JP3852329B2 - インクジェット記録シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク受容層の形成の際の塗工液のハジキ、及びインク受容層のひび割れが少なく、光沢性の高いインクジェット記録シートの製造方法およびこの方法により製造されたインクジェット記録シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水性インクを微小なノズルから記録シ−トに向かって噴出し、その記録面上に画像を形成させるインクジェット記録方式は、記録時の騒音が少なく、フルカラー画像の形成が容易であること、高速記録が可能であること、および、他の印刷装置より記録コストが安価であることなどの理由により、端末プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、あるいは帳票印刷等で広く利用されている。
【0003】
一方、プリンタの急速な普及、及び高精細・高速化、さらにデジタルカメラの登場により、記録シートにも種々の特性の高度化が要望されるようになった。すなわち、吸収性、記録濃度、耐水性、および耐光性に優れ、かつ銀塩方式の写真に匹敵する画質と保存性を兼ね備えた記録シートの実現が強く求められている。さらに、より記録画像を写真調にするために、高い光沢性も要望されている。
【0004】
一般的に光沢性を付与する方法としては、スーパーカレンダー等の装置を用い、記録体を圧力や温度をかけたロール間に通紙することにより塗工層表面を平滑化する方法が知られている。しかしながら、このような方法では、得られる光沢性が不十分なうえに、塗工層内に分布しているインク吸収性空隙が減少してしまうため、結果としてインク画像ににじみという現象が生じてしまう。特に最近では粒状感のない写真調の画像を実現するために、低濃度インクを重ね打ちするフォトインク搭載のプリンタが主流となってきており、このプリンタに用いられる記録シートにはより高いインク吸収性が求められている。
【0005】
高いインク吸収性を得るためにインク吸収層を2層以上設け高塗布量にしたり、高い光沢面を得るためにインク吸収層と光沢層を設けるように、光沢性・平滑性を有する紙、コート紙、プラスチックフィルムまたは樹脂塗被紙からなる支持体の上にインク受容層を塗布、乾燥した上に、同一または他のインク受容層を塗布、乾燥するような、2層以上の塗工層を形成する必要がある場合がある。
【0006】
このような構成を有する場合、支持体上に塗布、乾燥した第1塗工層上に、第2塗工層を塗布したとき、特に支持体が非吸水性支持体である場合、特開2000−301828号公報に記載されているように、第1塗工層から気泡が発生して塗工層表面の平滑性が低下してしまう。そのため、この公報では非吸水性支持体上に第1の多孔質層を形成する塗布液を塗布乾燥後に、該多孔質層に溶媒を供給した後に該溶媒が完全に蒸発する前に、第2の多孔質層を形成する塗布液を塗布乾燥して得られることを特徴とする記録用紙が提案されている。
【0007】
しかしながら、塗工層の形成時における気泡による平滑性の悪化については効果があるものの、第2塗工層を塗布したとき、第2塗工層用塗料の第1塗工層に対するレベリング性(塗料の均一な塗工性)が不十分で、塗工層のムラ及びひび割れの防止効果には不十分であり、高光沢な塗工面が得られないという問題がある。
【0008】
特開2001−121810には、支持体の表面エネルギーを塗布液の表面エネルギーよりも大きくして塗布することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法が提案されている。しかしながら、この場合の支持体とは、合成樹脂ラミネート紙、木材繊維や合成繊維を主成分として含む不織布の如きシート状物質であるが、その表面に塗布される、塗工層の具備すべき特性及び組成については述べられていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、シート状支持体上に複数層のインク受容層を形成するとき、下側インク受容層上に、上側インク受容層を高いレベリング性をもって形成することができ、それによって、ハジキ、ひび割れが少なく、光沢性の高いインクジェット記録シートを製造する方法、およびこの方法により製造されたインクジェット記録シートを提供しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェット記録シートの製造方法は、シート状支持体の1面上に複数層のインク受容層を、それぞれ、顔料粒子と接着剤とを含むインク受容層用塗工液を順次に塗工し、乾燥することによって形成するに際し、
互に上下に隣接して積層された1対のインク受容層の形成において、その下側のインク受容層が、それを形成するための塗工液を塗工し、乾燥して形成された後、この乾燥した下側インク受容層上に、25℃の温度において、2000以下の重量平均分子量を有するノニオン性界面活性剤を含む水溶液からなり、かつ0.035〜0.055N/m(35〜55dyn/cm)の表面張力を有する塗工レベリング液を塗布し、それが湿潤状態にある間に、この塗工レベリング液の塗布面上に、上側インク受容層を形成するための塗工液を塗工し、乾燥することを特徴とするものである。
本発明のインクジェット記録シートの製造方法において、前記複数の積層されたインク受容層の、上下に隣接して積層された1対のインク受容層を形成するに際し、前記塗工レベリング液の塗布面の表面温度と、その上に塗工されるインク受容層用塗工液の温度との温度差が3℃以内に調製することが好ましい。
本発明のインクジェット記録シートの製造方法において、前記顔料粒子が10〜1000nmの平均二次粒子径を有し、かつ前記接着剤が2000以上の重量平均重合度を有するポリビニルアルコールを含むことが好ましい。
本発明のインクジェット記録シートの製造方法において、前記シート状支持体の少なくともインク受容層形成表面が、実質上、水を吸収しない重合体材料より形成されていることが好ましい。
本発明のインクジェット記録シートの製造方法において、前記複数層のインク受容層のうち、最外側に位置している最外側インク受容層の、JIS P 8142による75度表面光沢度を、30%以上に調整することが好ましい。
本発明のインクジェット記録シートは、本発明のインクジェット記録シートの製造方法により製造されたものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明方法において、支持体として、例えばセロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、軟質ポリ塩化ビニル、硬質ポリ塩化ビニル、ポリエステル等のフィルム類、上質紙、アート紙箔紙、クラフト紙、ポリエチレンラミネート紙、含浸紙、蒸着紙等の紙類、金属フォイル、合成紙等のシート類が使用される。また、例えばコート紙、キャスト紙等のような塗工紙や、あらかじめ公知のインク受容層を設けたものを用いてもよい。
記録シートのコックリングを防止し、表面平滑性、表面光沢性を向上させるためには、支持体としてポリエチレンラミネート紙、ポリプロピレンフィルム等の非吸水性シートを用いると、銀塩方式の写真に匹敵する画質を有するインクジェット記録画像を記録することができる。
【0012】
支持体として非吸収性シートを用いた場合、記録面側に、支持体と記録層との密着性を向上させる目的で、あらかじめ密着処理、または接着処理を施すことも有効である。支持体裏面に搬送性、帯電防止、ブロッキング防止等のために、処理を施してもよい。支持体の平滑度には特に限定はないが、高光沢、高平滑な記録面を得るためには、支持体の表面が300秒(王研式、J.TAPPI NO5)以上の平滑度を有することが好ましい。また、支持体の不透明度にも特に限定はないが、銀塩写真ライクな画像品質を得るためには、不透明度(JIS P8138)が85%以上であることが好ましい。
【0013】
本発明方法において、支持体の1面上に複数層のインク受容層が、順次に形成される。インク受容層は顔料粒子と接着剤を含むインク受容層用塗布液から形成される。
インク受容層に用いられる顔料は、例えば非晶質シリカ(アルミナ等によるカチオン変性シリカを含む)、カオリン、クレー、焼成クレー、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナおよびアルミナ水和物、炭酸カルシウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、スメクタイト、ゼオライト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメントなどから選ぶことができる。これらの中では、特にシリカ化合物、アルミナ化合物が本発明方法に好ましく用いられる。
【0014】
前記顔料は、3〜50nmの平均一次粒子径を有する複数個の一次粒子の凝集体であって、その平均二次粒子径は10〜1000nmであることが好ましい。前記平均二次粒子径が10nm未満であると、得られるインク受容層のインク吸収性が不十分になることがあり、またそれが1000nmを超えると、得られるインク受容層の透明性及び光沢性が不十分になることがある。
【0015】
顔料の破砕分散方法には制限がなく、例えば一般市販の合成無定型シリカ粒子(数μm)に機械的手段により強い剪断力を与えることにより達成される。機械的手段としては、超音波、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、溶媒攪拌ミル、ジェットミル、サンドグラインダーなどが挙げられる。分散媒体には、特に制限は、なく、例えば水が用いられる。
【0016】
インク受容層の形成に用いられる接着剤は、例えば水溶性樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコールやシリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコール、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白質類、澱粉、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体)、水分散性樹脂(例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、スチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス等)などのような、一般に塗工紙分野で公知公用の各種接着剤から選ぶことができ、これらは、単独に、あるいはその2種以上を混合して使用してもよい。
【0017】
本発明方法においては、得られるインク受容層に高いインク吸収性及び塗膜耐水性を得るために、接着剤としてポリビニルアルコール類などの水溶性樹脂が好ましく使用される。より好ましくはポリビニルアルコールが用いられ、特に重合度2000以上のものがより好ましい。重合度2000未満では得られるインク受容層の塗膜耐水性が不十分になることがある。
【0018】
インク受容層を形成する塗布液において、顔料と接着剤との固形分質量比は特に限定しないが、顔料100質量部に対し、接着剤が3〜100質量部、好ましくは5〜30質量部で用いられることが好ましい。接着剤の添加量が多過ぎると、得られるインク受容層中に分布する粒子の間の細孔が小さくなり、インク吸収性が低下することがある。一方、接着剤が過少であると、得られるインク受容層のひび割れ防止性が不十分になることがある。
【0019】
本発明方法において、インク受容層中にカチオン性化合物を含有させてもよく、これにより、得られるインク受容層のインク定着性を向上させることができる。上記カチオン樹脂としては、例えばポリエチレンアミン及びポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類、またはその誘導体;第3級アミノ基又は第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂類;並びにジアクリルアミン類等が挙げられる。なお、カチオン樹脂の添加量は、顔料100質量部に対し、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは5〜20質量部の範囲内に調節される。その他、一般塗工紙製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤の1種以上をインク受容層中に含有させてもよい。
【0020】
インク受容層の合計塗工量には特に制限はないが、5〜60g/m2程度に調節することが好ましい。塗工量が過少であると、得られるインク受容層のインク吸収性及び画質が低下することがあり、塗工量が過多であると、ひび割れが生じ易くなることがある。銀塩方式の写真に匹敵する画質のインク画像を得るためには、インク受容層の合計質量は20〜45g/m2であることが好ましく、インク受容層のひび割れを防止するために、インク受容層塗工液を2回以上に分けて塗工することが有効である。
【0021】
本発明方法では、インク受容層塗工液を2回以上に分けて塗工する。支持体上に複数層のインク受容層を形成するとき、本発明方法においては、上下に隣接する1対のインク受容層の積層形成において、その下側インク受容層が、それを形成するための塗布液を塗布し、乾燥して形成された後、この乾燥した下側インク受容層上に、2000以下の重量平均分子量を有するノニオン性界面活性剤を含む水溶液からなり、かつ25℃の温度における表面張力が0.035〜0.055N/m(35〜55dyne/cm)の塗工レベリング液を塗布し、それが湿潤状態にあるうちに、この塗工レベリング液の塗布面上に、上側インク受容層を形成するための塗工液を塗工し、乾燥する。
前記塗工レベリング液の表面張力は、常温(25℃)における値であり、その測定方法には、例えば毛管法、ほう圧法、滴重法、垂滴法、静滴法、静ほう法、輪環法などがある。
【0022】
前記塗工レベリング液の表面張力範囲は、0.035〜0.055N/m(35〜55dyne/cm)であり、好ましくは0.040〜0.050N/mである。一般的なインクジェット記録紙用インク受容層塗工液の表面張力は、0.035〜0.055N/m(35〜55dyne/cm)であるから、前記塗工レベリング液の表面張力が0.055N/m(55dyne/cm)を超えたり、又は0.035N/m(35dyne/cm)未満であると、湿潤状態の下側インク受容層に対する上側インク受容層用塗工液のレベリング性能が低下し、上側インク受容層用塗工液がはじかれたり、ひび割れを生ずるなどの塗工面欠陥を生じ易くなる。その原因の詳細はよく分からないが、湿潤状態の下側インク受容層に対する、上側インク受容層用塗工液のレベリング性、及び塗工環境下におけるチリ等の異物が関連しているものと思われる。
【0023】
塗工レベリング液は、2000以上の重量平均分子量を有するノニオン性界面活性剤を含む水溶液からなるものである。必要により前記水に加えて、メタノール及び/又はエタノールを含んでいてもよい。
塗工レベリング液の表面張力を調整するために上記成分を含む水溶液に、さらに、有機溶剤、天然物等、各種公知の化合物を添加してもよい。また、表面張力は溶質の濃度に依存するため、溶質の濃度を適宣調整することが好ましい。
【0024】
本発明方法に用いられる塗工レベリング液において、ノニオン性界面活性剤は、コスト及び使用しやすさの点から、表面張力の調整剤として使用される。本発明方法に用いられるノニオン性界面活性剤は、その重量平均分子量が2000以下である。重量平均分子量が2000を超えると、インク受容層の細孔を塞ぎ、インク吸収性を低下させてしまうことがある。
【0025】
塗工レベリング液用界面活性剤はノニオン性を有するものであるが必要により、アニオン系又はカチオン系界面活性剤を併用してもよい。塗工レベリング液に用い得るアニオン系界面活性剤としては、例えば硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル塩系等を用いることができる。また併用できるカチオン系界面活性剤としては、例えばアミン塩系、4級アンモニウム塩系等から選ぶことができる。ノニオン系界面活性剤は、例えばポリエチレングリコール系(高級アルコールエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、高級脂肪族アミンおよび脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物等)、多価アルコール系(グリセリンおよびペンタエリスリットの脂肪酸エステル、ソルビットおよびソルビタンの脂肪酸エステル、砂糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アルカノールアミド等)等から選ばれた1種以上を用いることができる。
【0026】
塗工レベリング液用界面活性剤としてはインクジェットプリンターのインクとの親和性の高いノニオン系界面活性剤が用いられる。その理由として一般的なインクの溶媒として、水および水溶性の各種有機溶媒(例えば、メチルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンあるいはケトンアルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個のアルキレングリコール類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、グリセリン、エチレングリコールメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル等)が用いられているため、インクとの相溶性の高いノニオン系界面活性剤が用いられるのである。
【0027】
塗工レベリング液用界面活性剤は、単独あるいは2種以上用いることができ、添加量には特に制限はないが、溶媒100質量部に対し1質量部以下であることが好ましい。
塗工レベリング液には、その所望の効果を阻害しない限り、顔料、接着性樹脂、耐ガス向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、カビ防止剤、カチオン性化合物、蛍光増白剤、染料等の1種以上が添加されていてもよい。
【0028】
本発明のインクジェット記録シートの製造方法の工程について説明する。
支持体上に直接接する第1層目のインク受容層は、少なくとも顔料と接着剤を含有するインク受容層用塗工液を、例えばブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の公知の塗工装置を用いて支持体表面上を塗工し、乾燥して得ることができる。
【0029】
第2層目のインク受容層を形成するには、先に設けた第1層目のインク受容層(乾燥ずみ)上に、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドフレードコーター等で前記塗工レベリング液を塗布した後、それが湿潤状態のうちに、少なくとも顔料と接着剤を含有する第2層目のインク受容層用塗工液を、前記湿潤塗工レベリング液面上に塗工し乾燥して形成する。
【0030】
第3層目以降のインク受容層を形成するときには、既に塗工、乾燥された下側インク受容層上に、前記塗工レベリング液を塗布し、それが湿潤状態のうちに、その上に、上側インク受容層用塗工液を塗工し、乾燥すればよい。
この時、前記塗工レベリング液を塗布面の表面温度と、その上に塗工されるインク受容層用塗工液の温度との温度差が、3℃以内であることが好ましい。
この温度差が3℃を超えると、塗工レベリング液層と、その上のインク受容層用塗工液層との界面における表面張力が大きく変化し、レベリング効果が低下することがある。
塗工レベリング液及びインク受容層用塗工液の塗工温度には特に制限はないが、5〜45℃であることが好ましい。
【0031】
本発明方法により、銀塩写真並みの優れた画質及び光沢を有するインク受容層を形成することができる。記録する面の75度光沢度(JIS−Z−8741)は、30%以上であることが好ましく、40〜90%であることがさらに好ましい。
【0032】
【実施例】
下記に実施例をあげて、本発明方法をより具体的に説明するが、もちろん本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。また、例中の「部」および「%」は特に断らない限り、いずれも水を除いた「固形分質量部」及び「固形分質量%」を示す。また、例中の表面張力は、協和界面科学社製 SURFACE TENSIOMETER CBVP−A3を用いて測定した。
【0033】
下記実施例及び比較例に用いられるインク受容層形成用塗工液は、下記のようにして調製された。
[インク受容層用塗工液A]
平均粒径3μmの合成無定型シリカ(日本シリカ工業社製、商品名:Nipsil HD−2)をサンドグライダーにより粉砕分散した後、圧力式ホモジナイザー(SMT社製、商品名:超高圧式ホモジナイザー GM−1)でさらに粉砕分散し、一次粒子の平均粒子径が15nm、二次粒子の平均粒子径が100nmの5%シリカ分散液Aを調製した。
次に、この分散液A100部にカチオン樹脂としてスミレーズレジン(住友化学工業社製、商品名:SR−1001)15部を添加して増粘・凝集させた。さらに、二次粒子の平均粒径が150nmになるまで粉砕分散の操作を繰り返して、6%シリカゾルAKを調製した。このシリカゾルAK100部に、5%ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−135H、重合度:3500、ケン化度:99%以上)24部を混合し、インク受容層用塗工液Aを調整した。
〔インク受容層用塗工液B〕
分散液Aと同様の粉砕分散操作を繰り返し、二次粒子の平均粒子径が800nmよりなる10%シリカゾルBを調整した。このシリカゾルB100部に、5%ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−135H、重合度:3500、ケン化度:99%以上)40部を混合し、インク受容層用塗工液Bを調製した。
なお、上記各粉砕分散処理において、一次粒子径は処理前後で変化はないことが確認された。
【0034】
実施例1
インク受容層用塗工液Bを塗工量が30g/m2となるようにメイヤーバーを用いて市販原紙(王子製紙社製、商品名:OKプリンス、127.9g/m2、配合比:LBKP100%、フリーネス:430cc)の表面上に塗布し、乾燥してインク受容下層1を設けた。この乾燥したインク受容下層1上に塗工レベリング液(ソルビタン・モノラウリン酸エステル水溶液、濃度:0.001%、表面張力:0.048N/m(48dyne/cm)、25℃)を5g/m2の塗布量で塗布した後、(表面温度:25℃)に、それが湿潤状態にある間に、インク受容層用塗工液A(塗料温度:25℃)を、その、塗工量が5g/m2になるようにメイヤーバーを用いて塗布し、乾燥して、インク受容層2を形成した。インクジェット記録シートが得られた。
【0035】
実施例2
インク受容層用塗工液Bをその塗工量が15g/m2になるようにメイヤーバーを用いて、市販原紙(王子製紙社製、商品名:OKプリンス、127.9g/m2、配合比:LBKP100%、フリーネス:430cc)の表面上に塗布し、乾燥してインク受容層1を形成した。インク受容層1の乾燥面上に、塗工レベリング液(ソルビタン・モノラウリン酸エステル水溶液、濃度:0.001%、表面張力:0.048N/m(48dyne/cm)、25℃)を、塗布量が3g/m2になるように塗布した後(表面温度:25℃)に、それが湿潤状態にあううちに、その上にインク受容層用塗工液Bを、メイヤーバーで、塗工量が15g/m2になるように塗布し乾燥して、インク受容層2を形成した。さらにこのインク受容層2の乾燥表面上に塗工レベリング液(ソルビタン・モノラウリン酸エステル水溶液、濃度:0.001%、表面張力:0.048N/m(48dyne/cm)、25℃)を、その塗工量が5g/m2になるように塗布した後(表面温度:25℃)、それが湿潤状態にあううちに、その上にインク受容層用塗工液Aを、メイヤーバーで、その塗工量が5g/m2になるように塗工し、乾燥してインク受容層3を形成した。インクジェット記録シートが得られた。
【0036】
実施例3
実施例2と同様にしてインクジェット記録シートを作製した。但し、市販原紙(王子製紙社製、商品名:OKプリンス、127.9g/m2、配合比:L100%、フリーネス:430cc)の代わりに、合成紙(ユポコーポレーション社製、商品名:ユポGYG130、130μm)を用いた。
【0037】
実施例4
実施例2と同様にしてインクジェット記録シートを作製した。但し、市販原紙(王子製紙社製、商品名:OKプリンス、127.9g/m2、配合比:LBKP100%、フリーネス:430cc)の代わりに、下記のポリエチレンラミネート紙を用いた。
[ポリエチレンラミネート紙用基紙]
標準ろ水度(JIS P−8121)で250mlまで叩解した針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)と、標準ろ水度で280mlまで叩解した広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)とを、質量比2:8の割合で混合し、濃度0.5%のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリー中にパルプ絶乾質量に対し、カチオン化澱粉2.0%,アルキルケテンダイマー0.4%,アニオン化ポリアクリルアミド樹脂0.1%,ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂0.7%を添加し、十分に攪拌して分散させた。
上記組成のパルプスラリーを長網マシンで抄紙し、ドライヤー、サイズプレス、マシンカレンダーを通し、坪量180g/m2、密度1.0g/cm3の原紙を製造した。上記サイズプレス工程において、サイズプレス液として、カルボキシル変性ポリビニルアルコールと塩化ナトリウムとを2:1の質量比で混合し、これを水に加えて加熱溶解し、濃度5%に調製したものを、前記原紙の両面に、合計25ml/m2の塗布量で塗布し、乾燥してポリエチレンラミネート紙用基紙を得た。
【0038】
[ポリエチレンラミネート紙]
前記ポリエチレンラミネート紙用基紙の両面に、コロナ放電処理を施した後、そのフェルト側表面上に、バンバリーミキサーで混合分散した下記ポリオレフィン樹脂組成物1をその塗工量が25g/m2になるようにラミネートし、また、基紙のワイヤー側面上に、下記組成のポリオレフィン樹脂組成物2(裏面用樹脂組成物)を、その塗工量が20g/m2になるようにラミネートした。このときT型ダイを有する溶融押し出し機(溶融温度320℃)を用いた。ラミネート後、フェルト側ラミネート層を鏡面を有するクーリングロールに接合させて冷却固化し、ワイヤー側ラミネート層を粗面のクーリングロールに接合させて冷却固化して、表面平滑度(王研式、J.TAPPI No.5)が6000秒、不透明度(JIS P−8138)が93%のポリエチレンラミネート紙を得た。
(ポリオレフィン樹脂組成物1)
長鎖型低密度ポリエチレン樹脂(密度0.926g/cm3、メルトインデックス20g/10分)35部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.919g/cm3、メルトインデックス2g/10分)50部、アナターゼ型二酸化チタン(石原産業社製、商品名:A−220)15部、ステアリン酸亜鉛0.1部、酸化防止剤(チバガイギー社製、商品名:Irganox1010)0.03部、群青(第一化成社製、商品名:青口群青No.2000)0.09部、蛍光増白剤(チバガイギー社製、商品名:UVITEX OB)0.3部。
(ポリオレフィン樹脂組成物2)
高密度ポリエチレン樹脂(密度0.954g/cm3、メルトインデックス20g/10分)65部、低密度ポリエチレン樹脂(密度0.924g/cm3、メルトインデックス4g/10分)35部。
【0039】
実施例5
実施例2と同様にしてインクジェット記録シートを作製した。但し、市販原紙(王子製紙社製、商品名:OKプリンス、127.9g/m2、配合比:L100%、フリーネス:430cc)の代わりに、市販塗工紙(王子製紙社製、商品名:OKコート、128g/m2)を用いた。
【0040】
実施例6
実施例1と同様にしてインクジェット記録シートを作製した。但し、前記塗工レベリング液(ソルビタン・モノラウリン酸エステル水溶液、濃度:0.001%、表面張力:0.048N/m(48dyne/cm)、25℃)の代わりに、別の塗工レベリング液(しょ糖モノステアリン酸エステル水溶液、濃度:0.001%、表面張力0.045N/m(45dyne/cm)、25℃)を用いた。
【0041】
実施例7
実施例1と同様にしてインクジェット記録シートを作製した。但し、前記塗工レベリング液(ソルビタン・モノラウリン酸エステル水溶液、濃度:0.001%、表面張力:0.048N/m(48dyne/cm)、25℃)の代わりに、別の塗工レベリング液(ポリエチレンオキサイドp−n−オクチルフェニルエーテル水溶液、濃度:0.01%、表面張力0.045N/m(45dyne/cm)、25℃)を用いた。
【0042】
実施例8
実施例1と同様にしてインクジェット記録体を作製した。但し、前記塗工レベリング液(ソルビタン・モノラウリン酸エステル水溶液、濃度:0.001%、表面張力:0.048N/m(48dyne/cm)、25℃)の代わりに、別の塗工レベリング液(2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド付加物(付加数:4モル)水溶液、濃度:0.01%、表面張力:0.044N/m(44dyne/cm)、25℃)を用いた。
【0043】
実施例9
実施例1と同様にしてインクジェット記録体を作製した。但し、前記塗工レベリング液(ソルビタン・モノラウリン酸エステル水溶液、濃度:0.001%、表面張力:48dyne/cm・25℃)の代わりに、別の塗工レベリング液(ソルビタン・モノラウリン酸エステル水溶液、濃度:0.03%、表面張力:0.035N/m(35dyne/cm)、25℃)を用いた。
【0045】
比較例1
実施例1と同様にしてインクジェット記録体を作製した。但し、前記塗工レベリング液(ソルビタン・モノラウリン酸エステル水溶液、濃度:0.001%、表面張力:0.048N/m(48dyne/cm)、25℃)の代わりに、水(表面張力:0.072N/m(72dyne/cm)、25℃)を用いた。
【0046】
比較例2
実施例1と同様にしてインクジェット記録体を作製した。但し、前記塗工レベリング液(ソルビタン・モノラウリン酸エステル水溶液、濃度:0.001%、表面張力:0.048N/m(48dyne/cm)、25℃)の代わりに、別の塗工レベリング液(砂糖 ミリスチン酸モノエステル、濃度:0.05%、表面張力:0.026N/m(26dyne/cm)、25℃)を用いた。
【0048】
テスト
上記実施例及び比較例の11種のインクジェット記録シートの目視外観、光沢値、印字濃度を下記方法により測定評価した。
[目視外観]
インク受容層の目視外観を、以下のように評価した。○と△は実用上問題ないレベル。○:ハジキ、ひび割れがなく良好
△:ハジキ、ひび割れはあるが実用上、問題ないレベル
×:はじき、ひび割れが多く実用上、使用困難なレベル
[光沢値]
JIS−P8142に準じて白紙部の75°光沢を測定した。
[印字濃度]
インクジェットプリンター(エプソン社製、モデル:PM800C)で黒部ベタを印字し、マクベス反射濃度計(マクベス社製、モデル:RD−914)を用いて測定した。標柱に示した数字は5回測定の平均値である。
【0049】
【表1】
【0050】
表1から明らかなように、本発明の方法により得られたインクジェット記録シートは、インク受容層の形成の際の塗工液のハジキ、ひび割れが少なく、光沢性の高いインクジェット記録シートであった。
【0051】
【発明の効果】
本発明方法により、インク受容層の形成の際に、塗工液のハジキ及びインク受容層のひび割れの発生が少なく、光沢性の高いインクジェット記録シートを高い工学的効率をもって製造することが可能になった。
Claims (6)
- シート状支持体の1面上に複数層のインク受容層を、それぞれ、顔料粒子と接着剤とを含むインク受容層用塗工液を順次に塗工し、乾燥することによって形成するに際し、
互に上下に隣接して積層された1対のインク受容層の形成において、その下側インク受容層が、それを形成するための塗工液を塗工し、乾燥して形成された後、この乾燥した下側インク受容層上に、2000以下の重量平均分子量を有するノニオン性界面活性剤を含む、水溶液からなり、かつ25℃の温度において、0.035〜0.055N/m(35〜55dyn/cm)の表面張力を有する塗工レベリング液を塗布し、それが湿潤状態にある間に、この塗工レベリング液の塗布面上に、上側インク受容層を形成するための塗工液を塗工し、乾燥する、
ことを特徴とするインクジェット記録シートの製造方法。 - 前記複数の積層されたインク受容層の、上下に隣接して積層された1対のインク受容層を形成するに際し、前記塗工レベリング液の塗布面の表面温度と、その上に塗工されるインク受容層用塗工液の温度との温度差が3℃以内に調製する、請求項1に記載のインクジェット記録シートの製造方法。
- 前記顔料粒子が10〜1000nmの平均二次粒子径を有し、かつ前記接着剤が2000以上の重量平均重合度を有するポリビニルアルコールを含む、請求項1又は2に記載のインクジェット記録シートの製造方法。
- 前記シート状支持体の少なくともインク受容層形成表面が、実質上、水を吸収しない重合体材料より形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録シートの製造方法。
- 前記複数層のインク受容層のうち、最外側に位置している最外側インク受容層の、JIS P 8142による75度表面光沢度を、30%以上に調整する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録シートの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録シートの製造方法により製造されたインクジェット記録シート。
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