JP5399809B2 - コアシェル粒子の製造方法およびコアシェル粒子 - Google Patents

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Description

本発明は、コアと、コアとは異なる特性のシェルを有するコアシェル粒子の製造方法に関し、詳細には、懸濁重合で簡単にコアシェル粒子を製造することのできる製造方法に関するものである。
高分子粒子(以下、ポリマー粒子と同義である)は種々の用途に使用されている。特に微粒子材料は、フィルムや成形加工品等のプラスチック製品、あるいは、塗料、インキ、接着剤等の液状製品に添加され、物性面の強化、製品の高機能化、高性能化をもたらしている。近年は、液晶表示装置等の光学用途に適用するため、粒子径や機能を高度に制御した微粒子が必要とされている。上記プラスチック製品や液状製品に微粒子を添加するには、通常、これらの原料である樹脂成分に微粒子を添加混合するが、このときに、撹拌、混練が容易でなければ、プラスチック製品や液状製品の工業的生産を非効率化するため、微粒子の表面状態の制御は重要な問題となってくる。また、微粒子自体の機能として、加熱成形時において安定に存在できること、製品の貯蔵中や使用中において、微粒子が変質しないことも重要である。
微粒子の表面状態を改質する方法として、コアシェル型の粒子を製造する方法がよく知られている。コアシェル型の微粒子を作製する方法においては、コア粒子の重合方法やシェルの作製方法が種々検討されているが、必要とされる粒子径によってコア粒子の重合方法は異なる。
例えば、特許文献1には、メタノールを溶媒とする分散重合で粒子径が1.5μm前後コアシェル粒子を形成する技術が開示されている。この分散重合法は、粒子径が0.1〜5μm程度の小粒子を作製するのには適した重合方法であるが、有機溶媒を大量に使用するために、装置の安全対策が必要で、かつ環境への曝露の予防措置が必要なため、工業的な大量生産法としては問題が多い。
また、特許文献2には、乳化重合でコアシェル粒子を形成する技術が開示されている。乳化重合法は水溶媒であり重合熱の除熱が容易であるが、得られる粒子は極めて微小なものとなり、用途が限定される上に、粒子として取り出すには塩析が必要となって製造工程が煩雑である。
ところで、懸濁重合法は水溶媒で重合を行うため重合熱の除熱が容易であり、生成したポリマー粒子は、濾過や遠心分離等を用いて取り出すことができること、懸濁液の調製方法により所望の粒子径を得やすいこと、等から、ポリマー粒子の工業的製造方法として採用されてきた(特許文献3等)。
本願発明者等が、懸濁重合で光拡散剤用途に利用可能なポリマー粒子を得ようとする検討の中で、透明性に優れたポリメチルメタクリレートで粒子を作製すると、疎水性の高い有機溶媒や樹脂バインダーに分散しにくい、という問題があった。そこで、コアポリマー粒子とは異なる性質のポリマーでコア粒子を被覆したコアシェル構造の粒子を製造する方法を検討した。
例えば、特許文献4と5には、懸濁重合法を利用したコアシェル粒子を製造する方法が記載されている。これらの文献に記載の実施例では、コアのモノマーがスチレン系モノマーであり、シェルのモノマーがメタクリレート系モノマーである。特許文献4では、シェルモノマーを滴下しているが、本発明者らがコアとシェルのモノマーを逆にした場合、シェルモノマーの水溶性が低いため懸濁液中で分散できず、投入したモノマーのほとんどがシェルにならず、乳化重合物となってしまうことがわかった。また、特許文献5では、シェルモノマーをエマルジョンにしてから添加しているため懸濁液への分散性は改良されるが、水溶性の重合開始剤を用いているので乳化重合が主に起こり、この場合も特許文献4と同様に、投入したモノマーのほとんどがシェルにならず、乳化重合物となってしまうことがわかった。
特開平11−172069号公報 特開平3−296554号公報 特開平6−73106号公報 特開2002−214408号公報 特開平7−228729号公報
本発明では、上記従来技術に鑑み、懸濁重合法で、(メタ)アクリレート系ポリマーのコアを、スチレン系ポリマーのシェルが均一にかつ薄く被覆した構造であって、シェルとコアの特性の両方を発揮し得るコアシェル粒子を製造する方法の提供を課題とした。
本発明は、懸濁重合によってコアシェル粒子を製造する方法であって、コア用モノマー成分100質量%のうち(メタ)アクリル系モノマーを80質量%以上含むコア用モノマー成分、油溶性重合開始剤、界面活性剤および水を含む混合物を強制撹拌して懸濁液を製造した後、該懸濁液中のコア用モノマー成分の重合率が80質量%になってから99質量%になるまでの間に、シェル用モノマー成分100質量%のうちスチレン系モノマーを80質量%以上含むシェル用モノマー成分、界面活性剤および水を含み、重合開始剤は含まない混合物を強制撹拌して得たプレエマルションの前記懸濁液への滴下を開始すると共に、全量の滴下を終了させて、重合することを特徴とする。
コア用モノマー成分が単官能モノマーと多官能モノマーとからなり、単官能モノマーと多官能モノマーの合計100質量%のうち多官能モノマーが1〜30質量%であることが好ましい。また、コア用モノマー成分とシェル用モノマー成分の合計100質量%中、シェル用モノマー成分を5〜30質量%とするものであることも好ましい。
本発明には、本発明の製造方法により得られ、樹脂改質用のコアシェル粒子であって、体積中位径が1〜50μm、前記樹脂とコアシェル粒子との屈折率差が0.05以下であり、コアシェル粒子を粉末化した粉末0.1gを内径32mmの容器に入れた水30gの液面に浮かべて24時間静置したときに、前記粉末が沈降しないことを特徴とするコアシェル粒子も包含される。
本発明によれば、均一かつ非常に薄膜であるシェルがコアを被覆してなり、シェルの特性とコアの特性の両方を発揮し得るコアシェル粒子を簡単に製造する方法を提供することができた。
実施例1で製造した本発明のコアシェル粒子の断面SEM写真である。
本発明の製造方法は、懸濁重合によってコアシェル粒子を製造する方法であって、コア用モノマー成分100質量%のうち(メタ)アクリル系モノマーを80質量%以上含むコア用モノマー成分、油溶性重合開始剤、界面活性剤および水を含む混合物を強制撹拌して懸濁液を製造した後、該懸濁液中のコア用モノマー成分の重合率が80質量%になってから99質量%になるまでの間に、シェル用モノマー成分100質量%のうちスチレン系モノマーを80質量%以上含むシェル用モノマー成分、界面活性剤および水を含み、重合開始剤は含まない混合物を強制撹拌して得たプレエマルションの前記懸濁液への滴下を開始すると共に、全量の滴下を終了させて、重合するものである。
本発明の製造方法では、前記従来技術の製法ではできなかった、スチレン系ポリマーからなる厚みの薄いシェルが、アクリル系ポリマーからなるコア粒子の表面全面を均一に被覆した構成のコアシェル粒子が得られる。本発明の製造方法ではシェル用モノマー成分添加時には新たな重合開始剤を添加しないため、コア用ポリマー末端のラジカルによりシェル用モノマー成分の重合が始まることから、コア粒子の表面を被覆するような状態でシェルポリマーが生成すると考えられる。シェル用モノマー成分添加時に油溶性重合開始剤を添加すると、シェル用モノマー単独で重合してしまい、コアシェルにはならない。
また本発明の製造方法では、シェル用モノマー成分をプレエマルション化して反応系へ滴下するので、懸濁液中にシェル用モノマー成分が均一に分散すると共に、コア粒子の表面にシェル用モノマー成分が到達し易くなる。この結果、シェルをコア粒子に均一に被覆できる上に、シェル用モノマー成分の重合率が高くなって残存モノマーが減少するという効果が得られる。一方、モノマー単独で反応系へ滴下した場合は、スチレン系モノマーは疎水性が高いため、水相を経由して懸濁液の油滴の中に入り込むことができず、ほとんど重合しない。他方、シェル用モノマー成分をプレエマルション化しても、水溶性重合開始剤と共に反応系へ添加すると、シェル用モノマー成分のみが乳化重合してしまうため、やはりコアシェル粒子を得ることはできない。しかし、上記のとおり、本発明の製造方法では、重合開始剤を含まないシェル用モノマー成分をプレエマルション化してコア粒子の懸濁液に添加するため、きれいなコアシェル粒子を得ることができた。以下、本発明を詳細に説明するが、まず、懸濁重合に用いる各成分について説明する。
[水]
水は、懸濁重合の場を提供する媒体として用いる。安価かつ安全であり、油溶性モノマーの懸濁重合には最適である。重合熱の除去にも適している。
懸濁液を重合させる際には、懸濁液をそのまま加熱して重合する場合と、懸濁液にさらに水を添加してから加熱する場合があり、いずれも採用可能である。懸濁液をそのまま加熱する場合には、懸濁液100質量部中、水は60〜80質量部程度が好ましい。懸濁液に水を加える場合は、希釈前の懸濁液100質量部中、水は40〜60質量部程度が好ましく、水添加後においては、重合反応液100質量部中、水は60〜90質量部程度が好ましい。適切な水量、適切な濃度で懸濁液の強制撹拌を行うことで懸濁液の安定性が高まり、適切な水量、適切な濃度で懸濁重合を行うことで、重合時に釜(反応容器)に付着する成分を抑制できる等、重合の安定性が向上する。
[コア用モノマー成分]
本発明では、コア用には、(メタ)アクリル系モノマーをコア用モノマー成分100質量%中、80質量%以上含むモノマー成分を用いる。本発明の製造方法で得られるコアシェル粒子は、例えば、樹脂の改質剤や光拡散剤として好適であり、このとき用いられる樹脂は、(メタ)アクリル系ポリマーと屈折率が近似しているものが多いためである。なお、コア用モノマーとして、後述する多官能(メタ)アクリル系モノマーを用いる場合は、単官能(メタ)アクリル系モノマーと多官能(メタ)アクリル系モノマーの合計がコア用モノマー成分100質量%中、80質量%以上となるようにする。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは2種以上混合して用いてもよい。特に、基材がポリオレフィンである光学用途製品の光拡散剤として使用する場合は、ポリオレフィンと屈折率が近接するポリマーが得られるメチルメタクリレートが好ましい。また、メチルメタクリレートの適度な親水性は、懸濁液製造の際に、安定した小粒子径の油滴を形成するのに一層効果的である。
コア粒子に架橋構造を付与したい場合は、上記単官能の(メタ)アクリル系モノマーに加えて、多官能モノマーを用いることが好ましい。多官能モノマーとしては、多官能(メタ)アクリル系モノマーが好ましく、(ジ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、フタル酸ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類が挙げられ、これらは2種以上混合して用いてもよい。
多官能モノマーを用いる場合は、単官能(メタ)アクリル系モノマーと多官能モノマーとの合計100質量中、1〜30質量%となるように用いることが好ましい。多官能モノマーが1質量%よりも少ないとコアの架橋が不充分となり、コアシェル粒子が変形しやすくなる。ただし、多官能モノマーが30質量%を超えると、コアシェル粒子を溶剤に分散させるときに膨潤しにくいため、溶剤とのなじみ性が悪くなることがある。多官能モノマーの使用割合は1〜20質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましい。
コア用モノマー成分100質量%のうち20質量%未満であれば、その他のモノマーを(メタ)アクリル系モノマーと共重合させることができる。このようなその他のモノマーとしては、これらのモノマーと共重合が可能なビニル系モノマーであれば特に限定されない。例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。これらは2種以上混合して用いてもよい。
[シェル用モノマー成分]
本発明では、シェル用には、スチレン系モノマーを、シェル用モノマー成分100質量%中、80質量%以上含むモノマー成分を用いる。ポリオレフィンと近接している屈折率を示すコア粒子の特性を活かした上で、(メタ)アクリレート系ポリマー粒子の表面にスチレン系ポリマーの持つ疎水性を付与することができる。この結果、得られるコアシェル粒子は、(メタ)アクリレート系ポリマーの屈折率と、スチレン系ポリマーに由来する疎水性を兼ね備えたものとなる。スチレン系モノマーの使用割合は、シェル用モノマー成分100質量%中、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、o−、m−またはp−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−、m−またはp−クロロスチレン等が挙げられ、これらは2種以上混合して用いてもよい。
また、シェルにも架橋構造を付与したい場合には、シェル用モノマー成分にも多官能モノマーを加えてもよく、このような多官能モノマーとしては、スチレン系モノマーとの重合性に優れているジビニルベンゼンやジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物等を用いることが好ましい。シェル用モノマー成分においては、多官能モノマーの使用割合は1〜10質量%とすることが好ましい。従って、スチレン系モノマーの使用割合は、99質量%以下とすることが好ましい。多官能モノマーが少ないとシェルが変形しやすくなる。多すぎると、コアシェル粒子を溶剤に分散させるときに膨潤しにくいため、溶剤とのなじみ性が悪くなることがある。シェルにおいては、多官能モノマーの使用割合は1〜5質量%がより好ましい。
シェルにおいても、シェル用モノマー成分100質量%のうち10質量%未満であれば、上記したその他のモノマーを、スチレン系モノマーと多官能モノマーと共重合させることができる。
[コアとシェルの比率]
本発明においては、コア用モノマー成分とシェル用モノマー成分の合計100質量%中、シェル用モノマー成分を5〜30質量%とすることが好ましい。コア粒子の屈折率を損なわないためには、シェルをあまり厚くすべきではないからである。シェル用モノマー成分の上限は25質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましい。
[油溶性重合開始剤]
油溶性重合開始剤としては、従来公知の油溶性の過酸化物やアゾ系化合物が使用できる。例えば、過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、オルソクロロベンゾイルパーオキサイド、オルソメトキシベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。また、アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
重合開始剤は、コア用モノマー成分とシェル用モノマー成分の合計100質量部に対し、0.1〜5質量部の範囲で使用するのが好ましい。より好ましくは1〜5質量部である。
[界面活性剤]
本発明では、懸濁液中の油滴を安定化させるために、少量の界面活性剤を使用する。ポリビニルアルコール等の高分子安定剤は使用しない。高分子安定剤はビニル系重合体微粒子の表面に残留して、微粒子の表面特性を変性させてしまうからである。また、界面活性剤が多すぎても加熱乾燥時の着色の原因となるので、界面活性剤は、コア用懸濁液においても、シェル用プレエマルションにおいても、それぞれモノマー成分100質量部に対し、0.1〜5質量部の範囲で使用する。0.1質量部より少ないと、懸濁液の安定性を保つことが難しくなるおそれがある。5質量部を超えると着色の要因となるおそれがある。より好ましい範囲は、0.1〜2質量部である。
界面活性剤としては、特に限定はされないが、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、これらの1種のみを使用しても2種以上を併用してもよい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリウム等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステルエステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸塩;アルカンスルホン酸塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アルキルリン酸エステル塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアルキルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩等がある。
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
[懸濁重合方法]
次に、本発明法による懸濁重合方法を詳細に説明する。まず、コア用の懸濁液を作るために、水、界面活性剤、コア用モノマー成分および油溶性重合開始剤を容器へ添加する。このときの各成分の添加順序は特に限定されない。一例を挙げれば、次の通りである。まず、容器に水と界面活性剤を仕込む。界面活性剤は水に溶解させてから仕込んでもよいし、容器の中でよく撹拌して溶解させてもよい。次に、この容器に、コア用モノマー成分と油溶性重合開始剤とを容器に一括添加する。もちろんこの順序は逆でもよく、強制撹拌の前にこれらの原料が容器の中に仕込まれていればよい。また、予め、コア用モノマー成分に油溶性重合開始剤を溶解させておくことが好ましい。
また、コア用モノマー成分100質量部に対し、水溶性有機溶媒を0.1〜10質量部の範囲で使用することにより、強制撹拌の際に、懸濁液における油滴の粒子径を小さくすることができ、得られるコアシェル粒子の体積中位径を2μm以下にすることができる。従って、小さいコアシェル粒子を製造したい場合は水溶性有機溶媒を用いればよく、粒径の大きなコアシェル粒子を製造したい場合には、用いる必要はない。水溶性有機溶媒のより好ましい使用量は、コア用モノマー成分100質量部に対し、0.1〜5質量部であり、さらに好ましくは1〜5質量部である。
水溶性有機溶媒としては、例えば、低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類等が挙げられる。中でも、沸点が低いため揮発しやすく、乾燥後の粒子に残存しにくい点と、取扱いの容易さの点で、炭素数4以下のアルコールが好ましい。炭素数4以下の低級アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、s−ブチルアルコールおよびt−ブチルアルコールが挙げられる。炭素数が3のIPA、n−プロピルアルコールが好ましく、中でも、沸点のより低いIPAは重合体微粒子を乾燥させる際に揮発しやすいため、最も好ましい。
次に、強制撹拌を行う。強制撹拌は、公知の乳化分散装置を用いて行うことができる。乳化分散装置としては、例えばT.K.ホモミクサー(プライミクス社(旧社名:特殊機化工業)製)等の高速剪断タービン型分散機;ピストン型高圧式均質化機(ゴーリン社製)、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディックス社製)等の高圧ジェットホモジナイザー;超音波ホモジナイザー(日本精機製作所製)等の超音波式乳化分散機;アトライター(三井鉱山社製)等の媒体撹拌型分散機;コロイドミル(日本精機製作所製)等の強制間隙通過型分散機等を用いることができる。なお、上記の強制撹拌の前に、通常のパドル翼等で予備撹拌しておいてもよい。
撹拌速度は、懸濁液中の油滴の粒子に影響を及ぼす。撹拌速度を速くして大きな剪断力を与えると、小さな油滴が形成され、得られるコアシェル粒子の粒子径が小さくなる。従って、撹拌速度は、所望のコアシェル粒子の粒子径に応じて適宜変更すればよい。例えば、上記T.K.ホモミクサー(懸垂型)を用いて、1リットル容器で撹拌する場合は、5000rpm以上が好ましい。撹拌時間も油滴の粒子径に影響を及ぼすため、所望の粒子径に応じて適宜変更すればよい。通常、1〜30分間が好ましい。撹拌時間が1分より短いと剪断力が不足して油滴の粒子径が大きくなり、また粒子径の分布が広くなるおそれがある。一方、撹拌時間が30分間を超えると、液温が上昇し、懸濁液中のモノマーが重合を始めて、懸濁液が不安定になるおそれがある。
撹拌が終了したら、必要に応じて、懸濁液を重合に適した反応容器へと移し、もしくは水を添加して所望の濃度に調整した後に重合に適した反応容器へと移し、窒素等の不活性ガスで容器内を置換しながら加熱して、反応溶液を昇温させる。なお、懸濁液を重合に適した反応容器内で製造しても構わない。
コア用モノマー成分の重合温度は、40〜100℃程度が好ましく、50〜90℃がより好ましい。懸濁重合においては、コア用モノマー成分の重合は、重合反応液の温度(容器内温度)の上昇と共に進行する。このとき、用いる重合開始剤の種類によって温浴の設定温度は適宜変更する必要がある。例えば、ラウリルパーオキサイドの場合、開始剤の分解温度の目安となる10時間半減期温度は約62℃である。この場合、温浴の設定温度は10時間半減期温度より若干高い65℃に設定するのがもっとも効率的であり、安全である。例えば、10時間半減期温度よりも低い温度に浴温を設定した場合、開始剤の分解に時間がかかり、重合時間が長くなる。また、10時間半減期温度よりも高い温度に設定した場合、開始剤の分解は速やかに起こるが、重合温度がピークに達したときの温度も高くなり、反応が暴走するおそれがある。このため、使用する開始剤の10時間半減期温度を目安にして温浴の設定温度を適宜変更することが好ましい。また、重合時間は、5〜600分が好ましく、10〜300分がより好ましい。重合温度が低かったり、重合時間が短いと重合度が充分に上がらず、粒子の機械的特性が劣るものとなることがある。
シェル用モノマー成分は、水と所定量の界面活性剤とを加えて、上記コア用懸濁液を作製する場合と同様に強制撹拌して、予めプレエマルション化しておく。このとき、重合開始剤は加えない。前述のとおり、シェルが形成されなくなるからである。プレエマルション中のモノマー濃度は、5〜30質量%が好ましい。
シェル用プレエマルションは、コア用モノマー成分の重合率が80〜99質量%の間に、容器内のコア用懸濁液への滴下を開始すると共に、全量の滴下を終える必要がある。コア用モノマー成分の重合率は、(仕込みモノマー量−残存モノマー量)/(仕込みモノマー量)で定義される。コア用モノマー成分に多官能モノマーが含まれている場合は、残存多官能モノマー量は上記定義の残存モノマー量に加え、仕込み多官能モノマー量は上記定義の仕込みモノマー量に加える。残存モノマー量は後述する条件でガスクロマトグラフィーを用いて測定することができる。開始剤の種類、容器の大きさ、仕込み原料の量を決め、温浴設定温度および容器内温度を測定しながら重合し、重合液のサンプリングを行えば、当該条件下でのコア用モノマー成分の重合率の変化度合いを測定することができる。これを目安にすれば、コア用モノマー成分の重合率が80〜99質量%である間に、シェル用プレエマルションの滴下を開始すると共に、全量の滴下を終わらせることができる。これにより、均一な厚みのシェルがコア粒子の表面を被覆したコアシェル粒子が得られる。コアの重合率が80質量%にならないうちに、シェル用プレエマルションの滴下を開始すると、シェルに共重合成分が増えるので、コアとシェルの両方の特性を発揮する粒子が得られなくなるため好ましくない。
なお、実施例に記載の方法の場合では、容器内温度が設定した浴温を超えて極大値(ピーク温度)を取るときの重合率は、大体94質量%前後である。シェル用プレエマルションの滴下は、コア用モノマー成分の重合率が90〜97質量%のときに開始するのが、より好ましい。
懸濁重合の際、あるいは懸濁重合の後に、本発明法の目的を損なわない範囲で、公知の添加物を加えても構わない。
コアおよびシェルの重合が終了したら、適宜、濾過、遠心分離、乾燥等を行う。乾燥は、着色を誘発しないように100℃以下で行うことが好ましい。乾燥後に、一次粒子が凝集していたら、ラボ・ジェットミル等で解砕して、個々の一次粒子まで戻してもよい。
[コアシェル粒子]
本発明のコアシェル粒子の体積中位径は1〜50μmとする。1μmより小さいものは、製造が難しいためである。また、50μmを超えるものは、樹脂改質や光拡散用途に適さない。
上記したとおり、コア用懸濁液の油滴の粒子径が最終のコアシェル粒子の体積中位径に影響を及ぼすため、強制撹拌の際の撹拌速度や撹拌時間を制御すれば、所望の粒子径のコアシェル粒子を得ることができる。
なお、本発明における体積中位径は、コールター原理を採用した精密粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製の「マルチサイザー3」等)により測定される中位径(体積基準メディアン径)である。
また、本発明のコアシェル粒子は、樹脂の改質剤や光拡散剤として用いられ、このときの樹脂との屈折率差が0.05以下でなければならない。屈折率差が0.05を超えると、樹脂の透明性が損なわれるからである。ここで、主要な樹脂(ポリマー)の屈折率を示せば、ポリメチルメタクリレートは1.49、ポリスチレンは1.59、ポリエチレンは1.54、ポリプロピレンは1.48である。
本発明のコアシェル粒子のコアをメチルメタクリレート系ポリマーとして、薄いスチレン系ポリマーのシェルで覆うことで、ポリメチルメタクリレートに近い屈折率の粒子が得られるので、これをポリエチレンやポリプロピレン等に混練しても、屈折率差が0.05以下となって、その透明性を損なうことはない。
また、本発明のコアシェル粒子は表面が疎水性でなければならない。樹脂や有機溶媒に分散させるときに、なじみやすく、均一に分散するためである。疎水性の目安は、コアシェル粒子を粉末化した粉末0.1gを、内径32mmの容器に入れた水30gの液面に浮かべて24時間静置したときに、前記粉末が沈降するかどうかという疎水性試験で判断する。沈降しなければ、充分な疎水性を有しているということができる。例えば、ポリメチルメタクリレート粒子は沈降するが、ポリスチレン粒子は沈降しない。
本発明のコアシェル粒子は、スチレン系ポリマーのシェルで覆われているので、上記疎水性試験で沈降することはない。より具体的な疎水性試験の方法は、測定用粒子を130℃で30分間以上加熱乾燥した後、めのう乳鉢内で微粉砕し、粉末化し、この粉末0.1gを内径32mmの容器に入れた脱イオン水30gの液面に浮かべて、24時間静置して、沈降状態を目視で観察する。なお、雰囲気温度は25℃とする。
本発明法は以上のように構成されているが、懸濁重合の分野において公知の追加手段を加えても構わない。
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、以下では、便宜上、「質量部」を単に「部」と記すことがある。また、「質量%」を「%」と記すことがある。まず、本発明の実施例において記載する測定方法について以下に示す。
[粒子径の測定]
下記例で得られた粒子0.03gを、1%界面活性剤水溶液(「ハイテノール(登録商標)N−08」;第一工業製薬社製)5mlに分散させた後、精密粒度分布測定装置(「コールターマルチサイザー3」;ベックマン・コールター社製)を用いて、体積中位径の測定を行った。アパーチャーは30μmとした。
[コア用モノマー成分、シェル用モノマー成分の重合率]
p−メトキシフェノール1%メタノール溶液5g程度に、重合液0.5g程度をサンプリング後直ちに精秤して加え、ガスクロマトグラフィーでモノマー量を定量する。カラムは、長さ30m、内径0.538mm、膜厚1.50μmの[DB−5ms](J&W Scientific社製(現アジレント・テクノロジー社))を用いた。カラムを50℃で3分保持した後、昇温速度10℃/minで280℃まで昇温(23min)した。気化室、検出器(FID)は280℃とし、キャリアーにはHeガスを50kPaで用いた。重合率は下記式で求めた。なお、残存モノマー量、仕込みモノマー量には、多官能モノマー量も含まれる。
重合率(%)=(仕込みモノマー量−残存モノマー量)/(仕込みモノマー量)
[屈折率]
底部に撹拌子を置いた内径5cmのガラスビーカーに二硫化炭素40gを入れ、測定用粒子を0.5g加えた。次いで、撹拌子を回転させながら、ビュレットからエタノールを滴下した。この粒子分散液が目視で透明であることが確認できるまでエタノールの滴下を続けた。透明であることが確認できたときのエタノールと同質量のエタノールを40gの二硫化炭素に加えてよく撹拌して混合液を作製し、この混合液の屈折率をアッベ屈折計(アタゴ社製;[NAR−1T])で測定し、得られた値を重合体粒子の屈折率とした。なお、雰囲気温度は25℃とした。
[疎水性試験]
測定用粒子を130℃で30分間以上加熱乾燥した後、めのう乳鉢内で微粉砕し、粉末化した。この粉末0.1gを内径32mmの容器に入れた脱イオン水30gの液面に浮かべて、24時間静置した。雰囲気温度は25℃とした。粒子の親水性が高い場合は、粉末が沈降するが、粉末が沈降しない場合は、粒子の疎水性が高いといえる。
実施例1
フラスコに、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(「ハイテノール(登録商標)NF−08」;第一工業製薬社製)2.4部を溶解させておいた脱イオン水溶液352部を仕込んだ。メチルメタクリレート(MMA)216部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)24部、ラウリルパーオキサイド4.8部をよく撹拌しておき、このコア用混合物を上記フラスコに加えた。T.K.ホモミクサー(懸垂型;プライミクス社製)を用いて、7000rpmで10分間撹拌して、均一な懸濁液とした。この懸濁液を、撹拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器、温度計および滴下ロートを備えたフラスコに移し入れ、脱イオン水600部をさらに加えた。窒素ガスを吹き込みながら、フラスコを漬けてあるバスの温度を65℃に設定し、フラスコ内温を昇温した。
別のフラスコに、前記「ハイテノールNF−08」0.7部を溶解させておいた脱イオン水溶液181部を仕込み、さらに、スチレン(St)67部とジビニルベンゼン(57%)(DVB)4.5部との混合物を加えて、前記T.K.ホモミクサーを用いて、4500rpmで2分間撹拌して、シェル用懸濁液を作製した。
コア用モノマー成分の重合が始まり、フラスコ内温がバス温度を超えてピーク温度に達し、極大値を示した直後に、上記シェル用懸濁液を滴下ロートから20分かけて滴下した。滴下終了後、バス温度を75℃に設定し、1.5時間反応させた後、バス温度を85℃に設定し、この温度で2時間撹拌を続けた後、冷却した。なお、シェル用懸濁液を滴下する直前に、コア粒子をサンプリングし、粒径を測定したところ、体積中位径は1.84μmであった。重合条件等を表1に示した。
得られた懸濁液を遠心分離機([H−200];コクサン社製)にセットし、7000rpmで20分間、遠心分離した。白色沈殿物と上澄み液に分離していたので、濾過により上澄み液を除去し、白色の固形物を80℃で3時間乾燥して、コアシェル粒子を得た。この粒子の体積中位径は2.11μmであった。特性評価結果を表2に示した。また、このコアシェル粒子の断面をFE−SEMで撮影した写真を図1に示す。コア粒子の周りを均一な厚みのシェルが被覆していることがわかる。
実施例2
シェル用懸濁液の作製の際に、前記「ハイテノールNF−08」を0.4部、脱イオン水181部、スチレン33.5部、ジビニルベンゼン(57%)2.3部に変更した以外は、実施例1と同様にしてコアシェル粒子を作製した。重合条件等を表1に、特性評価結果を表2に示した。
実施例3
コア用懸濁液作製の際に、イソプロピルアルコールを12部添加した以外は実施例2と同様にしてコアシェル粒子を作製した。重合条件等を表1に、特性評価結果を表2に示した。
実施例4
シェル用懸濁液の滴下開始を、フラスコ内温がバス温度よりも1℃高くなったときにした以外は、実施例2と同様にしてコアシェル粒子を作製した。重合条件等を表1に、特性評価結果を表2に示した。
実施例5
シェル用懸濁液の滴下開始を、フラスコ内温がバス温度を超えてピーク温度に達し、極大値を示してから10分後にした以外は、実施例2と同様にしてコアシェル粒子を作製した。重合条件等を表1に、特性評価結果を表2に示した。
比較例1
フラスコに、前記「ハイテノール(登録商標)NF−08」2.4部を溶解させておいた脱イオン水溶液352部を仕込んだ。メチルメタクリレート216部、エチレングリコールジメタクリレート24部、ラウリルパーオキサイド4.8部をよく撹拌しておき、このコア用混合物を上記フラスコに加えた。前記T.K.ホモミクサーを用いて、7000rpmで10分間撹拌して、均一な懸濁液とした。この懸濁液を、撹拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器、温度計および滴下ロートを備えたフラスコに移し入れ、脱イオン水600部をさらに加えた。窒素ガスを吹き込みながら、フラスコを漬けてあるバスの温度を65℃に設定し、フラスコ内温を昇温した。
別のフラスコに、前記「ハイテノール(登録商標)NF−08」0.4部を溶解させておいた脱イオン水溶液181部を仕込み、さらに、スチレン33.5部、ジビニルベンゼン(57%)2.3部およびラウリルパーオキサイド0.7部からなる混合物を加えて、前記T.K.ホモミクサーを用いて、4500rpmで2分間撹拌して、シェル用懸濁液を作製した。
コア用モノマー成分の重合が始まり、フラスコ内温がバス温度を超えてピーク温度に達し、極大値を示した直後に、上記シェル用懸濁液を滴下ロートから20分かけて滴下した。滴下終了後、バス温度を75℃に設定し、1.5時間反応させた後、バス温度を85℃に設定し、この温度で2時間撹拌を続けた後、冷却した。重合条件等を表1に示した。
得られた懸濁液を前記遠心分離機にセットし、7000rpmで20分間、遠心分離した。白色沈殿物と上澄み液に分離していたので、濾過により上澄み液を除去し、白色の固形物を80℃で3時間乾燥して、粒子を得た。得られた粒子の体積中位径を測定したところ、体積中位径が1.84μmである粒子と、乳化重合で生成したおよそ1μm以下である微小粒子との混合物であることがわかった。コア用モノマー成分から生成した粒子と、シェル用モノマー成分から生成した乳化重合粒子が混在していると考えられる。シェル用プレエマルションを滴下する直前にサンプリングしたコア粒子の特性評価結果を表2に示した。
比較例2
実施例1と同様にして、コア用懸濁液とシェル用懸濁液を作製した。実施例1と同様にして、バス温度を65℃に設定し、重合を開始した。コア用モノマー成分の重合が始まり、フラスコ内温がバス温度を超えてピーク温度に達し、極大値を示した後に、バス温度を75℃に設定し、1.5時間反応させた後、バス温度を85℃に設定し、この温度で2時間撹拌を続けた。この後、上記シェル用懸濁液を滴下ロートから20分かけて滴下した。滴下終了後、バス温度を75℃に設定し、1.5時間反応させた後、バス温度を85℃に設定し、この温度で2時間撹拌を続けた。重合条件等を表1に示した。
得られた懸濁液を前記遠心分離機にセットし、7000rpmで20分間、遠心分離した。白色沈殿物と上澄み液に分離していたので、濾過により上澄み液を除去し、白色の固形物を80℃で3時間乾燥して、粒子を得た。この粒子の体積中位径は1.88μmであった。
上澄み液をガスクロマトグラフィで成分測定したところ、滴下したスチレンのほぼ全量を検出した。シェル用懸濁液を滴下したときには、ラジカルがほとんど消失していたため、重合が進行しなかったものと考えられる。従って、上記粒子はコア粒子と考えられる。特性評価結果を表2に示した。
比較例3
シェル用懸濁液を作製せずに、スチレン33.5部とジビニルベンゼン(57%)2.3部のみのシェル用モノマー混合物を滴下ロートから20分かけて滴下した以外は比較例1と同様にして重合を行った。シェル用モノマー混合物を滴下した直後、滴下したモノマー混合物は、コア用懸濁液の液面に浮いていた。バス温度を75℃に設定し、1.5時間反応させた後、バス温度を85℃に設定し、この温度で2時間撹拌を続けた。
フラスコ内を観察すると、フラスコ内壁に黄色い付着物が認められ、また、反応液の液面には黄色い油滴が生成していた。内壁の付着物、液面の油滴とも、反応液から取り除くことは困難であった。微少量サンプリングし、ガスクロマトグラフィで分析したところ、付着物と油滴はいずれも、スチレンとジビニルベンゼンであることが確認された。黄色への着色は、これらのモノマーに含まれていた重合禁止剤に由来していると考えられた。この例のように、懸濁液ではなく、モノマーを滴下すると、加えたモノマーのうちの重合反応に参加しなかった分が、上記のような着色物質となり、生成した粒子を汚染してしまうことがわかった。重合条件等を表1に、シェル用モノマー混合物を滴下する直前にサンプリングしたコア粒子の特性評価結果を表2に示した。
比較例4
シェル用懸濁液作製の際に、前記「ハイテノールNF−08」0.4部、脱イオン水181部、スチレン33.5部、ジビニルベンゼン(57%)2.3部に加えて、水溶性重合開始剤である過硫酸ナトリウム3.58部を加えた以外は、比較例1と同様にして重合を行った。シェル用懸濁液の滴下終了後、バス温度を75℃に設定し、1.5時間反応させた後、バス温度を85℃に設定し、この温度で2時間撹拌を続けた。フラスコ内を観察すると、懸濁液は薄い黄色に着色し、液面には黄色い油滴が生成していた。液面の油滴は反応液から取り除くことが困難であった。微少量サンプリングし、ガスクロマトグラフィで分析したところ、油滴は主にスチレンとジビニルベンゼンであることが確認された。また、黄色への着色は、これらのモノマーに含まれていた重合禁止剤に由来していると考えられた。シェル用懸濁液に水溶性開始剤である過硫酸ナトリウムを添加して滴下すると、加えたモノマーのうちの重合反応に参加しなかった分が、上記のような着色物質となり、生成した粒子を汚染してしまうことがわかった。重合条件等を表1に、シェル用モノマー混合物を滴下する直前にサンプリングしたコア粒子の特性評価結果を表2に示した。
比較例5
シェル用懸濁液作製の際に、前記「ハイテノールNF−08」0.4部、脱イオン水181部、スチレン33.5部、ジビニルベンゼン(57%)2.3部に加えて、水溶性重合開始剤である「VA−086」(和光純薬工業社製;2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド])3.58部を加えた以外は、比較例1と同様にして重合を行った。得られた粒子は、体積中位径が1.84μmである粒子と、乳化重合で生成したおよそ1μm以下である微小粒子との混合物であることがわかった。コア用モノマー成分から生成した粒子と、シェル用モノマー成分から生成した乳化重合粒子が混在していると考えられる。重合条件等を表1に、特性評価結果を表2に示した。
比較例6
フラスコに、前記「ハイテノールNF−08」3.3部を溶解させておいた脱イオン水490部を仕込んだ。スチレン132部、メチルメタクリレート165部、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)33部と、ラウリルパーオキサイド9.9部をよく撹拌しておき、この混合物を上記フラスコに加えた。前記T.K.ホモミクサーを用いて7000rpmで20分間撹拌して、均一な懸濁液を得た。この懸濁液を、撹拌機、不活性が首藤入館、還流冷却器、温度計を備えたフラスコに移し入れ、脱イオン水800分をさらに加えた。窒素ガスを吹き込みながら、フラスコを漬けてあるバスの温度を65℃に設定し、フラスコ内温を昇温した。フラスコ内温がバス温度を超えてピーク温度に達し、極大値を示した後に、バス温度を75℃に設定し、1.5時間反応させた。続いてバス温度を85℃に設定し、この温度で2時間撹拌を続けた後、冷却した。重合条件等を表1に示した。
得られた懸濁液を前記遠心分離機にセットし、7000rpmで20分間、遠心分離した。白色沈殿物と上澄み液に分離していたので、濾過により上澄み液を除去し、白色の固形物を80℃で3時間乾燥して、粒子を得た。特性評価結果を表2に示した。表2から明らかなように、比較例6の粒子は、疎水性試験で沈降してしまい、スチレン系コポリマーの粒子でも疎水性が不充分であることが確認できた。
本発明では簡単な懸濁重合で、均一で厚みの薄いシェルがきれいにコアの周囲を被覆した構造のコアシェル粒子を製造することができた。このコアシェル粒子は、光拡散板の光拡散層や反射板の反射層、光拡散シートの光拡散層、集光層等を形成する際に用いることができる。また、本発明で得られる粒子は小粒子径で表面積が大きいことから、タンパク質固定化用担体微粒子としても用いることができる。

Claims (6)

  1. 懸濁重合によってコアシェル粒子を製造する方法であって、コア用モノマー成分、油溶性重合開始剤、界面活性剤および水を含む混合物を強制撹拌して懸濁液を製造した後、該懸濁液中のコア用モノマー成分の重合率が80質量%になってから99質量%になるまでの間に、シェル用モノマー成分100質量%のうちスチレン系モノマーを80質量%以上含むシェル用モノマー成分、界面活性剤および水を含み、重合開始剤は含まない混合物を強制撹拌して得たプレエマルションの前記懸濁液への滴下を開始すると共に、全量の滴下を終了させて、重合する方法であり、前記コア用モノマー成分が単官能モノマーと多官能モノマーとからなり、単官能モノマーと多官能モノマーの合計100質量%のうち多官能モノマーが1〜30質量%であり、コア用モノマー成分100質量%のうち(メタ)アクリル系モノマーを80質量%以上含むことを特徴とするコアシェル粒子の製造方法。
  2. 前記コア用モノマー成分を含む混合物を強制撹拌する際に、コア用モノマー成分100質量部に対し、水溶性有機溶媒を0.1〜10質量部使用する請求項1に記載のコアシェル粒子の製造方法。
  3. 前記コア用モノマー成分を含む混合物およびシェル用モノマー成分を含む混合物のいずれにおいても、それぞれのモノマー成分100質量部に対し、界面活性剤が0.1〜5質量部含まれている請求項1または2に記載のコアシェル粒子の製造方法。
  4. コア用モノマー成分とシェル用モノマー成分の合計100質量%中、シェル用モノマー成分を5〜30質量%とするものである請求項1〜3のいずれかに記載のコアシェル粒子の製造方法。
  5. 前記懸濁液には高分子安定剤が含まれていない請求項1〜4のいずれかに記載のコアシェル粒子の製造方法。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の製造方法により得られ、樹脂改質用のコアシェル粒子であって、体積中位径が1〜50μm、改質される前記樹脂とコアシェル粒子との屈折率差が0.05以下であり、コアシェル粒子を粉末化した粉末0.1gを内径32mmの容器に入れた水30gの液面に浮かべて24時間静置したときに、前記粉末が沈降しないことを特徴とするコアシェル粒子。
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