JP6735534B2 - 複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体、複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物、熱可塑性樹脂組成物、およびその成形品の製造方法 - Google Patents

複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体、複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物、熱可塑性樹脂組成物、およびその成形品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐衝撃性、流動性および成形外観に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供し得る複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体および複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物と、これを含む耐衝撃性、流動性および成形外観に優れた熱可塑性樹脂組成物およびこの熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品に関する。
近年、社会の情報化が急速に普及しコンピュータ、プリンタ、コピー機等OA機器の需要が増大すると共に、モバイルコンピュータをはじめとする携帯情報機器の需要が増大している。その為、該情報機器等に使用されているハウジングや部品等の熱可塑性樹脂製の成形品の薄肉化、軽量化、成形外観の向上に対する要求が高まってきている。
従来、このような要求特性を満たすために、シリコーンアクリルゴム、コア−シェル型ゴム等の特定のゴムを配合したり、ゴム含量を高くすることで、成形品の耐衝撃性を改良する試みがなされている。例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3には、シリコーン/アクリル系複合ゴムを配合することによる衝撃強度の改良が開示されている。しかしながら、これらの方法では、特定の複合ゴムを配合することで、得られる熱可塑性樹脂組成物の流動性が低下するため、薄肉軽量の成形品の製造が困難になると共に、得られた成形品の光沢が低下する問題があった。
特許文献4には、上記の特定の複合ゴムを配合した熱可塑性樹脂組成物において、材料樹脂の分子量を特定範囲に制御することにより、流動性を改善することが開示されている。しかしながら、この方法でも、流動性と耐衝撃性を共に十分に改善することはできず、このため、薄肉成形性に優れた高流動性の樹脂組成物であって、光沢等の成形外観に優れ、耐衝撃性にも優れた熱可塑性樹脂組成物は実現されていないのが現状である。
特開平6−1897号公報 特開平7−207085号公報 特開平6−240127号公報 特開平8−127686号公報
本発明の目的は、流動性、耐衝撃性、および成形外観に優れる熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
なお、本発明において、「成形外観」とは、成形品そのものの外観のみならず、後掲の実施例の項における評価項目のように、メタル蒸着外観や塗装外観などの広義の成形外観をさす。
本発明者らは、鋭意検討した結果、スラリーまたはラテックス状態の複合ゴム系グラフト共重合体(A)と、シアン化ビニル系単量体単位を必須成分とする低粘度の硬質共重合体(B)をラテックス状態で混合して、凝固させて得られる複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体または複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物により、上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、以下を要旨とする。
[1] スラリーまたはラテックス状態の複合ゴム系グラフト共重合体(A)100質量部(固形分)と、下記(1)〜(2)を満たす、ラテックス状態の硬質共重合体(B)15〜45質量部(固形分換算)とを混合し、得られた混合液から回収されてなる複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)。
(1)硬質共重合体(B)を構成する全単量体単位中のシアン化ビニル系単量体単位の割合が10〜60質量%
(2)硬質共重合体(B)0.2gをジメチルホルムアミド100ml中に溶解した溶液の25℃で測定した還元粘度が0.3〜2.0dl/g
[2] [1]において、前記混合液を凝固させることで得られる複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)を固液分離した後、乾燥して得られる複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)。
[3] [1]又は[2]において、複合ゴム系グラフト共重合体(A)の複合ゴムがポリオルガノシロキサン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴムである複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)。
[4] [1]ないし[3]のいずれかにおいて、複合ゴム系グラフト共重合体(A)は、複合ゴム10〜80質量%に、芳香族アルケニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体成分90〜20質量%(ただし、複合ゴムと単量体成分との合計で100質量%)を乳化グラフト重合させて得られることを特徴とする複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)。
[5] スラリーまたはラテックス状態の複合ゴム系グラフト共重合体(A)100質量部(固形分)と、下記(1)及び(2)を満たすラテックス状態の硬質共重合体(B)15〜45質量部(固形分換算)とを混合する工程を経て得られる複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)。
(1)硬質共重合体(B)を構成する全単量体単位中のシアン化ビニル系単量体単位の割合が10〜60質量%
(2)硬質共重合体(B)0.2gをジメチルホルムアミド100ml中に溶解した溶液の25℃で測定した還元粘度が0.3〜2.0dl/g
[6] [5]において、スラリーまたはラテックス状態の複合系ゴムグラフト共重合体(A)とラテックス状態の硬質共重合体(B)とを混合する工程と、得られた混合液を凝固させる工程を経て得られる複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)。
[7] [5]又は[6]において、複合ゴム系グラフト共重合体(A)の複合ゴムがポリオルガノシロキサン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴムである複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)。
[8] [5]ないし[7]のいずれかにおいて、複合ゴム系グラフト共重合体(A)は、複合ゴム10〜80質量%に、芳香族アルケニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体成分90〜20質量%(ただし、複合ゴムと単量体成分との合計で100質量%)を乳化グラフト重合させて得られることを特徴とする複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)。
[9] [1]ないし[4]のいずれかに記載の複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
[10] [5]ないし[8]のいずれかに記載の複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)を含有することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
[11] [9]又は[10]に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
本発明の複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体および複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物によれば、耐衝撃性、流動性および成形外観に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、複雑異形形状の成形品や薄肉、小型の成形品であっても、良好な成形加工性と優れた形状精度のもとに歩留りよく成形することができ、耐衝撃性に優れ、機械的耐久性に優れる上に、成形外観に優れ、商品価値の高い成形品とすることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)及び複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)は、スラリーまたはラテックス状態の複合ゴム系グラフト共重合体(A)と、シアン化ビニル系単量体単位を必須成分とする低粘度の硬質共重合体(B)のラテックスとを、所定の割合で、共に液状態で混合する(以下「ラテックス混合」と称す。)工程を経て得られるものである。
このように、複合ゴム系グラフト共重合体(A)と硬質共重合体(B)とをラテックス混合することにより、複合ゴム系グラフト共重合体(A)粒子と硬質共重合体(B)粒子が微細な単一の粒子レベルで均一に混合され、その後の凝固工程でその均一混合状態のまま凝固する結果、複合ゴム系グラフト共重合体(A)本来の耐衝撃性と、硬質共重合体(B)本来の流動性とをバランスよく良好に発揮させることができる複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)または複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)を得ることが可能となる。
また、複合ゴム系グラフト共重合体(A)が、ゴム状重合体として複合ゴムを用い、複合ゴムにグラフト単量体成分をグラフト重合させてなるものであるため、良好な成形外観を得ることができる。
これに対して、グラフト共重合体と硬質共重合体(B)とをラテックス混合しても、グラフト共重合体のゴム成分が複合ゴムではなく、ポリブタジエン等の単一系ゴムであるグラフト共重合体を用いた場合には、後掲の比較例8に示されるように、成形外観に劣るものとなる。
また、複合ゴム系グラフト共重合体(A)のラテックスから複合ゴム系グラフト共重合体(A)を凝固、回収して得た複合ゴム系グラフト共重合体(A)の粉体と、硬質共重合体(B)のラテックスから回収した硬質共重合体(B)の粉体とを、共に粉体の状態で混合(以下「パウダー混合」と称す。)しても、複合ゴム系グラフト共重合体(A)と硬質共重合体(B)とは、ある程度の大きさに凝集した凝集粒子として単に混合されるだけであり、両者が微小粒子のレベルで均一分散した状態で混合されることはないため、耐衝撃性、流動性、および成形外観の改善効果をバランスよく発揮し得るグラフト共重合体含有粉体を得ることができず、特に耐衝撃性が劣るものとなる。
<複合ゴム系グラフト共重合体(A)>
本発明で用いるスラリーまたはラテックス状態の複合ゴム系グラフト共重合体(A)は、複合ゴム粒子の存在下に、共重合可能な単量体成分を乳化グラフト重合することにより製造することができる。
この複合ゴム系グラフト共重合体(A)の製造に用いられる複合ゴムとしては、ポリブタジエン等のジエン系ゴムとブチルアクリルゴム等のアルキル(メタ)アクリレート系ゴムとを複合してなるジエン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴムや、ポリオルガノシロキシサン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴムなどが挙げられるが、成形外観と耐衝撃性の点において、ポリオルガノシロキサン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴムが好ましい。
なお、複合ゴムは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
以下においては、複合ゴムとしてポリオルガノシロキサン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴムを用いた複合ゴム系グラフト共重合体(A)について主として説明するが、本発明に係る複合ゴム系グラフト共重合体(A)の複合ゴムは何らポリオルガノシロキサン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴムに限定されるものではない。
ポリオルガノシロキサン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴムは、例えば、ポリオルガノシロキサンゴムのラテックス中へアルキル(メタ)アクリレートを添加し、通常のラジカル重合開始剤を作用させることにより、ポリオルガノシロキサンの相にポリアルキル(メタ)アクリレート粒子が分散し、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとが交互に絡み合って復党一体化されている構造のポリオルガノシロキサン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム粒子として製造される。
具体的には本発明では、ポリオルガノシロキサンゴムラテックスに予めラジカル開始剤を添加し、これにアルキル(メタ)アクリレート単量体を滴下して、アルキル(メタ)アクリレートの重合を開始させる。すなわち、滴下されたアルキル(メタ)アクリレートはポリオルガノシロキサンに含浸され、ポリオルガノシロキサンを膨潤させる。この状態でアルキル(メタ)アクリレートは重合が進行し、複合ゴム粒子となる。このようにして乳化重合により調製された複合ゴム粒子はビニル系単量体とグラフト重合可能である。
なお、アルキル(メタ)アクリレートは、ラテックス状のポリオルガノシロキサンに一括して添加しても良いし、連続的に、あるいは断続的に添加しても良い。また、ポリアルキルアクリレートゴムは、架橋構造を有していることが好ましい。
(ポリオルガノシロキサン)
複合ゴムを構成するポリオルガノシロキサンは、特に限定されるものではないが、好ましくはビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンである。ビニル重合性官能基を有するポリオルガノシロキサンは、ジメチルポリシロキサン、ビニル重合性官能基を有するシロキサン、及び必要に応じてシロキサン系架橋剤を重合することにより得られる。
ポリオルガノシロキサンの製造に用いるジメチルポリシロキサンとしては、3量体以上の環状ジメチルポリシロキサンが挙げられ、特に限定されるものではないが、3〜7量体のものが好ましい。具体的にはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。粒子径分布の制御のしやすさの点からは、主成分としてオクタメチルシクロテトラシロキサンを用いることが好ましい。
また、ビニル重合性官能基を有するシロキサンは、ビニル重合性官能基を含有し、かつ上記のジメチルポリシロキサンとシロキサン結合を介して結合しうる反応性基を有するものであり、ジメチルポリシロキサンとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物を用いることが好ましい。具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエトキシメチルシラン、δ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシラン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン、p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン等のビニルフェニルシラン、さらにγ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンが挙げられる。これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、1種を単独でまたは2種以上の混合物として用いることができる。
ビニル重合性官能基を有するポリオルガノシロキサンを製造する際に用いる前述のジメチルポリシロキサンと上記のビニル重合性官能基を有するシロキサンとの割合は、これらの合計100質量部に対して、ジメチルポリシロキサンが97〜99.8質量部、ビニル重合性官能基を有するシロキサンが0.2〜3質量部、特に、ジメチルポリシロキサンが99〜99.7質量部、ビニル重合性官能基を有するシロキサンが0.3〜1質量部となるような割合とすることが好ましく、この範囲よりもジメチルポリシロキサンが多く、ビニル重合性官能基を有するシロキサンが少ないと成形外観が劣るものとなる。逆に、ジメチルポリシロキサンが少なく、ビニル重合性官能基を有するシロキサンが多いと、耐衝撃性が劣るものとなる。
シロキサン系架橋剤としては、3官能性または4官能性のシラン系架橋剤、例えばトリ
メトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエ
トキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。シロキサン系架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。シロキサン系架橋剤は、必ずしも必要とされないが、ポリオルガノシロキサンを製造する場合には、シロキサン系架橋剤を用いることが好ましい。シロキサン系架橋剤はポリオルガノシロキサンに対して0.2〜3質量%、特に0.3〜1質量%の割合で用いることが、成形外観と衝撃性バランスの点で好ましい。
ビニル重合性官能基を有するポリオルガノシロキサンの製法としては、特に制限はないが、ジメチルポリシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサン、またはさらに必要に応じてシロキサン系架橋剤を含むシロキサン混合物を乳化剤と水によって乳化させたエマルションを、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用して微粒子化した後、酸触媒を用いて高温下で重合させ、次いでアルカリ性物質により酸を中和する方法が挙げられる。その場合、重合に用いる酸触媒の添加方法としては、シロキサン混合物、乳化剤および水とともに混合する方法と、シロキサン混合物が微粒子化したエマルションを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサンを製造する際に用いる乳化剤は特に制限されないが、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤が好ましい。アニオン系乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル燐酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル燐酸カルシウムが挙げられる。ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルが挙げられる。これらの乳化剤は、1種を単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
シロキサン混合物、乳化剤、水を混合する方法は、高速攪拌による混合、ホモジナイザーなどの高圧乳化装置による混合などがあるが、ホモジナイザーを使用した方法は、ポリオルガノシロキサンラテックスの粒子径の分布が狭くなるので好ましい方法である。
ポリオルガノシロキサンの重合に用いる酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類および硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸類などが挙げられる。これらの酸触媒は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリオルガノシロキサンを得る際の重合温度は、特に限定しないが50℃以上が好ましく、70℃以上、例えば75〜80℃がより好ましい。また、ポリオルガノシロキサンを得る際の重合時間は特に限定しないが2時間以上が好ましく、5時間以上、例えば7〜10時間がより好ましい。重合の停止は、反応液を冷却、さらにラテックスを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア水溶液などのアルカリ性物質でpH6〜8に中和することによって行なうことができる。
複合ゴムの製造に用いるポリオルガノシロキサンの粒子径は、後述の好適な複合比と粒子径の複合ゴム粒子を得るために、重量平均粒子径で0.03〜0.2μm、特に0.04〜0.1μmであることが好ましい。このポリオルガノシロキサンの重量平均粒子径は、後掲の実施例の項に記載される方法で測定される。
(アルキル(メタ)アクリレート)
複合ゴムを構成するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート;ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ドデシルメタクリレート等のアルキル基の炭素数が6以上のアルキルメタクリレートが挙げられる。熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品の耐衝撃性及び光沢が向上することから、アルキル(メタ)アクリレートの中でも、n−ブチルアクリレートが好ましい。これらのアルキル(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
複合ゴムの製造において、上記のアルキル(メタ)アクリレートの割合は、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレート系重合体との合計を100質量%としたときに50〜97質量%であることが好ましい。特に80〜94質量%の割合で用いることが好ましい。この範囲よりもアルキル(メタ)アクリレートの使用量が少ないと発色性が劣るものとなり、多いと耐衝撃性が劣るものとなる。
(架橋剤)
複合ゴムの製造に際しては、上記のアルキル(メタ)アクリレートから得られるポリアルキル(メタ)アクリレート成分に架橋構造を導入するために、架橋剤を添加して重合させることが好ましい。複合ゴム中に含まれる重合した架橋剤は、複合ゴム系グラフト共重合体(A)の製造の際にビニル単量体がグラフト結合するためのグラフト交叉点としても機能する。架橋剤としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、ブチレンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋剤の使用量には特に制限はないが、架橋剤とアルキル(メタ)アクリレートとの合計100質量部に対して0.1〜5.0質量部となる量であることが好ましい。
(複合ゴムの製造)
複合ゴムを製造する方法としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのラテックスにア
ルキル(メタ)アクリレート及び必要に応じて用いられる架橋剤を添加し、公知のラジカル重合開始剤を使用して重合して、複合ゴムのラテックスを得る方法が挙げられる。ポリオルガノシロキサンのラテックスにアルキル(メタ)アクリレート及び必要に応じて用いられる架橋剤を添加する方法としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのラテックスにアルキル(メタ)アクリレート及び必要に応じて用いられる架橋剤を一括で添加する方法、ポリオルガノシロキサンのラテックスにアルキル(メタ)アクリレート及び必要に応じて用いられる架橋剤を一定速度で滴下する方法が挙げられる。
複合ゴムのラテックスを製造する際には、ラテックスを安定化させ、複合ゴムの平均粒
子径を制御するために、乳化剤を添加することができる。複合ゴムのラテックスを製造する際に用いる乳化剤としては、前述のポリオルガノシロキサンのラテックスを製造する際に用いる乳化剤と同様のものが挙げられ、アニオン系乳化剤及びノニオン系乳化剤が好ましい。
重合開始剤としては特に限定しないが、例えば、過酸化物、アゾ系開始剤又は酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が挙げられる。これらの中では、レドックス系開始剤、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・還元剤・過酸化物を組み合わせたものを用いることが好ましい。
過酸化物としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、p−メ
ンタンハイドロパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロ
パーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を
併用することができる。還元剤としては、例えば、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、L−アスコルビン酸、フルクトース、デキストロース、ソルボース、イノシトールが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
複合ゴムを得る際の重合温度は、特に限定しないが50℃以上が好ましく、60℃以上、例えば60〜80℃がより好ましい。また、複合ゴムを得る際の重合時間は特に限定しないが30分以上が好ましく、1時間以上、例えば1〜2時間がより好ましい。
複合ゴム系グラフト共重合体(A)の製造に用いる複合ゴムラテックスは、上記のようにして製造されるが、ラテックス中の複合ゴムのゲル含有量は、好ましくは50〜99質量%、より好ましくは60〜95質量%で、特に好ましくは70〜85質量%である。ゲル含有量がこの範囲内であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物の特性、特に、耐衝撃強度を向上させることができる。
なお、複合ゴムのゲル含有量を測定するには、具体的には、秤量した複合ゴムを、適当な溶剤に室温(23℃)で20時間かけて溶解させ、次いで、100メッシュ金網で分取して、金網上に残った不溶分を60℃で24時間乾燥した後秤量する。分取前の複合ゴムに対する不溶分の割合(質量%)を求め、複合ゴムのゲル含有量とする。複合ゴムの溶解に用いる溶剤としては、アセトンを用いると測定が行いやすい。
また、複合ゴム粒子の粒子径は特に限定されるものではないが、体積平均粒子径0.1〜1μmであることが好ましく、0.2〜0.5μmであることがより好ましい。なお、複合ゴム粒子の体積平均粒子径は、グラフト重合前であれば、光学的な方法で測定することができる。また、グラフト重合した後は、染色剤により複合ゴム粒子を染色した後に透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて平均粒子径を算出することができる。
(複合ゴム系グラフト共重合体(A)の製造)
上記のような複合ゴムの存在下に、1種以上のビニル系単量体からなるグラフト単量体
成分をラジカル重合する乳化グラフト重合によって、ラテックス状の複合ゴム系グラフト共重合体(A)を得ることができる。上記ビニル系単量体としては、特に限定はないが、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族アルケニル化合物;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸エステル;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物が挙げられる。これらビニル系単量体は1種を単独または2種以上併用することができる。また、グラフト重合において用いるビニル系単量体中には、グラフトポリマーの分子量やグラフト化率を調整するための各種連鎖移動剤やグラフト交叉剤を添加することができる。
これらのグラフト単量体成分のうち、芳香族アルケニル化合物、好ましくはスチレンと、シアン化ビニル化合物、好ましくはアクリロニトリルの混合物を使用すると、複合ゴム系グラフト共重合体(A)の熱安定性が優れるため好ましい。この場合、スチレン等の芳香族アルケニル化合物とアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物との割合は、芳香族アルケニル化合物50〜90質量%に対してシアン化ビニル化合物10〜50質量%であることが好ましい(ただし、芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物との合計で100質量%とする。)。
複合ゴム系グラフト共重合体(A)は、複合ゴム10〜80質量%に対して、グラフト単量体成分90〜20質量%を乳化グラフト重合させて得られるもの(ただし、複合ゴムと単量体成分との合計で100質量%)であると、得られる成形品の外観が優れるため好ましい。さらに好ましくは、複合ゴム系グラフト共重合体(A)中、複合ゴムは30〜70質量%で、グラフト単量体成分は70〜30質量%である。
複合ゴムへのグラフト単量体成分のグラフト重合方法としては、複合ゴムのラテックス
にグラフト単量体成分を添加し、1段又は多段で重合する方法が挙げられる。多段で重合する場合には、複合ゴムのラテックスの存在下で、グラフト単量体成分を分割添加又は連続添加して重合することが好ましい。このような重合方法により良好な重合安定性が得られ、且つ所望の粒子径及び粒子径分布を有するラテックスを安定に得ることができる。グラフト単量体成分の重合に用いる重合開始剤としては、前述のアルキル(メタ)アクリレートの重合に用いる重合開始剤と同様のものが挙げられる。
グラフト単量体成分を重合する際には、ラテックスを安定化させ、得られる複合ゴム系グラフト共重合体(A)の平均粒子径を制御するために、乳化剤を添加することができる。グラフト単量体成分を重合する際に用いる乳化剤としては、特に限定しないが前述のポリオルガノシロキサンのラテックスを製造する際に用いる乳化剤と同様のものが挙げられ、アニオン系乳化剤及びノニオン系乳化剤が好ましい。グラフト単量体成分を重合する際の乳化剤の使用量としては、特に限定しないが得られる複合ゴム系グラフト共重合体(A)100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。
一般的なグラフト共重合体の製造では、乳化重合により、ゴム状重合体に単量体成分をグラフト重合することによって、グラフト共重合体のラテックスを得て、得られたグラフト共重合体のラテックスを凝固させ、洗浄、脱水、乾燥工程を経ることでグラフト共重合体の粉体を得るが、本発明においては、複合ゴム系グラフト共重合体(A)のラテックスをそのまま、或いは、凝固させてスラリー状として、次の混合工程に供する。
複合ゴム系グラフト共重合体(A)のラテックスから複合ゴム系グラフト共重合体(A)を凝固させてスラリー状とする場合、例えば、複合ゴム系グラフト共重合体(A)ラテックスを、凝固剤を溶解させた熱水中に投入することによってスラリー状に凝析させる湿式法を採用することができる。ここで、用いる凝固剤としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸や、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩等が挙げられ、重合で用いた乳化剤に応じて選定される。すなわち、乳化剤として脂肪酸石鹸やロジン酸石鹸等のカルボン酸石鹸のみが使用されている場合にはいかなる凝固剤を用いても複合ゴム系グラフト共重合体(A)を凝固、析出させることができるが、滞留熱安定性の点から無機酸を用いて複合ゴム系グラフト共重合体(A)を凝固、析出させることが好ましい。アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の酸性領域でも安定な乳化力を示す乳化剤が含まれている場合には、上記無機酸では回収液が濁り、複合ゴム系グラフト共重合体(A)の析出が困難であるため、凝固剤として金属塩を用いる必要がある。
このようにして得られる複合ゴム系グラフト共重合体(A)のグラフト率(複合ゴム系グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分量と不溶分量及びグラフト共重合体(A)中のゴム質重合体の重量から求める。)、及びアセトン可溶分の還元粘度(0.2g/dL、N,N−ジメチルホルムアミド溶液として25℃で測定)に特に制限はなく、要求性能によって任意の構造のものを使用することができるが、物性バランスの観点から、グラフト率は5〜150%であることが好ましく、還元粘度は0.2〜2.0g/dLであることが好ましい。
なお、複合ゴム系グラフト共重合体(A)のグラフト率及びアセトン可溶分の還元粘度は、具体的には、後述の実施例の項に記載される方法で求められる。
また、複合ゴム系グラフト共重合体(A)のラテックスについて、μトラック法により求められる複合ゴム系グラフト共重合体(A)の体積平均粒子径は、0.1〜0.5μmであることが、成形外観と耐衝撃性のバランスにおいて好ましい。また、複合ゴム系グラフト共重合体(A)ラテックスまたはスラリーの固形分濃度は、次の混合工程における作業性や生産性の面から、10〜50質量%程度であることが好ましい。
<硬質共重合体(B)>
本発明で用いられる硬質共重合体(B)は、硬質共重合体(B)を構成する全単量体単位中にシアン化ビニル系単量体単位を10〜60質量%の割合で必須成分として含み、その他の成分として、芳香族アルケニル単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位等からなる群から選ばれる少なくとも1種以上を40〜90質量%含むものである(ただし、シアン化ビニル系単量体単位とその他の単量体単位との合計で100質量%)。硬質共重合体(B)中のシアン化ビニル系単量体単位の含有量は、好ましくは15〜55質量%、より好ましくは20〜50質量%である。この割合が10質量%未満であった場合には、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が劣るものとなり、60質量%を超える場合には、流動性、成形外観が低下し、また、熱可塑性樹脂組成物の熱着色の問題が顕著になる。
硬質共重合体(B)の製造に用いることのできるシアン化ビニル系単量体を構成するシアン化ビニル化合物、芳香族アルケニル単量体単位を構成する芳香族アルケニル化合物、および(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を構成する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、前記複合ゴム系グラフト共重合体(A)の製造に用いる単量体成分として例示したものを使用することができる。
硬質重共合体(B)は乳化重合法で製造することで、ラテックス状態の硬質共重合体(B)を得ることができ、これをそのまま次の混合工程に供することができ、好ましい。その際に用いる乳化剤や開始剤については、複合ゴム系グラフト共重合体(A)の製造に用いるものとして例示したものと同様のものを使用することができる。
硬質共重合体(B)は、その0.2gをジメチルホルムアミド100ml中に溶解した溶液について25℃で測定した還元粘度(以下、単に「還元粘度」と称す。)が0.3〜2.0dl/gである必要がある。この還元粘度は、好ましくは0.35〜1.0dl/g、より好ましくは0.4〜0.6dl/gである。硬質共重合体(B)の還元粘度が0.3dl/g未満であった場合には、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が劣るものとなり、一方、2.0dl/gを超える場合には熱可塑性樹脂組成物の流動性および成形外観の低下が顕著になる。
硬質共重合体(B)の還元粘度を調節する方法としてはどの様な方法でも構わないが、連鎖移動剤の使用またはその使用量を変更する方法、用いる開始剤量を変更する方法、重合温度や原料となる単量体の供給方法を変更する方法等が例示される。
本発明で用いる硬質共重合体(B)ラテックスの固形分濃度は、次の混合工程における作業性や生産性の面から、20〜50質量%程度であることが好ましい。
<混合工程>
スラリーまたはラテックス状態の複合ゴム系グラフト共重合体(A)とラテックス状態の硬質共重合体(B)とを混合する方法には特に制限はなく、スラリーまたはラテックス状態の複合ゴム系グラフト共重合体(A)にラテックス状態の硬質共重合体(B)を添加して混合してもよく、ラテックス状態の硬質共重合体(B)にスラリーまたはラテックス状態の硬質共重合体(B)を添加して混合してもよい。混合時間は特に限定しないが3分以上が好ましく、均一混合性と生産性の面から、混合時間は5〜30分の範囲とすることが好ましい。混合時間は複合ゴム系グラフト共重合体(A)に硬質共重合体(B)が混ざり始めた時間から計測が開始される。
硬質共重合体(B)は、複合ゴム系グラフト共重合体(A)100質量部(固形分として)に対し、15〜45質量部(固形分換算として)、好ましくは20〜40質量部、さらに好ましくは25〜35質量部となるように混合する。硬質共重合体(B)の混合割合が15質量部未満であると流動性の改良効果が小さく、45質量部を超えると得られる熱可塑性樹脂組成物の衝撃性が低下する。
<凝固工程>
上記の混合工程で得られた複合ゴム系グラフト共重合体(A)と硬質共重合体(B)の混合液から複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)を析出させる方法としては、凝固剤を溶解させた熱水中に、混合液のラテックスを投入することによってスラリー状に凝析させる湿式法が挙げられる。
湿式凝固法に用いる凝固剤としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸や、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩等が挙げられ、複合ゴム系グラフト共重合体(A)及び硬質共重合体(B)の重合で用いた乳化剤(スラリー状態の複合ゴム系グラフト共重合体(A)とラテックス状態の硬質共重合体(B)を混合する場合は、硬質共重合体(B)の重合で用いた乳化剤)に応じて選定される。すなわち、乳化剤として脂肪酸石鹸やロジン酸石鹸等のカルボン酸石鹸のみが使用されている場合にはいかなる凝固剤を用いても複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)を析出させることができるが、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の酸性領域でも安定な乳化力を示す乳化剤が含まれている場合には上記無機酸では不十分であり、凝固剤として金属塩を用いる必要がある。
硫酸等の凝固剤を用いて湿式凝固させる場合、熱水中の凝固剤濃度は1〜10質量%、熱水の温度は50〜100℃程度が好ましく、加熱した凝固剤水溶液の使用量は、上記複合ゴム系グラフト共重合体(A)と硬質共重合体(B)の混合ラテックス100質量部に対して10〜150質量部程度とすると、効率的な凝固、回収を行うことができ、好ましい。
上記の湿式凝固法で得られた複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)は、スラリー中から固液分離して回収し、残存する乳化剤残渣を水中に溶出させて除去するために洗浄する。
この洗浄条件としては特に制限されないが、後述の乾燥後の複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)100質量%中に含まれる乳化剤残渣量が0.5〜2質量%の範囲となる条件で洗浄することが好ましい。複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)中の乳化剤残渣が0.5質量%以上であれば、得られる複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)およびこれを含む樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。一方、複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)中の乳化剤残渣が2質量%以下であれば、樹脂組成物を高温成形した際にガス発生を抑制できる。以下、乾燥後の複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)中の乳化剤残渣の含有量を単に「乳化剤残渣含有量」と称す。
<乾燥工程>
上記のようにして複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)を固液分離、洗浄した後、乾燥状態の複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)を得る方法としては、洗浄後の複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)のスラリーを遠心またはプレス脱水機等で脱水した後に気流乾燥機等で乾燥する方法、圧搾脱水機や押出機等で脱水と乾燥とを同時に実施する方法等が挙げられる。かかる方法によって、粉体または粒子状の乾燥複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)が得られる。
なお、圧搾脱水機や押出機から排出された複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)を回収せず、直接、樹脂組成物を製造する押出機や成形機に送って成形品とすることも可能である。
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述した本発明の複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)および/または複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)を含み、必要に応じて複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)および/または複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)以外の熱可塑性樹脂成分を含有するものである。本発明の熱可塑性樹脂組成物が含有し得るその他の熱可塑性樹脂の例としては、ジエン系ゴム、アルキル(メタ)アクリレート系ゴム、エチレン−プロピレン系共重合ゴム、ポリオルガノシロキサン系ゴム、ジエン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム、ポリオルガノシロキサン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル三元共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、これらの樹脂成分の1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物が、本発明の複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)および/または複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)以外のその他の樹脂成分を含む場合、本発明の複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)および/または複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)による優れた流動性と耐衝撃性を有効に得る上で、本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる全樹脂成分100質量部中のその他の樹脂成分の割合は80質量部以下であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物はまた、必要に応じて染料、顔料、安定剤、補強剤、充填材、難燃剤、発泡剤、滑剤、可塑剤等の添加剤を含有していてもよい。
<成形品>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法等の各種成形方法によって、目的の成形品とされる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品の工業的用途例としては、車両部品、特に無塗装で使用される各種外装・内装部品、壁材、窓枠等の建材部品、食器、玩具、掃除機ハウジング、テレビジョンハウジング、エアコンハウジング等の家電部品、インテリア部材、船舶部材および通信機器ハウジング等が挙げられる。
以下に、合成例、実施例、及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら制限されるものではない。
なお、以下において、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。
[複合ゴムの製造]
<合成例1:ポリオルガノシロキサン(L−1)の製造>
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部を溶解した蒸留水300部を添加し、ホモミキサ−にて10000回転/分で2分間攪拌した後、ホモジナイザ−に300kg/cm2の圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンを得た。一方、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と蒸留水90部とを注入し、10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を製造した。この水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間に亘って滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し、冷却した。次いでこの反応物を水酸化ナトリウム水溶液で中和した。このようにして得られたポリオルガノシロキサンラテックス(L―1)を170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、17.7%であった。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサンの重量平均粒子径は0.05μmであった。
なお、ポリオルガノシロキサンの質量平均粒子径は以下の方法で求めた。
ラテックスを脱イオン水で濃度約3%に希釈したものを試料として、米国MATEC社
製CHDF2000型粒度分布計を用いて重量平均粒子径を測定した。
測定はMATEC社が推奨する下記の標準条件で行なった。
カートリッジ:粒子分離用キャピラリー式カートリッジ(商品名;C−202)
キャリア液 :専用キャリア液(商品名;2XGR500)
キャリア液の液性:中性
キャリア液の流速:1.4ml/分
キャリア液の圧力:約4,000psi(2,600kPa)
測定温度 :35℃
試料使用量:0.1ml
また、標準粒子径物質としては、米国DUKE社製の粒子径既知の単分散ポリスチレン
で、40〜800nmの粒子径の範囲で合計12点の粒子径のものを用いた。
[グラフト共重合体の製造]
以下の合成例2,3で製造したグラフト共重合体のグラフト率及びアセトン可溶分の還元粘度は以下の方法で測定した。
<グラフト共重合体のグラフト率>
グラフト共重合体2.5gにアセトン80mLを加え65℃の湯浴で3時間還流し、アセトン可溶分の抽出を行った。残留したアセトン不溶物を遠心分離により分離し、乾燥した後の重量を測定し、グラフト共重合体中のアセトン不溶物の重量割合を算出した。得られたグラフト共重合体中のアセトン不溶物の重量割合より次の式を用いて、グラフト率を算出した。
Figure 0006735534
<グラフト共重合体のアセトン可溶分の還元粘度>
グラフト共重合体のアセトン可溶分の濃度が0.2dL/gとなるように製造したN,N−ジメチルホルムアミド溶液について、ウベローデ粘度計を用いて25℃での還元粘度:ηsp/C(単位:dL/g)を測定した。
<合成例2:複合ゴム系グラフト共重合体(A−1)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、合成例1にて得たポリオルガノシロキサンラテックス(L−1)を固形分換算で6.25部と蒸留水182部、ブチルアクリレート56.25部、アルケニルコハク酸ジカリウム0.7部、アリルメタクリレ−ト0.2部、ブチレンジメタクリラート0.08部およびt−ブチルハイドロパーオキサイド0.1部を添加し、混合した。この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行なった後60℃まで昇温した。続いて硫酸第一鉄0.00008部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0002部およびナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.17部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始した。アクリレ−ト成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。その後30分間70℃で維持し、アクリレ−ト成分の重合を完結させ分岐鎖状ポリオルガノシロキサンゴムとブチルアクリレ−トゴムとの複合ゴム(ポリオルガノシロキサン/ブチルアクリレート複合比=6.25/56.25)のラテックスを得た。この複合ゴムの体積平均粒子径は、マイクロトラック(日機装株式会社製、「ナノトラック150」)を用いて測定した。測定した体積平均粒子径は0.17μmであった。また、前述の方法で測定したゲル含有量は85%であった。
この複合ゴムラテックスが入っている反応器内部の液温が70℃のままで、アルケニルコハク酸ジカリウム0.2部、硫酸第一鉄0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部およびナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル9.4部、スチレン28.1部およびt−ブチルヒドロペルオキシド0.225部の混合液を100分間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を20分間保持した後、クメンヒドロペルオキシド0.048部を添加し、30分間75℃で保持後冷却し、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレ−トゴムとからなる複合ゴムに、アクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフト重合させた複合ゴム系グラフト共重合体(A−1)のラテックス(固形分29.0%)を得た。
この複合ゴム系グラフト共重合体(A−1)は複合ゴム50%にグラフト単量体成分としてアクリロニトリル及びスチレン50%をグラフトしたものであり、μトラック法より求めたラテックス中の複合ゴム系グラフト共重合体(A−1)の体積平均粒子径は0.17μm、グラフト率は51.2%、アセトン可溶分の還元粘度は0.52g/dLであった。
<合成例3:ブタジエンゴム系グラフト共重合体(A−2)の製造>
合成例2において、複合ゴムラテッスクを、ポリブタジエンラテックス(ゲル含有量85%、平均粒子径0.29μm、固形分34.0%)に変更した以外は同様にして重合を行い、ブタジエンゴム系グラフト共重合体(A−2)のラテックス(固形分28.9%)を得た。μトラック法より求めたラテックス中のグラフト共重合体の体積平均粒子径は0.18μm、グラフト率は61.4%、アセトン可溶分の還元粘度は0.49g/dLであった。
[硬質共重合体の製造]
以下の合成例で製造した硬質共重合体の還元粘度は、ラテックスから回収した粉末状の共重合体0.2gをジメチルホルムアミド100ml中に溶解し、ウベローデ型粘度計を用いて25℃で測定した。
<合成例4:硬質共重合体(B−1)の製造>
攪拌装置および温度計、ジャケット式温度調節器を有した5Lガラス製反応器に、水335.7部、アルケニルコハク酸ジカリウム2.0部、アクリロニトリル(AN)25部、スチレン(ST)75部、t−ドデシルメルカプタン0.4部を投入し、攪拌下で内温を70℃に昇温した。これに、過硫酸ナトリウム0.25部、水15.3部からなる水溶液を添加してラジカル重合を開始した。ジャケット温度をその温度のまま維持すると30分後から急激に発熱し、内温は85℃に上昇した。発熱が収まってから内温を70℃で1時間保持した後冷却し、固形分21.9%、還元粘度0.59dl/gである硬質共重合体(B−1)のラテックスを得た。
<合成例5:硬質共重合体(B−2)の製造>
合成例4において、t−ドデシルメルカプタンを0.8部に変更した以外は同様にして重合を行い、固形分22.0%、還元粘度0.41dl/gである硬質共重合体(B−2)のラテックスを得た。
<合成例6:硬質共重合体(B−3)の製造>
合成例4において、t−ドデシルメルカプタンを1.2部に変更した以外は同様にして重合を行い、固形分21.5%、還元粘度0.32dl/gである硬質共重合体(B−3)のラテックスを得た。
<合成例7:硬質共重合体(b−1)の製造>
合成例4において、t−ドデシルメルカプタンを添加しなかったこと以外は同様にして重合を行い、固形分21.7%、還元粘度4.31dl/gである硬質共重合体(b−1)のラテックスを得た。
<合成例8:硬質共重合体(b−2)の製造>
合成例4において、t−ドデシルメルカプタン1.6部に変更した以外は同様にして重合を行い、固形分21.6%、還元粘度0.26dl/gである硬質共重合体(b−2)のラテックスを得た。
<合成例9:硬質共重合体(b−3)の製造>
合成例4において、アクリロニトリルを9部、スチレンを91部に変更した以外は同様にして重合を行い、固形分21.6%、還元粘度0.27dl/gである硬質共重合体(b−3)のラテックスを得た。
<合成例10:硬質共重合体(b−4)の製造>
合成例4において、アクリロニトリルを65部、スチレンを35部に変更した以外は同様にして重合を行い、固形分21.6%、還元粘度0.71dl/gである硬質共重合体(b−4)のラテックスを得た。
[グラフト共重合体含有粉体の製造と評価]
[実施例1]
<複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C−1)の製造>
温度計、攪拌装置および蒸気吹き込み式温度調節器を有する凝固装置で、酢酸カルシウムを5%の割合で溶解した水溶液80部を75℃に加熱し攪拌した。
合成例2で得られた複合ゴム系グラフト共重合体(A−1)のラテックス100部(固形分換算)と合成例3で得られた硬質共重合体(B−1)のラテックス25部(固形分換算)を5分間混合し、この混合液を上記の加熱した酢酸カルシウム水溶液に徐々に滴下して凝固させた。次いで析出物を分離し、乳化剤残渣含有量が1%以下となるように洗浄した後乾燥し、複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C−1)を得た。
<熱可塑性樹脂組成物の製造>
複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C−1)70部と、懸濁重合法によって製造したアクリロニトリル−スチレン共重合体30部(ユーエムジー・エービーエス(株)社製「UMG AXS レジン S102N」)をヘンシェルミキサ−を用いて混合し、この混合物を260℃に加熱した押出機に供給し、混練してペレットを得た。
<試験片の作製>
上記のペレットを用い、4オンス射出成形機(日本製鋼所(株)製)にて、シリンダー温度260℃、金型温度60℃の条件で成形して、長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの試験片1を得た。
また、同様して、シリンダー温度260℃、金型温度60℃、射出率が5g/秒の条件で、長さ100mm、幅100mm、厚み2mmの板状の成形体2を得た。
<評価>
(シャルピー衝撃強度の測定)
ISO 179に準拠して、23℃雰囲気下、試験片1にてシャルピー衝撃強度を測定した。
(メルトボリュームレート(MVR)の測定)
ISO 1133規格に従い、220℃−98Nの条件で熱可塑性樹脂組成物ペレットのMVRを測定した。なお、MVRは熱可塑性樹脂組成物の流動性の目安となる。
(拡散反射率の測定)
成形体2の表面に、真空蒸着法(ULVAC製 VPC−1100)により、真空度6.0×10−3Pa、成膜速度10Å/秒の条件で厚み50nmのアルミニウム膜を成膜(ダイレクト蒸着)した。得られた成形体2の成膜面について、反射率計((有)東京電色製 TR−1100AD)にて拡散反射率(%)を測定した。拡散反射率は、その値が低いほど成形品の表面が光輝性に優れることを示す。
以上の評価結果を表1−Aに示す。
[実施例2〜3、比較例1〜6、8]
グラフト共重合体および硬質共重合体として、表1−A、表1−Bに示すものを、表1−A、表1−Bに示す割合で用い、実施例1と同様にして混合、凝固、乾燥を行って、それぞれグラフト共重合体含有粉体(C−2)〜(C−3)、(c−1)〜(c−6)、(c−8)を得、実施例1と同様に、得られたグラフト共重合体含有粉体とアクリロニトリル−スチレン共重合体とを混合して熱可塑性樹脂組成物を製造し、同様に評価を行った。結果を表1−A、表1−Bに示す。
[実施例4]
<複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C−4)の製造>
酢酸カルシウムを5%の割合で溶解した水溶液80部を75℃に加熱し攪拌した。この中へ合成例2で得られた複合ゴム系グラフト共重合体(A−1)のラテックス100部(固形分換算)を滴下して凝固させた。得られたスラリーと合成例5で得られた硬質共重合体(B−2)のラテックス25部(固形分換算)を5分間混合し、この混合液を、75℃に加熱した5%酢酸カルシウム水溶液80部へ徐々に滴下して凝固させた。次いで析出物を分離し、乳化剤残渣含有量が1%以下となるように洗浄した後乾燥して複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C−4)を得た。
<熱可塑性樹脂組成物の製造と評価>
実施例1と同様に、得られた複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C−4)とアクリロニトリル−スチレン共重合体とを混合して熱可塑性樹脂組成物を製造し、同様に評価を行って、結果を表1−Aに示した。
[比較例7]
<グラフト共重合体含有粉体(c−7)の製造>
酢酸カルシウムを5%の割合で溶解した水溶液80部を75℃に加熱し攪拌した。この中へ合成例2で得られた複合ゴム系グラフト共重合体(A−1)のラテックス100部(固形分換算)を滴下して凝固させた。
同様に、75℃に加熱した5%酢酸カルシウム水溶液20部に、合成例5で得られた硬質共重合体(B−2)25部(固形分換算)を滴下して凝固させた。これらの析出物を、それぞれ、分離し、洗浄、乾燥した後混合し、グラフト共重合体含有粉体(c−7)を得た。
<熱可塑性樹脂組成物の製造と評価>
実施例1と同様に、得られたグラフト共重合体含有粉体(c−7)とアクリロニトリル−スチレン共重合体とを混合して熱可塑性樹脂組成物を製造し、同様に評価を行って、結果を表1−Bに示した。
Figure 0006735534
以上、各実施例及び比較例の結果から、次のことが明らかとなった。
実施例1〜4の熱可塑性樹脂組成物は、シャルピー衝撃強度を保持しつつ、優れた溶融流動性、成形外観を示すものである。
一方、比較例1〜8の熱可塑性樹脂組成物は、シャルピー衝撃強度、流動性、成形外観のいずれかの項目において劣るものであった。具体的には、比較例1の熱可塑性樹脂組成物は、硬質共重合体の還元粘度が高すぎるため、流動性、成形外観が劣る。比較例2の熱可塑性樹脂組成物は硬質共重合体の還元粘度が低すぎるため、シャルピー衝撃強度が低下した。比較例3では硬質共重合体の添加量が少ないため流動性が劣る。比較例4では硬質共重合体の添加量が過剰なため、シャルピー衝撃強度が低下した。比較例5では硬質共重合体のアクリロニトリル単位の含有率が少ないためシャルピー衝撃強度が低下した。比較例6では硬質共重合体のアクリロニトリル単位の含有率が多過ぎるため流動性、成形外観が低下した。比較例7の熱可塑性樹脂組成物は硬質共重合体をパウダー混合したため、シャルピー衝撃強度が低下した。比較例8の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体のゴムが、複合ゴムではないため、成形外観に劣る。
本発明の複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)および/または複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)を用いた本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性を保持しつつ、高い流動性を発現しかつ良好な成形外観を呈するものである。この耐衝撃性、流動性、成形外観のバランスは、従来の熱可塑性樹脂組成物に比べて非常に優れているので、各種工業用材料としての利用価値が極めて高い。

Claims (7)

  1. ポリオルガノシロキサン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム10〜80質量%に、芳香族アルケニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体成分90〜20質量%(ただし、複合ゴムと単量体成分との合計で100質量%)を重合させて得られる、グラフト率が5〜51.2%の複合ゴム系グラフト共重合体(A)のスラリーまたはラテックス100質量部(固形分)と、下記(1)〜(2)を満たす、ラテックス状態の硬質共重合体(B)15〜45質量部(固形分換算)とを混合し、得られた混合液から複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)を回収する複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)の製造方法。
    (1)硬質共重合体(B)を構成する全単量体単位中のシアン化ビニル系単量体単位の割合が10〜60質量%、芳香族アルケニル系単量体単位の割合が90〜40質量%(ただし、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族アルケニル系単量体単位の合計は100質量%)
    (2)硬質共重合体(B)0.2gをジメチルホルムアミド100ml中に溶解した溶液の25℃で測定した還元粘度が0.3〜2.0dl/g
  2. 請求項1において、前記混合液を凝固させることで得られる複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)を固液分離した後、乾燥して複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)を回収する複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)の製造方法。
  3. ポリオルガノシロキサン/アルキル(メタ)アクリレート系複合ゴム10〜80質量%に、芳香族アルケニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体成分90〜20質量%(ただし、複合ゴムと単量体成分との合計で100質量%)を重合させて得られる、グラフト率が5〜51.2%の複合ゴム系グラフト共重合体(A)のスラリーまたはラテックス100質量部(固形分)と、下記(1)及び(2)を満たすラテックス状態の硬質共重合体(B)15〜45質量部(固形分換算)とを混合する工程を経て複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)を得る複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)の製造方法。
    (1)硬質共重合体(B)を構成する全単量体単位中のシアン化ビニル系単量体単位の割合が10〜60質量%、芳香族アルケニル系単量体単位の割合が90〜40質量%(ただし、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族アルケニル系単量体単位の合計は100質量%)
    (2)硬質共重合体(B)0.2gをジメチルホルムアミド100ml中に溶解した溶液の25℃で測定した還元粘度が0.3〜2.0dl/g
  4. 請求項3において、スラリーまたはラテックス状態の複合系ゴムグラフト共重合体(A)とラテックス状態の硬質共重合体(B)とを混合する工程と、得られた混合液を凝固させる工程を経て複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)を得る複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)の製造方法。
  5. 請求項1又は2に記載の複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)の製造方法で製造された複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体(C)を用いることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  6. 請求項3又は4に記載の複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)の製造方法で製造された複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物(D)を用いることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  7. 請求項5又は6に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法で製造された熱可塑性樹脂組成物を成形する成形品の製造方法。
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