JP2012040788A - インクジェット記録用キャストコート紙の製造方法及びインクジェット記録用キャストコート紙 - Google Patents

インクジェット記録用キャストコート紙の製造方法及びインクジェット記録用キャストコート紙 Download PDF

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Abstract

【課題】生産性に優れたインクジェット記録用キャストコート紙の製造方法を提供することにある。
【解決手段】紙基材上に、少なくとも一層の塗工層を有し、塗工層の少なくとも一層が顔料、バインダー、インク定着剤を含有するインク定着層であり、塗工層の少なくとも最表層がキャスト法により形成されるインクジェット記録用キャストコート紙の製造方法において、紙基材の地合指標が60未満であることを特徴とするインクジェット記録用キャストコート紙の製造方法である。
【選択図】なし

Description

本発明は、生産性に優れたインクジェット記録用キャストコート紙の製造方法に関する。
インクの液滴を微細なノズルから射出し、被記録体表面上に付着させることにより画像を形成させるインクジェット記録方式は、記録時の騒音が少ないこと、フルカラー画像の形成が容易であること、高速記録が可能であること、および、他の印刷装置より記録コストが安価であることなどの理由により、端末プリンター、ファクシミリ、プロッター、あるいは帳票印刷等で広く利用されている。近年、インクジェットプリンターは高精細化・高速化が進み、また、デジタルカメラ等による撮影画像の出力などを目的として一般家庭ユーザーへの普及が拡大している。
そのなか、インクジェット記録用キャストコート紙には、写真画像出力用の記録体として、記録体表面の光沢性が優れるとともに、インク滲みや印字ムラが無い優れた記録画質が求められる。加えて手軽な写真画像出力のためには、記録体はなるべく安価であることが好ましく、インクジェットプリンターの一般家庭ユーザーへの普及が進んだ状況下、その要求は益々高まってきている。
光沢タイプのインクジェット記録体を製造する方法の一つとして、印画紙原紙等の高平滑・高光沢な基材を用い、その基材の光沢性を維持したまま透明性の高いインクジェット記録層を塗布して記録体を作成する方法が有る。この方法には塗工層への加圧を必要とせずに光沢が得られ易いため、インク吸収性に優れるため高い記録画質を持つインクジェット記録体を得るには適しているが、高平滑・高光沢な基材を得るためのラミネート加工等に費用がかかり記録体が高価となってしまい易い傾向が有る。
一方、安価な紙基材を使用し、紙基材上に塗工した塗料を乾燥してからスーパーカレンダーやグロスカレンダー処理によって表面を平滑化する方法や、塗工面が湿潤状態(再湿潤状態を含む)である間に、加熱された鏡面ドラムに圧接・乾燥して光沢発現する方法(所謂、キャスト加工)がある。しかしカレンダーによる処理は強圧により塗工層の空隙を潰してしまうためインク吸収性が十分に得られない傾向がある。
紙基材を使用した光沢インクジェット記録体の製造方法として、キャスト加工を用いる方法がある。しかし、以下に述べるように、キャスト加工によるインクジェット記録用紙は、生産性が低いため、コストダウンがし難く、安価な記録用紙を提供できていないのが現状である。
キャスト加工の方法は、高光沢印刷用塗工紙の代表的な製造方法の一つである。湿潤状態の塗工面を加熱された鏡面ドラムに圧接・乾燥し、ドラムから剥離させるものであるが、湿潤状態の塗工面に含まれる水分は、ドラム側からは蒸発できないため、基材を通り裏面側より蒸発・乾燥される一方、塗工面は鏡面ドラムの面が写し取られるため高光沢な塗工面が得られる。
キャスト加工方式の技術課題として、鏡面ドラム上で乾燥させた用紙をドラムから剥離させる離型性と呼ばれる適性が必要である。離型性が不良の場合、ドラム表面から用紙を剥離することが困難になり用紙が破れて連続的な操業ができなくなることがある。
離型性の付与のため、例えば、特許文献1のようにドラム表面と塗工液中に離型剤を用いる方法や、特許文献2のように、特殊な装置を用いてドラム表面に離型剤を供給しながら製造する方法などが提案されている。
従来の印刷用紙塗工紙であれば塗工層はアニオン性であり、特許文献1や特許文献2に開示された製造方法は離型性を付与して長時間連続して操業するには有効であった。しかしながらインクジェット記録用紙の場合、通常、アニオン性のインク染料を保持できるようにカチオン性化合物をインク定着剤として用いる。これらのカチオン性化合物は離型性を阻害するため、これらの特許文献に例示された技術を用いても、印刷用塗工紙に比べて離型性は不十分であった。
またこれらの技術は、長時間のドラムからの離型性を維持することを目的としており、キャスト加工速度に関しては考慮されていない。安価なインクジェット記録用紙への要求を受けて、より高い生産性を実現するためには、連続的な離型性の付与のみならず、キャスト加工速度を向上させることが、重要な技術課題となってきている。
特開平3−113090号公報 特開平11−279987号公報 特許第3022173号公報 特許第3204280号公報 特開2006−43926号公報
本発明者等は、カチオン性インク定着剤を含有するインクジェット記録用キャストコート紙の、キャスト加工速度の向上について鋭意研究を行なった結果、鏡面ドラムからの離型性を維持するだけでは不十分であり、塗工層が湿潤状態(再湿潤状態を含む)である間に加熱された鏡面ドラムに圧接されてから、該塗工層が乾燥され、鏡面ドラム表面から剥離されるまでの時間を短縮することが重要であることを見出した。
鏡面ドラムに圧接された塗工層は、塗工層中の水分により鏡面に密着するが、鏡面ドラム上で充分に乾燥が進み、密着に必要な水分を失うと、鏡面ドラム上から自然に離型する(所謂、自然離型)。一方、鏡面ドラムに圧接された塗工層中の水分がまだ多く含まれ鏡面ドラムに密着しているうちに、外力を加えて塗工層を引き剥がすこともできる(所謂、強制離型)。
強制離型の場合、自然離型に比較して遥かに大きな力が塗工層に加わるため、離型剤等を用いたとしても、塗工層の一部が少量ずつ鏡面ドラム上に蓄積してしまい、連続的な操業が不可能となり生産性が低下しやすい。印刷用紙塗工紙であれば接着剤の配合量を増やし、塗工層強度を非常に強くすれば鏡面ドラム上への蓄積が少なくなるのである程度の連続的な操業も可能であるが、インクジェット記録用紙の場合、インク吸収性の維持のために接着剤の配合量はさほど増やせないため、塗工層の強度を充分に強めることが難しく、強制離型によってインクジェット記録用キャストコート紙を生産性高く製造することは現実的ではない。
そのためインクジェット記録用キャストコート紙の場合、自然離型するまでの間は鏡面ドラムに塗工層を接触させておく必要があるため、自然離型するまでの時間(離型時間)T(秒)と、キャスト加工可能速度V(m/秒)、鏡面ドラムの円周のうち塗工層と接触させておくことが可能な長さL(m)の関係は以下の式(I)で表される。
V=L/T・・・・(I)
理論的には、巨大な円周の鏡面ドラムを用いて(Lを大きくし)キャスト加工可能速度Vを上げる方法も無いわけではないが、鏡面処理の実施や安定的な操業の実施が可能な大きさは限られ、その条件下でキャスト加工可能速度Vを上げるためには、実質的に離型時間Tを短くすることが必須である。
本発明者等は、インクジェット記録用キャストコート紙で使用する紙基材の地合指標を低めの範囲に制御することにより、キャスト加工可能速度Vを上げることを見出したのである。
インクジェット記録用紙において紙基材(原紙)の地合に着目した技術としては、特許文献3〜特許文献5のような技術が公開されている。
しかし特許文献3、特許文献4は、地合指標の良好な原紙を用いること等で印字の滲みやムラの抑制を目的としており、また特許文献5は、地合指標の良好な原紙を用いること等で高い平滑性と優れた光沢性とを目的としており、地合指標を低めの範囲に制御すること等でキャスト加工の生産性の向上させる本発明とは、発想や目的が異なるものである。実際、特許文献3〜5はキャスト加工の離型性・生産性については考慮されておらず、必ずしも優れているものではなかった。
本発明は、生産性に優れたインクジェット記録用キャストコート紙を提供することを目的とする。
本発明は以下(1)〜(5)に記載のとおりである。
(1)紙基材上に、少なくとも一層の塗工層を有し、塗工層の少なくとも一層が顔料、バインダー、インク定着剤を含有するインク定着層であり、塗工層の少なくとも最表層がキャスト法により形成されるインクジェット記録用キャストコート紙の製造方法において、紙基材の地合指標が60未満であることを特徴とするインクジェット記録用キャストコート紙の製造方法。
前記地合指標は60未満10以上であることが好ましい。
前記地合指標は50以下20以上であることがより好ましい。
インク定着層は、輪郭塗工方式により形成されることが好ましい。
(2)紙基材上に、少なくとも一層の塗工層を有し、塗工層の少なくとも一層が顔料、バインダー、インク定着剤を含有するインク定着層であり、塗工層の少なくとも最表層がキャスト法により形成されるインクジェット記録用キャストコート紙において、紙基材の地合指標が60未満であり、且つJISP8117による透気度が15秒以上であることを特徴とするインクジェット記録用キャストコート紙。
前記紙基材のJISP8117による透気度が15秒〜200秒であることが好ましい。
前記紙基材のステキヒトサイズ度が70秒〜400秒であることが好ましい。
(3)紙基材上に、少なくとも二層の塗工層を有し、塗工層の少なくとも一層が顔料、バインダー、インク定着剤を含有するインク定着層であり、塗工層の少なくとも最表層がキャスト法により形成されるインクジェット記録用キャストコート紙の製造方法、紙基材の地合指標が60未満であり、インク定着層の少なくとも1層が、サブミクロンオーダーの顔料を主成分として含有する層であることを特徴とするインクジェット記録用キャストコート紙。
前記サブミクロンオーダーの顔料が、シリカ、アルミナ、アルミナ水和物から選ばれる少なくとも一種が好ましく、気相法シリカがより好ましい。
前記サブミクロンオーダーの顔料が、シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子であることが特に好ましい。
(4)紙基材上に、少なくとも二層の塗工層を有し、塗工層の少なくとも一層が顔料、バインダー、インク定着剤を含有するインク定着層であり、塗工層の少なくとも最表層がキャスト法により形成されるインクジェット記録用キャストコート紙において、紙基材の地合指標が60未満であり、最表層が球状のコロイド状粒子を含有する光沢発現層であることを特徴とするインクジェット記録用キャストコート紙。
前記コロイド状粒子はカチオン性の場合、光沢発現層の塗工量は3g/m以上が好ましい。
前記コロイド状粒子はアニオン性の場合、光沢発現層の塗工量は3g/m以下が好ましい。
(5)紙基材上に、少なくとも一層の塗工層を有し、塗工層の少なくとも一層が顔料、バインダー、インク定着剤を含有するインク定着層であり、塗工層の少なくとも最表層がキャスト法により形成されるインクジェット記録用キャストコート紙において、紙基材の地合指標が60未満であり、最表層が水分散性の離型剤と、水溶性の離型剤を併用することを特徴とするインクジェット記録用キャストコート紙。
前記水分散性離型剤100質量部に対し、前記水溶性離型剤50〜100質量部であることが好ましい。
更に、本発明は、次の態様を含む。
(6)上記(2)〜(5)に記載のインクジェット記録用キャストコート紙のうち、少なくとも二つ満足するインクジェット記録用キャストコート紙。
上記(2)〜(5)に記載のインクジェット記録用キャストコート紙のうち、少なくとも三つ満足するインクジェット記録用キャストコート紙。
上記(2)〜(5)に記載のインクジェット記録用キャストコート紙の全てを満足するインクジェット記録用キャストコート紙。
(7)前記インク定着層が更に、カチオン性及び/又はノニオン性界面活性剤を少なくとも1種以上含有する、(2)〜(6)の何れか一に記載のインクジェット記録用キャストコート紙。
(8)前記カチオン性及び/又はノニオン性界面活性剤が、分子内にポリオキシエチレン基を含有する界面活性剤より選ばれる1種以上である、(7)に記載のインクジェット記録用キャストコート紙。
本発明のインクジェット記録用キャストコート紙の製造方法は、離型時間を短縮することにより、キャスト加工の生産性を大幅に改善されたものである。また、本発明のインクジェット記録用キャストコート紙は、優れた光沢性、およびインク滲みや印字ムラが無い優れた記録画質を兼ね備えるものである。
本発明(1)は、紙基材上に、少なくとも一層の塗工層を有し、塗工層の少なくとも一層が顔料、バインダー、インク定着剤を含有するインク定着層であり、塗工層の少なくとも最表層がキャスト法により形成されるインクジェット記録用キャストコート紙の製造方法において、紙基材の地合指標が60未満であることを特徴とするインクジェット記録用キャストコート紙の製造方法であり、
本発明(2)は、紙基材上に、少なくとも一層の塗工層を有し、塗工層の少なくとも一層が顔料、バインダー、インク定着剤を含有するインク定着層であり、塗工層の少なくとも最表層がキャスト法により形成されるインクジェット記録用キャストコート紙において、紙基材の地合指標が60未満であり、且つJISP8117による透気度が15秒以上であることを特徴とするインクジェット記録用キャストコート紙であり、
本発明(3)は、紙基材上に、少なくとも二層の塗工層を有し、塗工層の少なくとも一層が顔料、バインダー、インク定着剤を含有するインク定着層であり、塗工層の少なくとも最表層がキャスト法により形成されるインクジェット記録用キャストコート紙の製造方法、紙基材の地合指標が60未満であり、インク定着層の少なくとも1層が、サブミクロンオーダーの顔料を主成分として含有する層であることを特徴とするインクジェット記録用キャストコート紙であり、
本発明(4)は、紙基材上に、少なくとも二層の塗工層を有し、塗工層の少なくとも一層が顔料、バインダー、インク定着剤を含有するインク定着層であり、塗工層の少なくとも最表層がキャスト法により形成されるインクジェット記録用キャストコート紙において、紙基材の地合指標が60未満であり、最表層が球状のコロイド状粒子を含有する光沢発現層であることを特徴とするインクジェット記録用キャストコート紙であり、
本発明(5)は、紙基材上に、少なくとも一層の塗工層を有し、塗工層の少なくとも一層が顔料、バインダー、インク定着剤を含有するインク定着層であり、塗工層の少なくとも最表層がキャスト法により形成されるインクジェット記録用キャストコート紙において、紙基材の地合指標が60未満であり、最表層が水分散性の離型剤と、水溶性の離型剤を併用することを特徴とするインクジェット記録用キャストコート紙である。
本発明(1)乃至(5)(以下、まとめて本発明ともいう。)は、インクジェット記録用キャストコート紙であって、地合指標が60未満である紙基材を用いることを技術的特徴とするものである。
<紙基材>
本発明では、キャスト加工が可能である基材として紙基材を使用する。透気性を有する樹脂フィルムやシート材等の透気性基材もキャスト加工は可能ではあるものの、基材製造コスト、優れた透気性、記録用紙としての取り扱い及び廃棄の容易さ等の面から、本発明では紙基材を使用する。紙基材は吸液性を持つため、インク定着層等の塗工層の塗工量を減らし易く、これはインクジェット記録用紙としての生産効率や生産コストの観点からも有効である。
紙基材は、木材パルプを主成分とし、必要に応じて填料、各種助剤等が添加されている。木材パルプとしては、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を使用することができる。特に、針葉樹及び広葉樹のクラフトパルプ、或いはこれらクラフトパルプを漂白した針葉樹晒クラフトパルプ(NBKPと称す)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKPと称す)が好ましい。また、これらのパルプにおいて、その漂白工程で塩素の影響を取り除いた塩素フリーパルプ、例えば、パルプ漂白に塩素そのものを使わずに塩素化合物を使うECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、パルプ漂白に塩素元素が一切入っていない漂白剤を用いるTCF(Total Chlorine Free)パルプ等を用いることは好ましい。
これらのパルプは、地合指標、紙力、抄紙適性等を調整するために、叩解機により叩解度を調整できる。その叩解度(フリーネス(CSF:Canadian Standard Freeness))は特に限定しないが、250〜550ml(JIS−P8121)が好ましい。
紙基材としては酸性紙、中性紙等の区別についてはいずれも使用することができるが、長期保存性の観点から中性紙が好ましい。
紙基材に添加される填料は、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、焼成カオリン、合成ゼオライト、シリカ、酸化チタン、タルク等が好ましく用いられる。中でも軽質炭酸カルシウム、焼成カオリン、合成ゼオライトは多孔質のためインクジェットプリンターから吐出されたインク中の溶媒を吸収する能力に優れているために好ましく、その中でも、軽質炭酸カルシウムは白色度が高い紙基材が得られ、インクジェット記録用シートの光沢感も高まるので好ましい。
紙基材中の填料の含有率(灰分)は、1〜35質量%程度が好ましく、5〜30質量%が更に好ましい。この範囲であれば、平滑度、透気度、不透明度、紙力や剛性のバランスがとれ、光沢度や写像性にも優れた光沢インクジェット記録用シートが得られやすくなる。
紙基材に添加される助剤としては、サイズ剤、定着剤、紙力増強剤、カチオン化剤、歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤、ピッチコントロール剤、スライム抑制剤等が挙げられる。上記サイズ剤としては、公知のサイズ剤が、例えば、強化ロジン、アルケニル無水コハク酸等が用いられる。また、このサイズ剤の定着剤として硫酸バンドやポリ塩化アルミニウム等、定着歩留り向上剤として澱粉等がサイズ剤に併用されて用いられる。
特に歩留り向上剤等については、凝結、凝集作用によりフロックを作るものであるため、紙の地合の調整効果が大きい。公知の化合物として、主に天然物(でんぷん、CMC、ガム類、ゼラチン、アルギン酸ソーダ等)や合成物(主としてポリアクリルアミド系、ポリエチレンイミン系、ポリアミドポリアミン系、エポキシ化ポリアミドポリアミン系等)等が有るが、使用する抄紙機の機械的特性等に合わせて適宜調整するのが好ましい。
本発明の紙の抄造において抄紙機について制限はなく、公知の湿式抄紙機、例えば長網式抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機等の商業規模の抄紙機を目的に応じて適宜選択して行われる。
本発明で使用する紙基材の地合指標は、60未満とする。ここで地合指標は、M/Ksystem社製の「3−Dシートアナライザー」を使用して、下記条件で測定する。なお、地合指標はその値が大きいほど、地合が良い(紙中繊維の分散状態が均一である)ことを示す。
(測定条件)
測定面積 :10cm×10cm
測定ポイント数 :65536ポイント
絞りの直径 :1.0mm
地合指標を60未満とすることで、キャスト加工の際の離型に要する秒数(離型時間)を短くすることができる。その理由は必ずしも定かではないが、以下のように推測される。
キャスト加工の際の離型時間を短くするためには、塗工層や紙基材に含まれた水分を、鏡面ドラムとは反対側の面である紙基材面側から素早く蒸発させることが必要である。地合が良好な紙基材の場合、基材中のパルプ繊維等は均一に分散されており、紙の物性も均一性が高い。一方地合を低めに調整した場合、パルプ繊維等の分散状態は不均一になることになる。地合指標が60未満になると、分散状態が不均一な中から、空気や水分が通過し易い微小なスポット部分ができ易くなるものと推測する。この微小なスポット部分付近は、紙の他の部分よりも早く乾燥されて体積が僅かに収縮し、ドラムとの間に微小な空間を生成するものと推測する。そして、まだ水分の多いスポット以外の部分から、生じた微小な空間を経由してスポット部から水分を素早く蒸発させることで紙全体の水分蒸発速度を早め、離型を早める駆動力になるものと推測する。そのため、地合が良く均一に空気や水分が通る状態に比較して、離型時間が早まるものと推測する。
地合指標の下限値は、特に限定しないが、値が低すぎると記録用紙の表面に影響を及ぼす虞があるので、10以上であることが好ましい。従って好ましい地合指標の範囲は60未満10以上であり、更に好ましい範囲は50未満20以上である。
地合指標を60未満とする方法としては、使用する抄紙機のヘッドボックスの特性や脱水装置の特性等の機械的諸条件により様々である。例えば、原料を溜めたバットにワイヤーを浸して掬い上げる古典的な円網抄紙機であれば、地合は低くなり易い傾向があるため、パルプや助剤の組成等の原料的条件をさほど調整しなくても地合指標を60未満とし易いが、ワイヤー上に原料吐出口をもつ方式の円網抄紙機、単網抄紙機、長網抄紙機、オントップ抄紙機であれば紙基材の地合指標は高くなり易く、地合指標を60未満とするために原料条件や装置的な条件の調整が必要となり易い。更には2枚のワイヤー間に原料を吐出するギャップフォーマー式抄紙機では原料組成に関わらず地合指標が高くなる傾向にあり、地合指標を60未満とするための装置的な条件の調整には工夫を要する可能性が高い。
このように使用する抄紙機等の機械的諸条件により紙基材の地合指標は様々なので、地合指標を60未満とする方法を一概に論ずることは不可能であるが、地合指標は、使用するパルプ繊維の種類や繊維長及び叩解度、添加する助剤等の種類、添加量、添加順序、及び助剤添加の際のパルプ濃度や助剤濃度或いは流動条件等といった原料的条件と、ヘッドボックス内部の原料流動経路の状態、ヘットボックスから噴出される原料速度ワイヤー速度の比(ジェットワイヤー比)、ヘッドボックス先端の開度(スライス開度)、抄紙機の抄網を支持する抄紙機用フォイルの形状や角度等、原料噴出部直後に設置されるフォーミングボード等、脱水の際の加圧条件及び吸引の条件等の装置的条件の組み合わせ等により、適宜調整される。
なお抄紙機にオンラインの地合計等を取り付け、地合を測定しながら抄紙を行うことは、地合指標を60未満とする方法として好ましい。
また、抄紙される紙基材が湿潤状態又は乾燥状態である時に、ウエットプレスやスーパーカレンダー等で加圧平滑化処理を行い、所望の紙厚や密度、平滑度等に調整することもできる。
本発明(1)においては、紙基材の地合指標を60未満と規定するインクジェット記録用キャストコート紙の製造方法である。このような紙基材を採用することによって、離型時間を短くすることができ、生産性が優れた製造方法となる。なお、地合指標は60未満10以上であることが好ましく、50以下20以上であることがより好ましい。
紙基材の厚さは特に限定されないが、用途に応じて40μm〜400μm程度の範囲で適宜選択される。紙基材の坪量は特に限定されないが、用途に応じて40〜300g/m程度の範囲で適宜選択される。
紙基材の密度(JIS P8188)は0.70〜1.10g/cmが好ましく、0.75〜1.00g/cmがより好ましく、0.80〜0.95g/cmが更に好ましい。密度を0.70g/cm以上とすることで記録体の光沢を高めたり、コックリングを良化させ易くなり、1.10g/cm以下とすることでインク吸収性を高め易くなり、また水分の通過性を高めるためかキャスト加工の際に離型時間を短くできる傾向が有り好ましい。
紙基材の透気度(JISP8117)は15〜200秒が好ましく、15〜150秒がより好ましく、15〜100秒が更に好ましい。この透気度を15秒以上とすることで、紙基材上に塗工された塗工液が紙基材に過剰に浸透して塗工層の厚みが不均一なる現象を抑制し、印字ムラを発生し難くすることができる。また200秒以下とすることで、水分の通過性を高めるためかキャスト加工の際に離型時間を短くできる傾向が有り好ましい。
紙基材の平滑度(JISP8119)は10〜300秒が好ましく、15〜100秒がより好ましい。平滑度を10秒以上とすることで、記録体の光沢を高め易くなり、300秒以下とすることで紙基材の密度や透気度を前記範囲に調整し易くなる。
紙基材のZ軸強度すなわち内部結合強さ(TappiUM403)は特に限定されないが、135.6mJ(100×10−3ft−lb)以上であることが好ましく、203.4mJ(150×10−3ft−lb)以上がより好ましい。内部結合強さを135.6mJ以上とすることで、原紙の繊維間結合が強固になり、インクが浸透しても膨潤し難くなるためか、インクジェットプリンターの拍車の跡を目立ちにくくすることができる。
上限は特に規定しないが、406.8mJ(300×10−3ft−lb)を超えるとその効果は飽和する傾向がある。
紙基材には、サイズプレス処理しても良く、また好ましい。サイズプレスの目的は、サイズ度のコントロール、紙力の増強、平滑化等であり、サイズプレス液にはそれぞれの目的に合わせて澱粉類、ポリビニルアルコール類、サイズ剤、各種顔料等、公知公用の材料が使用される。
紙基材のステキヒトサイズ度(JIS−P8122)は70〜400秒程度が好ましく、70〜300秒が更に好ましい。サイズ度を70秒以上とすることで、キャスト加工の際に、紙基材内への水分の過剰な浸透を抑えるためか、離型秒数を短くすることができ、好ましい。また、印字後のカールやコックリング(吸収ジワ)を良化させ易い傾向がある。更に、塗工時に皺が発生する等の操業上の問題を起こし難くすることができる。また400秒以下とするとインク吸収性を良化させインク滲みを良化させ易い傾向が有る。
本発明(2)においては、紙基材の地合指標を60未満と規定するとともに、更に紙基材のJISP8117による透気度が15秒以上とするものである。地合指数の低い紙基材であっても、透気度を規定することにより、紙基材上に塗工された塗工液が紙基材に過剰に浸透して塗工層の厚みが不均一なる現象を抑制し、印字ムラを発生し難くすることができる。なお、紙基材の透気度が15秒〜200秒であることが好ましい。また、紙基材のステキヒトサイズ度が70秒〜400秒であることが好ましい。
<塗工層>
本発明は、紙基材上に少なくとも一層の塗工層を有する。一層の場合、インク定着層であり、この層が最表層となりキャスト加工される。二層の場合、内側(紙基材側)に形成されたインク定着層と外側に形成されたインク定着層を有し、外側のインク定着層が最表層となりキャスト加工される層の場合、内側(紙基材側)に形成されたインク定着層と外側に形成された光沢発現層を有し、光沢発現層が最表層となりキャスト加工される層の場合、紙基材とインク定着層の間に、下塗り層を有し、インク定着層が最表層となりキャスト加工される層の場合が挙げられる。三層以上の場合は、前記下塗り層(複数も設けても良い)、インク定着層(複数も設けても良い)、光沢発現層(複数も設けても良い)を適宜組み合わせて積層すると良い。以下に各層について説明する。
<インク定着層>
本発明のインク定着層は、インクジェットインク中の色材を主に定着する層であり、顔料、バインダー、インク定着剤を含有する塗工層である。
(顔料)
顔料としては、公知のインクジェット記録用の定着層として使用できる顔料が使用できる。例えば、シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、カオリン、焼成カオリン、構造性カオリン、クレー、焼成クレー、酸化亜鉛、酸化錫、硫酸マグネシウム、軽質炭酸カルシウムや重質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、二酸化チタン、セピオライト、天然ゼオライトや人工ゼオライトや合成ゼオライト等のゼオライト類、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、モンモリロナイトやバイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト等のスメクタイトや合成スメクタイト及びそれらを含有するベントナイト等やハイドロタルサイト等の粘度類、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメントや尿素樹脂系プラスチックピグメントやベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等のプラスチックピグメント等が挙げられ、単独或いは併用して用いられる。
中でも、平均粒子径が10nm以上、1000nm未満であるサブミクロンオーダーの顔料を用いると、優れた光沢性、及びインク滲みや印字ムラが無い優れた記録画質を得るために好ましい。ここでいう平均粒子径とは動的光散乱法に基づく装置を使用して測定した粒子径分布のメジアン径であり、本発明者らは「動的光散乱式粒径分布測定装置LB−500型(株式会社堀場製作所製)」を使用したが、測定原理が同じであれば、装置のモデルが異なっても、ほぼ同じ値が得られる。
平均粒子径が10nm未満では、空隙が少なくなりすぎてインク吸収性が低下しインク滲みや印字ムラが悪化する。またミクロンオーダー(1μm以上)となると、塗膜の透明性が損なわれかつ平滑性も低下するため、優れた光沢が得られなくなる。また、塗工層内の細孔径が大きくなるためインクを吸収する駆動力である毛細管力が小さくなり、インクの滲みや印字ムラが悪化するようになる。加えて、塗膜の透明性が劣り印字濃度も著しく低下するため、優れた記録画質が得られなくなる。
平均粒子径は、20nm〜500nmの範囲がより好ましく、30nm〜300nmの範囲が最も好ましい。微細顔料は、1種単独でも、或いは2種以上併用して用いてもよい。
サブミクロンオーダーの顔料の中でも特に、シリカ、アルミナ、アルミナ水和物から選ばれる微細2次粒子顔料を用いることが好ましい。微細2次粒子顔料は、複数の1次粒子が凝集した2次粒子からなる。前記動的光散乱法に基づく装置を使用して測定した粒子径分布のメジアン径である平均粒子径は、例えば球状コロイダルシリカ等のように1次粒子からなる顔料であれば平均1次粒子径を指すが、例えば気相法シリカ等のように複数の1次粒子が凝集して2次粒子を形成するようなタイプ顔料に対しては、平均2次粒子径を指す。
微細2次粒子顔料の平均2次粒子径がミクロンオーダーのような場合、平均2次粒子径がサブミクロンオーダー(10nm以上1000nm未満)となるように機械的手段等を用いて粉砕・分散すれば、インク定着層用塗工液に好適に用いることができる。
これらの微細2次粒子顔料の中ではシリカが特に好ましく、気相法シリカが更に好ましい。なお気相法シリカはカチオン性化合物と凝集しやすいため、後述のシリカとカチオン性化合物とを混合して得られるシリカ−カチオン性化合物凝集体粒子として用いることが好ましい。
インク定着層にサブミクロンオーダーの顔料を用いる場合、その効果を損なわない範囲で、ミクロンオーダーの公知の顔料を併用することも可能である。
本発明(3)においては、紙基材の地合指標を60未満と規定するとともに、更にインク定着層の顔料として、サブミクロンオーダーの顔料を主成分として用いることを必須とするものである。地合指数の低い紙基材であっても、サブミクロンオーダーの顔料を主成分としたインク定着層を必須とすることにより、優れた光沢性、及びインク滲みや印字ムラが無い優れた記録画質を得ることができる。なお、サブミクロンオーダーの顔料が、シリカ、アルミナ、アルミナ水和物から選ばれる少なくとも一種が好ましく、気相法シリカがより好ましい。また、サブミクロンオーダーの顔料が、後述するシリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子であることが特に好ましい。
(接着剤)
接着剤は、上記顔料を紙基材上に保持するために配合する。インクジェット記録用紙用の公知の接着剤を使用することができ、水分散系接着剤、水溶性接着剤を単独、併用とも使用可能である。
水分散系接着剤としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合樹脂やメチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系樹脂、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの重合体又は共重合体やその誘導体等のアクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等のビニル系樹脂、ポリカーボネート等のポリウレタン樹脂等の公知の水分散性接着剤を単独使用もしくは併用することができるが、得られる塗膜のインク吸収性及び透明性の面で、アクリル系樹脂及びウレタン系樹脂が特に好ましい。
水溶性接着剤としては、ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコールやカチオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、カゼインや大豆蛋白、合成蛋白、ゼラチン等のたんぱく質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、メチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、カラギーナンや寒天、キトサン等の多糖類、等の公知の親水性樹脂を単独使用もしくは併用して使用することができる。
これらの水溶性接着剤の中でも表面強度の点からポリビニルアルコールを用いることが好ましい。インク定着層に用いられるポリビニルアルコールは、そのケン化度の相違により性状が異なり、目的に応じてそのケン化度を選択することが好ましい。ケン化度が95%以上、より好ましくは98%以上のポリビニルアルコールを使用すると、塗工層の強度が強くなるとともに、塗工液調製時に泡立ちなども起こらず、製造時の作業性が非常に良好である。また、ケン化度が75〜90%の部分ケン化ポリビニルアルコールを使用すると、塗工層の可撓性に優れ、その折り割れ防止に非常に効果的である。これらケン化度の異なるポリビニルアルコールは、その目的に応じて、それぞれ単独で用いても併用して用いても良い。
上記ポリビニルアルコールは、その重合度が2000以上であることが好ましく、3000〜5000であることが特に好ましい。重合度を2000以上とすることで、インク定着層の強度を高め、ひび割れの発生や断裁時の紙粉の発生を抑制する効果が高まる。一方、重合度を5000以下とすることで、インク吸収性を高めてインクの滲みや印字ムラを良化させ易くするとともに、溶液粘度を低くして塗工液調整におけるハンドリングを容易にすることができる。
インク定着層の接着剤の配合量は、顔料100質量部に対して5〜50質量部であることが好ましく、10〜40質量部であることがより好ましい。この配合量が、5質量部以上とすることで、塗膜強度を強めることができ、50質量部以下とすることで、インク吸収性を高めてインクの滲みや印字ムラを良化させ易くできる。
(インク定着剤)
インク定着剤は、インクジェット記録用インク中の染料色素を定着する作用を有し、これにより印字画像に耐水性を付与するために配合する。
このインク定着剤としては、一般にインクジェット記録体で用いられる各種公知のカチオン性化合物が、単独、又は併用して使用可能である。これらカチオン性化合物としては、主に低分子カチオン性化合物(カチオン性界面活性剤や金属化合物等)、或いは高分子のカチオン性樹脂が例示できるが、耐水性向上の点ではカチオン性樹脂が好ましい。これらのインク定着剤は単独に、また2種以上併用して用いられる。インク定着剤の添加量としては、顔料100質量部に対して、1〜30質量部、好ましくは5〜20質量部の範囲で調節される。
カチオン性樹脂としては、例えば、(イ)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類又はその誘導体、(ロ)第2級又は第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、又はそれらのアクリルアミドの共重合体、(ハ)ポリビニルアミン及びポリビニルアミジン類、(ニ)ジシアンジアミド−ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、(ホ)ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、(へ)エピクロルヒドリン−ジメチルアミン共重合体、(ト)ジアリルジメチルアンモニウム−SO重縮合体、(チ)ジアリルアミン塩−SO重縮合体、(リ)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、(ヌ)アリルアミン塩の共重合体、(ル)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、(オ)アクリルアミド−ジアリルアミン共重合体、(ワ)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂等が挙げられる。
低分子カチオン性化合物としては、シラン系、チタネート系、アルミニウム系又はジルコニウム系などのカチオン性カップリング剤やカチオン性界面活性剤等が挙げられる。
金属化合物としては、水溶性アルミニウム化合物(例えば、塩化アルミニウム又はその水和物、硫酸アルミニウム又はその水和物、アンモニウムミョウバン等の無機塩、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーであるポリ水酸化アルミニウム化合物等)、水溶性ジルコニウム化合物(例えば、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等)、水溶性チタン化合物(例えば塩化チタン、硫酸チタン等)、水溶性ランタノイド属化合物(例えば、塩化セリウム、硝酸セリウム、硫酸セリウム、酢酸セリウム、硝酸ランタン等)などの水溶性多価金属塩等が挙げられる。
(シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子)
上記カチオン性化合物は、サブミクロンオーダーの顔料としてアニオン性である気相法シリカを用いた場合、混合液中でシリカと凝集し、シリカ−カチオン性化合物凝集体を形成する。このため、このカチオン性化合物は、単体で用いるより予め気相法シリカと凝集体を形成して用いることが好ましい。シリカ−カチオン性化合物凝集体は、平均2次粒子径が10nm以上1000nm未満となるように粉砕・分散して、インク定着層用塗工液に用いられる。
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子の製造方法の概略を説明する。
カチオン性化合物の添加量としては、シリカ100質量部に対して、1〜30質量部、好ましくは5〜20質量部の範囲で調節される。シリカ分散液にカチオン性化合物を添加し混合すると、増粘した凝集体分散液が得られる。
このシリカ−カチオン性化合物凝集体粒子を粉砕・分散し、微粒子化する方法としては、機械的手段で強い力を与えるブレーキング・ダウン法(塊状原料を細分化する方法)が採られる。機械的手段としては、超音波、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌ミル、ジェットミル、擂解機、サンドグラインダー、ナノマイザー(商品名)、ホモミキサー等が好適に用いられる。
(界面活性剤)
インク定着層には、カチオン性及び/又はノニオン性界面活性剤を少なくとも1種以上含有するのが好ましい。界面活性剤は、インクと塗工層内の細孔を形成する微細顔料等の濡れ性を良化させ、インク定着層へのインクの浸透を速くかつ均一にする効果が有るためか、インクの滲みや印字ムラを抑制して記録画質を良化させる効果があり、好ましく用いられる。
界面活性剤の添加量はその種類にもよるが、微細顔料100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、より好ましくは0.05〜5質量部の範囲で調節される。界面活性剤を0.01質量部以上とすることで、上記記録画質を良化させる効果が得られ易くなる。また10質量部以下とすることで、インク定着層の表面張力や泡立ちを適度な範囲として塗工適性を良化させ易くできる。
界面活性剤としては、分子内にポリオキシエチレン基を含有するものが、上記記録画質を良化させる効果が得られ易く特に好ましい。下記に好ましく用いられる界面活性剤を例示するが、これに限定されるものではない。
ノニオン性界面活性剤として、(1)ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシアルキレン誘導体の群。具体的には花王(株)製エマルゲンシリーズ、ライオン(株)製レオコールシリーズ、レオックスシリーズ、日油(株)ノニオンシリーズ、ユニセーフシリーズ、ユニルーブシリーズ、第一工業製薬(株)製ノイゲンシリーズ等。(2)ポリオキシアルキレングリコールの群。具体的には日油(株)プロノンシリーズ等。(3)ポリオキシエチレンアルキルエーテルの群。具体的には日油(株)ナイミーンシリーズ等。(4)分子内に1個の三重結合を有するアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物の群。具体的には、日信化学工業(株)製サーフィノール400シリーズ、オルフィンシリーズ等。カチオン性界面活性剤として、(5)エチレンオキサイド付加型アンモニウムクロライドの群。具体的にはライオン(株)製エソカードシリーズ等。
(インク定着層の他の成分)
更に、インク定着層には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、分散剤、増粘剤、流動性改良剤、消泡剤、抑泡剤、浸透剤、帯電防止剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保存性改良剤、防腐剤等を適宜配合することもできる。
インク定着層のインク吸収性を高めるたせるためには、極力接着剤成分を抑えた方が好ましいが、接着剤成分が少ないと、インク定着層を形成するために塗工液を塗工する際に、塗工層にひび割れを生じやすい。その場合は、例えば、塗工層を乾燥初期に増粘又はゲル化させることで乾燥時の熱風による塗工層のひび割れを防ぐことができる。
塗工層のひび割れを少なめに抑制すれば光沢性を高め易く、また顔料インクタイプのインクジェットプリンターで印字した際に顔料インク膜を均一にして印字画質を良化させ易い。逆にひび割れを多めに制御すれば、特に染料インクタイプのインクジェットプリンターのインクの吸収性を良化させ、インクの滲みやムラを抑制して印字画質を良化させ易い。そのため、ひび割れの量は、目的の品質に応じて適宜調整するのが好ましい。
塗工層を増粘又はゲル化させる方法としては、特に限定するものではないが、例えば、塗工液に配合した水溶性接着剤と架橋反応可能な架橋剤を用いて増粘又はゲル化させる方法、電子線などのエネルギーを供給することにより増粘又はゲル化させる方法(例えば特開2002−160439号公報に開示)、水溶性接着剤として、温度条件によって親水性と疎水性を示す感温性高分子化合物を用い、温度変化させることにより増粘又はゲル化させる方法(例えば特開2003−40916号公報に開示)などが挙げられる。この中で、架橋剤を用いる方法は、特殊な装置や化合物を必要としないので好ましく、以下に代表例として説明する。
接着剤との架橋性を有する化合物としては、各種公知の架橋剤、ゲル化剤が使用できる。例えば本発明のインク定着層で好ましく用いられるポリビニルアルコールに対する架橋性を有する化合物としては、グリオキザールなどのアルデヒド系架橋剤、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ系架橋剤、ビスビニルスルホニルメチルエーテルなどのビニル系架橋剤、ホウ酸及びホウ砂などのホウ素含有化合物、グリシジル化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、クロム化合物等などが例示できる。中でも、ホウ素含有化合物は、増粘又はゲル化が早く生じるので特に好ましい。
また、カルボキシル基を含有するようなアクリル樹脂やウレタン樹脂等を使用した場合には、カルボジイミド類や、オキサゾリン基含有ポリマー等が好ましく用いられる。
ホウ素含有化合物の例としては、ホウ素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩等が挙げられる。具体例としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸、及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。中でも、オルトホウ酸と四ホウ酸二ナトリウムが、塗料を適度に増粘させる効果があるために好ましく用いられる。また、特開2010−17888に記載の有機ホウ素ポリマー類も好ましく使用可能である。
ホウ素化合物の含有量は、ホウ素含有化合物及びポリビニルアルコールの重合度にもよるが、基材の片面に0.01〜2.5g/m含有されることが好ましい。含有量が2.5g/m以下であることにより、親水性バインダーとの架橋密度が高くなりすぎず、塗膜強度を良好なものにできる。一方、含有量が0.01g/m以上であることにより、親水性接着剤との架橋が強まり、塗料のゲル化を促進して塗膜がひび割れしにくいものとなる。
インク定着層は、例えば、(1)架橋剤を予め紙基材表面や後述する下塗り層表面に塗布・含浸、又は予め含有させておき、インク定着層用塗工液を塗布する、又は、(2)インク定着層用塗工液に架橋剤を配合しておき塗布する、又は、(3)インク定着層用塗工液を塗布後、架橋剤を塗布する、等の方法により製造される。
中でも、(1)の方法で架橋剤を予め塗布しておく方法は、増粘又はゲル化を均一に起こすことができ易く、好ましく用いられる。
また、(2)の方法で、インク定着層に架橋剤を配合すると塗料増粘等の問題が発生する場合には、例えばインラインミキサー等のように塗料と架橋剤を混合してから短時間で塗工できる装置を用いる方法や、架橋剤を不活性な状態で添加し、塗工されると同時もしくは塗工後にpH変化、温度変化等で活性な状態に変化させる方法等を用いることが有効である。
インク定着層の乾燥固形分塗工量には制限はないが、一般に4〜50g/m程度であることが好ましく、4〜30g/mであることがより好ましく、5〜20g/mであることが更に好ましい。塗工量が4g/m以上であることにより、インク吸収性が充分なものとなり、塗工量が50g/m以下であることにより塗膜のひび割れが起こりにくくなる。
インク定着層の塗工量を多くしたい場合に、1層での塗工が装置的な制限などから困難である場合には、2層以上形成することもできる。このように2層以上で構成する場合は、それぞれの層を構成するシリカや接着剤、インク定着剤等の成分は、同じでも良いし異なっていても構わない。
インク定着層を形成するための塗工装置としては、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、リップコーター、スプレーコーター、エアーナイフコーター、ゲートロールコーター、カーテンコーター、ダイレクトファウンテンコーター、ダイコーター等の各種塗工装置を用いることができる。
また、スライドビードコーターなどを用い、複数のインク定着層を同時に塗工することもできる。2層以上のインク定着層を塗工する場合は、下層が未乾燥のうちに上層を下層の上に塗工する方法、すなわち、Wet on Wet法を用いることが好ましい。
塗工方式には、基材に余分に塗工した塗料を平滑に削り取り、基材の凹凸の影響を軽減して平滑な塗工面を得る平滑化塗工と呼ばれる塗工方式と、基材に余分に塗工した塗料を機材の凹凸に沿った形で削り取る、又は、塗工する前に、所望の塗工重量を計量し、計量した塗液を基材の凹凸に添った形で基材に転移させる、輪郭塗工と呼ばれる塗工方式とに大別される。平滑化塗工であれば、凹凸の有る紙基材に対して平滑な塗工表面を得るため、塗工層の厚みに部分により差ができ易い。一方輪郭塗工方式では、凹凸の有る紙基材に対して、同様に凹凸の有る塗工表面となるため、塗工層の厚みに部分により差ができ難い。
本発明のインク定着層は、インクの色材を主に定着する層であるため、その塗工層の厚みが均一である方が、印字した際のインクの滲みや印字ムラが発生し難くなる。加えて、輪郭塗工は、紙基材の項で前述の離型秒数を短くするのに寄与していると推測される紙基材の微小なスポット部分に塗工層が多く付着して、その機能を阻害し離型秒数が長くなることを防ぐためにも有効である。
一方輪郭塗工方式は塗工面の平滑性が平滑化塗工方式に対して劣るが、本発明の場合、後工程でインク定着層上に光沢発現層を設けそれを鏡面ドラムに圧接する際に、塗工層が平滑化されることになるため、インク定着層塗工面の平滑性に関しては輪郭塗工方式でも問題になり難い。そのためインク定着層の塗工方式としては、輪郭塗工方式を採用するのが好ましい。
輪郭塗工方式の中でも、特に、カーテンコーター、ダイレクトファウンテンコーター、ダイコーター、スライドビードコーターが好ましく用いられる。
さらに、この塗工したインク定着層に、必要に応じてスーパーカレンダー、ブラシ掛け等の処理を施しても良い。
<下塗り層>
下塗り層は、インク定着層と紙基材の間に設けることができる塗工層である。下塗り層は、2層以上設けることもできる。下塗り層の機能の例としてとしては以下のような機能が挙げられるが、これに限定されるものではない。
(1)インク定着の機能を補う機能。例えば、インク溶媒を吸収する目的で下塗り層を設けることにより、インクの色材成分と溶媒成分をいち早く分離しインクの定着性を高める。(2)インク溶媒を紙基材に浸透させない機能。インク溶媒が紙基材への浸透することによるコックリングを抑制する。勿論、インク溶媒を基材に浸透させない下塗り層上に、インク溶媒を吸収する下塗り層を積層することもできる。(3)色相調整層。カチオン性であるインク定着層に添加すると凝集などの問題が発生することのある、アニオン性の染料や有色顔料、蛍光染料等を含有する層を設け、インクジェット記録用キャストコート紙の白紙色相を調整する。(4)接着層。紙基材とインク定着層の接着性を増し、断裁時の塗工層の欠落等を防止する。
下塗り層には、上記の例等の目的で顔料、接着剤や助剤等を適宜配合することができる。
下塗り層の顔料としては、カオリン(含クレー)、雲母、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、酸化アルミニウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等が挙げられ、単独或いは併用で用いられる。接着剤としては、インクジェット記録用紙用の公知の接着剤を使用することができ、水分散系接着剤、水溶性接着剤を単独、併用とも可能である。
インク溶媒を吸収する目的の下塗り層の場合、顔料として、非晶質シリカ、酸化アルミニウム、アルミノシリケート、炭酸カルシウムを用いることが好ましく、特に湿式法シリカを用いることが好ましい。接着剤については、特に限定するものではないが、過剰に用いるとインク溶媒の吸収性が損なわれるため、顔料100質量部に対して7〜50質量部程度である。
一方、インク溶媒を基材に浸透させない目的の下塗り層の場合、顔料としては、雲母、カオリン(含クレー)、炭酸カルシウム、スメクタイト、合成スメクタイトなどを用いることが好ましく、特に雲母、カオリン(含むクレー)を用いることが好ましい。接着剤としては、水分散系接着剤を用いることが、インク溶媒の浸透を抑制する効果が高いので、好ましく、顔料100質量部に対して50〜200質量部程度である。
下塗り層には、インク定着層から移動したインク色材を定着する等の目的で、インク定着層に用いたカチオン性のインク定着層を使用することもできる。
また下塗り層には更に、一般塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。また前述のように、下塗り層中に、染料、有色顔料、蛍光染料等の着色剤を添加することもできる。
また、前述のインク定着層のひび割れを防止するための架橋剤を配合することもできる。
下塗り層塗工品の透気度(JISP8117)は15〜200秒が好ましく、15〜150秒がより好ましく、15〜100秒が更に好ましい。この透気度を15秒以上とすることで、下塗り層塗工面上に塗工されたインク定着層塗工液が紙基材に過剰に浸透して塗工層の厚みが不均一なる現象を抑制し、印字ムラを発生し難くすることができる。また200秒以下とすることで、水分の通過性を高めるためかキャスト加工の際に離型秒数を短くできる傾向が有り好ましい。
下塗り層を形成するための塗工装置としては、ブレードコーター、ロッドブレードコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、リップコーター、スプレーコーター、エアーナイフコーター、ゲートロールコーター、カーテンコーター、ダイレクトファウンテンコーター、ダイコーター等の公知の各種塗工装置を用いることができる。
また、スライドビードコーターなどを用い、複数下塗り層及び/又はインク定着層を同時に塗工することもできる。2層以上の塗工層を塗工する場合は、下層が未乾燥のうちに上層を下層の上に塗工する方法、すなわち、Wet on Wet法を用いることが好ましい。
下塗り層の塗工方式も、インク定着層同様、紙基材の項で前述の離型秒数を短くするのに寄与していると推測される紙基材の微小なスポット部分に塗工層が多く付着して、その機能を阻害するのを防ぐために、輪郭塗工方式が有効である。
この塗工した下塗り層にも、必要に応じてスーパーカレンダー、ブラシ掛け等の処理を施しても良い。
<光沢発現層>
本発明では、インク定着層上に光沢発現層を設けることができる。光沢発現層は、公知のインクジェット記録用キャストコート紙で例示されている顔料、例えば、非晶質シリカ、アルミナ、アルミナ水和物などの無機粒子、各種有機粒子が挙げられる。中でも、サブミクロンオーダーの顔料が好ましく、平均粒子径が10nm〜300nmのコロイド状粒子であることが、高い印字濃度が得られるので好ましい。コロイド状粒子とは、水中に懸濁分散してコロイド状をなしている無機粒子或いは有機粒子を指す。
光沢発現層で使用する顔料として、特に、球状のコロイド状粒子を用いることが好ましい。球状のコロイド状を用いることで、インク定着層上に均一で高平滑に配置することができ、均一で高い光沢性のインクジェット記録用紙を得ることができ、また、コロイド状粒子であるので、印字濃度を高めて優れた記録画質を得ることができる。
(球状コロイド状粒子)
このような球状コロイド状粒子として、例えば、コロイダルシリカ、或いは特公昭47−26959号公報に開示されているようなコロイド状シリカ粒子表面をアルミナコーティングした粒子等の無機粒子、ポリスチレン、メチルメタクリレート、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル共重合体、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン等の有機粒子が挙げられる。これらを単独或いは2種以上併用することが可能であるが、特に無機粒子を用いると、硬度が高いためかキャストコート紙の表面に傷がつき難くなる傾向にあるため好ましい。
また光沢発現層の球状コロイド状粒子は、カチオン性コロイド状粒子が好ましい。カチオン性コロイド状粒子としては、前述のコロイド状シリカ粒子表面をアルミナコーティングした粒子等が挙げられる。
また、アニオン性コロイド状粒子であっても、酸性タイプのものであれば、カチオン性インク定着剤と併用しても凝集等の問題を起こし難いため好ましく使用できる。このような酸性タイプのコロイド状粒子の例としては、日産化学(株)製のスノーテックスOL等が例示できるが、これに限定されるものではない。
上記のようにカチオン性コロイド状粒子を用いたり、或いはカチオン性コロイド状粒子カチオン性インク定着剤を併用したり、酸性タイプのコロイド状コロイド状粒子とカチオン性インク定着剤を併用すれば、キャストコート紙最表面にインク色材を定着し易くなるためか印字濃度が高まり、記録画質に優れる傾向があるため、特に好ましく用いられる。
この傾向は、光沢発現層の塗工量が多い場合に顕著であり、乾燥固形分塗工量が概ね3g/m以上であれば、これらカチオン性の光沢発現層を用いることが好ましい。
逆に光沢発現層の塗工量が少ない場合には、これらを用いないアニオン性の光沢発現層であっても記録画質を損なうことは少なく、かつ、離型性についてはアニオン性の光沢発現層の方が優れる傾向があるので、乾燥固形分塗工量が3g/m以下であればアニオン性の光沢発現層を用いることが好ましい。
また、球状コロイド状粒子の、動的光散乱法に基づく装置を使用して測定される平均粒子径は、300nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。粒子径を300nm以下とすることで、記録体表面がより均一で高平滑になるためか均一で高い光沢性を得られ易くなり、また透明性が高いため印字濃度を高めて優れた記録画質を得られ易くする傾向にあるため、好ましい。
本発明(4)においては、紙基材の地合指標を60未満と規定するとともに、更に光沢発現層の顔料を球状のコロイド状粒子を用いることを必須とするものである。地合指数の低い紙基材であっても、球状のコロイド状粒子を有する光沢発現層を形成することにより、均一で優れた光沢性を有する記録面、及び印字濃度が高く優れた記録画質を得ることができる。なお、コロイド状粒子はカチオン性の場合、光沢発現層の塗工量は3g/m以上が好ましい。コロイド状粒子はアニオン性の場合、光沢発現層の塗工量は3g/m以下が好ましい。
また、本発明の光沢発現層は、該球状コロイド状粒子と併用して本発明の効果を損なわない範囲で、摩擦係数調整や光沢面の質感の調整等といった目的で、非球状のコロイダルシリカ、気相法シリカ、湿式法シリカ、メソポーラスシリカ、コロイダルアルミナ、アルミナ、ベーマイト等のアルミナ水和物、水酸化アルミニウム、カオリン、焼成カオリン、クレー、焼成クレー、酸化亜鉛、酸化錫、硫酸マグネシウム、軽質炭酸カルシウムや重質炭酸カルシウム等の炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、二酸化チタン、セピオライト、天然ゼオライトや人工ゼオライトや合成ゼオライト等のゼオライト類、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、モンモリロナイトやバイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト等のスメクタイトや合成スメクタイト及びそれらを含有するベントナイト等やハイドロタルサイト等の粘度類、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメントや尿素樹脂系プラスチックピグメントやベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等のプラスチックピグメント、等の公知の白色顔料を1種類以上用いることも出来るが、前述のように粒子が球状コロイド状でない場合は光沢性や記録画質を損ない易い傾向があるため、添加量は該白色顔料の粒子径等にもよるが、該球状コロイド粒子100質量部に対して概ね30質量部以下であり、より好ましくは10質量部以下である。
(接着剤)
光沢発現層中には、前記球状コロイド状粒子等をインク定着層上に固着させる目的で、接着剤を含有することが好ましい。該接着剤の例としては、前記インク定着層に用いた接着剤等が例示でき、単独であっても、又は2種類併用してもよい。
ただし、光沢発現層の塗工方式が、塗料がインク定着層に接した後に掻き落とされる方式である場合には、塗工中に定着層に含まれる物質が抽出・溶解して混じる可能性がある。定着層が硼酸や硼砂等の架橋剤成分を含んでいたり、或いは定着層の下に設けたこれらの物質が混入した場合、これらが光沢発現層に混入する場合もある。混入した架橋剤が光沢発現層中の接着剤を架橋すると、生じたゲル状物質が鏡面ドラム上に蓄積して離型性を損ねる場合が有るため、注意を要する。
この意味で、例えば架橋剤としてホウ素含有化合物を選択した場合には、キャスト層に含まれる接着剤は、ポリビニルアルコール等の被架橋性接着剤よりも、非架橋性のアクリル系樹脂やウレタン系樹脂を選択するなど、使用する架橋剤等に合わせて適宜選択するのが好ましい。
一方、ポリビニルアルコールやゼラチン、カゼイン、ポリエチレンオキサイド等の水溶性接着剤は、一般に、アクリル系樹脂やウレタン系樹脂に比べてプリンターに給紙したときに傷がつき難く好ましい。
接着剤はこれら要求される品質や塗工適性に合わせて使い分けることが重要である。
光沢発現層中のコロイド状粒子がカチオン性である場合や、光沢発現層中にインク定着剤を配合する場合は、ポリビニルアルコールやゼラチン、カチオン変性した接着剤を使用する必要がある。
光沢発現層中のコロイド状粒子がアニオン性である場合は、ポリビニルアルコールやカゼイン、アニオン系の接着剤が使用可能である。
接着剤の配合量は、コロイド状粒子100質量部に対し1〜100質量部、より好ましくは5〜50質量部の範囲で調節される。接着剤の配合量を1質量部以上とすることで、光沢発現層の固着力を高め、塗工層の欠落を防止し易くなり、100質量部以下とすることで、インク吸収性を良化させ、インクの滲みや印字ムラを良化させ易い傾向がある。
(その他添加剤)
また、この光沢発現層には、必要に応じて分散剤、架橋剤、増粘剤(流動変成剤)、消泡剤、耐水化剤(印刷適性向上剤)、帯電防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、保存性改良剤、蛍光増白剤、及び着色剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。
また光沢発現層には離型剤を配合することが好ましく、特に後述のように離型剤を併用することが、更に好ましい。
(キャスト加工)
本発明の最表層(光沢発現層、光沢発現層がない場合はインク定着層の最表層)が湿潤状態である間に鏡面ドラムに圧接・乾燥した後、鏡面より剥離する、所謂キャスト加工の方法としては、特に限定するものではなく、公知のウェット法、リウエット法、凝固法等が採用できる。
(離型剤)
最表層には、公知のキャスト法で使用される離型剤を配合することができる。
本発明のインクジェット記録用キャストコート紙は、最表層或いは最表層に隣接するインク定着層にカチオン性インク定着剤を含有する。最表層は湿潤状態でキャスト加工されるので、最表層は勿論、インク定着層に含有するカチオン性インク定着剤も少しずつ最表層に移行してくため、アニオン性の塗工液でキャストする印刷用キャストコート紙に比較して、離型性とドラム曇りを改善することが好ましい。
離型性とドラム曇りを改善する方法としては、分散性の離型剤と、水溶性の離型剤を併用することが好ましい。
離型性の改善については、水分散性の離型剤が主として働く。従来の印刷用紙のキャスト処理からインクジェット記録用キャストコート紙の製造においても、鏡面ドラムはその表面にバフ掛けを行ない、油性物性の皮膜を形成されている。鏡面ドラムの表面の油性物質の皮膜を形成する油性物質としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸等の脂肪酸類、パラフィン、ポリエチレンやその変性物が例示される。
インクジェット記録用キャストコート紙の製造の際、ドラム表面で最表層塗料が乾燥し、乾燥した最表層がドラムから剥離するとき、ドラム表面に皮膜した油性物質は最表層表面に徐々にとられるため、減少していく。最表層に水分散性の離型剤を含有せしめているので、次に接する湿潤状態の最表層に存在する水分散性の離型剤がこれを補うため、離型性が維持される。おそらく水分散性の離型剤は、芯物質の表面を親水性物質で包み込んでコロイド状粒子となり、湿潤状態の最表層中に分散している。これらコロイド状粒子は表面が親水性であるためドラム表面に配列して層を作りやすい傾向にある。最表層が乾燥し離型する際、ドラム表面で層を形成していた油性物質皮膜の中間で分離するため、湿潤状態の最表層に含まれる顔料や接着剤がドラム表面に残る量を少なく抑えることができると考えられる。
ドラム曇りの改善には、水溶性の離型剤を併用することにより解決する。
上記水分散性の離型剤だけでは、最表層塗料中に含まれる顔料や接着剤が、僅かにドラム表面に残っていくため、経時的にドラム曇りが発生するものと考えられる。水溶性の離型剤は、ドラム表面に残っている極少量の塗工層成分をドラムから離脱させる洗浄効果を持っているものと考えられる。この洗浄効果によりドラム表面を清浄に保つことができ、ドラム曇りが解消し、水分散性の離型剤の効果とあいまって相乗的な離型効果が得られるものと思われる。
水分散性の離型剤としては、特に限定するものではないが、水分散性の離型剤の芯物質としては凝集力の小さな材料、特にドラム表面で溶融しているものが好ましく、融点が115℃以下であることがより好ましい。例えば、炭素数14〜22の脂肪酸類(例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸等)、パラフィン等のワックス類、ポリエチレンやその変性物が例示される。
上記の離型剤のうちポリエチレンやその変性物は、溶融時の粘度が高く層を作りやすいため離型性としての効果は優れているが、反面、粘度が高すぎた場合はドラム表面に残り、ドラムが曇りやすくなる場合がある。脂肪酸類は、溶融時の粘度が低く離型が良好でドラム曇りも少ないが、分散物の粒子径が大きくなりやすい。分散物の粒子径が大きすぎると、記録濃度が低下する懸念がある。ワックス類は、溶融時の粘度が低いものを選択することができ分散物の粒子径も小さくしやすいため、離型剤が良好でドラム曇りも少なく記録濃度を低下させることなく添加できるため、最も好ましい。
また、水分散物の離型剤の粒子径は1μm以下が好ましく、10〜500nmが更に好ましく、10〜80nmが最も好ましい。粒子径が1μmを超えると、最表層の透明性が低下してしまい、記録濃度が低下する懸念がある。一方、10nm未満の場合は分散物の芯物質に対する被覆物質の量が相対的に大きくなるためか、離型剤としての効果が少なくなる懸念がある。
水溶性の離型剤としては、離型性を損なうことなくドラム表面を洗浄できる物質であればよく、例えば、最表層塗料がアニオン性の場合は、オレイン酸ナトリウムやオレイン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウムやステアリン酸カリウムに代表される脂肪酸のアルカリ金属塩、オレイン酸アンモニウムやステアリン酸アンモニウム等のアンモニウム塩等のアニオン性を示す脂肪酸塩が例示できる。
最表層塗料がインク定着剤を含むなどの理由によりカチオン性を示す場合は、これらの水溶性離型剤は使用できず、例えば、炭素数14〜22の脂肪族アミン塩類や四級脂肪族アンモニウム塩を用いることが好ましい。具体的には、脂肪族アミン塩類としては、ステアリルアミン塩酸塩やステアリルアミン酢酸塩、ベヘニルアミン酢酸塩等の一級アミン塩や、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライドやジステアリルジメチルアンモニウムクロライドに代表される四級のアンモニウム塩が例示される。
四級脂肪族アンモニウム塩は洗浄効果が強い傾向にあるため、これらを使用する場合は水分散性の離型剤を多く使用する必要がある。従って、一級脂肪族アミン塩がより好ましい。特に、一級脂肪族アミン塩酸塩、一級脂肪族アミン酢酸塩が更に好ましく、ベヘニルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ヤシ脂肪アミン、牛脂脂肪アミン等の塩酸塩、酢酸塩、燐酸塩等が好ましく、皮膚に対する刺激性やpHといった取扱いの観点から、ベヘニルアミン又はステアリルアミンの酢酸塩が、最も好ましい。
水溶性の離型剤の持つ洗浄効果があまりにも大きいと、バフ掛けの際にドラム表面に設けた油性物質までも洗い落としてしまい、ドラム表面を清浄に保てても離型性を落とす原因となる。洗浄効果が高すぎる場合は前述の水分散性の離型剤の量を増やしてバランスを取る必要があるが、水分散性の離型剤は基本的に非水溶性のため、過度に配合するとインク吸収性を落とす懸念があり、好ましくない。水溶性の離型剤は、水分散性の離型剤100質量部に対し、50〜100質量部程度である。
また、水分散性の離型剤や水溶性の離型剤の過剰な添加はインクの吸収を阻害したり、逆に浸透を助長したりする場合がある。また材料によっては、C型給紙の際の傷を悪化させる場合もあるため、添加量は必要最小限に留める方が副作用は出にくく好ましい。水分散性の離型剤と水溶性の離型剤の合計添加量は最表層の顔料100質量部に対して、3〜30質量部程度であり、好ましくは5〜20質量部である。
なお、水分散性の離型剤と水溶性の離型剤は、最表層用の塗工液に配合するとよいが、リウエットキャスト法の場合のリウエット液、凝固法の場合の凝固液に配合しても構わない。
キャスト加工の方法としては、ウェット法、リウエット法、凝固法等が公知の方法が採用できるが、光沢発現層を塗布したのち、直ちに鏡面ドラムに圧接するウェット法は、光沢発現層用塗工液のインク定着層への浸み込みを防ぎ蒸発水分量を少なくできるためか、離型時間を短縮し易い傾向があり好適に用いられる。
また、鏡面ドラムのニップ部に光沢発現層用塗工液の液溜まりを形成し塗工するウェットキャスト法を用いるとより均一な塗工層が形成されやすく、光沢性に優れ、印字濃度が高く記録画質に優れたキャストコート紙が得られ易く、特に好ましい。
光沢発現層の塗工量は、蒸発水分量が少なくして離型時間を短縮する観点から、乾燥固形分塗工量が6g/m以下が好ましく、0.5g/m〜3g/mがさらに好ましい。なお、光沢性を高める等の目的から光沢発現層の塗工量を増やしたい場合には、塗工液の塗布量を増やさずに塗工液の濃度を高めたほうが、蒸発水分量が少なくして離型時間を短縮する観点から好ましい。
なお、加熱された鏡面ドラムの温度は、例えば50〜150℃程度、好ましくは70〜120℃程度である。因みに、温度が低いと乾燥する能力が低く、温度が高いと光沢発現層の水分が突沸して光沢性が損なわれる虞がある。
本発明(5)においては、紙基材の地合指標を60未満と規定するとともに、更に最表層が水分散性の離型剤と、水溶性の離型剤を併用することを必須とするものである。地合指数の低い紙基材を用いるとともに、最表層が水分散性の離型剤と、水溶性の離型剤を併用することによって、生産性を著しく向上することができる。なお、前記水分散性離型剤100質量部に対し、前記水溶性離型剤50〜100質量部であることが好ましい。。
<裏面層>
本発明では、上記の光沢発現層、インク定着層等を設けていない支持体のもう一方の面側である裏面に、本発明の効果を損なわない範囲で、カール防止処理、搬送性向上処理、帯電防止処理、ブロッキング防止処理などの処理を施すことも可能である。これら処理は、例えば、放電処理や加湿処理等の処理であってもよく、或いは裏面層を設けるなど適宜他の構成を追加するものであってもよい。
裏面層としては、特に限定するものではないが、顔料とバインダー系(例えば、コロイダルシリカとアクリル系エマルション型バインダー等)、有機エマルジョン系(例えば、シリコーン系エマルジョン型バインダー、アクリル系エマルジョン型バインダー等)、親水性・疎水性の接着剤系(例えば、澱粉やポリビニルアルコールの塗膜)、ラミネート(例えば、ポリエチレン等)等からなるものが挙げられる。
更に、裏面にインクジェット記録体や他の記録体を貼り合わせて両面記録体としたり、裏面に粘着剤層を形成してラベルとしたり、磁気カードやICカードの表面に貼り合わせてカードとしたりなど、公知の手段を施すことができる。
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
また、以下に示す実施例及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り、それぞれ水を除く固形分の「質量部」及び「質量%」を示す。
[紙基材P1〜P7の作製]
標準ろ水度(JIS P8121)が280mlになるまで叩解した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP))100質量部を使用した濃度0.5質量%のスラリーに、軽質炭酸カルシウム20質量部、内添サイズ剤として、アルケニル無水コハク酸(商品名;ファイブラン81K:日本エヌエスシー社製)0.05質量部、硫酸バンド1.5質量部、紙力増強剤としてポリアクリルアミド誘導体(荒川化学(株)製、商品名:ポリストロン1280)0.5質量部、澱粉0.75質量部を十分に攪拌して抄紙用原料を調製した。
上記抄紙原料を、ワイヤー上に原料吐出口をもつ方式の長網抄紙機を用いて、下記表1に示す地合指標を得るようヘッドボックス条件及び脱水条件を調整して抄紙し、得られた湿紙をドライヤー乾燥し原紙を得た。
得られた原紙の両面にポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:PVA117)と澱粉を2:1の質量比で混合し、水に加えて加熱溶解し、外添サイズ剤としてアルキルケテンダイマー((荒川化学(株)製、商品名:サイズパインK−287))を下記表1に示すステキヒドサイズ度を得るよう添加して濃度5%に調整したサイズプレス液を、合計25ml/mの塗布量になるように塗布し、乾燥した。
得られた原紙をマシンカレンダー装置を通して、下記表1に示す紙基材密度を得るよう加圧して、いずれも坪量140g/mの紙基材A〜Eを製造した。
紙基材P1〜P7の地合指標、密度、透気度、ステキヒドサイズ度は以下の表1の通りであった。
Figure 2012040788
[下塗り層塗工液B1の調製]
水に硼砂を30質量部、分散剤(東亞合成(株)製、商品名:アロンSD−10)を0.5質量部、消泡剤(サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ1407K)を0.05質量部、カチオン性樹脂(センカ(株)製、商品名:ユニセンスCP103)10質量部を添加し、更に平均粒子径7μmの無定形シリカ(グレースジャパン(株)製、商品名:サイロジェットP407)100質量部を添加・分散した。これにアクリル接着剤(明成化学(株)製、商品名:パスコールJK7000)30質量部を添加し、蛍光染料(日本化薬(株)製、商品名:カヤホールBPSリキッド)を2質量部、紫染料(大日精化(株)製、商品名:DC−Violet XRN)0.1質量部、青染料(大日精化(株)製、商品名:DC−Blue XB)0.05質量部を添加し、固形分濃度20%の下塗り層塗工液B1を調製した。
[シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子の作製]
平均2次粒子径1.0μmの気相法シリカ(日本アエロジル社製、商品名:エアロジルA300、平均1次粒子径約8nm)を用い、ホモミキサにより分散した後、平均粒子径が50nmになるまで高速流衝突型ホモジナイザーで粉砕分散し、15質量%のシリカの水分散液を調製した。
前記15質量%水分散液100質量部に、カチオン性化合物(センカ(株)製、商品名:パピオゲンP316)10質量部を添加し、高速流衝突型ホモジナイザーで更に分散し、平均2次粒子径が100nmのシリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子の15質量%水分散液を調製した。
[定着層塗工液M1の調製]
上記シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子100質量部に、接着剤としてポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:PVA−145、重合度4500)12質量部、消泡剤(サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777)0.1質量部、ノニオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(第一工業製薬(株)製、商品名ノイゲンET−102)0.5質量部を混合・攪拌し、固形分濃度12%のインク定着層塗工液M1を調製した。
[定着層塗工液M2の調製]
界面活性剤として、カチオン性界面活性剤エチレンオキサイド付加型アンモニウムクロライド(ライオン(株)製、商品名:エソカードC25)を用いた以外は定着層塗工液M1と同様にして、固形分濃度12%のインク定着層塗工液M2を調製した。
[定着層塗工液M3の調製]
界面活性剤として、分子内にポリオキシエチレン基を含有しないカチオン性界面活性剤ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド(花王(株)製、商品名:コータミン86P)を用いた以外は定着層塗工液M1と同様にして、固形分濃度12%のインク定着層塗工液M3を調製した。
[定着層塗工液M4の調製]
界面活性剤を用いなかった以外は定着層塗工液M1と同様にして、固形分濃度12%のインク定着層塗工液M4を調製した。
[定着層塗工液M5の調製]
平均2次粒子径3.5μmの非晶質シリカ((株)トクヤマ製、商品名:ファインシール)100部、カチオン性化合物(センカ(株)製、商品名:パピオゲンP316)10質量部、接着剤としてポリビニルアルコール((株)クラレ製、商品名:PVA−145、重合度4500)12質量部、消泡剤(サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777)0.1質量部、ノニオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(第一工業製薬(株)製、商品名ノイゲンET−102)0.5質量部を混合・攪拌し、固形分濃度20%のインク定着層塗工液M5を調製した。
[光沢発現層塗工液T1の作製]
水に球状コロイド状粒子としてアニオン性コロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名:スノーテックス20L、平均1次粒子径:45nm)100質量部、接着剤としてアクリル樹脂(ダイセル化学工業(株)製、アクアブリット914)10質量部、水分散性離型剤としてワックスエマルジョン(サンノプコ(株)製、商品名:PEM−17)5質量部、水溶性物質としてオレイン酸アンモニウム5質量部を添加・混合し、固形分濃度5%の光沢発現層用塗工液T1を調製した。
[光沢発現層塗工液T2の作製]
水に球状コロイド状粒子としてカチオン性コロイダルシリカ(日揮触媒化成(株)製、商品名:ファインカタロイドC128、平均1次粒子径:60nm)100部、接着剤としてポリビニルアルコール((株)クラレ製、クラレポバールPVA117)10質量部、染料定着剤としてカチオン性樹脂(ハイモ(株)製、商品名:ハイマックスSC700M)10質量部を含有する組成液を混合し、水分散性離型剤としてワックスエマルジョン(センカ(株)製、商品名:ソフェールC)5質量部、水溶性物質としてステアリルアミン酢酸塩(花王(株)製、商品名:アセタミン86)5質量部を添加・混合し、固形分濃度5%の光沢発現層用塗工液T2を調製した。
[光沢発現層塗工液T3の作製]
球状コロイド状粒子として、カチオン性コロイド状アクリル系有機粒子(商品名:XOM−3057、三井化学(株)社製、平均粒子径87nm)を用いた以外は光沢発現層塗工液T2と同様にして、固形分濃度5%の光沢発現層用塗工液T3を調製した。
[光沢発現層塗工液T4の作製]
球状コロイド状粒子としてアニオン性コロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名:スノーテックス20L、平均1次粒子径:45nm)100質量部、接着剤としてアクリル樹脂(ダイセル化学工業(株)製、アクアブリット914)10質量部、水分散性離型剤としてワックスエマルジョン(サンノプコ(株)製、商品名:PEM−17)10質量部を添加・混合し、固形分濃度5%の光沢発現層用塗工液T4を調製した。
[光沢発現層塗工液T5の作製]
非球状コロイド状粒子として、アニオン性数珠状コロイダルシリカ(商品名:スノーテックスPS−S、日産化学工業(株)社製、平均粒子径110nm)を用いた以外は光沢発現層塗工液T1と同様にして、固形分濃度5%の光沢発現層用塗工液T5を調製した。
[光沢発現層塗工液T6の作製]
球状コロイド状粒子の代わりに、非球状微粒子として合成非晶質シリカ(商品名:ファインシールG80、(株)トクヤマ社製、平均2次粒子径1.4μm)を用いた以外は、光沢発現層塗工液T1と同様にして、固形分濃度5%の光沢発現層用塗工液T6を調製した。
[光沢発現層塗工液T7の作製]
水分散性離型剤としてワックスエマルジョン(サンノプコ(株)製、商品名:PEM−17)5質量部、水溶性物質としてオレイン酸アンモニウム5質量部、界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル(第一工業製薬(株)製、商品名ノイゲンET−102)1質量部を添加・混合し、固形分濃度2%の光沢発現層用塗工液(湿潤液)T7を調製した。
(実施例1)
紙基材P1の一方の面側に、ダイコーターを用いてインク定着層塗工液M1を乾燥後の塗工量が8g/mになるように輪郭塗工し乾燥した。
該インク定着層塗工面上に光沢発現層塗工液T1を塗工後、直ちに表面温度が95℃の鏡面ドラムに圧着・乾燥し、自然離型後直ちに剥離させてインクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は1.5g/mであった。
(実施例2)
紙基材P1の一方の面側に、ダイレクトファウンテンコーターを用いて下塗り層塗工液B1を乾燥後の塗工量が5g/mになるように輪郭塗工し、その直後にダイレクトファウンテンコーターを用いてインク定着層塗工液M1を乾燥後の塗工量が8g/mになるようにWet on Wet方式で輪郭塗工した。インク定着層塗工液M1中のポリビニルアルコールが、下塗り層から溶出した硼砂で増粘・ゲル化された後、両塗工層乾燥した。
該インク定着層塗工面上に光沢発現層塗工液T2を塗工後、直ちに表面温度が95℃の鏡面ドラムに圧着・乾燥し、自然離型後直ちに剥離させてインクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は1.3g/mであった。
(実施例3)
光沢発現層塗工液T3を用いた以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は1.5g/mであった。
(実施例4)
紙基材P2を用いた以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は1.8g/mであった。
(実施例5)
紙基材P3を用いた以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は2.0g/mであった。
(実施例6)
紙基材P4を用いた以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は1.5g/mであった。
(実施例7)
紙基材P5を用いた以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は1.3g/mであった。
(実施例8)
インク定着層塗工液M2を用いた以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は1.5g/mであった。
(実施例9)
インク定着層塗工液M3を用いた以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は1.5g/mであった。
(実施例10)
インク定着層塗工液M4を用いた以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は1.5g/mであった。
(実施例11)
インク定着層塗工液M1の塗工方式をブレードコーターを用いての平滑化塗工とした以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は1.5g/mであった。
(実施例12)
光沢発現層塗工液T4を用いた以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は1.5g/mであった。
(比較例1)
紙基材P6を用いた以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は1.3g/mであった。
(実施例13)
インク定着層塗工液M5を用いた以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は2.0g/mであった。
(実施例14)
光沢発現層塗工液T5を用いた以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は1.5g/mであった。
(実施例15)
光沢発現層塗工液T6を用いた以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は1.5g/mであった。
(実施例16)
光沢発現層塗工液T7を用いた以外は実施例1と同様にして、インクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は0.5g/mであった。
(比較例2)
紙基材P7の一方の面側に、ブレードコーターを用いてインク定着層塗工液M5を乾燥後の塗工量が8g/mになるように平滑化塗工し乾燥した。
該インク定着層塗工面上に光沢発現層塗工液T7を塗工後、直ちに表面温度が95℃の鏡面ドラムに圧着・乾燥し、自然離型後直ちに剥離させてインクジェット記録用キャストコート紙を作製した。このときの光沢発現層の乾燥塗工量は0.5g/mであった。
(比較例3)
紙基材P3の一方の面側に、ダイコーターを用いてインク定着層塗工液M4を乾燥後の塗工量が8g/mになるように輪郭塗工し乾燥し、インクジェット記録用コート紙を作製した。
<評価方法>
インクジェット記録用キャストコート紙の光沢性、記録画質(インクの滲み、印字ムラ)、記録画像の鮮明性(印字濃度)、及び生産性(離型秒数)について、下記に示す方法で評価し、その結果を表2に示した。
なお、記録画質、記録画像の鮮明性の評価には、CANON社製インクジェットプリンター、商標:iP−4300、印字モード:光沢紙、きれいモードを用いた。
「光沢性」
20度鏡面光沢度は、JIS−Z−8741に準拠し、村上色彩技術研究所製デジタル光沢度計(GM−26D)を使用して、記録用紙表面を入反射角度20度の光沢度を測定した。
「インクの滲み」
インクジェット記録用キャストコート紙にブラック、シアン、マゼンダ、イエロー、レッド、グリーン、ブルーの各色ベタを、互いに境界を接するようにマス目状に配置した印字を行ない、各色間の境界部でのインクの滲みを目視にて評価した。
◎:インクの滲みは全く見られず、優れたレベル。
○:インクの滲みは極く僅かに見られるが、実用上問題ないレベル。
△:インクの滲みが見られ、用途によっては実用上問題があるレベル。
×:インクの滲みが激しく、実用に耐えないレベル。
「印字ムラ」
インクジェット記録用キャストコート紙に、100%ブラック、90%ブラック、80%ブラック・・・10%ブラックまでのハーフトーン(10階調きざみ)のグレー諧調印字を行い、各諧調でインクの濃度ムラを目視にて評価した。
(なお、印字斑は、先に打ち込まれたインクが塗工層に完全に吸収されないうちに、次のインクが飛来して表面で重なった場合に生ずる現象であり、インク吸収速度が遅くなると、顕著に現れるものである。)
◎:印字ムラは全く見られず、優れたレベル。
○:印字ムラは極く僅かに見られるが、実用上問題ないレベル。
△:印字ムラが見られ、用途によっては実用上問題があるレベル。
×:印字ムラが激しく、実用に耐えないレベル。
「記録画像の鮮明性(印字濃度)」
インクジェット記録用キャストコート紙に黒色インクでベタ印字し、その色濃度をマクベス反射濃度計(モデル:Gretag Macbeth RD−19、マクベス社製)で測定した。尚、色濃度を測定する場合のみ、印字モードを光沢紙、きれいモード、マッチングしないに設定した。
「生産性」
インクジェット記録用キャストコート紙の最表層を塗工し、表面温度95℃に加熱した鏡面ドラムに圧着した後、塗工層が鏡面ドラムから自然に剥離(自然離型)する時間を測定し、下記の4段階にて評価した。
◎:離型秒数が5秒未満で、きわめて優れた生産性。
○:離型秒数が5秒以上、10秒未満で、優れた生産性。
△:離型秒数が10秒以上、15秒未満で、生産性がやや劣るレベル。
×:離型秒数が15秒以上で、生産性が劣るレベル。
なお、塗工層が自然離型しない、又は自然離型した際に鏡面ドラムに塗工層の残留物が多く付着するような場合にも、生産性は×とした。
Figure 2012040788
表2から明らかなように、本発明(1)のインクジェット記録用キャストコート紙の製造方法は、各実施例と各比較例を比較すると、生産性に優れることがわかる。
また、本発明(2)のインクジェット記録用キャストコート紙は、実施例1と実施例4及び5を比較すると印字ムラが生じない優れたものであることがわかる。
更に、本発明(3)のインクジェット記録用キャストコート紙は、実施例1と実施例13を比較すると、光沢性、インク滲み、印字ムラ、印字濃度において優れることがわかる。
更にまた、本発明(4)のインクジェット記録用キャストコート紙は、実施例1と実施例14を比較すると、光沢性、印字濃度が優れることがわかる。
そして、本発明(5)のインクジェット記録用キャストコート紙は、実施例1と実施例12を比較すると、生産性が優れることがわかる。
更に、本発明(2)〜(5)を満足する実施例1〜3は、生産性、光沢性、インク滲み、印字ムラ、記録濃度に優れることがわかる。
本発明は、生産性に優れたインクジェット記録用キャストコート紙の製造方法を提供するものであり、本発明方法により製造されたインクジェット記録用キャストコート紙は、例えば、写真画質の記録を行うインク吐出の早い染料インク系インクジェットプリンターや顔料インク系インクジェットプリンターの出力用紙として利用される。

Claims (5)

  1. 紙基材上に、少なくとも一層の塗工層を有し、塗工層の少なくとも一層が顔料、バインダー、インク定着剤を含有するインク定着層であり、塗工層の少なくとも最表層がキャスト法により形成されるインクジェット記録用キャストコート紙の製造方法において、紙基材の地合指標が60未満であることを特徴とするインクジェット記録用キャストコート紙の製造方法。
  2. 紙基材上に、少なくとも一層の塗工層を有し、塗工層の少なくとも一層が顔料、バインダー、インク定着剤を含有するインク定着層であり、塗工層の少なくとも最表層がキャスト法により形成されるインクジェット記録用キャストコート紙において、紙基材の地合指標が60未満であり、且つJISP8117による透気度が15秒以上であることを特徴とするインクジェット記録用キャストコート紙。
  3. 紙基材上に、少なくとも二層の塗工層を有し、塗工層の少なくとも一層が顔料、バインダー、インク定着剤を含有するインク定着層であり、塗工層の少なくとも最表層がキャスト法により形成されるインクジェット記録用キャストコート紙において、紙基材の地合指標が60未満であり、インク定着層の少なくとも1層が、サブミクロンオーダーの顔料を主成分として含有する層であることを特徴とするインクジェット記録用キャストコート紙。
  4. 紙基材上に、少なくとも二層の塗工層を有し、塗工層の少なくとも一層が顔料、バインダー、インク定着剤を含有するインク定着層であり、塗工層の少なくとも最表層がキャスト法により形成されるインクジェット記録用キャストコート紙において、紙基材の地合指標が60未満であり、最表層が球状のコロイド状粒子を含有する光沢発現層であることを特徴とするインクジェット記録用キャストコート紙。
  5. 紙基材上に、少なくとも一層の塗工層を有し、塗工層の少なくとも一層が顔料、バインダー、インク定着剤を含有するインク定着層であり、塗工層の少なくとも最表層がキャスト法により形成されるインクジェット記録用キャストコート紙において、紙基材の地合指標が60未満であり、最表層が水分散性の離型剤と、水溶性の離型剤を併用することを特徴とするインクジェット記録用キャストコート紙。
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