JP6891663B2 - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 Download PDF

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本発明は、耐衝撃性に優れ、透明性、流動性にも優れる熱可塑性メタクリル酸エステル系樹脂組成物を提供し得る共重合体と、この共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物およびその成形品に関する。
樹脂材料の耐衝撃性を向上させることは、樹脂材料の用途を拡大させるだけでなく成形品の薄肉化や大型化への対応を可能にするなど、工業的な有用性が非常に高いため、樹脂材料の耐衝撃性向上については、これまでに様々な手法が提案されてきた。このうち、ゴム質重合体と硬質樹脂材料とを組み合わせることによって、硬質樹脂材料の特性を保持しつつ耐衝撃性を高める手法は既に工業化されている。このような材料としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル(ASA)樹脂、アクリロニトリル−エチレン・α−オレフィン−スチレン(AES)樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
例えば特許文献1には、硬質樹脂材料としてメタクリル酸メチル系樹脂を用い、そこにAES樹脂を添加する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、AES樹脂とメタクリル酸メチル系樹脂との相溶性が低いため、メタクリル酸メチル系樹脂の特徴である透明性が著しく低下する上に耐衝撃性の向上効果も低い。
特許文献2にはメタクリル酸メチル系樹脂にAES樹脂を添加し、さらにそこにメタクリル酸メチルとアクリロニトリルとスチレンのランダム共重合体(MAS)樹脂を添加する方法が開示されている。
特許文献2の方法では、MAS樹脂がAS樹脂とメタクリル酸メチル系樹脂との相溶化剤として機能し、またAES樹脂のゴム成分であるEPDMとメタクリル酸メチル系樹脂の屈折率が近いため、MAS樹脂を添加することで、添加しない場合と比較して耐衝撃性と透明性を向上させることができるが、その効果は十分に満足し得るものではない。
特開2005−132970号公報 特開平9−272783号公報
本発明は、メタクリル酸エステル系樹脂の透明性を低下させることなく、耐衝撃性、流動性に優れた熱可塑性樹脂組成物とすることができる共重合体と、この共重合体を含む耐衝撃性、透明性、流動性に優れた熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物と特定のポリメタクリル酸エステル系マクロモノマーを含むビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られる共重合体(A)が、メタクリル酸エステル系樹脂の透明性を低下させることなく、耐衝撃性を効果的に向上させることができ、流動性も良好な熱可塑性樹脂組成物を与えることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物とマクロモノマーを含むビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られる共重合体(A)からなり、該マクロモノマーが、ポリメタクリル酸エステルを主骨格とし、該ポリメタクリル酸エステルの片末端にビニル基を有するマクロモノマーである共重合体(A)。
[2] 前記マクロモノマーの数平均分子量が1,000〜20,000であり、前記ビニル系単量体混合物(m1)100質量%中の芳香族ビニル化合物の含有率が45〜72質量%で、シアン化ビニル化合物の含有率が15〜23質量%で、マクロモノマーの含有率が5〜40質量%であり、該共重合体(A)の質量平均分子量が30,000〜1,000,000である、[1]に記載の共重合体(A)。
[3] メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られるメタクリル酸エステル系樹脂(B)用改良剤である、[1]又は[2]に記載の共重合体(A)。
[4] [1]ないし[3]のいずれかに記載の共重合体(A)と、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られるメタクリル酸エステル系樹脂(B)とを含む熱可塑性樹脂組成物。
[5] 前記ビニル系単量体混合物(m2)100質量%中のメタクリル酸エステルの含有率が80〜100質量%である、[4]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6] 前記共重合体(A)とメタクリル酸エステル系樹脂(B)の合計100質量%中の共重合体(A)の含有率が5〜80質量%である、[4]又は[5]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[7] 更に、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体混合物(m3)がグラフト重合したグラフト共重合体(C)を含む、[4]ないし[6]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[8] 前記ビニル系単量体混合物(m3)100質量%中の芳香族ビニル化合物の含有率が65〜82質量%で、シアン化ビニル化合物の含有率が18〜35質量%である、[7]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[9] 前記エチレン・α-オレフィン共重合体(D)とビニル系単量体混合物(m3)との合計100質量%中のエチレン・α-オレフィン共重合体(D)の含有率が50〜80質量%で、ビニル系単量体混合物(m3)の含有率が20〜50質量%であり、該グラフト共重合体(C)のグラフト率が25〜100%である、[7]又は[8]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[10] 前記エチレン・α-オレフィン共重合体(D)が架橋処理した架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)であり、該架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)のゲル含有率が35〜75質量%である、[7]ないし[9]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[11] 前記共重合体(A)とメタクリル酸エステル系樹脂(B)とグラフト共重合体(C)の合計100質量%中の共重合体(A)の含有率が5〜40質量%で、メタクリル酸エステル系樹脂(B)の含有率が20〜85質量%で、グラフト共重合体(C)の含有率が10〜40質量%である、[7]ないし[10]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[12] [3]〜[11]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
本発明によれば、耐衝撃性に優れ、透明性、流動性にも優れる熱可塑性メタクリル酸エステル系樹脂組成物およびその成形品が提供される。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、本願明細書において「単位」とは、重合体中に含まれる、重合前の化合物(単量体、即ちモノマー)に由来する構造部分を意味し、例えば、「α−オレフィン単位」とは「α−オレフィンに由来して重合体中に含まれる構造部分」を意味する。各重合体の単量体単位の含有割合は、当該重合体の製造に用いた単量体混合物中の該単量体の含有割合に該当する。
[共重合体(A)]
本発明の共重合体(A)は、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物とマクロモノマーを含むビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られ、該マクロモノマーが、ポリメタクリル酸エステルを主骨格とし、該ポリメタクリル酸エステルの片末端にビニル基を有すマクロモノマーであることを特徴とする。
<マクロモノマー>
共重合体(A)を構成するマクロモノマーの主骨格となるメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等の1種又は2種以上が挙げられるが、これらの中でもメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル等のアルキル基の炭素数が1〜4のメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、特にメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが、後述のメタクリル酸エステル系樹脂(B)に用いるメタクリル酸エステルと同様の理由から好ましい。
マクロモノマーの主骨格となるポリメタクリル酸エステルは、本発明の共重合体(A)を配合して得られる熱可塑性樹脂組成物及びその成形品の耐衝撃性、透明性の点で、後述のメタクリル酸エステル系樹脂(B)を構成するメタクリル酸エステル、すなわちビニル系単量体混合物(m2)に含まれるポリメタクリル酸エステルと同じ構造であることが好ましい。従って、例えばビニル系単量体混合物(m2)に含まれるメタクリル酸エステルがメタクリル酸メチルである場合、マクロモノマーの主骨格となるメタクリル酸エステルもメタクリル酸メチルであることが好ましい。
本発明で用いるマクロモノマーは、ポリメタクリル酸エステル単位のみで構成されるものに何ら限定されず、他のビニル系単量体単位を含むものであってもよい。ここで、他のビニル系単量体としては、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、ポリメタクリル酸エステル以外の不飽和カルボン酸エステル、シリコーン系化合物などが挙げられるが、マクロモノマー中のメタクリル酸エステル単位の含有率は80質量%以上であることが、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性、透明性の点で好ましい。
また、マクロモノマーの数平均分子量は1,000〜20,000、特に2,000〜15,000であることが、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性、透明性、流動性の点で好ましい。マクロモノマーの数平均分子量が、上記下限未満では、得られる共重合体(A)における枝成分(マクロモノマーの主骨格)の分子鎖長が短すぎ、耐衝撃性、透明性の向上効果が不十分となり、一方、上記上限を超えると、重合性に劣り目的量のマクロモノマーを共重合体(A)中に導入することが困難となる。なお、ここで、マクロモノマーの数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。
上記のようなマクロモノマーの市販品としては、例えばメタクリル酸メチルを主骨格とし、片末端にビニル基を有する東亜合成化学工業(株)製「AA−6」が挙げられる。
マクロモノマーは、1種のみを用いてもよく、構成するメタクリル酸エステルの種類や組成、数平均分子量等の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
共重合体(A)中のマクロモノマー単位の含有率は5〜40質量%、特に10〜30質量%であることが、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性、透明性、流動性の点で好ましい。即ち、ビニル系単量体混合物(m1)中のマクロモノマーの含有率は5〜40質量%、特に10〜30質量%であることが好ましい。マクロモノマーの含有率が上記下限未満では、マクロモノマーを導入することによる耐衝撃性や透明性の向上の効果を十分に得ることができず、上記上限を超えると、重合性に劣り目的量のマクロモノマーを共重合体(A)中に導入することが困難となる傾向がある。
<芳香族ビニル化合物>
共重合体(A)を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−もしくはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレンなどが挙げられ、これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
芳香族ビニル化合物の構造に特に制限は無いが、後述のグラフト共重合体(C)と混合して用いる場合、グラフト共重合体(C)を構成する芳香族ビニル化合物単位、即ち、後述のビニル系単量体混合物(m3)に含まれる芳香族ビニル化合物と同じ構造であることが、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性、透明性の点で好ましい。
共重合体(A)中の芳香族ビニル化合物単位の含有率は45〜72質量%、特に52〜68質量%であることが、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性、透明性の点で好ましい。即ち、ビニル系単量体混合物(m1)中の芳香族ビニル化合物の含有率は45〜72質量%、特に52〜68質量%であることが好ましい。芳香族ビニル化合物の含有率が上記下限未満では流動性が悪化する傾向があり、上記上限を超えると耐衝撃性が低下し、また透明性が悪化する傾向がある。
<シアン化ビニル化合物>
共重合体(A)を構成するシアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
シアン化ビニル化合物の構造に特に制限は無いが、後述のグラフト共重合体(C)と混合して用いる場合、グラフト共重合体(C)を構成するシアン化ビニル化合物単位、即ち、後述のビニル系単量体混合物(m3)に含まれるシアン化ビニル化合物と同じ構造であることが、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性、透明性の点で好ましい。
共重合体(A)中のシアン化ビニル化合物単位の含有率は15〜23質量%、特に18〜22質量%であることが、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性、透明性の点で好ましい。即ち、ビニル系単量体混合物(m1)中のシアン化ビニル化合物の含有率は15〜23質量%、特に18〜22質量%であることが好ましい。シアン化ビニル化合物の含有率が上記下限未満では耐衝撃性が低下する傾向があり、上記上限を超えると流動性が悪化し、また透明性が悪化する傾向がある。
<他のビニル系単量体>
本発明の共重合体(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記のマクロモノマー単位、芳香族ビニル化合物単位及びシアン化ビニル化合物単位以外のその他のビニル系単量体単位を含んでいてもよい。即ち、ビニル系単量体混合物(m1)は、上記のマクロモノマー、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物の他に、これらと共重合可能な他のビニル系単量体を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
その他のビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸エステルや、
N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−シクロアルキルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−アルキル置換フェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド等のN−アリールマレイミド、N−アラルキルマレイミド等のマレイミド系化合物や、
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル等が挙げられ、これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
<製造方法>
共重合体(A)の製造方法としては特に制限されず、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合、ミニエマルション重合などの公知の方法が挙げられる。
<質量平均分子量>
本発明の共重合体(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、テトラヒドロフラン(THF)に溶解して測定したものを標準ポリスチレン換算で示した値で、30,000〜1,000,000、特に40,000〜800,000であることが好ましい。
共重合体(A)の質量平均分子量が上記下限以上であると透明性に優れる傾向があり、上記上限以下であると透明性、流動性ともに優れる傾向があり、好ましい。
[メタクリル酸エステル系樹脂(B)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるメタクリル酸エステル系樹脂(B)は、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られる。
メタクリル酸エステル系樹脂(B)を構成するメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニルなどが挙げられ、これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これらの中でも、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性と透明性がより優れることから、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸エチルの少なくとも1種を使用することが好ましい。
本発明で用いるメタクリル酸エステル系樹脂(B)は、メタクリル酸エステル単位のみで構成されるものに何ら限定されず、必要に応じて他のビニル系単量体単位を含むものであってもよい。即ち、ビニル系単量体混合物(m2)はポリメタクリル酸エステル以外の他のビニル系単量体を含むものであってもよいが、メタクリル酸エステル系樹脂(B)中のメタクリル酸エステル単位の含有率は80〜100質量%、特に85〜100質量%、即ち、ビニル系単量体混合物(m2)中のメタクリル酸エステルの含有率は80〜100質量%、特に85〜100質量%であることが好ましい。メタクリル酸エステルの含有率が上記下限以上であることで、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の透明性が優れたものとなる。
メタクリル酸エステル系樹脂(B)に含まれていてもよい他のビニル系単量体単位、即ち、ビニル系単量体混合物(m2)に含まれていてもよい他のビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸エステル、スチレンなどの芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系化合物、無水マレイン酸などが挙げられ、これらの1種以上を使用できる。
ビニル系単量体混合物(m2)に含まれていてもよい他のビニル系単量体のうち、アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等のアルキル基の炭素数が1〜4のアクリル酸アルキルエステルが挙げられ、これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。ビニル系単量体混合物(m2)がアクリル酸エステルを含むことで、解重合が発生しにくいという効果が得られる。この場合、ビニル系単量体混合物(m2)中のアクリル酸エステルの含有率は、20質量%以下、例えば0.1〜20質量%であることが好ましい。
ビニル系単量体混合物(m2)に含まれるマレイミド系化合物としては特に限定されないが、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド等のN−アルキルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−シクロアルキルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−アルキル置換フェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド等のN−アリールマレイミド、N−アラルキルマレイミド等が挙げられ、これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。なかでも、耐熱性と耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られることから、N−アリールマレイミドが好ましく、N−フェニルマレイミドが特に好ましい。
ビニル系単量体混合物(m2)が上記のマレイミド系化合物を含有する場合、その含有率は5〜20質量%が好ましい。マレイミド系化合物の含有率が上記範囲内であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐熱性や流動性に優れたものとなる。
また、ビニル系単量体混合物(m2)に含まれる芳香族ビニル化合物としては特に限定されず、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−もしくはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレンなどが挙げられ、これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
ビニル系単量体混合物(m2)が芳香族ビニル化合物を含むことで、前述のN−置換マレイミドやメタクリル酸エステルとの反応性が良好となり、得られる熱可塑性樹脂組成物を耐引掻き傷性や耐衝撃性に優れたものとすることができるが、その場合、ビニル系単量体混合物(m2)中の芳香族ビニル化合物の含有率は1〜20質量%が好ましい。
メタクリル酸エステル系樹脂(B)の製造方法としては特に制限されず、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合などの公知の方法が挙げられる。得られる熱可塑性樹脂組成物の耐熱性の点からは、懸濁重合、塊状重合が好ましい。
[グラフト共重合体(C)]
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれるグラフト共重合体(C)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)に、芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体混合物(m3)をグラフト重合してなるものである。
なお、グラフト共重合体(C)に含まれるエチレン・α−オレフィン共重合体(D)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)を架橋処理することで得られる架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)であっても良い。
<エチレン・α−オレフィン共重合体(D)>
本発明においては、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品が優れた耐衝撃性および透明性を発現するために、グラフト共重合体(C)のゴム成分としてエチレン・α−オレフィン共重合体(D)を用いることが重要である。エチレン・α−オレフィン共重合体(D)は、エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンとを公知の重合方法によって共重合することによって得られた、エチレン単位とα−オレフィン単位とを含む共重合体である。
エチレン・α−オレフィン共重合体(D)は、非共役ジエン単位をさらに含むエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体であってもよい。
上記α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−イコセン、1−ドコセンの1種又は2種以上が挙げられ、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性の点から、炭素数が3〜20のα−オレフィンが好ましく、プロピレンが特に好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(D)のエチレン単位の含有率は、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)を構成する全ての構成単位の合計を100質量%としたときに、40〜70質量%が好ましく、45〜65質量%がより好ましい。エチレン単位の含有率が上記範囲内であると、耐衝撃性が向上する点で好ましい。
非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−シクロヘプタジエン、1,5−シクロオクタジエン等が挙げられる。中でも、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性が優れることから、ジシクロペンタジエンおよび/または5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(D)が非共役ジエン単位を含むエチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体である場合、α−オレフィン単位の含有率は、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体を構成する全ての構成単位の合計を100質量%としたときに、20.0〜59.9質量%が好ましく、31.0〜54.8質量%がより好ましい。また、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体の非共役ジエン単位の含有率は、エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体を構成する全ての構成単位の合計を100質量%としたときに、0.1〜10.0質量%が好ましく、0.2〜4.0質量%がより好ましい。α−オレフィン単位および非共役ジエン単位の含有率が上記範囲であると、耐衝撃性が向上する点で好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(D)の製造方法は限定されるものではないが、通常、メタロセン触媒、またはチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造される。
グラフト共重合体(C)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体混合物(m3)をグラフト重合して製造しても良いし、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)を架橋処理して架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)を製造した後に、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体混合物(m3)をグラフト重合してグラフト共重合体(C)を製造しても良い。その際、重合方法は特に限定されるものではないが、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性が優れることから乳化重合法が好ましい。
また、乳化重合にあたっては、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)を乳化してその後の架橋処理をO/W型エマルションの系で行い、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)の水性分散体を得るか、もしくは架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)を乳化することで架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)の水性分散体を得る必要があるが、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)を乳化して、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)の水性分散体を得た後に、架橋処理を行うことが、架橋処理の簡便性から好ましい。以下、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)を乳化することで得られるエチレン・α−オレフィン共重合体(D)の水性分散体をオレフィン樹脂水性分散体(F)とする。
<オレフィン樹脂水性分散体(F)>
エチレン・α−オレフィン共重合体(D)を乳化する方法としては、特に限定されるものではないが、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機などの公知の溶融混練手段でエチレン・α−オレフィン共重合体(D)またはエチレン・α−オレフィン共重合体(D)と酸変性オレフィン重合体を溶融混練し、機械的剪断力を与えて分散させ、乳化剤を含む水性媒体に添加する方法、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)またはエチレン・α−オレフィン共重合体(D)と酸変性オレフィン重合体をペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素溶媒に乳化剤とともに溶解し、水性媒体に添加して乳化させた後、十分に攪拌し、炭化水素溶媒を留去する方法などが好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(D)を乳化する際に用いることができる乳化剤としては、通常用いられるものであればよく、例えば、長鎖アルキルカルボン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の公知のものが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
乳化剤の添加量は、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱着色を抑制でき、水性分散体中のエチレン・α−オレフィン共重合体(D)の粒子径制御が容易である点から、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)100質量部に対して1〜8質量部が好ましい。
酸変性オレフィン重合体としては、質量平均分子量が1,000〜5,000のオレフィン重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン等)を、官能基を有する化合物(不飽和カルボン酸化合物等)で変性したものが挙げられる。不飽和カルボン酸化合物としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノアミド等が挙げられる。酸変性オレフィン重合体の酸価は10〜50mg−KOH/g程度が好ましい。酸変性オレフィン重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸変性オレフィン重合体の添加量は、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)100質量部に対して、1〜40質量部が好ましい。酸変性オレフィン重合体の添加量が上記範囲内であれば、得られる成形品の耐傷付き性と耐衝撃性のバランスがさらに優れたものとなる。
なお、オレフィン樹脂水性分散体(F)の水性媒体としては、水または塩基性物質の水溶液を用いることができる。
上記の乳化処理に用いる乳化剤の種類または使用量、酸変性オレフィン重合体の種類または使用量、混練時に加える剪断力、温度条件、水分率等を調整することで、オレフィン樹脂水性分散体(F)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(D)の体積平均粒子径を制御できる。このオレフィン樹脂水性分散体(F)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(D)の体積平均粒子径は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)の水性分散体に分散している架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)の体積平均粒子径と変わりない。
なお、オレフィン樹脂水性分散体(F)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(D)や、水性分散体に分散している架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)が、そのまま熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(D)や架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)の平均粒子径を示すことは電子顕微鏡により確認している。
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(D)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)の体積平均粒子径は0.1〜1.0μmが好ましく、0.2〜0.9μmがより好ましく、0.2〜0.8μmが更に好ましく、0.3〜0.7μmが特に好ましい。体積平均粒子径が上記範囲内であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性、表面外観が優れたものになる。
ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)の体積平均粒子径の具体的な測定方法は、後掲の実施例の項に示す通りである。
<架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)>
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)に架橋処理を行い、そのゲル含有率を調整したものである。エチレン・α−オレフィン共重合体(D)を架橋処理することで、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、透明性が向上する。さらに、架橋処理の際ゲル含有率を調整することで、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、透明性はより向上する。架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)のゲル含有率は、35〜75質量%が好ましい。架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)のゲル含有率が上記範囲内であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性、透明性が優れたものとなる。
なお、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)のゲル含有率の具体的な測定方法は、後掲の実施例の項に示す通りである。
エチレン・α−オレフィン共重合体(D)の架橋処理は、公知の手法により行えるが、なかでも、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)に、有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加して架橋処理を行う方法が、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性の点で好ましい。
具体的には、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)と、有機過酸化物と、必要に応じて使用される多官能性化合物とを加熱する方法等が挙げられる。ここで、有機過酸化物および多官能性化合物の添加量、加熱温度、加熱時間等を調整することにより、得られる架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)のゲル含有率を調整できる。加熱温度は、用いる有機過酸化物の種類により異なり、用いる有機過酸化物の10時間半減期温度の−5℃〜+30℃が好ましい。好ましい加熱時間は、3〜15時間である。
その他の架橋処理の方法としては、電離性放射線による架橋処理法など、公知の架橋処理法が挙げられる。
有機過酸化物は、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)に架橋構造を形成させるためのものであって、例えば、パーオキシエステル化合物、パーオキシケタール化合物、ジアルキルパーオキサイド化合物などが挙げられ、これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
パーオキシエステル化合物の具体例としては、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエイト、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエイト、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエイト、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエイト、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト、t−ヘキシルパーオキシピバレイト、t−ブチルパーオキシピバレイト、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエイト、t−ヘキシルパーオキシ2−ヘキシルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシ2−ヘキシルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシイソブチレイト、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネイト、t−ブチルパーオキシマレイックアシッド、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエイト、t−ブチルパーオキシラウレイト、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネイト、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネイト、t−ヘキシルパーオキシベンゾエイト、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテイト、t−ブチルパーオキシ−m−トルオイルベンゾエイト、t−ブチルパーオキシベンゾエイト、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレイトなどが挙げられる。
パーオキシケタール化合物の具体例としては、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレイト、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンなどが挙げられる。
ジアルキルパーオキサイド化合物の具体例としては、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などが挙げられる。
これら有機過酸化物のなかでも、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)のゲル含有率を調整しやすい点から、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド化合物を用いることが特に好ましい。
架橋処理時の有機過酸化物の添加量は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)のゲル含有率を35〜75質量%の範囲に調整できることから、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)100質量部に対して0.2〜5質量部であることが好ましい。
多官能性化合物は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)のゲル含有率を調整するために、有機過酸化物と併用されるものであって、例えばジビニルベンゼン、アリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられ、これらの1種以上を使用できる。なかでも、ゲル含有率を調整しやすい点から、ジビニルベンゼンが好ましい。
多官能性化合物は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)のゲル含有率を35〜75質量%に調整しやすいことから、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)100質量部に対して10質量部以下の範囲で使用することが好ましい。
<ビニル系単量体混合物(m3)>
本発明で用いるグラフト共重合体(C)に使用されるビニル系単量体混合物(m3)は、ビニル系単量体として少なくとも芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物とを含む混合物である。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−もしくはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレンなどが挙げられ、これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。なかでもスチレン、α−メチルスチレンの少なくとも1つを使用することが好ましい。
ビニル系単量体混合物(m3)100質量%中の芳香族ビニル化合物の含有率は、65〜82質量%が好ましく、73〜80質量%がより好ましく、75〜80質量%が更に好ましい。ビニル系単量体混合物(m3)中の芳香族ビニル化合物の含有率が上記範囲内であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性、透明性がより優れたものとなる。
シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられ、これらのうちの1種以上を使用できる。
ビニル系単量体混合物(m3)100質量%中のシアン化ビニル化合物の含有率は、18〜35質量%が好ましく、20〜27質量%がより好ましく、20〜25質量%が更に好ましい。ビニル系単量体混合物(m3)中のシアン化ビニル化合物の含有率が上記範囲内であれば、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性、透明性が優れたものとなる。
ビニル系単量体混合物(m3)は、上記の芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物の他に、これらと共重合可能な他のビニル系単量体を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。
他のビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸エステルや、
N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のN−シクロアルキルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−アルキル置換フェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド等のN−アリールマレイミド、N−アラルキルマレイミド等のマレイミド系化合物や、
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル等が挙げられ、これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
<使用割合>
グラフト共重合体(C)は、上述したエチレン・α−オレフィン共重合体(D)もしくは架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)にビニル系単量体混合物(m3)がグラフト重合したものである。
グラフト共重合体(C)の製造に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(D)もしくは架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)の割合は50〜80質量%で、ビニル系単量体混合物(m3)の割合は20〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)もしくは架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)が60〜80質量%で、ビニル系単量体混合物(m3)が20〜40質量%である。ただし、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)もしくは架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)とビニル系単量体混合物(m3)との合計を100質量%とする。エチレン・α−オレフィン共重合体(D)もしくは架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)の割合が上記範囲内であれば、グラフト共重合体(C)の生産性が良好であるとともに、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性、透明性が優れたものとなる。
<グラフト率>
グラフト共重合体(C)は、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性、透明性が良好となることから、グラフト率が25〜100%であることが好ましく、25〜65%がより好ましい。
なお、グラフト共重合体(C)のグラフト率の測定方法については、後掲の実施例の項に示す。
<グラフト共重合体(C)の製造方法>
グラフト共重合体(C)は、塊状重合法、溶液重合法、塊状懸濁重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の方法により製造され、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性が良好なことから乳化重合法が好ましい。
乳化重合法によって得られるグラフト共重合体(C)は、水性媒体中に分散した状態である。
グラフト共重合体(C)の水性分散体から、グラフト共重合体(C)を回収する方法としては、(i)凝固剤を溶解させた熱水中に水性分散体を投入して、スラリー状態に凝析させることによって回収する方法(湿式法)、(ii)加熱雰囲気中にグラフト共重合体(C)水性分散体を噴霧することにより、半直接的にグラフト共重合体(C)を回収する方法(スプレードライ法)等が挙げられる。
凝固剤としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩等が挙げられる。凝固剤は、重合で用いた乳化剤に対応させて選定される。すなわち、乳化剤として脂肪酸石鹸、ロジン酸石鹸等のカルボン酸石鹸のみを用いた場合、どのような凝固剤を用いてもよい。乳化剤にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の酸性領域でも安定な乳化力を示す乳化剤が含まれている場合、金属塩を用いる必要がある。
スラリー状態のグラフト共重合体(C)から乾燥状態のグラフト共重合体(C)を得る方法としては、(i)洗浄によって、スラリーに残存する乳化剤残渣を水中に溶出させた後に、該スラリーを遠心脱水機またはプレス脱水機で脱水し、さらに気流乾燥機等で乾燥する方法、(ii)圧搾脱水機、押出機等で脱水と乾燥とを同時に実施する方法等が挙げられる。乾燥後、グラフト共重合体(C)は、粉体または粒子状で得られる。また、圧搾脱水機または押出機から排出されたグラフト共重合体(C)を直接、熱可塑性樹脂組成物を製造する押出機または成形機に送ることもできる。
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の共重合体(A)とメタクリル酸エステル系樹脂(B)、或いは本発明の共重合体(A)とメタクリル酸エステル系樹脂(B)とグラフト共重合体(C)とを少なくとも必須成分として含むものである。
共重合体(A)とメタクリル酸エステル系樹脂(B)とを少なくとも必須成分とする熱可塑性樹脂組成物によれば、透明性、流動性に優れる熱可塑性樹脂組成物が提供される。
この熱可塑性樹脂組成物に更にグラフト共重合体(C)を含む熱可塑性樹脂組成物によれば、透明性、流動性、更には耐衝撃性にも優れる熱可塑性樹脂組成物が提供される。
<各成分の含有割合>
本発明の熱可塑性樹脂組成物が、共重合体(A)と、メタクリル酸エステル系樹脂(B)を含む場合、共重合体(A)の含有率は、共重合体(A)とメタクリル酸エステル系樹脂(B)の合計を100質量%とした場合に、5〜80質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましい。共重合体(A)の含有率が上記範囲内であると、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の透明性が優れたものとなる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物が、共重合体(A)と、グラフト共重合体(C)とメタクリル酸エステル系樹脂(B)と、グラフト共重合体(C)を含む場合、本発明の熱可塑性樹脂組成物における共重合体(A)の含有率は、共重合体(A)とメタクリル酸エステル系樹脂(B)とグラフト共重合体(C)の合計を100質量%とした場合に、5〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。共重合体(A)の含有率が上記範囲内であると、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性、透明性が優れたものとなる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるグラフト重合体(C)の含有率は、共重合体(A)とメタクリル酸エステル系樹脂(B)とグラフト共重合体(C)の合計を100質量%とした場合に、10〜40質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることが好ましい。また、メタクリル酸エステル系樹脂(B)の含有率は20〜85質量%であることが好ましく、35〜75質量%であることが好ましい。グラフト重合体(C)やメタクリル酸エステル系樹脂(B)の含有率が上記範囲であると、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性、透明性が優れたものとなる。
<その他の熱可塑性樹脂>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、上記共重合体(A)、メタクリル酸エステル系樹脂(B)、グラフト共重合体(C)以外の他の熱可塑性樹脂を含有してもよい。他の熱可塑性樹脂としては特に制限はなく、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂およびポリアミド樹脂(ナイロン)等が挙げられる。
ただし、本発明の熱可塑性樹脂組成物が、これらのその他の熱可塑性樹脂を含有する場合、本発明の共重合体(A)、メタクリル酸エステル系樹脂(B)、更にはグラフト共重合体(C)を含有することによる耐衝撃性及び透明性の効果を有効に得る上で、熱可塑性樹脂組成物中の全樹脂成分100質量%中のその他の熱可塑性樹脂の割合は、30質量%以下であることが好ましい。
<添加剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の物性を損なわない範囲において、熱可塑性樹脂組成物の製造時(混合時)、成形時に、慣用の他の添加剤、例えば滑材、顔料、染料、充填剤(カーボンブラック、シリカ、酸化チタン等)、耐熱剤、酸化劣化防止剤、耐候剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤等を配合することができる。
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、公知の装置を使用した公知の方法で、前述した成分を混合することにより製造することができる。例えば、一般的な方法として溶融混合法があり、この方法で使用する装置としては、押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等が挙げられる。混合には回分式、連続式のいずれを採用してもよい。また、各成分の混合順序などにも特に制限はなく、全ての成分が均一に混合されればよい。
[成形品]
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物が成形されたものである。その成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形機法、押出法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法およびインフレーション成形法等が挙げられる。これらのなかでも、量産性に優れ、高い寸法精度の成形品を得ることができるため、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
[用途]
本発明の熱可塑性樹脂組成物及びその成形品は、耐衝撃性に優れ、透明性、流動性にも優れるため、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品は、車両内外装部品、家電製品の外装部品等の用途に好適である。
以下、具体的な実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
[物性の測定方法]
以下の実施例および比較例で用いた各成分の物性の測定方法は以下の通りである。
<体積平均粒子径の測定方法>
マイクロトラック(日機装社製「ナノトラック150」)を用い、測定溶媒としてイオン交換水を用いて、オレフィン樹脂水性分散体(F)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(D)や、水性分散体に分散している架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)の体積平均粒子径を測定した。
<ゲル含有率の測定方法>
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)の水性分散体を希硫酸にて凝固させ、水洗乾燥して得られる凝固粉試料[Z1]0.5gを、200mL、110℃のトルエン中に5時間浸漬し、次いで、200メッシュ金網にて濾過し、残渣を乾燥し、その乾燥物の質量[Z2]を測定し、下記式(1)から、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)のゲル含有率を求めた。
ゲル含有率(質量%)=乾燥物質量[Z2](g)/凝固粉試料質量[Z1](g)×100
・・・(1)
<グラフト率の測定方法>
グラフト共重合体(C)1gを80mLのアセトンに添加し、65〜70℃にて3時間加熱還流し、得られた懸濁アセトン溶液を遠心分離機(日立工機社製「CR21E」)にて14,000rpm、30分間遠心分離して、沈殿成分(アセトン不溶成分)とアセトン溶液(アセトン可溶成分)を分取した。そして、沈殿成分(アセトン不溶成分)を乾燥させてその質量(Y(g))を測定し、下記式(2)によりグラフト率を算出した。なお、式(2)におけるYは、グラフト共重合体(C)のアセトン不溶成分の質量(g)、XはYを求める際に使用したグラフト共重合体(C)の全質量(g)、ゴム分率はグラフト共重合体(C)の製造に用いたエチレン・α−オレフィン共重合体(D)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)の水性分散体における固形分濃度である。
グラフト率(質量%)={(Y−X×ゴム分率)/X×ゴム分率}×100
・・・(2)
<共重合体(A)の分子量の測定方法>
共重合体(A)の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、テトラヒドロフラン(THF)に溶解して測定したものを標準ポリスチレン換算で示した。
[共重合体(A)の調製]
<共重合体(A−1)の調製>
耐圧反応容器にイオン交換水150質量部と、ビニル系単量体混合物(m1)としてマクロモノマー(東亜合成化学工業(株)製「AA−6」、数平均分子量6,000)10質量部、スチレン68質量部、アクリロニトリル22質量部の混合物と、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2質量部、n−オクチルメルカプタン0.25質量部、カルシウムハイドロオキシアパタイト0.47質量部、アルケニルコハク酸カリウム0.003質量部を仕込み、内温を75℃まで昇温し、3時間反応を行った。その後、90℃まで昇温し、60分間保持することで反応を完結させた。内容物を遠心脱水機で洗浄、脱水を繰り返し、乾燥させて共重合体(A−1)を得た。
<共重合体(A−2)の調製>
ビニル系単量体混合物(m1)をマクロモノマー20質量部、スチレン60質量部、アクリロニトリル20質量部とした以外は、共重合体(A−1)と同様の製造法で、共重合体(A−2)を得た。
<共重合体(A−3)の調製>
ビニル系単量体混合物(m1)をマクロモノマー30質量部、スチレン52質量部、アクリロニトリル18質量部とした以外は、共重合体(A−1)と同様の製造法で、共重合体(A−3)を得た。
<共重合体(A−4)の調製>
ビニル系単量体混合物(m1)をメタクリル酸メチル60質量部、スチレン30質量部、アクリロニトリル10質量部とした以外は、共重合体(A−1)と同様の製造法で、共重合体(A−4)を得た。
<共重合体(A−5)の調製>
ビニル系単量体混合物(m1)をメタクリル酸メチル20質量部、スチレン60質量部、アクリロニトリル20質量部とした以外は、共重合体(A−1)と同様の製造法で、共重合体(A−5)を得た。
<共重合体(A−6)の調製>
ビニル系単量体混合物(m1)をスチレン75質量部、アクリロニトリル25質量部とした以外は、共重合体(A−1)と同様の製造法で、共重合体(A−6)を得た。
共重合体(A−1)〜(A−6)の単量体組成と質量平均分子量を表1に示す。
Figure 0006891663
[メタクリル酸エステル系樹脂(B)の調製]
耐圧反応容器にイオン交換水150質量部と、ビニル系単量体混合物(m2)としてメタクリル酸メチル99質量部、アクリル酸メチル1質量部の混合物と、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2質量部、n−オクチルメルカプタン0.25質量部、カルシウムハイドロオキシアパタイト0.47質量部、アルケニルコハク酸カリウム0.003質量部を仕込み、内温を75℃まで昇温し、3時間反応を行った。その後、90℃まで昇温し、60分間保持することで反応を完結させた。内容物を遠心脱水機で洗浄、脱水を繰り返し、乾燥させてメタクリル酸エステル系樹脂(B)を得た。
[グラフト共重合体(C)の調製]
<エチレン・プロピレン共重合体(D)の調製>
20L攪拌機付きステンレス重合槽を充分窒素置換した後に、脱水精製したヘキサン10Lを添加し、8.0mmol/Lに調製したエチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C1.5・Cl1.5)のヘキサン溶液を、5L/hの量で連続的に1時間供給した後、さらに触媒として0.8mmol/Lに調整したVO(OC)Clのヘキサン溶液を5L/hの量で、ヘキサンを5L/hの量で連続的に供給した。一方、重合槽上部から、重合液器内の重合液が常に10Lになるように重合液を連続的に抜き出した。次にバブリング管を用いてエチレンを2000L/hの量で、プロピレンを1000L/hの量で、水素を8L/hの量で供給し、重合反応を35℃で行った。
上記条件で重合反応を行い、エチレン・プロピレン共重合体(D)を含む重合溶液を得た。得られた重合溶液は、塩酸で脱灰した後に、メタノールに投入して析出させた後、乾燥させてエチレン・プロピレン共重合体(D)を得た。
<オレフィン樹脂水性分散体(F)の調製>
エチレン・プロピレン共重合体(D)100質量部と、無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学(株)製「三井ハイワックス 2203A」、質量平均分子量2700、酸価30mg−KOH/g)20質量部と、界面活性剤(花王(株)製「KSソープ」)5質量部とを二軸押出機(スクリュー径:30mm、L/D;40、バレル温度;200℃)にその投入口から供給して溶融混練した。また、該二軸押出機のベント部に設けた供給口より、水酸化カリウム0.5質量部と2.4質量部のイオン交換水を供給し、二軸押出機内で溶融混練した。そして、二軸押出機先端より吐出させた固形状の分散体を、温水中で分散させ、固形分濃度40質量%付近まで希釈して、オレフィン樹脂水性分散体(F)を得た。オレフィン樹脂水性分散体(F)に分散しているエチレン・プロピレン共重合体(D)の体積平均粒子径を測定したところ、0.39μmであった。
<架橋エチレン・プロピレン共重合体(E)の調製>
オレフィン樹脂水性分散体(F)100質量部(固形分として)に固形分濃度が35質量%になるようにイオン交換水を加え、有機過酸化物としてt−ブチルクミルパーオキサイドを0.5質量部、多官能性化合物としてジビニルベンゼンを1質量部添加し、130℃で5時間反応させて、オレフィン樹脂水性分散体(F)に分散しているエチレン・プロピレン共重合体(D)を架橋処理し、架橋エチレン・プロピレン共重合体(E)の水性分散体を得た。水性分散体に分散している架橋エチレン・プロピレン共重合体(E)のゲル含有率と体積平均粒子径を測定したところ、ゲル含有率は52質量%で、体積平均粒子径は0.39μmであった。
<グラフト共重合体(C)の調製>
水性分散体に分散している架橋エチレン・プロピレン共重合体(E)70質量部(固形分として)に固形分濃度が30質量%になるようにイオン交換水を加え、ピロリン酸ナトリウム0.3質量部、硫酸第一鉄七水塩0.006質量部、およびフラクトース0.35質量部を仕込み、内温を80℃に保った。これに、スチレン23.4質量部およびアクリロニトリル6.6質量部からなるビニル系単量体混合物(m3)と、クメンハイドロパーオキサイド0.6質量部とを、各々別の供給口から140分かけて同時に滴下して重合を行った。この間、内温は80℃で一定に制御した。滴下終了後、さらに100分間、80℃のまま保持した後に冷却してグラフト重合を完結させた。反応生成物の水性分散体を硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥して、グラフト共重合体(C)を得た。グラフト共重合体(C)のグラフト率は29%であった。
[実施例1〜7、比較例1〜3、参考例1]
表2に示す組成(質量部)で各成分を混合し、30mmφの真空ベント付き2軸押し出し機(池貝社製「PCM30」)を用いて240℃で溶融混練し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物についてメルトボリュームレートを以下の方法により評価した。また、得られた熱可塑性樹脂組成物を射出成形した成形品について、透明性を以下の方法により評価した。
評価結果を表2に示す。
[実施例8〜14、比較例4〜6、参考例2]
表3に示す組成(質量部)で各成分を混合し、30mmφの真空ベント付き2軸押し出し機(池貝社製「PCM30」)を用いて240℃で溶融混練し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物についてメルトボリュームレートを以下の方法により評価した。また、得られた熱可塑性樹脂組成物を射出成形した成形品について、耐衝撃性と透明性を以下の方法により評価した。
評価結果を表3に示す。
[評価方法]
<メルトボリュームレート(MVR)の測定>
熱可塑性樹脂組成物について、ISO 1133規格に従い、230℃の条件で測定した。なお、MVRは熱可塑性樹脂組成物の流動性、即ち成形性の目安となる。
<耐衝撃性の評価:シャルピー衝撃試験>
成形品について、ISO 179規格に従い、23℃の条件でシャルピー衝撃試験(ノッチ付)を行い、シャルピー衝撃強度を測定した。
<透明性の評価>
成形品について、JIS K 7136規格に従い、HAZEを測定した。成形品のHAZEが低いほど透明性に優れ、着色時の発色性が良好となる。
Figure 0006891663
Figure 0006891663
表2の実施例1〜7に示すように、本発明の共重合体(A)をメタクリル酸エステル系樹脂(B)に配合した各実施例によれば、流動性、透明性に優れる熱可塑性樹脂組成物および成形品が得られた。
一方、比較例1〜3で得られた熱可塑性樹脂組成物および成形品は透明性が著しく劣るものであった。
メタクリル酸エステル系樹脂(B)のみの参考例1と本発明の共重合体(A)を配合した実施例1〜7との対比から、本発明の共重合体(A)をメタクリル酸エステル系樹脂(B)に配合しても透明性の低下の問題は殆どなく、一方で、本発明の共重合体(A)の配合で流動性を改善できることが分かる。
表3の実施例8〜14に示すように、本発明の共重合体(A)をメタクリル酸エステル系樹脂(B)及びグラフト共重合体(C)に配合した各実施例によれば、透明性、耐衝撃性、流動性に優れる熱可塑性樹脂組成物および成形品が得られた。
一方、比較例4〜6で得られた熱可塑性樹脂組成物および成形品は透明性が著しく劣り、耐衝撃性も不十分であった。
メタクリル酸エステル系樹脂(B)のみの参考例2と、メタクリル酸エステル系樹脂(B)に本発明の共重合体(A)及びグラフト共重合体(C)を配合した実施例8〜14の対比から、本発明によれば耐衝撃性が大幅に向上させることができることが分かる。

Claims (11)

  1. 芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物とマクロモノマーを含むビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られる共重合体(A)からなり、該マクロモノマーが、ポリメタクリル酸エステルを主骨格とし、該ポリメタクリル酸エステルの片末端にビニル基を有するマクロモノマーである共重合体(A)であって、
    メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られるメタクリル酸エステル系樹脂(B)用改良剤である共重合体(A)
  2. 前記マクロモノマーの数平均分子量が1,000〜20,000であり、前記ビニル系単量体混合物(m1)100質量%中の芳香族ビニル化合物の含有率が45〜72質量%で、シアン化ビニル化合物の含有率が15〜23質量%で、マクロモノマーの含有率が5〜40質量%であり、該共重合体(A)の質量平均分子量が30,000〜1,000,000である、請求項1に記載の共重合体(A)。
  3. 請求項1又は2に記載の共重合体(A)と、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られるメタクリル酸エステル系樹脂(B)とを含む熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記ビニル系単量体混合物(m2)100質量%中のメタクリル酸エステルの含有率が80〜100質量%である、請求項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記共重合体(A)とメタクリル酸エステル系樹脂(B)の合計100質量%中の共重合体(A)の含有率が5〜80質量%である、請求項又はに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 更に、エチレン・α−オレフィン共重合体(D)に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体混合物(m3)がグラフト重合したグラフト共重合体(C)を含む、請求項ないしのいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 前記ビニル系単量体混合物(m3)100質量%中の芳香族ビニル化合物の含有率が65〜82質量%で、シアン化ビニル化合物の含有率が18〜35質量%である、請求項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. 前記エチレン・α-オレフィン共重合体(D)とビニル系単量体混合物(m3)との合計100質量%中のエチレン・α-オレフィン共重合体(D)の含有率が50〜80質量%で、ビニル系単量体混合物(m3)の含有率が20〜50質量%であり、該グラフト共重合体(C)のグラフト率が25〜100%である、請求項又はに記載の熱可塑性樹脂組成物。
  9. 前記エチレン・α-オレフィン共重合体(D)が架橋処理した架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)であり、該架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(E)のゲル含有率が35〜75質量%である、請求項ないしのいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  10. 前記共重合体(A)とメタクリル酸エステル系樹脂(B)とグラフト共重合体(C)の合計100質量%中の共重合体(A)の含有率が5〜40質量%で、メタクリル酸エステル系樹脂(B)の含有率が20〜85質量%で、グラフト共重合体(C)の含有率が10〜40質量%である、請求項ないしのいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  11. 請求項3〜10のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
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