JP2004138752A - 感光性樹脂組成物及びプリント配線板 - Google Patents
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Abstract
【課題】密着性がよく、耐酸性、耐メッキ性にも優れ、その他の塗膜性能も劣ることがないソルダーレジスト用感光性樹脂組成物及びこれを用いたプリント配線板を提供する。
【解決手段】(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂、(B)ポリブタジエン系高分子化合物、(C)光重合開始剤、(D)希釈剤及び(E)熱硬化性化合物を含有する感光性樹脂組成物。その組成物を用いたプリント配線板。
【選択図】なし
【解決手段】(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂、(B)ポリブタジエン系高分子化合物、(C)光重合開始剤、(D)希釈剤及び(E)熱硬化性化合物を含有する感光性樹脂組成物。その組成物を用いたプリント配線板。
【選択図】なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、紫外線露光及び希アルカリ水溶液による現像で画像形成可能であって、密着性、耐酸性、耐メッキ性に優れるとともに高感度であり、さらに電気絶縁性、はんだ耐熱性、耐薬品性等も従来品に劣らない、例えばプリント配線板用ソルダーレジストとして好適な感光性樹脂組成物及びこれを用いたプリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリント配線板は、基板の上に導体回路のパターンを形成し、そのパターンのはんだ付けランドに電子部品をはんだ付けすることにより搭載するためのものであり、そのはんだ付けランドを除く回路部分は永久保護皮膜としてのソルダーレジスト膜で被覆される。これにより、プリント配線板に電子部品をはんだ付けする際にはんだが不必要な部分に付着するのを防止すると共に、回路導体が空気に直接曝されて酸化や湿度により腐食されるのを防止する。
従来、ソルダーレジスト膜は、基板上にその溶液組成物をスクリーン印刷法でパターン形成し、溶剤を除く乾燥をした後、紫外線または熱により硬化させることが主流とされてきた。
【0003】
ところが、最近、プリント配線基板の配線密度の向上(細密化)の要求にともないソルダーレジスト組成物(ソルダーレジストインキ組成物ともいう)も高解像性、高精度化が要求され、民生用基板、産業用基板を問わずスクリーン印刷法から、位置精度、導体エッジ部の被覆性に優れる液状フォトソルダーレジスト法(写真現像法)が提案されている。例えば特開昭50ー144431号、特開昭51ー40451号公報には、ビスフェノール型エポキシアクリレート、増感剤、エポキシ化合物、エポキシ硬化剤などからなるソルダーレジスト組成物が開示されている。これらのソルダーレジスト組成物は、プリント配線板上に感光性樹脂組成物である液状組成物を全面塗布し、溶媒を揮発させた後、露光して未露光部分を有機溶剤を用いて除去し、現像するものである。
しかし、この有機溶剤による未露光部分の除去(現像)は、有機溶剤を多量に使用するため、環境汚染の問題や火災などの危険性があるのみならず、1,1,1−トリクロロエタン等の有機溶剤を使用する場合には、特に作業者の人体に与える影響が最近大きくクローズアップされてきていることから、その対策に苦慮しているのが現状である。
【0004】
これらの問題を解決するために、希アルカリ水溶液で現像可能なアルカリ現像型フォトソルダーレジスト組成物が提案されている。例えば特開昭56ー40329号、特開昭57ー45785号公報には、エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応させ、更に多塩基酸無水物を付加させた反応生成物をベースポリマーとする材料が開示されている。また、特公平1ー54390号公報には、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸との反応物と、飽和または不飽和多塩基酸無水物とを反応せしめて得られる活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤を含有する希アルカリ水溶液により現像可能な光硬化性の液状レジストインキ組成物が開示されている。
【0005】
これらの液状ソルダーレジスト組成物は、エポキシアクリレートにカルボキシル基を導入することによって、光感光性や希アルカリ水溶液での現像性を付与させたものであるが、この組成物にはさらに、その塗膜を露光、現像処理して所望のレジストパターンを形成した後、通常、熱硬化させるために、熱硬化性成分として、一般にエポキシ樹脂を含有させ、上記のエポキシアクリレートに導入した側鎖のカルボキシル基とエポキシ基とを反応させ、密着性、硬度、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などに優れるレジスト膜を形成させている。この場合一般に、エポキシ樹脂とともに、エボキシ樹脂用硬化剤が併用される。
【0006】
【特許文献1】
特公平1ー54390号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
基本的にはエポキシ化合物は、密着性の高い材料として知られているが、ソルダーレジストの熱硬化成分として使用した場合には、その他の感光性樹脂や、反応性希釈剤などと併用し、光硬化させた後熱硬化させて使用するので、プリント配線板の基材や導体からなる回路部分に対する密着性が十分とはいえない。
【0008】
本発明の第1の目的は、紫外線露光及び希アルカリ水溶液による現像により画像形成可能であって、密着性が良く、かつ耐酸性、耐メッキ性に優れ、しかも高感度、耐熱性、電気絶縁性及び耐薬品性に優れたパターンを与えることができる感光性樹脂組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、例えばプリント配線板用ソルダーレジストとして好適な感光性樹脂組成物を提供することにある。
本発明の第3の目的は、そのソルダーレジスト膜の硬化膜を有する電子部品搭載前又は後のプリント配線板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、ポリブタジエン系高分子化合物を用いた感光性樹脂組成物の硬化膜は、プリント配線板の基材や導体に対する密着性や、耐酸性、耐金メッキ性が向上するとともに、希アルカリ水溶液による現像性に優れ、しかも感光特性が良好であり、耐現像性、耐熱性、耐薬品性及び電気絶縁性に優れた、特にプリント配線板製造用ソルダーレジストとして好適な感光性樹脂膜を提供することを見出し、本発明をするに至った。
本発明は、(1)、(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂、(B)ポリブタジエン系高分子化合物、(C)光重合開始剤、(D)希釈剤及び(E)熱硬化性化合物を含有する感光性樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、(2)、ポリブタジエン系高分子化合物が下記一般式〔化1〕及び〔化2〕で表される構造の少なくとも一方を基本骨格とするポリブタジエン系高分子化合物である上記(1)の感光性樹脂組成物、
【化1】
【化2】
(式中、m、nは1以上の整数を表わす。)
(3)、ポリブタジエン系高分子化合物が分子量1000〜6000のポリブタジエンポリマー及びその変性物の少なくとも1種であり、該ポリブタジエンポリマーはポリブタジエンホモポリマーであってもよく、該変性物はポリブタジエンポリマーの水素添加物、アクリル変性物、水酸化物、カルボン酸化物、マレイン化物、エポキシ化物、エポキシ樹脂化物、ボイル化物又はウレタン変性化物である上記(1)又は(2)の感光性樹脂組成物、上記(1)又は(2)又は(3)の硬化膜を有するソルダーレジスト膜を被覆した電子部品を搭載する前又はした後のプリント配線板を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、「(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂」には、例えば分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にアクリル酸又はメタクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させた後、生成した水酸基に多塩基酸無水物を反応させたものなどを挙げることができる。
【0011】
上記多官能性エポキシ樹脂としては、2官能以上のエポキシ樹脂であればいずれでも使用可能であり、エポキシ当量の制限は特にないが、通常1,000以下、好ましくは100〜500のものを用いる。
例えば、ビスフェノールA型、ビスフノールF型、ビスフェノールAD型等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、о−クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂等をあげることができる。また、これらの樹脂にBr,Cl等のハロゲン原子を導入したものなども挙げられる。これらの内でも耐熱性を考慮すると、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0012】
これらのエポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させる。エポキシ基とカルボキシル基の反応によりエポキシ基が開裂し水酸基とエステル結合が生成する。使用するラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としては、特に制限は無く、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸などがあるが、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方(以下、(メタ)アクリル酸ということがある。)が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法に特に制限は無く、例えばエポキシ樹脂とアクリル酸を適当な希釈剤中で加熱することにより反応できる。希釈剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、などのアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類等を挙げることができる。また触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン類、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフェートなどのリン化合物類等を挙げることができる。
【0013】
上記のエポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の反応において、エポキシ樹脂が有するエポキシ基1当量あたりラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を0.7〜1.2当量反応させる事が好ましい。アクリル酸又はメタクリル酸の少なくとも一方を用いるときは、さらに好ましくは0.8〜1.0当量加えて反応させる。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が0.7当量未満であると、後続の工程の合成反応時にゲル化を起こすことがあったり、あるいは樹脂の安定性が低下する。また、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が過剰であると未反応のカルボン酸が多く残存するため、硬化物の諸特性(例えば耐水性等)を低下させる恐れがある。エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の反応は、加熱状態で行うのが好ましく、その反応温度は、80〜140℃である事が好ましい。反応温度が140℃を超えるとラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が熱重合を起こし易くなり合成が困難になることがあり、また80℃未満では反応速度が遅くなり、実際の製造上好ましくないことがある。
エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の希釈剤中での反応においては、希釈剤の配合量が反応系の総重量に対して、20〜50%である事が好ましい。エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の反応生成物は単離することなく、希釈剤の溶液のまま、次の多塩基酸類との反応に供する事ができる。
【0014】
上記エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応生成物である不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に、多塩基酸又はその無水物を反応させる。多塩基酸又はその無水物としては、特に制限は無く、飽和、不飽和のいずれも使用できる。このような多塩基酸としては、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3−メチルテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、3−エチルテトラヒドロフタル酸、4−エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3−メチルヘキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、3−エチルヘキサヒドロフタル酸、4−エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びジグリコール酸等が挙げられ、多塩基酸無水物としてはこれらの無水物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用することができ、また2種以上を混合してもよい。
多塩基酸又は多塩基酸無水物は、上記のエポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応で生成した水酸基に反応し、樹脂に遊離のカルボキシル基を持たせる。反応させようとする多塩基酸又は多塩基酸無水物の使用量は、エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応生成物が有する水酸基1モルに対し0.3〜1.0モルである事が望ましい。露光時に高感度の樹脂膜が得られる点からは、好ましくは0.4〜1.0モル、さらに好ましくは0.6〜1.0モルの割合で反応させる。0.3モル未満であると得られた樹脂の希アルカリ現像性が低下することがあり、また1.0モルを超えると最終的に得られる硬化塗膜の諸特性(例えば耐水性等)を低下させることがある。
多塩基酸は、上記の不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に添加され、脱水縮合反応され、反応時生成した水は反応系から連続的に取り出すことが好ましいが、その反応は加熱状態で行うのが好ましく、その反応温度は、70〜130℃である事が好ましい。反応温度が130℃を超えると、エポキシ樹脂に結合されたものや、未反応モノマーのラジカル重合性不飽和基が熱重合を起こし易くなり合成が困難になることがあり、また70℃以下では反応速度が遅くなり、実際の製造上好ましくないことがある。
上記の多塩基酸又は多塩基酸無水物と不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂との反応生成物である多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の酸価は、60〜300mgKOH/gが好ましい。反応させる多塩基酸の量により、反応生成物の酸価は調整できる。
【0015】
本発明においては、上記の多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂も感光性樹脂として使用できるが、上記の多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の有するカルボキシル基に、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を持つグリシジル化合物を反応させることにより、ラジカル重合性不飽和基を更に導入し、さらに感光性を向上させた感光性樹脂とすることも好ましい。
この感光性を向上させた感光性樹脂は、最後のグリシジル化合物の反応によってラジカル重合性不飽和基が、その前駆体の感光性樹脂の高分子の骨格の側鎖に結合するため、光重合反応性が高く、優れた感光特性を持つことができる。1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を持つ化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。なお、グリシジル基は1分子中に複数有していてもよい。これらの化合物は単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
上記グリシジル化合物は、上記の多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の溶液に添加して反応させるが、その樹脂に導入したカルボキシル基1モルに対し、通常0.05〜0.5モルの割合で反応させる。得られる感光性樹脂を含有する感光性樹脂組成物の感光性(感度)や、上述した熱管理幅及び電気絶縁性等の電気特性などのことを考慮すると、好ましくは0.1〜0.5モルの割合で反応させるのが有利である。反応温度は80〜120℃が好ましい。このようにして得られるグリシジル化合物付加多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂からなる感光性樹脂は酸価が45〜250mgKOH/gである事が好ましい。
【0016】
本発明において、「(B)ポリブタジエン系高分子化合物」とは、上記〔化1〕及び〔化2〕で表される構造の少なくとも一方を基本骨格するポリブタジエン系高分子化合物」が挙げられる。「一般〔化1〕及び〔化2〕で表される構造の少なくとも一方を基本骨格するポリブタジエン系高分子化合物」としては、ブタジエンを主とした重合体(他の重合成分を有してもよく上記〔化1〕、〔化2〕はブタジエンの重合成分についてまとめて示されている)及びその変性物であって、ポリブタジエンポリマー及びその変性物の少なくとも1種であり、そのポリブタジエンポリマーはポリブタジエンホモポリマーであってもよく、その変性物はポリブタジエンポリマーの水素添加物、アクリル変性化物、水酸化物、カルボン酸化物、マレイン化物、エポキシ化物(好ましくはエポキシ当量150〜800)、エポキシ樹脂化物、ボイル化物又はウレタン変性化物であってもよく、好ましくはいずれも分子量(GPC法)は6000より大きくなく(6000以下)、より好ましくは1000〜6000であり、これらは単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。分子量が小さ過ぎると、上記した密着性、耐酸性、耐金メッキ性が向上する程度が小さくなり、分子量が大き過ぎると感光性樹脂組成物の流動性が低くなり、塗布性も向上し難くなる。
【0017】
具体的には、ポリブタジエンポリマーとしては、例えばα,ω−ポリブタジエンホモポリマー(例えばNISSO PB B−1000、同B−2000、同B−3000(日本曹達株式会社製、以下括弧内は社名がないときは同社製品でNISSO PBは省略されている))、ポリブタジエンポリマーの変性物としては、例えば上記α,ω−ポリブタジエンホモポリマーの水素添加物(GI−1000、GI−2000、GI−3000、CI−1000、BI−1000、BI−2000、BI−3000)、ポリブタジエンポリマーの水酸化物としてのα,ω−ポリブタジエングリコール(G−1000、G−2000、G−3000)、ポリブタジエンポリマーのカルボン酸化物としてのα,ω−ポリブタジエンカルボン酸(C−1000)、ポリブタジエンポリマーのアクリル変性化物としてのポリブタジエンポリマーのアクリル変性物(TEA−1000、TE−2000、TEAI−1000、いずれも末端アクリル変性)、ポリブタジエンポリマーのマレイン化物(BN−1015(酸価130〜155KOHmg/g))、ポリブタジエンポリマーのエポキシ化物(BF−1000(エポキシ当量200〜240))、ポリブタジエンポリマーのエポキシ樹脂化物(EPB−13(エポキシ当量600〜780)、EPB−1054(エポキシ当量300〜400))、ポリブタジエンポリマーのボイル化物(GQ−1000(水酸基価45〜54KOHmg/g、酸価4〜8KOHmg/g)、GQ−2000(水酸基価38〜45KOHmg/g、酸価3〜6KOHmg/g))、ポリブタジエンポリマーのウレタン変性化物(TP−1001(NCO含有量3.6〜4.5%)、TP−1002(NCO含有量3.6〜4.5%))が挙げられる。 また、エポリードPB−3000(ダイセル化学社製、エポキシ化ポリブタジエン)も挙げられる。
ポリブタジエンポリマーは上記一般式〔化1〕又は〔化2〕で表される構造を基本骨格とする高分子化合物であり、二重結合を内蔵しているのでその反応性を利用し、あるいはこれに対する各種薬品による反応により、上記の各種変性物を得ることができる。
例えば上記TEA−1000、TE−2000は下記〔化3〕、BN−1015は下記〔化4〕、BF−1000は下記〔化5〕、TP−1001、TP−1002は下記〔化6〕で示され、上記GQ−1000、GQ−2000は上記C−1000の空気酸化物で、分子内に−OH基、−COOH、−COOR(Rはアルキル基等)を有するものであり、 上記EPB−13、EPB−1054は上記C−1000とビスフェノール型エポキシ樹脂との反応物であるとされている(同社カタログ)。
【0018】
【化3】
【0019】
【化4】
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】
【0022】
この(B)成分のポリブタジエン系高分子化合物は、上記(A)成分の感光性樹脂100gに対し、通常0.5〜20gの割合で添加される。この添加量が少な過ぎるとプリント配線板に対して密着性の高い硬化塗膜を形成し難くなり、多くなり過ぎると感光性樹脂の塗布膜のタック性が大きくなり、露光用フィルムを当てがって露光した後にそのフィルムを離反させるときにスムーズに離反できず塗膜を損傷したり、その硬化膜の鉛筆硬度等の特性を低下させる恐れがある。
【0023】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記(A)成分、(B)成分のほかに、(C)光重合開始剤及び(D)希釈剤を混合して使用することにより、例えばプリント配線板製造用ソルダーレジスト組成物として好適に使用することができる。
「(C)光重合開始剤」としては、特に制限はなく、従来知られているものはいずれも使用できる。具体的には、代表的なものとしては例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインーnーブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2, 2− ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2− ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4− (2−ヒドロキシエトキシ) フェニル−2−(ヒドロキシ−2− プロピル) ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4, 4′ージエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2− ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、 2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられる。これらを単独または組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤の使用量は、上記感光性樹脂100gに対して、好ましくは0.2〜30g(0.2〜30質量%)である。少な過ぎると感光性樹脂の光硬化反応が進行し難くなり、多過ぎるとその加える量の割には効果は向上せず、むしろ経済的には不利となったり、硬化塗膜の機械的特性が低下することがある。光硬化性、経済性、硬化塗膜の機械的特性などの点からは、その使用量は、より好ましくは1〜15gである。
【0024】
上記「(D)希釈剤」は、光重合性モノマー及び有機溶剤の少なくとも1種からなり、光重合性モノマーは反応性希釈剤といわれるもので、これは上記(A)成分の感光性樹脂の光硬化を更に十分にして、耐酸性、耐熱性、耐アルカリ性などを有する塗膜を得るために使用するもので、1分子中に二重結合を少なくとも2個有する化合物が好ましく用いられる。上記(A)成分の感光性樹脂をが素する感光性樹脂の粘度や乾燥性を調節するために有機溶剤を用いてもよいが、その必要がなければ用いなくてもよく、また、上記(A)成分の感光性樹脂のみの光硬化性で足りる場合には光重合性モノマーを用いなくてもよい。
その光重合性モノマー(反応性希釈剤)の代表的なものとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の反応性希釈剤が挙げられる。
【0025】
上記の2〜6官能その他の多官能反応性希釈剤は単品又は複数の混合系のいずれにおいても使用可能である。この反応性希釈剤の添加量は、感光性樹脂100gに対して、2.0〜40gが好ましい。その添加量が少な過ぎる十分な光硬化が得られず、硬化塗膜の耐酸性、耐熱性等において十分な特性が得られず、また、多過ぎるとタックが激しく、露光の際アートワークフィルムの基板への付着が生じ易くなり、目的とする硬化塗膜が得られ難くなる。光硬化性、硬化塗膜の耐酸性、耐熱性等、アートワークフィルムの基板への付着の防止の点からは、反応性希釈剤の添加量は、感光性樹脂100gに対して、より好ましくは4.0〜30gである。
【0026】
上記の有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、などのアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類等を挙げることができる。
【0027】
上記「(E)熱硬化性化合物」は、本発明の感光性樹脂組成物において、その塗膜を露光し、現像した後のポストキュアー後において十分に強靭な塗膜(塗膜強度、耐熱性、耐久性、耐薬品性、耐環境性など)を得るために加えるものであり、エポキシ系熱硬化性化合物その他の熱硬化性化合物が挙げられるが、その感光性樹脂組成物において少なくともエポキシ系熱硬化性化合物を含有させることが好ましい。
このエポキシ系熱硬化性化合物の代表的なものとしては、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基、好ましくは2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(エポキシオリゴマーを含む)が好適であるがこれに限らない。例えばビスフェノールAとエピクロルヒドリンとをアルカリの存在下に反応させて得られたビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAとホルマリンとを縮合反応させて得られた樹脂のエポキシ化物、これらの樹脂において、ビスフェノールAの代わりにプロム化ビスフェノールAを用いたもの、ノボラック樹脂にエピクロルヒドリンを反応させてグリシジルエーテル化したノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型など)、ビスフェノールFやビスフェノールSにエポクロルヒドリンを反応させて得られたビスフェノールF型やビスフェノールS型エポキシ樹脂、さらにシクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する脂環式エポキシ樹脂、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−ヒドロキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノールなどのグリシジルアミン系樹脂、(プロピレン、ポリプロピレン)グリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1.6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、(エチレン、プロピレン)グリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル樹脂、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のトリアジン環を有するトリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。これらの熱硬化性化合物は単独で用いてもよいし、複数併用してもよい。
【0028】
上記エポキシ系熱硬化性化合物単独又はその他の熱硬化性化合物を併用する場合の使用量は、上記(A)成分の感光性樹脂100gに対し、5〜100gの割合で添加されることが好ましい。この添加量が少な過ぎるとポストキュアー後において、所望の物性を有する塗膜が得られないことがあるし、多過ぎると(A)成分の光硬化性が低下することがある。ポスキキュアー後の塗膜物性及び(A)成分の光硬化性などの点から、この熱硬化性化合物の添加量は、より好ましくは10〜70gである。
上記(A)〜(D)成分のほかに、エポキシ樹脂用硬化剤を使用することもできる。
その硬化剤としては、ジシアンジアミドの有機酸塩及びその誘導体のN−置換ジシアンジアミドの有機酸塩の少なくとも1種が挙げられる。N−置換ジシアンジアミドの置換基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐のいずれのアルキル基、アルキル基等の核置換基を有してもよいアリール基、アラルキル等が挙げられ、有機酸としては有機カルボン酸、有機リン酸、有機硫酸が挙げられる。これらの化合物は、常温では上記(D)成分の熱硬化性化合物と反応し難いが、加熱によって速やかに反応する、いわゆる潜在性熱硬化剤としての機能を有し、この潜在性熱硬化剤を適量含有する本発明の感光性樹脂組成物は、粘度安定性(ポットライフ)が長く、保存安定性に優れている。これらの化合物は少なくとも2種(2種以上)を組み合わせて用いてもよく、その含有量は、それ自体の活性水素当量及び上記(D)成分の熱硬化性化合物の含有量やオキシラン環の当量などに左右されるが、一般的には、上記(A)成分100g当たり、0.1〜10gの範囲で選ばれることが好ましい。この含有量が少な過ぎると熱硬化特性が十分に発揮されないおそれがあるし、多過ぎると本発明の感光性樹脂組成物のポットライフが短くなり易く、その塗膜のソルダーレジスト膜の特性低下の原因となることがある。熱硬化特性、組成物のポットライフ及びソルダーレジスト膜の特性などを考慮すると、硬化剤としての上記の化合物の含有量は、特に1〜8gの範囲が好ましい。なお、詳細は特願2000−277430号明細書に記載されており、上記以外の点も適用できる。
そのほかの硬化剤としては、上記の置換基を有するN−置換ジシアンジアミド等のジシアンジアミドの誘導体、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素−アミンコンプレックス、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)とその誘導体、メラミンとその誘導体、グアナミンとその誘導体、アミンイミド(AI)、ポリアミンの塩、アゾール類、フェノール化合物等が挙げられ、その使用量も上記に準じる。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記の成分のほかに、必要に応じて種々の添加剤、例えばシリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機顔料からなる充填剤、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系、アゾ系等の有機顔料や二酸化チタン等の無機顔料の公知の着色顔料、消泡剤、レベリング剤等の塗料用添加剤などを含有させることができる。
【0030】
上記(A)〜(E)、必要に応じてその他の成分が混合され、必要に応じて三本ロール、ボールミル、サンドミル等の混練手段、あるいスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の攪拌手段により混練蔦は混合され、本発明の感光性樹脂組成物が得られる。
上述のようにして得られた本発明の感光性樹脂組成物は、例えば銅張り積層板の銅箔をエッチングして形成した回路のパターンを有するプリント配線板に所望の厚さ、例えば5〜100μmの厚さで塗布される。塗工の手段としては、現在スクリーン印刷法による全面印刷が一般に多く用いられるが、これを含めて均一に塗工できる塗工手段であればどのような手段を用いてもよい。例えば、スプレーコーター、ホンメルトコーター、バーコータ、アプリケータ、ブレードコータ、ナイフコータ、エアナイフコータ、カーテンフローコータ、ロールコータ、グラビアコータ、オフセット印刷、ディップコータ、刷毛塗り、その他通常の方法は全て使用できる。
塗工後、必要に応じて熱風炉あるいは遠赤外線炉等でプリベークし、すなわち仮乾燥が行われ、塗膜の表面をタックフリーの状態にする。プリベークの温度は例えば50〜100℃程度が好ましい。
次に、活性エネルギー線を通さないようにしたネガマスクを用いて活性エネルギー線による露光が行われる。ネガマスクとしては活性エネルギー線が紫外線の場合にはネガフィルム、電子線の場合には金属性マスク、X線の場合には鉛性マスクがそれぞれ使用されるが、簡単なネガフィルムを使用できるためプリント配線板製造では活性エネルギー線として紫外線が多く用いられる。紫外線の照射量は例えば10〜1000mJ/cm2 である。
露光は、プリント配線板製造の場合は、例えば回路のパターンのはんだ付けランド以外は透光性にしたパターンのネガフィルムを密着させ、その上から紫外線を照射させることに行われるが、このはんだ付けランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することにより塗膜が現像される。この除去は未露光部分の溶解、膨潤、剥離等のいずれでもよい。この際使用される希アルカリ水溶液としては例えば0.5〜5%の炭酸ナトリウム水溶液が一般的であるが、他のアルカリも使用可能である。
次いで、熱硬化性化合物を含有する場合には、例えば130〜170℃の熱風炉又は遠赤外線炉等の乾燥機等で例えば20〜80分間加熱、あるいは紫外線照射することによりポストキュアーを行ない、これによりソルダーレジスト皮膜を形成せしめることができる。
このようにしてソルダーレジスト膜で被覆したプリント配線板が得られ、これに電子部品が噴流はんだ付け方法や、リフローはんだ付け方法によりはんだ付けされることにより接続、固定されて搭載され、一つの電子回路ユニットが形成される。
本発明においては、その電子部品搭載前のソルダーレジスト皮膜を被覆したプリント配線板、このプリント配線板に電子部品搭載した電子部品搭載後のプリント配線板のいずれをもその対象に含む。
【0031】
【実施例】
次ぎに、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
(上記(A)成分の感光性樹脂の製造例)
カルビトールアセテート392gに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、EOCN104S(エポキシ当量215))430g及びアクリル酸144gを溶解し、還流下に反応させてクレゾールノボラック型エポキシアクリレートを得た。次いで、このエホキシアクリレートにヘキサヒドロ無水フタル酸154gを加えて反応させ、感光性樹脂溶液を製造した。この得られた感光性樹脂溶液は、固形樹脂100質量部に対し、カルビトールアセテート50質量部を含む粘ちょうな液体であり、感光性樹脂の酸価は50mgKOH/gであった。
【0032】
(上記(A)〜(E)成分を含有する感光性樹脂組成物の製造)
実施例1
上記で得られた感光性樹脂(A)100gに、ポリブタジエンホモポリマー(日本曹達株式会社製、NISSO−PB B−2000)3.0g、2‐メチル‐1‐[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルフォリノ‐プロパン‐1‐オン 8.0g、トリメチロールプロパントリアクリレート 8.0g、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート 30g、フタロシアニングリーン 0.5g及びタルク 8.0gを3本ロールで混合分散させて、感光性樹脂組成物を調製した。
この組成物の塗膜のタック、感度及びポストキュアー後の塗膜性能を後述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0033】
実施例2
上記で得られた感光性樹脂(A)100gに、エポキシ化ポリブタジエン(ダイセル化学株式会社製、エポリードPB−3600)3.0g、2‐メチル‐1‐[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルフォリノ‐プロパン‐1‐オン 8.0g、トリメチロールプロパントリアクリレート 8.0g、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート 30g、フタロシアニングリーン 0.5g及びタルク 8.0gを3本ロールで混合分散させて、感光性樹脂組成物を調製した。
この組成物の塗膜のタック、感度及びポストキュアー後の塗膜性能を後述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0034】
実施例3
上記で得られた感光性樹脂(A)100gに、ポリブタジエンアクリレート(日本曹達株式会社製、NISSO−PB TE−2000)3.0g、2‐メチル‐1‐[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルフォリノ‐プロパン‐1‐オン 8.0g、トリメチロールプロパントリアクリレート 8.0g、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート 30g、フタロシアニングリーン 0.5g及びタルク 8.0gを3本ロールで混合分散させて、感光性樹脂組成物を調製した。
この組成物の塗膜のタック、感度及びポストキュアー後の塗膜性能を後述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0035】
比較例1
上記で得られた感光性樹脂(A)100gに、2‐メチル‐1‐[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルフォリノ‐プロパン‐1‐オン 8.0g、トリメチロールプロパントリアクリレート 16.0g、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート 30g、フタロシアニングリーン 0.5g及びタルク 8.0gを3本ロールで混合分散させて、感光性樹脂組成物を調製した。
この組成物の塗膜のタック、感度及びポストキュアー後の塗膜性能を後述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0036】
上記で得られた感光性樹脂組成物の塗膜のタック(指触乾燥)、感度及びポストキュア後の塗膜性能(耐金メッキ性、密着性、鉛筆硬度、耐酸性、耐溶剤性、はんだ耐熱性、電気特性)の評価方法は、以下のとおりである。
(I) タック(指触乾燥)
上記実施例1 、2、3、比較例1 のそれぞれの感光性樹脂組成物を回路パターン形成された銅箔付きの基板のその表面に全面塗布し、80℃で20分乾燥し、その塗膜上にネガフィルムを密着させ、露光後、ネガフィルムの張り付き痕の状態を目視し、以下の基準で判定した。
◎:塗膜表面にネガフィルムの張り付き痕がないもの
○:わずかに塗膜表面にネガフィルムの張り付き痕があるもの
△:塗膜表面の全面にネガフィルムの張り付き痕があるもの
×:塗膜が基板から剥離しネガフィルムに転写しているもの
(II) 感度
21段ステップタブレットをテスト板にしてスクリーン印刷法により、上記実施例1、2 、3、比較例1のそれぞれの感光性樹脂組成物を35μmの厚さ(乾燥前)に塗工し、乾燥させてそれぞれの塗工基板を作製し、200mJ/cm2 照射量で紫外線露光を行い、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用い、0.2MPa.sのスプレー圧で60秒現像を行い、塗工膜が完全に残った最大のステップ数で評価した。ステップ数が大きいほど感光特性が良好であることを示す。
【0037】
(II) 塗膜性能
予め面処理済みの基板(銅張り積層板)に、スクリーン印刷法により、上記実施例1、2、3、比較例1のそれぞれの感光性樹脂組成物を35μmの厚さ(乾燥前)に塗工してそれぞれの塗工基板を作製し、それぞれの塗工基板を80℃、20分間予備乾燥した。この基板にネガフィルムを密着させ、600mJ/cm2 の露光量で紫外線を照射して露光し、次いで1質量%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間現像してパターンを形成した。次に、この基板を150℃で60分熱硬化して、硬化塗膜を有する試験片を作製し、以下の塗膜性能の評価を行った。
(ii) 鉛筆硬度
JISK−54006.14に準拠して測定した。
(i)耐金めっき性
硬化塗膜を有する評価基板に金めっき加工後、セロハン粘着テープによるピーリング試験を行ない、レジスト層の剥がれ、変色について観察し、金めっき性を評価した。
◎:全く変化が認められないもの
○:ほんのわずか変化しているもの
△:顕著に変化しているもの
×:塗膜が膨潤して剥離したもの
(ii)密着性
JISD−0202に準拠して、碁盤目試験により測定した。変化ないものの数(個/100)で示す。
(iii)はんだ耐熱性
硬化塗膜を有する塗工基板を、JIS C 6481の試験方法に従って、260℃のはんだ槽に30秒浸漬後、セロハン粘着テープ( 商品名) によるピーリング試験を1サイクルとし、合計1〜3サイクルを行った後の塗膜状態を目視により以下の基準で評価した。
◎:3サイクル後も塗膜に変化がないもの
○:3サイクル後に僅かに変化しているもの
△:2サイクル後に変化しているもの
×:1サイクル後に剥離を生じるもの
(iv) 耐酸性
硬化塗膜を有する塗工基板を常温の10質量%の硫酸水溶液に30分間浸漬したのち、水洗後、セロハン粘着テープによるピーリング試験を行い、塗膜の剥がれ、変色について観察し、耐酸性を評価した。
◎:全く変化が認められないもの
○:ほんの僅かに変化したもの
△:顕著に変化しているもの
×:塗膜が膨潤して剥離したもの
(v) 耐溶剤性
硬化塗膜を有する塗工基板を常温の塩化メチレンに30分間浸漬したのち、水洗後、セロハン粘着テープによるピーリング試験を行い、塗膜の剥がれ,変色について目視し、以下き基準で耐溶剤性を評価した。
◎:全く変化が認められないもの
○:ほんの僅か変化しているもの
△:顕著に変化しているもの
×:塗膜が膨潤して剥離したもの
【0038】
(vi) 耐金メッキ特性
硬化塗膜を有する塗工基板に金メッキ加工後、セロハン粘着テープによるピーリング試験を行い、レジスト層の剥がれ、変色について目視し、以下き基準で評価した。
◎:全く変化が認められないもの
○:ほんの僅か変化しているもの
△:顕著に変化しているもの
×:塗膜が膨潤して剥離したもの
(vii) 電気特性(絶縁抵抗及び変色)
硬化塗膜にIPC−SM−840B B−25のくし型電極Bクーポンを置き、60℃、90%RH(相対湿度)の恒温恒湿槽中で100Vの直流電圧を印加し、500時間後の絶縁抵抗を測定するとともに、変色を目視により以下の基準で評価した。
◎:全く変色していないもの
○:薄く変色しているもの
△:顕著に変色しているもの
×:黒く焦げ付いているもの
【0039】
【表1】
【0040】
表1の結果から、実施例1、2、3のものは、比較例1のものに比べ、密着性、耐酸性及び耐金メッキ性が特に優れており、感度も優れ、その他の特性も同等か優れることがわかる。
なお、上述した発明において、「感光性樹脂組成物)」を「ソルダーレジスト用感光性樹脂組成物)」としてもよく、さらに「ソルダーレジスト膜を被覆したプリント配線板及びその製造方法」としてもよく、また、その他の上述した数値その他の限定、さらにはこれらの任意の複数を組み合わせた限定を加えた発明としてもよい。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、紫外線露光及び希アルカリ水溶液による現像により画像形成可能であって、密着性が良く、かつ耐酸性、耐メッキ性に優れ、しかも高感度、耐熱性、電気絶縁性及び耐薬品性に優れたパターンを与えることができる、例えばプリント配線板用ソルダーレジストとして好適な感光性樹脂組成物を提供することができる。
そして、例えばプリント配線板用ソルダーレジスト膜の硬化膜を有する電子部品搭載前又は後のプリント配線板を提供することができる。
【産業上の利用分野】
本発明は、紫外線露光及び希アルカリ水溶液による現像で画像形成可能であって、密着性、耐酸性、耐メッキ性に優れるとともに高感度であり、さらに電気絶縁性、はんだ耐熱性、耐薬品性等も従来品に劣らない、例えばプリント配線板用ソルダーレジストとして好適な感光性樹脂組成物及びこれを用いたプリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリント配線板は、基板の上に導体回路のパターンを形成し、そのパターンのはんだ付けランドに電子部品をはんだ付けすることにより搭載するためのものであり、そのはんだ付けランドを除く回路部分は永久保護皮膜としてのソルダーレジスト膜で被覆される。これにより、プリント配線板に電子部品をはんだ付けする際にはんだが不必要な部分に付着するのを防止すると共に、回路導体が空気に直接曝されて酸化や湿度により腐食されるのを防止する。
従来、ソルダーレジスト膜は、基板上にその溶液組成物をスクリーン印刷法でパターン形成し、溶剤を除く乾燥をした後、紫外線または熱により硬化させることが主流とされてきた。
【0003】
ところが、最近、プリント配線基板の配線密度の向上(細密化)の要求にともないソルダーレジスト組成物(ソルダーレジストインキ組成物ともいう)も高解像性、高精度化が要求され、民生用基板、産業用基板を問わずスクリーン印刷法から、位置精度、導体エッジ部の被覆性に優れる液状フォトソルダーレジスト法(写真現像法)が提案されている。例えば特開昭50ー144431号、特開昭51ー40451号公報には、ビスフェノール型エポキシアクリレート、増感剤、エポキシ化合物、エポキシ硬化剤などからなるソルダーレジスト組成物が開示されている。これらのソルダーレジスト組成物は、プリント配線板上に感光性樹脂組成物である液状組成物を全面塗布し、溶媒を揮発させた後、露光して未露光部分を有機溶剤を用いて除去し、現像するものである。
しかし、この有機溶剤による未露光部分の除去(現像)は、有機溶剤を多量に使用するため、環境汚染の問題や火災などの危険性があるのみならず、1,1,1−トリクロロエタン等の有機溶剤を使用する場合には、特に作業者の人体に与える影響が最近大きくクローズアップされてきていることから、その対策に苦慮しているのが現状である。
【0004】
これらの問題を解決するために、希アルカリ水溶液で現像可能なアルカリ現像型フォトソルダーレジスト組成物が提案されている。例えば特開昭56ー40329号、特開昭57ー45785号公報には、エポキシ樹脂に不飽和モノカルボン酸を反応させ、更に多塩基酸無水物を付加させた反応生成物をベースポリマーとする材料が開示されている。また、特公平1ー54390号公報には、ノボラック型エポキシ樹脂と不飽和モノカルボン酸との反応物と、飽和または不飽和多塩基酸無水物とを反応せしめて得られる活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤を含有する希アルカリ水溶液により現像可能な光硬化性の液状レジストインキ組成物が開示されている。
【0005】
これらの液状ソルダーレジスト組成物は、エポキシアクリレートにカルボキシル基を導入することによって、光感光性や希アルカリ水溶液での現像性を付与させたものであるが、この組成物にはさらに、その塗膜を露光、現像処理して所望のレジストパターンを形成した後、通常、熱硬化させるために、熱硬化性成分として、一般にエポキシ樹脂を含有させ、上記のエポキシアクリレートに導入した側鎖のカルボキシル基とエポキシ基とを反応させ、密着性、硬度、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などに優れるレジスト膜を形成させている。この場合一般に、エポキシ樹脂とともに、エボキシ樹脂用硬化剤が併用される。
【0006】
【特許文献1】
特公平1ー54390号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
基本的にはエポキシ化合物は、密着性の高い材料として知られているが、ソルダーレジストの熱硬化成分として使用した場合には、その他の感光性樹脂や、反応性希釈剤などと併用し、光硬化させた後熱硬化させて使用するので、プリント配線板の基材や導体からなる回路部分に対する密着性が十分とはいえない。
【0008】
本発明の第1の目的は、紫外線露光及び希アルカリ水溶液による現像により画像形成可能であって、密着性が良く、かつ耐酸性、耐メッキ性に優れ、しかも高感度、耐熱性、電気絶縁性及び耐薬品性に優れたパターンを与えることができる感光性樹脂組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、例えばプリント配線板用ソルダーレジストとして好適な感光性樹脂組成物を提供することにある。
本発明の第3の目的は、そのソルダーレジスト膜の硬化膜を有する電子部品搭載前又は後のプリント配線板を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、ポリブタジエン系高分子化合物を用いた感光性樹脂組成物の硬化膜は、プリント配線板の基材や導体に対する密着性や、耐酸性、耐金メッキ性が向上するとともに、希アルカリ水溶液による現像性に優れ、しかも感光特性が良好であり、耐現像性、耐熱性、耐薬品性及び電気絶縁性に優れた、特にプリント配線板製造用ソルダーレジストとして好適な感光性樹脂膜を提供することを見出し、本発明をするに至った。
本発明は、(1)、(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂、(B)ポリブタジエン系高分子化合物、(C)光重合開始剤、(D)希釈剤及び(E)熱硬化性化合物を含有する感光性樹脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、(2)、ポリブタジエン系高分子化合物が下記一般式〔化1〕及び〔化2〕で表される構造の少なくとも一方を基本骨格とするポリブタジエン系高分子化合物である上記(1)の感光性樹脂組成物、
【化1】
【化2】
(式中、m、nは1以上の整数を表わす。)
(3)、ポリブタジエン系高分子化合物が分子量1000〜6000のポリブタジエンポリマー及びその変性物の少なくとも1種であり、該ポリブタジエンポリマーはポリブタジエンホモポリマーであってもよく、該変性物はポリブタジエンポリマーの水素添加物、アクリル変性物、水酸化物、カルボン酸化物、マレイン化物、エポキシ化物、エポキシ樹脂化物、ボイル化物又はウレタン変性化物である上記(1)又は(2)の感光性樹脂組成物、上記(1)又は(2)又は(3)の硬化膜を有するソルダーレジスト膜を被覆した電子部品を搭載する前又はした後のプリント配線板を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明において、「(A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂」には、例えば分子中にエポキシ基を2個以上有する多官能エポキシ樹脂のエポキシ基の少なくとも一部にアクリル酸又はメタクリル酸等のラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させた後、生成した水酸基に多塩基酸無水物を反応させたものなどを挙げることができる。
【0011】
上記多官能性エポキシ樹脂としては、2官能以上のエポキシ樹脂であればいずれでも使用可能であり、エポキシ当量の制限は特にないが、通常1,000以下、好ましくは100〜500のものを用いる。
例えば、ビスフェノールA型、ビスフノールF型、ビスフェノールAD型等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂、о−クレゾールノボラック型等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族多官能エポキシ樹脂、グリシジルエステル型多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型多官能エポキシ樹脂、複素環式多官能エポキシ樹脂、ビスフェノール変性ノボラック型エポキシ樹脂、多官能変性ノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物型エポキシ樹脂等をあげることができる。また、これらの樹脂にBr,Cl等のハロゲン原子を導入したものなども挙げられる。これらの内でも耐熱性を考慮すると、ノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0012】
これらのエポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を反応させる。エポキシ基とカルボキシル基の反応によりエポキシ基が開裂し水酸基とエステル結合が生成する。使用するラジカル重合性不飽和モノカルボン酸としては、特に制限は無く、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸などがあるが、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方(以下、(メタ)アクリル酸ということがある。)が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応方法に特に制限は無く、例えばエポキシ樹脂とアクリル酸を適当な希釈剤中で加熱することにより反応できる。希釈剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、などのアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類等を挙げることができる。また触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミン類、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフェートなどのリン化合物類等を挙げることができる。
【0013】
上記のエポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の反応において、エポキシ樹脂が有するエポキシ基1当量あたりラジカル重合性不飽和モノカルボン酸を0.7〜1.2当量反応させる事が好ましい。アクリル酸又はメタクリル酸の少なくとも一方を用いるときは、さらに好ましくは0.8〜1.0当量加えて反応させる。ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が0.7当量未満であると、後続の工程の合成反応時にゲル化を起こすことがあったり、あるいは樹脂の安定性が低下する。また、ラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が過剰であると未反応のカルボン酸が多く残存するため、硬化物の諸特性(例えば耐水性等)を低下させる恐れがある。エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の反応は、加熱状態で行うのが好ましく、その反応温度は、80〜140℃である事が好ましい。反応温度が140℃を超えるとラジカル重合性不飽和モノカルボン酸が熱重合を起こし易くなり合成が困難になることがあり、また80℃未満では反応速度が遅くなり、実際の製造上好ましくないことがある。
エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の希釈剤中での反応においては、希釈剤の配合量が反応系の総重量に対して、20〜50%である事が好ましい。エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸の反応生成物は単離することなく、希釈剤の溶液のまま、次の多塩基酸類との反応に供する事ができる。
【0014】
上記エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応生成物である不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に、多塩基酸又はその無水物を反応させる。多塩基酸又はその無水物としては、特に制限は無く、飽和、不飽和のいずれも使用できる。このような多塩基酸としては、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、クエン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、3−メチルテトラヒドロフタル酸、4−メチルテトラヒドロフタル酸、3−エチルテトラヒドロフタル酸、4−エチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、3−メチルヘキサヒドロフタル酸、4−メチルヘキサヒドロフタル酸、3−エチルヘキサヒドロフタル酸、4−エチルヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びジグリコール酸等が挙げられ、多塩基酸無水物としてはこれらの無水物が挙げられる。これらの化合物は単独で使用することができ、また2種以上を混合してもよい。
多塩基酸又は多塩基酸無水物は、上記のエポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応で生成した水酸基に反応し、樹脂に遊離のカルボキシル基を持たせる。反応させようとする多塩基酸又は多塩基酸無水物の使用量は、エポキシ樹脂とラジカル重合性不飽和モノカルボン酸との反応生成物が有する水酸基1モルに対し0.3〜1.0モルである事が望ましい。露光時に高感度の樹脂膜が得られる点からは、好ましくは0.4〜1.0モル、さらに好ましくは0.6〜1.0モルの割合で反応させる。0.3モル未満であると得られた樹脂の希アルカリ現像性が低下することがあり、また1.0モルを超えると最終的に得られる硬化塗膜の諸特性(例えば耐水性等)を低下させることがある。
多塩基酸は、上記の不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂に添加され、脱水縮合反応され、反応時生成した水は反応系から連続的に取り出すことが好ましいが、その反応は加熱状態で行うのが好ましく、その反応温度は、70〜130℃である事が好ましい。反応温度が130℃を超えると、エポキシ樹脂に結合されたものや、未反応モノマーのラジカル重合性不飽和基が熱重合を起こし易くなり合成が困難になることがあり、また70℃以下では反応速度が遅くなり、実際の製造上好ましくないことがある。
上記の多塩基酸又は多塩基酸無水物と不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂との反応生成物である多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の酸価は、60〜300mgKOH/gが好ましい。反応させる多塩基酸の量により、反応生成物の酸価は調整できる。
【0015】
本発明においては、上記の多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂も感光性樹脂として使用できるが、上記の多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の有するカルボキシル基に、1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を持つグリシジル化合物を反応させることにより、ラジカル重合性不飽和基を更に導入し、さらに感光性を向上させた感光性樹脂とすることも好ましい。
この感光性を向上させた感光性樹脂は、最後のグリシジル化合物の反応によってラジカル重合性不飽和基が、その前駆体の感光性樹脂の高分子の骨格の側鎖に結合するため、光重合反応性が高く、優れた感光特性を持つことができる。1つ以上のラジカル重合性不飽和基とエポキシ基を持つ化合物としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレートモノグリシジルエーテル等が挙げられる。なお、グリシジル基は1分子中に複数有していてもよい。これらの化合物は単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。
上記グリシジル化合物は、上記の多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂の溶液に添加して反応させるが、その樹脂に導入したカルボキシル基1モルに対し、通常0.05〜0.5モルの割合で反応させる。得られる感光性樹脂を含有する感光性樹脂組成物の感光性(感度)や、上述した熱管理幅及び電気絶縁性等の電気特性などのことを考慮すると、好ましくは0.1〜0.5モルの割合で反応させるのが有利である。反応温度は80〜120℃が好ましい。このようにして得られるグリシジル化合物付加多塩基酸変性不飽和モノカルボン酸化エポキシ樹脂からなる感光性樹脂は酸価が45〜250mgKOH/gである事が好ましい。
【0016】
本発明において、「(B)ポリブタジエン系高分子化合物」とは、上記〔化1〕及び〔化2〕で表される構造の少なくとも一方を基本骨格するポリブタジエン系高分子化合物」が挙げられる。「一般〔化1〕及び〔化2〕で表される構造の少なくとも一方を基本骨格するポリブタジエン系高分子化合物」としては、ブタジエンを主とした重合体(他の重合成分を有してもよく上記〔化1〕、〔化2〕はブタジエンの重合成分についてまとめて示されている)及びその変性物であって、ポリブタジエンポリマー及びその変性物の少なくとも1種であり、そのポリブタジエンポリマーはポリブタジエンホモポリマーであってもよく、その変性物はポリブタジエンポリマーの水素添加物、アクリル変性化物、水酸化物、カルボン酸化物、マレイン化物、エポキシ化物(好ましくはエポキシ当量150〜800)、エポキシ樹脂化物、ボイル化物又はウレタン変性化物であってもよく、好ましくはいずれも分子量(GPC法)は6000より大きくなく(6000以下)、より好ましくは1000〜6000であり、これらは単独で使用してもよく、また、複数併用してもよい。分子量が小さ過ぎると、上記した密着性、耐酸性、耐金メッキ性が向上する程度が小さくなり、分子量が大き過ぎると感光性樹脂組成物の流動性が低くなり、塗布性も向上し難くなる。
【0017】
具体的には、ポリブタジエンポリマーとしては、例えばα,ω−ポリブタジエンホモポリマー(例えばNISSO PB B−1000、同B−2000、同B−3000(日本曹達株式会社製、以下括弧内は社名がないときは同社製品でNISSO PBは省略されている))、ポリブタジエンポリマーの変性物としては、例えば上記α,ω−ポリブタジエンホモポリマーの水素添加物(GI−1000、GI−2000、GI−3000、CI−1000、BI−1000、BI−2000、BI−3000)、ポリブタジエンポリマーの水酸化物としてのα,ω−ポリブタジエングリコール(G−1000、G−2000、G−3000)、ポリブタジエンポリマーのカルボン酸化物としてのα,ω−ポリブタジエンカルボン酸(C−1000)、ポリブタジエンポリマーのアクリル変性化物としてのポリブタジエンポリマーのアクリル変性物(TEA−1000、TE−2000、TEAI−1000、いずれも末端アクリル変性)、ポリブタジエンポリマーのマレイン化物(BN−1015(酸価130〜155KOHmg/g))、ポリブタジエンポリマーのエポキシ化物(BF−1000(エポキシ当量200〜240))、ポリブタジエンポリマーのエポキシ樹脂化物(EPB−13(エポキシ当量600〜780)、EPB−1054(エポキシ当量300〜400))、ポリブタジエンポリマーのボイル化物(GQ−1000(水酸基価45〜54KOHmg/g、酸価4〜8KOHmg/g)、GQ−2000(水酸基価38〜45KOHmg/g、酸価3〜6KOHmg/g))、ポリブタジエンポリマーのウレタン変性化物(TP−1001(NCO含有量3.6〜4.5%)、TP−1002(NCO含有量3.6〜4.5%))が挙げられる。 また、エポリードPB−3000(ダイセル化学社製、エポキシ化ポリブタジエン)も挙げられる。
ポリブタジエンポリマーは上記一般式〔化1〕又は〔化2〕で表される構造を基本骨格とする高分子化合物であり、二重結合を内蔵しているのでその反応性を利用し、あるいはこれに対する各種薬品による反応により、上記の各種変性物を得ることができる。
例えば上記TEA−1000、TE−2000は下記〔化3〕、BN−1015は下記〔化4〕、BF−1000は下記〔化5〕、TP−1001、TP−1002は下記〔化6〕で示され、上記GQ−1000、GQ−2000は上記C−1000の空気酸化物で、分子内に−OH基、−COOH、−COOR(Rはアルキル基等)を有するものであり、 上記EPB−13、EPB−1054は上記C−1000とビスフェノール型エポキシ樹脂との反応物であるとされている(同社カタログ)。
【0018】
【化3】
【0019】
【化4】
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】
【0022】
この(B)成分のポリブタジエン系高分子化合物は、上記(A)成分の感光性樹脂100gに対し、通常0.5〜20gの割合で添加される。この添加量が少な過ぎるとプリント配線板に対して密着性の高い硬化塗膜を形成し難くなり、多くなり過ぎると感光性樹脂の塗布膜のタック性が大きくなり、露光用フィルムを当てがって露光した後にそのフィルムを離反させるときにスムーズに離反できず塗膜を損傷したり、その硬化膜の鉛筆硬度等の特性を低下させる恐れがある。
【0023】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記(A)成分、(B)成分のほかに、(C)光重合開始剤及び(D)希釈剤を混合して使用することにより、例えばプリント配線板製造用ソルダーレジスト組成物として好適に使用することができる。
「(C)光重合開始剤」としては、特に制限はなく、従来知られているものはいずれも使用できる。具体的には、代表的なものとしては例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインーnーブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2, 2− ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2− ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4− (2−ヒドロキシエトキシ) フェニル−2−(ヒドロキシ−2− プロピル) ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4, 4′ージエチルアミノベンゾフェノン、ジクロルベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2− ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、 2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、P−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられる。これらを単独または組み合わせて用いることができる。
光重合開始剤の使用量は、上記感光性樹脂100gに対して、好ましくは0.2〜30g(0.2〜30質量%)である。少な過ぎると感光性樹脂の光硬化反応が進行し難くなり、多過ぎるとその加える量の割には効果は向上せず、むしろ経済的には不利となったり、硬化塗膜の機械的特性が低下することがある。光硬化性、経済性、硬化塗膜の機械的特性などの点からは、その使用量は、より好ましくは1〜15gである。
【0024】
上記「(D)希釈剤」は、光重合性モノマー及び有機溶剤の少なくとも1種からなり、光重合性モノマーは反応性希釈剤といわれるもので、これは上記(A)成分の感光性樹脂の光硬化を更に十分にして、耐酸性、耐熱性、耐アルカリ性などを有する塗膜を得るために使用するもので、1分子中に二重結合を少なくとも2個有する化合物が好ましく用いられる。上記(A)成分の感光性樹脂をが素する感光性樹脂の粘度や乾燥性を調節するために有機溶剤を用いてもよいが、その必要がなければ用いなくてもよく、また、上記(A)成分の感光性樹脂のみの光硬化性で足りる場合には光重合性モノマーを用いなくてもよい。
その光重合性モノマー(反応性希釈剤)の代表的なものとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性燐酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の反応性希釈剤が挙げられる。
【0025】
上記の2〜6官能その他の多官能反応性希釈剤は単品又は複数の混合系のいずれにおいても使用可能である。この反応性希釈剤の添加量は、感光性樹脂100gに対して、2.0〜40gが好ましい。その添加量が少な過ぎる十分な光硬化が得られず、硬化塗膜の耐酸性、耐熱性等において十分な特性が得られず、また、多過ぎるとタックが激しく、露光の際アートワークフィルムの基板への付着が生じ易くなり、目的とする硬化塗膜が得られ難くなる。光硬化性、硬化塗膜の耐酸性、耐熱性等、アートワークフィルムの基板への付着の防止の点からは、反応性希釈剤の添加量は、感光性樹脂100gに対して、より好ましくは4.0〜30gである。
【0026】
上記の有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メタノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、などのアルコール類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、石油エーテル、石油ナフサ等の石油系溶剤類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル類等を挙げることができる。
【0027】
上記「(E)熱硬化性化合物」は、本発明の感光性樹脂組成物において、その塗膜を露光し、現像した後のポストキュアー後において十分に強靭な塗膜(塗膜強度、耐熱性、耐久性、耐薬品性、耐環境性など)を得るために加えるものであり、エポキシ系熱硬化性化合物その他の熱硬化性化合物が挙げられるが、その感光性樹脂組成物において少なくともエポキシ系熱硬化性化合物を含有させることが好ましい。
このエポキシ系熱硬化性化合物の代表的なものとしては、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基、好ましくは2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(エポキシオリゴマーを含む)が好適であるがこれに限らない。例えばビスフェノールAとエピクロルヒドリンとをアルカリの存在下に反応させて得られたビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAとホルマリンとを縮合反応させて得られた樹脂のエポキシ化物、これらの樹脂において、ビスフェノールAの代わりにプロム化ビスフェノールAを用いたもの、ノボラック樹脂にエピクロルヒドリンを反応させてグリシジルエーテル化したノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、p−tert−ブチルフェノールノボラック型など)、ビスフェノールFやビスフェノールSにエポクロルヒドリンを反応させて得られたビスフェノールF型やビスフェノールS型エポキシ樹脂、さらにシクロヘキセンオキシド基、トリシクロデカンオキシド基、シクロペンテンオキシド基などを有する脂環式エポキシ樹脂、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−ヒドロキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノールなどのグリシジルアミン系樹脂、(プロピレン、ポリプロピレン)グリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1.6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、(エチレン、プロピレン)グリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル樹脂、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のトリアジン環を有するトリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。これらの熱硬化性化合物は単独で用いてもよいし、複数併用してもよい。
【0028】
上記エポキシ系熱硬化性化合物単独又はその他の熱硬化性化合物を併用する場合の使用量は、上記(A)成分の感光性樹脂100gに対し、5〜100gの割合で添加されることが好ましい。この添加量が少な過ぎるとポストキュアー後において、所望の物性を有する塗膜が得られないことがあるし、多過ぎると(A)成分の光硬化性が低下することがある。ポスキキュアー後の塗膜物性及び(A)成分の光硬化性などの点から、この熱硬化性化合物の添加量は、より好ましくは10〜70gである。
上記(A)〜(D)成分のほかに、エポキシ樹脂用硬化剤を使用することもできる。
その硬化剤としては、ジシアンジアミドの有機酸塩及びその誘導体のN−置換ジシアンジアミドの有機酸塩の少なくとも1種が挙げられる。N−置換ジシアンジアミドの置換基としては、炭素数1〜12の直鎖、分岐のいずれのアルキル基、アルキル基等の核置換基を有してもよいアリール基、アラルキル等が挙げられ、有機酸としては有機カルボン酸、有機リン酸、有機硫酸が挙げられる。これらの化合物は、常温では上記(D)成分の熱硬化性化合物と反応し難いが、加熱によって速やかに反応する、いわゆる潜在性熱硬化剤としての機能を有し、この潜在性熱硬化剤を適量含有する本発明の感光性樹脂組成物は、粘度安定性(ポットライフ)が長く、保存安定性に優れている。これらの化合物は少なくとも2種(2種以上)を組み合わせて用いてもよく、その含有量は、それ自体の活性水素当量及び上記(D)成分の熱硬化性化合物の含有量やオキシラン環の当量などに左右されるが、一般的には、上記(A)成分100g当たり、0.1〜10gの範囲で選ばれることが好ましい。この含有量が少な過ぎると熱硬化特性が十分に発揮されないおそれがあるし、多過ぎると本発明の感光性樹脂組成物のポットライフが短くなり易く、その塗膜のソルダーレジスト膜の特性低下の原因となることがある。熱硬化特性、組成物のポットライフ及びソルダーレジスト膜の特性などを考慮すると、硬化剤としての上記の化合物の含有量は、特に1〜8gの範囲が好ましい。なお、詳細は特願2000−277430号明細書に記載されており、上記以外の点も適用できる。
そのほかの硬化剤としては、上記の置換基を有するN−置換ジシアンジアミド等のジシアンジアミドの誘導体、ジシアンジアミド、三フッ化ホウ素−アミンコンプレックス、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル(DAMN)とその誘導体、メラミンとその誘導体、グアナミンとその誘導体、アミンイミド(AI)、ポリアミンの塩、アゾール類、フェノール化合物等が挙げられ、その使用量も上記に準じる。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記の成分のほかに、必要に応じて種々の添加剤、例えばシリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機顔料からなる充填剤、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー等のフタロシアニン系、アゾ系等の有機顔料や二酸化チタン等の無機顔料の公知の着色顔料、消泡剤、レベリング剤等の塗料用添加剤などを含有させることができる。
【0030】
上記(A)〜(E)、必要に応じてその他の成分が混合され、必要に応じて三本ロール、ボールミル、サンドミル等の混練手段、あるいスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の攪拌手段により混練蔦は混合され、本発明の感光性樹脂組成物が得られる。
上述のようにして得られた本発明の感光性樹脂組成物は、例えば銅張り積層板の銅箔をエッチングして形成した回路のパターンを有するプリント配線板に所望の厚さ、例えば5〜100μmの厚さで塗布される。塗工の手段としては、現在スクリーン印刷法による全面印刷が一般に多く用いられるが、これを含めて均一に塗工できる塗工手段であればどのような手段を用いてもよい。例えば、スプレーコーター、ホンメルトコーター、バーコータ、アプリケータ、ブレードコータ、ナイフコータ、エアナイフコータ、カーテンフローコータ、ロールコータ、グラビアコータ、オフセット印刷、ディップコータ、刷毛塗り、その他通常の方法は全て使用できる。
塗工後、必要に応じて熱風炉あるいは遠赤外線炉等でプリベークし、すなわち仮乾燥が行われ、塗膜の表面をタックフリーの状態にする。プリベークの温度は例えば50〜100℃程度が好ましい。
次に、活性エネルギー線を通さないようにしたネガマスクを用いて活性エネルギー線による露光が行われる。ネガマスクとしては活性エネルギー線が紫外線の場合にはネガフィルム、電子線の場合には金属性マスク、X線の場合には鉛性マスクがそれぞれ使用されるが、簡単なネガフィルムを使用できるためプリント配線板製造では活性エネルギー線として紫外線が多く用いられる。紫外線の照射量は例えば10〜1000mJ/cm2 である。
露光は、プリント配線板製造の場合は、例えば回路のパターンのはんだ付けランド以外は透光性にしたパターンのネガフィルムを密着させ、その上から紫外線を照射させることに行われるが、このはんだ付けランドに対応する非露光領域を希アルカリ水溶液で除去することにより塗膜が現像される。この除去は未露光部分の溶解、膨潤、剥離等のいずれでもよい。この際使用される希アルカリ水溶液としては例えば0.5〜5%の炭酸ナトリウム水溶液が一般的であるが、他のアルカリも使用可能である。
次いで、熱硬化性化合物を含有する場合には、例えば130〜170℃の熱風炉又は遠赤外線炉等の乾燥機等で例えば20〜80分間加熱、あるいは紫外線照射することによりポストキュアーを行ない、これによりソルダーレジスト皮膜を形成せしめることができる。
このようにしてソルダーレジスト膜で被覆したプリント配線板が得られ、これに電子部品が噴流はんだ付け方法や、リフローはんだ付け方法によりはんだ付けされることにより接続、固定されて搭載され、一つの電子回路ユニットが形成される。
本発明においては、その電子部品搭載前のソルダーレジスト皮膜を被覆したプリント配線板、このプリント配線板に電子部品搭載した電子部品搭載後のプリント配線板のいずれをもその対象に含む。
【0031】
【実施例】
次ぎに、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
(上記(A)成分の感光性樹脂の製造例)
カルビトールアセテート392gに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、EOCN104S(エポキシ当量215))430g及びアクリル酸144gを溶解し、還流下に反応させてクレゾールノボラック型エポキシアクリレートを得た。次いで、このエホキシアクリレートにヘキサヒドロ無水フタル酸154gを加えて反応させ、感光性樹脂溶液を製造した。この得られた感光性樹脂溶液は、固形樹脂100質量部に対し、カルビトールアセテート50質量部を含む粘ちょうな液体であり、感光性樹脂の酸価は50mgKOH/gであった。
【0032】
(上記(A)〜(E)成分を含有する感光性樹脂組成物の製造)
実施例1
上記で得られた感光性樹脂(A)100gに、ポリブタジエンホモポリマー(日本曹達株式会社製、NISSO−PB B−2000)3.0g、2‐メチル‐1‐[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルフォリノ‐プロパン‐1‐オン 8.0g、トリメチロールプロパントリアクリレート 8.0g、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート 30g、フタロシアニングリーン 0.5g及びタルク 8.0gを3本ロールで混合分散させて、感光性樹脂組成物を調製した。
この組成物の塗膜のタック、感度及びポストキュアー後の塗膜性能を後述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0033】
実施例2
上記で得られた感光性樹脂(A)100gに、エポキシ化ポリブタジエン(ダイセル化学株式会社製、エポリードPB−3600)3.0g、2‐メチル‐1‐[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルフォリノ‐プロパン‐1‐オン 8.0g、トリメチロールプロパントリアクリレート 8.0g、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート 30g、フタロシアニングリーン 0.5g及びタルク 8.0gを3本ロールで混合分散させて、感光性樹脂組成物を調製した。
この組成物の塗膜のタック、感度及びポストキュアー後の塗膜性能を後述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0034】
実施例3
上記で得られた感光性樹脂(A)100gに、ポリブタジエンアクリレート(日本曹達株式会社製、NISSO−PB TE−2000)3.0g、2‐メチル‐1‐[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルフォリノ‐プロパン‐1‐オン 8.0g、トリメチロールプロパントリアクリレート 8.0g、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート 30g、フタロシアニングリーン 0.5g及びタルク 8.0gを3本ロールで混合分散させて、感光性樹脂組成物を調製した。
この組成物の塗膜のタック、感度及びポストキュアー後の塗膜性能を後述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0035】
比較例1
上記で得られた感光性樹脂(A)100gに、2‐メチル‐1‐[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルフォリノ‐プロパン‐1‐オン 8.0g、トリメチロールプロパントリアクリレート 16.0g、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート 30g、フタロシアニングリーン 0.5g及びタルク 8.0gを3本ロールで混合分散させて、感光性樹脂組成物を調製した。
この組成物の塗膜のタック、感度及びポストキュアー後の塗膜性能を後述の方法により評価した結果を表1に示す。
【0036】
上記で得られた感光性樹脂組成物の塗膜のタック(指触乾燥)、感度及びポストキュア後の塗膜性能(耐金メッキ性、密着性、鉛筆硬度、耐酸性、耐溶剤性、はんだ耐熱性、電気特性)の評価方法は、以下のとおりである。
(I) タック(指触乾燥)
上記実施例1 、2、3、比較例1 のそれぞれの感光性樹脂組成物を回路パターン形成された銅箔付きの基板のその表面に全面塗布し、80℃で20分乾燥し、その塗膜上にネガフィルムを密着させ、露光後、ネガフィルムの張り付き痕の状態を目視し、以下の基準で判定した。
◎:塗膜表面にネガフィルムの張り付き痕がないもの
○:わずかに塗膜表面にネガフィルムの張り付き痕があるもの
△:塗膜表面の全面にネガフィルムの張り付き痕があるもの
×:塗膜が基板から剥離しネガフィルムに転写しているもの
(II) 感度
21段ステップタブレットをテスト板にしてスクリーン印刷法により、上記実施例1、2 、3、比較例1のそれぞれの感光性樹脂組成物を35μmの厚さ(乾燥前)に塗工し、乾燥させてそれぞれの塗工基板を作製し、200mJ/cm2 照射量で紫外線露光を行い、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液を用い、0.2MPa.sのスプレー圧で60秒現像を行い、塗工膜が完全に残った最大のステップ数で評価した。ステップ数が大きいほど感光特性が良好であることを示す。
【0037】
(II) 塗膜性能
予め面処理済みの基板(銅張り積層板)に、スクリーン印刷法により、上記実施例1、2、3、比較例1のそれぞれの感光性樹脂組成物を35μmの厚さ(乾燥前)に塗工してそれぞれの塗工基板を作製し、それぞれの塗工基板を80℃、20分間予備乾燥した。この基板にネガフィルムを密着させ、600mJ/cm2 の露光量で紫外線を照射して露光し、次いで1質量%炭酸ナトリウム水溶液で60秒間現像してパターンを形成した。次に、この基板を150℃で60分熱硬化して、硬化塗膜を有する試験片を作製し、以下の塗膜性能の評価を行った。
(ii) 鉛筆硬度
JISK−54006.14に準拠して測定した。
(i)耐金めっき性
硬化塗膜を有する評価基板に金めっき加工後、セロハン粘着テープによるピーリング試験を行ない、レジスト層の剥がれ、変色について観察し、金めっき性を評価した。
◎:全く変化が認められないもの
○:ほんのわずか変化しているもの
△:顕著に変化しているもの
×:塗膜が膨潤して剥離したもの
(ii)密着性
JISD−0202に準拠して、碁盤目試験により測定した。変化ないものの数(個/100)で示す。
(iii)はんだ耐熱性
硬化塗膜を有する塗工基板を、JIS C 6481の試験方法に従って、260℃のはんだ槽に30秒浸漬後、セロハン粘着テープ( 商品名) によるピーリング試験を1サイクルとし、合計1〜3サイクルを行った後の塗膜状態を目視により以下の基準で評価した。
◎:3サイクル後も塗膜に変化がないもの
○:3サイクル後に僅かに変化しているもの
△:2サイクル後に変化しているもの
×:1サイクル後に剥離を生じるもの
(iv) 耐酸性
硬化塗膜を有する塗工基板を常温の10質量%の硫酸水溶液に30分間浸漬したのち、水洗後、セロハン粘着テープによるピーリング試験を行い、塗膜の剥がれ、変色について観察し、耐酸性を評価した。
◎:全く変化が認められないもの
○:ほんの僅かに変化したもの
△:顕著に変化しているもの
×:塗膜が膨潤して剥離したもの
(v) 耐溶剤性
硬化塗膜を有する塗工基板を常温の塩化メチレンに30分間浸漬したのち、水洗後、セロハン粘着テープによるピーリング試験を行い、塗膜の剥がれ,変色について目視し、以下き基準で耐溶剤性を評価した。
◎:全く変化が認められないもの
○:ほんの僅か変化しているもの
△:顕著に変化しているもの
×:塗膜が膨潤して剥離したもの
【0038】
(vi) 耐金メッキ特性
硬化塗膜を有する塗工基板に金メッキ加工後、セロハン粘着テープによるピーリング試験を行い、レジスト層の剥がれ、変色について目視し、以下き基準で評価した。
◎:全く変化が認められないもの
○:ほんの僅か変化しているもの
△:顕著に変化しているもの
×:塗膜が膨潤して剥離したもの
(vii) 電気特性(絶縁抵抗及び変色)
硬化塗膜にIPC−SM−840B B−25のくし型電極Bクーポンを置き、60℃、90%RH(相対湿度)の恒温恒湿槽中で100Vの直流電圧を印加し、500時間後の絶縁抵抗を測定するとともに、変色を目視により以下の基準で評価した。
◎:全く変色していないもの
○:薄く変色しているもの
△:顕著に変色しているもの
×:黒く焦げ付いているもの
【0039】
【表1】
【0040】
表1の結果から、実施例1、2、3のものは、比較例1のものに比べ、密着性、耐酸性及び耐金メッキ性が特に優れており、感度も優れ、その他の特性も同等か優れることがわかる。
なお、上述した発明において、「感光性樹脂組成物)」を「ソルダーレジスト用感光性樹脂組成物)」としてもよく、さらに「ソルダーレジスト膜を被覆したプリント配線板及びその製造方法」としてもよく、また、その他の上述した数値その他の限定、さらにはこれらの任意の複数を組み合わせた限定を加えた発明としてもよい。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、紫外線露光及び希アルカリ水溶液による現像により画像形成可能であって、密着性が良く、かつ耐酸性、耐メッキ性に優れ、しかも高感度、耐熱性、電気絶縁性及び耐薬品性に優れたパターンを与えることができる、例えばプリント配線板用ソルダーレジストとして好適な感光性樹脂組成物を提供することができる。
そして、例えばプリント配線板用ソルダーレジスト膜の硬化膜を有する電子部品搭載前又は後のプリント配線板を提供することができる。
Claims (4)
- (A)1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂、(B)ポリブタジエン系高分子化合物、(C)光重合開始剤、(D)希釈剤及び(E)熱硬化性化合物を含有する感光性樹脂組成物。
- ポリブタジエン系高分子化合物が分子量1000〜6000のポリブタジエンポリマー及びその変性物の少なくとも1種であり、該ポリブタジエンポリマーはポリブタジエンホモポリマーであってもよく、該変性物はポリブタジエンポリマーの水素添加物、アクリル変性物、水酸化物、カルボン酸化物、マレイン化物、エポキシ化物、エポキシ樹脂化物、ボイル化物又はウレタン変性化物である請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
- 請求項1又は2又は3に記載の感光性樹脂組成物の硬化膜を有するソルダーレジスト膜を被覆した電子部品を搭載する前又はした後のプリント配線板。
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