JP3784336B2 - 重合体粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合体粒子の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、所望範囲の体積平均粒子径の重合体粒子の製造方法に関する。本発明の製造方法により得られた重合体粒子は、スペーサー、光拡散剤、滑り性付与剤、トナー、塗料のつや消し剤、機能性担体等として使用できる。
【0002】
【従来の技術】
微細な重合体粒子は様々な方面で必要とされている。特に、粒子の大きさが1〜3μmであり、粒度分布が均一な重合体粒子は、スペーサー、光拡散剤、滑り性付与剤、トナー等に適しており、これらの分野で広く要望されている。ところが、この要望を満たす粒子を提供するには困難があった。
【0003】
例えば、微細な重合体粒子を得るためには通常乳化重合法によればよいと考えるであろう。ところが、乳化重合法によったのでは、粒子の大きさが通常1μm以下の微細なものとなってしまう。また、通常の懸濁重合法によっても1〜3μmの粒子を得ることは難しく、粒度分布を均一にすることも難しい。
【0004】
他方、乳化液、懸濁液等を作る装置として、高い圧力の下にある液体を流して、液流を互いに衝突あるいは所定の平面部に衝突させてその衝撃によりその中に含まれている懸濁粒子を粉砕して微細化し、これによって大きさの揃った微細粒子の懸濁液を作ることを原理とするナノマイザー、ハーモナイザー又はマイクロフルイダイザー等の装置がある。
【0005】
特開平4−156555号公報は、上記の液流同士の衝突によって懸濁粒子を微細化して懸濁液を作り、この懸濁液を懸濁重合させて静電現像用のトナーを作る方法を開示している。この公報によれば、エチレン系単量体と、この単量体に可溶な重合開始剤と、界面活性剤と、分散安定剤とを水性媒体中に加え、撹拌して体積平均粒子径が30〜40μmの単量体液滴の1次懸濁液を作り、この1次懸濁液を加圧下に複数の流れに分けて流し、こうして得た液流同士を衝突させて単量体粒子を更に微細化して2次懸濁液を作り、その後2次懸濁液を懸濁重合させて微細な重合体粒子を得ている。
【0006】
上記公報が開示する技術は、界面活性剤を臨界ミセル濃度の0.5〜2.0倍という程の大量に使用することを必要としている。ところが、このような大量の界面活性剤を用いて2次懸濁液を作ったのでは、懸濁粒子の大きさがなお不揃いとなり、従って狭い粒度分布を持ち、大きさの揃った微細な重合体粒子が得られないことが判明した。そこで、大きさの揃った微細な重合体を作るには、更に別な製造方法を開発することが必要となり、その改良法として特開平7−292025号公報に記載の技術が生まれた。
【0007】
この技術は、大量の界面活性剤を使用せずに、界面活性剤の使用量を臨界ミセル濃度の0.5倍以下とし、高速回転撹拌装置によって単量体を重量平均粒子径が3〜10μmの油滴として1次懸濁液を作り、次いでこれを加圧下液体同士を衝突させると微細化とは逆に粒子の合着が起り、これによって粒子が逆に大きくなり、その結果粒径が4〜100μmの大きさの範囲内であって、かつ所望の狭い領域内に局限された粒子が得られるものであり、その合着の程度、すなわち得られる粒径は1次懸濁液に加える圧力の加減により容易に調節できるという方法である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記公報で示される方法では、重合体粒子の粒度分布を均一にすることはできても、体積平均粒子径を1〜3μm程度の大きさにすることは難しかった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かくして本発明によれば、スチレン系単量体又はスチレン系単量体と他の共重合性単量体との単量体混合物、該単量体又は単量体混合物に可溶な重合開始剤、両性界面活性剤及び無機系分散安定剤を水性媒体中に加えて体積平均粒子径が3〜20μmの単量体の1次懸濁液を作り、該1次懸濁液を加圧下、ノズルから噴出させて2次懸濁液を作り、該2次懸濁液を重合させて体積平均粒子径が1〜3μmで、変動係数が25%以下である樹脂粒子を得ることを特徴とする重合体粒子の製造方法が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明では単量体として、スチレン系単量体又はスチレン系単量体と他の共重合性単量体との単量体混合物を使用する。ここで、スチレン系単量体は、単量体全量に対して50重量%以上であることが好ましい。また、本発明におけるスチレン系単量体としては、スチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等が挙げられる。他の共重合性単量体としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル系単量体;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のN−アルキル置換アクリルアミド;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル系単量体;ジビニルベンゼン、エチレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体等が挙げられる。これらの単量体は必要に応じて、単独又は2種類以上を混合して用いることができる。また、この単量体中に分散あるいは溶解可能な染料及び顔料等の添加物を添加することも可能である。なお、上記単量体において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0011】
懸濁重合時の単量体と水性媒体との比率(重量比)は、1/10〜1/2の範囲であることが好ましい。1/10より単量体が少なくなると、生産性が悪くなるため好ましくない。また、1/2より単量体が多くなると、体積平均粒子径を3μm以下に維持することが困難となるため好ましくない。
【0012】
ここで、水性媒体としては、水、水と水溶性有機化合物(例えば、低級アルコール)との混合物が挙げられる。
【0013】
本発明における重合開始剤は、上記単量体に可溶な一般に用いられる油溶性重合触媒であれば特に限定されることなく使用でき、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、t−ブチルペルオキシオクトエート等の過酸化物系触媒、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系触媒が使用できる。
【0014】
上記単量体にこれら重合開始剤を溶解し、無機系分散安定剤と両性界面活性剤又は必要に応じて添加される分散安定補助剤等を含む水性媒体に添加した後、1次懸濁液が作成される。
【0015】
無機系分散安定剤としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難水溶性無機塩及び、酸化ケイ素、酸化チタン等の金属酸化物等が挙げられる。この内、リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難水溶性無機塩が好ましい。
【0016】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ジメチルアルキルラウリルベタイン、ジメチルアルキルヤシベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のベタイン型両性界面活性剤、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型両性界面活性剤が挙げられる。この内、ベタイン型両性界面活性剤が好ましい。
【0017】
更に、アニオン系界面活性剤を併用してもよい。アニオン系界面活性剤を使用することで、1次及び2次懸濁液の懸濁状態をより安定化することができる。アニオン系界面活性剤の使用量は、使用する界面活性剤の種類に応じて適宜調整され、例えば、両性界面活性剤/アニオン系界面活性剤=100/0〜50/50(重量比)の範囲が挙げられる。
【0018】
アニオン系界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが挙げられる。
【0019】
両性界面活性剤は、その種類にもよるが、臨界ミセル濃度を超えない範囲で使用することが好ましい。臨界ミセル濃度を超えて使用した場合、懸濁重合時に乳化重合が生じやすくなり、所望の粒径以外の粒子が生じることがある。両性界面活性剤は、臨界ミセル濃度の0.5倍以下で使用することが好ましく、0.02〜0.3倍の範囲で使用することが特に好ましい。臨界ミセル濃度とは、界面活性剤の分子が集合して水溶液中でミセルと呼ばれるコロイド大の会合体を形成するに至る濃度で、界面活性剤に固有な値である。
【0020】
本発明において、1次懸濁液を作るには、剪断力によって単量体を分散させる機構の装置が使用できる。装置としては、通常の撹拌装置あるいはホモミキサー等の高速回転式撹拌機を使用し、この装置を所定の撹拌速度で所定時間撹拌する。1次懸濁液では、単量体を体積平均粒子径が3〜20μmの液滴とすることが必要とされる。体積平均粒子径を3μm未満としても2次懸濁液中の液滴の体積平均粒子径を1μm以下とすることはできないので、1次懸濁液で3μm以下にする必要はない。一方、20μmより大きい場合、2次懸濁液中の液滴の体積平均粒子径を1〜3μmとすることが困難である。
【0021】
本発明では、体積平均粒子径が3〜20μmの液滴とした1次懸濁液を、加圧噴射することにより体積平均粒子径が1〜3μmの液滴を含む2次懸濁液を得る。加圧噴射するために使用される装置としては、例えばノズルから懸濁液を噴射するタイプのプロセッサーを接続した装置、懸濁液を加圧下で液同士あるいは液を所定の平面に衝突させるタイプの装置を使用することができる。具体的な装置としては、ナノマイザー、ハーモナイザー、マイクロフルイダイザー、アルティマイザー等が挙げられる。
【0022】
こうして得られた2次懸濁液を懸濁重合させる。このとき、2次懸濁液は既に重合開始剤を含んでいるので、例えばこの懸濁液を加熱するだけで重合を開始させることができる。加熱条件は重合開始剤、単量体の種類に応じて適当な温度にするが、通常は40〜100℃、0.5〜10時間の範囲内であり、好ましくは50〜90℃、1〜8時間の範囲内である。重合させると、単量体は2次懸濁液中の体積平均粒子径そのままで重合体となるので、大きさのよく揃った重合体粒子が得られる。
【0023】
重合後は、濾過、遠心分離等によって重合体粒子を水性媒体から分離し、水洗又は溶剤で洗浄後、乾燥して粉体として使用することが好ましい。上記本発明の製造方法により得られた重合体粒子は、体積平均粒子径が1〜3μmでかつ変動係数が10〜25%である領域内に粒子径を有しており、所望の範囲内に体積平均粒子径の揃った重合体粒子を得ることができる。なお、本発明において体積平均粒子径は、実施例に記載の方法により測定した平均粒子径を意味する。
【0024】
本発明の製造方法により得られた重合体粒子は、スペーサー、光拡散剤、滑り性付与剤、トナー、塗料のつや消し剤、機能性担体等の原料として又はそのまま使用することができる。
【0025】
【実施例】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例には限定されない。
【0026】
体積平均粒子径及び変動係数は、レーザー散乱・回折式粒度分布測定装置LS230(ベックマンコールター社製)により測定した。サンプルの分散媒として水を用い、サンプルの屈折率は重合体の屈折率を用いた。ここでいう体積平均粒子径は、算術平均により求められた数値である。また、変動係数とは次式から求められる数値であり、データの分布幅を表すものである。
変動係数(%)=標準偏差×100/体積平均粒子径
【0027】
実施例1
アゾビス−N,N−ジメチルバレロニトリル1gを、スチレン90gとジビニルベンゼン10g(純度82%)との混合液に溶解し、ラウリル硫酸ナトリウム0.15g、ジメチルアルキルラウリルベタイン水溶液(有効成分35%)1.3g、複分解ピロリン酸マグネシウム15gを含む水500gに加え、TKホモミキサー(特殊機化社製)にて、液滴の体積平均粒子径が8μm程度となるよう1次懸濁液を調製した。
【0028】
次いで、ナノマイザーLA−33(ナノマイザー社製)にノズル型プロセッサー(LNP−20/300)を接続して、1次懸濁液を300kg/cm2の圧力下に1回通して2次懸濁液を作った。
【0029】
この2次懸濁液を撹拌機及び温度計を備えた重合器に入れ、緩やかな撹拌下で60℃で8時間懸濁重合させて重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の体積平均粒子径は2.2μmで、変動係数は18.9%であり、粒度分布が狭い領域内に局限されていて、粒子の大きさがよく揃ったものであった。
【0030】
実施例2
アゾビス−N,N−ジメチルバレロニトリル1gを、スチレン60g、メタクリル酸メチル34gとジビニルベンゼン6g(純度82%)との混合液に溶解し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5g、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム水溶液(有効成分40%)0.75g、複分解ピロリン酸マグネシウム15gを含む水500gに加え、TKホモミキサー(特殊機化社製)にて、液滴の体積平均粒子径が15μm程度となるよう1次懸濁液を調製した。
【0031】
次いで、ナノマイザーLA−33(ナノマイザー社製)に衝突型プロセッサー(LD−500)を接続して、1次懸濁液を700kg/cm2の圧力下に1回通して2次懸濁液を作った。
【0032】
この2次懸濁液を撹拌機及び温度計を備えた重合器に入れ、緩やかな撹拌下で50℃で8時間懸濁重合させて重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の体積平均粒子径は2.3μmで、変動係数は21.8%であり、粒度分布が狭い領域内に局限されていて、粒子の大きさがよく揃ったものであった。
【0033】
実施例3
アゾビスイソブチロニトリル1gを、スチレン63gとジビニルベンゼン37g(純度82%)との混合液に溶解し、ラウリル硫酸ナトリウム0.35g、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン水溶液(有効成分30%)1.2g、複分解ピロリン酸マグネシウム25gを含む水700gに加え、TKホモミキサー(特殊機化社製)にて、液滴の体積平均粒子径が5μm程度となるよう1次懸濁液を調製した。
【0034】
次いで、マイクロフルイダイザーM110E/H−S(みずほ工業社製)に、1次懸濁液を100kg/cm2の圧力下に1回通して2次懸濁液を作った。
【0035】
この2次懸濁液を撹拌機及び温度計を備えた重合器に入れ、緩やかな撹拌下で70℃で8時間懸濁重合させて重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の体積平均粒子径は1.9μmで、変動係数は17.5%であり、粒度分布が狭い領域内に局限されていて、粒子の大きさがよく揃ったものであった。
【0036】
比較例1
ジメチルアルキルラウリルベタイン水溶液を加えなかったこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の体積平均粒子径は6.3μmで、変動係数は23.5%であり、体積平均粒子径が大きかった。
【0037】
比較例2
1次懸濁液の液滴の体積平均粒子径を約30μmとしたこと以外は実施例1と同様にして2次懸濁液を得た。
【0038】
この2次懸濁液を撹拌機及び温度計を備えた重合器に入れ、緩やかな撹拌下で60℃で5時間懸濁重合させて重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の体積平均粒子径は5.6μmで、変動係数は20.5%であり、体積平均粒子径が大きかった。
【0039】
比較例3
実施例1と同様にして得られた1次懸濁液を、更にTKホモミキサーにて12000rpmで10分間処理し、得られた懸濁液を撹拌機及び温度計を備えた重合器に入れ、緩やかな撹拌下で60℃で5時間懸濁重合させて重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の体積平均粒子径は4.2μmで、変動係数は35.8%であり、体積平均粒子径が大きいと共に粒子の大きさが不揃いであった。
【0040】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、懸濁重合で粒度分布が均一な1〜3μmの体積平均粒子径の重合体粒子を得ることができる。この粒子は大きさが揃っているために、スペーサー、滑り性付与剤、トナー、光拡散剤、塗料のつや消し剤、機能性担体等として使用するに好適なものとなる。
Claims (1)
- スチレン系単量体又はスチレン系単量体と他の共重合性単量体との単量体混合物、該単量体又は単量体混合物に可溶な重合開始剤、両性界面活性剤及び無機系分散安定剤を水性媒体中に加えて体積平均粒子径が3〜20μmの単量体の1次懸濁液を作り、該1次懸濁液を加圧下、ノズルから噴出させて2次懸濁液を作り、該2次懸濁液を重合させて体積平均粒子径が1〜3μmで、変動係数が25%以下である樹脂粒子を得ることを特徴とする重合体粒子の製造方法。
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