JP4290409B2 - 感光性樹脂組成物及びプリント配線板 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、紫外線露光及び希アルカリ水溶液による現像で画像形成可能であり、ポットライフが長いとともに、現像性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性、電気絶縁性、可撓性等に優れる、例えばプリント配線板用ソルダーレジストとして好適な感光性樹脂組成物及びこれを用いたプリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリント配線板は、基板の上に導体回路のパターンを形成し、そのパターンのはんだ付けランドに電子部品をはんだ付けすることにより搭載するためのものであり、そのはんだ付けランドを除く回路部分は永久保護皮膜としてのソルダーレジスト膜で被覆される。これにより、プリント配線板に電子部品をはんだ付けする際にはんだが不必要な部分に付着するのを防止すると共に、回路導体が空気に直接曝されて酸化や湿度により腐食されるのを防止する。
従来、ソルダーレジスト膜は、基板上にその溶液組成物をスクリーン印刷法でパターン形成し、溶剤を除く乾燥をした後、紫外線または熱により硬化させることが主流とされてきた。
【0003】
ところが、最近、プリント配線基板の配線密度の向上(細密化)の要求にともないソルダーレジスト組成物(ソルダーレジストインキ組成物ともいう)も高解像性、高精度化が要求され、民生用基板、産業用基板を問わずスクリーン印刷法から、位置精度、導体エッジ部の被覆性に優れる液状フォトソルダーレジスト法(写真現像法)が提案されている。例えば特開昭50ー144431号、特公昭51ー40451号公報には、ビスフェノール型エポキシアクリレート、増感剤、エポキシ化合物、エポキシ硬化剤などからなるソルダーレジスト組成物が開示されている。これらのソルダーレジスト組成物は、プリント配線板上に感光性樹脂組成物である液状組成物を全面塗布し、溶媒を揮発させた後、露光して未露光部分を有機溶剤を用いて除去し、現像するものである。
しかし、この有機溶剤による未露光部分の除去(現像)は、有機溶剤を多量に使用するため、環境汚染や火災などの危険性があるのみならず、環境汚染の問題があり、特に人体に与える影響が最近大きくクローズアップされてきていることから、その対策が講ぜられている。
【0004】
これらの問題を解決するために、希アルカリ水溶液で現像可能なアルカリ現像型フォトソルダーレジスト組成物が提案されている。例えば特公昭56ー40329号、特公昭57ー45785号公報には、エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応させ、更に多塩基酸無水物を付加させた反応生成物をベースポリマーとする材料が開示されている。また、特公平1ー54390号公報には、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸との反応物と、飽和または不飽和多塩基酸無水物とを反応せしめて得られる活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤を含有する希アルカリ水溶液により現像可能な光硬化性の液状レジストインキ組成物が開示されている。
【0005】
これらの液状ソルダーレジスト組成物は、エポキシアクリレートにカルボキシル基を導入することによって、光感光性や希アルカリ水溶液での現像性を付与させたものであるが、この組成物にはさらに、その塗膜を露光、現像処理して所望のレジストパターンを形成した後、通常、熱硬化させるために、熱硬化性成分として、一般的にはエポキシ樹脂を含有させ、上記のエポキシアクリレートに導入した側鎖のカルボキシル基とエポキシ基とを反応させ、密着性、硬度、耐熱性、電気絶縁性などに優れるレジスト膜を形成させている。この場合、一般的にはエポキシ樹脂とともに、エボキシ樹脂用の硬化剤あるいは硬化促進剤が併用される。
このエポキシ樹脂用硬化促進剤としては、従来、多種多様の化合物が知られているが、その中にはジシアンジアミド(シアノグアニジン)やメラミンも挙げられる。
【0006】
【特許文献1】
特公平1−54390号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したようなアルカリ現像型の液状ソルダーレジスト組成物に、エポキシ樹脂とともに、ジシアンジアミドやメラミンを配合すると、この化合物の相溶性が低いために、その塗膜は硬化不良を引き起こすことがある上に、その配合物のポットライフが短く、保存安定性を長く維持できないなどの問題を生じる。
このことから、その製品の性能を落とさずに、無駄なく使用し、コストを低くするためにも、ポットライフが長く、保存安定性に優れ、現像性(塗布膜乾燥時の未露光対応部分の現像時除去可能な塗布膜硬化度の熱的許容限度の管理範囲である、いわゆる熱管理幅を広くできる性能)や、耐熱性、耐湿性、耐薬品性、電気絶縁性、可撓性等の塗膜性能も優れる感光性樹脂組成物が求められている。
【0008】
本発明の第1の目的は、ポットライフが長く、保存安定性に優れるとともに、現像性や、耐熱性、耐湿性、耐薬品性、電気絶縁性、可撓性等の塗膜性能も優れる一液型としても可能な感光性樹脂組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、その感光性樹脂組成物のソルダーレジスト膜の硬化膜を有する電子部品搭載前又は後のプリント配線板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、例えばAl(アルミニウム)のアルコシドを用いると、感光性樹脂組成物のポットライフが長くなって、保存安定性が向上し、現像性や、耐熱性、耐湿性、耐薬品性、電気絶縁性、可撓性等の塗膜性能も優れた、特にプリント配線板製造用ソルダーレジスト用として好適な感光性樹脂膜を提供できることを見出し、本発明をするに至った。
すなわち、本発明は、(1)、(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂として多塩基酸又はその無水物と不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂との反応生成物である多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂、(B)金属の有機オキシド化合物として下記一般式〔化1〕、〔化2〕及び〔化3〕で表される有機金属化合物の少なくとも1種、(C)光重合開始剤、(D)光重合性モノマー及び有機溶剤の少なくとも1種からなり、少なくとも光重合性モノマーを用いる希釈剤及び(E)エポキシ系熱硬化性化合物を含有する感光性樹脂組成物を提供するものである。
【化1】
【化2】
【化3】
(式中、Mは金属原子としてAlを表わし、R1 、R2 、R3 又はR4 は炭素数が1ないし20の置換又は非置換炭化水素基であってそれぞれの一般式において同一でも異なってもよく、XはO又はS、kは該金属原子に置換できる数であって整数を表わす。)
また、本発明は、(2)、(B)金属の有機オキシド化合物が(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100gに対し、0.1〜10gの割合である上記(1)の感光性樹脂組成物、(3)、(E)エポキシ系熱硬化性化合物が(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100gに対し、5〜100gである上記(1)又は(2)の感光性樹脂組成物、(4)上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化膜を有するソルダーレジスト膜を被覆した、電子部品を搭載する前又はした後のプリント配線板を提供するものである。
なお、「(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂、(B)金属の有機オキシド化合物、(C)光重合開始剤、(D)希釈剤及び(E)エポキシ系熱硬化性化合物を含有する感光性樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、(2)、(B)金属の有機オキシド化合物が上記一般式〔化1〕、〔化2〕及び〔化3〕で表される有機金属化合物の少なくとも1種である上記(1)の感光性樹脂組成物、
(式中、Mは金属原子を表わし、R1 、R2 、R3 又はR4 は炭素数が1ないし20の置換又は非置換炭化水素基であってそれぞれの一般式において同一でも異なってもよく、XはO又はS、kは該金属原子に置換できる数であって整数を表わす。)
(3)、金属原子MがAl、Ti、Zr又はSiである上記(1)又は(2)の感光性樹脂組成物、(4)、(B)金属の有機オキシド化合物が(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100gに対し、0.1〜10gの割合である上記(1)ないし(3)のいずれかの感光性樹脂組成物、(5)、(E)エポキシ系熱硬化性化合物が(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100gに対し、5〜100gである上記(1)ないし(4)のいずれかの感光性樹脂組成物、(6)、上記(1)ないし(5)のいずれかの感光性樹脂組成物の硬化膜を有するソルダーレジスト膜を被覆した、電子部品を搭載する前又はした後のプリント配線板を提供するものである。」としてもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、「(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂」とは、例えば分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にアクリル酸又はメタクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させた後、生成した水酸基に多塩基酸又はその無水物を反応させたものなどを挙げることができる。
上記多官能性エポキシ樹脂としては、2官能以上のエポキシ樹脂であればいずれでも使用可能であり、エポキシ当量の制限は特にないが、通常1,000以下、好ましくは100〜500のものを用いる。
例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、о−クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂等をあげることができる。また、これらの樹脂にBr,Cl等のハロゲン原子を導入したものなども挙げられる。これらの内でも耐熱性を考慮すると、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0011】
これらのエポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させる。エポキシ基とカルボキシル基の反応によりエポキシ基が開裂し水酸基とエステル結合が生成する。使用するラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としては、特に制限は無く、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸などがあるが、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方(以下、(メタ)アクリル酸ということがある。)が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法に特に制限は無く、例えばエポキシ樹脂とアクリル酸を適当な希釈剤中で加熱することにより反応できる。希釈剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、などのアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類等を挙げることができる。また触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン類、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフェートなどのリン化合物類等を挙げることができる。
【0012】
上記のエポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の反応において、エポキシ樹脂が有するエポキシ基1当量あたりラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を0.7〜1.2当量反応させる事が好ましい。アクリル酸又はメタクリル酸の少なくとも一方を用いるときは、さらに好ましくは0.8〜1.0当量加えて反応させる。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が0.7当量未満であると、後続の工程の合成反応時にゲル化を起こすことがあったり、あるいは樹脂の安定性が低下する。また、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が過剰であると未反応のカルボン酸が多く残存するため、硬化物の諸特性(例えば耐水性等)を低下させる恐れがある。エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の反応は、加熱状態で行うのが好ましく、その反応温度は、80〜140℃である事が好ましい。反応温度が140℃を超えるとラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が熱重合を起こし易くなり合成が困難になることがあり、また80℃未満では反応速度が遅くなり、実際の製造上好ましくないことがある。
エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の希釈剤中での反応においては、希釈剤の配合量が反応系の総重量に対して、20〜50%である事が好ましい。エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の反応生成物は単離することなく、希釈剤の溶液のまま、次の多塩基酸類との反応に供する事ができる。
【0013】
上記エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応生成物である不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に、多塩基酸又はその無水物を反応させる。多塩基酸又はその無水物としては、特に制限は無く、飽和、不飽和のいずれも使用できる。このような多塩基酸としては、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3−メチルテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、3−エチルテトラヒドロフタル酸、4−エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3−メチルヘキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、3−エチルヘキサヒドロフタル酸、4−エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びジグリコール酸等が挙げられ、多塩基酸無水物としてはこれらの無水物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用することができ、また2種以上を混合してもよい。
多塩基酸又は多塩基酸無水物は、上記のエポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応で生成した水酸基に反応し、樹脂に遊離のカルボキシル基を持たせる。反応させようとする多塩基酸の使用量は、エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応生成物が有する水酸基1モルに対し0.2〜1.0モルである事が望ましい。露光時に高感度の樹脂膜が得られる点からは、好ましくは0.3〜0.9モル、さらに好ましくは0.4〜0.8モルの割合で反応させる。0.2モル未満であると得られた樹脂の希アルカリ現像性が低下することがあり、また1.0モルを超えると最終的に得られる硬化塗膜の諸特性(例えば耐水性等)を低下させることがある。
多塩基酸は、上記の不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に添加され、脱水縮合反応され、反応時生成した水は反応系から連続的に取り出すことが好ましいが、その反応は加熱状態で行うのが好ましく、その反応温度は、70〜130℃である事が好ましい。反応温度が130℃を超えると、エポキシ樹脂に結合されたものや、未反応モノマーのラジカル重合性不飽和基が熱重合を起こし易くなり合成が困難になることがあり、また70℃未満では反応速度が遅くなり、実際の製造上好ましくないことがある。多塩基酸無水物を使用する場合もこれに準ずる。上記の多塩基酸又はその無水物と不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂との反応生成物である多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の酸価は、60〜300mgKOH/gが好ましい。反応させる多塩基酸又はその無水物の量により、反応生成物の酸価は調整できる。
【0014】
本発明においては、上記の多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂も感光性樹脂として使用できるが、上記の多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の有するカルボキシル基に、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を持つグリシジル化合物を反応させることにより、ラジカル重合性不飽和基を更に導入し、さらに感光性を向上させた感光性樹脂としてもよい。
この感光性を向上させた感光性樹脂は、最後のグリシジル化合物の反応によってラジカル重合性不飽和基が、その前駆体の感光性樹脂の高分子の骨格の側鎖に結合するため、光重合反応性が高く、優れた感光特性を持つことができる。1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を持つ化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。なお、グリシジル基は1分子中に複数有していてもよい。これらの化合物は単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
上記グリシジル化合物は、上記の多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の溶液に添加して反応させるが、その樹脂に導入したカルボキシル基1モルに対し、通常0.05〜0.5モルの割合で反応させる。得られる感光性樹脂を含有する感光性樹脂組成物の感光性(感度)や、上記した現像性(塗布膜乾燥時の未露光対応部分の現像時除去可能な塗布膜硬化度の熱的許容限度の管理幅広くできる性能)及び電気絶縁性等の電気特性などのことを考慮すると、好ましくは0.1〜0.5モルの割合で反応させるのが有利である。反応温度は80〜120℃が好ましい。このようにして得られるグリシジル化合物付加多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂からなる感光性樹脂は酸価が45〜250mgKOH/gである事が好ましい。
上記のいずれの感光性樹脂も単独で用いてもよいが、複数組み合わせて用いてもよい。
【0015】
本発明において、「(B)金属の有機オキシド化合物」としては、「上記一般式〔化1〕、〔化2〕及び〔化3〕で表される有機金属化合物(有機金属キレート化合物も含まれる)の少なくとも1種」が挙げられるが、上記一般式〔化1〕、〔化2〕及び〔化3〕において、MはAl、Ti、Zr、Si等の金属原子を表わし、R1 、R2 、R3 又はR4 は炭素数が1〜20の置換又は非置換炭化水素基であり、XはO(酸素原子)又はS(硫黄原子)を表わすが、OR1 又はOCXR2 又はOR3 C3 OR4 は有機オキシドということができ、これらの一般式の有機金属化合物は金属の有機オキシド化合物ということもできる。OR1 又はOCXR2 又はOR3 C3 OR4 は加熱あるいは少量の酸により脱離して水酸基、例えばアルコール性水酸基、フェノール性水酸基を発生させる置換基であって、Mが酸化等の変化をし難いように保護している。
【0016】
上記R1 、R2 、R3 又はR4 としては、例えば置換メチル基、1−置換エチル基、1−分岐アルキル基、アルコキシカルボニル基、環状基等を挙げることができる。
具体的には、置換メチル基としては、例えばメトキシメチル、メチルチオメチル、エトキシメチル、エチルチオメチル、メトキシエトキシメチル、ベンジルオキシメチル、ベンジルチオメチル、フェナシル、ブロモフェナシル、メトキシフェナシル、メチルチオフェナシル、α−メチルフェナシル、シクロプロピルメチル、ベンジル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、ブロモベンジル、ニトロベンジル、メトキシベンジル、メチルチオベンジル、エトキシベンジル、エチルチオベンジル、ピペロニル、t−ブトキシカルボニルの各基が挙げられる。
また、1−置換エチル基としては、例えば1−メトキシエチル、1−メチルチオエチル、1,1−ジエトキシエチル、1−フェノキシエチル、1−フェニルチオエチル、1,1−ジフェノキシエチル、1−ベンジルオキシエチル、1−ベンジルチオエチル、1−シクロプロピルエチル、1−フェニルエチル、1,1−ジフェニルエチル等の各基を挙げることができる。
また、1−分岐アルキル基としては、例えばイソプロピル、sec−ブチル、t−ブチル、1,1−ジメチルプロピル、1−メチルブチル、1,1−シメチルブチル等の各基を挙げることができる。
また、アルコキシカルボニル基としては、例えはメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル等の各基を挙げることができる。
また、アシル基としては、例えばアセチル、プロピオニル、ブチリル、ヘプタノイル、ヘキサノイル、バレリル、ピバロイル、イソバレリル、ラウリロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、オキサリル、マロニル、スクシニル、グルタニル、アシポイル、ピペロイル、スベロイル、アゼラオイル、セバコイル、アクリロイル、プロピオロイル、メタクリロイル、クロトノイル、オレオイル、マレオイル、フマロイル、メサコノイル、カンホロイル、ベンゾイル、フタロイル、イソフタロイル、テレフタロイル、ナフトイル、トルオイル、ヒドロアトロポイル、アトロポイル、シンナモイル、フロイル、テノイル、ニコチノイル、p−トルエンスルホニル、メシル等の各基を挙げることができる。
【0017】
また、環状基としては芳香族基、複素環状基を挙げることができ、上記一般式〔化1〕、〔化2〕又は〔化3〕において、R1 、R2 、R3 又はR4 で表される置換若しくは非置換の芳香族基又は複素芳香族基としては、例えばフェニル基;ナフチル基、アントラセニル基及びフェナントレニン基のような2ないし3個のベンゼン環が縮合してなる縮合芳香環基;フラニル、チオフェニル、ピロリル、ピロリニル、ピロジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリル、ビラゾリジニル、トリアゾリル、フラザニル、テトラゾリル、ピラニル、チイニル、ピリジニル、ピペリジニル、オキサジニル、モルホリニル、チアジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピペラジニル及びトリアジニル基のような単環式複素芳香環基;ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、インドリニル、イソインドリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、インダゾリル、イミダゾリル、クロメニル、クロマニル、イソクロマニル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリエル、ジベンゾフラニル、カルバゾリル、キサンテニル、アクリジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノキサジニル、チアントレニル、インドリジニル、キノリジニル、キヌクリジニル、ナフチリジニル、プリニル及びプテリジニル基のような縮合複素芳香環基;水素原子が1つもしくはそれ以上の置換基で置換されたそれらの基を挙げることができる。
これらの置換された芳香族基又は複素芳香族基の置換基としては、炭素数が1以上の有機基を挙げることができ、複数存在する場合には、各々同一であっても異なっていてもよい。
【0018】
金属の有機オキシド化合物の具体例としては、金属原子がAlの場合には、例えばトリスメトキシアルミニウム、トリスエトキシアルミニウム、トリスイソプロポキシアルミニウム、トリスフェノキシアルミニウム、トリスパラメチルフェノキシアルミニウム、イソプロポキシジエトキシアルミニウム、トリスブトキシアルミニウム、トリスアセトキシアルミニウム、トリスステアラトアルミニウム、トリスブチトアルミニウム、トリスプロピオナトアルミニウム、トリスイソプロピオナトアルミニウム、トリスアセチルアセトナトアルミニウム、トリストリフルオロアセチルアセトナトアルミニウム、トリスヘキサフルオロアセトルアセトナトアルミニウム、トリスエチルアセトアセタトアルミニウム、トリスサルチルアルデヒダトアルミニウム、トリスジエチルマロラトアルミニウム、トリスプロピルアセトアセタトアルミニウム、トリスブチルアセタトアルミニウム、トリスジピバロイルメタナトアルミニウム、ジアセチルアセトナトジピバロイルメタナトアルミニウム等を挙げることができる。
また、金属の有機オキシド化合物の具体例として、金属原子がTiの場合には、例えばテトラエチルアセトアセタトチタニウム、テトライソプロピルチタニウム、テトラブチルチタニウム、テトラヘキシルチタニウム、テトラステアリルチタニウム等が挙げられる。
また、金属の有機オキシド化合物の具体例として、金属原子がZrの場合には、例えばテトラエチルアセトアセタトジルコニウム、テトライソプロピルジルコニウム、テトラブチルジルコニウム、テトラヘキシルジルコニウム、テトラステアリルジルコニウム等が挙げられる。
また、金属の有機オキシド化合物の具体例として、金属原子がSiの場合には、例えばテトラエチルアセトアセタトシラン、テトライソプロピルシラン、テトラブチルシラン、テトラヘキシルシラン、テトラステアリルシラン等が挙げられる。
【0019】
上記(B)成分の金属の有機オキシド化合物は単独又は複数組み合わせ用いてもよいが、後述の(E)成分の熱硬化性化合物のうち特にエポキシ系熱硬化性化合物に対する硬化促進剤として用いられるものであり、常温ではこのエポキシ系熱硬化性化合物のエポキシ基と上記(A)成分の樹脂に導入したカルボキシル基との反応は起こり難いが、加熱によって速やかにその反応を起こさせる、いわゆる潜在性熱硬化促進剤としての機能を有し、この潜在性熱硬化促進剤を適量含有する本発明の感光性樹脂組成物は、メラミンやジシアンジアミドを使用する場合に比べても、ポットライフが長く、保存安定性に優れているとともに、その塗膜は上述した現像性をよくすることができる。
これは、金属の有機オキシド化合物は常温においては、エポキシ系熱硬化性化合物の硬化促進性を抑制させ、高温においてはエポキシ系熱硬化性化合物の硬化促進性を発揮させ、いわゆる熱潜在性化(常温では硬化促進機能が低く、加熱すると本来の硬化促進機能を発揮する性質)を行なうことができることによる。その結果、上記のポットライフ、保存安定性、現像性の耐熱性を一段と改善することができるが、他方、パターン形成後の塗膜をポストキュアーを高温(例えば140℃以上)で行なうことにより、本来の硬化促進機能を発揮し、耐熱性、密着性、電気絶縁性及び耐薬品性等の硬化塗膜の性能を向上させることができる。その際、上記(B)成分の熱潜在性化の増加により、組成物中におけるその配合量を増やすことができるため、硬化塗膜の耐熱性等の上記性能を一段と向上させることができる。
【0020】
上記(B)成分の金属の有機オキシド化合物を単独で1種又は少なくとも2種(2種以上)を組み合わせて用いるいずれの場合でも、その含有量は、(E)成分のエポキシ系熱硬化性化合物の含有量やエポキシ当量などに左右されるが、一般的には、上記(A)成分100g当たり、0.1〜10gの範囲で選ばれる。この含有量が0.1g未満では熱硬化特性が十分に発揮されないおそれがあるし、5gを超えると本発明の感光性樹脂組成物のポットライフが短くなり易く、その塗膜のソルダーレジスト膜の特性低下の原因となることがある。熱硬化特性、組成物のポットライフ及びソルダーレジスト膜の特性などを考慮すると、この(B)成分の含有量は、特に1〜8gの範囲が好ましい。
【0021】
本発明においては、上記(A)成分、(B)成分のほかに、「(C)光重合開始剤」及び「(D)希釈剤」、さらには「(E)熱硬化性化合物」と混合して使用することにより、本発明の感光性樹脂組成物とすることができ、例えばプリント配線板製造用ソルダーレジスト組成物として好適に使用することができる。
上記「(C)光重合開始剤」としては、特に制限はなく、従来知られているものはいずれも使用できる。具体的には、代表的なものとしては例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインーnーブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2, 2- ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2- ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4- (2-ヒドロキシエトキシ) フェニル−2-(ヒドロキシ-2- プロピル) ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4, 4′ージエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2- ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、 2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられる。これらを単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤の使用量は、上記(A)成分の活性エネルギー線硬化性樹脂100g に対して、通常0.2〜50g である。0.2g 未満では、この(A)成分の活性エネルギー線硬化性樹脂の光硬化反応が進行し難くなり、50g を超えるとその加える量の割には効果は向上せず、むしろ経済的には不利となったり、硬化塗膜の機械的特性が低下することがある。光硬化性、経済性、硬化塗膜の機械的特性などの点からは、その使用量は、好ましくは2.0〜30g である。
【0022】
上記「(D)希釈剤」は、光重合性モノマー及び有機溶剤の少なくとも1種からなる。光重合性モノマーは反応性希釈剤といわれるもので、これは、上記(A)成分の感光性樹脂の光硬化を更に十分にして、耐酸性、耐熱性、耐アルカリ性などを有する塗膜を得るために使用するもので、1分子中に二重結合を少なくとも2個有する化合物が好ましく用いられる。上記(A)成分の感光性樹脂を含有する感光性樹脂組成物の粘度や乾燥性を調節するために有機溶剤を用いてもよいが、その必要がなければ用いなくてもよく、また、上記(A)成分の感光性樹脂のみの光硬化性で足りる場合には、光重合性モノマーは用いなくてもよい。
その光重合性モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の反応性希釈剤が挙げられる。
【0023】
上記の2〜6官能その他の多官能反応性希釈剤は単品又は複数の混合系のいずれにおいても使用可能である。この反応性希釈剤の添加量は、上記(A)成分の活性エネルギー線硬化性樹脂100g当たり、通常2.0〜40gの範囲で選ばれる。その添加量が2.0gより少ないと十分な光硬化が得られず、硬化塗膜の耐酸性、耐熱性等において十分な特性が得られず、また、添加量が40gを越えるとタックが激しく、露光の際アートワークフィルムの基板への付着が生じ易くなり、目的とする硬化塗膜が得られ難くなる。
光硬化性、硬化塗膜の耐酸性、耐熱性等、アートワークフィルムの基板への付着の防止の点からは、反応性希釈剤の添加量は、好ましくは4.0〜20gである。
上記の有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、などのアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類等を挙げることができる。
【0024】
上記「(E)エポキシ系熱硬化性化合物」は、本発明の感光性樹脂組成物において、その塗膜を露光し、現像した後のポストキュアー後において十分に強靭な塗膜を得るために加えるものである。
このエポキシ系熱硬化性化合物の代表的なものとしては、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基、好ましくは2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(エポキシオリゴマーを含む)が好適である。例えばビスフェノールAとエピクロルヒドリンとをアルカリの存在下に反応させて得られたビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAとホルマリンとを縮合反応させて得られた樹脂のエポキシ化物、これらの樹脂において、ビスフェノールAの代わりにプロム化ビスフェノールAを用いたもの、ノボラック樹脂にエピクロルヒドリンを反応させてグリシジルエーテル化したノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型など)、ビスフェノールFやビスフェノールSにエポクロルヒドリンを反応させて得られたビスフェノールF型やビスフェノールS型エポキシ樹脂、さらにシクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する脂環式エポキシ樹脂、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−ヒドロキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノールなどのグリシジルアミン系樹脂、(プロピレン、ポリプロピレン)グリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1.6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、(エチレン、プロピレン)グリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル樹脂、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のトリアジン環を有するトリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。これらの熱硬化性化合物は単独で用いてもよいし、複数併用してもよい。
【0025】
上記エポキシ系熱硬化性化合物は、上記(B)成分とともに更に反応促進剤としてメラミン化合物、イミダゾール化合物、フェノール化合物等の公知のエポキシ硬化促進剤を併用して、塗膜をポストキュアーすることを促進することもできる。このエポキシ系熱硬化性化合物の併用により、得られるレジスト皮膜の耐熱性、耐湿性、電気絶縁性、耐薬品性、耐酸性、耐溶剤性、密着性、可撓性、硬度などの諸特性を向上させることができ、プリント配線板用のソルダーレジストとして有用である。
上記エポキシ系熱硬化性化合物単独又はその他の熱硬化性化合物を併用する場合の使用量は、上記(A)成分の活性エネルギー線硬化性樹脂100gに対し、通常5〜100gの割合で添加される。この添加量が5g未満ではポストキュアー後において、所望の物性を有する塗膜が得られないことがあるし、100gを超えると(A)成分の光硬化性が低下することがある。ポスキキュアー後の塗膜物性及び(A)成分の光硬化性などの点から、この熱硬化性化合物の添加量は、好ましくは15〜60gである。
【0026】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記の成分のほかに、必要に応じて種々の添加剤、例えばシリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機顔料からなる充填剤、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系、アゾ系等の有機顔料や二酸化チタン等の無機顔料の公知の着色顔料、消泡剤、レベリング剤等の塗料用添加剤などを含有させることができる。
【0027】
上述のようにして得られた本発明の感光性樹脂組成物は、例えば銅張り積層板の銅箔をエッチングして形成した回路のパターンを有するプリント配線板に所望の厚さで塗布し、60〜80℃程度の温度で15〜60分間程度加熱して溶剤を揮散させた後、これに例えば上記回路のパターンのはんだ付けランド以外は透光性にしたパターンのネガフィルムを密着させ、その上から紫外線を照射させ、このはんだ付けランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することにより塗膜が現像される。この際使用される希アルカリ水溶液としては0.5〜5質量%の炭酸ナトリウム水溶液が一般的であるが、他のアルカリも使用可能である。
次いで、140〜160℃の熱風循環式の乾燥機等で10〜60分間ポストキュアーを行うことにより目的とするソルダーレジスト皮膜を形成せしめることができる。
このようにしてソルダーレジスト膜で被覆したプリント配線板が得られ、これに電子部品が噴流はんだ付け方法や、リフローはんだ付け方法によりはんだ付けされることにより接続、固定されて搭載され、一つの電子回路ユニットが形成される。
本発明においては、その電子部品搭載前のソルダーレジスト皮膜を被覆したプリント配線板、このプリント配線板に電子部品搭載した電子部品搭載後のプリント配線板のいずれをもその対象に含む。
【0028】
【実施例】
次ぎに、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
樹脂の製造例1(上記(A)成分としての感光性樹脂)
エチルカルビトールアセテート中において、エポキシ当量が200で、かつ1分子中に平均して7個のフェノール残基と、エポキシ基を有するクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対し、アクリル酸を1モルの割合で反応させて得られた反応物に、無水テトラヒドロフタル酸を0.6モルの割合で反応させ、感光性樹脂溶液を製造した。この感光性樹脂溶液は、固形分の樹脂成分100質量部に対し、エチルカルビトールアセテート50質量部を含む粘ちょうな液体であり、樹脂分の酸価は93mgKOH/gであった。
【0029】
実施例1
樹脂の製造例1で得られた感光性樹脂溶液100gに対し、ALCH−TR (川研ファインケミカル社製のアルミニウムトリスエチルアセトアセテート( トリスエチルアセトアセタトアルミニウムともいう)の商品名)2g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 8g、2 ‐メチル‐1 ‐[4‐(メチルチオ)フェニル] ‐2 ‐モルフォリノ‐1 ‐プロパン−1−オン 5g、2,4−ジエチルチオキサントン 1g、トリグリシジルイソシアヌレート 10g、シリカ 10g、硫酸バリウム 13g及びフタロシアニングリーン 1gの割合で配合し、これを3 本ロールで混合分散させて、感光性樹脂組成物を調製した。
この感光性樹脂組成物のポットライフ、その塗膜の現像性及び塗膜性能を後述の試験法によって調べた結果を表1に示す。
【0030】
参考例1
実施例1において、ALCH−TR 2gの代わりに、テトラエチルアセトアセタトチタニウム 2gを用いたこと以外は同様にして感光性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様に試験した結果を表1に示す。
【0031】
参考例2
実施例1において、ALCH−TR 2gの代わりに、テトラエチルアセトアセタトジルコニーム 2gを用いたこと以外は同様にして感光性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様に試験した結果を表1に示す。
【0032】
参考例3
実施例1において、ALCH−TR 2gの代わりに、テトラエチルアセトアセタトシラン 2gを用いたこと以外は同様にして感光性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様に試験した結果を表1に示す。
【0033】
実施例2
実施例1において、ALCH−TR 2gの代わりに、トリスイソプロポキシアルミニウム 2gを用いたこと以外は同様にして感光性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様に試験した結果を表1に示す。
【0034】
実施例3
実施例1において、ALCH−TR 2gの代わりに、トリスステアラトアルミニウム 2gを用いたこと以外は同様にして感光性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様に試験した結果を表1に示す。
【0035】
比較例1
実施例1において、ALCH−TR 2gの代わりに、ジシアンジアミド 2gを用いたこと以外は同様にして感光性樹脂組成物を調製した。
この感光性樹脂組成物のポットライフ、その塗膜の現像性及び塗膜性能を後述の試験法によって調べた結果を表1に示す。
【0036】
比較例2
実施例1において、ALCH−TR 2gの代わりに、メラミン 2gを用いたこと以外は同様にして感光性樹脂組成物を調製した。
この感光性樹脂組成物のポットライフ、その塗膜の現像性及び塗膜性能を後述の試験法によって調べた結果を表1に示す。
【0037】
比較例3
実施例1において、ALCH−TR 2gを使用しなかったこと以外は同様にして感光性樹脂組成物を調製した。
この感光性樹脂組成物のポットライフ、その塗膜の現像性及び塗膜性能を後述の試験法によって調べた結果を表1に示す。
【0038】
感光性樹脂組成物のポットライフ、その塗膜の現像性及び塗膜性能(耐金メッ性、密着性、鉛筆硬度、耐酸性、耐溶剤性、はんだ耐熱性、電気特性)の評価法は、以下のとおりである。
(1)ポットライフ
上記実施例1〜3、参考例1〜3、比較例1〜3のそれぞれの感光性樹脂組成物を密閉容器に入れ、50℃の恒温槽で加熱を行なう。24時間おきに感光性樹脂組成物の粘度を回転粘度計を用いて測定し、初期の3倍の粘度になるまでの日数を測定した。
(2)現像性
予め面処理済みの基板(銅張り積層板)に、スクリーン印刷法により、上記実施例1〜3、参考例1〜3、比較例1〜3のそれぞれの感光性樹脂組成物を35μmの厚さ(乾燥前)に塗工してそれぞれの塗工基板を作製し、それぞれの塗工基板を80℃、予備乾燥時間を10分間隔で150分まで延長した塗工基板を試験片とし、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用い、2.0kg/cm2 のスプレー圧で60秒現像を行い、塗工膜を完全に除去することができる(現像残りがない)のに要した最長の予備乾燥時間(min)を測定し、以下の基準で評価した。
◎ 予備乾燥時間が80分以上でも現像残りがないもの
○ 予備乾燥時間が70分までは現像残りがないもの
△ 予備乾燥時間が60分までは現像残りがないもの
× 予備乾燥時間が60分未満で現像残りがあるもの
【0039】
(3)塗膜性能
予め面処理済みの基板(銅張り積層板)に、スクリーン印刷法により、上記実施例1〜3、参考例1〜3、比較例1〜3のそれぞれの感光性樹脂組成物を35μmの厚さ(乾燥前)に塗工してそれぞれの塗工基板を作製し、それぞれの塗工基板を80℃、20分間乾燥した。この基板にネガフィルムを密着させ、露光後、1質量%炭酸ナトリウム水溶液で現像処理してパターンを形成した。次に、この基板を150℃で60分間熱硬化して、硬化塗膜を有する試験片を作製し、塗膜性能の評価を行なった。
(a)耐金めっき性
硬化塗膜を有する試験片に金めっき加工後、セロハン粘着テープによるピーリング試験を行ない、硬化塗膜の剥がれ、変色について観察し、以下のように金めっき性を目視により評価した。
◎:全く変化が認められないもの
○:ほんの僅か変化しているもの
△:顕著に変化しているもの
×:塗膜が膨潤して剥離したもの
(b)密着性
硬化塗膜を有する試験片を、JIS D−0202に準拠して、碁盤目試験により測定した。セロハン粘着テープ(セロハンは商品名)による剥離試験で100個の碁盤目の内全く損傷のないものを「10」、全部損傷したものを「1」とし、「2〜9」はその中間を等分して表わした。
(c)鉛筆硬度
JIS K−5400 6.14に準拠して測定した。
(d)耐酸性
硬化塗膜を有する試験片を常温の10質量%の硫酸水溶液に30分間浸漬したのち、水洗後、セロハン粘着テープ(セロハンは商品名)によるピーリング試験を行い、塗膜の剥がれ、変色について観察し、耐酸性を目視により評価した。
◎:全く変化が認められないもの
○:ほんの僅か変化しているもの
△:顕著に変化しているもの
×:塗膜が膨潤して剥離したもの
(e)耐溶剤性
硬化塗膜を有する試験片を常温の塩化メチレンに30分間浸漬したのち、水洗後、セロハン粘着テープによるピーリング試験を行い、塗膜の剥がれ,変色について観察し、耐溶剤性を目視により評価した。
◎:全く変化が認められないもの
○:ほんの僅か変化しているもの
△:顕著に変化しているもの
×:塗膜が膨潤して剥離したもの
【0040】
(f)はんだ耐熱性
硬化塗膜を有する試験片を、JIS C 6481の試験方法に従って、260℃のはんだ槽に30秒浸漬後、セロハン粘着テープによるピーリング試験を1サイクルとし、計1〜3サイクルを行った後の塗膜状態を目視により評価した。
◎:3サイクル後も塗膜に変化がないもの
○:3サイクル後に僅かに変化しているもの
△:2サイクル後に変化しているもの
×:1サイクル後に剥離が生じているもの
(g) 電気特性(絶縁抵抗及び変色)
試験片の硬化塗膜にIPC−SM−840B B−25のくし型電極Bクーボンを置き、60℃、90%RH(相対湿度)の恒温恒湿槽中で100Vの直流電圧を印加し、500時間後の絶縁抵抗を測定するとともに、変色を目視により観察し、電気特性を評価した。
◎:全く変色していないもの
○:薄く変色しているもの
△:顕著に変色しているもの
×:黒く焦げ付いているもの
【0041】
【表1】
【0042】
表1の結果から、いずれの実施例のものも「ポットライフ」は長く、「現像性」も良く、塗膜性能も優れることがわかる。
なお、上述した発明において、「感光性樹脂組成物」を「ソルダーレジスト用感光性樹脂組成物」としてもよく、さらに「塗布膜乾燥時の未露光対応部分の現像時除去可能な(又は(解像度、精度において)現像性に優れる)塗布膜硬化度の熱的許容限度の管理範囲である熱管理幅が広い」の用途限定を加えてもよく、「ソルダーレジスト膜を被覆したプリント配線板及びその製造方法」としてもよく、また、その他の上述した数値その他の限定、さらにはこれらの任意の複数を組み合わせた限定を加えた発明としてもよい。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、上記(A)成分に対して上記(B)〜(E)成分を用いたので、ポットライフが長く、保存安定性に優れ、一液型としても使用可能な、例えば紫外線露光及び希アルカリ水溶液による現像により画像形成可能であって、現像性や、耐熱性、耐湿性、耐薬品性、電気絶縁性、可撓性等の塗膜性能も優れる感光性樹脂組成物を提供することができる。特に、上記(B)成分の熱潜在性化の増加により、組成物中におけるその配合量を増やすことができるため、硬化塗膜の耐熱性等の上記性能を一段と向上させることができる。
そして、その感光性樹脂組成物のソルダーレジスト膜の硬化膜を有する、電子部品搭載前又は後のプリント配線板を提供することができ、高解像性、高精度化した、硬化塗膜性能の優れたプリント配線板を提供することができる。
Claims (4)
- (A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂として多塩基酸又はその無水物と不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂との反応生成物である多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂、(B)金属の有機オキシド化合物として下記一般式〔化1〕、〔化2〕及び〔化3〕で表される有機金属化合物の少なくとも1種、(C)光重合開始剤、(D)光重合性モノマー及び有機溶剤の少なくとも1種からなり、少なくとも光重合性モノマーを用いる希釈剤及び(E)エポキシ系熱硬化性化合物を含有する感光性樹脂組成物。
- (B)金属の有機オキシド化合物が(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100gに対し、0.1〜10gの割合である請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
- (E)エポキシ系熱硬化性化合物が(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂100gに対し、5〜100gである請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の硬化膜を有するソルダーレジスト膜を被覆した、電子部品を搭載する前又はした後のプリント配線板。
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