JP2019108425A - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents
熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2019108425A JP2019108425A JP2017240563A JP2017240563A JP2019108425A JP 2019108425 A JP2019108425 A JP 2019108425A JP 2017240563 A JP2017240563 A JP 2017240563A JP 2017240563 A JP2017240563 A JP 2017240563A JP 2019108425 A JP2019108425 A JP 2019108425A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- ethylene
- copolymer
- olefin
- mass
- acid
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Graft Or Block Polymers (AREA)
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
Abstract
Description
・直射日光や雨にさらされても変色しにくいこと(耐候性)。
・塗装と同等の良好な発色を有すること(発色性)。
・傷が付かない、または傷が目立たないこと(耐傷付き性)。
耐傷付き性の良好な成形品としては、ゴム質重合体の割合を低くして成形品の表面を硬くしたもの、潤滑剤(シリコーンオイル、オレフィンワックス等)を添加して成形品の表面の滑り性を良くしたもの、摺動性の高いグラフトを添加するもの等が知られている。
(1)架橋オレフィン樹脂にビニル系重合体がグラフトしたグラフト共重合体と特定の粒子径を有するポリオルガノシロキサンと、(メタ)アクリル酸エステル系単量体からなる複合ゴム状重合体にビニル系重合体がグラフトしたグラフト共重合体からなる熱可塑性樹脂組成物(特許文献1)。
(2)特定の分子量および粒子径を有するエチレン・αオレフィン共重合体の存在下に芳香族ビニルとシアン化ビニルとを含む単量体混合物をグラフト重合したグラフト共重合体と、特定の粒子径を有するポリオルガノシロキサンと(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位からなる複合ゴム状重体にビニル系単量体を重合したグラフト共重合体からなる熱可塑性樹脂組成物(特許文献2)。
特許文献2に記載の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品は発色性が不十分であり、意匠性が求められる用途での制限があった。
本発明は、耐衝撃性、耐候性、発色性および耐傷付き性に優れる熱可塑性樹脂組成物および成形品を提供することを目的とする。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)とグラフト共重合体(C)とメタクリル酸エステル樹脂(D)とを含有し、
前記グラフト共重合体(A)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体を含むビニル系単量体成分(m1)を重合することにより得られる共重合体であり、
前記グラフト共重合体(C)は、ポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)を含む複合ゴム状重合体(B)の存在下に、ビニル系単量体成分(m2)を重合することにより得られる共重合体であり、
前記メタクリル酸エステル樹脂(D)は、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体成分(m3)を重合することにより得られる樹脂であり、
前記グラフト共重合体(A)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径が310nm〜550nmであり、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の下記測定方法によって測定されるゲル含有率が1〜34質量%である。
<ゲル含有率の測定方法>
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の試料[E1]0.5gを、200mL、110℃のトルエン中に5時間浸漬して溶液を得る。次いで、前記溶液を200メッシュ金網にて濾過し、残渣を乾燥し、その乾燥物[E2]の質量(g)を測定する。下記式(1)から、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率を求める。
ゲル含有率(質量%)=[E2]/[E1]×100 ・・・(1)
本発明の成形品は、前記熱可塑性樹脂組成物を含有する。
本発明の成形品は、耐衝撃性、耐候性、発色性および耐傷付き性に優れる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)とグラフト共重合体(C)とメタクリル酸エステル樹脂(D)とを含有する組成物である。
グラフト共重合体(A)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(m1)を重合して得られた共重合体である。換言すれば、グラフト共重合体(A)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)部分と、ビニル系単量体成分(m1)の重合体であるビニル系重合体部分とからなる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は水に分散されてオレフィン樹脂水性分散体(p)とされていてもよい。
なお、グラフト共重合体(A)においては、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下にビニル系単量体成分(m1)がどのように重合しているか、特定することは困難である。例えば、ビニル系単量体成分(m1)が重合したビニル系重合体としては、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)に結合したものと、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)に結合していないものとが存在する。また、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)に結合したビニル系重合体の分子量、構成単位の割合等を特定することも困難である。すなわち、グラフト共重合体(A)をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的ではないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、本発明おいては、グラフト共重合体(A)は「エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、ビニル系単量体成分(m1)を重合して得られたもの」と規定するすることがより適切とされる。
グラフト共重合体(A)を得る際に使用するエチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンとを公知の重合方法によって共重合することによって得られた、エチレン単位とα−オレフィン単位とを含む共重合体である。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、非共役ジエン単位をさらに含んでもよい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の分子量分布(Mw/数平均分子量(Mn))は、1.0〜3.0が好ましく、1.9〜3.0がより好ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の分子量分布(Mw/Mn)が前記範囲内であれば、成形品の耐衝撃性が優れる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定し、標準ポリスチレンで換算した値である。
チーグラー・ナッタ触媒としては、遷移金属(チタン、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム等)のハロゲン化物と有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物等とを組み合わせた触媒が挙げられる。
また、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)は、架橋構造を有することが好ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体(a)が架橋構造を有することで、成形品の耐衝撃性がより向上する。
なお、本明細書において、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を水性媒体に分散させたものを「オレフィン樹脂水性分散体(p)」という。また、架橋構造を有するエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を特に「架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)」ともいう。また、架橋構造を有さないエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を特に「未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)」ともいう。
オレフィン樹脂水性分散体(p)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を水性媒体に分散させたものである。
オレフィン樹脂水性分散体(p)は、その他の成分として、乳化剤、酸変性オレフィン重合体等を含有してもよい。
オレフィン樹脂水性分散体(p)中の乳化剤の含有量は、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱着色を抑制でき、オレフィン樹脂水性分散体(p)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の粒子径制御が容易である点から、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)100質量部に対して1〜8質量部が好ましい。
オレフィン樹脂水性分散体(p)中の酸変性オレフィン重合体の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)100質量部に対して、1〜40質量部が好ましい。酸変性オレフィン重合体の添加量が前記範囲内であれば、成形品の耐傷付き性と耐衝撃性のバランスがさらに優れる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体との混合方法は、限定されない。混合方法としては、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機等を用いた溶融混練法等が挙げられる。この場合、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体とを混合する工程が、それらの混合物を溶融混練する工程を兼ねてもよい。
乳化剤の添加方法は、限定されない。例えば、酸変性オレフィン重合体の添加方法と同様の方法が挙げられる。また、前記(M1)または(M2)の方法において、水性媒体に乳化剤を添加する方法、前記(M2)の方法において、炭化水素溶媒に乳化剤を溶解する方法等が挙げられる。
エチレン・α−オレフィン共重合体の体積平均粒子径が前記下限値未満であると、成形品の耐衝撃性が低下することがあり、前記上限値を超えると、発色性および耐候性が低下することがある。
なお、オレフィン樹脂水性分散体(p)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の平均粒子径が、そのままグラフト共重合体(A)または後述する熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の平均粒子径になることを、電子顕微鏡の画像解析によって確認している。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率は、下記の測定方法により求められる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の試料[E1]0.5gを、200mL、110℃のトルエン中に5時間浸漬して溶液を得る。次いで、前記溶液を200メッシュ金網にて濾過し、残渣を乾燥し、その乾燥物[E2]の質量(g)を測定する。下記式(1)から、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率を求める。
ゲル含有率(質量%)=[E2]/[E1]×100 ・・・(1)
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)がオレフィン樹脂水性分散体(p)に含まれている場合には、オレフィン樹脂水性分散体(p)に希硫酸を添加してエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を凝固させ、得られた凝固粉を水洗し、乾燥する。乾燥した凝固粉をエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の試料[E1]とする。
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)は、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)または未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)が水性媒体に分散したオレフィン樹脂水性分散体(p)を架橋処理することにより得られる。架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)が、オレフィン樹脂水性分散体(p)を架橋処理することにより得られた場合、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)は水性分散体として得られる。架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)の水性分散体のことを、「架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)」ということがある。
架橋処理の方法としては、(M3)有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加して処理を行う方法;(M4)多官能性化合物を添加して架橋処理を行う方法;(M5)電離性放射線によって処理を行う方法等が挙げられる。前記架橋処理法のなかでも、成形品の耐衝撃性および発色性がよい点から、(M3)、(M4)の方法が好ましく、(M3)の方法がより好ましい。
例えば、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)に、有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加し、溶融混練し、粉砕すると、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)の粉体が得られる。オレフィン樹脂水性分散体(p)に、有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加して処理すると、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)を含む架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)が得られる。
加熱温度は、有機過酸化物の種類によって異なる。加熱温度は、有機過酸化物の10時間半減期温度の−5℃〜+30℃が好ましい。加熱時間は、3〜15時間が好ましい。
ジアルキルペルオキシド化合物の具体例としては、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
多官能性化合物としては、ジビニルベンゼン、1,7−オクタジエンメタクリル酸アリル、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられる。多官能性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸変性オレフィン重合体は、オレフィン樹脂水性分散体(p)の説明で挙げたものと同様である。酸変性オレフィン重合体の添加量は、オレフィン樹脂水性分散体(p)中の酸変性オレフィン重合体の含有量と同様に、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)100質量部に対して、1〜40質量部が好ましい。
酸変性オレフィン重合体の添加方法は、限定されない。未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体とを混合した後に処理をしてもよいし、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体とをそれぞれ処理した後に混合してもよい。
未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)と酸変性オレフィン重合体との混合方法は、限定されない。混合方法としては、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機等を用いた溶融混練法等が挙げられる。
また、架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)を構成する架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)の平均粒子径が、そのままグラフト共重合体(A)または後述する熱可塑性樹脂組成物中の架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)の平均粒子径になることを、電子顕微鏡の画像解析によって確認している。
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)のゲル含有率は、下記の測定方法により求められる。
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)の試料[E1]0.5gを、200mL、110℃のトルエン中に5時間浸漬して溶液を得る。次いで、前記溶液を200メッシュ金網にて濾過し、残渣を乾燥し、その乾燥物[E2]の質量(g)を測定する。下記式(1)から、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)のゲル含有率を求める。
ゲル含有率(質量%)=[E2]/[E1]×100 ・・・(1)
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)が架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)に含まれている場合には、架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)に希硫酸を添加して架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)を凝固させ、得られた凝固粉を水洗し、乾燥する。乾燥した凝固粉を架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)の試料[E1]とする。
グラフト共重合体(A)を得る際に使用するビニル系単量体成分(m1)は、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体からなる群より1種以上の単量体を含む。ビニル系単量体成分(m1)は、必要に応じて、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体以外のビニル系単量体(他のビニル系単量体)を含んでいてもよい。
芳香族ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体成分(m1)100質量%中60〜85質量%が好ましく、62〜80質量%がより好ましい。芳香族ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れる。
シアン化ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体成分(m1)100質量%中15〜40質量%が好ましく、20〜38質量%がより好ましい。シアン化ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れる。
グラフト共重合体(A)の製造方法としては、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体を含むビニル系単量体成分(m1)を重合する方法が挙げられる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)はオレフィン樹脂水性分散体(p)に含まれるものでもよい。エチレン・α−オレフィン共重合体(a)が架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)である場合には、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)は架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)に含まれるものでもよい。
グラフト共重合体(A)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)40〜80質量%の存在下に、ビニル系単量体成分(m1)20〜60質量%(ただし、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)とビニル系単量体成分(m1)の合計は100質量%)を重合して得られたものが好ましい。グラフト共重合体(A)におけるエチレン・α−オレフィン共重合体の含有割合が40〜60質量%であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性がさらに向上する。
グラフト共重合体(A)のグラフト率は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性がより優れることから、50〜100%が好ましく、60〜100%がより好ましい。
有機過酸化物は、有機過酸化物と遷移金属と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤として用いるのが好ましい。
重合の際に、連鎖移動剤、乳化剤等を状況に応じて用いてもよい。
有機過酸化物としては、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。
レドックス系開始剤としては、クメンヒドロペルオキシドと、硫酸第一鉄と、ピロリン酸ナトリウムと、フルクトースとからなるものがより好ましい。
連鎖移動剤の添加方法は、一括、分割、連続のいずれでもよい。
連鎖移動剤の添加量は、ビニル系単量体成分(m1)100質量部に対して2.0質量部以下が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸スルホン酸塩、リン酸系塩、脂肪酸塩、アミノ酸誘導体塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、通常のポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アニオン部にカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等を有し、カチオン部にアミン塩、第4級アンモニウム塩等を有するものが挙げられる。
乳化剤の添加量は、ビニル系単量体成分(m1)100質量部に対して10質量部以下が好ましい。
グラフト共重合体(A)を含む水性分散体からグラフト共重合体(A)を回収する方法としては、例えば、水性分散体に析出剤を添加し、加熱、撹拌した後、析出剤を分離し、析出したグラフト共重合体(A)を水洗、脱水、乾燥する析出法が挙げられる。
析出剤としては、例えば、硫酸、酢酸、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の水溶液が挙げられる。析出剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グラフト共重合体(A)を含む水性分散体に、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。
グラフト共重合体(C)は、ポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)を含む複合ゴム状重合体(B)の存在下に、ビニル系単量体成分(m2)を重合して得られた共重合体である。換言すれば、グラフト共重合体(C)は、複合ゴム状重合体(B)部分と、ビニル系単量体成分(m2)の重合体であるビニル系重合体部分とからなる。
なお、グラフト共重合体(C)においては、複合ゴム状重合体(B)の存在下にビニル系単量体成分(m2)がどのように重合しているか、特定することは困難である。例えば、ビニル系単量体成分(m2)が重合したビニル系重合体としては、複合ゴム状重合体(B)に結合したものと、複合ゴム状重合体(B)に結合していないものとが存在する。また、複合ゴム状重合体(B)に結合したビニル系重合体の分子量、構成単位の割合等を特定することも困難である。すなわち、グラフト共重合体(C)をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的ではないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、本発明おいては、グラフト共重合体(C)は複合ゴム状重合体(B)の存在下に、ビニル系単量体成分(m2)を重合して得られたもの」と規定するすることがより適切とされる。
グラフト共重合体(C)を得る際に使用する複合ゴム状重合体(B)は、ポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)からなるものである。
複合ゴム状重合体(B)の体積平均粒子径は、耐衝撃性と発色性に優れることから、50〜240nmが好ましい。
また、複合ゴム状重合体(B)中の全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合は25体積%以下であることが好ましく、1〜25体積%であることがより好ましい。粒子径が300〜500nmである粒子の割合が25体積%以下であれば、発色性と耐候性がより高くなる。また、複合ゴム状重合体(B)中の全粒子中に占める、粒子径が500nm超である粒子の割合は、1体積%未満が好ましく、0.1体積%未満がより好ましい。
複合ゴム状重合体(B)を構成するポリオルガノシロキサン(b−1)としては、オルガノシロキサンの重合体であれば特に制限されない。ポリオルガノシロキサン(b−1)のなかでも、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサン(ビニル重合性官能基含有ポリオルガノシロキサン)が好ましく、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位と、ジメチルシロキサン単位とを有するポリオルガノシロキサンがより好ましい。
ポリオルガノシロキサン(b−1)の好ましい態様としては、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位0.3〜3モル%と、ジメチルシロキサン単位99.7〜97モル%(ただし、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位とジメチルシロキサン単位の合計を100モル%とする。)とからなり、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%以下であるポリオルガノシロキサンが挙げられる。
ビニル重合性官能基を含有するアルコキシシラン化合物としては、具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、δ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン;p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンなどが挙げられる。これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのなかでも、後述するシロキサンラテックス(b−2)のラテックスの安定化作用にも優れている点で脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。また、n−ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸等の鉱酸とを併用すると、ポリオルガノシロキサン(b−1)の製造に用いた乳化剤の色が成形品の色に与える影響を小さく抑えることができる。
酸触媒の添加量は適宜決めればよいが、通常、シロキサン混合物100質量部に対して0.1〜20質量部程度である。
複合ゴム状重合体(B)を構成するアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)は、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分を重合して得られるものである。この単量体成分には、アルキル(メタ)アクリレート単量体以外の単量体(他の単量体)が含まれていてもよい。
単量体成分100質量%中のアルキル(メタ)アクリレート単量体の割合は、80〜100質量%が好ましく、90〜100質量%がより好ましい。
複合ゴム状重合体(B)の製造方法は特に制限されないが、ポリオルガノシロキサン(b−1)とアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)を各々含む複数のラテックスをヘテロ凝集もしくは共肥大化する方法;ポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)のいずれか一方を含むラテックス存在下で、他の一方の重合体を形成する単量体成分を重合させて複合化させる方法などが挙げられる。特に複合ゴム状重合体(B)の体積平均粒子径および粒子径分布を上述した範囲内となるように容易に調整できることから、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(b−1)の存在下で、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分をラジカル重合させて共重合体ラテックスを得た後(ラジカル重合工程)、該共重合体ラテックスと酸基含有共重合体ラテックスとを混合することにより、共重合体ラテックスを肥大化させる(肥大化工程)方法が好ましい。さらに、共重合体ラテックスと酸基含有共重合体ラテックスとを混合する前に、共重合体ラテックスに縮合酸塩を添加することが好ましい。
ラジカル重合工程は、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(b−1)の存在下で、アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分をラジカル重合する工程である。アルキル(メタ)アクリレート単量体を1種以上含む単量体成分は、ラテックス状のポリオルガノシロキサン(b−1)に一括して添加してもよいし、連続的に、あるいは断続的に添加してもよい。
グラフト交叉剤、架橋剤としては、例えば、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸プロピレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコールジエステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられる。これらの中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩とナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートとハイドロパーオキサイドとを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
肥大化工程は、ラジカル重合工程にて得られる共重合体ラテックスと、酸基含有共重合体ラテックスとを混合することにより、共重合体ラテックスを肥大化させる工程である。
肥大化に用いる酸基含有共重合体ラテックスは、水中にて、酸基含有単量体、アルキル(メタ)アクリレート単量体、および必要に応じてこれらと共重合可能な他の単量体を含む単量体成分を重合して得られる酸基含有共重合体のラテックスである。
アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレート単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレート単量体のなかでも、炭素数1〜8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
乳化重合で使用される乳化剤としては、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ロジン酸のアルカリ金属塩、アルケニルコハク酸のアルカリ金属塩等で例示されるカルボン酸系の乳化剤;アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等の中から選ばれたアニオン系乳化剤など、公知の乳化剤が挙げられる。これら乳化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、乳化重合の際には、pHを調節するためにアルカリや酸を添加することができる。
また、乳化重合の際には、減粘剤として電解質を添加することができる。
酸基含有共重合体ラテックスは、共重合体ラテックスに一括して添加してもよいし、滴下により連続的または断続的に添加してもよい。
縮合酸塩は、共重合体ラテックスに一括して添加することが好ましい。
肥大化を行う際の温度は特に制限されないが、20〜90℃が好ましく、30〜80℃がより好ましい。温度がこの範囲外であると、肥大化が十分に進行しない場合がある。
グラフト共重合体(C)を得る際に使用するビニル系単量体成分(m2)としては特に制限されない。ビニル系単量体成分(m2)のなかでも、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シアン化ビニル化合物が好ましい。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル等が挙げられる。シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。これらビニル系単量体成分(m2)のなかでも、成形品の耐衝撃性がより向上することから、スチレンとアクリロニトリルとを併用することが好ましい。
グラフト共重合体(C)は、複合ゴム状重合体(B)の存在下に、ビニル系単量体成分(m2)を重合することにより得られる。重合方法としては特に制限されないが、反応が安定して進行するように制御できることから乳化重合が好ましい。
グラフト共重合体(C)の具体的な製造方法としては、例えば、複合ゴム状重合体(B)に1種以上のビニル系単量体成分(m2)を一括して仕込んだ後に重合する方法;複合ゴム状重合体(B)に1種以上のビニル系単量体成分(m2)の一部を先に仕込み、随時重合させながら残りを重合系に滴下する方法;複合ゴム状重合体(B)に1種以上のビニル系単量体成分(m2)の全量を滴下しながら随時重合する方法などが挙げられ、これらを1段ないしは2段以上に分けて行うことができる。また、各段における1種以上のビニル系単量体成分(m2)の種類や組成比を変えて行うことも可能である。
また、重合を行う際には、得られるグラフト共重合体(C)の分子量やグラフト率を制御するため、各種公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
なお、圧搾脱水機や押出機から排出されたグラフト共重合体(C)を回収せず、直接、樹脂組成物を製造する押出機や成形機に送って成形品とすることも可能である。
メタクリル酸エステル樹脂(D)は、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体成分(m3)を重合することにより得られる樹脂である。
ビニル系単量体成分(m3)は、少なくともメタクリル酸エステルを必須成分として含る。ビニル系単量体成分(m3)は、マレイミド系化合物、芳香族ビニル化合物、アクリル酸エステル、およびメタクリル酸エステルと共重合可能な他のビニル系単量体を任意成分として含んでもよい。
ビニル系単量体成分(m3)におけるメタクリル酸エステルの含有率が50〜94質量%、マレイミド系化合物の含有率が5〜49質量%、芳香族ビニル化合物の含有率が1〜45質量%の範囲内であれば、成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れる。
前記メタクリル酸エステルのなかでも、成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸エチルの少なくとも1種が好ましい。
マレイミド系化合物のなかでも、成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、N−アリールマレイミドが好ましく、N−フェニルマレイミドが特に好ましい。
メタクリル酸エステル樹脂(D)を得る際のビニル系単量体成分(m3)の重合方法としては、公知の重合方法(乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法等)が挙げられる。
乳化剤としては、通常の乳化重合用乳化剤(ロジン酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)が挙げられる。
重合開始剤としては、有機、無機の過酸化物系開始剤が挙げられる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、テルペン類等が挙げられる。
析出法としては、水性分散体からグラフト共重合体(C)を回収するときと同様の方法を採用できる。
懸濁重合法によるメタクリル酸エステル樹脂(D)の製造方法としては、例えば、反応器内にビニル系単量体成分(m3)と懸濁剤と懸濁助剤と重合開始剤と連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、スラリーを脱水、乾燥してメタクリル酸エステル樹脂(D)を回収する方法が挙げられる。
懸濁剤としては、トリカルシウムフォスファイト、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
懸濁助剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
重合開始剤としては、有機ペルオキシド類が挙げられる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、テルペン類等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)、グラフト共重合体(C)およびメタクリル酸エステル樹脂(D)以外の他の熱可塑性樹脂を含有してもよい。
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド(ナイロン)等が挙げられる。他の熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各種添加剤を含有してもよい。
各種添加剤としては、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、顔料、染料、充填剤、シリコーンオイル、パラフィンオイル等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)および複合ゴム状重合体(B)の合計(100質量%)のうち、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の割合は、耐衝撃性および発色性、耐傷付き性に優れることから、10〜85質量%であることが好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)および複合ゴム状重合体(B)の合計(100質量%)のうち、複合ゴム状重合体(B)の割合は、耐衝撃性および発色性、耐傷付き性に優れることから、90〜15質量%であることが好ましい。
以上説明した本発明の熱可塑性樹脂組成物にあっては、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体を含むビニル系単量体成分(m1)を重合して得られたグラフト共重合体(A)と;ポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)を含む複合ゴム状重合体(B)の存在下に、ビニル系単量体成分(m2)を重合して得られたグラフト共重合体(C)と;メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体成分(m3)を重合して得られたメタクリル酸エステル樹脂(D)の配合量が特定の割合であるため、耐衝撃性、耐候性、発色性および耐傷付き性に優れる成形品を容易に得ることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐傷付き性および耐候性に優れる成形品を得ることができるため、車両内外装部品での使用も可能である。
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を含有し、公知の成形方法によって成形加工して得られる。
成形方法としては、例えば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
成形品の用途としては、車輌内装・外装部品、事務機器、家電、建材等が挙げられ、車輌内装・外装部品が好適である。
以下に記載の「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
以下の実施例および比較例における各種測定および評価方法は、以下の通りである。
GPC(GPC:Waters社製「GPC/V2000」、カラム:昭和電工株式会社製「Shodex AT−G+AT−806MS」)を用い、o−ジクロロベンゼン(145℃)を溶媒として、ポリスチレン換算での質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
JIS K 2501に準拠して酸価を測定した。
マイクロトラック(日機装株式会社製「ナノトラック150」、動的光散乱法)を用い、測定溶媒として純水を用いて体積平均粒子径(MV)を測定した。
なお、水性媒体に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径が、そのままグラフト共重合体(A)および熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径を示すことを、電子顕微鏡の画像解析によって確認している。
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)を含む分散体(オレフィン樹脂水性分散体(p)または架橋オレフィン樹脂水性分散体(q))に、希硫酸を添加してエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を凝固させた。これにより得られた凝固粉を水洗し、乾燥した。乾燥した凝固粉試料[E1]0.5gを、200mL、110℃のトルエン中に5時間浸漬して溶液を得た。次いで、前記溶液を200メッシュ金網にて濾過し、残渣を乾燥し、その乾燥物[E2]の質量を測定した。下記式(1)から、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率を求めた。
ゲル含有率(質量%)=乾燥物質量[E2](g)/凝固粉試料質量[E1](g)×100 ・・・(1)
グラフト共重合体(A)1gを80mLのアセトンに添加し、65〜70℃にて3時間加熱還流し、得られた懸濁アセトン溶液を遠心分離機(日立工機株式会社製「CR21E」)にて14,000rpm、30分間遠心分離して、沈殿成分(アセトン不溶成分)とアセトン溶液(アセトン可溶成分)を分取した。そして、沈殿成分(アセトン不溶成分)を乾燥させてその質量(Y(g))を測定し、下記式(2)からグラフト率を算出した。なお、式(2)におけるYは、グラフト共重合体(A)のアセトン不溶成分の質量(g)、Xは、Yを求める際に用いたグラフト共重合体(A)の全質量(g)、ゴム分率は、グラフト共重合体(A)におけるエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の固形分の含有割合である。
グラフト率(%)={(Y−X×ゴム分率)/X×ゴム分率}×100 ・・・(2)
表5、表6および表7に示す配合でグラフト共重合体(A)、グラフト共重合体(C)、メタクリル酸エステル樹脂(D)、必要に応じて他の成分を混合し、グラフト共重合体(A)とグラフト共重合体(C)とメタクリル酸エステル樹脂(D)の合計100部に対して、カーボンブラック0.8部を混合して着色混合物を得た。スクリュー直径28mmの真空ベント付き2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−28V」)を用い、シリンダー温度200〜260℃、93.325kPa真空の条件で、前記着色混合物を溶融混練して熱可塑性樹脂組成物を得た。また、溶融混練後に、ペレタイザー(株式会社創研製「SH型ペレタイザー」)を用いてペレット化を行った。
熱可塑性樹脂組成物を、射出成形によって100×100mm(厚さ3mm)の黒着色板(成形品(Ma1))を得た。
熱可塑性樹脂組成物を、射出成形によって縦80mm、横10mm、厚さ4mmの成形品を成形し、耐衝撃性測定用成形品(成形品(Ma2))を得た。
成形品(Ma1)について、分光測色計(コニカミノルタオプティクス株式会社製「CM−3500d」)を用いて明度L*を、SCE方式にて測定した。これにより測定したL*を「L*(ma)」とする。L*が低いほど黒色となり、発色性が良好になる。
「明度(L*)」とは、JIS Z 8729において採用されているL*a*b*表色系における色彩値のうちの明度の値(L*)を意味する。「SCE方式」とは、JIS Z 8722に準拠した分光測色計を用い、光トラップによって正反射光を除去して色を測る方法を意味する。
成形品(Ma1)をサンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製)を用い、ブラックパネル温度63℃、サイクル条件60分(降雨12分)の条件で1000時間処理した。処理後の成形品(Mb)の表面の明度L*を、分光測色計を用いて、SCE方式にて測定した。これにより測定したL*をL*(mb)とする。成形品(Mb)の耐候性の判定指標ΔL*を下記式(3)から算出した。ΔL*(mb−ma)の絶対値が小さいほど、耐候性に優れる。
ΔL*(mb−ma)=L*(mb)−L*(ma)・・・(3)
図1に示すように、先端部11が半球形に形成された棒状の治具10を用意し、先端部11に、洗車タオル(株式会社ジョイフル製洗車用タオル3p)12を被せた。成形品(Ma)13の表面に対して、棒状の治具10が直角になるように、洗車タオル12が被せられた先端部11を接触させ、先端部11を成形品(Ma1)13の表面において水平方向(図中矢印方向)に摺動させ、100回往復させた。その際、加える荷重は1kgとした。100回往復させた後、傷を付けた成形品(Mc)の表面の明度L*を、分光測色計を用いて、SCE方式にて測定した。こうして測定されたL*を「L*(mc)」とする。
成形品(Mc)の傷の目立ちやすさの判定指標ΔL*を下記式(4)から算出した。ΔL*(mc−ma)の絶対値が小さい程、傷が目立ちにくく、耐傷付き性に優れる。
ΔL*(mc−ma)=L*(mc)−L*(ma)・・・(4)
成形品(Ma2)について、ISO 179規格にしたがい、23℃の条件でシャルピー衝撃試験(ノッチ付)を行い、シャルピー衝撃強度を測定した。
<オレフィン樹脂水性分散体(p−1)の調製>
未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a−1)(三井化学株式会社製、「タフマー P−0775」、エチレン・プロピレン共重合体、Mw=31×104)100部と、酸変性オレフィン重合体として無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学株式会社製、「三井ハイワックス 2203A」、質量平均分子量:2,700、酸価:30mg/g)20部と、アニオン系乳化剤としてオレイン酸カリウム5部とを混合した。
この混合物を2軸スクリュー押出機(株式会社池貝製、「PCM30」、L/D=40)のホッパーから4kg/hで供給し、該2軸スクリュー押出機のベント部に設けた供給口より、水酸化カリウム0.7部とイオン交換水3.4部を混合した水溶液を連続的に供給しながら、220℃に加熱して溶融混練して押出した。溶融混練物を2軸スクリュー押出機の先端に取り付けた冷却装置に連続的に供給し、90℃まで冷却した。そして、2軸スクリュー押出機先端より吐出させた固体を、80℃の温水中に投入し、連続的に分散させて、固形分濃度40質量%付近まで希釈して、オレフィン樹脂水性分散体(p−1)を得た。オレフィン樹脂水性分散体(p−1)に分散している未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a−1)のゲル含有率と体積平均粒子径を表1に示す。
表1に示すように、乳化する際の水酸化カリウムの添加部数、イオン交換水の添加部数を変更した以外は、オレフィン樹脂水性分散体(p−1)と同様にして、オレフィン樹脂水性分散体(p−2)〜(p−5)を得た。
各オレフィン樹脂水性分散体(p−2)〜(p−5)に分散している未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a−1)のゲル含有率と体積平均粒子径を表1に示す。
未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a−1)を未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a−2)(三井化学株式会社製、「タフマー P−0275」、エチレン・プロピレン共重合体、Mw=18×104)に変更した以外は、オレフィン樹脂水性分散体(p−3)と同様にして、オレフィン樹脂水性分散体(p−6)を得た。
オレフィン樹脂水性分散体(p−6)に分散している未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a−2)のゲル含有率と体積平均粒子径を表1に示す。
<架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)の調製>
オレフィン樹脂水性分散体(p−1)(未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の固形分として100部)に固形分濃度が30%になるようにイオン交換水を加え、有機過酸化物としてt−ブチルクミルペルオキシド0.2部、多官能性化合物としジビニルベンゼン1部を添加し、130℃で5時間反応させた。これにより未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体を架橋させて、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体を含む架橋オレフィン樹脂水性分散体(q−1)を調製した。架橋オレフィン樹脂水性分散体(q−1)に含まれる架橋エチレン・α−オレフィン共重合体のゲル含有率と体積平均粒子径を表2に示す。
表2に示すようにオレフィン樹脂水性分散体(p)の種類とt−ブチルクミルペルオキシドの添加量を変更した以外は、架橋オレフィン樹脂水性分散体(q−1)と同様にして、架橋オレフィン樹脂水性分散体(q−2)〜(q−9)の水性分散体を得た。架橋オレフィン樹脂水性分散体(q−2)〜(q−9)に含まれる架橋エチレン・α−オレフィン共重合体のゲル含有率と体積平均粒子径を表2に示す。
なお、表2に示すオレフィン樹脂水性分散体(p)の添加量(部)は固形分量である。
<グラフト共重合体(A−1)の製造>
撹拌機付きステンレス重合槽に、架橋オレフィン樹脂水性分散体(q−1)(架橋エチレン・α−オレフィン共重合体の固形分として50部)を入れ、架橋オレフィン樹脂水性分散体(q−1)に固形分濃度が30%になるようにイオン交換水を加え、硫酸第一鉄0.006部、ピロリン酸ナトリウム0.3部およびフルクトース0.35部を仕込み、温度を80℃とした。前記重合槽に、スチレン39部、アクリロニトリル11部およびクメンハイドロペルオキシド0.6部を150分間連続的に添加し、重合温度を80℃に保って乳化重合した。これにより、平均粒子径310nmのグラフト共重合体(A−1)を含む水性分散体を得た。グラフト共重合体(A−1)を含む水性分散体に酸化防止剤を添加し、硫酸を添加して固形分を析出し、洗浄、脱水、乾燥の工程を経て、粉状のグラフト共重合体(A−1)を得た。
グラフト共重合体(A−1)のグラフト率を測定したところ60%であった。また、電子顕微鏡により、熱可塑性樹脂組成物中の架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(ac)の平均粒子径を確認したところ、290nmであった。
表3に示すように架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)の種類を変更した以外は、グラフト共重合体(A−1)と同様にして、グラフト共重合体(A−2)〜(A−9)を得た。グラフト共重合体(A−2)〜(A−9)のグラフト率を表3に示す。
表3に示すように架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)の量、スチレンの量、およびアクリロニトリルの量を変更した以外は、グラフト共重合体(A−3)と同様にして、グラフト共重合体(A−10)を得た。グラフト共重合体(A−10)のグラフト率を表3に示す。
表3に示すように架橋オレフィン樹脂水性分散体(q)をオレフィン樹脂水性分散体(p)に変更した以外は、グラフト共重合体(A−1)と同様にして、グラフト共重合体(A−11)〜(A−12)を得た。グラフト共重合体(A−11)〜(A−12)のグラフト率を表3に示す。
<製造例1:ポリオルガノシロキサン(b)の製造>
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン混合物100部を得た。これに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部、イオン交換水300部からなる水溶液を添加し、ホモミキサーを用いて10000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに300kg/cm2の圧力で2回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
別途、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と、イオン交換水90部とを投入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液(酸触媒水溶液)を調製した。
この酸触媒水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを2時間にわたって滴下し、滴下終了後3時間その温度を維持した後、40℃以下に冷却した。次いで、この反応物を10%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に中和して、ポリオルガノシロキサン(b)のラテックスを得た。
得られたポリオルガノシロキサン(b)のラテックスを180℃で30分乾燥して固形分を求めたところ18.2%であった。また、体積平均粒子径は30nmであった。
<製造例2:酸基含有共重合体ラテックス(f−1)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、イオン交換水200部、オレイン酸カリウム2部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム4部、硫酸第一鉄七水塩0.003部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.009部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部を窒素気流下で仕込み、60℃に昇温した。60℃になった時点から、アクリル酸n−ブチル85部、メタクリル酸15部、クメンヒドロパーオキサイド0.5部からなる混合物を120分かけて連続的に滴下した。滴下終了後、さらに2時間、60℃を維持した状態で熟成を行い、固形分が33%、重合転化率が96%、酸基含有共重合体の体積平均粒子径が120nmである酸基含有共重合体ラテックス(f−1)を得た。
<製造例3:グラフト共重合体(C−1)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ポリオルガノシロキサン(b)のラテックスを固形分換算で8.0部と、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム0.75部を仕込み、イオン交換水203部とを仕込んで混合した。次いで、アルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)を構成する単量体としてアクリル酸n−ブチル42.0部、アリルメタクリレート0.21部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.11部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.13部からなる混合物を添加した。
この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換を行い、内温を60℃まで昇温した。内温が60℃に達した時点で、硫酸第一鉄七水塩0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0003部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.24部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を78℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間この状態を維持し、ポリオルガノシロキサンとポリブチルアクリレートゴムとが複合した複合ゴム状重合体(B−1)を得た(ラジカル重合工程)。得られた複合ゴム状重合体(B−1)の体積平均粒子径は90nmであった。
ラジカル重合工程で用いたポリオルガノシロキサン(b)および、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、アクリル酸n−ブチルの量を表4に示すように変更した以外は、製造例3と同様にしてグラフト共重合体(C−2)〜(C−5)を得た。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ポリオルガノシロキサン(b)のラテックスを固形分換算で4.0部と、アルケニルコハク酸ジカリウム0.48部と、イオン交換水190部とを仕込んで混合した。次いで、アルキル(メタ)アクリレート系重合体を構成する単量体としてアクリル酸n−ブチル46.0部、アリルメタクリレート0.4部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.09部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.12部からなる混合物を添加した。この反応器に窒素気流を通じることによって雰囲気の窒素置換を行い、内温を60℃まで昇温した。内温が60℃に達した時点で、硫酸第一鉄七水塩0.000075部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00023部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間この状態を維持し、ポリオルガノシロキサンとポリブチルアクリレートゴムとが複合した複合ゴムを得た(ラジカル重合工程)。得られた複合ゴムの体積平均粒子径は90nmであった。
反応器内部の液温が70℃に低下した後、5%ピロリン酸ナトリウム水溶液を固形分として0.20部添加した。内温70℃で制御した後、酸基含有共重合体ラテックス(f−1)を固形分として0.30部添加し、30分撹拌、肥大化を行い、複合ゴム状重合体(B−6)のラテックスを得た(肥大化工程)。
得られたラテックス状の複合ゴム状重合体(B−6)の体積平均粒子径は165nmであった。また、複合ゴム状重合体(B−6)の全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合は10体積%であった。測定結果を表4に示す。
次いで、1%酢酸カルシウム水溶液150部を60℃に加熱し、この中へグラフト共重合体(C−6)のラテックス100部を徐々に滴下して凝固した。そして、析出物を分離し、脱水、洗浄した後に乾燥して、グラフト共重合体(C−6)を得た。
ラジカル重合工程で用いたポリオルガノシロキサン(b)の量、アルケニルコハク酸ジカリウムの量、アクリル酸n−ブチルの量、肥大化工程で用いたピロリン酸ナトリウムの量および酸基含有共重合体ラテックスの量を、表4に示すように変更した以外は、製造例5と同様にしてグラフト共重合体(C−7)〜(C−10)を得た。
各例で得られたグラフト共重合体(C−7)〜(C−10)を構成する複合ゴム状重合体(B)の体積平均粒子径、および複合ゴム状重合体(B)の全粒子中に占める、粒子径が300〜500nmである粒子の割合を表4に示す。
メタクリル酸エステル樹脂(D−1)として、株式会社日本触媒製「ポリイミレックスPML203」を使用した。
メタクリル酸エステル樹脂(D−2)として、三菱ケミカル株式会社製「アクリペットVH5」を使用した。
(実施例1)
グラフト共重合体(A−2)18部、グラフト共重合体(C−6)18部、メタクリル酸エステル樹脂(D−1)29部、メタクリル酸エステル樹脂(D−2)35部、カーボンブラック0.8部を混合して着色混合物を得た。スクリュー直径28mmの真空ベント付き2軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX−28V」)を用い、シリンダー温度200〜260℃、93.325kPa真空の条件で、前記着色混合物を溶融混練して熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、各種成形品を成形し、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性および耐候性を評価した。結果を表5に示す。
表5または表6に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、各種成形品を成形し、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性および耐候性を評価した。結果を表5および表6に示す。
表7に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、各種成形品を成形し、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性および耐候性を評価した。結果を表7に示す。
体積平均粒子径が310nm未満のエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を用いた比較例1の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性が低かった。
体積平均粒子径が550nmを超えるエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を用いた比較例2の熱可塑性樹脂組成物は、発色性および耐候性が低かった。
ゲル含有率が34質量%を超えるエチレン・α−オレフィン共重合体(a)を用いた比較例3,4の熱可塑性樹脂組成物は、発色性および耐候性が低かった。
11 先端部
12 洗車タオル
13 成形品(Ma)
Claims (2)
- グラフト共重合体(A)とグラフト共重合体(C)とメタクリル酸エステル樹脂(D)とを含有し、
前記グラフト共重合体(A)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の存在下に、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体を含むビニル系単量体成分(m1)を重合することにより得られる共重合体であり、
前記グラフト共重合体(C)は、ポリオルガノシロキサン(b−1)およびアルキル(メタ)アクリレート系重合体(b−3)を含む複合ゴム状重合体(B)の存在下に、ビニル系単量体成分(m2)を重合することにより得られる共重合体であり、
前記メタクリル酸エステル樹脂(D)は、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体成分(m3)を重合することにより得られる樹脂であり、
前記グラフト共重合体(A)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体(a)の体積平均粒子径が310nm〜550nmであり、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の下記測定方法によって測定されるゲル含有率が1〜34質量%である、熱可塑性樹脂組成物。
<ゲル含有率の測定方法>
エチレン・α−オレフィン共重合体(a)の試料[E1]0.5gを、200mL、110℃のトルエン中に5時間浸漬して溶液を得る。次いで、前記溶液を200メッシュ金網にて濾過し、残渣を乾燥し、その乾燥物[E2]の質量(g)を測定する。下記式(1)から、エチレン・α−オレフィン共重合体(a)のゲル含有率を求める。
ゲル含有率(質量%)=[E2]/[E1]×100 ・・・(1) - 請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物を含有する、成形品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017240563A JP2019108425A (ja) | 2017-12-15 | 2017-12-15 | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017240563A JP2019108425A (ja) | 2017-12-15 | 2017-12-15 | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2019108425A true JP2019108425A (ja) | 2019-07-04 |
Family
ID=67179056
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017240563A Pending JP2019108425A (ja) | 2017-12-15 | 2017-12-15 | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2019108425A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020015835A (ja) * | 2018-07-26 | 2020-01-30 | テクノUmg株式会社 | グラフト共重合体および熱可塑性樹脂組成物 |
JP2021031555A (ja) * | 2019-08-21 | 2021-03-01 | テクノUmg株式会社 | ゴム質重合体、グラフト共重合体、熱可塑性樹脂組成物および成形品と、その製造方法 |
JP2021031569A (ja) * | 2019-08-22 | 2021-03-01 | テクノUmg株式会社 | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 |
Citations (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH02185554A (ja) * | 1988-11-24 | 1990-07-19 | Bayer Ag | ポリマーアロイ |
JP2004346187A (ja) * | 2003-05-22 | 2004-12-09 | Mitsubishi Rayon Co Ltd | 熱可塑性樹脂組成物および成形品 |
JP2007070393A (ja) * | 2005-09-05 | 2007-03-22 | Umg Abs Ltd | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 |
JP2007321132A (ja) * | 2006-06-05 | 2007-12-13 | Umg Abs Ltd | 熱可塑性樹脂組成物および成形品 |
JP2014177623A (ja) * | 2013-02-15 | 2014-09-25 | Umg Abs Ltd | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 |
JP2018010176A (ja) * | 2016-07-14 | 2018-01-18 | 三菱ケミカル株式会社 | 位相差フィルムおよび位相差フィルムの製造方法 |
JP2019167533A (ja) * | 2018-03-23 | 2019-10-03 | テクノUmg株式会社 | 熱可塑性樹脂組成物及び成形品 |
-
2017
- 2017-12-15 JP JP2017240563A patent/JP2019108425A/ja active Pending
Patent Citations (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH02185554A (ja) * | 1988-11-24 | 1990-07-19 | Bayer Ag | ポリマーアロイ |
JP2004346187A (ja) * | 2003-05-22 | 2004-12-09 | Mitsubishi Rayon Co Ltd | 熱可塑性樹脂組成物および成形品 |
JP2007070393A (ja) * | 2005-09-05 | 2007-03-22 | Umg Abs Ltd | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 |
JP2007321132A (ja) * | 2006-06-05 | 2007-12-13 | Umg Abs Ltd | 熱可塑性樹脂組成物および成形品 |
JP2014177623A (ja) * | 2013-02-15 | 2014-09-25 | Umg Abs Ltd | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 |
JP2018010176A (ja) * | 2016-07-14 | 2018-01-18 | 三菱ケミカル株式会社 | 位相差フィルムおよび位相差フィルムの製造方法 |
JP2019167533A (ja) * | 2018-03-23 | 2019-10-03 | テクノUmg株式会社 | 熱可塑性樹脂組成物及び成形品 |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020015835A (ja) * | 2018-07-26 | 2020-01-30 | テクノUmg株式会社 | グラフト共重合体および熱可塑性樹脂組成物 |
JP7195798B2 (ja) | 2018-07-26 | 2022-12-26 | テクノUmg株式会社 | グラフト共重合体の製造方法 |
JP2021031555A (ja) * | 2019-08-21 | 2021-03-01 | テクノUmg株式会社 | ゴム質重合体、グラフト共重合体、熱可塑性樹脂組成物および成形品と、その製造方法 |
JP7459463B2 (ja) | 2019-08-21 | 2024-04-02 | テクノUmg株式会社 | ゴム質重合体、グラフト共重合体、熱可塑性樹脂組成物および成形品と、その製造方法 |
JP2021031569A (ja) * | 2019-08-22 | 2021-03-01 | テクノUmg株式会社 | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6155340B2 (ja) | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 | |
JP2019108425A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 | |
JP2018095722A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物、その製造方法および成形品 | |
JP6393947B2 (ja) | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 | |
JP2019167534A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物及び成形品 | |
JP6827876B2 (ja) | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 | |
JP2019059906A (ja) | (メタ)アクリル酸エステル系共重合体、熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 | |
JP2019131744A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 | |
JP6678449B2 (ja) | ヒートサイクル射出成形用熱可塑性樹脂組成物、成形品および成形品の製造方法 | |
JP4346956B2 (ja) | 熱可塑性樹脂組成物および成形品 | |
JP6735534B2 (ja) | 複合ゴム系グラフト共重合体含有粉体、複合ゴム系グラフト共重合体含有凝固物、熱可塑性樹脂組成物、およびその成形品の製造方法 | |
JP6954727B2 (ja) | 熱可塑性樹脂組成物、その製造方法および成形品 | |
JP7049100B2 (ja) | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 | |
JP2001098133A (ja) | グラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物 | |
JP2019147867A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 | |
JP2019163411A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 | |
JP2019147868A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 | |
JP6891663B2 (ja) | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 | |
JP7228079B1 (ja) | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 | |
JP2005307074A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物および成型品 | |
JP2005343925A (ja) | 熱可塑性樹脂組成物、及びそれを用いた成形品 | |
JP6541254B2 (ja) | 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 | |
JP2005036048A (ja) | 後周期遷移金属錯体系の配位重合触媒によるポリオレフィン系グラフト共重合体の製造方法 | |
JP3833599B2 (ja) | グラフト共重合体、該グラフト共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物、並びに成形品 | |
JP2005307073A (ja) | グラフト共重合体およびその製造方法、熱可塑性樹脂組成物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20190718 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20201001 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20210628 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20210706 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20210830 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20220201 |