JP4292777B2 - 薄膜形成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は薄膜形成装置に関するものであって、特に、真空チャンバ内で基板表面にキャリアガスとともに原料ガスを供給することにより有機薄膜を形成する有機気相堆積法に適用される薄膜形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
有機ELディスプレイ素子、有機半導体レーザーなどの低分子系有機EL発光素子用の有機薄膜は、一般的に真空蒸着法で成膜されている。
図7に示すように、真空蒸着法に用いられる真空蒸着装置は、真空チャンバ51と、真空チャンバ51内の底部に設けられた蒸着源52と、蒸着源52の上方に対向配置された基板ホルダー53とを備えている。
【0003】
このような装置を用いて、基板S表面に有機薄膜を形成するには、基板ホルダー53に表面を下方に向けた状態で基板Sを装着し、基板S表面をマスク(図示せず)で覆って、蒸着源52から有機原料を10-3〜10-4Paの高真空中で真空チャンバ51内に加熱蒸発させ、矢印Dで示すように、真空チャンバ51内において原料ガスを十分に拡散した状態で基板S表面に有機原料を蒸着させる。
【0004】
一方、近年、有機薄膜を形成する装置として、有機気相堆積法(Organic Vapor Phase Deposition(OVPD))による有機気相堆積装置が提案されている(特表2001−523768号公報)。
有機気相堆積装置は、真空チャンバと、真空チャンバ内に設けられた基板ホルダーと、真空チャンバ内にガスを供給するように配置されたガス供給手段とを備えており、減圧雰囲気下の真空チャンバ内でキャリアガスとともに原料ガスを基板ホルダーに装着された基板表面に供給することで有機薄膜を形成する。
【0005】
上述したような真空蒸着装置および有機気相堆積装置を用いて有機薄膜を形成する場合には、基板を静止させた状態で有機薄膜を形成すると、原料ガスを基板表面に均一に堆積させることができず、形成される有機薄膜の膜厚が不均一となることから、基板ホルダーに回転機構またはスライド機構を設けることで、膜厚分布を調整している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、真空蒸着装置では真空チャンバ内で蒸着源から気化させた原料ガスが蒸着源の上方に配置された基板に向かって拡散された状態で供給されるため、基板ホルダーに回転機構やスライド機構が設けられていたとしても、基板の端部よりも中央部の方に原料ガスが供給されやすい傾向があった。
また、有機気相堆積装置では、真空チャンバ内に気相状態で原料ガスが供給されるため、ガス供給口から供給された原料ガスは排気口に向かって最短経路で流動し易い。このため、基板表面に原料ガスを均一に供給するには、原料ガスの流動方向を考慮に入れてガス供給口に対して基板装着面を可動させる必要がある。よって、装置構成が複雑になり、コスト的な面でも問題があった。
【0007】
したがって、基板表面に原料ガスが均一に供給され、基板表面に均一な膜厚の有機薄膜の形成を行うことができる薄膜形成装置が要望されていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記のような課題を解決するために、本発明の薄膜形成装置は、真空チャンバと、真空チャンバ内に設けられた基板ホルダーと、基板ホルダーの基板装着面に向けてガスを供給するガス供給端とを備えた薄膜形成装置であって、ガス供給端は、矩形状のガス供給口を有し、当該ガス供給口の長辺方向の開口幅に向けて徐々に拡大されるとともに、短辺方向の開口幅に向けて徐々に縮小される形状を有していることを特徴としている。
【0009】
このような薄膜形成装置によれば、ガス供給端は基板装着面にガスが長尺状に供給されるように形成されていることから、基板装着面に装着される基板表面に対してガスが長尺状に供給される。
【0010】
また、基板ホルダーが基板装着面を長尺状のガスの供給範囲における短辺方向に可動させるスライド機構を備えていれば、ガス供給時に基板装着面をその短辺方向にスライドさせることで、長尺状に供給されたガスを基板表面においてその短辺方向に走査しながら供給することができる。このため、成膜成分からなるガスを基板の表面領域に均一に堆積させることができ、均一な膜厚の薄膜の形成を行うことができる。
【0011】
また、ガス供給端が長尺状のガスの供給範囲における短辺方向に複数並列されている場合には、各ガス供給口から基板表面に長尺状に供給されるガスを、その短辺方向に渡って供給することができる。このため、基板を静止させた状態であっても、成膜成分からなるガスを基板の表面領域に均一に堆積させることができ、均一な膜厚の薄膜の形成を行うことができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の薄膜形成装置における実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の薄膜形成装置である有機気相堆積装置の一実施形態を説明するための概要構成図である。
この図に示す有機気相堆積装置は、減圧雰囲気下に維持した真空チャンバ11内で、基板Sを覆うようにマスク(図示せず)を配置し、このマスクを介して基板S上に所定パターンの有機薄膜の形成を行うものである。
有機気相堆積装置は真空チャンバ11と真空チャンバ11内に設けられた基板ホルダー12と、基板ホルダー12の基板装着面12aに向けてガスを供給するガス供給端22とを備えている。
【0013】
真空チャンバ11は、余分な原料ガスを排気するための排気口14から図示しない真空ポンプによって、その内部環境(例えば、減圧状態)が制御されるとともに、圧力計15によって真空チャンバ11内部の圧力が管理されている。
また、真空チャンバ11には例えばヒーター(図示せず)が設けられており、真空チャンバ11内で原料ガスが気相状態を維持できるように構成されている。
【0014】
また、真空チャンバ11内に設けられた基板ホルダー12は、基板装着面12aが水平状態に対して略垂直になるような状態で配置されており、基板装着面12aはマスクで覆われた状態の基板Sが装着されるように構成されている。
そして、基板ホルダー12には、基板装着面12aをその面内においてスライドさせるスライド機構(図示せず)が設けられている。ここでは、スライド機構によって基板装着面12aが図面上奥行方向と手前方向とで水平方向に往復運動する構成とする。
また、基板ホルダー12には装着された基板Sを冷却するための冷却機構16が設けられている。
【0015】
次に、本実施形態におけるガス供給手段13について説明する。
ガス供給手段13は原料ガス供給源41と、原料ガス供給源41にその一端が接続されたガス供給管23と、このガス供給管23の他端に接続されたガス供給端22とから構成されている。
【0016】
原料ガス供給源41には、例えば基板S表面に有機薄膜を形成するための有機原料が貯留されており、原料ガス供給源41の外側には、有機原料を気化するためのヒーター17が設けられている。また、原料ガス供給源41には圧力計15が設けられており、内部の圧力が管理されている。
【0017】
この原料ガス供給源41には、キャリアガス供給源42に接続された配管18が挿入されており、キャリアガス供給源42にはキャリアガスとなる不活性ガスが貯留されている。
ここでは例えば、キャリアガスにN2、He、Ar等の不活性ガスが用いられることとするが、本発明はこれに限定されず、原料ガスと反応しないものであればよく、例えばH2等であってもよい。
【0018】
そして、この配管18からキャリアガスが原料ガス供給源41に導入され、原料ガスと混合される。
また、配管18の周囲はヒーター17で覆われており、加熱されたキャリアガスが原料ガス供給源41に供給されるように構成されている。
さらに、配管18にはガス流量制御手段19が設けられており、キャリアガスの流量を調整することができる。
【0019】
また、原料ガス供給源41にはガス供給管23の一端が接続されている。ガス供給管23の周囲はヒーター17で覆われており、原料ガス供給源41からキャリアガスと混合された原料ガスが気相状態を維持したまま、真空チャンバ11内に供給されるように構成されている。
ガス供給管23にもガス流量制御手段19が設けられており、キャリアガスと混合された原料ガスの流量を調整することができる。
【0020】
そして、ガス供給管23は同一の供給断面形状(例えば円形または略正方形)を保った状態で、原料ガス供給源41から真空チャンバ11に挿入されており、真空チャンバ11内で供給断面形状を変形させたガス供給端22に接続されている。
なお、ここではガス供給端22が真空チャンバ11内に配設された構成としたが、その吹き出し口となるガス供給口21が真空チャンバ11内と連通していれば、ガス供給端22は真空チャンバ11外に配設されていてもよい。
この場合にはガス供給端22の周囲もヒーター17で覆われた状態となる。
【0021】
このガス供給端22は基板ホルダー12の基板装着面12aに向けてキャリアガスとともに原料ガスを供給するように構成されており、ここでは、基板装着面12aにガスが長尺状に供給されるように形成されていることとする。
【0022】
特にここでは、図1(b)に示すように、ガス供給端22のガス供給口21は、開口形状を矩形状とし、長辺方向の開口幅L1は短辺方向の開口幅W1よりも広く形成されるとともに、基板装着面12aに所定状態で装着される基板Sの幅L2よりも広くなるように形成されていることとする。
そして、このような形状のガス供給口21に向けて、ガス供給端22はその開口形状が変形されている。
【0023】
また、このガス供給端22は、例えばガス供給口21の開口面積C1が、ガス供給管23の供給断面積C2と略同一になるように形成されていることが好ましい。ここで、供給断面積C2とはガス供給管23の内周壁側の断面積を示す。
このため、例えば図示したように、ガス供給端22はそのガス供給口21における長辺方向の開口幅L1に向けて徐々に拡大されるとともに、短辺方向の開口幅W1に向けて徐々に縮小される形状を有している。
このような構成により、原料ガスはキャリアガスとともに、ガス供給管23から、ガス供給端22におけるガス供給口21まで均等な圧力で流動される。
【0024】
このように形成されたガス供給端22は基板装着面12aに向けて同一方向にガスが供給されるように配置されており、例えば、基板装着面12aに向けて略垂直方向に原料ガスが供給されるように配置されていることとする。
なお、ここでは基板装着面12aに向けて略垂直方向に原料ガスが供給されることとしたが、基板装着面12aに斜め方向から原料ガスが供給されるようにガス供給端22が配置されていてもよい。
【0025】
さらに、ガス供給口21の長辺方向が基板装着面12aのスライド方向に対して略垂直となるように配置されていることとする。
ここでは、前述したように基板装着面12aが図面上奥行き方向にスライドする構成としたため、ガス供給口21の長辺方向(広口方向)は図面上の上下方向となる。また、ガス供給口21の短辺方向は、スライド方向と同一方向である図面上奥行き方向となる。
【0026】
また、上述したようにガス供給端22はガス供給口21の長辺方向の開口幅L1に向けて徐々に広くなるように形成されていることから、ガス供給口21の短辺方向側から見た側面形状はガス供給口21の長辺を底辺とした三角形状に形成される。
【0027】
このような有機気相堆積装置を用いて基板S表面に有機薄膜を形成する場合には、まず、図1(a)に示すように、固定された基板ホルダー12にマスク(図示せず)で覆われた基板Sを装着する。
この際、基板Sの幅L2方向をガス供給口21の長辺方向に対応させて基板装着面12aに装着する。
そして、基板ホルダー12のスライド機構により、基板装着面12aをガス供給口21の短辺方向、すなわち図面上奥行き方向へスライドさせる。
【0028】
一方、キャリアガス供給源42に接続された配管18から、原料ガス供給源41にキャリアガスとして例えば不活性ガスを導入し、ヒーター17によって気化された原料ガスと混合する。
そして、図1(b)に示すように、キャリアガスと混合された原料ガスは、ガス供給管23を通って、ガス供給端22から真空チャンバ11内に供給され、基板装着面12aに装着された基板S表面に向けて矢印Aに示す方向に供給される。
【0029】
一方、基板装着面12aは図面上奥行き方向にスライドしていることから、基板Sの図面上上下方向に長尺状に供給された原料ガスが基板装着面12aに装着された基板S表面全域に堆積されて、有機薄膜が形成される。
【0030】
なお、本実施形態では基板Sをマスク(図示せず)で覆った例について説明したが、本発明はマスクを装着せずに、基板S表面全域に有機薄膜を形成する場合にも適用可能である。
【0031】
このような有機気相堆積装置によれば、ガス供給端22は基板装着面12aにガスが長尺状に供給されるように形成されており、開口形状を矩形状とするガス供給口21の長辺方向の開口幅L1が、基板装着面12aに所定状態で装着される基板Sの幅L2よりも広くなるように形成されていることから、ガス供給口21の形状に応じて、基板Sの幅に渡る長尺状に原料ガスが供給される。
【0032】
そして、基板ホルダー12は基板装着面12aをガス供給口21の短辺方向にスライドするスライド機構を有していることから、基板Sの幅L2に渡る長尺状に供給された原料ガスを基板S表面全域に供給できるため、原料ガスを基板S表面に均一に堆積させることができ、均一な膜厚の有機薄膜を形成することができる。
したがって、より均一な膜厚の有機薄膜を形成することができ、大画面でも輝度むらのない有機発光素子層を形成することが可能である。
【0033】
また、本実施形態の有機気相堆積装置によれば、ガス供給端22は基板装着面12aに向けて略垂直方向に原料ガスが供給されるように配置されていることから、マスクを用いて有機薄膜を形成する場合には、シャドー効果を防止できるため、成膜パターンの位置ずれを防止することができる。
【0034】
さらに、ガス供給口21の開口面積C1をガス供給管23の供給断面積C2と略同一になるように形成することで、原料ガスがキャリアガスとともにガス供給管23からガス供給端22内を均等な圧力を保持して流動するため、ガス供給口21の各部から基板装着面12aに向けてより均一に原料ガスを供給することが可能である。
【0035】
なお、本実施形態では、ガス供給口21の開口面積C1とガス供給管23の供給断面積C2とが略同一となるように形成されていることとしたが、ガス供給口21の開口面積の方がやや小さくなるように形成されていてもよく、この場合には、ガス供給口21で圧力がかかるため、原料ガスをガス供給端22の内部でより拡散させた状態でガス供給口21の各部から均一に供給することができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、基板ホルダー12にスライド機構が設けられることとしたが、基板装着面12aの中心を回転軸とした回転機構が設けられていてもよい。
ただし、上述したように、本実施形態の有機気相堆積装置によれば、原料ガスが基板Sの幅に渡る長尺状に供給されることから、スライド機構の方がより均一に基板S表面全域にガスを供給できるので好ましい。
【0037】
また、本実施形態では、ガス供給口21の長辺方向を図面上上下方向、短辺方向を図面上奥行き方向としてガス供給口21が配置されることとしたが、長辺方向が図面上奥行き方向、短辺方向が図面上上下方向となるようにガス供給口21が配置されていてもよい。この場合にはスライド機構により基板装着面12aをその短辺方向、すなわちその面内において図面上上下方向に可動させるように構成される。
【0038】
また、ガス供給口21の長辺方向の開口幅L1が所定状態で基板装着面12aに装着される基板Sの幅L2よりも広く形成されることとしたが、開口幅L1が幅L2と略同一の長さであってもよく、この場合には、原料ガスが基板S表面のみに供給されるため基板S表面に均一にかつ効率よく原料ガスを堆積させることができる。
【0039】
また、本実施形態では、ガス供給口21の開口形状は矩形状であることとしたが、本発明はこれに限定されず、基板装着面12aにガスが長尺状に供給されるように形成されていれば、例えば楕円形であってもよい。ただし、基板S表面に供給される原料ガスの均一性を確実にするには、矩形状である方が基板の端部にも均一に原料ガスを供給できるのでより好ましい。
【0040】
さらに、本実施形態では、ガス供給端22がガス供給口21の長辺方向の開口幅L1に向けて徐々に広くなるように形成された側面三角形状であることとしたが、本発明はこれに限定されず、基板装着面12aにガスが長尺状に供給されるようにガス供給端22が形成されていれば、図2(a)〜(c)に示すようなガス供給端22の形状であってもよい。
【0041】
具体的には、図2(a)に示すように、ガス供給端22はガス供給口21の短辺方向から見た側面形状が、ガス供給口21に向かってその長辺方向に一段階で拡大された矩形状であってもよく、図2(b)に示すようにガス供給口21に向かってその長辺方向に段階的に広く形成された段差形状であってもよい。
また、図2(c)に示すようにガス供給口21に向かってその長辺方向に広く形成された側面半円状であってもよい。
【0042】
ガス供給端22の側面形状が図2(a)〜(c)で示すような、矩形状、段差形状、半円状である場合には、ガス供給端22におけるガス供給口21の短辺側を構成する側壁が略平行に設けられるため、ガス供給口21から供給された原料ガスが長辺方向に拡散されることが防止され、原料ガスの進行方向をより同一方向にそろえることができる。したがって、基板S表面の中央と端部とで原料ガスを均等に供給することができる。
特にガス供給端22の側面形状が半円状に形成されていれば、矩形状または段差形状に形成された場合と比較して、ガスの滞留し易い角部分がないので、より好ましい。
【0043】
また、本実施形態のように側面三角形状である場合には、例えば、ガス供給口21の開口形状を維持して延着させた筒状のヘッドを設けることで、ガス供給端22におけるガス供給口21の短辺側の側壁が略平行に設けられ、ガスの進行方向を基板Sに向かって広がらないようにより制御することができるので好ましい。これにより、上述したガス供給端22が半円状の場合と同様の効果を奏することができる。
【0044】
(第2実施形態)
本実施形態では第1実施形態で説明したガス供給端22におけるガスの供給方向に対して略垂直方向からガス供給端22にガスが供給されるように、ガス供給端22にガス供給管23が接続されている例について説明する。
【0045】
図3(a)に示すように、ガス供給管23はこのガス供給端22の内部に連通するように、ガス供給端22におけるガス供給口21の長辺側を構成する側壁35に対して略垂直に接続されるとともに、この側壁35におけるガス供給端22の基端部側に接続されていることとする。
ここで、側壁35はガス供給口21の長辺を底辺とした略三角形状に形成されているが、基端部側とはその三角形状の頂点付近を示すこととする。
このような構成にすることで、第1実施形態において、ガス供給管23に接続されたガス供給端22の基端部側は閉塞される。
【0046】
なお、ここでは、ガス供給管23がガス供給端22におけるガス供給口21の長辺側の側壁35に対して略垂直に接続されることとしたが、本発明はこれに限定されず、ガス供給端22からのガスの供給方向に対して略垂直方向からガス供給端22にガスが供給されるようにガス供給管23が接続されていればよく、ガス供給口21の短辺側を構成する側壁36に接続されていてもよい。
また、ここでは、ガス供給管23が側壁35におけるガス供給端22の基端部側に接続されることとしたが、本発明はこれに限定されず、側壁35の中央部よりでもよい。
【0047】
ただし、ガス供給端22の内部で原料ガスを効率よく拡散させるためには、ガス供給管23はガス供給口21の長辺側の側壁35に対して略垂直に配置される方が好ましく、側壁35におけるガス供給端22の基端部側に配置される方が好ましい。
【0048】
このような構成により、図3(b)のガス供給端22およびガス供給管23の上面要部拡大図に矢印Bで示すように、原料ガスはガス供給管23を通って、ガス供給端22の内部に導入され、側壁35に対向する内側壁に衝突した後、ガス供給端22の内部で拡散された状態で、ガス供給口21から基板装着面12a(前記図3(a)参照)に向けて略垂直方向(矢印A)に原料ガスが供給される。
【0049】
このような有機気相堆積装置によれば、第1実施形態と同様の効果に加え、ガス供給端22からの原料ガスの供給方向に対して略垂直方向からガス供給端22にガスが供給されるように、ガス供給端22にガス供給管23が接続されていることから、原料ガスがガス供給管23からガス供給端22の内側壁に衝突する。これにより、ガス供給端22の内部において原料ガスが十分に拡散された状態で、基板装着面12aに向けて長尺状に均一に原料ガスを供給することができる。したがって、より均一な膜厚の有機薄膜を形成することができ、大画面でも輝度むらのない有機発光素子層を形成することが可能である。
【0050】
さらに、本実施形態によれば、ガス供給管23はガス供給端22におけるガス供給口の長辺側を構成する側壁35に対して略垂直に接続されるとともに、側壁35におけるガス供給端22の基端部側に接続されていることから、ガス供給端22の内部で効率よく原料ガスを拡散させて、ガス供給口21から原料ガスを供給することができる。
【0051】
なお、ここではガス供給端22の側面形状が三角形状である場合の例について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば図2(a)〜(c)に示したような側面形状であっても適用可能である。
【0052】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態におけるガス供給端22が複数のガス流路31に分割されている例について説明する。
図4に示すように、本実施形態におけるガス供給端22は、この内部にガスの供給方向に向かって分割されるとともに、ガス供給口21に達する例えば6つのガス流路31が設けられていることとする。
また、これらのガス流路31はガス供給口21の長辺方向に配設されることとする。
ここで、6つのガス流路31が達するガス供給口21は例えばその開口面積が各々等しくなるように、均等に分割されて形成されていることとする。
【0053】
このような構成により、原料ガスはガス供給管23を通って6つのガス流路31に分配され、分割されたガス供給口21から基板装着面12aに向けて略垂直方向(矢印A)に原料ガスが供給される。
【0054】
このような有機気相堆積装置によれば、第1実施形態と同様の効果に加え、ガス供給端22がその内部にガスの供給方向に向かって分割されるとともに、ガス供給口21に達する複数のガス流路31をガス供給口21の長辺方向に配設しているため、ガス供給端22に達したガスがガス流路31によってその長辺方向に分配される。
このため、分割されたガス供給口21から原料ガスを乱流とせずに、ガス流路31に沿った方向性を保った均一な層流として基板装着面12aに長尺状に供給することができる。これにより、基板S表面に供給される原料ガスの分布をより均一に制御することができる。
したがって、より均一な膜厚の有機薄膜を形成することができ、大画面でも輝度むらのない有機発光素子層を形成することが可能である。
【0055】
なお、ここではガス供給端22の側面形状が三角形状である場合の例について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば図2(a)〜(c)に示したような側面形状であっても適用可能である。
【0056】
また、本実施形態によれば、ガス供給端22の内部に複数のガス流路31が設けられた例について説明したが、本発明はこれに限定されず、基板装着面12aにガスが長尺状に均一に供給されるように、ガス供給端22の内部で分割された形状であれば、図5(a)〜(c)に示すようなガス供給端22の形状であってもよい。
【0057】
例えば、図5(a)に示すようにガス供給端22の内部に例えば三角柱状の拡散壁32を配置することで、ガス供給端22の内部において、ガスをガス供給口21の長辺方向に均等に分配することができ、基板S表面にガスを長尺状に均一に供給することができる。
この拡散壁32は三角柱状に限定されず、ガス供給端22の内部でガスをガス供給口21の長辺方向に均等に分配することができれば、円柱状、楕円柱状、四角柱状であってもよい。
【0058】
さらに、この拡散壁の配置パターンは原料ガスが基板S表面に長尺状に均一に供給されるように、最適化した配置パターンに形成されていればより好ましい。例えば、予め基板S表面に有機薄膜を形成させた場合の膜厚分布において、基板の中央部の方が端部よりも薄い場合には、図5(b)に示すように、ガス供給端22の内部における拡散壁32の配置パターンをガス供給端22の端部に集中するように配置させて、中央部にガスがより供給されるような配置パターンにしてもよい。
【0059】
また、図5(c)に示すように、ガス供給端22がガスの供給方向に向かって図面上上下方向に段階的に分割された複数のガス流路33を備えており、ガス流路33はガスを拡散させるための複数の拡散室34を備えていてもよい。ここでは、最終段の拡散室34に図面上上下方向に配設された例えば6つのガス供給口21からガスが供給される。このような形状であっても、基板S表面に長尺状にガスを供給することができるとともに、ガス供給端22の内部において十分に拡散された状態でガスを均一に供給することができる。
【0060】
(第4実施形態)
本実施形態では第1実施形態で説明したガス供給端22を複数備えた例について説明する。
図6に示すように、本実施形態における有機気相堆積装置は、例えば3つのガス供給管23a〜23cを有しており、これらのガス供給管23a〜23cはそれぞれ真空チャンバ11内に挿入され、それぞれに対応したガス供給端22a〜22cに接続されている。
また、ガス供給端22a〜22cは基板装着面12aに対向配置された状態でガス供給口21の短辺方向、すなわち、図面上奥行き方向に向かって並列されている。
【0061】
また、ガス供給管23a〜23cは原料ガス供給源41(前記図1(a)参照)にそれぞれ接続されていることとする。
ここでは、複数のガス供給管23a〜23cが原料ガス供給源41にそれぞれ接続されていることとするが、ガス供給管23a〜23cにそれぞれに対応させて、原料ガス供給源41を複数設けてもよい。
【0062】
ガス供給管23a〜23cには、それぞれ独立したガス流量制御手段(図示せず)が設けられており、ガス流量制御手段を作動させることによって、ガスの流量を調整するだけでなく、流量をゼロにすることもできる。
したがって、ガス供給管23a〜23cに異なる原料ガスを導入する場合には、原料ガスの種類を切り替えることも可能である。
【0063】
このような有機気相堆積装置によれば、第1実施形態と同様の効果に加えて、ガス供給端22a〜22cは、ガス供給口21の短辺方向に並列されており、それぞれのガス供給端22から基板Sの幅に渡る長尺状にガスが供給されるため、ガス基板S表面の全域に原料ガスを供給することができる。
また、それぞれにガス流量制御手段を備えていることから、形成される有機薄膜の膜厚に応じて、ガス流量制御手段を調整することで、均一な膜厚を有する有機薄膜の形成を行うことが可能である。
この場合には、基板ホルダー12に基板装着面12aをガス供給口21の短辺方向に可動させるスライド機構が設けられていなくても、原料ガスを基板S表面に均一に堆積させることが可能であり、均一な膜厚の有機薄膜の形成を行うことができる。
【0064】
したがって、基板ホルダー12にスライド機構を設けなくてもよく、低コストで良質な有機薄膜を形成することができ、大画面でも輝度むらのない有機発光素子層を形成することが可能である。
【0065】
また、本実施形態ではガス供給端22a〜22cから同一の原料ガスが供給される例について説明したが、ガス供給端22a〜22cから異なる原料ガスが供給されるように構成されていてもよい。
この場合には、ガス供給管23a〜23cがそれぞれ異なる原料ガス供給源41に接続される。そして、スライド機構により基板装着面12aを奥行き方向に可動させることにより、基板S表面にガス供給端22a〜22cから供給される原料ガスが順次堆積された有機薄膜の積層膜を形成することができ、各層をより均一な膜厚で形成することができる。また、基板S表面に異種原料がドーピングされた有機薄膜をより均一な膜厚で形成することもできる。
【0066】
なお、ここではガス供給端22の側面形状が三角形状である場合の例について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば図2(a)〜(c)に示したような側面形状であっても適用可能である。
【0067】
【発明の効果】
このような薄膜形成装置によれば、ガス供給端は基板装着面にガスが長尺状に供給されるように形成されていることから、基板装着面に装着される基板表面に対してガスを長尺状に供給することができる。
【0068】
また、基板ホルダーが長尺状のガスの供給範囲における短辺方向に可動させるスライド機構を備えていれば、ガス供給時に基板装着面を短辺方向にスライドさせることで、長尺状に供給されたガスを基板表面において短辺方向に走査しながら供給することができるため、成膜成分からなるガスを基板の表面領域に均一に堆積させることができ、均一な膜厚の薄膜形成を行うことができる。
【0069】
また、ガス供給口がガスの供給範囲における短辺方向に複数並列されている場合には、各ガス供給口から長尺状に供給されるガスを、その短辺方向に渡って供給することができる。このため、基板を静止させた状態であっても、成膜成分からなるガスを基板の表面領域に均一に堆積させることができ、均一な膜厚の薄膜の形成を行うことができる。
【0070】
したがって、この薄膜形成装置を有機ELディスプレイ素子の形成に適用することにより、大画面でも輝度むらのない有機発光素子層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態における薄膜形成装置を説明するための概略構成図(a)と、要部拡大図(b)である。
【図2】 第1実施形態におけるガス供給端の例を示す斜視図である。
【図3】 第2実施形態における薄膜形成装置を説明するための要部拡大図(a)と上面要部拡大図(b)である。
【図4】 第3実施形態における薄膜形成装置を説明するための要部拡大図である。
【図5】 第3実施形態におけるガス供給端の例を示す斜視図である。
【図6】 第4実施形態における薄膜形成装置を説明するための要部拡大図である。
【図7】 従来の技術における真空蒸着装置を説明するための概略構成図である。
【符号の説明】
11…真空チャンバ、12…基板ホルダー、12a…基板装着面、21…ガス供給口、22…ガス供給端、23…ガス供給管、31…ガス流路、S…基板、C1…開口面積、C2…供給断面積

Claims (7)

  1. 真空チャンバと、前記真空チャンバ内に設けられた基板ホルダーと、前記基板ホルダーの基板装着面に向けてガスを供給するガス供給端とを備えた薄膜形成装置であって、
    前記ガス供給端は、矩形状のガス供給口を有し、当該ガス供給口の長辺方向の開口幅に向けて徐々に拡大されるとともに、短辺方向の開口幅に向けて徐々に縮小される形状を有している
    ことを特徴とする薄膜形成装置。
  2. 前記基板ホルダーはその基板装着面を前記長尺状のガスの供給範囲における短辺方向に可動させるスライド機構を備えている
    ことを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
  3. 前記ガス供給端が前記長尺状のガスの供給範囲における短辺方向に複数並列されている
    ことを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
  4. 前記ガス供給端は、このガス供給端の内部にガスの供給方向に向かって分割されるとともに、前記ガス供給端のガス供給口に達する複数のガス流路を備えている
    ことを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
  5. 前記複数のガス供給端から異なるガスが供給される
    ことを特徴とする請求項記載の薄膜形成装置。
  6. 前記複数のガス供給端から単一のガスが供給される
    ことを特徴とする請求項記載の薄膜形成装置。
  7. 前記ガス供給端にガスを供給するためのガス供給管をさらに備え、
    前記ガス供給管の供給断面積は、前記ガス供給口の開口面積と略同一である
    ことを特徴とする請求項1記載の薄膜形成装置。
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