JP5875220B2 - ベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物 - Google Patents
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Description
また、本発明は、該ベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物をベーカリー生地中に練込んでなる、ベーカリー生地の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、該ベーカリー生地の製造方法により得られたベーカリー生地を加熱してなるベーカリー製品の製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、水不溶性且つ水膨潤性の食物繊維として、グルコース単位当たりのカルボキシメチルエーテル基置換度が0.01〜0.4であるカルボキシメチルセルロースを水相中に0.5〜5質量%(水相基準)含有する水中油型乳化油脂組成物を、澱粉類含有生地に練込使用することを特徴とするベーカリー製品の品質改良方法を提供するものである。
よく知られているように、食物繊維とは、栄養学的に「ヒトの消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」と定義され、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分類される。水溶性食物繊維としては、ポリデキストロース、アルギン酸、アルギン酸塩、ペクチン、グルコマンナン、アガロース(寒天)、キサンタンガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グアーガム、難消化性デキストリン等が代表的であり、また、不溶性食物繊維としては、小麦フスマ、セルロース、リグニン、キチン、キトサン、ヘミセルロース、穀物ファイバー、果実ファイバー等が代表的である。
これらの乳蛋白質は、1種で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物は、水不溶性且つ水膨潤性の食物繊維を水相中に0.5〜5質量%(水相基準)含有する水相と、油相を用意し、該水相と該油相とを水中油型に乳化することによって得ることができる。本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物において、水相と油相との質量比率(水相:油相)は、40〜95:60〜5であることが好ましい(尚、この比率は水相と油相との合計で100となるようにする)。
次いで、この予備乳化物を殺菌することが好ましい。尚、本発明における殺菌には滅菌を含む。該殺菌は、インジェクション式、インフージョン式等の直接加熱方式、あるいはプレート式・チューブラー式・掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT・HTST・バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌もしくは加熱殺菌処理、あるいは直火等の加熱調理により行うことができる。そして冷却することにより、本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物が得られる。
尚、本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物は、必要により、冷蔵もしくは冷凍状態で保存しても良い。
本発明のベーカリー生地は、上記の本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物を練込んでなるものであり、従来の保水剤を使用したベーカリー生地が、保水剤の2〜14倍量の吸水量の増加しかできなかったのに対し、使用する食物繊維の例えば20〜200倍、好ましくは30〜100倍の吸水量の増加が可能となるものである。
そのため、吸水量が同一である場合、本発明で使用する食物繊維を直接ベーカリー生地に添加使用する場合に比べ、ベーカリー生地に使用する澱粉100質量部あたりの食物繊維の添加量を減少させることができ、結果として、ソフトでしっとりしていながら、ねちゃつきがない食感のベーカリー製品を得ることができるのである。
そのため、ベーカリー生地に使用する澱粉100質量部あたりの食物繊維の添加量が同一である場合、本発明で使用する食物繊維を直接ベーカリー生地に添加使用する場合に比べ、吸水量を更に大きく増加させることができ、結果として、さらにソフトでしっとりしていながら、ねちゃつきがない食感のベーカリー製品を得ることができるのである。
本発明のベーカリー生地は、ベーカリー生地製造の際に、上記の本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物をベーカリー生地中に均質に練込むことによって得ることができ、上記の本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物を使用する以外は、一般的なベーカリー生地の製造方法によって得ることができる。
本発明の多加水パン生地に使用する澱粉類としては、上述のベーカリー生地に使用する澱粉類と同様のものを使用することができるが、本発明の多加水パン生地においては、澱粉類中、好ましくは小麦粉類を50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは100質量%使用する。
本発明の多加水パン生地は、必要に応じ、一般の製パン材料として使用することのできるその他の原料を使用することができる。該その他の原料としては、上述のベーカリー生地に使用するその他の原料と同様のものを使用することができる。
本発明の多加水パン生地における糖類の含有量は、多加水パン生地における澱粉類100質量部に対し、固形分として、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは5〜20質量部である。
上記その他の原料は、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができるが、上記澱粉類100質量部に対して合計で好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下となる範囲で使用する。
尚、上記本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物の多加水パン生地への添加時期や添加方法は特に限定されず、パン生地に使用する水と同様に使用することができ、中種法の場合は中種生地に練込使用しても本捏生地に添加してもよい。
本発明のベーカリー製品は、上記の本発明のベーカリー生地を、適宜、成形し、必要に応じホイロ、リタード、レストをとった後、加熱したものである。
焼成する場合の加熱条件は、ベーカリー製品の種類によって異なるが、例えばオーブンを使用する場合、好ましくは150〜240℃で4〜40分、さらに好ましくは180〜230℃で8〜30分である。また、フライする場合の加熱条件は、好ましくは180〜260℃で1〜10分、さらに好ましくは200〜250℃で2〜5分である。
本発明のベーカリー製品の品質改良方法は、水不溶性且つ水膨潤性の食物繊維を含有する乳化油脂組成物を、澱粉類含有生地に練込使用することで、ソフトでしっとりしていながら、ねちゃつきのない良好な食感を有するベーカリー製品とするものである。水不溶性且つ水膨潤性の食物繊維を含有する乳化油脂組成物としては、前述の本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物を使用すればよい。特にベーカリー製品がパンである場合は、水分含量の高いパン生地を使用していながら腰持ちが良好であり、且つ、ソフトでしっとりしていながら、ねちゃつきのない良好な食感を有するパンを得ることができる。また、乳化油脂組成物として水中油型乳化物である本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物を添加した場合でも、吸水調整を行う必要がない。
尚、本発明のベーカリー製品の品質改良方法において、特に詳述しなかった点については、前述の本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物、ベーカリー生地及びベーカリー製品における説明を適宜適用することができる。
〔製造例1〕
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエイをナノ濾過膜分離した後、さらに逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、次いで、80℃、20分の加熱処理をして生じた沈殿を遠心分離して除去した後、固形分が10質量%となるように水で希釈し、乳清ミネラルA(10%液)を得た。得られた乳清ミネラル液Aの固形分中のカルシウム含量は0.4質量%であった。
チーズを製造する際に副産物として得られる甘性ホエイをナノ濾過膜分離した後、さらに逆浸透濾過膜分離により固形分が20質量%となるまで濃縮し、次いで、これを固形分が10質量%となるように水で希釈し、乳清ミネラルB(10%液)を得た。得られた乳清ミネラルBの固形分中のカルシウム含量は2.2質量%であった。
〔実施例1〕
60℃に加温したパーム油8質量%にレシチン0.1質量%とグリセリン脂肪酸エステル0.1質量%を溶解した油相を用意した。一方、60℃に加温した水67.5質量%に乳糖8質量%、脱脂粉乳(蛋白質含量=36質量%)15質量%、リン酸塩0.2質量%、香料0.1質量%を溶解し、さらに低置換度カルボキシメチルセルロース(日本製紙ケミカル製、商品名「サンローズSLD−FM」、置換度=0.2〜0.3)1質量%を添加・分散した水相を用意した。該油相と水相を65℃で混合し、攪拌して水中油型の予備乳化物を調製した。該予備乳化物をVTIS殺菌機(アルファラバル社製UHT殺菌機ステリラボ)で143℃にて5秒間殺菌し、10MPaの圧力で均質化後、5℃まで冷却し、油分含量が8質量%、水分含量が67.5質量%である本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物Aを得た。
実施例1で使用した低置換度カルボキシメチルセルロースに代えて、シトラスファイバー(鳥越製粉製、商品名「シトリファイ100FG」)を使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物Bを得た。
実施例1で使用した低置換度カルボキシメチルセルロースに代えて、小麦ファイバー(三晶株式会社製、商品名「VITAGEL WF200」)を使用した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物Cを得た。
乳清ミネラルA2.5質量%を水相に添加・溶解し、水を67.5質量%から65質量%に変更した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物Dを得た。
乳清ミネラルB2.5質量%を水相に添加・溶解し、水を67.5質量%から65質量%に変更した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物Eを得た。
実施例1で使用した低置換度カルボキシメチルセルロースの添加量を1質量%から3質量%に変更し、乳清ミネラルA2.5質量%を水相に添加・溶解し、更に水を67.5質量%から63質量%に変更した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物Fを得た。
実施例4で使用した水を65質量%から64.95質量%に変更し、アスコルビン酸0.05質量%を水相に添加した以外は、実施例4の配合・製法と同様にして、本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物Gを得た。
実施例6で使用した水を63質量%から62.95質量%に変更し、アスコルビン酸0.05質量%を水相に添加した以外は、実施例6の配合・製法と同様にして、本発明のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物Hを得た。
実施例1で使用した低置換度カルボキシメチルセルロースを無添加とし、水を67.5質量%から68.5質量%に変更した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、比較例のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物Iを得た。
実施例1で使用した低置換度カルボキシメチルセルロースを水溶性の増粘多糖類であるキサンタンガムに変更した以外は、実施例1の配合・製法と同様にして、比較例のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物Jを得た。
上記ベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物A〜Jを使用した場合の最適吸水量を設定するため、まず下記の「ベーカリー生地製造試験」を行った。
即ち、先ず、ベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物A〜H、Jを、ベーカリー生地に使用する澱粉類100質量部あたり(以下「対粉」と記載することがある)10質量部練込使用した場合に、生地状態が、食物繊維無添加の比較例1のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物Iを使用した場合と同様の物性となる吸水量(最適吸水量)を求める。食物繊維無添加のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物Iを対粉10質量部使用した場合、最適な生地物性となる水の添加量は対粉57質量部であった。そこで、水の添加量を対粉57質量部、60質量部、63質量部、66質量部、69質量部、72質量部とした6種のパン生地を、各ベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物を使用してそれぞれ製造し、その生地物性(成型時の伸展性とべたつき)を評価し、最適吸水量を設定した。尚、生地物性評価が同一である場合は、生地吸水量の多い方を最適吸水量とした。そして、設定された最適吸水量の水を使用して改めて下記の「ベーカリー試験」を行い、得られたパンの評価を行った。
比較例3:粉末状の低置換度カルボキシメチルセルロース対粉0.1質量部を、小麦粉に分散して添加し水中油型乳化油脂組成物を使用しない。
比較例4:粉末状の低置換度カルボキシメチルセルロースを9質量倍の水で30分間膨潤させてから該膨潤物を対粉7.5質量部添加し、水中油型乳化油脂組成物を使用しない。
比較例5:粉末状の低置換度カルボキシメチルセルロースを67.5質量倍の水で30分間膨潤させてから対粉6.85質量部添加し、水中油型乳化油脂組成物を使用しない。
比較例6:粉末状の低置換度カルボキシメチルセルロースも水中油型乳化油脂組成物も使用しない。
強力粉100質量部、生イースト(水分含量70質量%)3質量部、イーストフード0.1質量部、上白糖6質量部、食塩1.8質量部、脱脂粉乳2質量部、ベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物10質量部及び水(57・60・63・66・69・72質量部の6点)をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で2分、高速で1分ミキシングした。ここで、練込油脂(水分含量17質量%、油分含量80質量%のマーガリン)5質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行ない、食パン生地を得た。得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。
ここで、フロアタイムを20分とった後、350gに分割し丸めを行なった際の生地物性について下記の評価基準により評価を行った。
×:べたつきが激しく、丸めが困難であった。
△:粘つきがあり、丸めが困難であった。
○:やや粘つくものの、丸めに支障はない程度であった。
◎:粘つきもなく、伸展性が良好であり、良好な作業性であった。
××:粘つきはないが、生地が硬く伸展性が不良であった。
上記ベーカリー生地製造試験における水の添加量を、上記ベーカリー生地製造試験で決定した最適吸水量とした以外は、上記ベーカリー生地製造試験の配合・製造で食パン生地を得た。
ここで、フロアタイムを20分とった後、350gに分割・丸目を行なった。次いで、ベンチタイムを20分とった後、モルダー成形し、ワンローフ型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ35分焼成してワンローフ型食パンを得た。
得られたワンローフ型食パンの体積、内相、食感(ソフト性及び歯切れ)について、下記評価基準に従って4段階で評価した。
得られたワンローフ型食パンの体積、内相、食感(ソフト性及び歯切れ)について、下記評価基準に従って4段階で評価した。また、得られたワンローフ型食パンの一部は、5℃の冷蔵庫で保管し、保管開始から2日後の食感及び3日後の食感それぞれについて下記評価基準により評価を行ない、これを老化耐性の評価とした。
・外観(体積)
◎:1550ml〜
○:1450〜1549ml
△:1350〜1449ml
×:〜1349ml
・内相(キメ)
○:気泡膜が薄く、均一である。
△:不均一で、やや目が詰まっている。
×:気泡膜が厚く、不均一で、目が詰まっている。
・食感(ソフト性)
◎+:きわめて良好
◎:特に良好
○:良好
△:やや悪い
×:悪い
・食感(歯切れ)
◎:きわめて良好
○:良好
△:ややねちゃつく
×:ねちゃつきが激しい
・2日後の食感
◎:ソフトで歯切れも良好である。
○:ソフトである。
△:硬い食感でありやや悪い。
×:硬い食感でヒキが強く極めて悪い。
・3日後の食感
◎:ソフトで歯切れも良好である。
○:ソフトである。
△:硬い食感でありやや悪い。
×:硬い食感でヒキが強く極めて悪い。
Claims (8)
- 水不溶性且つ水膨潤性の食物繊維として、グルコース単位当たりのカルボキシメチルエーテル基置換度が0.01〜0.4であるカルボキシメチルセルロースを水相中に0.5〜5質量%(水相基準)含有してなることを特徴とするベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物。
- 乳清ミネラルを含有する請求項1記載のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物。
- 酸化剤成分を含有する請求項1又は2に記載のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のベーカリー製品練込用水中油型乳化油脂組成物をベーカリー生地中に練込んでなる、ベーカリー生地の製造方法。
- 前記ベーカリー生地がパン生地である請求項4記載のベーカリー生地の製造方法。
- 前記パン生地が多加水パン生地である請求項5記載のベーカリー生地の製造方法。
但し、多加水パン生地は、パン生地に使用する澱粉類100質量部に対し水を70〜90質量部含むものとする。 - 請求項4〜6のいずれか一項に記載の製造方法により得られるベーカリー生地を加熱してなるベーカリー製品の製造方法。
- 水不溶性且つ水膨潤性の食物繊維として、グルコース単位当たりのカルボキシメチルエーテル基置換度が0.01〜0.4であるカルボキシメチルセルロースを水相中に0.5〜5質量%(水相基準)含有する水中油型乳化油脂組成物を、澱粉類含有生地に練込使用することを特徴とするベーカリー製品の品質改良方法。
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