JP4285856B2 - グラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐候性、耐衝撃性、および成形光沢に優れ、かつ良好な顔料着色性を有する熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂材料の耐衝撃性を向上させることは、材料の用途の拡大だけでなく成形品の薄肉化や大型化への対応を可能にするなど、工業的な有用性は非常に大きく、これまで様々な手法によって発明がなされてきた。
このうち、ゴム質重合体を硬質樹脂と組み合わせることによって、材料の耐衝撃性を高めた材料としては、従来ABS樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、変性PPE樹脂およびMBS樹脂強化ポリ塩化ビニル樹脂等が既に工業的に使用されている。
特にゴム質重合体に(メタ)アクリル酸アルキルエステルゴム等の飽和ゴム成分を用いることによって、良好な耐候性を有する樹脂材料として、例えば耐候性ABS樹脂であるASA樹脂が提案されている。
さらに、ASA樹脂の低温衝撃特性を改良する第一の方法として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルゴムにジエン系ゴムを組み合わせた複合ゴム重合体が特公昭47−47863号公報、特公昭59−49245号公報等で提案され、さらにその成形性、光沢/耐衝撃性バランスを改良する方法として、特公平3−66329号公報に酸基含有共重合体ラテックスで肥大化したジエン系ゴムを粒子内部に含み、グラフト交叉剤と架橋剤を併用して得られる架橋アクリル酸エステル系重合体を外層部とした複合ゴム系グラフト共重合体を用いることが提案されている。さらに、特開平10−77383号公報には、特定のトルエン可溶分の分子量、ゲル含有率およびトルエンに対する膨潤度のジエン系ゴムを使用することによってグラフト共重合体を含む樹脂組成物が良好な耐衝撃性を有することが記載されている。
しかしながら、これらジエン系ゴムを含有する複合ゴム系グラフト共重合体を含有する樹脂組成物は、良好な低温衝撃特性と顔料着色性を有すものの、ジエン系ゴム成分に由来して耐候性が不良であり、特に高いレベルの耐候性が必要となる用途には使用することができなかった。
一方、ASA樹脂の低温衝撃特性を改良する第二の方法として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルゴムにポリオルガノシロキサンを組み合わせた複合ゴム重合体を用いることが、特開平1−190746号公報に記載され、さらにその顔料着色性を改良する方法が、特開平6−025492号公報、特開平8−041149号公報および特開平11−199642号公報等に記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平1−190746号公報に記載されているポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸アルキルエステルゴムとからなる複合ゴム系グラフト共重合体を含有する樹脂組成物は、良好な低温衝撃特性と耐候性を有すものの、ポリオルガノシロキサン成分に由来する顔料着色性が不良であり、このように意匠性に劣る材料は使用できる用途に制限があった。
また、特開平8−041149号公報および特開平11−199642号公報に記載の平均粒子径の小さいポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸アルキルエステルゴムとからなる複合ゴム系グラフト共重合体を含有する樹脂組成物は、良好な耐候性と顔料着色性を示すものの、低温衝撃特性が不良であり、特に過酷な条件で使用される用途には用いることができなかった。
【0004】
すなわち従来は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルゴムを構成成分としたグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物において、耐候性、低温衝撃特性および顔料着色性を同時に満足する樹脂材料は見出されておらず、これらを満足する材料の技術の開発が強く要望されていた。
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、耐候性、低温衝撃特性、成形光沢、および顔料着色性を同時に満足する熱可塑性樹脂組成物を目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルゴムを構成成分とするグラフト共重合体を含有する樹脂組成物の耐候性、低温衝撃特性および顔料着色性について鋭意検討したところ、驚くべきことに、特定の構造の二種のグラフト共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物が良好な耐候性、低温衝撃特性および顔料着色性を示すことを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、下記(A)、(B)及び(C)の各成分を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。
(A)(a−1)酸基含有共重合体ラテックスで重量平均粒子径300nm以上に肥大化したジエン系ゴム1〜30重量%の存在下で(a−2)グラフト交叉剤と架橋剤を併用して(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分70〜99重量%を乳化重合して得られる複合ゴム系ゴム質重合体((a−1)+(a−2))20〜80重量%の存在下に、(a−3)芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体20〜80重量%((a−1)+(a−2)+(a−3)=100重量%)を乳化グラフト重合してなるグラフト共重合体。
(B)(b−1)ポリオルガノシロキサン1〜20重量部の存在下に、(b−2)多官能性単量体0.01〜10重量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜99.9重量%およびこれと共重合可能なビニル単量体0〜30重量%からなる単量体混合物99〜80重量部をポリオルガノシロキサンとの総量が100重量部になるように配合しラジカル重合して得られる複合ゴム重合体((b−1)+(b−2))20〜80重量%の存在下に、(b−3)芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルまたはシアン化ビニル化合物から選ばれた少なくとも一種の単量体20〜80重量%((b−1)+(b−2)+(b−3)=100重量%)を乳化グラフト重合して得られるグラフト共重合体であって、
アセトン不溶分を70〜99重量%含み、かつアセトン可溶分の0.2g/100c cN,N−ジメチルホルムアミド溶液として25℃で測定した還元粘度が0.30〜0.70dl/gであるグラフト共重合体。
(C)熱可塑性樹脂。
【0006】
ここで、グラフト共重合体(B)の重量平均粒子径が0.07〜0.2μmであることが望ましい。
また、熱可塑性樹脂(C)が、芳香族アルケニル化合物成分、シアン化ビニル化合物成分、(メタ)アクリル酸エステル成分から選ばれた少なくとも一種の単量体成分を構成成分とする(共)重合体であることが望ましい。
前記複合ゴム系ゴム質重合体((a−1)+(a−2))は、該ゴム質重合体の全重量に対する粒子径100nm未満の粒子の重量が5〜20%であることが望ましい。
前記グラフト共重合体における前記架橋剤は、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートであることが望ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、前記グラフト共重合体(A)を1〜50重量%、前記グラフト共重合体(B)を1〜50重量%および熱可塑性樹脂(C)を30〜98重量%含むことが望ましい。
さらに、ブタジエン系重合体に、芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル及びシアン化ビニル化合物から選ばれた少なくとも一種の単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(D)を含有することが望ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の熱可塑性樹脂樹脂組成物を構成するグラフト共重合体(A)中の肥大化したジエン系ゴム(a−1)は、ブタジエン、イソプレン等のジエン成分およびこれらと共重合可能な単量体成分を構成成分とするゴム質重合体を酸基含有共重合体ラテックスにて重量平均粒子径300nm以上に肥大化したものである。肥大化剤として用いる酸基含有共重合体ラテックスとは、酸基含有単量体とアクリル酸アルキルエステルを共重合体の構成成分とする共重合体ラテックスである。酸基含有単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびクロトン酸等が挙げられ、アクリル酸アルキルエステルとしてはアルキル基の炭素数が1〜12のアクリル酸アルキルエステルである。酸基含有共重合体中の酸基含有単量体成分の量としては、肥大化時のラテックスの安定性と肥大化したブタジエン系重合体の平均粒子径を考慮すると共重合体中3〜30重量%、さらに好ましくは10〜25重量%である。酸基含有重合体ラテックス中の酸基含有重合体の重量平均粒子径としては、肥大化時のラテックスの安定性と肥大化したブタジエン系重合体の平均粒子径を考慮すると100〜200nmが好ましい。
肥大化の方法としては、乳化重合にて製造した小粒子径のジエン系ゴムラテックスに上記酸基含有ラテックスを添加することによって行うことができる。
肥大化したジエン系ゴムの重量平均粒子径は300nm以上でなければならない。重量平均粒子径が300nm未満の場合は、グラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性および顔料着色性が低下してしまう。
【0008】
グラフト共重合体(A)を構成する複合ゴム系ゴム質重合体((a−1)+(a−2))中の(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分(a−2)は、グラフト交叉剤と架橋剤を併用した(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステルおよびヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステルが挙げられ、特にn−ブチルアクリレートの使用が好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとともに用いるグラフト交叉剤とては、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。架橋剤としてはエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートおよび1,4−ブチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
複合ゴム系ゴム質重合体((a−1)+(a−2))の製造は上記の方法で製造した重量平均粒子径300nm以上の肥大化ジエン系ゴムラテックスに上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グラフト交叉剤および架橋剤を添加して乳化重合することによって製造することができる。
その際使用する肥大化ジエン系ゴム(a−1)の量は、1〜30重量%、グラフト交叉剤および架橋剤を併用した(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分(a−2)の量は、70〜99重量%の範囲である。肥大化ジエン系ゴム(a−1)の量が1重量%未満の場合は、グラフト共重合体を含む樹脂組成物の低温衝撃特性が低下し、一方、30重量%を超えた場合は耐候性が低下する場合がある。
【0009】
グラフト共重合体(A)を構成する複合ゴム系ゴム質重合体((a−1)+(a−2))の粒子径分布は特に限定されるものではないが、グラフト共重合体を含む樹脂組成物の高温成形時の光沢を考慮すると、ゴム質重合体の全重量に対する100nm未満の粒子の重量が5〜20%であるゴム質重合体を用いることが好ましい。ゴム質重合体の全重量に対する100nm未満の粒子の重量が5%未満の場合は、グラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性が低下する傾向を示し、一方、ゴム質重合体の全重量に対する100nm未満の粒子の重量が20%を超えた範囲ではグラフト共重合体を含む樹脂組成物を高温にて成形した場合の成形品表面の光沢が低下する傾向を示す。
グラフト共重合体(A)は、上記ゴム質重合体((a−1)+(a−2))に、芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体成分(a−3)を乳化グラフト重合して製造することができる。
【0010】
グラフト重合に用いる単量体のうち芳香族アルケニル化合物としては例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等であり、メタクリル酸エステルとしては例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等であり、アクリル酸エステルとしては例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等であり、シアン化ビニル化合物としては例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等である。これらのうち、グラフト共重合体の熱安定性を考慮するとグラフト重合に用いる単量体としては、スチレンとアクリロニトリルの混合物が好ましい。
また、グラフト共重合体(A)を製造する際に用いる複合ゴム系ゴム質重合体((a−1)+(a−2))量および乳化グラフト重合に用いる単量体(a−3)の量は、グラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性と顔料着色性を考慮すると、複合ゴム系ゴム質重合体((a−1)+(a−2))量が20〜80重量%、乳化グラフト重合に用いる単量体(a−3)の量が20〜80重量%((a−1)+(a−2)+(a−3)=100重量%)でなければならない。乳化グラフト重合に用いる単量体(a−3)の量が20重量%未満の場合は、グラフト共重合体を含む樹脂組成物の顔料着色性が低下し、また乳化グラフト重合に用いる単量体(a−3)の量が80重量%を超えた場合は、耐衝撃性が低下する場合がある。グラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性と顔料着色性のバランスを考慮すると、複合ゴム系ゴム質重合体((a−1)+(a−2))量が40〜70重量%、乳化グラフト重合に用いる単量体(a−3)の量が30〜60重量%((a−1)+(a−2)+(a−3)=100重量%)の範囲が好ましい。
【0011】
乳化グラフト重合は、複合ゴム系ゴム質重合体((a−1)+(a−2))ラテックスに、芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体成分(a−3)を加え、ラジカル重合技術により行うことができる。また、上記グラフト重合に用いる単量体中には、グラフト率およびグラフト成分の分子量の制御のための各種連鎖移動剤を添加することができる。
ゴム質重合体の製造および乳化グラフト重合に用いるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。この中でレドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
また、グラフト共重合体(A)は、これを構成するゴム質重合体((a−1)+(a−2))の製造および乳化グラフト重合を行う際に、乳化剤を使用する。用いる乳化剤としては特に限定されるものではないが、乳化重合時のラテックスの安定性および重合率を考慮すると、サルコシン酸ソーダ、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸等の各種カルボン酸塩が好ましく、さらにグラフト共重合体を含む樹脂組成物の高温成形時のガス発生の抑制の観点よりアルケニルコハク酸ジカリウムが好ましい。
【0012】
グラフト共重合体(A)の重量平均粒子径は特に限定されるものではないが、グラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性を考慮すると、200〜500nmであることが好ましく、さらに好ましくは230〜400nm、さらに好ましくは260〜350nmである。
グラフト共重合体(A)は、上記のごとく製造したグラフト共重合体ラテックスを凝固剤を溶解させた熱水中に投入し、凝析、固化させることによって回収することができる。凝固剤としては、硫酸、塩酸、リン酸および硝酸等の無機酸、塩化カルシウム、酢酸カルシウムおよび硫酸アルミニウム等の金属塩等を用いることができる。このうち、該グラフト共重合体の生産性およびこれを含む樹脂組成物の成型時における熱着色等を考慮すると、用いる凝固剤としては無機酸が好ましい。
グラフト共重合体(A)は、上記の方法で回収したグラフト共重合体を水または温水中に再分散することでスラリー状とし共重合体中に残存する乳化剤残渣を水中に溶出洗浄した後脱水機等で回収し、これを気流乾燥機等で乾燥することで製造される。
凝固回収した共重合体の洗浄条件としては特に限定されるものではないが、乾燥後の共重合体中に含まれる乳化剤残渣量が0.5〜2重量%の範囲となる条件で洗浄することが好ましい。
共重合体中の乳化剤残渣が0.5重量%未満の場合は、該グラフト共重合体を含む樹脂組成物の流動性が低下する傾向を示し、また2重量%を超えた場合は高温成形時のガス発生量が大きくなる傾向を示す。
上記グラフト共重合体(A)中の乳化剤残渣の量は、上記凝固回収グラフト共重合体の洗浄条件に加え、使用する乳化剤の量によっても変化し、上記グラフト共重合体中の残存乳化剤残渣量を考慮すると、好ましい乳化剤使用量は、得られるグラフト共重合体100重量部に対し、0.5〜5重量部であり、さらに好ましくは0.5〜1.5重量部である。
【0013】
グラフト共重合体(A)の好ましい特性としては、TG−DTAを20℃/分の条件で測定した際の1%重量減少温度が300℃以上であることである。1%重量減少温度が300℃未満の場合は、グラフト共重合体を含む樹脂組成物を高温成形した際の成形ガス発生量が増大する傾向を示す。
【0014】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成するグラフト共重合体(B)中のポリオルガノシロキサン(b−1)としては特に限定されるものではないが好ましくは、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンである。さらに好ましくは、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位0.3〜3モル%およびジメチルシロキサン単位97〜99.7モル%からなり、さらに3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリジメチルシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%以下である。
ポリオルガノシロキサン(b−1)中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位が0.3モル%未満では、(メタ)アクリル酸アルキルエステルゴム(b−2)との複合化が不十分となり、グラフト共重合体を含む樹脂組成物成形品の表面におけるポリオルガノシロキサンのブリードアウトに由来する外観不良が発生しやすい。また、ポリオルガノシロキサン(b−1)中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位が3モル%を超える、または3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%を超える場合は、グラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性が低くなりやすい。
さらにグラフト共重合体(B)を含む樹脂組成物の耐衝撃性と成形外観の両方を考慮すると、好ましくはポリオルガノシロキサン(b−1)中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位を0.5〜2モル%さらに好ましくは0.5〜1モル%である。
【0015】
グラフト共重合体(B)を構成する複合ゴム重合体((b−1)+(b−2))中のポリオルガノシロキサン(b−1)の量は1〜20重量%である。1重量%未満ではポリオルガノシロキサン量が少ないため耐衝撃性が低くなり、20重量%を超えるとグラフト共重合体を含む樹脂組成物成形品の顔料着色性が低下する場合がある。また、グラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性と顔料着色性の両方を考慮すると、複合ゴム重合体((b−1)+(b−2))中のポリオルガノシロキサン(b−1)の量は好ましくは6〜20重量%、さらに好ましくは10〜20重量%である。
上記ポリオルガノシロキサン(b−1)の製法としては、ジメチルシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンからなる混合物またはさらに必要に応じてシロキサン系架橋剤を含む混合物を乳化剤と水によって乳化させたラテックスを、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用して微粒子化した後、酸触媒を用いて高温下で重合させ、次いでアルカリ性物質により酸を中和するものである。重合に用いる酸触媒の添加方法としては、シロキサン混合物、乳化剤および水とともに混合する方法と、シロキサン混合物が微粒子化したラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法等があるが、ポリオルガノシロキサンの粒子径の制御のしやすさを考慮するとシロキサン混合物が微粒子化したラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法が好ましい。
【0016】
ポリオルガノシロキサン(b−1)粒子の大きさは特に限定されないが、グラフト共重合体を含む樹脂組成物の顔料着色性を考慮すると、重量平均粒子径が0.2μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.1μm以下である。
また、ポリオルガノシロキサン(b−1)の製造に用いるジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ、3〜7員環のものが好ましい。具体的にはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられるが、これらは単独でまたは二種以上混合して用いられる。
また、ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有しかつジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合しうるものであり、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮するとビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好ましい。具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシランおよびδ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン、p−ビニルフェニルジメトキシメチルシランさらにγ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンが挙げられる。
なお、これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、単独で、または二種以上の混合物として用いることができる。
【0017】
シロキサン系架橋剤としては、3官能性または4官能性のシラン系架橋剤、例えばトリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が用いられる。
また、本発明のグラフト共重合体(B)を構成するポリオルガノシロキサン(b−1)製造の際用いる乳化剤としては、アニオン系乳化剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどの中から選ばれた乳化剤が使用される。特にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸系の乳化剤が好ましい。これらの乳化剤は、シロキサン混合物100重量部に対して0.05〜5重量部程度の範囲で使用される。使用量が少ないと分散状態が不安定となり微小な粒子径の乳化状態を保てなくなる。また、使用量が多いとこの乳化剤に起因する樹脂組成物成形品の着色が甚だしくなり不都合である。シロキサン混合物、乳化剤、水および/または酸触媒を混合する方法は、高速攪拌による混合、ホモジナイザーなどの高圧乳化装置による混合などがあるが、ホモジナイザーを使用した方法は、ポリオルガノシロキサン(b−1)ラテックスの粒子径の分布が小さくなるので好ましい方法である。
【0018】
ポリオルガノシロキサン(b−1)の重合に用いる酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類および硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸類が挙げられる。これらの酸触媒は一種でまたは二種以上を組み合わせて用いられる。また、これらの中では、ポリオルガノシロキサン(b−1)ラテックスの安定化作用にも優れている点で脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。また、n−ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸などの鉱酸とを併用すると、ポリオルガノシロキサン(b−1)ラテックスの乳化剤成分に起因する樹脂組成物の着色を低減させることができる。
ポリオルガノシロキサン(b−1)の重合温度は、50℃以上が好ましく、さらに好ましくは80℃以上である。
ポリオルガノシロキサン(b−1)の重合時間は、酸触媒をシロキサン混合物、乳化剤および水とともに混合、微粒子化させて重合する場合は2時間以上、さらに好ましくは5時間以上であり、酸触媒の水溶液中にシロキサン混合物が微粒子化したラテックスを低下する方法では、ラテックスの滴下終了後1時間程度保持することが好ましい。
重合の停止は、反応液を冷却、さらにラテックスを苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ナトリウムなどのアルカリ性物質で中和することによって行うことができる。
【0019】
本発明に係るグラフト共重合体(B)を構成する単量体混合物(b−2)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと多官能性単量体との混合物であり、用いることができる単量体混合物(b−2)の量は99〜80重量%である。99重量%を超えるとポリオルガノシロキサン(b−1)量が少ないため耐衝撃性が低くなり、80重量%未満ではグラフト共重合体を含む樹脂組成物成形品の顔料着色性が低下する場合がある。また、グラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性と顔料着色性の両方を考慮すると、複合ゴム重合体((b−1)+(b−2))の製造に用いることのできる単量体混合物(b−2)の量は好ましくは94〜80重量%、さらに好ましくは90〜80重量%である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートおよびヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられ、これらを単独でまたは二種以上併用して用いることができる。またグラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性および成形光沢を考慮すると、特にn−ブチルアクリレートの使用が好ましい。
【0020】
多官能性単量体としては、例えばアリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の多官能性(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられ、これらを単独でまたは二種以上併用して用いることができる。グラフト共重合体のグラフト構造(アセトン不溶分量、アセトン可溶成分の溶液粘度)を考慮すると好ましい多官能性単量体の例としては、アリルメタクリレートと1,3−ブチレングリコールジメタクリレートを併用して使用する方法である。また、多官能性単量体の使用量は、単量体混合物(b−2)中、0.01〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、さらに好ましくは0.2〜1重量%である。
グラフト共重合体(B)を構成する単量体混合物(b−2)には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび多官能性単量体以外に任意に共重合可能なビニル系単量体を共重合することができる。共重合可能なビニル系単量体としては、どの様なものでも構わないが、例えば前述の芳香族アルケニル化合物やシアン化ビニル化合物等が任意に利用できる。
グラフト共重合体(B)を構成する複合ゴム重合体((b−1)+(b−2))は、ポリオルガノシロキサン(b−1)成分のラテックス中へ上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体混合物(b−2)を添加し、通常のラジカル重合開始剤を作用させて重合することによって調製できる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルを添加する方法としては、ポリオルガノシロキサン(b−1)成分のラテックスと一括で混合する方法とポリオルガノシロキサン(b−1)成分のラテックス中に一定速度で滴下する方法がある。なお、得られるグラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性を考慮するとポリオルガノシロキサン(b−1)成分のラテックスを一括で混合する方法が好ましい。
【0021】
また、重合に用いるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。この中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸にナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
グラフト共重合体(B)中において芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体がグラフト重合されたグラフト成分(b−3)の量は、複合ゴム重合体((b−1)+(b−2))との総量を100重量%としたときに20〜80重量%である。
20重量%未満ではグラフト共重合体を含む樹脂組成物成形品の顔料着色性が低下する傾向を示し、また、80重量%を超えるとゴム量が低くなるため耐衝撃性が低くなりやすい。顔料着色性と耐衝撃性の両方を考慮すると、好ましくは50〜70重量%、さらに好ましくは50〜60重量%である。
上記(b−3)成分に用いる芳香族アルケニル化合物としては例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等であり、メタクリル酸エステルとしては例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等であり、アクリル酸エステルとしては例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等であり、シアン化ビニル化合物としては例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等である。このうち、グラフト共重合体を含む樹脂組成物の熱安定性を考慮するとスチレンおよびアクリロニトリルの混合物が好ましい。
【0022】
グラフト重合は、複合ゴム重合体((b−1)+(b−2))のラテックスに芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物から選ばれた少なくとも一種の単量体を加え、ラジカル重合技術により一段であるいは多段で行うことができるが、得られるグラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性および顔料着色性を考慮すると二段以上で重合を行うことが好ましい。
また、グラフト重合において用いる単量体中にはグラフトポリマーの分子量やグラフト率を調整するための各種連鎖移動剤を添加することができる。
また、グラフト重合には、重合ラテックスを安定化させ、さらにグラフト共重合体の平均粒子径を制御するために乳化剤を添加することができる。用いる乳化剤としては、特に限定させるものではないが、好ましい例としてはカチオン系乳化剤、アニオン系乳化剤およびノニオン系乳化剤であり、さらに好ましい例としてはスルホン酸塩乳化剤あるいは硫酸塩乳化剤とカルボン酸塩乳化剤を併用させて使用する方法である。
上記のごとく調製されるグラフト共重合体の粒子径は、得られるグラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性と顔料着色性の両方を考慮すると、重量平均粒子径が0.07〜0.2μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.10〜0.15μm、である。
グラフト重合が終了した後、ラテックスを酢酸カルシウムまたは硫酸アルミニウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固することによりグラフト共重合体を分離し、回収することができる。
【0023】
グラフト共重合体(B)は、アセトン溶媒に対する不溶分を70〜99重量%含み、かつアセトン可溶分の0.2g/100ccN,N−ジメチルホルムアミド溶液として25℃で測定した還元粘度が0.30〜0.70dl/gでなければならない。
アセトン溶媒に対する不溶分が70重量%未満の場合は、グラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、一方99重量%を超えるとグラフト共重合体を含む樹脂組成物の成形光沢が低下してしまう。
また、アセトン可溶分の0.2g/100ccN,N−ジメチルホルムアミド溶液として25℃で測定した還元粘度が0.30dl/g未満の場合は、グラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、一方0.70dl/g超えるとグラフト共重合体を含む樹脂組成物の低温度成形時の光沢が低下する場合がある。 グラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性と低温度成形時の光沢の両方を考慮すると、アセトン不溶分のより好ましい範囲は、75〜95重量%、さらに好ましくは80〜95重量%であり、アセトン可溶分の0.2g/100ccN,N−ジメチルホルムアミド溶液として25℃で測定した還元粘度のより好ましい範囲は、0.50〜0.70dl/g、さらに好ましくは0.55〜0.65dl/gの範囲である。
【0024】
上記アセトン不溶分量の範囲およびアセトン可溶分の溶液粘度の範囲のグラフト共重合体(B)を製造する方法としては特に限定されるものではないが、好ましい例としては芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体がグラフト重合されたグラフト成分(b−3)の調製時に、重合速度を司る重合開始剤量(硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、ロンガリットおよびヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤の場合は、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩の使用量あるいはロンガリットの使用量あるいはヒドロパーオキサイドの使用量)を制限させる方法、あるいは成分(b−3)の調製時に用いる芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体中に各種メルカプタン化合物、スチレンダイマー等の連鎖移動剤を混合使用する方法あるいは重合温度を制限する方法、あるいは使用する乳化剤の使用量を制限する方法等が挙げられ、このうちアセトン不溶分の量およびアセトン可溶成分の溶液粘度の制御のしやすさを考慮すると、重合速度を司る重合開始剤量(硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩、ロンガリットおよびヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤の場合は、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩の使用量あるいはロンガリットの使用量あるいはヒドロパーオキサイドの使用量)を制限させる方法が好ましい。
【0025】
グラフト共重合体(B)のアセトン可溶成分の溶液粘度は、グラフト共重合体を含む樹脂組成物中でのグラフト共重合体の分散性およびグラフト共重合体と熱可塑性樹脂との界面の強度に影響を及ぼし、グラフト共重合体中のアセトン可溶成分の溶液粘度が極端に低い場合は、グラフト共重合体(B)と熱可塑性樹脂(C)との界面の強度低下により耐衝撃性が低下し、またグラフト共重合体(B)中のアセトン可溶成分の溶液粘度が極端に高い場合には、樹脂組成物中でのグラフト共重合体(B)の分散性が低下するため、特に低温度成形した成形品の光沢度が低くなってしまう。
すなわち、グラフト共重合体(B)を含む樹脂組成物の耐衝撃性と低温度成形時の光沢を両立させるためには、本発明のごときグラフト共重合体(B)のアセトン可溶成分の溶液粘度を特定の範囲とすることが必要であり、これによって低温〜高温に至る幅広い成形条件範囲で光沢度の高く、耐衝撃性に優れた成形品が成形可能となり、工業的利用価値を極めて向上させることができる。
【0026】
本発明の熱可塑性樹脂を構成する熱可塑性樹脂(C)としては、本発明の効果である良好な耐衝撃性、耐候性および顔料着色性の発現性を考慮すると、ポリカーボネート樹脂、PBT樹脂、PET樹脂、芳香族アルケニル化合物成分、シアン化ビニル化合物成分、(メタ)アクリル酸エステル成分から選ばれた少なくとも一種の単量体成分を構成成分とする(共)重合体、芳香族アルケニル化合物成分、シアン化ビニル化合物成分およびN置換マレイミド成分を構成成分とする共重合体が好ましい。特に、芳香族アルケニル化合物成分、シアン化ビニル化合物成分、(メタ)アクリル酸エステル成分から選ばれた少なくとも一種の単量体成分を構成成分とする(共)重合体が好ましい。
好ましい熱可塑性樹脂(C)の具体例としては、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、スチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂およびアクリロニトリル−スチレン−メチルメタクリレート三元共重合体である。
【0027】
本発明の熱可塑性樹脂樹脂組成物中のグラフト共重合体(A)、グラフト共重合体(B)および熱可塑性樹脂(C)の含有量は特に限定されるものではないが、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、剛性及び耐候性を考慮すると、全樹脂組成物を100重量%に対し、グラフト共重合体(A)が1〜50重量%、グラフト共重合体(B)が1〜50重量%および熱可塑性樹脂(C)が30〜98重量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくはグラフト共重合体(A)が5〜30重量%、グラフト共重合体(B)が5〜30重量%および熱可塑性樹脂(C)が40〜90重量%の範囲である。
【0028】
本発明の熱可塑性樹脂樹脂組成物は上記グラフト共重合体(A)、グラフト共重合体(B)および熱可塑性樹脂(C)以外の第四成分として、ブタジエン系重合体に、芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物から選ばれた少なくとも一種の単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(D)を必要に応じて含有することができる。
上記グラフト共重合体(D)は熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性を補うための成分であり、具体的にはABSグラフト共重合体、MBSグラフト共重合体等である。グラフト共重合体(D)の配合量としては特に限定されるものではないが、得られる樹脂組成物の耐候性を考慮すると全樹脂組成物を100重量%に対し0〜20重量%の範囲が好ましく、さらに好ましくは1〜10重量%の範囲である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は上記グラフト共重合体(A)、グラフト共重合体(B)、熱可塑性樹脂(C)および必要に応じてグラフト共重合体(D)を通常使用される各種溶融混練機を用いて溶融混合することにより製造することができる。溶融混練する際には、押出機または、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、ロール等の混練機等を用いればよい。
本発明のグラフト共重合体(A)を含む熱可塑性樹脂組成物は、そのまま成形品の製造原料に供することができる。また、さらに必要に応じて染料、顔料、安定剤、補強剤、充填材、難燃剤、発泡剤、滑剤、可塑剤等を配合することができる。
また、本発明のグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物は、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等の各種成形方法によって、目的の成形品とされる。
本発明のグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物の工業的用途例としては、車両部品特に無塗装で使用される各種外装・内装部品、壁材、窓枠等の建材部品、食器、玩具、掃除機ハウジング、テレビジョンハウジング、エアコンハウジング等の家電部品、インテリア部材、船舶部材および通信機器ハウジング等が挙げられる。
【0029】
【実施例】
以下実施例により本発明を説明する。
参考例におけるラテックス中のゴム質重合体およびグラフト共重合体の重量平均粒子径は、MATEC APPLIED SCIENCES社製サブミクロン粒度分布測定器CHDF−2000を用いて測定した。
参考例におけるゴム質重合体の全重量に対する100nm未満の粒子の重量は、ゴム質重合体ラテックスの重量換算粒子径分布をMATEC APPLIED SCIENCES社製サブミクロン粒度分布測定器CHDF−2000を用いて測定し、これより100nm以下の粒子径重量を求めた。
参考例におけるグラフト共重合体中のアセトン不溶分量の測定は、冷却管および加熱器を備えたフラスコ中にグラフト共重合体約2.5g(秤量)およびアセトン80mlを入れ、加熱器により65℃で3時間加熱抽出処理を行い、冷却後、内液を日立工機(株)遠心分離器を用いて15000回転/分の条件で30分処理することによって、アセトン不溶分を分離し、ついで上澄みを取り除いた後の沈殿物を乾燥後、その重量を測定し、以下の式で算出した。
アセトン不溶分(重量%)=分離処理後の沈殿物乾燥重量/アセトン抽出前のグラフト共重合体重量 ×100 ・・・ (1)
また、参考例におけるグラフト共重合体中のアセトン可溶成分の還元粘度の測定は、上記グラフト共重合体のアセトン溶媒での抽出、次いで遠心分離処理によるアセトン不溶分の分離によって得た上澄み液中のアセトン溶媒を減圧蒸発させることによってアセトン可溶成分を析出回収し、次いでこのアセトン可溶成分0.2gを100ccのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の溶液粘度を自動粘度計(SAN DENSHI(株)製)を用いて25℃で測定し、同条件で測定した溶媒粘度よりアセトン可溶分の還元粘度を求めた。
参考例におけるグラフト共重合体中の乳化剤残渣の量は、グラフト共重合体中に含まれる乳化剤残渣をアセトン溶媒中で、メタノールと塩酸によりメチルエステル化させた後、濾過し、濾液中の溶媒を減圧除去した後の残渣をノルマルヘキサンに溶解させ、これを水洗した後、ガスクロマトグラフィー(島津製作所(株)製GC−14B)にて定量分析し求めた。
また、参考例におけるグラフト共重合体の1%重量減少温度は、セイコー電子工業(株)製「TG/DTA200」を用い、昇温条件20℃/分の条件で測定した。
【0030】
(参考例1)ポリブタジエンラテックス(a’−1)の製造
下記各成分を10Lのステンレス製オートクレーブに仕込み、50℃に昇温した。
イオン交換水 145重量部
不均化ロジン酸カリウム 1.0重量部
オレイン酸カリウム 1.0重量部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート二水和物 0.4重量部
無水硫酸ナトリウム 0.1重量部
ターシャリードデシルメルカプタン 0.3重量部
ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド 0.5重量部
1,3−ブタジエン 26.2重量部
スチレン 1.4重量部
続いて、ピロリン酸ナトリウムを0.5重量部と、硫酸第一鉄を0.005重量部と、イオン交換水を5重量部からなる混合物を添加し、重合を開始した。
重合温度57℃で、1,3−ブタジエンが68.6重量部、スチレンが3.6重量部からなる混合物を圧力ポンプにて滴下供給した。
次いで、重合転化率が40%に達した時点で、ノルマルドデシルメルカプタンを0.3重量部添加し、さらに重合を継続した。8時間後、残存した1,3−ブタジエンを除去し、固形分が40.2重量%、重合転化率が97%、重量平均粒子径70nmのジエン系重合体ラテックス(a’−1)を得た。
【0031】
(参考例2) 肥大化用酸基含有共重合体(K−1)の合成
冷却管、ジャケット加熱器および撹拌装置を備えた反応器内に、窒素気流下で下記各成分を仕込み、撹拌を行いながら内温65℃に昇温した。
オレイン酸カリウム 2.2重量部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(70%溶液) 3.6重量部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート二水和物 0.3重量部
硫酸第一鉄七水塩 0.003重量部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.009重量部
イオン交換水 200重量部
これに、n−ブチルアクリレートを81.5重量部と、メタクリル酸を18.5重量部と、クメンヒドロパーオキシドを0.5重量部からなる混合物を2時間かけて添加し、添加終了後も2時間そのままの温度で重合を継続した。重合転化率は98%であり、平均粒子径150nmの肥大化用酸基含有共重合体ラテックス(K−1)を得た。
【0032】
(参考例3)グラフト共重合体(A−1)の製造
参考例1で調製したジエン系重合体ラテックス(a’−1)100重量部(固形分として)に、参考例2で調製した肥大化用酸基含有共重合体(K−1)ラテックス2.1重量部(固形分として)を撹拌しながら添加し、さらに30分間撹拌を続け肥大化ジエン系ゴムラテックスを得た。肥大化後の重合体の平均粒子径は380nmであった。
次に、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器に、この肥大化ジエン系ゴムラテックス10重量部(固形分として)、アルケニルコハク酸ジカリウム0.3重量部、イオン交換水175重量部およびブチルアクリレート40重量部、アリルメタクリレート0.16重量部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.08重量部およびターシャリーブチルヒドロパーオキサイト0.1重量部の混合物を添加した。
この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。内部の液温が50℃となった時点で、硫酸第一鉄0.00015重量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00045重量部およびロンガリット0.24重量部を蒸留水5重量部に溶解させた水溶液を添加した後内温を75℃に上昇させ、ラジカル重合を開始せしめた。1時間この状態を維持し、アクリレート成分の重合を完結させ肥大化ポリブタジエンとブチルアクリレートゴムとの複合ゴム重合体のラテックスを得た。
この複合ゴム重合体ラテックスを少量サンプリングして測定した複合ゴム重合体の重量平均粒子径は、300nmで、全重量に対する100nm未満の粒子の重量は8重量%であった。
次に、ロンガリット0.15重量部およびアルケニルコハク酸ジカリウム0.65重量部を蒸留水10重量部に溶解した水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル6.3重量部、スチレン18.7重量部およびターシャリーブチルヒドロパーオキサイト0.11重量部の混合液を1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了から5分後、硫酸第一鉄0.001重量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003重量部およびロンガリット0.15重量部を蒸留水5重量部に溶解させた水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル6.3重量部、スチレン18.7重量部およびターシャリーブチルヒドロパーオキサイト0.19重量部およびノルマルオクチルメルカプタン0.014重量部の混合液を1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を10分間保持した後冷却し、内温が60℃となった時点で、抗酸化剤(アンテージW500)0.2重量部およびアルケニルコハク酸ジカリウム0.2重量部を蒸留水5重量部に溶解した水溶液を添加した。以上の操作により、肥大化ポリブタジエンとブチルアクリレートゴムとの複合ゴムに、アクリロニトリル/スチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体のラテックスを得た。
得られたラテックス中の重合体の平均粒子径は、325nmであった。
次いで、上記重合ラテックスを全ラテックスの1.2倍量の45℃に加熱した硫酸0.6%水溶液中に撹拌しながら投入し、重合体を凝析させた。次いで液温を65℃に上昇させ5分間保持した後、液温を90まで上昇させた。次いで析出物を分離した後、この回収物を10倍量の蒸留水中に投入後10分間攪拌することで洗浄を実施した。この分散液を遠心脱水機に脱水処理し、さらに80℃で16時間乾燥し、グラフト共重合体(A−1)を得た。
グラフト共重合体(A−1)中の残存乳化剤残渣量は、1.3重量%、アセトン不溶分量は82重量%、アセトン可溶成分の還元粘度は0.65dl/gおよび1%重量減少温度は320℃であった。
【0033】
(参考例4)ポリオルガノシロキサン(b−1)ラテックスの製造
オクタメチルシクロテトラシロキサン98重量部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2重量部を混合してシロキサン系混合物100重量部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67重量部を溶解した蒸留水300重量部を添加し、ホモミキサーにて10000回転/分で2分間攪拌した後、ホモジナイザーに200kg/cm2の圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
一方、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10重量部と蒸留水90重量部とを注入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。
この水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間に亘って滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し、冷却した。次いでこの反応物を苛性ソーダ水溶液で中和した。
このようにして得られたラテックスを170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、17.7重量%であった。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサンの重量平均粒子径は0.05μmであった。
【0034】
(参考例5) グラフト共重合体(B−1)の製造
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、参考例4で製造したポリオルガノシロキサンラテックス(b−1)45.2重量部、エマールNC−35(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート;花王(株)製)0.2重量部を採取し、蒸留水148.5重量部を添加混合した後、ブチルアクリレート42重量部、アリルメタクリレート0.3重量部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.1重量部およびt−ブチルハイドロパーオキサイト0.11重量部の混合物を添加した。
この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。内部の液温が60℃となった時点で、硫酸第一鉄0.000075重量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.000225重量部およびロンガリット0.2重量部を蒸留水10重量部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始せしめた。アクリレート成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、アクリレート成分の重合を完結させポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムとの複合ゴムのラテックスを得た。 反応器内部の液温が70℃に低下した後、ロンガリット0.25重量部を蒸留水10重量部に溶解した水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル2.5重量部、スチレン7.5重量部およびt−ブチルハイドロパーオキサイト0.05重量部の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後、硫酸第一鉄0.001重量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003重量部、ロンガリット0.2重量部およびエマールNC−35(花王(株)製)0.2重量部を蒸留水10重量部に溶解させた水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル10重量部、スチレン30重量部およびt−ブチルハイドロパーオキサイト0.2重量部の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を0.5時間保持した後キュメンヒドロパーオキサイト0.05重量部を添加し、さらに温度60℃の状態を0.5時間保持した後冷却した。このラテックスにラテムルASK(アルケニルコハク酸ジカリウム塩;花王(株)製)を0.5重量部添加し、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムとからなる複合ゴムに、アクリロニトリル、スチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体(B−1)の重合ラテックスを得た。
ラテックス中のグラフト共重合体の重量平均粒子径は、0.12μmであった。 次いで酢酸カルシウムを1重量%の割合で溶解した水溶液150重量部を60℃に加熱し攪拌した。この中へグラフト共重合体のラテックス100重量部を徐々に滴下し凝固した。次いで析出物を分離し、洗浄した後、遠心器(国産遠心器(株)製;H−130E)を用いて1800回転毎秒の条件で2分間脱水処理した。
次いで、85℃で24時間乾燥し、グラフト共重合体(B−1)を得た。
また、グラフト共重合体(B−1)中のアセトン不溶分は85重量%であり、アセトン可溶成分の還元粘度は0.58dl/gであった。
【0035】
(実施例1〜4および比較例1〜2)
参考例3で製造したグラフト共重合体(A−1)、参考例5で製造したグラフト共重合体(B−1)、アクリロニトリル成分29重量%およびスチレン成分71重量%よりなり、N,N−ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.60dl/gであるアクリロニトリル−スチレン共重合体(SAN樹脂)およびポリブタジエンを60重量%含有するABSグラフト共重合体を表1に示す樹脂配合にて計量し、さらに旭電化(株)製「アデカスタブC」0.3重量部、ステアリン酸バリウム0.3重量部、エチレンビスステアリルアミド0.4重量部、旭電化(株)製「アデカスタブ63P」0.2重量部、旭電化(株)製「アデカスタブLA−36」0.2重量部およびカーボンブラック(三菱化学(株)製#960)0.8重量部を添加した後ヘンシェルミキサーを用いて混合し、この混合物を230℃に加熱した脱気式押出機(池貝鉄工(株)製PCM−30)に供給し、混練してペレットを得た。
得られたペレットを用いて測定したMI、アイゾット衝撃強度、ロックウェル硬度、顔料着色性、成形光沢の結果を表1に示す。
また、上記の樹脂配合のうち、使用するカーボンブラックに変えて酸化チタン(CR60−2:石原産業(株)製)を3重量部添加した以外は同様の方法で白着色ペレットを作製したのち、これを用いて白着色成形板を成形した。この白着色板を用いた耐候性試験結果を表1に示す。
【0036】
メルトフローレイト(MI)の測定は、ASTM D1238に準拠する方法で、バレル温度200℃、加重49Nの条件で実施した。
アイゾット衝撃強度の測定は、ASTM D256に準拠した方法により行い、特に低温雰囲気下でのアイゾット衝撃強度の測定は−30℃雰囲気下で12時間以上アイゾット試験片を放置した後、測定を行うことにより行った。
表面硬度(ロックウェル硬度)の測定は、ASTM D785に準拠する方法により行った。
顔料着色性評価は、サンプルとして100mm×100mm×3mm板の成形を日本製鋼所(株)製射出成形機「J85−ELII」を用いてシリンダー設定温度230℃、金型温度60℃、インジェクションスピード50%の条件で行った。得られた黒着色成形板について、JIS Z8729に準拠した色相測定(L*測定)によって行った。
光沢度は、100mm×100mm×3mm板の成形を日本製鋼所(株)製射出成形機J85−ELIIを用いてシリンダー設定温度230℃、金型温度60℃、インジェクションスピード50%の条件で行い、得られた成形板を用いて測定した。
耐候性は、100mm×100mm×3mm白着色板をサンシャインウエザーメーター(スガ試験機(株)製)でブラックパネル温度63℃、サイクル条件60分(降雨:12分)にて1000時間処理した後の色差計で測定した変色の度合い(ΔE)および下記式(2)で算出した光沢度保持率により評価した。
光沢度保持率(%)=(1000時間曝露後光沢度−曝露前光沢度)/曝露前光沢度 ×100 ・・・ (2)
【0037】
【表1】
【0038】
実施例および比較例より、次のことが明らかとなった。
1) 実施例1〜4のグラフト共重合A−1とグラフト共重合B−1をともに含有する熱可塑性樹脂組成物は、いずれも高い常温および低温雰囲気下でのアイゾット衝撃強度、良好な顔料着色性および良好な耐候性を示す。
2) 比較例1のグラフト共重合体A−1のみを含有する樹脂組成物は、良好な常温および低温雰囲気下でのアイゾット衝撃強度を示すものの、顔料着色性および耐候性が不良であり、このように意匠性と耐候性に劣る樹脂材料は、例えば無塗装で降雨および太陽光に曝される用途に使用することが困難であり、工業的価値が低い。
3) 比較例2のグラフト共重合体B−1のみを含有する樹脂組成物は、良好な常温でのアイゾット衝撃強度、顔料着色性および耐候性を示すものの、低温雰囲気下でのアイゾット衝撃強度が低く、特に耐寒性が必要となる工業用途に使用することができないため工業的価値が低い。
【0039】
【発明の効果】
本発明は以上説明したとおりであり、次のように特別に顕著な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1) 本発明に係るグラフト共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、顔料着色性、耐候性に優れる。
2) 特に耐候性、顔料着色性と低温雰囲気下での耐衝撃性のバランスは、従来知られているASA樹脂では得られない非常に高いレベルであり、各種工業材料とりわけ耐候性材料としての利用価値は極めて高い。
さらに、グラフト共重合体(B)の重量平均粒子径を0.07〜0.2μmとすることで、耐衝撃性と顔料着色性をより向上できる。
さらにまた、熱可塑性樹脂(C)として、芳香族アルケニル化合物成分、シアン化ビニル化合物成分、(メタ)アクリル酸エステル成分から選ばれた少なくとも一種の単量体成分を構成成分とする(共)重合体を用いることで、耐衝撃性、耐候性および顔料着色性をより向上できる。
さらに、ブタジエン系重合体に、芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル及びシアン化ビニル化合物から選ばれた少なくとも一種の単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(D)を含有させることで、耐衝撃性をより向上できる。
Claims (7)
- 下記(A)、(B)及び(C)の各成分を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
(A)(a−1)酸基含有共重合体ラテックスで重量平均粒子径300nm以上に肥大化したジエン系ゴム1〜30重量%の存在下で(a−2)グラフト交叉剤と架橋剤を併用して(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分70〜99重量%を乳化重合して得られる複合ゴム系ゴム質重合体((a−1)+(a−2))20〜80重量%の存在下に、(a−3)芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体20〜80重量%((a−1)+(a−2)+(a−3)=100重量%)を乳化グラフト重合してなるグラフト共重合体。
(B)(b−1)ポリオルガノシロキサン1〜20重量部の存在下に、(b−2)多官能性単量体0.01〜10重量%、(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜99.9重量%およびこれと共重合可能なビニル単量体0〜30重量%からなる単量体混合物99〜80重量部をポリオルガノシロキサンとの総量が100重量部になるように配合しラジカル重合して得られる複合ゴム重合体((b−1)+(b−2))20〜80重量%の存在下に、(b−3)芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルまたはシアン化ビニル化合物から選ばれた少なくとも一種の単量体20〜80重量%((b−1)+(b−2)+(b−3)=100重量%)を乳化グラフト重合して得られるグラフト共重合体であって、アセトン不溶分を70〜99重量%含み、かつアセトン可溶分の0.2g/100ccN,N−ジメチルホルムアミド溶液として25℃で測定した還元粘度が0.30〜0.70dl/gであるグラフト共重合体。
(C)熱可塑性樹脂。 - グラフト共重合体(B)の重量平均粒子径が0.07〜0.2μmであることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂(C)が、芳香族アルケニル化合物成分、シアン化ビニル化合物成分、(メタ)アクリル酸エステル成分から選ばれた少なくとも一種の単量体成分を構成成分とする(共)重合体であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記複合ゴム系ゴム質重合体((a−1)+(a−2))は、該ゴム質重合体の全重量に対する粒子径100nm未満の粒子の重量が5〜20%である請求項1ないし3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記グラフト共重合体(A)における前記架橋剤は、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記グラフト共重合体(A)を1〜50重量%、前記グラフト共重合体(B)を1〜50重量%および熱可塑性樹脂(C)を30〜98重量%含む請求項1ないし5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- さらに、ブタジエン系重合体に、芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル及びシアン化ビニル化合物から選ばれた少なくとも一種の単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(D)を含有することを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
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