
【図2】本発明において好ましく用いられるエレクトロスピニング装置の概略図である。
【符号の説明】
1…エレクトロスピニング装置、2…オリフィス、3…容器、4…電極板、5…オリフィス2のアース、6…電極板4のアース、7…原料溶液、8…電極板4の上に置かれた紙支持体、9…電極

Claims (4)

  1. セルロース繊維を主体とする紙支持体の少なくとも片面に、微細な長繊維を含む層と、該層上に、少なくとも顔料及び/又は樹脂を含む層が積層されていることを特徴とする積層体。
  2. 前記長繊維が、1nm〜10μmの繊維径と、1mm以上の繊維長さを有する請求項1記載の積層体。
  3. 前記長繊維が網目構造を形成している請求項1又は2に記載の積層体。
  4. オリフィスを備えた容器内に充填された長繊維の原料溶液に接する電極と、前記オリフィスに対向配置された電極板との間に電圧を印加しながら、前記オリフィスから前記原料溶液を噴射し、前記電極板上に配置された紙支持体表面に、長繊維を含む層を形成し、該層上に、塗工層を形成することを特徴とする積層体の製造方法。
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