JP4289833B2 - 米粉生地焼成食品、そのための米粉生地及びミックス粉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、米粉を主体とする生地を焼成したパン様食品、即ち、米粉生地焼成食品に関し、さらに、該米粉生地焼成食品を得るための米粉生地及びミックス粉に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、余剰米の有効利用手段として米の粉食化、特にパン様食品への使用が試みられており、また、米粉を含有するパン様食品はもっちりとした独特の食感と風味が得られることから嗜好の多様化への対応策としても試みられている。例えば、特許第2971193号公報、特公平7−100002号公報に米粉を含有するパン様食品が記載されている。
【0003】
しかしながら、このような米粉生地焼成食品は、通常のパンに比べてボリューム感、ふっくら感に欠ける、若しくはボリューム感、ふっくら感の持続性に欠けるものであった。
【0004】
一方、従来から、パンのボリューム感、ふっくら感を向上させるための各種の製パン改良剤が知られているが、米粉生地焼成食品に対して効果を有するものは知られていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、ボリューム感及びふっくら感の良好な米粉生地焼成食品、並びに該米粉生地焼成食品を得るための米粉生地及びミックス粉を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記に鑑み鋭意研究の結果、製パン改良剤を含有する油脂組成物、特に化工デンプンや糖分解酵素を含有する油脂組成物を米粉生地に含有させることで、ボリューム感及びふっくら感の良好な米粉生地焼成食品を得られることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
即ち、本発明は、製パン改良剤を含有する油脂組成物を含み、穀粉原料中の米粉含有量が50重量%以上であり、米粉100重量部及びバイタルグルテン5〜25重量部を含有し、製パン改良剤を含有する上記油脂組成物が、水で膨潤した化工デンプンのデンプン粒子が油脂中に分散している油脂組成物、又は、連続した油相中に、糖分解酵素を含まない水相若しくは水中油型乳化物と、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相若しくは水中油型乳化物とが、それぞれ独立して存在する乳化油脂組成物であり、上記乳化油脂組成物は、油相の配合量が40〜99.99重量%であり、糖分解酵素を含まない水相若しくは水中油型乳化物と、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相若しくは水中油型乳化物との合計配合量が0.01〜60.00重量%であり、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相若しくは水中油型乳化物の含有量は、上記乳化油脂組成物中、0.01〜5重量%であり、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相若しくは水中油型乳化物は、0.1〜40重量%の糖分解酵素、0.1〜50重量%の安定化物質、及び10〜90重量%の水からなることを特徴とする米粉生地を提供するものである。
また、本発明は、上記米粉生地を焼成したことを特徴とする米粉生地焼成食品を提供するものである。
また、本発明は、製パン改良剤を含有する油脂組成物を含み、穀粉原料中の米粉含有量が50重量%以上であり、米粉100重量部及びバイタルグルテン5〜25重量部を含有し、製パン改良剤を含有する上記油脂組成物が、水で膨潤した化工デンプンのデンプン粒子が油脂中に分散している油脂組成物、又は、連続した油相中に、糖分解酵素を含まない水相若しくは水中油型乳化物と、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相若しくは水中油型乳化物とが、それぞれ独立して存在する乳化油脂組成物であり、上記乳化油脂組成物は、油相の配合量が40〜99.99重量%であり、糖分解酵素を含まない水相若しくは水中油型乳化物と、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相若しくは水中油型乳化物との合計配合量が0.01〜60.00重量%であり、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相若しくは水中油型乳化物の含有量は、上記乳化油脂組成物中、0.01〜5重量%であり、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相若しくは水中油型乳化物は、0.1〜40重量%の糖分解酵素、0.1〜50重量%の安定化物質、及び10〜90重量%の水からなることを特徴とする米粉生地焼成食品製造用ミックス粉を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の米粉生地、米粉生地焼成食品及び米粉生地焼成食品製造用ミックス粉について詳しく説明する。
本発明に用いられる米粉は、特に限定されず、粳米の粉砕物でも、もち米の粉砕物でもよく、これらの混合物でもよいが、より優れた食感、外観、物性を得るため、好ましくは、原料となる米粒をマセレイティング酵素処理した後に粉砕した米粉を用いる。
【0009】
上記マセレイティング酵素処理とは、マセレイティング酵素を含有する水溶液に米粒を浸漬することにより、米の細胞壁組織成分を低分子化することである。
【0010】
米の細胞壁組織成分が低分子化されれば、マセレイティング酵素処理の程度は特に限定されないが、例えば、マセレイティング酵素を含有する20〜40℃の水溶液に、3〜18時間、好ましくは5〜12時間米粒を浸漬すればよい。尚、上記水溶液の温度が低いほど浸漬時間は比較的長く、上記水溶液の温度が高いほど浸漬時間は比較的短くするのがよく、例えば、20℃以上30℃未満では12時間程度、30℃以上35℃未満では8時間程度、35℃以上40℃以下では5時間程度がよい。
【0011】
マセレイティング酵素を含有する水溶液のpHは、マセレイティング酵素の至適pH範囲とすればよく、概ね3〜7であればよい。
【0012】
本発明において使用することのできるマセレイティング酵素としては、例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ等を挙げることができ、これらを単独若しくは複合して用いることができる。これらの中でも、ヘミセルラーゼ及び/又はペクチナーゼを用いることが工業化適性等の点で好ましい。
【0013】
マセレイティング酵素を含有する水溶液中におけるマセレイティング酵素の濃度は特に限定されるものではなく、米の細胞壁組織成分を低分子化できるように、上記水溶液の温度、浸漬時間、pH等を勘案して適宜選択すればよいが、例えば、ペクチナーゼであれば、概ね0.05〜0.5重量%で用いればよく、特に30℃の0.5重量%ペクチン液の粘度を90分後に40〜50%低下する程度の濃度が好ましい。他の酵素の場合においても基質を代えて同様に、例えば、セルラーゼやヘミセルラーゼであれば、CMCを基質として、上記のペクチナーゼの場合と同様にして好ましい濃度を求めることができる。
【0014】
本発明においては、上記米粉100重量部あたりバイタルグルテン5〜25重量部、好ましくは10〜20重量部を併用する。バイタルグルテンは活性グルテンとも称されている小麦由来の蛋白質であり、食品用途に使用可能なものであればどのようなものでも使用することができる。
【0015】
米粉に対してバイタルグルテンが少なすぎると、パン様食品としての好ましいボリュームを得ることができず、また、米粉を含有するパン様食品としてのもっちりとした独特の食感と風味が得られない。また、バイタルグルテンが多すぎると食感及び風味を損ない、外観及び内相もパン様食品とはかけ離れたものとなってしまう。
【0016】
本発明においては、生地に用いられる穀粉原料として、上記の米粉及びバイタルグルテンのみを使用することができるが、その他の穀粉原料、例えば小麦粉等を併用することもできる。但し、その他の穀粉原料を併用する場合でも、米粉を含有するパン様食品としてのもっちりとした独特の食感と風味を得るために、生地中の穀粉原料中の米粉含有量は50重量%以上、好ましくは60重量%以上とする。
【0017】
本発明の米粉生地においては、これらの穀粉原料に、製パン改良剤を含有する油脂組成物を配合する。製パン改良剤を含有する上記油脂組成物としては、水で膨潤した化工デンプンのデンプン粒子が油脂中に分散している油脂組成物、又は、連続した油相中に、糖分解酵素を含まない水相又は水中油型乳化物と、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相又は水中油型乳化物とが、それぞれ独立して存在する乳化油脂組成物を用いる。
【0018】
製パン改良剤を含有する上記油脂組成物は、米粉生地製造時に、練り込み油脂、折り込み油脂等として用いても良いし、或いはミックス粉を構成するよう穀粉原料等と混合して用いてもよい。
【0019】
水で膨潤した化工デンプンのデンプン粒子が油脂中に分散している油脂組成物(以下、単に「化工デンプン分散油脂」という)について以下に説明する。
上記化工デンプン分散油脂に用いられる油脂としては、特に限定されないが、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂、並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。上記化工デンプン分散油脂には、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0020】
上記化工デンプン分散油脂に用いられる化工デンプンとしては、特に限定されないが、生デンプンの表面構造を保持しており、その結果、酵素による分解を受けにくく、耐老化性を有し、しかも水膨潤力を有する化工デンプンであることが好ましい。上記性質を有するものであれば、市販のものも使用することができる。
【0021】
上記化工デンプンとしては、プロピレンオキサイドによるヒドロキシプロピルエーテル化処理及び酸架橋処理を施したデンプンを、生デンプンの表面構造を保持した状態になるようにアルファ化し、乾燥させたアルファ化変性デンプン及び/又は部分アルファ化デンプンが更に好ましい。デンプンにプロピレンオキサイドによるヒドロキシプロピルエーテル化処理及び酸架橋処理を施す方法としては、特に限定されず、従来公知のいかなる方法によっても実施することができる。
【0022】
上記化工デンプンの配合量は、化工デンプン分散油脂中、好ましくは0.3〜80重量%、更に好ましくは3〜50重量%である。化工デンプンの配合量が0.3重量%未満では、化工デンプンの添加による改良効果が十分ではない場合があり、一方、80重量%超では、化工デンプンが米粉生地中のグルテンを希釈しすぎてしまい、良質の米粉生地が製造できず、ひいては良質な米粉生地焼成食品ができなくなってしまう場合がある。
【0023】
上記化工デンプン分散油脂中においては、上記化工デンプンを水で膨潤させて用いる。上記化工デンプンを水で膨潤させるためには、例えば、粉体混合機中に化工デンプンの粉末を投入し、攪拌しながら水を噴霧すれば良く、また、上記加工デンプン分散油脂を製造する際、油脂中に化工デンプンを粉末のまま添加し、分散させ、該油脂に水を添加することにより、油脂中の化工デンプンを水で膨潤させても良い。
【0024】
上記化工デンプン分散油脂において、化工デンプンを膨潤させるのに用いられる水としては、特に限定されず、通常の水道水(市水)、ミネラルウォーター、イオン交換処理水、蒸留水等のいずれも用いることができる。また、水のpHや、塩濃度、糖濃度等の水分活性を調整したり、水に各種保存料を添加することによって、細菌やカビに対する安定性を向上させることも可能である。
【0025】
上記水の配合量は、化工デンプン100重量部に対し、好ましくは20〜500重量部、更に好ましくは22〜300重量部、最も好ましくは25〜200重量部である。水の配合量が20重量部未満では、化工デンプンが油脂中で吸水膨潤せず、化工デンプンの粒子が配合槽内や配管内に沈降し易く不都合が生じたり、油脂中に化工デンプンの硬い粒子が含まれるため、冷却可塑化する場合には、製造機内部の磨耗を早めてしまう等、種々の問題を生じる場合がある。一方、500重量部超では、化工デンプン分散油脂中の水分含量が高くなりすぎ、上記化工デンプンに保持できる水分量の限界を超えるため、いわゆる乳化物になってしまい、化工デンプン分散油脂の安定性が低下したり、水分離等の弊害が生じ易い。
【0026】
上記水の最大配合量は、化工デンプン分散油脂に使用する化工デンプンが有する最大保水量(吸水量)である。通常の化工デンプンの粉末には5〜15重量%程度の既存の水分が含まれるが、本発明における化工デンプン分散油脂においては、それだけの水分では不十分である。上記水の配合量は、その既存の水分を加味したものである。
【0027】
上記化工デンプン分散油脂においては、上記化工デンプンがデンプン粒子の表面状態を保持したまま、吸水膨潤した状態で油脂中に分散していることが必要である。こうすることにより、適度に吸水膨潤した化工デンプンのデンプン粒子が油脂によってコーティングされるため、上記加工デンプン分散油脂を生地に添加し混捏した時に、化工デンプンの急激な吸水が起こらず、通常の混捏条件によって生地中のグルテンが十分に吸水することができ、良好な米粉生地が形成される。
【0028】
上記化工デンプン分散油脂は、上記したように、水によって膨潤した化工デンプンのデンプン粒子を油脂中に包含させることによって、本発明の米粉生地の急激な吸水を制御している。しかし、最終製品である米粉生地焼成食品における化工デンプンの改良効果を発現させるため、上記化工デンプン分散油脂中の化工デンプンの添加量や、米粉生地中の上記化工デンプン分散油脂の添加量を増加させた場合、米粉生地中のタンパク質(グルテン)の濃度を低くしてしまい、生地混捏による正常なグルテン膜形成を阻害してしまう場合がある。
【0029】
このような影響を防止するために、本発明に使用する化工デンプン分散油脂には、タンパク質改良効果を有することによってグルテンを強化する乳化剤、グルテンを酸化することによって強固なグルテン膜を形成する酸化剤、及び適度にタンパク質等を分解することによってグルテン膜の伸びを改良する酵素からなる群より選ばれる1種以上を添加することができる。
【0030】
上記乳化剤としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン脂肪酸エステル(MG)、シュガーエステル(SE)、ソルビタンエステル(SOE)、プロピレングリコール脂肪酸エステル(PGME)、レシチン(LC)、モノグリセリド有機酸エステル (有機酸MG) 、ポリグリセリン脂肪酸エステル(PGE)、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(PGPR)、ステアロイル乳酸カルシウム(CSL)、ステアロイル乳酸ナトリウム(SSL)等が挙げられる。これらの乳化剤は、単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明においては、これらの中でも、SOE、PGE、CSL、SSL、有機酸MGを用いることが好ましく、特に有機酸MGを用いることが好ましい。上記有機酸MGの中でも、特に、コハク酸モノグリセリド(SMG)、乳酸モノグリセリド(LMG)、クエン酸モノグリセリド(CMG)、ジアセチル酒石酸モノグリセライド(DATEM)等が有効である。
【0031】
上記乳化剤の配合量は、化工デンプン分散油脂中、好ましくは0〜30重量%、更に好ましくは0〜20重量%、最も好ましくは0〜8重量%である。上記乳化剤の配合量が30重量%超では、最終製品である米粉生地焼成食品における風味の劣化や食感悪化等、乳化剤の悪影響が現れやすくなる場合がある。
【0032】
上記酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム等が挙げられる。これらの酸化剤は、単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。本発明においては、上記酸化剤の中でも、特に、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウムを用いることが好ましい。
【0033】
上記酸化剤の配合量は、化工デンプン分散油脂中、好ましくは0.001〜1重量%、更に好ましくは0.01〜0.5重量%である。上記酸化剤の配合量が0.001重量%未満では、酸化剤の添加による生地改良効果が現れず、一方、1重量%超では、酸化剤が過度に作用し、締まりすぎて硬くなった、作業性・品質の悪い生地を与える場合がある。
【0034】
上記酵素としては、特に限定されないが、例えば、α−アミラーゼ等のデンプン分解酵素類、ペプシン、パパイン等のタンパク質分解酵素類、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペントサナーゼ等の繊維質分解酵素類が挙げられる。これらの酵素は、単独で用いることもでき、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0035】
上記酵素の配合量は、化工デンプン分散油脂中、好ましくは0.0005〜0.2重量%、更に好ましくは0.001〜0.1重量%である。上記酵素の配合量が0.0005重量%未満では、酵素の添加による生地改良効果が現れず、一方、0.2重量%超では、酵素が過剰反応を起こし、生地のハンドリング及び最終製品である米粉生地焼成食品の品質に悪影響を及ぼしてしまう場合がある。
【0036】
本発明において使用される化工デンプン分散油脂には、酵素活性を安定化する等のため、必要に応じて、糖類、乳製品、香料、調味料等の呈味成分、色素類、酸化防止剤、pH調整剤等を添加することも可能である。
【0037】
本発明において使用される化工デンプン分散油脂は、常温で固体のものでも流動状のものでも良く、また可塑性を呈するように急冷可塑化したものでも良い。
【0038】
上記化工デンプンは、穀粉原料100重量部に対して、好ましくは0.1〜80重量部、更に好ましくは0.5〜50重量部、最も好ましくは1〜30重量部となるように使用される。
【0039】
上記乳化剤は、穀粉原料100重量部に対して、好ましくは0.01〜5重量部、更に好ましくは0.1〜3重量部、最も好ましくは0.5〜2重量部となるように使用される。
【0040】
上記酸化剤は、穀粉原料100重量部に対して、好ましくは0.00005〜0.1重量部、更に好ましくは0.0005〜0.05重量部、最も好ましくは0.001〜0.02重量部となるように使用される。ただし、冷凍生地のように、冷凍工程によってグルテンの劣化、酵母の死滅によるグルタチオン(強力な還元剤)生成等が起こる可能性のある生地に添加する場合は、穀粉原料100重量部に対して、好ましくは0.00015〜0.3重量部、更に好ましくは0.0015〜0.15重量部、最も好ましくは0.003〜0.06重量部となるように使用される。
【0041】
上記デンプン分解酵素類は、穀粉原料100g当たり、好ましくは0.001〜15単位、更に好ましくは0.005〜3単位、最も好ましくは0.02〜0.6単位となるように使用される。上記デンプン分解酵素類の活性力価を表す単位「単位」は、以下のように定義される。即ち、メルク社製可溶性デンプンを基質とし、pH4.7、温度37℃にて1時間反応させたときに、5.26gの基質を分解する酵素活性の量を1単位と定義する。
【0042】
上記タンパク質分解酵素類は、穀粉原料100g当たり、好ましくは0.08〜1500単位、更に好ましくは0.4〜250単位、最も好ましくは2〜50単位となるように使用される。上記タンパク質分解酵素類の活性力価を表す単位「単位」は、以下のように定義される。即ち、pH7.5のM/25リン酸緩衝液にて0.6重量%の濃度に希釈したミルクカゼイン5mlを基質とし、酵素溶液を1ml加えて30℃の温度にて10分間反応させたとき、1分間に1μgのチロシンに相当する、275nmにおいて吸光ピークを示すTCA可溶性成分を遊離する活性量を1単位と定義する。
【0043】
上記繊維質分解酵素類は、穀粉原料100g当たり、好ましくは0.002〜30単位、更に好ましくは0.01〜6単位、最も好ましくは0.05〜2単位となるように使用される。上記繊維質分解酵素類の活性力価を表す単位「単位」は、以下のように定義される。即ち、CMCを基質とし、pH4.8、温度40℃にて20分間反応させたときに、1分間当たり1μモルのグルコースに相当する還元糖を生成させる酵素活性量を1単位と定義する。
【0044】
上述の化工デンプン分散油脂における各成分の穀粉原料への好ましい添加量を考慮すると、化工デンプン分散油脂の穀粉原料への添加量は、穀粉原料100重量部に対し、好ましくは2〜40重量部、更に好ましくは5〜15重量部である。
【0045】
次に、本発明において、製パン改良剤を含有する油脂組成物として好ましく用いられる「連続した油相中に、糖分解酵素を含まない水相又は水中油型乳化物と、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相又は水中油型乳化物とが、それぞれ独立して存在する乳化油脂組成物」(以下単に「乳化油脂組成物」という)について説明する。
【0046】
上記乳化油脂組成物における連続した油相としては、油脂が用いられる。該油脂としては、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、綿実油、カカオ脂、乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の食用天然油脂、 該食用天然油脂に水素添加、分別及びエステル交換といった処理を1種又は2種以上施した食用加工油脂が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上を適宜選択して使用することができる。
【0047】
上記油脂の配合量は、乳化油脂組成物中、40〜99.99重量%、更に好ましくは50.0〜99.9重量%、更に一層好ましくは50.0〜90.0重量%である。油脂の配合量が40重量%より少ないと、安定な乳化油脂組成物が得られ難く、99.99重量%より多いと、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含有する水相又は水中油型乳化物を、乳化油脂組成物中に均質に分散させるのが難しくなるので好ましくない。
【0048】
本発明において使用される乳化油脂組成物における、糖分解酵素を含まない水相又は水中油型乳化物と、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相又は水中油型乳化物との合計配合量は、乳化油脂組成物中、0.01〜60.00重量%、更に好ましくは0.1〜30.0重量%、更に一層好ましくは0.1〜17.0重量%である。0.01重量%より少ないと、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相又は水中油型乳化物を、連続する油相中に分散させるのが難しくなるので好ましくなく、60.00重量%より多いと、連続した油相を有する乳化油脂組成物とするのが困難なので好ましくない。
【0049】
また、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相又は水中油型乳化物の含有量は、乳化油脂組成物中、0.01〜5重量%、更に好ましくは0.1〜5重量%、更に一層好ましくは0.1〜3重量%である。0.01重量%よりも少ないと、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相又は水中油型乳化物を、連続する油相中に均一に分散させるのが難しいので好ましくなく、5重量%よりも多いと、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相又は水中油型乳化物が、糖分解酵素を含まない水相又は水中油型乳化物と融合してしまい、独立して存在しなくなってしまうので好ましくない。
【0050】
乳化油脂組成物に使用される上記糖分解酵素としては、アミラーゼ、ヘミセルラーゼ等を挙げることができ、好ましくはα−アミラーゼを用いる。
【0051】
上記の糖分解酵素を安定化する安定化物質としては、食塩や塩化カリウム等の塩類、各種有機酸塩や各種リン酸塩等のpH調整剤、アスコルビン酸や還元性グルタチオン、システイン等の還元剤類、トコフェロールやローズマリー抽出物、BHA、BHT、t−BHQ、茶抽出物、ラクトフェリン等の酸化防止剤類、ブドウ糖や果糖、蔗糖、麦芽糖、酵素糖化水あめ、還元麦芽糖水あめ、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化糖、蔗糖結合水あめ、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、サイクロデキストリン等のポリオール類、アルカリ金属やアルカリ土類金属、遷移金属等の金属イオン類、EDTAやEGTA、縮合リン酸塩等のキレート剤類、エタノールやアセトン、ジメチルスルホキシド等の有機溶剤類、乳蛋白や魚肉蛋白、畜肉蛋白、血清蛋白、卵蛋白、小麦蛋白、ゼラチン等の蛋白類(タンパク質)、デンプンや化工デンプン、寒天、カラギーナン、ファーセレラン、アルギン酸塩、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム、ペクチン、アラビノガラクタン、プルラン、デキストラン、カードラン、セルロース、ヘミセルロース、キサンタンガム、マンナン等の増粘安定剤類等及びこれらの混合物が例示できるが、好ましくはアスコルビン酸、特に好ましくはL−アスコルビン酸を用いる。
【0052】
また、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相又は水中油型乳化物は、0.1〜40重量%、更に好ましくは1〜30重量%、更に一層好ましくは5〜30重量%の上記糖分解酵素、0.1〜50重量%、更に好ましくは1〜50重量%、更に一層好ましくは5〜50重量%の上記安定化物質、及び、10〜90重量%、更に好ましくは10〜70重量%、更に一層好ましくは10〜50重量%の水からなる。上記糖分解酵素が0.1重量%よりも少ないと、糖分解酵素による効果が発揮されないので好ましくなく、40重量%よりも多いと、糖分解酵素が安定化されないので好ましくない。上記安定化物質が0.1重量%よりも少ないと、糖分解酵素の安定化が不十分となるので好ましくなく、50重量%よりも多いと、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相又は水中油型乳化物が連続する油相に均一に分散しないので好ましくない。水が10重量%よりも少ないと、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相又は水中油型乳化物が連続する油相に均一に分散しないので好ましくなく、90重量%よりも多いと、安定化物質の濃度が低くなるため、糖分解酵素を安定化することができなくなるので好ましくない。
【0053】
このような糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相とは、水と、油分を含んでいない糖分解酵素や油分を含んでいない安定化物質とで構成されている場合であり、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水中油型乳化物とは、水と、油分を含む糖分解酵素や油分を含む酸化防止剤等の安定化物質とを使用して水中油型に構成されている場合である。
【0054】
同様に、糖分解酵素を含まない水相とは、水と、油分を含んでいない成分とで構成されている場合であり、糖分解酵素を含まない水中油型乳化物とは、水と、牛乳や生クリーム等の油分を含む成分とを使用して水中油型に構成されている場合である。
【0055】
上記乳化油脂組成物における、上記油相、及び上記糖分解酵素を含まない水相又は水中油型乳化物には、必要に応じて、上記糖分解酵素以外の添加物や食品素材を配合することができる。該添加物及び食品素材としては、例えば、食用乳化剤、膨張剤、酸味料、ステビア等の甘味料、果実、果汁、ナッツ類や果実類のペースト、旨味調味料、酸化防止剤、着色料、酒類、醗酵風味料、香料、保存料、穀類、豆類、野菜類、魚介類、肉類等が挙げられ、これらを単独若しくは混合物として、本発明の効果を損なわない範囲内で配合することができる。
【0056】
また、上記乳化油脂組成物は、必要に応じて、製造後又は製造中、窒素、ヘリウム等の不活性ガスで脱気させてもよい。
【0057】
次に、上記乳化油脂組成物の製造方法の好ましい例について説明する。溶融した油脂に必要に応じて油溶性物質を添加した油相に、水に必要に応じて水溶性物質を添加した糖分解酵素を含まない水相又は水中油型乳化物を加え、乳化する。この時、ホモミキサー、ホゲナイザー、コロイドミル等を使用したり、ポンプで循環させながら乳化及び均質化することもできる。次いで、殺菌処理を施した後、又は殺菌処理をせずに冷却する。冷却は、ダイヤクーラーとコンプレクターとの組み合わせ、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター、コンサーム等のマーガリン製造機やプレート式熱交換機で急冷したり、他の手段で、使用する上記油脂の融点より10〜30℃低い温度まで冷却する。このときの乳化油脂の状態としては、糖分解酵素を含んでいない水相又は水中油型乳化物の回りに存在する油脂中の高融点成分が固形化していて、油脂中の低融点成分が半固形状又は液状の過冷却状態である。上記乳化油脂がこの状態となっているときに、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相又は水中油型乳化物を該乳化油脂に添加し、均質になる程度でできるだけ弱く混合し静置することによって上記乳化油脂組成物を得る。
【0058】
上記乳化油脂組成物中の糖分解酵素は、穀粉原料100重量部に対して、好ましくは0.00001〜1.0重量部、更に好ましくは0.0001〜0.8重量部、最も好ましくは0.003〜0.4重量部となるように使用される。
【0059】
上記乳化油脂組成物の穀粉原料への添加量は、穀粉原料100重量部に対し、好ましくは1〜30重量部、更に好ましくは5〜15重量部である。
【0060】
本発明の米粉生地は、穀粉原料として上記米粉、バイタルグルテン及び必要に応じて小麦粉等のその他の穀粉原料、並びに上述した製パン改良剤を含有する油脂組成物を含有するものであるが、該生地にはこれらの穀粉原料及び油脂組成物以外に、パンの製造に通常使用される、油脂、イースト及び/又は化学膨張剤(ベーキングパウダー)、水、食塩、その他の原料を、本発明の効果を阻害しない範囲で任意に使用することができる。
【0061】
上記油脂としては、マーガリンやショートニング、バター等の可塑性を有する油脂が挙げられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができるが、上述の油脂組成物からの油脂の量を考慮してその使用量を選択することが良い。
これら油脂は合計で、穀粉原料100重量部に対して、好ましくは2〜30重量部、さらに好ましくは5〜15重量部用いるのがよい。
【0062】
上記イーストとしては、ドライイースト、生イースト、冷蔵パン用イースト、冷凍パン用イースト等が挙げられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記イーストは、穀粉原料100重量部に対して、好ましくは、生イーストであれば2〜6重量部、特に2〜4重量部、ドライイーストであれば0.2〜2.0重量部、特に0.5〜1.5重量部用いる。
【0063】
上記化学膨張剤としては、ベーカリー製品用のベーキングパウダーとして使用可能なものであればどのようなものでも良く、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、明礬等、又は、これらにフマル酸、グルコノデルタラクトン、酒石酸、酒石酸水素カリウム、酸性ピロリン酸ナトリウム等の酸性剤が添加されてなるもの等を挙げることができる。
上記化学膨張剤は、穀粉原料100重量部に対して、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1〜5重量部用いる。
【0064】
上記水は、穀粉原料100重量部に対して、好ましくは50〜80重量部、さらに好ましくは58〜75重量部用いるのがよい。この水は天然水や水道水の他、牛乳、乳製品、卵類等、水分を含む食品に由来するものであってもよい。
【0065】
上記食塩としては、精製塩、天然塩、自然塩等が挙げられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記食塩は、穀粉原料100重量部に対して、好ましくは0.5〜2.2重量部、さらに好ましくは0.8〜2.0重量部用いるのがよい。
【0066】
その他の原料としては、例えば、糖類、デンプン、卵類、キサンタンガム・アルギン酸ナトリウム・グアーガム・ローカストビーンガム・カラギーナン・アラビアガム・ペクチン・プルラン・タマリンドシードガム・結晶セルロース・カルボキシメチルセルロース・メチルセルロース・寒天・グルコマンナン・ゼラチン・ファーセルラン・タラガム・カラヤガム、トラガントガム・ジェランガム・大豆多糖類等の増粘安定剤、β−カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロール・茶抽出物等の酸化防止剤、デキストリン、アルコール類、グリセリン脂肪酸エステル・グリセリン酢酸脂肪酸エステル・グリセリン乳酸脂肪酸エステル・グリセリンコハク酸脂肪酸エステル・グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル・ソルビタン脂肪酸エステル・ショ糖脂肪酸エステル・ショ糖酢酸イソ酪酸エステル・ポリグリセリン脂肪酸エステル・ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル・プロピレングリコール脂肪酸エステル・ステアロイル乳酸カルシウム・ステアロイル乳酸ナトリウム・ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート・ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド・レシチン等の乳化剤、無機塩類、イーストフード、ハーブ、豆類、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、保存料、苦味料、酸味料、pH調整剤、日持ち向上剤、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、調味料、香辛料、香料、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材、コンソメ、ブイヨン、植物及び動物エキス、食品添加物等を挙げることができ、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができる。
【0067】
上記糖類としては、例えば、上白糖、グラニュー糖、粉糖、ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、蔗糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、トレハロース、キシロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、ステビア、アスパルテーム、はちみつ等が挙げられる。本発明では、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。上記糖類は、穀粉原料100重量部に対して、好ましくは3〜10重量部、さらに好ましくは3〜7重量部用いる。
【0068】
上記デンプンとしては、コーン・ワキシーコーン・タピオカ・馬鈴薯・甘藷・小麦・米等のデンプンや、これらのデンプンをアミラーゼ等の酵素で処理したものや、酸やアルカリ、エステル化、リン酸架橋化、加熱、湿熱等の物理的、化学的処理を行ったもの、更にこれらのデンプンを、水に溶解しやすい様にあらかじめ加熱処理により糊化させたものが挙げられる。
【0069】
上記卵類としては、全卵、卵黄、加糖全卵、加糖卵黄、乾燥全卵、乾燥卵黄、凍結全卵、凍結加糖全卵、凍結卵黄、凍結加糖卵黄、酵素処理全卵、酵素処理卵黄等が挙げられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0070】
本発明においては、上述の原料を用いて通常のパン生地を製造するのと同様にして米粉生地を得ればよい。例えば、穀粉原料、上記油脂組成物、及びその他の原料を混合して常法により混捏して米粉生地を得ることができ、油脂組成物は、最初から穀粉原料及びその他の原料と混合されても良いし、一旦油脂組成物以外の原料を混合してある程度混捏したところで油脂組成物を混合して更に混捏してもよい。また、米粉生地は、中種法によって得ても良いし、直捏法によって得ても良い。
【0071】
得られた米粉生地は、焼成前に発酵により膨張させることが好ましい。発酵は、上述したイーストを用いて行なうことが好ましい。発酵条件は、例えば、フロアタイム20〜30℃で0〜80分、ベンチタイム20〜30℃で0〜40分、ホイロ30〜40℃で40〜120分、程度とすればよい。米粉生地を発酵させる場合は、生地温度が低くても発酵が十分に促進されるように、必要に応じて、イーストの添加量を増やしたり、各発酵時間を延長することができる。
【0072】
得られた米粉生地を通常のパンを得るのと同様に焼成することにより、本発明の米粉生地焼成食品を得ることができる。焼成条件は、例えば、150〜230℃で10〜70分程度の範囲で、米粉生地の大きさ、形態等に合わせて選択すればよい。
【0073】
また、本発明においては、上述の米粉生地の原料を用いて、通常のパン製造用ミックス粉を得るのと同様にして、米粉生地焼成食品製造用ミックス粉を得ることができる。該米粉生地焼成食品製造用ミックス粉の製造方法としては、例えば、穀粉原料、上記油脂組成物、及びその他の原料を混合して得ることができる。但し、その他の原料としては、水を除く。尚、上記油脂組成物が乳化油脂組成物である場合、これに含まれる水分についてはこの限りではない。
【0074】
【実施例】
以下、実施例をもって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等制限を受けるものではない。
〔実施例1〕
ナタネ硬化油(融点35℃)70重量部及びナタネ白絞油30重量部を均一に混合し60℃に保温し、これに水25重量部及びグリセリン脂肪酸エステル1重量部を添加し、次いでα化変性デンプン(5重量倍の水の保持力を有し、吸水後もデンプン粒子の表面状態を保持するもの)20重量部を分散させた後、コンビネーターを用いて急冷可塑化を行い、油脂組成物(1)を得た。
一方、精白米100重量部を25℃の0.1重量%ペクチナーゼ水溶液(pH6.8)に12時間浸漬して得た酵素処理米を製粉し、米粉(1)を得た。
米粉(1)85重量部、バイタルグルテン15重量部、生イースト3重量部、イーストフード0.1重量部、砂糖5重量部、食塩1.8重量部、脱脂粉乳2重量部、水75重量部及び油脂組成物(1)5重量部を混合して混捏した。混捏条件は、100rpmで4分、次いで200rpmで12分とし、捏ね上げ温度は26℃であった。この生地450gをワンローフ型に成型し、ホイロ35℃で80分とした後、210℃で30分焼成し、食パン様の米粉生地焼成食品(1)を得た。
米粉生地焼成食品(1)は、小麦粉を原料とする従来の食パンと同様のボリューム感及びふっくら感を有しているとともに、独特のもっちりとした食感及び風味を有する良好なものであった。また、これらの良好な食感及び風味の持続性も良好なものであった。
【0075】
〔実施例2〕
パーム油(融点36℃)82.8重量部及び飽和モノグリセライド0.1重量部を混合槽に入れ、60℃に調温して均一に溶解させ、次いで45℃に調温して油相(1)を調製した。次に、牛乳(水分88重量%)16.6重量部を上記油相(1)に添加し、均一に攪拌混合し乳化した。そして、これをマーガリン製造機で急冷混和し、15℃まで冷却して乳化物(1)とした。
次に、水0.39重量部、α−アミラーゼ0.01重量部及びL−アスコルビン酸0.1重量部を混合して調製した水相を、上記乳化物(1)に加え、縦型ミキサーで均一に混合し、乳化油脂組成物(1)を得た。
実施例1で用いた油脂組成物(1)5重量部に換えて、上記乳化油脂組成物(1)5重量部を用いた他は実施例1と同様にして米粉生地焼成食品(2)を得た。
米粉生地焼成食品(2)は、小麦粉を原料とする従来の食パンと同様のボリューム感及びふっくら感を有しているとともに、独特のもっちりとした食感及び風味を有する良好なものであった。また、これらの良好な食感及び風味の持続性も良好なものであった。
【0076】
〔実施例3〕
実施例1で用いた米粉(1)85重量部、バイタルグルテン15重量部、砂糖12重量部、食塩1.8重量部、脱脂粉乳4重量部、乾燥全卵2重量部、及び実施例1で用いた油脂組成物(1)6重量部をミキサーに全て投入し、低速で攪拌して米粉生地焼成食品製造用ミックス粉(1)を得た。
米粉生地焼成食品製造用ミックス粉(1)100重量部に対し、生イースト3重量部及び水75重量部を添加して混捏した。混捏条件は、100rpmで3分、次いで320rpmで12分とし、捏ね上げ温度は26℃であった。この生地450gを再丸め成型し、ホイロ35℃で80分とした後、200℃で40分焼成し、食パン様の米粉生地焼成食品(3)を得た。
米粉生地焼成食品(3)は、小麦粉を原料とする従来の食パンと同様のボリューム感及びふっくら感を有しているとともに、独特のもっちりとした食感及び風味を有する良好なものであった。また、これらの良好な食感及び風味の持続性も良好なものであった。
【0077】
〔実施例4〕
実施例3で用いた油脂組成物(1)6重量部に換えて、実施例2で用いた乳化油脂組成物(1)6重量部を用いた他は実施例3と同様にして米粉生地焼成食品(4)を得た。
米粉生地焼成食品(4)は、小麦粉を原料とする従来の食パンと同様のボリューム感及びふっくら感を有しているとともに、独特のもっちりとした食感及び風味を有する良好なものであった。また、これらの良好な食感及び風味の持続性も良好なものであった。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、ボリューム感及びふっくら感の良好な米粉生地焼成食品、並びに該米粉生地焼成食品を得るための米粉生地及びミックス粉を得ることができる。
Claims (3)
- 製パン改良剤を含有する油脂組成物を含み、穀粉原料中の米粉含有量が50重量%以上であり、米粉100重量部及びバイタルグルテン5〜25重量部を含有し、
製パン改良剤を含有する上記油脂組成物が、水で膨潤した化工デンプンのデンプン粒子が油脂中に分散している油脂組成物、又は、連続した油相中に、糖分解酵素を含まない水相若しくは水中油型乳化物と、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相若しくは水中油型乳化物とが、それぞれ独立して存在する乳化油脂組成物であり、
上記乳化油脂組成物は、油相の配合量が40〜99.99重量%であり、糖分解酵素を含まない水相若しくは水中油型乳化物と、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相若しくは水中油型乳化物との合計配合量が0.01〜60.00重量%であり、
糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相若しくは水中油型乳化物の含有量は、上記乳化油脂組成物中、0.01〜5重量%であり、
糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相若しくは水中油型乳化物は、0.1〜40重量%の糖分解酵素、0.1〜50重量%の安定化物質、及び10〜90重量%の水からなることを特徴とする米粉生地。 - 請求項1記載の米粉生地を焼成したことを特徴とする米粉生地焼成食品。
- 製パン改良剤を含有する油脂組成物を含み、穀粉原料中の米粉含有量が50重量%以上であり、米粉100重量部及びバイタルグルテン5〜25重量部を含有し、
製パン改良剤を含有する上記油脂組成物が、水で膨潤した化工デンプンのデンプン粒子が油脂中に分散している油脂組成物、又は、連続した油相中に、糖分解酵素を含まない水相若しくは水中油型乳化物と、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相若しくは水中油型乳化物とが、それぞれ独立して存在する乳化油脂組成物であり、
上記乳化油脂組成物は、油相の配合量が40〜99.99重量%であり、糖分解酵素を含まない水相若しくは水中油型乳化物と、糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相若しくは水中油型乳化物との合計配合量が0.01〜60.00重量%であり、
糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相若しくは水中油型乳化物の含有量は、上記乳化油脂組成物中、0.01〜5重量%であり、
糖分解酵素及びこれを安定化する安定化物質を含む水相若しくは水中油型乳化物は、0.1〜40重量%の糖分解酵素、0.1〜50重量%の安定化物質、及び10〜90重量%の水からなることを特徴とする米粉生地焼成食品製造用ミックス粉。
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