JP6721386B2 - 製パン練り込み用水性液 - Google Patents
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ここで、ソフトでしとりのあるパンを得るには、基本的には水分を多く配合すればよい。しかし、水分を多く配合したパン生地は、丸めや成型時にべたついて扱いにくい等、生地物性が悪化してしまうという問題があった。また、得られたパンは、確かにソフトでしっとりとしているが、ねちゃついた食感になってしまうという問題もあった。
また、特許文献10記載の特定のデキストリンを含有する乳化油脂組成物は、得られたパンは、確かにソフトであるが、しとり感がやや欠ける問題もあった。
また、乳化油脂組成物を使用する方法では、パン生地への練り込み時期が基本的にグルテンが出てからに限定されるため、各改良成分の十分な改良効果が得られない場合もあった。
(1)デキストリン及びオリゴ糖を含有する。
(2)乳固形分中のリン脂質の含有量が該乳固形分を基準として2質量%以上である乳原料を含有する。
(3)油脂を実質的に含有しない。
(4)合成乳化剤を含有しない。
さらに、本発明は、上記パン生地を加熱処理してなるパンを提供するものである。
本発明で使用することのできるデキストリンとしては、澱粉を酵素処理、熱処理、アルカリ処理、酸処理等の方法で低分子化したものであり、そのDEは2〜9のものであることが好ましく、4〜8のものであることがより好ましい。尚、上記DEはウィルシュテッター・シューデル法による数値を使用する。
ここで、DEが2より小さいとしとり感の乏しいパンになってしまうことがあることに加え、水相の粘度が高くなりすぎ、水性液の製造が困難となるおそれがある。一方、DEが9より大きいと、性質がオリゴ糖に近似するため、もっちりした食感のパンが得られないおそれがある。
本発明においては、オリゴ糖を使用することで、ソフトでしとり感が良好であるパンを得ることができる。
本発明で使用することのできるオリゴ糖としては、結合数2〜20のものであれば問題なく使用可能である。
デキストリンは、製パン改良効果は高いものの、溶解度がオリゴ糖に比べて低いため、デキストリンのみを使用した場合には、水に多くを含有させることができない。しかし、オリゴ糖と併用することで、デキストリンの溶解性が改善され、デキストリンの配合量を増やすことができ、さらには、得られるパンが、ソフトでありながらしとり感があり、さらにねちゃつきの少ない歯切れが良好なものとなる。
また、デキストリンは、焼成直後の製パン改良効果は高いものの、パン生地中に分散した場合、パンの配合や種類によっては老化を促進する場合がある。ここでオリゴ糖を併用することで、老化の促進を抑制することもできる。
上記の乳原料は、牛乳、ヤギ乳、ヒツジ乳、人乳等の乳から製造されたものであることが好ましく、特に牛乳から製造されたものであることが好ましい。
リン脂質(g/100g)=〔リン量(μg)/(乳由来のリン脂質を含有する食品素材−乳由来のリン脂質を含有する食品素材の水分(g))〕×25.4×(0.1/1000)
ここで、「油脂を実質的に含有しない」とは、レーゼゴットリーブ法で測定した場合に、製パン練り込み用水性液における油脂の含有量が、5質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下となる含有量である。油脂の含有量が5質量%を超えると、本発明の効果、特に乳固形分中のリン脂質の含有量が2質量%以上である乳原料の効果及びデキストリンの効果が弱まってしまう。この理由は明確ではないが、おそらくは、油脂が介在することによって、これらの各成分は油脂と結合あるいは乳化しやすいために、グルテンへの作用が抑制されてしまうためと思われる。
また、油脂を含有すると、製パン練り込み用水性液の保管中に油相が分離してしまうおそれもある。
しかし、最近では、天然志向や添加物使用量低下の要請等により、そのような合成乳化剤を使用せずとも同様の効果を得ることが求められる場面も多々存在する。
また、本発明の製パン練り込み用水性液は、合成乳化剤を使用せずとも、良好な保存安定性を有し、また得られるパン生地の物性、得られるパンの品質も良好なものとすることができるため、合成乳化剤を添加する必要がない。
また、本発明の製パン練り込み用水性液は、合成乳化剤を含有すると、本発明の効果、特にデキストリンの効果が出にくくなってしまう。
本発明の製パン練り込み用水性液における水分含有量は、好ましくは25〜90質量%、より好ましくは50〜80質量%である。水分含有量が、25質量%未満であると、上述の原材料、特にデキストリンを安定的に配合することが困難になってしまうおそれがある。一方、水分含有量が、90質量%超であると、得られるパン生地が、べとつきやすく、得られるパンもねちゃついた食感になりやすい。尚、上記デキストリン及びオリゴ糖、上記乳原料に水分が含まれる場合、さらには下記のその他の原料として水分を含有する原料を使用した場合は、上記水分含有量には、それらの原料に含まれる水分も含めるものとする。
上記その他の原料は、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができるが、本発明の製パン練り込み用水性液中、合計で好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下となる範囲で使用する。
例えば、水や水分を主体とする原材料に、上記デキストリン及びオリゴ糖並びに上記乳原料、必要に応じてその他の成分を溶解又は分散し、必要に応じ、さらに均質化することによって得ることができる。水を使用する場合を例に挙げると、まず水に、上記デキストリン及びオリゴ糖並びに上記乳原料を溶解し、必要に応じさらにその他の水溶性の原料を溶解させた水相を用意する。そして、この水相を殺菌することが好ましい。尚、本発明における殺菌には滅菌も含む。
また、殺菌する前又は後で、ホモジナイザーにより均質化することもできる。均質化処理を行う場合の均質化圧力は、3MPa〜30MPaとするのが好ましい。
本発明のパン生地は、本発明の製パン練り込み用水性液を使用したパン生地である。本発明のパン生地における製パン練り込み用水性液の使用量は、パンの種類によっても異なるが、パン生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、固形分として好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは0.3〜1質量部である。
小麦粉以外の穀粉類を使用する場合、グルテンを別途添加することが好ましい。その添加量は、穀粉類とグルテンをあわせた合計量に対し、タンパク質含有量が好ましくは5〜20質量%、より好ましくは10〜18質量%となる量である。
本発明のパン生地は、本発明の製パン練り込み用水性液を生地に練り込むことにより、製造することができる。
本発明のパン生地の製造方法としては、中種法、直捏法、液種法、中麺法、湯種法等、従来製パン法として使用されるあらゆる製パン法を採ることができる。
本発明のパン生地を中種法で製造する場合は、本発明の製パン練り込み用水性液を中種生地及び/又は本捏生地に練り込むことにより製造することができるが、本捏生地に練り込むことが好ましい。
また、本発明のパン生地を湯種法で製造する場合は、本発明の製パン練り込み用水性液を湯種生地及び/又は本捏生地に練り込むことにより製造することができるが、本捏生地に練り込むことが好ましい。
また、得られた本発明のパン生地は、冷蔵、冷凍保存することが可能である。
本発明のパンは、上記の本発明のパン生地を、必要に応じ適宜、分割、成形、ホイロ、リタード、レストをとった後、加熱処理することにより得ることができる。
上記成形は、どのような形状に成形してもよく、型詰めを行っても構わない。成形は、手作業で行っても、連続ラインを用いて全自動で行っても構わない。
上記加熱処理としては、焼成、蒸し、フライ等を挙げることができる。これらのうちの2種以上の加熱処理を併用してもよいが、焼成することが好ましい。
また、得られた本発明のパンを、冷蔵、冷凍保存したり、該保存後に電子レンジ加熱することも可能である。
〔実施例1〕
DE=8、質量平均分子量=30000のワキシーコーン由来のデキストリン(オリゴ糖25%、単糖0.5%、三糖類3%含有)5質量部、「ピュアトースS」(サンエイ糖化株式会社製、オリゴ糖98.3%、単糖1.7%、三糖類46%含有)25質量部、及びクリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8%)25質量部に、水45質量部を添加し、これをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し、本発明の製パン練り込み用水性液Aを得た。
DE=8、質量平均分子量=30000のワキシーコーン由来のデキストリン(オリゴ糖25%、単糖0.5%、三糖類3%含有)5質量部、「ピュアトースS」(サンエイ糖化株式会社製、オリゴ糖98.3%、単糖1.7%、三糖類46%含有)25質量部、及びクリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8%)25質量部に、水44.93質量部を添加し、さらにフィチン酸0.07質量部を添加して、pHを5.5に調整した。これをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し、本発明の製パン練り込み用水性液Bを得た。
実施例2で使用した「ピュアトースS」25質量部を、上白糖(オリゴ糖99%、単糖1%含有)25質量部に変更した以外は、実施例2と同様の配合及び製法で本発明の製パン練り込み用水性液Cを得た。
実施例2で使用したDE=8、質量平均分子量=30000のワキシーコーン由来のデキストリン5質量部を、DE=4、質量平均分子量=8500のワキシーコーン由来のデキストリン(オリゴ糖15%、単糖0.5%、三糖類0.8%含有)5質量部に変更した以外は、実施例2と同様の配合及び製法で本発明の製パン練り込み用水性液Dを得た。
DE=8、質量平均分子量=30000のワキシーコーン由来のデキストリン5質量部を2質量部に変更し、「ピュアトースS」25質量部を28質量部に変更した以外は、実施例2と同様の配合及び製法で本発明の製パン練り込み用水性液Eを得た。
「ピュアトースS」25質量部を7質量部に変更し、水44.93質量部を62.93質量部に変更した以外は、実施例2と同様の配合及び製法で本発明の製パン練り込み用水性液Fを得た。
DE=8、質量平均分子量=30000のワキシーコーン由来のデキストリン5質量部を2質量部に変更し、「ピュアトースS」25質量部を10質量部に変更し、水44.93質量部を62.93質量部に変更した以外は、実施例2と同様の配合及び製法で本発明の製パン練り込み用水性液Gを得た。
DE=8、質量平均分子量=30000のワキシーコーン由来のデキストリン5質量部を10質量部に変更し、「ピュアトースS」25質量部を50質量部に変更し、水44.93質量部を14.93質量部に変更した以外は、実施例2と同様の配合及び製法で本発明の製パン練り込み用水性液Hを得た。
実施例2で使用したDE=8、質量平均分子量=30000のワキシーコーン由来のデキストリン5質量部を無添加とし、水44.93質量部を49.93質量部に変更した以外は、実施例2と同様の配合及び製法で比較例の製パン練り込み用水性液Iを得た。
クリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8%)25質量部を無添加とし、水44.93質量部を69.93質量部に変更した以外は、実施例2と同様の配合及び製法で比較例の製パン練り込み用水性液Jを得た。
DE=8、質量平均分子量=30000のワキシーコーン由来のデキストリン(オリゴ糖25%、単糖0.5%、三糖類3%含有)5質量部、「ピュアトースS」(サンエイ糖化株式会社製、オリゴ糖98.3%、単糖1.7%、三糖類46%含有)25質量部、及びクリームからバターオイルを製造する際に生じる水相成分の濃縮物(乳固形分38%、乳固形分中のリン脂質の含有量9.8%)25質量部に、水25.93質量部を添加し、さらにフィチン酸0.07質量部を添加して、pHを5.5に調整した水相を得た。ここに、パームスーパーオレイン(ヨウ素価65)のランダムエステル交換油脂95質量部及びパームステアリン5質量部を均一に混合した混合油脂19質量部を加熱溶解した油相を添加して乳化し、これをホモゲナイザーにて均質化圧力3MPaにて均質化後、UHT加熱処理(142℃、4秒)を行った。そして、再度、ホモゲナイザーにて均質化圧力12MPaにて均質化を行った。これを5〜10℃に冷却し、比較例の製パン練り込み用水性液Kを得た。
上記<製パン練り込み用水性液の製造>で得られた製パン練り込み用水性液A〜Kを用いて、下記に示す配合及び製法によりプルマン型食パンを製造し、分割・丸目時の生地物性、20℃にて3日保管後の食感(ソフト性、もっちり感、歯切れ感、しとり感)について、下記評価基準に従って4段階で評価した。その結果を表2に示す。
強力粉(商品名「カメリア」:日清製粉製、タンパク質含有量11.8%及び灰分0.37%)70質量部、生イースト2質量部、イーストフード0.1質量部及び水40質量部をミキサーボウルに投入し、フックを使用し、低速で2分、中速で2分混合し、中種生地を得た。捏ね上げ温度は24℃であった。この中種生地を生地ボックスに入れ、温度28℃、相対湿度85%の恒温室で、4時間中種醗酵を行なった。終点温度は29℃であった。この中種醗酵の終了した生地を再びミキサーボウルに投入し、更に、強力粉(商品名「カメリア」)30質量部、上白糖5質量部、脱脂粉乳2質量部、食塩1.5質量部、製パン練り込み用水性液2質量部及び水25質量部を添加し、低速で3分、中速で3分本捏ミキシングした。ここで、製パン練り込み用マーガリン(「フロイデプレミアムPV」:株式会社ADEKA製)5質量部を投入し、フックを使用し、低速で3分、中速で3分、高速で1分ミキシングを行ない、食パン生地を得た。得られた食パン生地の捏ね上げ温度は28℃であった。ここで、フロアタイムを20分とった後、230gに分割・丸目を行なった。次いで、ベンチタイムを20分とった後、モルダー成形し、6本をU字にして3斤型プルマン型に入れ、38℃、相対湿度85%で50分ホイロをとった後、200℃に設定した固定窯に入れ40分焼成してプルマン型食パンを得た。
・生地物性
◎:べとつきもなく伸展性もよく、極めて良好な作業性であった。
○:良好な作業性であった。
△:ややべとつきが感じられるか、又は、やや伸展性が悪く、作業性が若干劣っていた。
×:べとつきがあるか、又は、伸展性が悪く、作業性が劣っていた。
・食感(ソフト性)
◎:極めて良好
○:良好
△:やや悪い
×:悪い
・食感(もっちり感)
◎:極めて良好
○:良好
△:あまり感じられない
×:感じられない
・食感(歯切れ感)
◎+:この上なく良好
◎:極めて良好
○:やや良好
△:ややねちゃつくか、又はボソボソして不良
×:ねちゃつき又はぼそつきが激しい
・食感(しとり感)
◎:極めて良好
○:良好
△:ややぱさついた感じである
×:乾いた食感である
Claims (7)
- 下記の(1)(2)(3)(4)をすべて満たす製パン練り込み用水性液。
(1)DEが2〜9のデキストリン及びオリゴ糖を含有する。
(2)乳固形分中のリン脂質の含有量が該乳固形分を基準として2質量%以上である乳原料を含有する。
(3)油脂を実質的に含有しない。
(4)合成乳化剤を含有しない。 - 水分含有量が25〜90質量%である請求項1記載の製パン練り込み用水性液。
- 上記デキストリンと上記オリゴ糖との質量比が、1:99〜50:50である、請求項1又は2記載の製パン練り込み用水性液。
- 上記デキストリン及び上記オリゴ糖を合計した含有量が6〜75質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製パン練り込み用水性液。
- 上記デキストリンの含有量が1〜11質量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製パン練り込み用水性液。
- 請求項1〜5のいずれか一項に記載の製パン練り込み用水性液を使用したパン生地。
- 請求項6記載のパン生地を加熱処理してなるパン。
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