JP5399809B2 - コアシェル粒子の製造方法およびコアシェル粒子 - Google Patents
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Description
水は、懸濁重合の場を提供する媒体として用いる。安価かつ安全であり、油溶性モノマーの懸濁重合には最適である。重合熱の除去にも適している。
本発明では、コア用には、(メタ)アクリル系モノマーをコア用モノマー成分100質量%中、80質量%以上含むモノマー成分を用いる。本発明の製造方法で得られるコアシェル粒子は、例えば、樹脂の改質剤や光拡散剤として好適であり、このとき用いられる樹脂は、(メタ)アクリル系ポリマーと屈折率が近似しているものが多いためである。なお、コア用モノマーとして、後述する多官能(メタ)アクリル系モノマーを用いる場合は、単官能(メタ)アクリル系モノマーと多官能(メタ)アクリル系モノマーの合計がコア用モノマー成分100質量%中、80質量%以上となるようにする。
本発明では、シェル用には、スチレン系モノマーを、シェル用モノマー成分100質量%中、80質量%以上含むモノマー成分を用いる。ポリオレフィンと近接している屈折率を示すコア粒子の特性を活かした上で、(メタ)アクリレート系ポリマー粒子の表面にスチレン系ポリマーの持つ疎水性を付与することができる。この結果、得られるコアシェル粒子は、(メタ)アクリレート系ポリマーの屈折率と、スチレン系ポリマーに由来する疎水性を兼ね備えたものとなる。スチレン系モノマーの使用割合は、シェル用モノマー成分100質量%中、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
本発明においては、コア用モノマー成分とシェル用モノマー成分の合計100質量%中、シェル用モノマー成分を5〜30質量%とすることが好ましい。コア粒子の屈折率を損なわないためには、シェルをあまり厚くすべきではないからである。シェル用モノマー成分の上限は25質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましい。
油溶性重合開始剤としては、従来公知の油溶性の過酸化物やアゾ系化合物が使用できる。例えば、過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、オルソクロロベンゾイルパーオキサイド、オルソメトキシベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。また、アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
本発明では、懸濁液中の油滴を安定化させるために、少量の界面活性剤を使用する。ポリビニルアルコール等の高分子安定剤は使用しない。高分子安定剤はビニル系重合体微粒子の表面に残留して、微粒子の表面特性を変性させてしまうからである。また、界面活性剤が多すぎても加熱乾燥時の着色の原因となるので、界面活性剤は、コア用懸濁液においても、シェル用プレエマルションにおいても、それぞれモノマー成分100質量部に対し、0.1〜5質量部の範囲で使用する。0.1質量部より少ないと、懸濁液の安定性を保つことが難しくなるおそれがある。5質量部を超えると着色の要因となるおそれがある。より好ましい範囲は、0.1〜2質量部である。
次に、本発明法による懸濁重合方法を詳細に説明する。まず、コア用の懸濁液を作るために、水、界面活性剤、コア用モノマー成分および油溶性重合開始剤を容器へ添加する。このときの各成分の添加順序は特に限定されない。一例を挙げれば、次の通りである。まず、容器に水と界面活性剤を仕込む。界面活性剤は水に溶解させてから仕込んでもよいし、容器の中でよく撹拌して溶解させてもよい。次に、この容器に、コア用モノマー成分と油溶性重合開始剤とを容器に一括添加する。もちろんこの順序は逆でもよく、強制撹拌の前にこれらの原料が容器の中に仕込まれていればよい。また、予め、コア用モノマー成分に油溶性重合開始剤を溶解させておくことが好ましい。
本発明のコアシェル粒子の体積中位径は1〜50μmとする。1μmより小さいものは、製造が難しいためである。また、50μmを超えるものは、樹脂改質や光拡散用途に適さない。
下記例で得られた粒子0.03gを、1%界面活性剤水溶液(「ハイテノール(登録商標)N−08」;第一工業製薬社製)5mlに分散させた後、精密粒度分布測定装置(「コールターマルチサイザー3」;ベックマン・コールター社製)を用いて、体積中位径の測定を行った。アパーチャーは30μmとした。
p−メトキシフェノール1%メタノール溶液5g程度に、重合液0.5g程度をサンプリング後直ちに精秤して加え、ガスクロマトグラフィーでモノマー量を定量する。カラムは、長さ30m、内径0.538mm、膜厚1.50μmの[DB−5ms](J&W Scientific社製(現アジレント・テクノロジー社))を用いた。カラムを50℃で3分保持した後、昇温速度10℃/minで280℃まで昇温(23min)した。気化室、検出器(FID)は280℃とし、キャリアーにはHeガスを50kPaで用いた。重合率は下記式で求めた。なお、残存モノマー量、仕込みモノマー量には、多官能モノマー量も含まれる。
重合率(%)=(仕込みモノマー量−残存モノマー量)/(仕込みモノマー量)
底部に撹拌子を置いた内径5cmのガラスビーカーに二硫化炭素40gを入れ、測定用粒子を0.5g加えた。次いで、撹拌子を回転させながら、ビュレットからエタノールを滴下した。この粒子分散液が目視で透明であることが確認できるまでエタノールの滴下を続けた。透明であることが確認できたときのエタノールと同質量のエタノールを40gの二硫化炭素に加えてよく撹拌して混合液を作製し、この混合液の屈折率をアッベ屈折計(アタゴ社製;[NAR−1T])で測定し、得られた値を重合体粒子の屈折率とした。なお、雰囲気温度は25℃とした。
測定用粒子を130℃で30分間以上加熱乾燥した後、めのう乳鉢内で微粉砕し、粉末化した。この粉末0.1gを内径32mmの容器に入れた脱イオン水30gの液面に浮かべて、24時間静置した。雰囲気温度は25℃とした。粒子の親水性が高い場合は、粉末が沈降するが、粉末が沈降しない場合は、粒子の疎水性が高いといえる。
フラスコに、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩(「ハイテノール(登録商標)NF−08」;第一工業製薬社製)2.4部を溶解させておいた脱イオン水溶液352部を仕込んだ。メチルメタクリレート(MMA)216部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)24部、ラウリルパーオキサイド4.8部をよく撹拌しておき、このコア用混合物を上記フラスコに加えた。T.K.ホモミクサー(懸垂型;プライミクス社製)を用いて、7000rpmで10分間撹拌して、均一な懸濁液とした。この懸濁液を、撹拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器、温度計および滴下ロートを備えたフラスコに移し入れ、脱イオン水600部をさらに加えた。窒素ガスを吹き込みながら、フラスコを漬けてあるバスの温度を65℃に設定し、フラスコ内温を昇温した。
シェル用懸濁液の作製の際に、前記「ハイテノールNF−08」を0.4部、脱イオン水181部、スチレン33.5部、ジビニルベンゼン(57%)2.3部に変更した以外は、実施例1と同様にしてコアシェル粒子を作製した。重合条件等を表1に、特性評価結果を表2に示した。
コア用懸濁液作製の際に、イソプロピルアルコールを12部添加した以外は実施例2と同様にしてコアシェル粒子を作製した。重合条件等を表1に、特性評価結果を表2に示した。
シェル用懸濁液の滴下開始を、フラスコ内温がバス温度よりも1℃高くなったときにした以外は、実施例2と同様にしてコアシェル粒子を作製した。重合条件等を表1に、特性評価結果を表2に示した。
シェル用懸濁液の滴下開始を、フラスコ内温がバス温度を超えてピーク温度に達し、極大値を示してから10分後にした以外は、実施例2と同様にしてコアシェル粒子を作製した。重合条件等を表1に、特性評価結果を表2に示した。
フラスコに、前記「ハイテノール(登録商標)NF−08」2.4部を溶解させておいた脱イオン水溶液352部を仕込んだ。メチルメタクリレート216部、エチレングリコールジメタクリレート24部、ラウリルパーオキサイド4.8部をよく撹拌しておき、このコア用混合物を上記フラスコに加えた。前記T.K.ホモミクサーを用いて、7000rpmで10分間撹拌して、均一な懸濁液とした。この懸濁液を、撹拌機、不活性ガス導入管、還流冷却器、温度計および滴下ロートを備えたフラスコに移し入れ、脱イオン水600部をさらに加えた。窒素ガスを吹き込みながら、フラスコを漬けてあるバスの温度を65℃に設定し、フラスコ内温を昇温した。
実施例1と同様にして、コア用懸濁液とシェル用懸濁液を作製した。実施例1と同様にして、バス温度を65℃に設定し、重合を開始した。コア用モノマー成分の重合が始まり、フラスコ内温がバス温度を超えてピーク温度に達し、極大値を示した後に、バス温度を75℃に設定し、1.5時間反応させた後、バス温度を85℃に設定し、この温度で2時間撹拌を続けた。この後、上記シェル用懸濁液を滴下ロートから20分かけて滴下した。滴下終了後、バス温度を75℃に設定し、1.5時間反応させた後、バス温度を85℃に設定し、この温度で2時間撹拌を続けた。重合条件等を表1に示した。
シェル用懸濁液を作製せずに、スチレン33.5部とジビニルベンゼン(57%)2.3部のみのシェル用モノマー混合物を滴下ロートから20分かけて滴下した以外は比較例1と同様にして重合を行った。シェル用モノマー混合物を滴下した直後、滴下したモノマー混合物は、コア用懸濁液の液面に浮いていた。バス温度を75℃に設定し、1.5時間反応させた後、バス温度を85℃に設定し、この温度で2時間撹拌を続けた。
シェル用懸濁液作製の際に、前記「ハイテノールNF−08」0.4部、脱イオン水181部、スチレン33.5部、ジビニルベンゼン(57%)2.3部に加えて、水溶性重合開始剤である過硫酸ナトリウム3.58部を加えた以外は、比較例1と同様にして重合を行った。シェル用懸濁液の滴下終了後、バス温度を75℃に設定し、1.5時間反応させた後、バス温度を85℃に設定し、この温度で2時間撹拌を続けた。フラスコ内を観察すると、懸濁液は薄い黄色に着色し、液面には黄色い油滴が生成していた。液面の油滴は反応液から取り除くことが困難であった。微少量サンプリングし、ガスクロマトグラフィで分析したところ、油滴は主にスチレンとジビニルベンゼンであることが確認された。また、黄色への着色は、これらのモノマーに含まれていた重合禁止剤に由来していると考えられた。シェル用懸濁液に水溶性開始剤である過硫酸ナトリウムを添加して滴下すると、加えたモノマーのうちの重合反応に参加しなかった分が、上記のような着色物質となり、生成した粒子を汚染してしまうことがわかった。重合条件等を表1に、シェル用モノマー混合物を滴下する直前にサンプリングしたコア粒子の特性評価結果を表2に示した。
シェル用懸濁液作製の際に、前記「ハイテノールNF−08」0.4部、脱イオン水181部、スチレン33.5部、ジビニルベンゼン(57%)2.3部に加えて、水溶性重合開始剤である「VA−086」(和光純薬工業社製;2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド])3.58部を加えた以外は、比較例1と同様にして重合を行った。得られた粒子は、体積中位径が1.84μmである粒子と、乳化重合で生成したおよそ1μm以下である微小粒子との混合物であることがわかった。コア用モノマー成分から生成した粒子と、シェル用モノマー成分から生成した乳化重合粒子が混在していると考えられる。重合条件等を表1に、特性評価結果を表2に示した。
フラスコに、前記「ハイテノールNF−08」3.3部を溶解させておいた脱イオン水490部を仕込んだ。スチレン132部、メチルメタクリレート165部、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)33部と、ラウリルパーオキサイド9.9部をよく撹拌しておき、この混合物を上記フラスコに加えた。前記T.K.ホモミクサーを用いて7000rpmで20分間撹拌して、均一な懸濁液を得た。この懸濁液を、撹拌機、不活性が首藤入館、還流冷却器、温度計を備えたフラスコに移し入れ、脱イオン水800分をさらに加えた。窒素ガスを吹き込みながら、フラスコを漬けてあるバスの温度を65℃に設定し、フラスコ内温を昇温した。フラスコ内温がバス温度を超えてピーク温度に達し、極大値を示した後に、バス温度を75℃に設定し、1.5時間反応させた。続いてバス温度を85℃に設定し、この温度で2時間撹拌を続けた後、冷却した。重合条件等を表1に示した。
Claims (6)
- 懸濁重合によってコアシェル粒子を製造する方法であって、コア用モノマー成分、油溶性重合開始剤、界面活性剤および水を含む混合物を強制撹拌して懸濁液を製造した後、該懸濁液中のコア用モノマー成分の重合率が80質量%になってから99質量%になるまでの間に、シェル用モノマー成分100質量%のうちスチレン系モノマーを80質量%以上含むシェル用モノマー成分、界面活性剤および水を含み、重合開始剤は含まない混合物を強制撹拌して得たプレエマルションの前記懸濁液への滴下を開始すると共に、全量の滴下を終了させて、重合する方法であり、前記コア用モノマー成分が単官能モノマーと多官能モノマーとからなり、単官能モノマーと多官能モノマーの合計100質量%のうち多官能モノマーが1〜30質量%であり、コア用モノマー成分100質量%のうち(メタ)アクリル系モノマーを80質量%以上含むことを特徴とするコアシェル粒子の製造方法。
- 前記コア用モノマー成分を含む混合物を強制撹拌する際に、コア用モノマー成分100質量部に対し、水溶性有機溶媒を0.1〜10質量部使用する請求項1に記載のコアシェル粒子の製造方法。
- 前記コア用モノマー成分を含む混合物およびシェル用モノマー成分を含む混合物のいずれにおいても、それぞれのモノマー成分100質量部に対し、界面活性剤が0.1〜5質量部含まれている請求項1または2に記載のコアシェル粒子の製造方法。
- コア用モノマー成分とシェル用モノマー成分の合計100質量%中、シェル用モノマー成分を5〜30質量%とするものである請求項1〜3のいずれかに記載のコアシェル粒子の製造方法。
- 前記懸濁液には高分子安定剤が含まれていない請求項1〜4のいずれかに記載のコアシェル粒子の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られ、樹脂改質用のコアシェル粒子であって、体積中位径が1〜50μm、改質される前記樹脂とコアシェル粒子との屈折率差が0.05以下であり、コアシェル粒子を粉末化した粉末0.1gを内径32mmの容器に入れた水30gの液面に浮かべて24時間静置したときに、前記粉末が沈降しないことを特徴とするコアシェル粒子。
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