JP2008062599A - 両面インクジェット記録用シート - Google Patents

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Abstract

【課題】 操業性に優れ、シート物性において表裏の光沢度の差が少ないうえに、両面とも光沢度が高く、また、印字適性において表面に印字した際に裏抜けがないとともに、印字濃度、インク吸収性などのインクジェット記録適性に優れ、かつ印字した後もカールを生じない両面インクジェット記録用シートを提供する。
【解決手段】 本発明の両面インクジェット記録用シートは、透気性基材の両面に、顔料と、これを保持するバインダとを含有するインク受容層を積層し、これらの受容層上に光沢発現層を積層してなる複数の塗工層を有する両面インクジェット記録用シートである。
そして、上記インク受容層および光沢発現層からなる塗工層の厚さが、10〜70μmであり、かつ、光沢発現層は、その厚さがインク受容層のそれに対して1/10以下であり、上記光沢発現層が、キャスト加工により光沢化されている。
【選択図】 なし

Description

本発明は、インクジェット記録に適用される両面インクジェット記録用シートに関し、詳しくは、光沢性、インクジェット記録適性が表裏両面で優れるとともに性能差がなく、かつカールが生じない両面インクジェット記録用シートに関する。
水性インクを微細なノズルから噴出して画像を形成させるインクジェット記録方式は、フルカラー化が容易であること、高速記録が可能であること、少量部数の印刷の場合に他の印刷装置より安価にできること等の利点を有している。
そのため、このインクジェット記録方式は、端末用プリンタ、ファクシミリ、プロッタあるいは帳票印刷などで広く利用されている。
近年、インクジェットプリンタの急速な高精細化・高速化が進み、それに伴って、インクジェット記録用シートには、従来以上のインク吸収速度の向上、および表面強度の向上が求められている。
さらに、デジタルカメラの普及に伴い、インクジェット記録用シートには、デジタルカメラで撮影した記録画像を、銀塩方式の写真に匹敵する高い画質で印刷できることが強く求められ、具体的には、印字濃度及び光沢の更なる向上が求められている。
また、デジタルカメラの画像印刷では、印字に比較して大量のインクを必要とすることから、記録用シートには、大容量のインク吸収性および早急なインク吸収速度が求められている。
そのために、インクジェット記録用シートでは、基材上に溶媒吸収層とインク定着層とを含む2層以上の塗工層を設けて、インク吸収性およびインク吸収速度を向上するとともに、光沢を上げるために、特定粒子径の凝集体顔料を含有する最表層を設けてこの最表層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧着し、その鏡面を写し取る方法、いわゆるキャスト加工を行なって光沢発現層を形成することが行われている。
また、インクジェットプリンタは、その普及が急速に進み、身近なものになるに従い、オンデマンド印刷に用いるプリンタとして盛んに利用されてきている。オンデマンド印刷とは、「必要な情報」を、「必要な場所と時刻」に、「必要な部数(1部〜)」だけ提供するシステムであるので、まさにインクジェットプリンタはそれに最適なプリンタであり、例えばアルバム用途やパンフレット用途のオンデマンド印刷に頻繁に使用されている。
このような用途では、両面に画像を記録するシートが必要となってくる。
しかしながら、両面光沢インクジェット記録用シートを製造することは、操業性が困難であること、両面の光沢性が十分に確保できないこと等により、片面記録用のインクジェット記録シートの裏面同士を貼り合わせるといったような方法が採られていた。
ところが、このような方法では、手間やコストがかかるばかりでなく、貼り合せ時にしわが生じたりするなどの問題があった。
また、この問題を解決するために、基材の両面にインクジェット方式による印字が可能となるように特別な組成を有するインク受容層、およびその上面に設けられたコート層を有し、表裏のそれぞれに異なる条件の印刷がなされても、例えば表面に画像を印刷し、裏面に文字を印刷するなどしても、シートのカールや、印字が裏面まで現れてしまう裏抜けがない両面インクジェット記録用シートが提案されている(特許文献1参照)。
また、複数のインク処理層を片面に塗工した従来の記録用シートと同様のインク処理層を基材の両面に設けると、印刷時にインクによりその処理層間に層破壊が発生する虞があるが、それを防止するために、顔料とバインダ樹脂とを含有するインク受容層と、その上層に弱カチオン性あるいはアニオン性樹脂を含有する光沢度調整層とを積層して形成し、その層破壊を防止した両面インクジェット記録用シートが提案されている(特許文献2参照)。
特開平9−286166号公報 特開2001−39011号公報
しかしながら、特許文献1に記載の両面インクジェット記録用シートでは、カールや印字の裏抜け防止に特化したもので、表裏の塗工層を意図的に異なる構成にしているが、表裏両面で同等の光沢度および印字品質を得ることは困難であった。
特許文献2に記載の両面インクジェット記録用シートでは、片面を貼り合わせたシートよりも優れた操業性を有しているものの、乾燥に時間がかかり、かつ両面の光沢度に差が生じるとともに光沢度そのものもそれほど高くならない等の問題を有していた。また、表面に印字した際にインクの裏抜けが生ずることや光沢発現層にひび割れが形成されやすいことにより印字濃度の低下が生ずる虞があるなどの問題もあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、このような両面インクジェット記録用シートにおいては、キャスト加工により光沢化することが適当である上に、シート表裏の表面光沢性、種々の印字適性、および印字後のカール防止等に優れたものを得るためには、インク受容層および光沢発現層からなる塗工層の組成、塗工量が適当であるのみならず、これらの合計厚さと、インク受容層と光沢発現層との厚さ割合が、キャスト加工に関係して最適な数値範囲があることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の技術課題は、操業性に優れ、シート物性において表裏の光沢度の差が少ないうえに、両面とも光沢度が高く、また、印字適性において表面に印字した際に裏抜けがないとともに、印字濃度、インク吸収性などのインクジェット記録適性に優れ、かつ印字した後もカールを生じない両面インクジェット記録用シートを提供することである。
本発明の両面インクジェット記録用シートは、透気性基材の両面に、顔料と、これを保持するバインダとを含有するインク受容層を積層し、これらの受容層上に光沢発現層を積層してなる複数の塗工層を有する両面インクジェット記録用シートにおいて、上記インク受容層および光沢発現層からなる塗工層の厚さが、10〜70μmであり、かつ、光沢発現層は、その厚さがインク受容層のそれに対して1/10以下であり、上記光沢発現層が、キャスト加工により光沢化されていることを特徴とする。
本発明の好ましい構成態様によれば、上記両面のそれぞれのインク受容層は、その層厚が相互に異なり、薄い一面のインク受容層と、それより厚い他面のインク受容層となっているとともに、その一面と他面との層厚の割合が1/1〜1/2である。
本発明の他の好ましい構成態様によれば、上記インク受容層は、上記バインダとしてポリビニルアルコールを含有するとともに、該ポリビニルアルコールと架橋する架橋剤を含有し、上記ポリビニルアルコールと上記架橋剤とが反応してポリビニルアルコールを架橋させている。
そして、上記架橋剤が、硼素化合物であり、上記ポリビニルアルコールと反応して該ポリビニルアルコールをゲル化状態に架橋させている。
また、上記硼素化合物が、上記基材上に硼素化合物を含有する水系塗工液を塗布し、ついで、上記インク受容層を形成するための受容層用塗工液を塗布することによりインク受容層に含有されているか、あるいは、上記受容層用塗工液に添加されていることによりインク受容層に含有されているかのいずれかである。
特に、上記硼素化合物が、上記基材上に上記水系塗工液を塗布し、ついで、上記受容層用塗工液を塗布することによりインク受容層に含有されていることが好ましい。
本発明の他の好ましい構成態様によれば、上記インク受容層のポリビニルアルコールが、平均重合度3500以上であることである。
本発明の他の好ましい構成態様によれば、インク受容層の顔料が、平均粒子径500nm以下の気相法シリカである。
本発明の両面インクジェット記録用シートは、操業性に優れ、高い光沢度を有し、表裏の光沢度の差が少ないうえに、両面とも光沢度が高く、表面に印字した際に裏抜けもなく、インクジェット記録適性に優れ、印字した後もカールを生じない。
本発明に係わる両面インクジェット記録シートを、以下に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
本実施の形態の両面インクジェット記録用シートは、透気性基材の両面に、顔料と、これを保持するバインダとを含有するインク受容層を積層し、これらの受容層上に光沢発現層を積層してなる複数の塗工層を有する両面インクジェット記録用シートである。
そして、上記インク受容層および光沢発現層からなる塗工層の厚さが、10μm〜70μmであり、かつ光沢発現層は、その厚さがインク受容層のそれに対して1/10以下である。
また、上記光沢発現層は、キャスト加工により光沢化されている。
<透気性基材>
上記両面インクジェット記録シートの透気性基材としては、紙基材、透気性を有する樹脂フィルムまたはシート材等を使用することができる。
とりわけ、透気性に優れる紙基材を使用することが好ましい。
[紙基材]
紙基材の概要を説明する。
上記紙基材としては、本発明の効果を損なわない範囲で、通常使用される公知の紙基材を用いることができ、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙、クラフト紙、バライタ紙、板紙、含浸紙、蒸着紙が挙げられる。
また、一般の塗工紙等に使用される酸性紙、中性紙等の別も適宜用いられる。
紙基材は、木材パルプを主成分とし、必要に応じて填料、各種助剤等が添加される。
木材パルプとしては、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を使用することができる。
特に、化学パルプである針葉樹および広葉樹のクラフトパルプ、あるいはこれらクラフトパルプを漂白した針葉樹晒クラフトパルプ(NBKPと称す)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKPと称す)が好ましい。
また、これらのパルプにおいて、その漂白工程での塩素フリーパルプ、例えば、パルプ漂白に塩素そのものを使わずに塩素化合物を使うECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、パルプ漂白に塩素元素が一切入っていない漂白剤を用いるTCF(Total Chlorine Free)パルプ等を用いることは好ましい。
これらのパルプは、紙力、抄紙適性等を調整するために、叩解機により叩解度を調整することができ、その叩解度は特に限定しないが、ろ水度(フリーネス:CSF(Canadian Standard Free-ness))で表して250〜550ml(JIS−P8121)が好ましい。
紙基材に添加される填料は、例えば、炭酸カルシウム、焼成カオリン、シリカ、酸化チタン、タルク等が好ましく用いられる。中でも炭酸カルシウムは白色度が高い紙基材が得られ、インクジェット記録シートの光沢感も高まるので好ましい。
紙基材中の填料の含有率(灰分)は、1〜20質量%程度が好ましい。この範囲であれば、平滑度、透気度、紙力、および剛性のバランスがとれ、光沢度や写像性、剛性のバランスに優れたインクジェット記録シートが得られやすい。
紙基材に添加される助剤としては、サイズ剤、定着剤、紙力増強剤、カチオン化剤、歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤等が挙げられる。
上記サイズ剤としては、公知のサイズ剤が、例えば、強化ロジン、アルケニル無水コハ
ク酸等が用いられる。
また、このサイズ剤の定着剤として硫酸バンド、定着歩留まり向上剤として澱粉等がサ
イズ剤に併用して用いられる。
さらに、紙力増強剤としてポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂等が用いられる。
紙基材のステキヒトサイズ度(JIS−P8122)は1〜300秒程度が好ましい。 ステキヒトサイズ度が1秒未満であると、塗工時に皺が発生する等操業上問題となる虞があり、300秒を越えるとインク吸収性が低下する虞があり、かつ印字後のカールやコックリング(吸収ジワ)が著しくなる虞があり、好ましくない。
紙基材の坪量は、150〜400g/m程度が好ましい。
坪量が、150g/m未満であるとインクの裏抜けが生ずる虞があり、400g/mを超えると剛性が高くなり、プリント時にシート搬送に問題が生ずる虞があり、好ましくない。
紙基材の王研式透気度(JAPAN TAPPINo.5)は10〜350秒が好ましく、10〜200秒がより好ましく、20〜100秒がさらに好ましい。
透気度が10秒未満であると、インク受容層用塗工液が紙基材に過剰に浸透する虞があり、350秒を超えると、キャストドラムで圧接仕上げする際に、操業性が低下する虞があり、好ましくない。
紙基材は、長網抄紙機などにより製造され、その厚さは、特に限定されないが、用途に応じて20μm〜500μmの範囲で適宜選択される。
<塗工層>
本実施の形態の両面インクジェット記録用シートは、基材上に設けられた1層のインク受容層と、このインク受容層上に設けられ、この記録用シートの最表部を形成する光沢発現層とからなる2層の塗工層を、基材両面にそれぞれ有している。
なお、インク受容層を複数とすることにより、塗工層を片面3層以上としても良い。
[インク受容層]
このインク受容層は、顔料と、この顔料を保持するバインダとを主成分としており、さらにインクを定着するためのインク定着剤を含有していることが好ましい。
上記バインダとしては、一般的には接着剤が用いられる。
本実施の形態のインク受容層は、インクを定着させるとともに、インクの吸収容量および吸収速度を向上させるためのものであって、透気性基材の両面に設けられ、顔料と、接着剤と、インク定着剤とを含む層である。
なお、このインク受容層は、一層に限らず複数層設けられていても良いし、また、表面と裏面とで、その層の数が同じでも良いし、異なっていても良い。
このインク受容層を2層設ける場合は、1層を基材上に設けられインク溶媒を吸収する下塗り層とし、その上にインク中の染料を定着するインク定着層とする構成とすることが好ましい。
〈顔料〉
インク受容層に用いられる顔料としては、カオリン、クレー、焼成クレー、非晶質シリカ(無定形シリカ)、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、サチンホワイト、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、ゼオライト、合成ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアミナン系プラスチックピグメント、コロイダルシリカ等が挙げられる。
顔料は、本発明の効果を損なわない範囲で、1種単独に、または2種以上を併用して用いることができる。
その中でも、インク吸収性の面から非晶質シリカが好ましく用いられる。
非晶質シリカとしては、合成された湿式法シリカ、気相法シリカなどがあるが、中でも気相法シリカは、光沢性や印字濃度が優れることから好ましい。
ここで非晶質シリカとは、無定形シリカとも言われる結晶構造を持たないシリカの総称である。
ただし、コロイダルシリカは、粒子構造としては非晶質であるが、粒子の結合構造が会合構造なっていることから、それが主として凝集結合であるその他の非晶質シリカとは、狭義には区別されることが多く、本明細書でも区別して扱う。
また、天然非晶質シリカとしては、珪藻土があるが、通常非晶質シリカと言えば合成された非晶質シリカをさすので、本明細書でも、珪藻土は非晶質シリカと区別して扱う。
(気相法シリカ)
インク受容層に使用する気相法シリカはフュームドシリカとも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。
具体的には四塩化珪素を水素および酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化珪素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシランなどのシラン類も単独または四塩化珪素と混合した状態で使用することができる。
気相法シリカは日本アエロジル社からアエロジル、トクヤマ社からQSタイプという商品名で市販されている。
気相法シリカは溶液中では凝集して、適度な空隙を有する二次粒子となっており、これをインク受容層に添加すると、この層の表面光沢性が高くなる。
この気相法シリカは、平均粒子径が5〜20nmの1次粒子であるが、この平均粒子径とは、まず3%のシリカ分散液を200g調整し、続いて市販のホモミキサで1000rpm、30分間攪拌分散した後、直ちに電子顕微鏡(SEMとTEM)で観察した粒径であり、シリカ分散粒子のマーチン径を測定し、平均したものである(「微粒子ハンドブック」、朝倉書店、p.52、1991年参照)。
本発明者らが測定した結果、気相法シリカがスラリー状の場合、このシリカの凝集状態によって粒子径が大きく変動するが、上記の測定条件であれば、ほぼ同じ値が得られる。
上記平均粒子径が5nm以下であると、一次粒子間の空隙が極端に小さくなり、インク中の溶剤やインクを吸収する能力が著しく低下し、表面のキャスト加工を行った後に裏面のキャスト加工を行う際に光沢等の品質が低下する虞があり、またこの粒子径が20nm以上であると、この一次粒子が凝集して形成される二次粒子が大きくなり、光沢性が低下する虞があり、好ましくない。
なお、この気相法シリカは、インク受容層用塗工液に単体として添加するのではなく、後述するインク定着剤としてのカチオン性化合物と結合した微粒子として添加することが好ましい。詳しくは、インク定着剤の項で説明する。
〈バインダ〉
インク受容層には、上記顔料のバインダとして通常公知の接着剤を用いることが好ましい。
(接着剤)
上記接着剤としては、塗工紙用として用いられている公知の接着剤が用いられ、例えば、(イ)カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の各種蛋白質類、(ロ)澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、(ハ)ポリビニルアルコール(以降PVAと称す)、カチオン性PVA、シリル変性PVA等の各種変性PVAを含むPVA類、(ニ)カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、(ホ)スチレン−ブタジエン共重合体およびメチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体、(ヘ)アクリル系重合体、(ト)エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体、等が挙げられる。
これら接着剤は単独、あるいは併用して用いられる。
これらの接着剤の中でも表面強度の点からPVAを用いることが好ましい。
また、後述するようにインク受容層は、ひび割れを防止するために接着剤を架橋、ないしはゲル化状態に架橋することが好ましいが、この際に、PVAは、架橋剤のホウ素化合物とゲル化状態に架橋するのでこの点からも特に好ましい。
インク受容層に用いられるPVAは、そのケン化度の相違により性状が異なり、このため目的に応じてそのケン化度を選択することが好ましい。
ケン化度が95%以上、より好ましくは98%以上のPVAを使用すると、塗工層の強度が強くなるとともに、塗工液調整時に泡立ちなどもおこらず、製造時の作業性が非常に容易であり好ましい。
また、ケン化度が75〜90%の部分ケン化PVAを使用すると、塗工層の可撓性に優れ、その折り割れ防止に非常に効果的である。
これらケン化度の異なるPVAは、その目的に応じて、それぞれ単独で用いても、併用して用いても良い。
上記PVAは、その重合度が3500以上であることが好ましく、3500〜5000であることが特に好ましい。重合度が3500未満であると、インク受容層の強度が弱いとともに、ひび割れが発生しやすく、断裁時の紙粉発生につながる虞があり、5000を超えると、十分なインク吸収性が得られにくいとともに、溶液粘度が高くなり塗工液調整におけるハンドリング面が困難となる虞があり、好ましくない。
顔料と接着剤の配合割合は、その種類にもよるが、一般に顔料100質量部に対し接着剤1〜100質量部、好ましくは2〜50質量部の範囲で調整される。
〈インク定着剤〉
上記インク定着剤は、インクジェット記録用インク中の染料色素を定着し、これにより印字画像に耐水性を付与する。
このインク定着剤には、カチオン性化合物が用いられ、カチオン性樹脂や低分子カチオン性化合物(例えばカチオン性界面活性剤等)が例示される。
印字濃度向上の点ではカチオン性樹脂が好ましく、一般にインクジェット記録用シートで用いられる各種公知のカチオン性樹脂が使用できる。
これらのカチオン性樹脂としては、例えば、(イ)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、(ロ)第2級または第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、またはそれらのアクリルアミドの共重合体、(ハ)ポリビニルアミンおよびポリビニルアミジン類、(ニ)ジシアンジアミド−ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、(ホ)ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、(ヘ)エピクロルヒドリン−ジメチルアミン共重合体、(ト)ジアリルジメチルアンモニウム−SO重縮合体、(チ)ジアリルアミン塩−SO重縮合体、(リ)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、(ヌ)アリルアミン塩の共重合体、(ル)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、(オ)アクリルアミド−ジアリルアミン共重合体、(ワ)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂、等が挙げられる。
これらの定着剤は、単独で、また2種以上併用して用いられる。
上記カチオン性化合物におけるカチオン性樹脂は、水溶性樹脂にあっては水溶液で、非水溶性樹脂にあってはエマルジョンとして使用される。
上記カチオン性化合物は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部の範囲で使用することができる。配合量が1質量部未満であると、印字画像の耐水性が得られにくくなる虞あり、50質量部を超えると、印字濃度が低下する虞があり、好ましくない。
(シリカ−カチオン性化合物凝集体)
上記カチオン性化合物は、気相法シリカとの混合液中で該シリカと凝集し、シリカ−カチオン性化合物凝集体を形成する。
このため、このカチオン性化合物は、上述のように単体で用いるよりあらかじめ気相法シリカとの凝集体を形成して用いることが好ましい。
ところで、シリカ−カチオン性化合物凝集体は、この混合液中では、比較的大きな粒子を形成しているので、この大きな凝集体粒子を、粉砕・分散して平均粒子径90〜500nmのシリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子として、インク受容層用塗工液に添加される。
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子を形成するために用いる単体の気相法シリカは、平均粒子径が5〜20nmの1次粒子であるが、この凝集体微粒子は、実質的に1次粒子が凝集してできた二次粒子からなっている。
また、このカチオン性化合物としては、上述した各種カチオン性樹脂を用いることができる。
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子の作製方法の概略を説明する。
カチオン性化合物の添加量としては、気相法シリカ100質量部に対して、1〜50質量部、好ましくは5〜20質量部の範囲で調整される。
気相法シリカ分散液にカチオン性化合物を添加し混合すると、増粘したシリカ−カチオン性化合物凝集体粒子の分散液が得られる。
このシリカ−カチオン性化合物凝集体粒子を粉砕・分散し、微粒子化する方法としては、機械的手段で強い力を与えて塊状原料を細分化するブレーキング・ダウン法が採られる。
機械的手段としては、超音波、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌ミル、ジェットミル、擂解機、サンドグラインダ、高速流衝突型ホモジナイザ等が挙げられる。
顔料およびインク定着剤としてのシリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子は、1種単独で、あるいは2種以上併用して用いられるが、これを用いることによって、インク受容層の透明性および表面強度、ならびにインクの吸収性、発色性、耐候性、耐水性等を向上させることができる。
〈添加剤〉
インク受容層には、必要に応じて一般塗工紙の製造に使用される分散剤、架橋剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、保存性改良剤、蛍光増白剤、界面活性剤、着色剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。
インク受容層形成用塗工液中の各種添加剤の含有量は0.05〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることがより好ましい。
さらに、インク受容層には、シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子を用いる以外に、耐水性の更なる向上のために単体の上記カチオン性化合物を補足的に配合することもできる。
カチオン性化合物は、上述のカチオン性樹脂が好ましく、顔料100質量部に対して1〜10質量部の範囲で使用することができる。
このカチオン性樹脂は、水溶性樹脂にあっては水溶液で、非水溶性樹脂にあってはエマルジョンとして使用される。
また、カチオン性樹脂は、インク受容層中で接着剤としての役割を果たす場合もある。
〔インク受容層の形成方法〕
上記インク受容層は、上記成分で構成されるインク受容層用塗工液を紙基材上に塗工することにより形成される。
上記成分で構成されるインク受容層用塗工液は、一般に固形分濃度を5〜50質量%程度に調整され、紙基材の両面のそれぞれに乾燥重量で3〜50m/g程度、光沢発現層と合わせた塗工層の厚さにして10μm〜70μmになるように塗工される。
塗工層の厚さが10μm未満であると、インク吸収性が劣り、印字の裏抜けが生じ、かつ光沢発現層を設けた際に光沢が十分に出ない虞があり、70μmを超えると、印字濃度が低下し、乾燥に時間がかかって操業性が劣り、塗工層の強度が低下して粉落ちや傷付きが生ずる虞があり、好ましくない。
また、インク受容層の表裏の層厚は、同じでも、異なっていても良い。
表裏の層厚が相互に異なる場合、例えば一面として薄い表面のインク受容層と、他面としてそれより厚い裏面のインク受容層を形成するとともに、その表裏の層厚の割合が1/1〜1/2であることが好ましい。
その層厚の割合が1/2より小さいと、すなわち裏面のその層厚が表面のそれの倍を超えていると、記録用シートの片面に印字した後にカールが生じる虞があり、好ましくない。
なお、一面と他面の表裏関係は反対でも良い。
インク受容層用塗工液は、ブレードコータ、エアーナイフコータ、ロールコータ、ブラシコータ、チャンプレックスコータ、バーコータ、リップコータ、ダイコータ、グラビアコータ、カーテンコータ、スプレー等の各種公知公用の塗工装置のいずれかを使用して塗工することができる。
さらに、このように形成したインク受容層に、必要に応じてスーパーキャレンダ、ブラシ掛け等の平滑化処理を施してもよい。
(架橋剤)
上記インク受容層のひび割れを防止するために、上記インク受容層中の接着剤を架橋することは好ましい。
この接着剤を架橋するための架橋剤は、インク受容層を塗工する前の基材表面に予め水系塗工液として塗工して用いることが好ましいが、インク受容層塗工液に添加して用いてもよい。
インク受容層を複数層設ける場合は、この架橋剤の塗工層を、その中の一層のいずれかの面に設けてもよいし、複数のインク受容層間にそれぞれ設けてもよいし、また、インク受容層の最表面に設けてもよい。要は、インク受容層中の接着剤が架橋すればどの様な方法を用いてもよい。
架橋剤としては、接着剤に対する架橋性を有する公知の架橋剤、および接着剤をゲル化状態に架橋する公知のゲル化剤を使用することができる。
架橋剤としては、例えば、PVAに対する架橋性を有する化合物としては、グリオキザールなどのアルデヒド系架橋剤、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ系架橋剤、ビスビニルスルホニルメチルエーテルなどのビニル系架橋剤が挙げられる。
また、PVAを架橋するとともにゲル化するゲル化剤としては、ホウ酸及びホウ砂などのホウ素含有化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、クロム化合物等が挙げられる。
本実施の形態においては、これらのなかでも、接着剤の増粘又はゲル化を早く生じさせる点から、ゲル化剤であるホウ素含有化合物が特に好ましく用いられる。
ここで、ホウ素含有化合物とは、ホウ素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことである。
具体例としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸、及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。
なかでも、塗工液を適度に増粘させる効果がある点から、オルトホウ酸と四ホウ酸二ナトリウムが好ましく用いられる。
ホウ素含有化合物の配合量は、ホウ素含有化合物の種類及びPVAの重合度に依存し、架橋剤の上記水系塗工液に乾燥塗工量として0.01〜3.0g/m含有されていることが好ましい。
このホウ素含有化合物の塗工量が0.01g/m未満であると、親水性接着剤との架橋性、および塗工液のゲル化が十分ではなく、塗工層にひび割れが発生してしまう虞があり、3.0g/mを超えると、接着剤との架橋密度の高さは飽和して、塗工層のひび割れ防止効果がそれ以上向上しないので、好ましくない。
また、インク受容層塗工液に添加する場合も同様の配合量である。
[光沢発現層]
本実施の形態の両面インクジェット記録用シートは、基材の両面に設けたインク受容層上に光沢発現層が設けられている。
上述したように、両面インクジェット記録用シートにおいては、光沢発現層はインク受容層との合計厚さにおいて適当な範囲がある上に、キャスト加工により優れた光沢を発現させるためには、光沢発現層とインク受容層との厚さの割合において適当な範囲が存在する。
すなわち、この光沢発現層の厚さはインク受容層の厚さに対して、1/10以下である。この範囲であれば、キャスト加工に時間がかることもなく操業効率にも優れる。
光沢発現層の厚さが1/10を超えると、表面をキャスト加工した後に裏面のキャスト加工を行う際、裏面キャスト加工乾燥時に、先に作製した表面へ多量の蒸気を抜けさせることが必要となり、表面の光沢発現層に荒れが生じて、光沢が低下する虞があり、好ましくない。
この光沢発現層は、顔料として特定のシリカ微粒子と、これを保持するバインダとしての接着剤とを主成分とすることが好ましい。
光沢発現層は、上記成分を含む塗工液を作製し、基材両面のインク受容層上にそれぞれに塗工して形成され、キャスト加工で光沢化されている。
〈顔料〉
上記顔料としては、シリカ、アルミナ、アルミナ水和物等の小粒径のものが用いられる。
この小粒径顔料は、一般に固形分濃度が5〜20%程度の水分散体(スラリーあるいはコロイド粒子)として用いられる。
上記小粒径顔料は、その平均粒子径が3〜500nmのものが用いられ、3nm未満であるとインク吸収性が低下する虞があり、500nmを超えると光沢性および印字濃度が低下する虞があり、好ましくない。
この中で、特にシリカ微粒子が好ましく用いられる。
このシリカ微粒子は、光沢発現層の塗工液中では、コロイド状粒子となって分散している。
コロイド状粒子の形態は、単体粒子(一次粒子)分散体であっても、凝集粒子(二次粒子)分散体であっても良いが、高印字濃度、高光沢を得るためには、主に単体粒子分散体、もしくは凝集粒子分散体の中でも粒子径の小さいものが好ましい。
このシリカ微粒子としては、例えば、主として一次粒子からなるコロイダルシリカや、二次粒子からなる気相法シリカ、メソポーラスシリカ、活性ケイ酸を縮合させて製造された湿式法シリカ等の微細シリカが挙げられる。
これらシリカ中でも気相法シリカ、およびコロイダルシリカが優れた光沢があるので好ましく用いられ、とりわけコロイダルシリカが一般的に用いられる。
上記平均粒子径は、使用するシリカ微粒子の種類によって、より好ましい所定範囲がある。
上記シリカとしてコロイダルシリカを用いる場合、平均粒子径が3〜200nmであることが好ましく、上記塗工液中では主として単体粒子分散体となっている。
光沢発現層が、高印字濃度、高光沢を得るためには、粒子径の小さい所定範囲のものが用いられ、特に5〜90nmであることが好ましい。
この平均粒子径が200nmを超えると高印字濃度、高光沢を得にくくなる。
ただし、コロイダルシリカでも平均粒子径が3〜500nmであれば使用可能である。
上記顔料として、二次粒子のシリカ微粒子を用いた場合は、その調整方法は、特に限定するものではないが、例えば、一般に市販されている平均粒子径が数ミクロン程度の細粒子のシリカを、機械的手段により強い力を加えて粉砕して10〜400nmの平均粒子径のシリカ微粒子とすることが好ましい。この平均粒子径は10〜300nmであることがより好ましく、15〜150nmであることがさらに好ましく、20〜200nmであることが最も好ましい。
この機械的手段としては、超音波ホモジナイザ、圧力式ホモジナイザ、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌みる、ジェットミル、サンドグラインダ、ナノマイザらが挙げられる。
〈接着剤〉
光沢発現層に使用する接着剤としては、従来からインクジェット記録シートで使用されている公知の接着剤が、すなわち上記インク受容層に用いた上述の接着剤と同様のものが使用される。
これらから選ばれて使用される接着剤は、単独であっても、または2種類以上であってもよい。
なお、光沢発現層用塗工液にインク定着剤を配合する場合は、接着剤はカチオン変成のものが特に好ましい。
光沢発現層に使用される接着剤の中でも、カゼインの使用は、光沢層を形成する際のキャストドラムからの離型性が優れるので好ましい。
また、アクリル系共重合体エマルジョン、スチレン−アクリル系共重合体エマルジョンは、記録画像の鮮明性と光沢感がすぐれるので好ましい。
光沢発現層の接着剤として、エマルジョンを用いる場合、好ましい質量平均分子量は、1000〜1000万であり、より好ましくは5000〜500万である。分子量が1000未満であると、光沢層の強度が不十分となる虞があり、分子量が1000万を超えると、エマルジョンの安定性が不十分となる虞があり、好ましくない。
接着剤の配合量は顔料100質量部に対し1〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部の範囲で調節される。
接着剤の配合量が、1質量部未満であると、塗工層の強度が弱くなり表面が傷つきやすくなるとともに、粉落ちが発生する虞があり、200質量部を超えると、インク吸収性が低下し、所望のインクジェット記録適性が得られなくなる虞があり、好ましくない。
〈添加剤〉
また、この光沢発現層には、必要に応じてインク定着剤、分散剤、架橋剤、増粘剤(流動変成剤)、消泡剤、耐水化剤(印刷適性向上剤)、帯電防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、保存性改良剤、蛍光増白剤、着色剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。
上記インク定着剤としては、上記インク受容層に用いた上述のインク定着剤と同様なものが使用される。
上記増粘剤(流動変成剤)としては、(イ)スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート─ブタジエン共重合体等の合成樹脂共重合体、(ロ)カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、(ハ)澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、(ニ)PVA、(ホ)カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体類、(へ)ポリカルボン酸、ポリアクリル酸、アクリル樹脂エマルジョン、ポリアマイド、ポリエステル等の重合体、(ト)非イオン界面活性剤、等が適宜使用される。
上記耐水化剤(印刷適性向上剤)としては、(イ)塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、リン酸カルシルム、ポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、モノクロル酢酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、クエン酸カリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、アジピン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム等の無機酸や有機酸のアンモニウム塩や金属塩類、(ロ)メチルアミン、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、メタノールアミン、エタノールアミン等のアミン類、(ハ)リン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレエーテルリン酸エステル塩、アルキルフェノールエーテルリン酸エステル塩などのリン酸エステル類、(ニ)アルキルエーテル、ポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンのアンモニウム塩、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ホ)アジピン酸ジグリシジルエステル等の多官能性エポキシ化合物、(へ)尿素─ホルムアルデヒド系化合物、(ト)ポリアミド─エピクロロヒドリン系化合物、(チ)グリオキザール、等が適宜使用される。
上記各種添加剤は、光沢発現層用塗工液中に固形分濃度として0.05〜10質量%、好ましくは、0.1〜5質量%の範囲で添加される。
さらに、光沢発現層用塗工液には、その他の添加剤としてアルミナ、コロイダルシリカ、微細シリカ、クレー、炭酸カルシウム等の顔料を添加することもできる。
なお、これらの添加剤は、後述するリウェット処理を行う場合は、顔料を除けば、リウェット処理に用いる湿潤液に添加しても良い。
〈キャスト加工〉
上記光沢発現層には、上記成分を含む塗工液を塗工して乾燥した後、キャスト加工を施して、光沢を発現させている。
一般にキャスト加工とは、塗工層を、鏡面仕上げした金属、プラスチック、ガラス等のキャストドラムや、鏡面仕上げした金属板、プラスチックシートやフィルム、ガラス板等上で乾燥し、鏡面状の平滑面を塗工層上に写し取ることにより、平滑で光沢のある塗工層表面を得るものである。
この中で加熱した鏡面ドラムを利用するキャスト加工により光沢面を発現させる方法は、
(イ)最表塗工層用塗工液を被塗工面上に塗工して、該塗工層が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(ウェットキャスト法)、
(ロ)被塗工面上に塗工した最表塗工層用塗工液を一旦乾燥して塗工層とした後、
その塗工層を再湿潤させて加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法(リウェットキャスト法)、
(ハ)最表塗工層をゲル化したゲル状最表塗工層を加熱された鏡面ドラムに圧接し、
乾燥して仕上げる方法(ゲル化キャスト法)、
(二)最表塗工層塗工液を、被塗工面上にではなく加熱された鏡面ドラムに直接塗
工した後、被塗工面上に圧接、乾燥することにより転写して仕上げる方法(プレキャスト法)、
がある。
これらのキャスト加工においては、加熱された鏡面ドラムの温度は、例えば50〜150℃、好ましくは70〜120℃である。
さらに、キャスト加工として、フィルム転写方式を採用することもできる。
フィルム転写方式としては、
(イ)上記最表塗工層用塗工液を被塗工面上に塗工して、該塗工層が湿潤状態にある間に平滑なフィルムやシートを重ね、乾燥した後平滑なフィルムやシートを剥離して仕上げる方法、
(ロ)平滑なフィルムやシート上に最表塗工層用塗工液を塗工して、ある程度湿潤状態にある被塗工面に圧接し、乾燥した後、平滑なフィルムやシートを剥離して仕上げる方法、
がある。
フィルム転写法に比べ、加熱した鏡面ドラムを用いるキャスト法のほうが、表面平滑性に優れる傾向があり、また生産性やコストの点でも有利である場合が多い。
キャスト加工は、上記いずれの方法を用いてもよいが、本実施の形態では、上記インク受容層用塗工液を紙基材上に塗工し、乾燥し、このインク受容層上に光沢発現層用塗工液を塗工した後、直ちに加熱された鏡面金属ドラムに圧接・乾燥して仕上げるウェットキャスト法を用いることが好ましい。
本実施の形態において、基材表面にインク受容層、光沢発現層を順次塗工し、キャスト加工を行った後に、基材裏面にインク受容層、光沢発現層を塗工し、キャスト加工するにあたり、表面のキャスト加工を行った時点でのシートの透気度は1000秒以下であることが好ましく、より好ましくは500秒以下である。
透気度が1000秒を超える場合には、塗工面とキャストドラム面との間に気泡が発生するなど、操業性に問題が生じる虞があり、また水分が抜け難くなることにより、キャストドラムからの離型性が悪化して光沢が低下する虞があり、好ましくない。
この透気度は、王研式透気度JIS−P−8117に準拠して測定される。
上記各キャスト加工において、光沢発現層用塗工液を塗工する場合には、各種公知の塗工方法を用いることができ、例えば、ブレード、ブラシコータ、チャンプレックスコータ、バーコータ、グラビアコータ等の塗工装置のいずれかを使用して塗工する塗工方法が挙げられる。
キャスト加工をする際、キャストドラム等から塗工層の剥離をスムーズに行うために、離型剤を用いることが好ましい。
離型剤は、光沢発現層用塗工液に添加する方法、キャストドラム等の表面に塗布する方法、リウェットキャスト法の湿潤液に添加する方法のいずれかの方法で適宜用いることができる。
離型剤としては、(イ)ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、(ロ)ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス類、(ハ)ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸カリウム、オレイン酸アンモミウム等の高級脂肪酸アルカリ塩類、(ニ)レシチン、シリコーンオイル、シリコーンワックス等のシリコーン化合物、(ホ)ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素化合物等が挙げられる。
なかでも、カチオン性の離型剤が特に好ましく用いられる。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、「部」及び「%」は特に断らない限り、それぞれ水を除いた固形分の「質量部」及び「質量%」を示す。
<インク受容層形成用塗工液Aの調整>
市販の気相法シリカ(商品名:レオロシールQS−30、平均粒子径9nmの一次粒子、比表面積300m/g、トクヤマ社製)を用いて、高速流衝突型ホモジナイザで破砕分散を繰り返し、分級後、平均粒子径200nmの10%二次粒子シリカ分散液を調製した。このシリカ分散液100部に対し、インク定着剤として5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂(商品名:SC−700M、分子量:3万、ハイモ社製)10部を添加し、高速流衝突型ホモジナイザで更に分散して、平均粒子径が0.15μmの二次粒子からなる10%のカチオン性樹脂−シリカ複合粒子分散液を調製した。このカチオン性樹脂−シリカ複合粒子分散液100部に、置換基を有さないPVA(商品名:PVA145、平均重合度4500、クラレ社製)15部を混合して、インク受容層形成用塗工液Aを調製した。
<インク受容層形成用塗工液Bの調整>
非晶質シリカ(商品名:ファインシールX−45、平均粒子径4.5μmの二次粒子、トクヤマ社製)100部、シリル変性PVA(商品名:R1130、クラレ社製)25部、インク定着剤としてジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体(商品名:ユニセンスCP−102、センカ社製)5部を混合し、インク受容層形成用塗工液Bを調製した。
<光沢発現層用塗工液の調整>
顔料として球状コロイダルシリカ(商品名:スノーテックス50、平均粒子径:20〜30nm、日産化学社製)80部、バインダとしてアクリルエマルジョン(商品名:アクアブリッド914、ダイセル社製)20部とカゼイン5部を混合し、離型剤としてステアリルリン酸カリウム(商品名:ウーポール1800、松本油脂社製)1部を混合し、固形分濃度10%の光沢発現層用塗工液を調製した。
[実施例1]
〈紙基材の作製〉
木材パルプ(LBKP、ろ水度(CSF)440ml)100部、填料として炭酸カルシウム3:タルク1の比率の混合体15部、市販サイズ剤としてアルケニル無水コハク酸(商品名:ファイブラン81K、日本エヌエスシー社製)0.05部、硫酸バンド0.45部、澱粉0.45部、紙力増強としてポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂0.4部、歩留向上剤少々を含む製紙材料を調製した。そして、その製紙材料から、長網抄紙機にて坪量188g/mの紙を得た後、150kg/cmの線圧でスーパーカレンダ処理を施して、透気性基材である紙基材を作製した。得られた紙基材の厚さは210μm、透気度(王研式)は30秒であった。
〈両面インクジェット記録用シートの作製〉
上記紙基材上に乾燥塗工量が1.5g/mになるように、3%のホウ砂水溶液を塗布し、乾燥せずに、上記インク受容層形成用塗工液Aを乾燥塗工量で20g/mになるように、ダイコータにより塗工した。そして、平衡水分が8%になるように、150℃の熱風乾燥を行ってインク受容層を形成した。
そして、インク受容層の表面に上記光沢発現層用塗工液を乾燥塗工量1.5g/mになるように塗工し、その面を、表面温度100℃のキャストドラムに、線圧200kg/cmで圧接し、キャスト加工を施してインク受容層と光沢発現層とからなる塗工層の厚さが30μmで、光沢発現層の厚さがインク受容層の厚さに対して1/30の塗工層を形成した。その後、裏面についても表面と同様に塗工層の形成処理を行い、両面インクジェット記録用シートを得た。
[実施例2]
実施例1で用いた上記インク受容層形成用塗工液Aを、塗工液Bとしたこと以外は、実施例1と同様にして、塗工液Bを用いた同様の両面インクジェット記録用シートを得た。
[実施例3]
インク受容層形成用塗工液Aを、表面のインク受容層の乾燥塗工量が20g/m、裏面のインク受容層の乾燥塗工量が25g/mになるように塗工し、表面にインク受容層と光沢発現層とからなる塗工層の厚さが30μmで、光沢発現層の厚さがインク受容層の厚さに対して1/30の塗工層を形成し、裏面にインク受容層と光沢発現層とからなる塗工層の厚さ40μmで、光沢発現層の厚さがインク受容層の厚さに対して1/40の塗工層を形成した以外は、実施例1と同様にして両面インクジェット記録用シートを得た。
[実施例4]
インク受容層形成用塗工液Aを、表面および裏面のインク受容層の乾燥塗工量が8g/mになるように塗工し、表面および裏面にインク受容層と光沢発現層とからなる塗工層の厚さが15μmで、光沢発現層の厚さがインク受容層の厚さに対して1/10の塗工層を形成した以外は、実施例1と同様にして両面インクジェット記録用シートを得た。
[実施例5]
インク受容層形成用塗工液Aを、表面および裏面のインク受容層の乾燥塗工量が50g/mになるように塗工し、表面および裏面にインク受容層と光沢発現層とからなる塗工層の厚さが70μmで、光沢発現層の厚さがインク受容層の厚さに対して1/70の塗工層を形成した以外は、実施例1と同様にして両面インクジェット記録用シートを得た。
[実施例6]
インク受容層形成用塗工液Aを、表面および裏面のインク受容層の乾燥塗工量が20g/mになるように塗工し、インク受容層の表面および裏面に上記光沢発現層用塗工液を乾燥塗工量0.8g/mになるように塗工し、表面および裏面にインク受容層と光沢発現層とからなる塗工層の厚さが30μmで、光沢発現層の厚さがインク受容層の厚さに対して1/60の塗工層を形成した以外は、実施例1と同様にして両面インクジェット記録用シートを得た。
[比較例1]
上記インク受容層の塗工量を両面とも乾燥塗工量で6g/mになるように塗工し、両面にインク受容層と光沢発現層とからなる塗工層の厚さが9μmで、光沢発現層の厚さがインク受容層の厚さに対して1/30の塗工層を形成した以外は、実施例1と同様にして両面インクジェット記録用シートを得た。
[比較例2]
上記インク受容層の塗工量を両面とも乾燥塗工量で50g/mになるように塗工し、両面にインク受容層と光沢発現層とからなる塗工層の厚さが80μmで、光沢発現層の厚さがインク受容層の厚さに対して1/80の塗工層を形成した以外は、実施例1と同様にして両面インクジェット記録用シートを得た。
<評価方法及び評価基準>
上記実施例、比較例で得られた両面インクジェット記録用シートについて下記方法によりシート物性および印字適性を評価した。その結果を表1に示す。
〔シート物性〕
〈光沢性〉
光沢性の評価は、白紙の記録用シート表裏面を、それぞれ斜め横方向よりその光沢感を目視にて観察し、下記基準により評価した。
◎:非常に高い光沢感がある。
○:高い光沢感がある。
△:光沢感がやや劣る。
×:光沢感が劣る。
〔インクジェット記録における印字適性〕
印字適性の評価は、市販のインクジェットプリンタを用いて、印字濃度、インク吸収性、インクの裏抜け、シートのカールについて評価を行った。
なお、上記の印字濃度、インクの裏抜け、およびインク吸収性については、同一の2枚の両面インクジェット記録用シートを用意し、一方は表面から、一方は裏面から以下に記載の試験を行って、表面および裏面の評価をした。
〈評価用プリンタ〉
プリンタ:市販の染料インクタイプのインクジェットプリンタ(商品名:iP4200、キャノン社製)。
〈印字濃度〉
上記プリンタを用いてブラックベタ印字を行い、その印字濃度をX−ライト反射濃度計(商品名:938スペクトロデンシトメータ)で測定した。
〈インク吸収性〉
上記プリンタを用いて、ブラック、シアン、マゼンダ、イエロー、レッド、グリーン、ブルーの各色ベタの、互いに境界を接するようにマス目状に配置した印字を行い、各色間の境界部でのインクのにじみを目視にて観察し、下記基準により評価した。
◎:全く印字のにじみがなく、非常に優れたレベル。
○:印字のにじみがなく、優れたレベル。
△:印字のにじみがややあり、実用上やや問題となるレベル。
×:印字のにじみが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
〈インクの裏抜け〉
ブラックベタ印字部分を印字面の裏側から観察し、インクの裏面側への裏抜け具合を目視にて観察し、下記基準により評価した。
◎:全くインクの裏抜けが見られず、非常に優れたレベル。
○:インクの裏抜けが見られず、優れたレベル。
△:多少インクが裏抜けし、実用上やや問題となるレベル。
×:裏抜けが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
〈シートのカール〉
はがきサイズの両面インクジェット記録用シートの両面に、ふちなし印刷でブラックベタ印字を行い、印字後の両面インクジェット記録用シートにおけるその四隅からの平面の浮き上がり量を目視にて観察し、下記基準により評価した。
○:カールが全く認められず、優れたレベル。
△:ややカールがあり、実用上やや問題となるレベル。
×:カールが著しく、実用上重大な問題となるレベル。
Figure 2008062599

Claims (8)

  1. 透気性基材の両面に、顔料と、これを保持するバインダとを含有するインク受容層を積層し、これらの受容層上に光沢発現層を積層してなる複数の塗工層を有する両面インクジェット記録用シートにおいて、
    上記インク受容層および光沢発現層からなる塗工層の厚さが、10〜70μmであり、かつ、光沢発現層は、その厚さがインク受容層のそれに対して1/10以下であり、
    上記光沢発現層が、キャスト加工により光沢化されている、
    ことを特徴とする両面インクジェット記録用シート。
  2. 上記両面のそれぞれのインク受容層は、その層厚が相互に異なり、薄い一面のインク受容層と、それより厚い他面のインク受容層となっているとともに、その一面と他面との層厚の割合が1/1〜1/2である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の両面インクジェット記録用シート。
  3. 上記インク受容層は、上記バインダとしてポリビニルアルコールを含有するとともに、該ポリビニルアルコールと架橋する架橋剤を含有し、
    上記ポリビニルアルコールと上記架橋剤とが反応してポリビニルアルコールを架橋している、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の両面インクジェット記録用シート。
  4. 上記架橋剤が、ホウ素化合物であり、
    上記ポリビニルアルコールと反応して該ポリビニルアルコールをゲル化状態に架橋させている、
    ことを特徴とする請求項3に記載の両面インクジェット記録用シート。
  5. 上記ホウ素化合物が、上記基材上にホウ素化合物を含有する水系塗工液を塗布し、ついで、上記インク受容層を形成するための受容層用塗工液を塗布することによりインク受容層に含有されているか、あるいは、上記受容層用塗工液に添加されていることによりインク受容層に含有されているかのいずれかである、
    ことを特徴とする請求項4に記載の両面インクジェット記録用シート。
  6. 上記ホウ素化合物が、上記基材上に上記水系塗工液を塗布し、ついで、上記受容層用塗工液を塗布することによりインク受容層に含有されている、
    ことを特徴とする請求項5に記載の両面インクジェット記録用シート。
  7. 上記インク受容層のポリビニルアルコールが、平均重合度3500以上である、
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の両面インクジェット記録用シート。
  8. インク受容層の顔料が、平均粒子径500nm以下の気相法シリカである、
    ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の両面インクジェット記録用シート。
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