JP2019108425A - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】耐衝撃性、耐候性、発色性および耐傷付き性に優れる熱可塑性樹脂組成物および成形品を提供する。【解決手段】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)とグラフト共重合体(C)とメタクリル酸エステル樹脂(D)とを含有し、前記グラフト共重合体(A)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を含み、前記グラフト共重合体(C)は、ポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)を含む複合ゴム状重合体(B)を含み、前記グラフト共重合体(A)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径が310nm〜550nmであり、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率が1〜34質量%である。本発明の成形品は、前記熱可塑性樹脂組成物を含有する。【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物およびその成形品に関する。
成形品の耐衝撃性を向上させることによって、成形品の用途が拡大するだけでなく、成形品の薄肉化や大型化への対応が可能になる等、工業的な有用性が非常に高くなる。そのため、成形品の耐衝撃性の向上については、これまでに様々な手法が提案されている。これら手法のうち、ゴム質重合体と硬質樹脂とを組み合わせた樹脂材料を用いることによって成形品の耐衝撃性を高める手法は、すでに工業化されている。このような樹脂材料としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル(ASA)樹脂、アクリロニトリル−エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体−スチレン(AES)樹脂等が挙げられる。
また、成形品に高い意匠性が求められる場合には、これら樹脂材料から得られる成形品に塗装処理を行い、高い外観品質を得ている。しかし、塗装処理には、環境への負荷が大きい、工程が煩雑である、製造コストが高くなる、等の問題がある。そのため、成形品の塗装処理を省略することがある。この場合、成形品には、耐衝撃性等の機械物性以外に、例えば、下記の特性が要求される。
・直射日光や雨にさらされても変色しにくいこと(耐候性)。
・塗装と同等の良好な発色を有すること(発色性)。
・傷が付かない、または傷が目立たないこと(耐傷付き性)。
耐候性の良好な成形品を得ることができる樹脂材料としては、ゴム質重合体としてエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、アクリル酸エステル系ゴム、水素添加系ゴム(水素添加ブタジエン系ゴム等)、シリコーン系ゴム等を用いたものが知られている。
耐傷付き性の良好な成形品としては、ゴム質重合体の割合を低くして成形品の表面を硬くしたもの、潤滑剤(シリコーンオイル、オレフィンワックス等)を添加して成形品の表面の滑り性を良くしたもの、摺動性の高いグラフトを添加するもの等が知られている。
耐衝撃性が高く、また耐候性に優れた成形品を得ることができる樹脂材料としては、例えば、下記のものが提案されている。
(1)架橋オレフィン樹脂にビニル系重合体がグラフトしたグラフト共重合体と特定の粒子径を有するポリオルガノシロキサンと、(メタ)アクリル酸エステル系単量体からなる複合ゴム状重合体にビニル系重合体がグラフトしたグラフト共重合体からなる熱可塑性樹脂組成物(特許文献1)。
また、耐傷付き性と耐衝撃性の高い樹脂材料としては、例えば、下記のものが提案されている。
(2)特定の分子量および粒子径を有するエチレン・αオレフィン共重合体の存在下に芳香族ビニルとシアン化ビニルとを含む単量体混合物をグラフト重合したグラフト共重合体と、特定の粒子径を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位からなる複合ゴム状重体にビニル系単量体を重合したグラフト共重合体からなる熱可塑性樹脂組成物(特許文献2)。
特開2004−346187 特開2014−177623
しかしながら、特許文献1に記載の熱可塑性樹脂組成物は耐候性が不十分であり、特許文献1に記載の熱可塑性樹脂を用いた成形品は屋外での使用に制限があった。
特許文献2に記載の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品は発色性が不十分であり、意匠性が求められる用途での制限があった。
本発明は、耐衝撃性、耐候性、発色性および耐傷付き性に優れる熱可塑性樹脂組成物および成形品を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を包含する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)とグラフト共重合体(C)とメタクリル酸エステル樹脂(D)とを含有し、
前記グラフト共重合体(A)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体を含むビニル系単量体成分(m1)を重合することにより得られる共重合体であり、
前記グラフト共重合体(C)は、ポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)を含む複合ゴム状重合体(B)の存在下に、ビニル系単量体成分(m2)を重合することにより得られる共重合体であり、
前記メタクリル酸エステル樹脂(D)は、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体成分(m3)を重合することにより得られる樹脂であり、
前記グラフト共重合体(A)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径が310nm〜550nmであり、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の下記測定方法によって測定されるゲル含有率が1〜34質量%である。
<ゲル含有率の測定方法>
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の試料[E1]0.5gを、200mL、110℃のトルエン中に5時間浸漬して溶液を得る。次いで、前記溶液を200メッシュ金網にて濾過し、残渣を乾燥し、その乾燥物[E2]の質量(g)を測定する。下記式(1)から、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率を求める。
ゲル含有率(質量%)=[E2]/[E1]×100 ・・・(1)
本発明の成形品は、前記熱可塑性樹脂組成物を含有する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、耐衝撃性、耐候性、発色性および耐傷付き性に優れた成形品を得ることができる。
本発明の成形品は、耐衝撃性、耐候性、発色性および耐傷付き性に優れる。
耐傷付き性試験を説明する概略図である。
「熱可塑性樹脂組成物」
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)とグラフト共重合体(C)とメタクリル酸エステル樹脂(D)とを含有する組成物である。
[グラフト共重合体(A)]
グラフト共重合体(A)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(m1)を重合して得られた共重合体である。換言すれば、グラフト共重合体(A)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)部分と、ビニル系単量体成分(m1)の重合体であるビニル系重合体部分とからなる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は水に分散されてオレフィン樹脂水性分散体(p)とされていてもよい。
なお、グラフト共重合体(A)においては、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下にビニル系単量体成分(m1)がどのように重合しているか、特定することは困難である。例えば、ビニル系単量体成分(m1)が重合したビニル系重合体としては、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)に結合したものと、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)に結合していないものとが存在する。また、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)に結合したビニル系重合体の分子量、構成単位の割合等を特定することも困難である。すなわち、グラフト共重合体(A)をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的ではないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、本発明おいては、グラフト共重合体(A)は「エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(m1)を重合して得られたもの」と規定するすることがより適切とされる。
グラフト共重合体(A)は、典型的には、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を含むオレフィン樹脂水性分散体(p)の中でビニル系単量体成分(m1)を重合して得られたものである。
<エチレン・α−オレフィン共重合体(a)>
グラフト共重合体(A)を得る際に使用するエチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンとを公知の重合方法によって共重合することによって得られた、エチレン単位とα−オレフィン単位とを含む共重合体である。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、非共役ジエン単位をさらに含んでもよい。
α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−イコセン、1−ドコセン等が挙げられ、成形品の耐衝撃性の点から、炭素数が3〜20のα−オレフィンが好ましく、プロピレンが特に好ましい。
非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−シクロヘプタジエン、1,5−シクロオクタジエン等が挙げられる。非共役ジエンのなかでも、得られる成形品の耐衝撃性や耐傷付き性が優れることから、ジシクロペンタジエンおよび5−エチリデン−2−ノルボルネンの少なくとも一方が好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のエチレン単位の含有率は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を構成する全ての構成単位の合計を100質量%としたときに、45〜80質量%が好ましく、50〜75質量%がより好ましい。エチレン単位の含有率が前記範囲内であれば、成形品の耐傷付き性、耐衝撃性のバランスがさらに優れる。
エチレン単位とα−オレフィン単位の合計の含有率は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を構成する全ての構成単位の合計を100質量%としたときに、90〜100質量%が好ましく、95〜99質量%がより好ましい。エチレン単位とα−オレフィン単位の合計の含有率が前記範囲内であれば、成形品の耐傷付き性、耐衝撃性のバランスがさらに優れる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の質量平均分子量(Mw)は、15×10〜35×10が好ましく、25×10〜33×10がより好ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の質量平均分子量(Mw)が前記範囲内であれば、成形品の耐傷付き性、耐衝撃性が優れる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の分子量分布(Mw/数平均分子量(Mn))は、1.0〜3.0が好ましく、1.9〜3.0がより好ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の分子量分布(Mw/Mn)が前記範囲内であれば、成形品の耐衝撃性が優れる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定し、標準ポリスチレンで換算した値である。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の製造方法は、限定されない。エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、通常、メタロセン触媒またはチーグラー・ナッタ触媒を用いてエチレンとα−オレフィンとを、またはエチレンとα−オレフィンと非共役ジエンとを共重合することによって製造される。
メタロセン触媒としては、遷移金属(ジルコニウム、チタン、ハフニウム等)にシクロペンタジエニル骨格を有する有機化合物、ハロゲン原子等が配位したメタロセン錯体と、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物等とを組み合わせた触媒が挙げられる。
チーグラー・ナッタ触媒としては、遷移金属(チタン、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム等)のハロゲン化物と有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物等とを組み合わせた触媒が挙げられる。
重合方法としては、前記触媒の存在下に、エチレンとα−オレフィンとを、またはエチレンとα−オレフィンと非共役ジエンとを溶媒中で共重合させる方法が挙げられる。溶媒としては、炭化水素溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等)が挙げられる。炭化水素溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、原料のα−オレフィンを溶媒として用いてもよい。
エチレン、α−オレフィン、非共役ジエンそれぞれの供給量、水素等の分子量調節剤の種類や量、触媒の種類や量、反応温度、圧力等の反応条件を変更することによって、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のエチレン単位の含有率、質量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を調整することができる。
グラフト共重合体(A)の製造において、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、そのままの状態で用いてもよいし、水性媒体に分散させた状態で用いてもよい。
また、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、架橋構造を有することが好ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体(a)が架橋構造を有することで、成形品の耐衝撃性がより向上する。
なお、本明細書において、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を水性媒体に分散させたものを「オレフィン樹脂水性分散体(p)」という。また、架橋構造を有するエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を特に「架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)」ともいう。また、架橋構造を有さないエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を特に「未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)」ともいう。
<オレフィン樹脂水性分散体(p)>
オレフィン樹脂水性分散体(p)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を水性媒体に分散させたものである。
オレフィン樹脂水性分散体(p)は、その他の成分として、乳化剤、酸変性オレフィン重合体等を含有してもよい。
水性媒体としては、水、水と混和する有機溶剤(以下、「水混和性有機溶剤」ともいう。)、およびこれらの混合物が挙げられる。水混和性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム類等が挙げられる。水性媒体としては、水のみを用いるか、または水と水混和性有機溶剤との混合物を用いることが好ましい。
乳化剤としては、公知のものが挙げられ、例えば、長鎖アルキルカルボン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。
オレフィン樹脂水性分散体(p)中の乳化剤の含有量は、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱着色を抑制でき、オレフィン樹脂水性分散体(p)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の粒子径制御が容易である点から、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)100質量部に対して1〜8質量部が好ましい。
酸変性オレフィン重合体としては、質量平均分子量が1,000〜5,000のオレフィン重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン等)を、官能基を有する化合物(不飽和カルボン酸化合物等)で変性したものが挙げられる。不飽和カルボン酸化合物としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノアミド等が挙げられる。
オレフィン樹脂水性分散体(p)中の酸変性オレフィン重合体の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)100質量部に対して、1〜40質量部が好ましい。酸変性オレフィン重合体の添加量が前記範囲内であれば、成形品の耐傷付き性と耐衝撃性のバランスがさらに優れる。
オレフィン樹脂水性分散体(p)の調製方法は、限定されない。調製方法としては、例えば、(M1)公知の溶融混練手段(ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機等)でエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を溶融混練し、機械的せん断力を与えて分散させ、水性媒体に添加する方法;(M2)エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を炭化水素溶媒(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等)に溶解し、水性媒体に添加して乳化させた後、十分に撹拌し、炭化水素溶媒を留去する方法等が挙げられる。オレフィン樹脂水性分散体(p)の調製の際に、その他の成分として酸変性オレフィン重合体、乳化剤等を添加してもよい。
酸変性オレフィン重合体の添加方法は、限定されない。例えば、前記(M1)の方法において、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体とを混合し、溶融混練する方法、前記(M2)の方法において、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体とを炭化水素溶媒に溶解する方法等が挙げられる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体との混合方法は、限定されない。混合方法としては、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機等を用いた溶融混練法等が挙げられる。この場合、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体とを混合する工程が、それらの混合物を溶融混練する工程を兼ねてもよい。
乳化剤の添加方法は、限定されない。例えば、酸変性オレフィン重合体の添加方法と同様の方法が挙げられる。また、前記(M1)または(M2)の方法において、水性媒体に乳化剤を添加する方法、前記(M2)の方法において、炭化水素溶媒に乳化剤を溶解する方法等が挙げられる。
オレフィン樹脂水性分散体(p)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径は310〜550nmであり、340〜530nmであることが好ましく、350〜500nmであることがより好ましい。本発明における体積平均粒子径は、動的光散乱法により測定された値である。
エチレン・α−オレフィン共重合体の体積平均粒子径が前記下限値未満であると、成形品の耐衝撃性が低下することがあり、前記上限値を超えると、発色性および耐候性が低下することがある。
なお、オレフィン樹脂水性分散体(p)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の平均粒子径が、そのままグラフト共重合体(A)または後述する熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の平均粒子径になることを、電子顕微鏡の画像解析によって確認している。
オレフィン樹脂水性分散体(p)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の平均粒子径を制御する方法としては、乳化剤の種類または使用量、酸変性オレフィン重合体の種類または含有量、混練時に加えるせん断力、温度条件等を調整する方法が挙げられる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率は1〜34質量%であり、2〜10質量%であることがより好ましい。ゲル含有率が前記下限値未満のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を得ることは実質的に困難である。エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率が前記上限値を超えると、耐候性および発色性が低下することがある。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率は、下記の測定方法により求められる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の試料[E1]0.5gを、200mL、110℃のトルエン中に5時間浸漬して溶液を得る。次いで、前記溶液を200メッシュ金網にて濾過し、残渣を乾燥し、その乾燥物[E2]の質量(g)を測定する。下記式(1)から、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率を求める。
ゲル含有率(質量%)=[E2]/[E1]×100 ・・・(1)
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)がオレフィン樹脂水性分散体(p)に含まれている場合には、オレフィン樹脂水性分散体(p)に希硫酸を添加してエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を凝固させ、得られた凝固粉を水洗し、乾燥する。乾燥した凝固粉をエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の試料[E1]とする。
(架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a))
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)または未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)が水性媒体に分散したオレフィン樹脂水性分散体(p)を架橋処理することにより得られる。架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)が、オレフィン樹脂水性分散体(p)を架橋処理することにより得られた場合、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は水性分散体として得られる。架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の水性分散体のことを、「架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)」ということがある。
架橋処理の方法としては、(M3)有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加して処理を行う方法;(M4)多官能性化合物を添加して架橋処理を行う方法;(M5)電離性放射線によって処理を行う方法等が挙げられる。前記架橋処理法のなかでも、成形品の耐衝撃性および発色性がよい点から、(M3)、(M4)の方法が好ましく、(M3)の方法がより好ましい。
(M3)の方法としては、具体的には、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)またはこれが水性媒体に分散したオレフィン樹脂水性分散体(p)に、有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加し、加熱する方法等が挙げられる。
例えば、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)に、有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加し、溶融混練し、粉砕すると、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の粉体が得られる。オレフィン樹脂水性分散体(p)に、有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加して処理すると、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を含む架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)が得られる。
加熱温度は、有機過酸化物の種類によって異なる。加熱温度は、有機過酸化物の10時間半減期温度の−5℃〜+30℃が好ましい。加熱時間は、3〜15時間が好ましい。
有機過酸化物は、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)に架橋構造を形成させるためのものである。有機過酸化物としては、例えば、ペルオキシエステル化合物、ペルオキシケタール化合物、ジアルキルペルオキシド化合物等が挙げられる。有機過酸化物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機過酸化物としては、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率を調整しやすい点から、ジアルキルペルオキシド化合物が特に好ましい。
ジアルキルペルオキシド化合物の具体例としては、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
有機過酸化物の添加量は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率を1〜34質量%に調整しやすいことから、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)100質量部に対して0.4質量部以下が好ましく、0〜0.3質量部がより好ましい。
多官能性化合物は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率を調整するために、単独で用いられるもの、または必要に応じて有機過酸化物と併用されるものである。
多官能性化合物としては、ジビニルベンゼン、1,7−オクタジエンメタクリル酸アリル、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。多官能性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能性化合物の添加量は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率を1〜34質量%に調整しやすいことから、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。
未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を処理して架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を得る場合、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)に酸変性オレフィン重合体が添加されてもよい。
酸変性オレフィン重合体は、オレフィン樹脂水性分散体(p)の説明で挙げたものと同様である。酸変性オレフィン重合体の添加量は、オレフィン樹脂水性分散体(p)中の酸変性オレフィン重合体の含有量と同様に、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)100質量部に対して、1〜40質量部が好ましい。
酸変性オレフィン重合体の添加方法は、限定されない。未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体とを混合した後に処理をしてもよいし、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体とをそれぞれ処理した後に混合してもよい。
未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体との混合方法は、限定されない。混合方法としては、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機等を用いた溶融混練法等が挙げられる。
なお、オレフィン樹脂水性分散体(p)を有機過酸化物によって架橋処理した場合、架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)における架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径は、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径と同等である。
また、架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)を構成する架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の平均粒子径が、そのままグラフト共重合体(A)または後述する熱可塑性樹脂組成物中の架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の平均粒子径になることを、電子顕微鏡の画像解析によって確認している。
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率は1〜34質量%であり、20〜30質量%であることが好ましい。ゲル含有率が前記下限値未満の架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を得ることは実質的に困難である。架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率が前記上限値を超えると、耐候性および発色性が低下することがある。
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率は、下記の測定方法により求められる。
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の試料[E1]0.5gを、200mL、110℃のトルエン中に5時間浸漬して溶液を得る。次いで、前記溶液を200メッシュ金網にて濾過し、残渣を乾燥し、その乾燥物[E2]の質量(g)を測定する。下記式(1)から、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率を求める。
ゲル含有率(質量%)=[E2]/[E1]×100 ・・・(1)
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)が架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)に含まれている場合には、架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)に希硫酸を添加して架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を凝固させ、得られた凝固粉を水洗し、乾燥する。乾燥した凝固粉を架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の試料[E1]とする。
<ビニル系単量体成分(m1)>
グラフト共重合体(A)を得る際に使用するビニル系単量体成分(m1)は、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体からなる群より1種以上の単量体を含む。ビニル系単量体成分(m1)は、必要に応じて、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体以外のビニル系単量体(他のビニル系単量体)を含んでいてもよい。
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−またはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられ、熱可塑性樹脂組成物の流動性、成形品の発色性、耐衝撃性の点から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体成分(m1)100質量%中60〜85質量%が好ましく、62〜80質量%がより好ましい。芳香族ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れる。
シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。シアン化ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シアン化ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体成分(m1)100質量%中15〜40質量%が好ましく、20〜38質量%がより好ましい。シアン化ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れる。
他のビニル系単量体としては、アクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等)、メタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等)、マレイミド系化合物(N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等)等が挙げられる。他のビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<グラフト共重合体(A)の製造方法>
グラフト共重合体(A)の製造方法としては、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体を含むビニル系単量体成分(m1)を重合する方法が挙げられる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)はオレフィン樹脂水性分散体(p)に含まれるものでもよい。エチレン・α−オレフィン共重合体(a)が架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)である場合には、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)に含まれるものでもよい。
グラフト共重合体(A)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)40〜80質量%の存在下に、ビニル系単量体成分(m1)20〜60質量%(ただし、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)とビニル系単量体成分(m1)の合計は100質量%)を重合して得られたものが好ましい。グラフト共重合体(A)におけるエチレン・α−オレフィン共重合体の含有割合が40〜60質量%であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性がさらに向上する。
グラフト共重合体(A)のグラフト率は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性がより優れることから、50〜100%が好ましく、60〜100%がより好ましい。
ビニル系単量体成分(m1)の重合方法としては、公知の重合方法(乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法等)が挙げられる。
乳化重合法によるグラフト共重合体(A)の製造方法としては、例えば、ビニル系単量体成分(m1)に有機過酸化物を混合したものを、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の水性分散体に対して連続的に添加する方法が挙げられる。
有機過酸化物は、有機過酸化物と遷移金属と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤として用いるのが好ましい。
重合の際に、連鎖移動剤、乳化剤等を状況に応じて用いてもよい。
レドックス系開始剤としては、重合反応条件を高温下にする必要がなく、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の劣化等を避け、成形品の耐衝撃性の低下を回避できる点から、有機過酸化物と硫酸第一鉄−キレート剤−還元剤を組み合わせたものが好ましい。
有機過酸化物としては、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。
レドックス系開始剤としては、クメンヒドロペルオキシドと、硫酸第一鉄と、ピロリン酸ナトリウムと、フルクトースとからなるものがより好ましい。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類(オクチルメルカプタン、n−またはt−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−またはt−テトラデシルメルカプタン等)、アリル化合物(アリルスルフォン酸、メタアリルスルフォン酸、これらのナトリウム塩等)、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられ、分子量を調整することが容易な点から、メルカプタン類が好ましい。連鎖移動剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
連鎖移動剤の添加方法は、一括、分割、連続のいずれでもよい。
連鎖移動剤の添加量は、ビニル系単量体成分(m1)100質量部に対して2.0質量部以下が好ましい。
乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸スルホン酸塩、リン酸系塩、脂肪酸塩、アミノ酸誘導体塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、通常のポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アニオン部にカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等を有し、カチオン部にアミン塩、第4級アンモニウム塩等を有するものが挙げられる。
乳化剤の添加量は、ビニル系単量体成分(m1)100質量部に対して10質量部以下が好ましい。
乳化重合法によって得られるグラフト共重合体(A)は、水性媒体中に分散した状態である。
グラフト共重合体(A)を含む水性分散体からグラフト共重合体(A)を回収する方法としては、例えば、水性分散体に析出剤を添加し、加熱、撹拌した後、析出剤を分離し、析出したグラフト共重合体(A)を水洗、脱水、乾燥する析出法が挙げられる。
析出剤としては、例えば、硫酸、酢酸、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の水溶液が挙げられる。析出剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グラフト共重合体(A)を含む水性分散体に、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。
[グラフト共重合体(C)]
グラフト共重合体(C)は、ポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)を含む複合ゴム状重合体(B)の存在下に、ビニル系単量体成分(m2)を重合して得られた共重合体である。換言すれば、グラフト共重合体(C)は、複合ゴム状重合体(B)部分と、ビニル系単量体成分(m2)の重合体であるビニル系重合体部分とからなる。
なお、グラフト共重合体(C)においては、複合ゴム状重合体(B)の存在下にビニル系単量体成分(m2)がどのように重合しているか、特定することは困難である。例えば、ビニル系単量体成分(m2)が重合したビニル系重合体としては、複合ゴム状重合体(B)に結合したものと、複合ゴム状重合体(B)に結合していないものとが存在する。また、複合ゴム状重合体(B)に結合したビニル系重合体の分子量、構成単位の割合等を特定することも困難である。すなわち、グラフト共重合体(C)をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的ではないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、本発明おいては、グラフト共重合体(C)は複合ゴム状重合体(B)の存在下に、ビニル系単量体成分(m2)を重合して得られたもの」と規定するすることがより適切とされる。
<複合ゴム状重合体(B)>
グラフト共重合体(C)を得る際に使用する複合ゴム状重合体(B)は、ポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)からなるものである。
複合ゴム状重合体(B)の体積平均粒子径は、耐衝撃性と発色性に優れることから、50〜240nmが好ましい。
また、複合ゴム状重合体(B)中の全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合は25体積%以下であることが好ましく、1〜25体積%であることがより好ましい。粒子径が300〜500nmである粒子の割合が25体積%以下であれば、発色性と耐候性がより高くなる。また、複合ゴム状重合体(B)中の全粒子中に占める、粒子径が500nm超である粒子の割合は、1体積%未満が好ましく、0.1体積%未満がより好ましい。
(ポリオルガノシロキサン(b−1))
複合ゴム状重合体(B)を構成するポリオルガノシロキサン(b−1)としては、オルガノシロキサンの重合体であれば特に制限されない。ポリオルガノシロキサン(b−1)のなかでも、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサン(ビニル重合性官能基含有ポリオルガノシロキサン)が好ましく、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位と、ジメチルシロキサン単位とを有するポリオルガノシロキサンがより好ましい。
ビニル重合性官能基含有ポリオルガノシロキサンにおいては、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位の割合は0.3〜3モル%が好ましい。ビニル重合性官能基含有ポリオルガノシロキサンのビニル重合性官能基含有シロキサン単位の割合が上記範囲内であれば、ポリオルガノシロキサン(b−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)とが十分に複合化し、成形品の表面においてポリオルガノシロキサン(b−1)がブリードアウトしにくくなる。よって、成形品の表面外観がより良好となり、成形品の耐衝撃性もより向上する。
ポリオルガノシロキサン(b−1)としては、成形品の表面外観がさらに良好となることから、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対し0〜1モル%であることが好ましい。
ポリオルガノシロキサン(b−1)の好ましい態様としては、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位0.3〜3モル%と、ジメチルシロキサン単位99.7〜97モル%(ただし、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位とジメチルシロキサン単位の合計を100モル%とする。)とからなり、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%以下であるポリオルガノシロキサンが挙げられる。
ポリオルガノシロキサン(b−1)の体積平均粒子径は特に制限されないが、成形品の表面外観がさらに良好となることから、400nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。ポリオルガノシロキサン(b−1)の体積平均粒子径の下限値については、20nm以上が好ましい。
ポリオルガノシロキサン(b−1)は、例えばジメチルシロキサンと、ビニル重合性官能基含有シロキサンとを含むシロキサン混合物を重合することで得られる。重合の方法としては特に制限されないが、乳化重合が好ましい。
ジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が好ましく、3〜7員環のジメチルシロキサン系環状体がより好ましい。前記ジメチルシロキサン系環状体としては、具体的には、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどが挙げられる。これらジメチルシロキサンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有し、かつ、ジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合し得るものであれば特に制限されない。ビニル重合性官能基含有シロキサンのなかでも、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好適である。
ビニル重合性官能基を含有するアルコキシシラン化合物としては、具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン;p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンなどが挙げられる。これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
シロキサン混合物の重合は、通常、乳化剤と水と酸触媒とを用いて行われる。乳化剤としてはアニオン系乳化剤が好ましい。アニオン系乳化剤としては、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどが挙げられる。これらのなかでも、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸系の乳化剤が好ましい。これら乳化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
乳化剤の使用量は、シロキサン混合物100質量部に対して0.05〜5質量部が好ましい。乳化剤の使用量が0.05質量部以上であれば、分散状態が安定しやすく、微小な粒子径の乳化状態を保持しやすくなる。一方、乳化剤の使用量が5質量部以下であれば、乳化剤に起因する成形品の着色を抑制できる。
酸触媒としては、スルホン酸類(例えば脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸など)等の有機酸触媒;鉱酸類(例えば硫酸、塩酸、硝酸など)等の無機酸触媒などが挙げられる。これら酸触媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのなかでも、後述するシロキサンラテックス(b−2)のラテックスの安定化作用にも優れている点で脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。また、n−ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸等の鉱酸とを併用すると、ポリオルガノシロキサン(b−1)の製造に用いた乳化剤の色が成形品の色に与える影響を小さく抑えることができる。
酸触媒の添加量は適宜決めればよいが、通常、シロキサン混合物100質量部に対して0.1〜20質量部程度である。
酸触媒の混合は、シロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングで行ってもよいし、シロキサン混合物に乳化剤と水とを添加して乳化させラテックス(シロキサンラテックス(b−2))とし、これを微粒子化した後でもよい。得られるポリオルガノシロキサン(b−1)の粒子径を制御しやすいことから、シロキサンラテックス(b−2)を微粒子化した後に、シロキサンラテックス(b−2)と酸触媒とを混合することが好ましい。特に、微粒子化したシロキサンラテックス(b−2)を酸触媒水溶液中に一定速度で滴下することが好ましい。なお、酸触媒をシロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングで混合する場合は、これらを混合した後に微粒子化することが好ましい。
シロキサンラテックス(b−2)は、例えば高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用することで微粒子化できる。シロキサン混合物と乳化剤と水と酸触媒とを混合する方法や、微粒子化したシロキサンラテックス(b−2)と酸触媒とを混合する方法としては、例えば高速攪拌による混合、ホモジナイザー等の高圧乳化装置による混合などが挙げられる。これらのなかでも、ホモジナイザーを使用した方法は、ポリオルガノシロキサンの粒子径の分布を小さくできるので好適である。重合温度は、50℃以上が好ましく、80℃以上が好ましい。なお、微粒子化したシロキサンラテックス(b−2)を酸触媒水溶液中に滴下する場合、酸触媒水溶液の温度は50℃以上が好ましく、80℃以上が好ましい。
重合時間は、シロキサン混合物と乳化剤と水とを混合するタイミングで酸触媒を混合する場合は、2時間以上が好ましく、5時間以上がさらに好ましい。一方、微粒子化したシロキサンラテックス(b−2)と酸触媒とを混合する場合は、微粒子化したシロキサンラテックス(b−2)を酸触媒水溶液中に滴下した後、1時間程度保持することが好ましい。
重合の停止は、反応液を冷却した後、反応液の25℃におけるpHが6〜8程度になるように水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ性物質で反応液を中和することによって行うことができる。
ポリオルガノシロキサン(b−1)の平均粒子径は、シロキサン混合物の組成、酸触媒の使用量(酸触媒水溶液中の酸触媒の含有量)、重合温度などを調整することで制御できる。例えば、酸触媒の使用量が少なくなるほど平均粒子径は大きくなる傾向にあり、重合温度が高くなるほど平均粒子径は小さくなる傾向にある。
(アルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3))
複合ゴム状重合体(B)を構成するアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)は、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分を重合して得られるものである。この単量体成分には、アルキル(メタ)アクリレート単量体以外の単量体(他の単量体)が含まれていてもよい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−ラウリル等のメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレート単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アルキル(メタ)アクリレート単量体のなかでも、成形品の耐衝撃性がより向上する点で、アクリル酸n−ブチルが好ましい。
単量体成分100質量%中のアルキル(メタ)アクリレート単量体の割合は、80〜100質量%が好ましく、90〜100質量%がより好ましい。
他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート単量体と共重合可能であれば特に制限されない。他の単量体の具体例としては、例えば、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等)、シアン化ビニル化合物(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)などが挙げられる。これら他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)の製造方法は特に制限されず、公知の方法に従って行うことができる。
<複合ゴム状重合体(B)の製造方法>
複合ゴム状重合体(B)の製造方法は特に制限されないが、ポリオルガノシロキサン(b−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)を各々含む複数のラテックスをヘテロ凝集もしくは共肥大化する方法;ポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)のいずれか一方を含むラテックス存在下で、他の一方の重合体を形成する単量体成分を重合させて複合化させる方法などが挙げられる。特に複合ゴム状重合体(B)の体積平均粒子径および粒子径分布を上述した範囲内となるように容易に調整できることから、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(b−1)の存在下で、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分をラジカル重合させて共重合体ラテックスを得た後(ラジカル重合工程)、該共重合体ラテックスと酸基含有共重合体ラテックスとを混合することにより、共重合体ラテックスを肥大化させる(肥大化工程)方法が好ましい。さらに、共重合体ラテックスと酸基含有共重合体ラテックスとを混合する前に、共重合体ラテックスに縮合酸塩を添加することが好ましい。
ラジカル重合工程:
ラジカル重合工程は、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(b−1)の存在下で、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分をラジカル重合する工程である。アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分は、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(b−1)に一括して添加してもよいし、連続的に、あるいは断続的に添加してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分をラジカル重合させる際には、必要に応じてグラフト交叉剤や架橋剤を用いてもよい。
グラフト交叉剤、架橋剤としては、例えば、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸プロピレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコールジエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合には、通常、ラジカル重合剤および乳化剤を用いる。
ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられる。これらの中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩とナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートとハイドロパーオキサイドとを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
乳化剤としては特に制限されない。乳化剤のなかでも、ラジカル重合時のラテックスの安定性に優れ、重合率を高められることから、サルコシン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸等の各種カルボン酸塩が好ましい。これらの中では、得られるグラフト共重合体(C)およびこれを含む熱可塑性樹脂組成物を高温成形した際にガス発生を抑制できることから、アルケニルコハク酸ジカリウムが好ましい。
複合ゴム状重合体(B)におけるポリオルガノシロキサン(b−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)との比率は特に制限されないが、成形品の耐衝撃性と発色性がより優れたものとなることから、ポリオルガノシロキサン(b−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)との合計を100質量%としたときに、ポリオルガノシロキサン(b−1)の割合が1〜24質量%であることが好ましい。
肥大化工程:
肥大化工程は、ラジカル重合工程にて得られる共重合体ラテックスと、酸基含有共重合体ラテックスとを混合することにより、共重合体ラテックスを肥大化させる工程である。
肥大化に用いる酸基含有共重合体ラテックスは、水中にて、酸基含有単量体、アルキル(メタ)アクリレート単量体、および必要に応じてこれらと共重合可能な他の単量体を含む単量体成分を重合して得られる酸基含有共重合体のラテックスである。
酸基含有単量体としては、カルボキシ基を有する不飽和化合物が好ましく、カルボキシ基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等が挙げられ、なかでも、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。酸基含有単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方と、炭素数1〜12の直鎖または分岐のアルキル基を有するアルコールとのエステルが挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体のなかでも、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
他の単量体は、酸基含有単量体およびアルキル(メタ)アクリレート単量体と共重合可能な単量体であり、かつ酸基含有単量体およびアルキル(メタ)アクリレート単量体以外の単量体である。他の単量体としては、芳香族ビニル化合物(例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等)、シアン化ビニル化合物(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、2つ以上の重合性官能基を有する化合物(例えば、メタクリル酸アリル、ジメタクリル酸ポリエチレングリコールエステル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、トリメリット酸トリアリル等)などが挙げられる。他の単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これら単量体の使用量としては、酸基含有共重合体ラテックスの固形分100質量%中の割合として、酸基含有単量体単位が5〜40質量%となる量、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位が60〜95質量%となる量、他の単量体単位が0〜35質量%となる量が好ましく、酸基含有単量体単位が8〜30質量%となる量、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位が70〜92質量%となる量、他の単量体単位が0〜22質量%となる量がより好ましい。酸基含有単量体単位の割合が5質量%以上、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位の割合が95質量%以下であれば、十分な肥大化能力が得られる。また、酸基含有単量体単位の割合が40質量%以下、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位の割合が60質量%以上であれば、酸基含有共重合体ラテックス製造の際に多量の凝塊物が生成するのを抑制できる。また、他の単量体単位が35質量%以下であれば、得られる酸基含有共重合体ラテックスが十分な肥大化能力を有することができる。
酸基含有共重合体ラテックスは一般的な乳化重合法により製造することができる。
乳化重合で使用される乳化剤としては、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ロジン酸のアルカリ金属塩、アルケニルコハク酸のアルカリ金属塩等で例示されるカルボン酸系の乳化剤;アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等の中から選ばれたアニオン系乳化剤など、公知の乳化剤が挙げられる。これら乳化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
乳化剤の使用方法としては、重合初期に全量を一括して添加してもよいし、連続的に、あるいは断続的に添加してもよい。乳化剤量やその使用方法によっては、酸基含有共重合体ラテックスの粒子径を、ひいては粒径肥大化された複合ゴム状重合体(B)ラテックスの粒子径に影響を及ぼす場合があるため、適正な量および使用方法を選択することが好ましい。
乳化重合に用いる重合開始剤としては、熱分解型開始剤やレドックス型開始剤等が使用できる。熱分解型開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。レドックス型開始剤としては、クメンハイドロパーオキシドに代表される有機過酸化物−ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート−鉄塩等の組み合わせが例示される。これら重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
乳化重合の際には、分子量を調整するためにメルカプタン類(例えばt−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等)、テルピノレン、α−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤を使用することができる。
また、乳化重合の際には、pHを調節するためにアルカリや酸を添加することができる。
また、乳化重合の際には、減粘剤として電解質を添加することができる。
肥大化工程における酸基含有共重合体ラテックスの添加量(固形分換算量)は、複合ゴム状重合体(B)の体積平均粒子径および粒子径分布が上述した範囲内となるように調整すればよい。通常は、ラジカル重合工程にて得られる共重合体ラテックスの固形分100質量部に対し、0.1〜5質量部が好ましく、0.2〜2質量部がより好ましい。酸基含有共重合体ラテックスの添加量が0.1質量部以上であれば、肥大化が十分に進行し、また、凝塊物が多量に発生するのを抑制できる。一方、酸基含有共重合体ラテックスの添加量が5質量部以下であれば、肥大化ラテックスのpHが低下するのを抑制でき、ラテックスが不安定になりにくい。
酸基含有共重合体ラテックスは、共重合体ラテックスに一括して添加してもよいし、滴下により連続的または断続的に添加してもよい。
なお、肥大化工程に先立ち、共重合体ラテックスに縮合酸塩を添加することがさらに好ましい。酸基含有共重合体ラテックスを添加する前に共重合体ラテックスに縮合酸塩を添加しておけば、肥大化が進行し易くなる。そのため、酸基含有共重合体ラテックスの添加量を減らすことが可能となり、複合ゴム状重合体(B)の体積平均粒子径および粒子径分布を上述した範囲内に調整することが容易になる。
縮合酸塩としては、例えばリン酸、ケイ酸等の縮合酸と、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一方との塩が用いられる。これらのなかでも、リン酸の縮合酸であるピロリン酸とアルカリ金属の塩が好ましく、ピロリン酸ナトリウムまたはピロリン酸カリウムが特に好ましい。
縮合酸塩の添加量は、複合ゴム状重合体(B)の体積平均粒子径および粒子径分布が上述した範囲内となるように調整すればよいが、通常は、ラジカル重合工程にて得られる共重合体ラテックスの固形分100質量部に対し、0.1〜5質量部とすることが好ましく、0.2〜2質量部がより好ましい。縮合酸塩の添加量が0.1質量部以上であれば肥大化が十分に進行し、5質量部以下であれば肥大化が十分に進行する、あるいはゴムラテックスが安定化しやすく、多量の凝塊物が発生するのを抑制できる。
縮合酸塩は、共重合体ラテックスに一括して添加することが好ましい。
共重合体ラテックスと縮合酸塩との混合物の25℃におけるpHは7以上であることが好ましい。pHが7以上であれば肥大化が十分に進行しやすくなる。pHを7以上とするために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ化合物を使用することができる。
肥大化時の攪拌は適度に制御することが好ましい。攪拌が不十分な場合には、局部的に肥大化が進行することにより未肥大のゴム状重合体が残留することがある。一方、過度に攪拌を行うと、肥大化ラテックスが不安定になり、凝塊物が多量に発生することがある。
肥大化を行う際の温度は特に制限されないが、20〜90℃が好ましく、30〜80℃がより好ましい。温度がこの範囲外であると、肥大化が十分に進行しない場合がある。
なお、複合ゴム状重合体(B)は、上記のように酸基含有共重合体ラテックスを用いて肥大化した後、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分をさらに添加して重合させることにより製造してもよい。
<ビニル系単量体成分(m2)>
グラフト共重合体(C)を得る際に使用するビニル系単量体成分(m2)としては特に制限されない。ビニル系単量体成分(m2)のなかでも、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シアン化ビニル化合物が好ましい。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル等が挙げられる。シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらビニル系単量体成分(m2)のなかでも、成形品の耐衝撃性がより向上することから、スチレンとアクリロニトリルとを併用することが好ましい。
<グラフト共重合体(C)の製造方法>
グラフト共重合体(C)は、複合ゴム状重合体(B)の存在下に、ビニル系単量体成分(m2)を重合することにより得られる。重合方法としては特に制限されないが、反応が安定して進行するように制御できることから乳化重合が好ましい。
グラフト共重合体(C)の具体的な製造方法としては、例えば、複合ゴム状重合体(B)に1種以上のビニル系単量体成分(m2)を一括して仕込んだ後に重合する方法;複合ゴム状重合体(B)に1種以上のビニル系単量体成分(m2)の一部を先に仕込み、随時重合させながら残りを重合系に滴下する方法;複合ゴム状重合体(B)に1種以上のビニル系単量体成分(m2)の全量を滴下しながら随時重合する方法などが挙げられ、これらを1段ないしは2段以上に分けて行うことができる。また、各段における1種以上のビニル系単量体成分(m2)の種類や組成比を変えて行うことも可能である。
複合ゴム状重合体(B)と1種以上のビニル系単量体成分(m2)の質量比は特に制限されない。成形品の耐衝撃性と表面外観とのバランスがより良好になる点では、複合ゴム状重合体(B)を10〜80質量%、1種以上のビニル系単量体成分(m2)を20〜90質量%とすることが好ましく、複合ゴム状重合体(B)を30〜70質量%、1種以上のビニル系単量体成分(m2)を30〜70質量%とすることがより好ましい(ただし、複合ゴム状重合体(B)と1種以上のビニル系単量体成分(m2)の合計を100質量%とする。)。前記の質量比でグラフト重合すると、熱可塑性樹脂組成物の流動性、および成形品の耐衝撃性と発色性がより優れたものとなる。
重合の際には、通常、ラジカル重合開始剤および乳化剤を用いる。ラジカル重合開始剤および乳化剤としては、複合ゴム状重合体(B)の製造方法の説明において先に例示したラジカル重合開始剤および乳化剤を使用できる。
また、重合を行う際には、得られるグラフト共重合体(C)の分子量やグラフト率を制御するため、各種公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
グラフト共重合体(C)は、通常、ラテックスの状態で得られる。グラフト共重合体(C)のラテックスからグラフト共重合体(C)を回収する方法としては、例えば、グラフト共重合体(C)のラテックスを、凝固剤を溶解させた熱水中に投入することによってスラリー状に凝析する湿式法;加熱雰囲気中にグラフト共重合体(C)のラテックスを噴霧することによって半直接的にグラフト共重合体(C)を回収するスプレードライ法などが挙げられる。
湿式法に用いる凝固剤としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸;塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩などが挙げられ、重合で用いた乳化剤に応じて選定される。例えば、乳化剤として脂肪酸石鹸やロジン酸石鹸等のカルボン酸石鹸のみが使用されている場合には上述した凝固剤の1種以上を用いることができる。また、乳化剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の酸性領域でも安定な乳化力を示す乳化剤を使用した場合には、凝固剤としては金属塩が好適である。
湿式法を用いると、スラリー状のグラフト共重合体(C)が得られる。このスラリー状のグラフト共重合体(C)から乾燥状態のグラフト共重合体(C)を得る方法としては、まず残存する乳化剤残渣を水中に溶出させて洗浄し、次いで、このスラリーを遠心またはプレス脱水機等で脱水した後に気流乾燥機等で乾燥する方法;圧搾脱水機や押出機等で脱水と乾燥とを同時に実施する方法などが挙げられる。これらの方法によって、粉体または粒子状の乾燥グラフト共重合体(C)が得られる。
洗浄条件としては特に制限されないが、乾燥後のグラフト共重合体(C)100質量%中に含まれる乳化剤残渣量が0.5〜2質量%の範囲となる条件で洗浄することが好ましい。グラフト共重合体(C)中の乳化剤残渣が0.5質量%以上であれば、得られるグラフト共重合体(C)およびこれを含む熱可塑性樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。一方、グラフト共重合体(C)中の乳化剤残渣が2質量%以下であれば、熱可塑樹脂組成物を高温成形した際にガス発生を抑制できる。
なお、圧搾脱水機や押出機から排出されたグラフト共重合体(C)を回収せず、直接、樹脂組成物を製造する押出機や成形機に送って成形品とすることも可能である。
[メタクリル酸エステル樹脂(D)]
メタクリル酸エステル樹脂(D)は、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体成分(m3)を重合することにより得られる樹脂である。
<ビニル系単量体成分(m3)>
ビニル系単量体成分(m3)は、少なくともメタクリル酸エステルを必須成分として含る。ビニル系単量体成分(m3)は、マレイミド系化合物、芳香族ビニル化合物、アクリル酸エステル、およびメタクリル酸エステルと共重合可能な他のビニル系単量体を任意成分として含んでもよい。
ビニル系単量体成分(m3)におけるメタクリル酸エステルの含有率は、成形品の耐引っ掻き傷性、発色性の点から、ビニル系単量体成分(m3)100質量%中50〜100質量%が好ましい。
ビニル系単量体成分(m3)におけるメタクリル酸エステルの含有率が50〜94質量%、マレイミド系化合物の含有率が5〜49質量%、芳香族ビニル化合物の含有率が1〜45質量%の範囲内であれば、成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れる。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ペンジル、メタクリル酸フェニル等が挙げられるメタクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記メタクリル酸エステルのなかでも、成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸エチルの少なくとも1種が好ましい。
マレイミド系化合物としては、例えば、N−アルキルマレイミド(N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド等)、N−シクロアルキルマレイミド(N−シクロヘキシルマレイミド等)、N−アリールマレイミド(N−フェニルマレイミド、N−アルキル置換フェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド等)等が挙げられる。マレイミド系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
マレイミド系化合物のなかでも、成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、N−アリールマレイミドが好ましく、N−フェニルマレイミドが特に好ましい。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−またはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。芳香族ビニル化合物のなかでも、成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。アクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アクリル酸エステルのなかでも、成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、アクリル酸メチルが好ましい。
他のビニル系単量体としては、例えば、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)等が挙げられる。他のビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<メタクリル酸エステル樹脂(D)の製造方法>
メタクリル酸エステル樹脂(D)を得る際のビニル系単量体成分(m3)の重合方法としては、公知の重合方法(乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法等)が挙げられる。
乳化重合法によるメタクリル酸エステル樹脂(D)の製造方法としては、例えば、反応器内にビニル系単量体成分(m3)と乳化剤と重合開始剤と連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、メタクリル酸エステル樹脂(D)を含む水性分散体から析出法によってメタクリル酸エステル樹脂(D)を回収する方法が挙げられる。
乳化剤としては、通常の乳化重合用乳化剤(ロジン酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)が挙げられる。
重合開始剤としては、有機、無機の過酸化物系開始剤が挙げられる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、テルペン類等が挙げられる。
析出法としては、水性分散体からグラフト共重合体(C)を回収するときと同様の方法を採用できる。
懸濁重合法によるメタクリル酸エステル樹脂(D)の製造方法としては、例えば、反応器内にビニル系単量体成分(m3)と懸濁剤と懸濁助剤と重合開始剤と連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、スラリーを脱水、乾燥してメタクリル酸エステル樹脂(D)を回収する方法が挙げられる。
懸濁剤としては、トリカルシウムフォスファイト、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
懸濁助剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
重合開始剤としては、有機ペルオキシド類が挙げられる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、テルペン類等が挙げられる。
メタクリル酸エステル樹脂(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<他の熱可塑性樹脂>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)、グラフト共重合体(C)およびメタクリル酸エステル樹脂(D)以外の他の熱可塑性樹脂を含有してもよい。
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド(ナイロン)等が挙げられる。他の熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<添加剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各種添加剤を含有してもよい。
各種添加剤としては、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、顔料、染料、充填剤、シリコーンオイル、パラフィンオイル等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
<各成分の比率>
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)および複合ゴム状重合体(B)の合計(100質量%)のうち、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の割合は、耐衝撃性および発色性、耐傷付き性に優れることから、10〜85質量%であることが好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)および複合ゴム状重合体(B)の合計(100質量%)のうち、複合ゴム状重合体(B)の割合は、耐衝撃性および発色性、耐傷付き性に優れることから、90〜15質量%であることが好ましい。
<作用効果>
以上説明した本発明の熱可塑性樹脂組成物にあっては、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体を含むビニル系単量体成分(m1)を重合して得られたグラフト共重合体(A)と;ポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)を含む複合ゴム状重合体(B)の存在下に、ビニル系単量体成分(m2)を重合して得られたグラフト共重合体(C)と;メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体成分(m3)を重合して得られたメタクリル酸エステル樹脂(D)の配合量が特定の割合であるため、耐衝撃性、耐候性、発色性および耐傷付き性に優れる成形品を容易に得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐傷付き性および耐候性に優れる成形品を得ることができるため、車両内外装部品での使用も可能である。
「成形品」
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を含有し、公知の成形方法によって成形加工して得られる。
成形方法としては、例えば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
成形品の用途としては、車輌内装・外装部品、事務機器、家電、建材等が挙げられ、車輌内装・外装部品が好適である。
以下、具体的に実施例を示す。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
以下に記載の「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
以下の実施例および比較例における各種測定および評価方法は、以下の通りである。
<質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)の測定方法>
GPC(GPC:Waters社製「GPC/V2000」、カラム:昭和電工株式会社製「Shodex AT−G+AT−806MS」)を用い、o−ジクロロベンゼン(145℃)を溶媒として、ポリスチレン換算での質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
<酸価の測定方法>
JIS K 2501に準拠して酸価を測定した。
<体積平均粒子径の測定方法>
マイクロトラック(日機装株式会社製「ナノトラック150」、動的光散乱法)を用い、測定溶媒として純水を用いて体積平均粒子径(MV)を測定した。
なお、水性媒体に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径が、そのままグラフト共重合体(A)および熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径を示すことを、電子顕微鏡の画像解析によって確認している。
<ゲル含有率の測定方法>
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を含む分散体(オレフィン樹脂水性分散体(p)または架橋オレフィン樹脂水性分散体(q))に、希硫酸を添加してエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を凝固させた。これにより得られた凝固粉を水洗し、乾燥した。乾燥した凝固粉試料[E1]0.5gを、200mL、110℃のトルエン中に5時間浸漬して溶液を得た。次いで、前記溶液を200メッシュ金網にて濾過し、残渣を乾燥し、その乾燥物[E2]の質量を測定した。下記式(1)から、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率を求めた。
ゲル含有率(質量%)=乾燥物質量[E2](g)/凝固粉試料質量[E1](g)×100 ・・・(1)
<グラフト率の測定方法>
グラフト共重合体(A)1gを80mLのアセトンに添加し、65〜70℃にて3時間加熱還流し、得られた懸濁アセトン溶液を遠心分離機(日立工機株式会社製「CR21E」)にて14,000rpm、30分間遠心分離して、沈殿成分(アセトン不溶成分)とアセトン溶液(アセトン可溶成分)を分取した。そして、沈殿成分(アセトン不溶成分)を乾燥させてその質量(Y(g))を測定し、下記式(2)からグラフト率を算出した。なお、式(2)におけるYは、グラフト共重合体(A)のアセトン不溶成分の質量(g)、Xは、Yを求める際に用いたグラフト共重合体(A)の全質量(g)、ゴム分率は、グラフト共重合体(A)におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の固形分の含有割合である。
グラフト率(%)={(Y−X×ゴム分率)/X×ゴム分率}×100 ・・・(2)
<溶融混練>
表5、表6および表7に示す配合でグラフト共重合体(A)、グラフト共重合体(C)、メタクリル酸エステル樹脂(D)、必要に応じて他の成分を混合し、グラフト共重合体(A)とグラフト共重合体(C)とメタクリル酸エステル樹脂(D)の合計100部に対して、カーボンブラック0.8部を混合して着色混合物を得た。スクリュー直径28mmの真空ベント付き2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−28V」)を用い、シリンダー温度200〜260℃、93.325kPa真空の条件で、前記着色混合物を溶融混練して熱可塑性樹脂組成物を得た。また、溶融混練後に、ペレタイザー(株式会社創研製「SH型ペレタイザー」)を用いてペレット化を行った。
<物性評価用成形品の作製1>
熱可塑性樹脂組成物を、射出成形によって100×100mm(厚さ3mm)の黒着色板(成形品(Ma1))を得た。
<物性評価用成形品の作製2>
熱可塑性樹脂組成物を、射出成形によって縦80mm、横10mm、厚さ4mmの成形品を成形し、耐衝撃性測定用成形品(成形品(Ma2))を得た。
<発色性評価>
成形品(Ma1)について、分光測色計(コニカミノルタオプティクス株式会社製「CM−3500d」)を用いて明度Lを、SCE方式にて測定した。これにより測定したLを「L(ma)」とする。Lが低いほど黒色となり、発色性が良好になる。
「明度(L)」とは、JIS Z 8729において採用されているL表色系における色彩値のうちの明度の値(L)を意味する。「SCE方式」とは、JIS Z 8722に準拠した分光測色計を用い、光トラップによって正反射光を除去して色を測る方法を意味する。
<耐候性評価>
成形品(Ma1)をサンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製)を用い、ブラックパネル温度63℃、サイクル条件60分(降雨12分)の条件で1000時間処理した。処理後の成形品(Mb)の表面の明度Lを、分光測色計を用いて、SCE方式にて測定した。これにより測定したLをL(mb)とする。成形品(Mb)の耐候性の判定指標ΔLを下記式(3)から算出した。ΔL(mb−ma)の絶対値が小さいほど、耐候性に優れる。
ΔL(mb−ma)=L(mb)−L(ma)・・・(3)
<耐傷付き性の評価>
図1に示すように、先端部11が半球形に形成された棒状の治具10を用意し、先端部11に、洗車タオル(株式会社ジョイフル製洗車用タオル3p)12を被せた。成形品(Ma)13の表面に対して、棒状の治具10が直角になるように、洗車タオル12が被せられた先端部11を接触させ、先端部11を成形品(Ma1)13の表面において水平方向(図中矢印方向)に摺動させ、100回往復させた。その際、加える荷重は1kgとした。100回往復させた後、傷を付けた成形品(Mc)の表面の明度Lを、分光測色計を用いて、SCE方式にて測定した。こうして測定されたLを「L(mc)」とする。
(耐傷付き性の判定)
成形品(Mc)の傷の目立ちやすさの判定指標ΔLを下記式(4)から算出した。ΔL(mc−ma)の絶対値が小さい程、傷が目立ちにくく、耐傷付き性に優れる。
ΔL(mc−ma)=L(mc)−L(ma)・・・(4)
<耐衝撃性>
成形品(Ma2)について、ISO 179規格にしたがい、23℃の条件でシャルピー衝撃試験(ノッチ付)を行い、シャルピー衝撃強度を測定した。
「オレフィン樹脂水性分散体(p)」
<オレフィン樹脂水性分散体(p−1)の調製>
未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a−1)(三井化学株式会社製、「タフマー P−0775」、エチレン・プロピレン共重合体、Mw=31×10)100部と、酸変性オレフィン重合体として無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学株式会社製、「三井ハイワックス 2203A」、質量平均分子量:2,700、酸価:30mg/g)20部と、アニオン系乳化剤としてオレイン酸カリウム5部とを混合した。
この混合物を2軸スクリュー押出機(株式会社池貝製、「PCM30」、L/D=40)のホッパーから4kg/hで供給し、該2軸スクリュー押出機のベント部に設けた供給口より、水酸化カリウム0.7部とイオン交換水3.4部を混合した水溶液を連続的に供給しながら、220℃に加熱して溶融混練して押出した。溶融混練物を2軸スクリュー押出機の先端に取り付けた冷却装置に連続的に供給し、90℃まで冷却した。そして、2軸スクリュー押出機先端より吐出させた固体を、80℃の温水中に投入し、連続的に分散させて、固形分濃度40質量%付近まで希釈して、オレフィン樹脂水性分散体(p−1)を得た。オレフィン樹脂水性分散体(p−1)に分散している未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a−1)のゲル含有率と体積平均粒子径を表1に示す。
<オレフィン樹脂水性分散体(p−2)〜(p−5)の調製>
表1に示すように、乳化する際の水酸化カリウムの添加部数、イオン交換水の添加部数を変更した以外は、オレフィン樹脂水性分散体(p−1)と同様にして、オレフィン樹脂水性分散体(p−2)〜(p−5)を得た。
各オレフィン樹脂水性分散体(p−2)〜(p−5)に分散している未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a−1)のゲル含有率と体積平均粒子径を表1に示す。
<オレフィン樹脂水性分散体(p−6)の調製>
未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a−1)を未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a−2)(三井化学株式会社製、「タフマー P−0275」、エチレン・プロピレン共重合体、Mw=18×10)に変更した以外は、オレフィン樹脂水性分散体(p−3)と同様にして、オレフィン樹脂水性分散体(p−6)を得た。
オレフィン樹脂水性分散体(p−6)に分散している未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a−2)のゲル含有率と体積平均粒子径を表1に示す。
Figure 2019108425
「架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)」
<架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)の調製>
オレフィン樹脂水性分散体(p−1)(未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の固形分として100部)に固形分濃度が30%になるようにイオン交換水を加え、有機過酸化物としてt−ブチルクミルペルオキシド0.2部、多官能性化合物としジビニルベンゼン1部を添加し、130℃で5時間反応させた。これにより未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体を架橋させて、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体を含む架橋オレフィン樹脂水性分散体(q−1)を調製した。架橋オレフィン樹脂水性分散体(q−1)に含まれる架橋エチレン・α−オレフィン共重合体のゲル含有率と体積平均粒子径を表2に示す。
<架橋オレフィン樹脂水性分散体(q−2)〜(q−9)の調製)
表2に示すようにオレフィン樹脂水性分散体(p)の種類とt−ブチルクミルペルオキシドの添加量を変更した以外は、架橋オレフィン樹脂水性分散体(q−1)と同様にして、架橋オレフィン樹脂水性分散体(q−2)〜(q−9)の水性分散体を得た。架橋オレフィン樹脂水性分散体(q−2)〜(q−9)に含まれる架橋エチレン・α−オレフィン共重合体のゲル含有率と体積平均粒子径を表2に示す。
なお、表2に示すオレフィン樹脂水性分散体(p)の添加量(部)は固形分量である。
Figure 2019108425
「グラフト共重合体(A)の製造」
<グラフト共重合体(A−1)の製造>
撹拌機付きステンレス重合槽に、架橋オレフィン樹脂水性分散体(q−1)(架橋エチレン・α−オレフィン共重合体の固形分として50部)を入れ、架橋オレフィン樹脂水性分散体(q−1)に固形分濃度が30%になるようにイオン交換水を加え、硫酸第一鉄0.006部、ピロリン酸ナトリウム0.3部およびフルクトース0.35部を仕込み、温度を80℃とした。前記重合槽に、スチレン39部、アクリロニトリル11部およびクメンハイドロペルオキシド0.6部を150分間連続的に添加し、重合温度を80℃に保って乳化重合した。これにより、平均粒子径310nmのグラフト共重合体(A−1)を含む水性分散体を得た。グラフト共重合体(A−1)を含む水性分散体に酸化防止剤を添加し、硫酸を添加して固形分を析出し、洗浄、脱水、乾燥の工程を経て、粉状のグラフト共重合体(A−1)を得た。
グラフト共重合体(A−1)のグラフト率を測定したところ60%であった。また、電子顕微鏡により、熱可塑性樹脂組成物中の架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の平均粒子径を確認したところ、290nmであった。
<グラフト共重合体(A−2)〜(A−9)の製造>
表3に示すように架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)の種類を変更した以外は、グラフト共重合体(A−1)と同様にして、グラフト共重合体(A−2)〜(A−9)を得た。グラフト共重合体(A−2)〜(A−9)のグラフト率を表3に示す。
<グラフト共重合体(A−10)の製造>
表3に示すように架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)の量、スチレンの量、およびアクリロニトリルの量を変更した以外は、グラフト共重合体(A−3)と同様にして、グラフト共重合体(A−10)を得た。グラフト共重合体(A−10)のグラフト率を表3に示す。
<グラフト共重合体(A−11)〜(A−12)の製造>
表3に示すように架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)をオレフィン樹脂水性分散体(p)に変更した以外は、グラフト共重合体(A−1)と同様にして、グラフト共重合体(A−11)〜(A−12)を得た。グラフト共重合体(A−11)〜(A−12)のグラフト率を表3に示す。
Figure 2019108425
「ポリオルガノシロキサンの製造」
<製造例1:ポリオルガノシロキサン(b)の製造>
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン混合物100部を得た。これに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部、イオン交換水300部からなる水溶液を添加し、ホモミキサーを用いて10000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに300kg/cmの圧力で2回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
別途、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と、イオン交換水90部とを投入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液(酸触媒水溶液)を調製した。
この酸触媒水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを2時間にわたって滴下し、滴下終了後3時間その温度を維持した後、40℃以下に冷却した。次いで、この反応物を10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に中和して、ポリオルガノシロキサン(b)のラテックスを得た。
得られたポリオルガノシロキサン(b)のラテックスを180℃で30分乾燥して固形分を求めたところ18.2%であった。また、体積平均粒子径は30nmであった。
「酸基含有共重合体ラテックスの製造」
<製造例2:酸基含有共重合体ラテックス(f−1)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、イオン交換水200部、オレイン酸カリウム2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム4部、硫酸第一鉄七水塩0.003部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.009部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部を窒素気流下で仕込み、60℃に昇温した。60℃になった時点から、アクリル酸n−ブチル85部、メタクリル酸15部、クメンヒドロパーオキサイド0.5部からなる混合物を120分かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに2時間、60℃を維持した状態で熟成を行い、固形分が33%、重合転化率が96%、酸基含有共重合体の体積平均粒子径が120nmである酸基含有共重合体ラテックス(f−1)を得た。
「グラフト共重合体(C)の製造」
<製造例3:グラフト共重合体(C−1)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ポリオルガノシロキサン(b)のラテックスを固形分換算で8.0部と、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム0.75部を仕込み、イオン交換水203部とを仕込んで混合した。次いで、アルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)を構成する単量体としてアクリル酸n−ブチル42.0部、アリルメタクリレート0.21部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.11部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.13部からなる混合物を添加した。
この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換を行い、内温を60℃まで昇温した。内温が60℃に達した時点で、硫酸第一鉄七水塩0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0003部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.24部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を78℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間この状態を維持し、ポリオルガノシロキサンとポリブチルアクリレートゴムとが複合した複合ゴム状重合体(B−1)を得た(ラジカル重合工程)。得られた複合ゴム状重合体(B−1)の体積平均粒子径は90nmであった。
反応器内部の液温が60℃に低下した後、ロンガリット0.4部をイオン交換水10部に溶解した水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル2.5部、スチレン7.5部およびターシャリーブチルハイドロパーオキサイド0.2部の混合液を約1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後1時間保持した後、硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部およびロンガリット0.25部をイオン交換水10部に溶解させた水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル10.0部、スチレン30.0部およびターシャリーブチルハイドロパーオキサイド0.1部の混合液を約40分間にわたって滴下し重合した。滴下終了後1時間保持した後、冷却して、複合ゴム状重合体(B−1)にアクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフトさせたグラフト共重合体(C−1)の水性分散体を得た。次いで、酢酸カルシウムを5%の割合で溶解した水溶液150部を60℃に加熱し撹拌した。その酢酸カルシウム水溶液中にグラフト共重合体(C−1)の水性分散体100部を徐々に滴下して凝固させた。得られた凝固物を分離し、洗浄した後、乾燥させて、グラフト共重合体(C−1)の乾燥粉末を得た。
<製造例4:グラフト共重合体(C−2)〜(C−5)の製造>
ラジカル重合工程で用いたポリオルガノシロキサン(b)および、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、アクリル酸n−ブチルの量を表4に示すように変更した以外は、製造例3と同様にしてグラフト共重合体(C−2)〜(C−5)を得た。
<製造例5:グラフト共重合体(C−6)>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ポリオルガノシロキサン(b)のラテックスを固形分換算で4.0部と、アルケニルコハク酸ジカリウム0.48部と、イオン交換水190部とを仕込んで混合した。次いで、アルキル(メタ)アクリレート系重合体を構成する単量体としてアクリル酸n−ブチル46.0部、アリルメタクリレート0.4部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.09部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.12部からなる混合物を添加した。この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換を行い、内温を60℃まで昇温した。内温が60℃に達した時点で、硫酸第一鉄七水塩0.000075部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00023部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間この状態を維持し、ポリオルガノシロキサンとポリブチルアクリレートゴムとが複合した複合ゴムを得た(ラジカル重合工程)。得られた複合ゴムの体積平均粒子径は90nmであった。
反応器内部の液温が70℃に低下した後、5%ピロリン酸ナトリウム水溶液を固形分として0.20部添加した。内温70℃で制御した後、酸基含有共重合体ラテックス(f−1)を固形分として0.30部添加し、30分撹拌、肥大化を行い、複合ゴム状重合体(B−6)のラテックスを得た(肥大化工程)。
得られたラテックス状の複合ゴム状重合体(B−6)の体積平均粒子径は165nmであった。また、複合ゴム状重合体(B−6)の全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合は10体積%であった。測定結果を表4に示す。
この複合ゴム状重合体(B−6)のラテックスに、硫酸第一鉄七水塩0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部、ロンガリット0.3部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル10.0部、スチレン30.0部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.18部からなる混合液を80分間にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を30分保持した後、アクリロニトリル2.5部、スチレン7.5部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.05部、n―オクチルメルカプタン0.02部からなる混合物を20分にわたって滴下し、重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を30分保持した後、クメンヒドロパーオキシド0.05部を添加し、さらに温度75℃の状態を30分保持した後、冷却し、複合ゴム状重合体(B−6)に、アクリロニトリルとスチレンをグラフト重合させたシリコーン/アクリル複合ゴム系のグラフト共重合体(C−6)のラテックスを得た。
次いで、1%酢酸カルシウム水溶液150部を60℃に加熱し、この中へグラフト共重合体(C−6)のラテックス100部を徐々に滴下して凝固した。そして、析出物を分離し、脱水、洗浄した後に乾燥して、グラフト共重合体(C−6)を得た。
<製造例6:グラフト共重合体(C−7)〜(C−10)の製造>
ラジカル重合工程で用いたポリオルガノシロキサン(b)の量、アルケニルコハク酸ジカリウムの量、アクリル酸n−ブチルの量、肥大化工程で用いたピロリン酸ナトリウムの量および酸基含有共重合体ラテックスの量を、表4に示すように変更した以外は、製造例5と同様にしてグラフト共重合体(C−7)〜(C−10)を得た。
各例で得られたグラフト共重合体(C−7)〜(C−10)を構成する複合ゴム状重合体(B)の体積平均粒子径、および複合ゴム状重合体(B)の全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合を表4に示す。
Figure 2019108425
<メタクリル酸エステル樹脂(D)>
メタクリル酸エステル樹脂(D−1)として、株式会社日本触媒製「ポリイミレックスPML203」を使用した。
メタクリル酸エステル樹脂(D−2)として、三菱ケミカル株式会社製「アクリペットVH5」を使用した。
<熱可塑性樹脂組成物>
(実施例1)
グラフト共重合体(A−2)18部、グラフト共重合体(C−6)18部、メタクリル酸エステル樹脂(D−1)29部、メタクリル酸エステル樹脂(D−2)35部、カーボンブラック0.8部を混合して着色混合物を得た。スクリュー直径28mmの真空ベント付き2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−28V」)を用い、シリンダー温度200〜260℃、93.325kPa真空の条件で、前記着色混合物を溶融混練して熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、各種成形品を成形し、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性および耐候性を評価した。結果を表5に示す。
(実施例2〜20)
表5または表6に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、各種成形品を成形し、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性および耐候性を評価した。結果を表5および表6に示す。
(比較例1〜4)
表7に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、各種成形品を成形し、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性および耐候性を評価した。結果を表7に示す。
Figure 2019108425
Figure 2019108425
Figure 2019108425
実施例1〜20の熱可塑性樹脂組成物で得られた成形品は、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性および耐候性が優れていた。したがって、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いると、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性および耐候性に優れた成形品が得られることがわかった。
体積平均粒子径が310nm未満のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を用いた比較例1の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性が低かった。
体積平均粒子径が550nmを超えるエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を用いた比較例2の熱可塑性樹脂組成物は、発色性および耐候性が低かった。
ゲル含有率が34質量%を超えるエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を用いた比較例3,4の熱可塑性樹脂組成物は、発色性および耐候性が低かった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品は、車輌内外装部品、事務機器、家電、建材等として有用である。
10 治具
11 先端部
12 洗車タオル
13 成形品(Ma)

Claims (2)

  1. グラフト共重合体(A)とグラフト共重合体(C)とメタクリル酸エステル樹脂(D)とを含有し、
    前記グラフト共重合体(A)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体を含むビニル系単量体成分(m1)を重合することにより得られる共重合体であり、
    前記グラフト共重合体(C)は、ポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)を含む複合ゴム状重合体(B)の存在下に、ビニル系単量体成分(m2)を重合することにより得られる共重合体であり、
    前記メタクリル酸エステル樹脂(D)は、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体成分(m3)を重合することにより得られる樹脂であり、
    前記グラフト共重合体(A)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径が310nm〜550nmであり、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の下記測定方法によって測定されるゲル含有率が1〜34質量%である、熱可塑性樹脂組成物。
    <ゲル含有率の測定方法>
    エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の試料[E1]0.5gを、200mL、110℃のトルエン中に5時間浸漬して溶液を得る。次いで、前記溶液を200メッシュ金網にて濾過し、残渣を乾燥し、その乾燥物[E2]の質量(g)を測定する。下記式(1)から、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率を求める。
    ゲル含有率(質量%)=[E2]/[E1]×100 ・・・(1)
  2. 請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物を含有する、成形品。
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