JP6530594B2 - コアシェル粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、コアと、コアとは異なる特性のシェルを有するコアシェル粒子の製造方法に関し、詳細には、スチレン系微粒子の帯電によるハンドリング性の低下の問題を解決することができ、従来のコアシェル粒子よりも簡便にコアシェル粒子を製造し得る製造方法に関するものである。
高分子粒子(以下、ポリマー粒子と同義である)は種々の用途に使用されている。特に微粒子材料は、フィルムや成形加工品等のプラスチック製品、あるいは、塗料、インキ、接着剤等の液状製品に添加され、物性面の強化、製品の高機能化、高性能化をもたらしている。近年は、液晶表示装置等の光学用途にも適用されている。
上記のポリマー粒子の中でも、特にスチレン系微粒子は、光拡散剤として用いられたり(例えば、特許文献1)、導電性微粒子の基材粒子として用いられたり(特許文献2)する等、多用されている。しかし、スチレン系微粒子は摩擦により帯電しやすく、粒子同士が凝集したり粉砕機内壁へ付着したりするため、粉砕が困難になりやすい。また、スチレン系微粒子を容器等に充填する際に、静電反発によって容器等から粒子が飛散するため、充填作業等が非常に困難になる問題がある。粒子径が小さくなると、さらに凝集が起こりやすく、帯電も強くなる傾向がある。一方で、ポリスチレンの強い疎水性のため、他の樹脂に改質用として加えても他の樹脂との親和性が低く、樹脂中での分散性が悪いという問題もある。
上記の問題を解決するために、スチレン系のコアにメタクリレート系のシェルを被覆したコアシェル粒子が検討されている(特許文献3)。しかし、コアシェル粒子は、一旦、コア粒子を重合で得た後、重合開始剤をさらに添加した上でシェル用モノマーを長時間かけて滴下するといった2段重合を行わなければならず、工程が煩雑であった。
特開2013−200398号公報 特開2013−73919号公報 特開平7−228729号公報
本発明では、スチレン系微粒子の帯電を抑制し、取り扱い性や、他の樹脂との親和性を向上させるため、コアシェル構造を有するスチレン系微粒子を、上述した2段重合法よりも簡便な方法で製造することができるコアシェル粒子の製造方法の提供を課題として掲げた。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定組成のモノマー混合物を用いることで、一括仕込みの1段重合であってもコアシェル構造を有する粒子を製造し得ることを見出し、本発明を完成するにいたった。
本発明は、コアがスチレン系ポリマーを含み、シェルが(メタ)アクリル系ポリマーを含むコアシェル粒子を製造する方法であって、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系マクロモノマーおよび多官能モノマーを含むモノマー混合物を、反応容器に一括仕込みし、懸濁重合を行うことを特徴とするコアシェル粒子の製造方法である。
前記モノマー混合物100質量%中、スチレン系モノマーが35〜60質量%、(メタ)アクリル系モノマーが10〜25質量%、(メタ)アクリル系マクロモノマーが5〜15質量%、多官能モノマーが15〜40質量%であることが好ましい。この場合において、スチレン系モノマーがスチレンを含み、(メタ)アクリル系モノマーがメチルメタクリレートを含むことがより好ましい。
本発明には、上記本発明の製造方法で得られ、ブローオフ法で帯電量を測定したときに、プラスに帯電されているコアシェル粒子も含まれる。
本発明のコアシェル粒子の製造方法は、特定組成のモノマー混合物を用いることで、一括仕込みの1段重合であっても、コアシェル構造を有する粒子を製造することができる。得られるコアシェル粒子はシェルが(メタ)アクリル系ポリマーとなっているため、スチレン系微粒子のように帯電しやすいことがなく、流動性の高い状態で取り扱うことができるようになった。
実施例6で製造したコアシェル粒子の断面FE−SEM写真である。 実施例7で製造したコアシェル粒子の断面FE−SEM写真である。 比較例1で製造した粒子の断面FE−SEM写真である。
本発明法で得られるコアシェル粒子は、スチレン系ポリマーを主として含むコアの周囲を、(メタ)アクリル系ポリマーを主として含むシェルがほぼ均一に被覆した構成のコアシェル粒子である。スチレン系微粒子は一般的に絶縁性が高く、帯電し易く(静電気を帯び易い)、帯びた電荷も逃げにくいため、前記したとおり、粉砕作業や充填作業が困難になりがちである。一方、(メタ)アクリル系ポリマー粒子は比較的親水性が高いため、粒子表面に水分を吸着し易く、帯電しても電荷が逃げやすいと考えられる。本発明法で得られるコアシェル粒子は、スチレン系ポリマーのコアを(メタ)アクリル系ポリマーで被覆した構造になっていることから、ポリスチレン単独粒子よりも電荷が逃げ易く、粒子同士の静電反発も起こりにくいため、流動性(ハンドリング性)が向上したものとなる。
本発明のコアシェル粒子の製造方法は、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系マクロモノマーおよび多官能モノマーを含むモノマー混合物を、反応容器に一括仕込みし、懸濁重合を行うところに特徴を有する。すなわち、従来のコアシェル粒子の製造方法では、前記したように2段重合を行う必要があった。しかし、本発明法では、モノマー混合物を一括仕込みして、そのまま懸濁重合するだけで、コアシェル粒子が得られる。
一括仕込みであってもコアシェル粒子が得られる理由は、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系マクロモノマーおよび多官能モノマーを混合したモノマー混合物を反応容器に入れて懸濁させた場合、懸濁粒子内部には疎水性の高いスチレン系モノマーが集まり、重合溶媒である水と懸濁粒子との界面近傍には、スチレン系モノマーよりも親水性の高い(メタ)アクリル系モノマーやスチレン系モノマーには溶解しがたい(メタ)アクリル系マクロモノマーが集まってスチレンモノマー粒子を覆うようになり、また多官能モノマーの架橋による拘束力も相まって、この状態で重合が進行するためではないかと考えられる。なお、理由は定かではないが、(メタ)アクリル系マクロモノマーを使用しない場合、コアシェル粒子を得ることはできない。本発明では、このような懸濁重合が行えるモノマーの種類や比率等を好適化した。以下、本発明を詳細に説明する。
[スチレン系モノマー]
スチレン系モノマーとしては、スチレン、o−、m−またはp−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−、m−またはp−クロロスチレン、o−、m−またはp−エチルビニルベンゼン等の単官能スチレン系モノマーが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。中でも、スチレンが好ましい。
スチレン系モノマーは、モノマー混合物100質量%中、35〜60質量%であることが好ましい。35質量%より少ないとスチレン系微粒子としての特性が発揮されないおそれがある。一方、60質量%より多いと、コアシェル構造が形成されず、帯電しやすくなるため、好ましくない。
[(メタ)アクリル系モノマー]
(メタ)アクリル系モノマーは、もっぱらコアシェル粒子のシェルを形成し、得られるコアシェル粒子が帯びた電荷を逃がして、粒子の流動性を高める作用を有する。具体的な(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリル系モノマーが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。中でも、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートが好ましく、比較的親水性であり、性能のバランスに優れたメチルメタクリレートが特に好ましい。
(メタ)アクリル系モノマーは、モノマー混合物100質量%中、10〜25質量%であることが好ましい。10質量%より少ないと、モノマー混合物中でのマクロモノマーの溶解が不充分となり、シェルを形成できないおそれがある。一方、25質量%より多いと、得られるコアシェル粒子の(メタ)アクリル系ポリマー比率が高くなりスチレン系微粒子としての特性、例えば屈折率が低下し、光拡散剤としての機能が充分発揮できないおそれがある。
[(メタ)アクリル系マクロモノマー]
(メタ)アクリル系マクロモノマーは、これがないと、一括仕込みでコアシェル構造を得ることができないため、必要である。(メタ)アクリル系マクロモノマーは、東亞合成株式会社から市販されており、セグメントがポリメチルメタクリレート系のAA−6(Mn6000)、セグメントがブチルアクリレート系のAB−6(Mn6000)等がある。特に(メタ)アクリル系モノマーとして好ましいメチルメタクリレートに対する親和性の高いAA−6が好適である。
(メタ)アクリル系マクロモノマーは、モノマー混合物100質量%中、5〜15質量%であることが好ましい。5質量%より少ないと、シェルが形成されにくくなり、コアシェル構造の粒子が得られないおそれがある。一方、15質量%より多いと、モノマー混合物中でマクロモノマーが溶解しなくなるため、コストデメリットになるだけである。
[多官能モノマー]
多官能モノマーは、1分子中に2個以上のラジカル重合可能な二重結合を有する化合物である。多官能モノマーは、重合中の懸濁粒子のコアシェル構造を拘束する作用を有するのではないかと考えられる。具体的な多官能モノマーとしては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の多官能スチレン系モノマー;(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル系モノマーが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。中でも、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)や、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)が好ましい。
多官能モノマーは、モノマー混合物100質量%中、15〜40質量%であることが好ましい。15質量%より少ないと、コアシェル構造の粒子が得られないおそれがある。また、架橋度が低くなると、コアシェル粒子の流動性が低下するため好ましくない。一方、40質量%より多いと、相対的にコアシェル粒子中のスチレン成分の比率が下がるため、スチレン粒子としての高い屈折率等の特性が得られないおそれがあるため好ましくない。
[その他のモノマー]
モノマー混合物中には、その他のモノマーを含めてもよく、このようなその他のモノマーとしては、(メタ)アクリル系モノマーと共重合が可能なビニル系モノマーであれば特に限定されない。例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。これらは2種以上混合して用いてもよい。これらのその他のモノマーは、モノマー混合物100質量%中、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、0質量%が特に好ましい。
[懸濁重合法]
本発明の製造方法は、上記した必須モノマー(スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系マクロモノマーおよび多官能モノマー)を含むモノマー混合物を、反応容器に一括で仕込み、懸濁重合を行うものである。以下、懸濁重合に用いる各成分について説明する。
[水]
水は、懸濁重合の場を提供する媒体として用いる。安価かつ安全であり、油溶性モノマーの懸濁重合には最適である。重合熱の除去にも適している。
懸濁液を重合させる際には、懸濁液をそのまま加熱して重合する場合と、懸濁液にさらに水を添加してから加熱する場合があり、いずれも採用可能である。懸濁液をそのまま加熱する場合には、懸濁液100質量部中、水は60〜80質量部程度が好ましい。懸濁液に水を加える場合は、希釈前の懸濁液100質量部中、水は40〜60質量部程度が好ましく、水添加後においては、重合反応液100質量部中、水は60〜90質量部程度が好ましい。適切な水量、適切な濃度で懸濁液の強制撹拌を行うことで懸濁液の安定性が高まり、適切な水量、適切な濃度で懸濁重合を行うことで、重合時に釜(反応容器)に付着する成分を抑制できる等、重合の安定性が向上する。
[油溶性重合開始剤]
油溶性重合開始剤としては、従来公知の油溶性の過酸化物やアゾ系化合物が使用できる。例えば、過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド(LPO)、オクタノイルパーオキサイド、オルソクロロベンゾイルパーオキサイド、オルソメトキシベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。また、アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(V−601、和光純薬社製)等が挙げられる。
重合開始剤は、モノマー混合物100質量部に対し、0.1〜5質量部の範囲で使用するのが好ましい。より好ましくは1〜5質量部である。
[界面活性剤]
懸濁液中の油滴を安定化させるためには、少量の界面活性剤を使用することが好ましい。なお、ポリビニルアルコール等の高分子安定剤は使用しないことが好ましい。高分子安定剤はコアシェル粒子の表面に残留して、粒子の表面特性を変性させてしまうことがあるからである。また、界面活性剤が多すぎても加熱乾燥時の着色の原因となるので、界面活性剤は、モノマー混合物100質量部に対し、0.1〜5質量部の範囲で使用することが好ましい。0.1質量部より少ないと、懸濁液の安定性を保つことが難しくなるおそれがある。5質量部を超えると着色の要因となるおそれがある。より好ましい範囲は、0.1〜2質量部である。
界面活性剤としては、特に限定はされないが、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、これらの1種のみを使用しても2種以上を併用してもよい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリウム等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステルエステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸塩;アルカンスルホン酸塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アルキルリン酸エステル塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアルキルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩等がある。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
なお、懸濁重合中に、乳化重合が起こってしまうのを抑制するため、チオサリチル酸等の乳化重合防止剤を、モノマー混合物100質量部に対し0.5〜3質量部程度添加してもよい。
[具体的な懸濁重合方法]
懸濁重合方法に際しては、懸濁液を作るために、水、界面活性剤、モノマー混合物および油溶性重合開始剤を容器へ添加する。このときの各成分の添加順序は特に限定されない。一例を挙げれば、次の通りである。まず、容器に水と界面活性剤を仕込む。界面活性剤は水に溶解させてから仕込んでもよいし、容器の中でよく撹拌して溶解させてもよい。次に、この容器に、すべてのモノマーを混合したモノマー混合物を油溶性重合開始剤とともに容器に一括添加する。もちろんこの順序は逆でもよく、強制撹拌の前にこれらの原料が容器の中に仕込まれていればよい。また、予め、モノマー混合物に油溶性重合開始剤を溶解させておくことが好ましい。
次に、強制撹拌を行う。強制撹拌は、公知の乳化分散装置を用いて行うことができる。乳化分散装置としては、例えばT.K.ホモミクサー(プライミクス社(旧社名:特殊機化工業)製)等の高速剪断タービン型分散機;ピストン型高圧式均質化機(ゴーリン社製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)等の高圧ジェットホモジナイザー;超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製)等の超音波式乳化分散機;アトライター(三井鉱山社製)等の媒体撹拌型分散機;コロイドミル(日本精機製作所製)等の強制間隙通過型分散機等を用いることができる。連続生産の際は、エバラマイルダー(荏原製作所製)を用いることができる。なお、上記の強制撹拌の前に、通常のパドル翼等で予備撹拌しておいてもよい。
撹拌速度は、懸濁液中の油滴の粒子径に影響を及ぼす。撹拌速度を速くして大きな剪断力を与えると、小さな油滴が形成され、得られるコアシェル粒子の粒子径が小さくなる。従って、撹拌速度は、所望のコアシェル粒子の粒子径に応じて適宜変更すればよい。例えば、上記T.K.ホモミクサー(懸垂型)を用いて1リットル容器で撹拌する場合は、5000rpm以上が好ましい。撹拌時間も油滴の粒子径に影響を及ぼすため、所望の粒子径に応じて適宜変更すればよい。
撹拌が終了したら、必要に応じて、懸濁液を重合に適した反応容器へと移し、もしくは水を添加して所望の濃度に調整した後に重合に適した反応容器へと移し、窒素等の不活性ガスで容器内を置換しながら加熱して、反応溶液を昇温させる。なお、懸濁液を重合に適した反応容器内で製造し、そのまま重合しても構わない。
重合温度は、40〜100℃程度が好ましく、50〜90℃がより好ましい。懸濁重合においては、重合は、重合反応液の温度(容器内温度)の上昇と共に進行する。このとき、用いる重合開始剤の種類によって温浴の設定温度は適宜変更する必要がある。例えば、ラウリルパーオキサイドの場合、開始剤の分解温度の目安となる10時間半減期温度は約62℃である。この場合、温浴の設定温度は10時間半減期温度より若干高い65℃に設定するのがもっとも効率的であり、安全である。例えば、10時間半減期温度よりも低い温度に浴温を設定した場合、開始剤の分解に時間がかかり、重合時間が長くなる。また、10時間半減期温度よりも高い温度に設定した場合、開始剤の分解は速やかに起こるが、重合温度がピークに達したときの温度も高くなり、反応が暴走するおそれがある。このため、使用する開始剤の10時間半減期温度を目安にして温浴の設定温度を適宜変更することが好ましい。また、重合時間は、5〜600分が好ましく、10〜300分がより好ましい。重合温度が低かったり、重合時間が短いと重合度が充分に上がらず、粒子の機械的特性が劣るものとなることがある。
懸濁重合の際、あるいは懸濁重合の後に、本発明法の目的を損なわない範囲で、公知の添加物を加えても構わない。
重合が終了したら、適宜、濾過、遠心分離、乾燥、解砕等を行う。乾燥は、着色を誘発しないように100℃以下で行うことが好ましい。乾燥後に、乾燥粉体に含まれる2次凝集物を1次粒子に解砕するため、ラボ・ジェットミル等で解砕(粉砕)することが好ましい。
[コアシェル粒子の諸特性]
本発明の製造方法で得られるコアシェル粒子は、シェルが比較的親水性の高い(メタ)アクリル系ポリマーとなっているため、粒子表面に水分を吸着し易く、帯電しても電荷が逃げやすいため、帯電しにくい。このため、ポリスチレン単独あるいはコアシェル化していないスチレンアクリル粒子よりも電荷が逃げ易く、粒子同士の静電反発も起こりにくいため、流動性(ハンドリング性)が向上したものとなる。
後述するブローオフ法で帯電量を測定したときに、本発明の製造方法で得られるコアシェル粒子は、帯電量がプラスであることが好ましい。帯電量は、10〜70μQ/gがより好ましく、15〜60μQ/gがさらに好ましく、20〜50μQ/gが特に好ましい。10μQ/gより小さいと、粒子表面のスチレン比率が高いことを意味し、帯電しやすくなる。70μQ/gを超えると、粒子の帯電量が大きくなりすぎてハンドリング性が低下するおそれがある。
本発明の製造方法で得られるコアシェル粒子のコアの組成とシェルの組成としては、後述の通り、実施例3の帯電量がプラスの値であり、比較例4のスチレン系微粒子の帯電量がマイナスであることから、シェルは主として(メタ)アクリル系モノマーと(メタ)アクリル系マクロモノマーとの共重合体であり、コアは主としてスチレン系ポリマーと多官能モノマーの共重合体である。ただし、シェルやコアにおいて、(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系マクロモノマー、多官能モノマーおよびスチレン系モノマーのうちのいずれか2種以上のモノマーの共重合体が存在している可能性はゼロではないと考えられる。このため、「コアがスチレン系ポリマーを含み、シェルが(メタ)アクリル系ポリマーを含む」と表現しているが、(メタ)アクリル系モノマー、(メタ)アクリル系マクロモノマー、多官能モノマー、スチレン系モノマー、必要に応じて用いられるその他のモノマー以外のモノマーを構成単位とする共重合体を含む意味ではない。
コアシェル粒子の体積平均径は0.5〜20μm程度が好ましい。より好ましくは、1〜10μmである。この程度の大きさであれば、樹脂フィルムに優れた光拡散性やアンチブロッキング性等を付与することができる。
[コアとシェルの比率等]
本発明のコアシェル粒子におけるコア粒子の比率は、特に限定されるものではないが、コア粒子の存在効果を充分に発揮するには、コアシェル粒子全体の直径に対するコア粒子の直径が70%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましい。一方で、シェルが薄すぎると部分的にコア粒子表面が露出して帯電しやすくなり、また、樹脂との親和性が低下するおそれがあるため、コアシェル粒子全体の直径に対するコア粒子の直径は99%以下が好ましく、95%以下がより好ましい。コアシェル粒子全体の直径やコア粒子の直径は、FE−SEMによる断面観察で測定できる。
[コアシェル粒子の用途]
本発明の製造方法で得られるコアシェル粒子は、光拡散体として様々な用途、例えば、LCD等に用いられる光拡散シートや導光板、あるいは、PDF、ELディスプレイおよびタッチパネル等に用いられる光学用樹脂に含有させる光拡散剤やアンチブロッキング剤等の添加剤として有用である。また、各種フィルム用のアンチブロッキング剤、滑剤等としても好適に用いられる。
本発明のコアシェル粒子を各種用途の添加剤として用いる場合には、本発明のコアシェル粒子をバインダー樹脂等、他の構成成分と混合した樹脂組成物として使用するのが好ましい。樹脂組成物中のコアシェル粒子量は、樹脂組成物の用途や所望の特性に応じて適宜決定すればよいが、通常、光拡散板などの光学用途に用いる場合であれば(下記(I)の態様)、バインダー樹脂100質量部に対して0.01質量部以上、20質量部以下とするのが好ましい。より好ましくは0.05質量部以上であり、さらに好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは10質量部以下であり、さらに好ましくは5質量部以下である。
また、フィルム等の基材上に上記樹脂組成物を含む塗布液を塗工して得られる光拡散シートとして用いる場合であれば(下記(II)の態様)、バインダー樹脂100質量部に対して5質量部以上、600質量部以下とするのが好ましい。より好ましくは10質量部以上、500質量部以下であり、さらに好ましくは20質量部以上、400質量部以下である。コアシェル粒子の含有量が多すぎる場合には、この樹脂組成物を使用して得られる成形体の強度が低下する場合があり、一方、少なすぎる場合には、コアシェル粒子の使用により得られる効果(光拡散性等)が得られ難い場合がある。
上記樹脂組成物中に含まれる透明のバインダー樹脂は、特に限定されず、当該分野においてバインダー樹脂として使用されるものはいずれも用いることができる。例えば、(I)上記樹脂組成物を用いて形成される部材が、樹脂組成物そのものを、板状、シート状等の形状に成形したものである場合(バインダー樹脂を、板状、シート状成形体の基材樹脂とする場合)であれば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、(メタ)アクリロニトリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ノルボルネン系樹脂、非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、トリアセチルセルロース樹脂等が挙げられる。
また、(II)成形される部材が、予め準備された板状やシート状等の基材表面に、上記樹脂組成物を積層(コーティング、ラミネート等)して一体化させたものである場合、バインダー樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
樹脂組成物は、上記コアシェル粒子および透明のバインダー樹脂以外にも、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、耐光性や耐UV性等の物性を高めるための紫外線吸収剤の他、架橋剤、蛍光増白剤、難燃剤等の各種添加剤等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のコアシェル粒子を含む成形体は、透明のバインダー(または基材)樹脂中に本発明のコアシェル粒子が、分散、固定された成形体であるため、微粒子の熱変色に基づく着色が抑制されて、無色性、透明性、光拡散性に優れ、高い輝度および高い透過性等優れた光学特性を発現することもできる。したがって、画像表示装置内において、光源からの光を画像表示面に均一に拡散させる光拡散シート(フィルム)や光拡散板等の光学用部材にも好適に用いられる。なお、成形体の形状はシート状(フィルム状)や板状に限られず、柱体、錐体、球体等の成形体であってもよい。
例えば、本発明のコアシェル粒子を含む樹脂組成物から得られる成形体が、光拡散シート(フィルム)のようなシート(フィルム)状の成形体である場合、その形態としては、面状部分を有し、バインダー樹脂により、コアシェル粒子が固定されてなる構成を少なくとも一部に有している形態が挙げられる。例えば、(i)樹脂組成物そのものを、板状、または、シート状に成形した形態(光拡散板)、(ii)予め準備した板状やシート状の基材表面の一部または全体に、上記樹脂組成物から成る層を積層し、一体化させた形態(光拡散シート)等が挙げられる。上記(i)、(ii)のいずれの形態の場合にも、透明バインダー樹脂中に本発明のコアシェル粒子が分散固定されているため、優れた光学特性を発揮することができる。なお、上記「面状部分を有する」とは、一般的には、光学部材の形状が板状、シート状あるいはフィルム状のように、一定の面積の広がりを持った実質的に平らな表面部分がその形状の主たる構成要素となっていることをいうが、本発明では、このような態様には限られず、主たる構成要素ではなくても、その形状の少なくとも一部に実質的に平らな表面部分を有していればよい。
上記(i)の形態の成形体を製造する方法としては、上述の樹脂組成物を公知の押出機により溶融混練しながら押し出して板状(厚さ:1mm以上)、シート状(厚さ:200μm〜1mm未満)およびフィルム状(厚さ:1μm〜200μm未満)に成形する方法が挙げられる。また、フィルム状に成形された成形体を、従来公知の延伸装置を使用して一軸または二軸方向に延伸して、薄膜状の延伸フィルム(厚さ:5μm〜100μm)に成形することもできる。このとき、必要に応じて、耐光性や耐UV性等の物性を高めるため、上記樹脂組成物に各種添加剤や安定剤および難燃剤等の添加物を加えて成形してもよい。光学特性の均一な成形体を得るためには、上記樹脂組成物は、予め、バインダー樹脂中に本発明のコアシェル粒子を混合し、分散させておくことが好ましい。また同様に、上記添加物も樹脂組成物と混合しておいてもよい。
上記(ii)の形態の成形体を得る方法としては、予め準備した基材表面に、上記樹脂組成物からなる層を積層する方法が挙げられる。積層方法は特に限定されず、上記樹脂組成物を有機溶剤(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル等のエステル類等)に分散、溶解させて、これを基材(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;トリアセチルセルロース;シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン系ポリマー;ポリメチルメタクリレート、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート樹脂系ポリマー;ポリスチレン樹脂;ポリカーボネート樹脂等)上に塗布すればよい(コーティング法、キャスト法等)。具体的な塗布方法としては、リバースロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、およびスプレーコート法等の公知の積層方法が挙げられる。
また、基材表面に上記樹脂組成物を積層した後、従来公知の延伸装置により、樹脂組成物が積層された基材を、一軸、または二軸方向に延伸させて延伸フィルムとしてもよい。この際、樹脂組成物の塗布のタイミングは特に限定されず、フィルムの製造工程のいずれかの段階で、上記樹脂組成物層を形成する方法(インライン方式)を採用し得る。また、上記基材を延伸して延伸フィルムを得た後、当該フィルム上に樹脂組成物からなる層を形成する方法(オフライン方式)も採用できる。
上記樹脂組成物から得られる成形体としては、上述のように、光拡散板、光拡散シート、光拡散フィルム等の光学用部材、包装資材に用いられるアンチブロッキングフィルム等が挙げられる。なお、上記成形体が光拡散シートならびに光拡散フィルムである場合は、その膜厚が300μm以下であるのが好ましく、光拡散板である場合は、その厚みが8mm以下であるのが好ましく、アンチブロッキングフィルムである場合は、その厚みが0.5mm以下であるのが好ましい。
光拡散板は、上記(i)の形態の成形体の製造方法に従って製造すればよい。すなわち、上記樹脂組成物を公知の押出機により溶融混錬しながら押し出して、所望の厚み、形状に成形すればよい。光拡散板を製造する場合には、上述のバインダー樹脂の中でも、ポリカーボネート系樹脂、(メタ)アクリル−スチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂等を使用するのが好ましい。
なお、樹脂組成物を溶融押出する際には、予め、上記コアシェル粒子を一部のバインダー樹脂と溶融混錬してマスターバッチとしてから用いてもよく、また、押出機に供給する際に、上述のバインダー樹脂と上記コアシェル粒子とを混合して用いてもよい。成形体におけるコアシェル粒子の偏析を防止する観点からは、マスターバッチとして用いるのが好ましい。
光拡散フィルムは、上記(ii)の形態の成形体の製造方法に従って製造すればよい。すなわち、予め用意した基材上に、上記樹脂組成物を用いて調製した塗布液(必要に応じて有機溶媒を含む)を塗布して、樹脂組成物層を形成すればよい。光拡散フィルムを製造する場合には、上述のバインダー樹脂の中でも、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂を使用するのが好ましい。なお、光拡散フィルムは、上記(i)の形態の製造方法に従って製造することもできる。また、必要に応じて得られた成形体を、一軸あるいは二軸方向に延伸してもよい。
アンチブロッキングフィルムは、上記(i),(ii)いずれの形態の製造方法に従っても製造することができる。(i)の形態の製造方法に従って製造する場合、具体的には、フィルムの基材樹脂と、本発明のコアシェル粒子(アンチブロッキング剤として用いる)とを混合した樹脂組成物を熱溶融させてフィルムに成形すればよい。上記基材樹脂としては、熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル等が挙げられる。本発明のコアシェル粒子をアンチブロッキング剤として用いるときのコアシェル粒子の配合量は、例えば、熱可塑性樹脂に対して0.001〜5質量%とするのが好ましい。より好ましくは0.005〜3質量%であり、さらに好ましくは0.01〜2質量%である。通常、このような少量を配合することは難しいので、予め、所定量のコアシェル粒子を配合したマスターバッチを製造し、熱可塑性樹脂に当該マスターバッチを配合してフィルム用熱可塑性樹脂を製造し、その後、上記フィルム用熱可塑性樹脂組成物を熱溶融させてフィルムに成形すればよい。フィルムの延伸が必要であれば、従来公知の延伸装置を用いて延伸処理を行えばよい。このとき、延伸装置としては、従来公知の延伸装置が使用可能であり、また、溶融温度、延伸倍率等の条件も、使用する基材樹脂やフィルムの用途に応じて適宜決定すればよい。アンチブロッキングフィルムは、上記(ii)の形態の成形体の製造方法に従って製造することもできる。すなわち、予め用意した基材上に、樹脂組成物を含む塗布液を塗布して、樹脂組成物層を形成すればよい。
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」と記すことがある。また、「質量%」を「%」と記すことがある。まず、本発明の実施例において記載する測定方法について以下に示す。
[流動性(ハンドリング性)]
粒子を0.5g秤量し、開口径25μmの篩に載せて「パウダテスタ(登録商標)PT−E」(ホソカワミクロン社製)で、強度7で60秒間震盪し、篩の上に残った粒子の残存量を秤量した。残存率(%)は、(篩後の粒子残存量/篩前の粒子質量)×100とした。また、粒子の帯電性が高い場合は、震盪によって粒子が凝集し、目視で確認できる大きさの塊状物(ダマ)が発生する。この凝集塊の発生状態を観察し、残存率と合わせて、以下の基準で評価した。
◎:残存率が60%未満で、凝集塊の発生もなし
○:残存率が60%以上70%未満で、凝集塊が少し発生
△:残存率が70%以上90%未満で、凝集塊が多く発生
×:残存率が90%以上で、凝集塊が非常に多く発生
[粒子径の測定]
粒子0.03gを、1%界面活性剤水溶液(「ハイテノール(登録商標)N−08」;第一工業製薬社製)5mlに分散させた後、精密粒度分布測定装置(「コールターマルチサイザー3」;ベックマン・コールター社製)を用いて、体積平均径の測定を行った。アパーチャーは50μmとした。なお、粒子径の変動係数(CV)は下記式により求めた値である。
粒子径の変動係数:CV(%)=100×(粒子径の標準偏差/体積平均径)
[帯電量]
23℃、湿度50%の環境下で、測定用粉末5gとフェライト系キャリア(パウダーテック社製、F96−150)0.5gをそれぞれ精評し、20mLのポリエチレン製容器に入れ、回転速度100rpmで30分間混合した後、ブローオフ式帯電量測定器(京セラケミカル社製、TB−200)を用いて測定した。ブロー圧は0.1MPa・sとした。なお、測定用粉末は、懸濁重合で得られた粒子を、メタノールで2回洗浄後、100℃で2時間真空乾燥し、ラボミルサー(LM−PLUS)で60秒間粉砕したものとした。
[TEM観察]
粒子の断面を走査透過型電子顕微鏡を用い、加速電圧20kVとし、倍率10,000〜50,000倍で観察した。
実施例1
フラスコに、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(「ハイテノール(登録商標)NF−08」;第一工業製薬社製)1部を溶解させておいた脱イオン水溶液100部を仕込んだ。スチレン(St)40部、メチルメタクリレート(MMA)20部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)30部、マクロモノマーAA−6(東亞合成社製)10部、ラウリルパーオキサイド(LPO)2部をよく撹拌しておき、この混合物を上記フラスコに加えた。T.K.ホモミクサー(懸垂型;プライミクス社製)を用いて、6000rpmで3分間撹拌して、均一な懸濁液とした。この懸濁液を、撹拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器、温度計および滴下ロートを備えたフラスコに移し入れ、脱イオン水450部をさらに加えた。次いで、窒素ガスを吹き込みながら、フラスコ内の液温が75℃になるまで加熱して、フラスコを75℃で保温した。このとき、自己発熱により液温が上昇した後、75℃に戻った時点を重合開始とし、2時間撹拌を続けた後、冷却した。重合が終了した後の粒子の体積平均径は3.56μmであった。
得られた懸濁液を固液分離し、固液分離後のケーキを、イオン交換水とメタノールでそれぞれ洗浄し、窒素雰囲気下、120℃で2時間乾燥した。
実施例2〜7、比較例1〜2および参考例1〜2
重合に用いた成分の組成や量を表1に示したように変更した以外は実施例1と同様にして、粒子を作製した。なお、実施例6では、T.K.ホモミクサーでの撹拌条件を5000rpmで3分間とし、実施例7では、12200rpmで30分間とした。特性評価結果を併せて表1に示す。表中、TMPTMAはトリメチロールプロパントリメタクリレートであり、V−601は和光純薬社製の重合開始剤のジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)であり、TSA(チオサリチル酸)は乳化重合防止剤である。
実施例6および7、比較例1について、得られた粒子の断面をFE−SEMで撮影した写真を図1,2,3にそれぞれ示した。図1、図2からは、コア粒子の周りを均一な厚みのシェルが被覆していることがわかるが、図3の比較例1の粒子は、コアシェル構造は観察されなかった。
本発明のコアシェル粒子製造方法を用いることで、従来のスチレン系粒子の帯電による流動性低下、ハンドリング性低下の問題を改善できた上に、従来の製法よりも簡便にコアシェル粒子を製造することが可能になった。
本発明のコアシェル粒子は、光拡散体(光拡散板、光拡散シート、光拡散フィルム、集光層、照明カバー等)用の光拡散剤として利用可能である。また、樹脂フィルム等に、滑り性やアンチブロッキング性を付与することもできる。その他、塗料用添加剤(艶消し剤、塗膜軟質化剤、意匠性付与剤等)、インク用添加剤(艶消し剤等)、接着剤の主成分または添加剤、人工大理石等の成形品用の添加剤(低収縮化剤等)、紙処理剤、化粧品用の充填材(滑り性向上のための充填材、吸油材等)等のような外用剤の原料、クロマトグラフィーに使用されるカラム充填材、静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤等の用途に利用可能である。

Claims (2)

  1. コアがスチレン系ポリマーを含み、シェルが(メタ)アクリル系ポリマーを含むコアシ
    ェル粒子を製造する方法であって、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー、
    (メタ)アクリル系マクロモノマーおよび多官能モノマーを含むモノマー混合物を、反応
    容器に一括仕込みし、懸濁重合を行い、
    前記モノマー混合物100質量%中、スチレン系モノマーが35〜60質量%、(メタ
    )アクリル系モノマーが10〜25質量%、(メタ)アクリル系マクロモノマーが5〜1
    5質量%、多官能モノマーが15〜40質量%である
    ことを特徴とするコアシェル粒子の製造方法。
  2. スチレン系モノマーがスチレンを含み、(メタ)アクリル系モノマーがメチルメタクリ
    レートを含む請求項1に記載のコアシェル粒子の製造方法。
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