JP6459367B2 - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 Download PDF

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物およびその成形品に関する。
成形品の耐衝撃性を向上させることによって、得られる成形品の用途が拡大するだけでなく、成形品の薄肉化や大型化への対応が可能になるなど、工業的な有用性が非常に高くなる。そのため、成形品の耐衝撃性の向上については、これまでに様々な手法が提案されている。これら手法のうち、ゴム質重合体と硬質樹脂とを組み合わせた樹脂材料を用いることによって、硬質樹脂に由来する特性を保持しつつ、成形品の耐衝撃性を高める手法は、すでに工業化されている。このような樹脂材料としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル(ASA)樹脂、アクリロニトリル−エチレン・α−オレフィン−スチレン(AES)樹脂、またはこれらをさらに硬質樹脂に添加した熱可塑性樹脂組成物等が挙げられる。
硬質樹脂に由来する特性を保持しつつ、耐衝撃性が向上した成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物としては、例えば、下記のものが知られている。
(1)硬質樹脂であるメタクリル酸エステル樹脂に、AES樹脂を添加した熱可塑性樹脂組成物(特許文献1)。
(2)硬質樹脂であるマレイミド系共重合体に、AES樹脂を添加した熱可塑性樹脂組成物(特許文献2)。
(3)硬質樹脂であるメタクリル酸エステル樹脂に、AES樹脂およびASA樹脂を添加した熱可塑性樹脂組成物(特許文献3)。
しかし、(1)、(2)の熱可塑性樹脂組成物では、成形品の耐衝撃性を向上させるためにAES樹脂を多量に添加する必要があるため、得られる成形品においては、メタクリル酸エステル樹脂に由来する表面硬度(耐傷付き性)やマレイミド系共重合体に由来する耐熱性が著しく低下する。また、成形品の耐衝撃性を向上させるために比較的粒子径の大きいAES樹脂を添加する必要があるため、成形品においては、硬質樹脂に由来する発色性が低下する。
(3)の熱可塑性樹脂組成物では、成形品の発色性の低下を抑えるためにAES樹脂およびASA樹脂を添加しているが、AES樹脂のみを添加したときに比べて成形品の耐衝撃性が劣る結果となる。
特開2005−132970号公報 特開2004−352842号公報 特開2004−346187号公報
本発明は、流動性が良好であり、得られる成形品の耐傷付き性、耐衝撃性、耐寒衝撃性、発色性、潤滑性に優れる熱可塑性樹脂組成物と、この熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、質量平均分子量(Mw)と分子量分布(Mw/Mn)が特定の範囲内にあるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の存在下にビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたグラフト共重合体(D)と、ジエン系ゴム状重合体(E)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られたグラフト共重合体(F)と、メタクリル酸エステル樹脂(G)とを含み、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)とジエン系ゴム状重合体(E)とが特定の平均粒子径であり、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)とジエンゴム状重合体(E)とが特定の割合である熱可塑性樹脂組成物が、上記の課題を解決することができることを見出した。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 質量平均分子量(Mw)が17×10〜35×10であり、分子量分布(Mw/Mn)が1〜3であるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の存在下にビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたグラフト共重合体(D)と、ジエン系ゴム状重合体(E)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られたグラフト共重合体(F)と、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(m3)を重合して得られたメタクリル酸エステル樹脂(G)とを含み、熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(D)に含まれるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の平均粒子径が0.20μm〜0.60μmであり、熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(F)に含まれるジエン系ゴム状重合体(E)の平均粒子径が0.05μm〜0.18μmであり、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)およびジエンゴム状重合体(E)の合計100質量%のうち、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の割合が15〜85質量%であり、ジエン系ゴム状重合体(E)の割合が85〜15質量%である熱可塑性樹脂組成物。
[2] 前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)が架橋処理した架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)であることを特徴とする[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3] 前記架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のゲル含有率が35〜75質量%であることを特徴とする[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4] 前記架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)は、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)、または前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を水性媒体に分散させてなり、該エチレン・α−オレフィン共重合体(A)100質量部に対して乳化剤1〜8質量部と、酸変性オレフィン重合体1〜40質量部とを含むオレフィン樹脂水性分散体(B)に、有機過酸化物を添加して加熱することにより得られることを特徴とする[2]又は[3]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5] 前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、該エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を水性媒体に分散させてなり、該エチレン・α−オレフィン共重合体(A)100質量部に対して乳化剤1〜8質量部と、酸変性オレフィン重合体1〜40質量部とを含むオレフィン樹脂水性分散体(B)として、前記ビニル系単量体混合物(m1)との重合に供されることを特徴とする[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6] 前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の全構成単位100質量%中のエチレン単位の含有率が45〜65質量%で、結晶化率が0〜30%であることを特徴とする[1]ないし[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[7] 前記グラフト共重合体(D)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)50〜80質量%の存在下にビニル系単量体混合物(m1)20〜50質量%(ただし、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)とビニル系単量体混合物(m1)との合計で100質量%)を重合して得られた、グラフト率20〜100質量%のグラフト共重合体であり、前記ビニル系単量体混合物(m1)100質量%中に、芳香族ビニル化合物を65〜82質量%、シアン化ビニル化合物を18〜35質量%含むことを特徴とする[1]ないし[6]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[8] 前記グラフト共重合体(F)は、ジエン系ゴム状重合体(E)20〜80質量%の存在下にビニル系単量体混合物(m2)20〜50質量%(ただし、ジエン系ゴム状重合体(E)とビニル系単量体混合物(m2)との合計で100質量%)を重合して得られたグラフト共重合体であり、前記ビニル系単量体混合物(m2)100質量%中に、芳香族ビニル化合物を65〜82質量%、シアン化ビニル化合物を18〜35質量%含むことを特徴とする[1]ないし[7]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[9] 前記ビニル系単量体混合物(m3)100質量%中に、メタクリル酸エステルを50〜100質量%含むことを特徴とする[1]ないし[8]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[10] 前記ビニル系単量体混合物(m3)100質量%中に、メタクリル酸エステルを50〜94質量%、マレイミド系化合物を5〜49質量%、芳香族ビニル化合物を1〜45質量%含むことを特徴とする[9]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[11] 熱可塑性樹脂組成物100質量%中、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)およびジエン系ゴム状重合体(E)の合計の含有量が5〜30質量%であることを特徴とする[1]ないし[10]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[12] 更に、少なくとも芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体混合物(m4)を重合してなるスチレン系共重合体(H)を含むことを特徴とする[1]ないし[11]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[13] 前記グラフト共重合体(D)、グラフト共重合体(F)およびメタクリル酸エステル樹脂の合計100質量%中、グラフト共重合体(D)およびグラフト共重合体(F)の合計の含有量が5〜40質量%であり、メタクリル酸エステル樹脂(G)の含有量が95〜60質量%であることを特徴とする[1]ないし[11]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
[14] 前記グラフト共重合体(D)、グラフト共重合体(F)、メタクリル酸エステル樹脂およびスチレン系共重合体(H)の合計100質量%中、グラフト共重合体(D)およびグラフト共重合体(F)の合計の含有量が5〜40質量%であり、メタクリル酸エステル樹脂(G)の含有量が95〜60質量%であり、スチレン系共重合体(H)の含有量が40質量%以下であることを特徴とする[12]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[15] [1]ないし[14]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、流動性が良好である。また、本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、耐傷付き性、耐衝撃性、耐寒衝撃性、発色性、潤滑性に優れる成形品を良好な成形加工性のもとに得ることができる。
本発明の成形品は、耐傷付き性、耐衝撃性、耐寒衝撃性、発色性、潤滑性に優れ、各種の用途において極めて有用である。
ガーゼ磨耗による耐擦り傷性の評価方法を説明する概略図である。 潤滑性の評価方法を説明する概略図である。
以下に本発明を詳細に説明する。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「ビニル系単量体混合物」とは、ビニル系単量体の1種または2種以上を含むものを意味する。
「成形品」とは、熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものを意味する。
「耐傷付き性」とは、爪等の硬く尖ったもので成形品の表面を引っ掻いたときに生じる傷(引っ掻き傷)に対する傷付きにくさ(耐引っ掻き傷性)と、軍手、ガーゼ、布等の柔らかいもので成形品の表面を擦ったときに生じる傷(擦り傷)に対する傷付きにくさ(耐擦り傷性)の両方を意味する。
「明度(L)」とは、JIS Z 8729において採用されているL表色系における色彩値のうちの明度の値(L)を意味する。
「SCE方式」とは、JIS Z 8722に準拠した分光測色計を用い、光トラップによって正反射光を除去して色を測る方法を意味する。
「平均粒子径」とは、マイクロトラック(日機装社製「ナノトラック150」)を用い、測定溶媒として純水を用いて測定した体積平均粒子径(MV)を意味する。
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(D)とグラフト共重合体(F)とメタクリル酸エステル樹脂(G)とを含む。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、スチレン系共重合体(H)、他の熱可塑性樹脂、各種添加剤を含んでいてもよい。
グラフト共重合体(D)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の存在下にビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたものであり、該エチレン・α−オレフィン共重合体(A)は架橋処理した架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)であることが好ましい。即ち、グラフト共重合体(D)は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の存在下にビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたものであることがより好ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体(A)はまた、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を含むオレフィン樹脂水性分散体(B)としてグラフト重合に供してもよい。
グラフト共重合体(F)は、ジエン系ゴム状重合体(E)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られたものである。
メタクリル酸エステル樹脂(G)は、ビニル系単量体混合物(m3)を重合して得られたものである。
スチレン系共重合体(H)は、ビニル系単量体混合物(m4)を重合して得られたものである。
以下、各成分((A)〜(H)、(m1)〜(m4)等)について説明する。
<エチレン・α−オレフィン共重合体(A)>
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンとを公知の重合方法によって共重合することによって得られた、エチレン単位とα−オレフィン単位とからなる共重合体である。
α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−イコセン、1−ドコセン等の1種または2種以上が挙げられ、得られる成形品の耐衝撃性の点から、炭素数が3〜20のα−オレフィンが好ましく、プロピレンが特に好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)のエチレン単位の含有率は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を構成する全ての構成単位の合計を100質量%としたときに、45〜65質量%が好ましく、50〜60質量%がより好ましい。エチレン単位の含有率が前記範囲内であれば、得られる成形品の耐擦り傷性、耐衝撃性、耐寒衝撃性、潤滑性のバランスがさらに優れたものとなる。特に、エチレン単位の含有率が50〜60質量%であれば、得られる成形品の耐擦り傷性、耐衝撃性、耐寒衝撃性がさらに向上する。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は、17×10〜35×10であり、26×10〜32×10が好ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)が17×10よりも小さい場合には、得られる成形品の耐擦り傷性、耐衝撃性、耐寒衝撃性、潤滑性が劣るものとなる。一方、質量平均分子量(Mw)が35×10よりも大きい場合には、熱可塑性樹脂組成物の流動性および得られる成形品の発色性が劣るものとなる。質量平均分子量(Mw)が26×10〜32×10であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性および得られる成形品の耐擦り傷性、耐衝撃性、耐寒衝撃性がさらに優れたものとなる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、1〜3であり、1.9〜2.5が好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が3よりも大きい場合には、得られる成形品の耐擦り傷性、耐衝撃性、耐寒衝撃性、潤滑性が劣るものとなる。分子量分布(Mw/Mn)が1.9〜2.5であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性および得られる成形品の耐擦り傷性、耐衝撃性がさらに優れたものとなる。
ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定し、標準ポリスチレンで換算した値であり、具体的な測定方法は、後掲の実施例の項に示す通りである。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の結晶化度は、0%〜30%であることが好ましく、1%〜30%であることがさらに好ましい。結晶化度が前記範囲内であれば、得られる成形品の耐擦り傷性、耐衝撃性、耐寒衝撃性、潤滑性のバランスがさらに優れたものとなる。特に、結晶化度が1%〜30%であれば、耐擦り傷性、耐衝撃性、耐寒衝撃性、潤滑性がさらに向上する。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の結晶化度は、X線回折を測定し、結晶のピーク面積の割合から求められる。具体的な測定方法は、後掲の実施例の項に示す通りである。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の製造方法は、限定されない。エチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、通常、メタロセン触媒またはチーグラー・ナッタ触媒を用いてエチレンとα−オレフィンとを重合することによって製造される。
メタロセン触媒としては、遷移金属(ジルコニウム、チタン、ハフニウム等)にシクロペンタジエニル骨格を有する有機化合物、ハロゲン原子等が配位したメタロセン錯体と、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物等とを組み合わせた触媒が挙げられる。
チーグラー・ナッタ触媒としては、遷移金属(チタン、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム等)のハロゲン化物と有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物等とを組み合わせた触媒が挙げられる。
重合方法としては、前記触媒の存在下に、エチレンとα−オレフィンとを溶媒中で共重合させる方法が挙げられる。溶媒としては、炭化水素溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等)が挙げられる。炭化水素溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、原料のα−オレフィンを溶媒として用いてもよい。
エチレン、α−オレフィンの供給量、水素等の分子量調節剤の種類や量、触媒の種類や量、反応温度、圧力等の反応条件を変更することによって、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)のエチレン単位の含有率、質量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)、結晶化度を調整することができる。
<オレフィン樹脂水性分散体(B)>
オレフィン樹脂水性分散体(B)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を水性媒体に分散させたものである。
オレフィン樹脂水性分散体(B)の調製方法は、限定されない。調製方法としては、例えば、公知の溶融混練手段(ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機等)でエチレン・α−オレフィン共重合体(A)を溶融混練し、機械的せん断力を与えて分散させ、乳化剤を含む水性媒体に添加する方法;エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を炭化水素溶媒(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等)に乳化剤とともに溶解し、水性媒体に添加して乳化させた後、十分に撹拌し、炭化水素溶媒を留去する方法等が挙げられる。オレフィン樹脂水性分散体(B)の調製の際に、その他の成分として乳化剤、酸変性オレフィン重合体等を添加してもよい。
乳化剤としては、公知のものが挙げられ、例えば、長鎖アルキルカルボン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の1種または2種以上が挙げられる。
乳化剤の添加量は、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱着色を抑制でき、オレフィン樹脂水性分散体(B)中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の粒子径制御が容易である点から、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)100質量部に対して1〜8質量部が好ましい。
酸変性オレフィン重合体としては、質量平均分子量が1,000〜5,000のオレフィン重合体(ポリエチレン、ポリプロピレン等)を、官能基を有する化合物(不飽和カルボン酸化合物等)で変性したものが挙げられる。不飽和カルボン酸化合物としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノアミド等が挙げられる。酸変性オレフィン重合体の酸価は10〜50mg−KOH/g程度が好ましい。酸変性オレフィン重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸変性オレフィン重合体の添加量は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)100質量部に対して、1〜40質量部が好ましい。酸変性オレフィン重合体の添加量が前記範囲内であれば、得られる成形品の耐傷付き性と耐衝撃性のバランスがさらに優れたものとなる。
酸変性オレフィン重合体の添加方法は、限定されない。例えば、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を後述の通り架橋処理して用いる場合、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)と酸変性オレフィン重合体とを混合した後に架橋処理をしてもよいし、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)と酸変性オレフィン重合体とをそれぞれ架橋処理した後に混合してもよい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)と酸変性オレフィン重合体との混合方法は、限定されない。混合方法としては、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機等を用いた溶融混練法等が挙げられる。
オレフィン樹脂水性分散体(B)中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の平均粒子径は、得られる成形品の物性が優れる点から、0.20〜0.60μmであり、0.30〜0.50μmが好ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の平均粒子径が前記範囲内であれば、得られる成形品の耐衝撃性、耐寒衝撃性、発色性、耐擦り傷性、潤滑性に優れたものとなる。
なお、本発明者は、オレフィン樹脂水性分散体(B)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の平均粒子径が、そのまま熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の平均粒子径を示すことを、電子顕微鏡の画像解析によって確認している。
オレフィン樹脂水性分散体(B)中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の平均粒子径を制御する方法としては、乳化剤の種類または使用量、酸変性オレフィン重合体の種類または含有量、混練時に加えるせん断力、温度条件等を調整する方法が挙げられる。
なお、オレフィン樹脂水性分散体(B)中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の含有量(濃度)は、取り扱い性、オレフィン樹脂水性分散体(B)の安定性の点から、10〜70質量%、特に20〜60質量%であることが好ましい。
<架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)>
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を架橋処理したものである。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を架橋処理することにより、得られる成形品の耐擦り傷性、耐衝撃性、耐寒衝撃性、発色性、潤滑性のバランスがさらに優れたものとなる。
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のゲル含有率は、得られる成形品の耐擦り傷性、耐衝撃性、耐寒衝撃性、発色性、潤滑性とのバランスの点から、35〜75質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましく、45〜65質量%が特に好ましい。架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のゲル含有率の具体的な測定方法は、後掲の実施例の項に示す通りである。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の架橋処理は、公知の方法によって行うことができる。架橋処理の方法としては、(a)エチレン・α−オレフィン共重合体(A)に、有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加して架橋処理を行う方法;(b)電離性放射線によって架橋処理を行う方法等が挙げられる。得られる成形品の耐衝撃性、発色性の点から、(a)の方法が好ましい。
(a)の方法としては、具体的には、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)またはオレフィン樹脂水性分散体(B)に、有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加し、加熱する方法等が挙げられる。
有機過酸化物および多官能性化合物の添加量、加熱温度、加熱時間等を調整することによって、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のゲル含有率を調整できる。
加熱温度は、有機過酸化物の種類によって異なる。加熱温度は、有機過酸化物の10時間半減期温度に対して−5℃〜+30℃の範囲とすることが好ましい。
加熱時間は、3〜15時間が好ましい。
有機過酸化物は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)に架橋構造を形成させるためのものである。有機過酸化物としては、例えば、ペルオキシエステル化合物、ペルオキシケタール化合物、ジアルキルペルオキシド化合物等が挙げられる。有機過酸化物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ペルオキシエステル化合物の具体例としては、α,α’−ビス(ネオデカノイルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシネオデカノエート、t−ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ヘキシルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ2−ヘキシルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシ2−ヘキシルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシマレイックアシッド、t−ブチルペルオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシ−m−トルオイルベンゾエート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルペルオキシ)イソフタレート等が挙げられる。
ペルオキシケタール化合物の具体例としては、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
ジアルキルペルオキシド化合物の具体例としては、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシド)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
有機過酸化物としては、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のゲル含有率を調整しやすい点から、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド化合物が特に好ましい。
有機過酸化物の添加量は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のゲル含有率を35〜75質量%の範囲に調整しやすい点から、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。
多官能性化合物は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のゲル含有率を調整するために、必要に応じて有機過酸化物と併用されるものである。多官能性化合物としては、ジビニルベンゼン、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられ、ゲル含有率を調整しやすい点から、ジビニルベンゼンが好ましい。多官能性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能性化合物の添加量は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のゲル含有率を35〜75質量%に調整しやすい点から、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)100質量部に対して10質量部以下が好ましい。
オレフィン樹脂水性分散体(B)を有機過酸化物によって架橋処理した架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の水性分散体中の架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の平均粒子径は、得られる成形品の物性が優れる点から、0.20〜0.60μmであり、0.30〜0.50μmが好ましい。平均粒子径が前記範囲内であれば、得られる成形品の耐衝撃性、耐寒衝撃性、発色性、耐擦り傷性、潤滑性に優れたものとなる。
オレフィン樹脂水性分散体(B)を有機過酸化物によって架橋処理した架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の水性分散体中の架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の平均粒子径は、オレフィン樹脂水性分散体(B)中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の平均粒子径に対して変化はない。
また、本発明者は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の水性分散体中の架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の平均粒子径が、そのまま熱可塑性樹脂組成物中の架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の平均粒子径を示すことを、電子顕微鏡の画像解析によって確認している。
<ビニル系単量体混合物(m1)>
ビニル系単量体混合物(m1)は、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、および他のビニル系単量体の群から選ばれる1種または2種以上の単量体からなるビニル系単量体混合物である。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−またはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられ、熱可塑性樹脂組成物の流動性、得られる成形品の発色性、耐衝撃性の点から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体混合物(m1)100質量%中65〜82質量%が好ましく、73〜80質量%がより好ましく、75〜80質量%がさらに好ましい。芳香族ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、得られる成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れたものとなる。
シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。シアン化ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シアン化ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体混合物(m1)100質量%中18〜35質量%が好ましく、20〜27質量%がより好ましく、20〜25質量%がさらに好ましい。シアン化ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、得られる成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れたものとなる。
他の単量体としては、アクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等)、メタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等)、マレイミド系化合物(N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等)等が挙げられる。他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<グラフト共重合体(D)>
グラフト共重合体(D)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)、オレフィン樹脂水性分散体(B)、または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の存在下にビニル系単量体混合物(m1)を重合することによって得られる。エチレン・α−オレフィン共重合体(A)、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グラフト共重合体(D)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)(またはオレフィン樹脂水性分散体(B)中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A))または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)50〜80質量%の存在下に、ビニル系単量体混合物(m1)20〜50質量%(ただし、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)とビニル系単量体混合物(m1)との合計は100質量%)を重合して得られたものが好ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体(A)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)とビニル系単量体混合物(m1)の割合が上記範囲であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性や、得られる成形品の耐衝撃性、発色性の物性バランスがさらに向上する。
グラフト共重合体(D)のグラフト率は、熱可塑性樹脂組成物の流動性および得られる成形品の耐衝撃性、発色性のバランスの点から、20〜100質量%が好ましい。グラフト共重合体(D)のグラフト率の具体的な測定方法は、後掲の実施例の項に示す通りである。
グラフト共重合体(D)の重合方法としては、公知の重合方法(乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法等)が挙げられる。
乳化重合法によるグラフト共重合体(D)の製造方法としては、例えば、ビニル系単量体混合物(m1)に有機過酸化物を混合した上で、ビニル系単量体混合物(m1)をオレフィン樹脂水性分散体(B)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の水性分散液に連続的に添加する方法が挙げられる。有機過酸化物は、有機過酸化物と遷移金属と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤として用いるのが好ましい。重合の際に、連鎖移動剤、乳化剤等を状況に応じて用いてもよい。
レドックス系開始剤としては、重合反応条件を高温下にする必要がなく、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の劣化等を避け、得られる成形品の耐衝撃性の低下を回避できる点から、有機過酸化物と硫酸第一鉄−キレート剤−還元剤を組み合わせたものが好ましい。
有機過酸化物としては、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。
レドックス系開始剤としては、クメンヒドロペルオキシドと、硫酸第一鉄と、ピロリン酸ナトリウムと、デキストロースまたはフラクトースとからなるものがより好ましい。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類(オクチルメルカプタン、n−またはt−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−またはt−テトラデシルメルカプタン等)、アリル化合物(アリルスルフォン酸、メタアリルスルフォン酸、これらのナトリウム塩等)、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられ、分子量を調整することが容易な点から、メルカプタン類が好ましい。連鎖移動剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
連鎖移動剤の添加方法は、一括、分割、連続のいずれでもよい。
連鎖移動剤の添加量は、ビニル単量体混合物(m1)100質量部に対して2.0質量部以下が好ましい。
乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸スルホン酸塩、リン酸系塩、脂肪酸塩、アミノ酸誘導体塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、通常のポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アニオン部にカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等を有し、カチオン部にアミン塩、第4級アンモニウム塩等を有するものが挙げられる。
乳化剤の添加量は、ビニル単量体混合物(m1)100質量部に対して10質量部以下が好ましい。
乳化重合法によって得られるグラフト共重合体(D)は、水性媒体中に分散した状態である。グラフト共重合体(D)を含む水性分散体からグラフト共重合体(D)を回収する方法としては、例えば、水性分散体に析出剤を添加し、加熱、撹拌した後、析出剤を分離し、析出したグラフト共重合体(D)を水洗、脱水、乾燥する析出法が挙げられる。
析出剤としては、例えば、硫酸、酢酸、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の水溶液が挙げられる。析出剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グラフト共重合体(D)を含む水性分散体に、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。
溶液重合法によるグラフト共重合体(D)の製造方法としては、例えば、通常のラジカル重合で使用される不活性重合溶剤が用いられ、エチルベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、アセトンなどのケトン類、ジクロロメチレン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素などが用いられる。
溶液重合に用いられる重合開始剤は、一般的な開始剤が用いられ、例えば、ケトンパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物が用いられる。また、重合開始剤は、一括または連続的に添加する方法が挙げられる。
<ジエン系ゴム状重合体(E)>
ジエン系ゴム状重合体(E)としては、得られる成形品の耐衝撃性、耐寒衝撃性、耐擦り傷性、発色性、潤滑性のバランスの点から、ブタジエン、イソプレン等のジエン成分と、必要に応じて、これらと共重合可能な単量体成分とを構成成分として含有するジエン系ゴム状重合体であることが好ましく、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ブタジエン−イソプレン−スチレン共重合体、ポリクロロプレン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。成形品の耐寒衝撃性が特に優れる点から、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体であることが好ましい。
ジエン系ゴム状重合体(E)の製造方法は特に限定されないが、公知の乳化重合法が好ましい。その際、乳化剤や重合開始剤、連鎖移動剤等も公知のものが利用できる。
ジエン系ゴム状重合体(E)は、後述の平均粒子径となるように製造されるが、ジエン系ゴム状重合体(E)の粒子径の制御において、予め小粒子径のジエン系ゴム状重合体を製造し、さらにこれを公知の肥大化処理により粒子径を大きくして用いてもよい。
<ビニル系単量体混合物(m2)>
ビニル系単量体混合物(m2)は、少なくとも芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含み、必要に応じて更に他のビニル系単量体を含む単量体混合物である。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−またはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられ、熱可塑性樹脂組成物の流動性、得られる成形品の発色性、耐衝撃性の点から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体混合物(m2)100質量%中65〜82質量%が好ましく、73〜80質量%がより好ましく、75〜80質量%がさらに好ましい。芳香族ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、得られる成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れたものとなる。
シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。シアン化ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シアン化ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体混合物(m2)100質量%中18〜35質量%が好ましく、20〜27質量%がより好ましく、20〜25質量%がさらに好ましい。シアン化ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、得られる成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れたものとなる。
ビニル系単量体混合物(m2)は、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物の他に、これらと共重合可能な他のビニル系単量体を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。
他のビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等)、マレイミド系化合物(N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−シクロアルキルマレイミド(N−シクロヘキシルマレイミド等)、N−アリールマレイミド(N−フェニルマレイミド、N−アルキル置換フェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド等)、N−アラルキルマレイミド等)、アクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等)等が挙げられる。他のビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<グラフト共重合体(F)>
グラフト共重合体(F)は、ジエン系ゴム状重合体(E)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)を重合することによって得られる。
グラフト共重合体(F)は、ジエン系ゴム状重合体(E)20〜80質量%の存在下に、ビニル系単量体混合物(m2)20〜80質量%(ただし、ジエン系ゴム状重合体(E)とビニル系単量体混合物(m2)との合計は100質量%)を重合して得られたものが好ましく、ジエン系ゴム状重合体(E)25〜75質量%の存在下に、ビニル系単量体混合物(m2)25〜75質量%を重合して得られたものがより好ましく、ジエン系ゴム状重合体(E)30〜70質量%の存在下に、ビニル系単量体混合物(m2)30〜70質量%を重合して得られたものがさらに好ましい。ジエン系ゴム状重合体(E)およびビニル系単量体混合物(m2)の割合が前記範囲内であれば、グラフト共重合体(F)の生産性が良好であるとともに、得られる成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れたものとなる。
グラフト共重合体(F)の重合方法としては、公知の重合方法(乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法)が挙げられる。
例えば、乳化重合により製造される際、ジエン系ゴム状重合体(E)の水性分散体にビニル系単量体混合物(m2)を加え、ラジカル重合開始剤、乳化剤の存在下でビニル系単量体混合物(m2)をラジカル重合させることにより製造される。この際、グラフト率およびグラフト成分の分子量を制御するため、各種公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等が挙げられ、グラフト重合反応の制御を容易にできる点から、レドックス系開始剤が好ましく、硫酸第一鉄−エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩−ロンガリット(ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート)−ヒドロペルオキシドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤や、硫酸第一鉄−ピロリン酸ナトリウム−ブドウ糖−ヒドロパーオキサイドの組み合わせが特に好ましい。
乳化剤としては、ジエン系ゴム状重合体(E)の製造の際に用いた乳化剤が挙げられる。ジエン系ゴム状重合体(E)の水性分散体に含まれる乳化剤をそのまま用い、グラフト重合の際に乳化剤を追加しなくてもよいし、必要に応じてグラフト重合の際に乳化剤を追加してもよい。
グラフト共重合体(F)の水性分散体から、グラフト共重合体(F)を回収する方法としては、凝固剤を溶解させた熱水中に水性分散体を投入して、スラリー状態に凝析することによって回収する方法(湿式法);加熱雰囲気中にグラフト共重合体(F)の水性分散体を噴霧することによって、半直接的にグラフト共重合体(F)を回収する方法(スプレードライ法)等が挙げられる。
凝固剤としては、無機酸(硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等)、金属塩(塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等)等が挙げられる。凝固剤は、重合で用いた乳化剤に対応させて選定される。すなわち、乳化剤として脂肪酸のナトリウムまたはカリウム塩、ロジン酸のナトリウムまたはカリウム塩等のカルボン酸のナトリウムまたはカリウム塩のみを用いた場合、どのような凝固剤を用いてもよい。乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の酸性領域でも安定な乳化力を示す乳化剤が含まれている場合、金属塩を用いる必要がある。
スラリー状態のグラフト共重合体(F)から乾燥状態のグラフト共重合体(F)を得る方法としては、洗浄によって、スラリーに残存する乳化剤残渣を水中に溶出させた後に、(i)該スラリーを遠心脱水機またはプレス脱水機で脱水し、さらに気流乾燥機等で乾燥する方法、(ii)圧搾脱水機、押出機等で脱水と乾燥とを同時に実施する方法等が挙げられる。乾燥後には、グラフト共重合体(F)は、粉体または粒子状で得られる。また、圧搾脱水機または押出機から排出されたグラフト共重合体(F)を直接、熱可塑性樹脂組成物を製造する押出機または成形機に送ってもよい。
<ビニル系単量体混合物(m3)>
ビニル系単量体混合物(m3)は、少なくともメタクリル酸エステルを必須成分として含み、マレイミド系化合物、芳香族ビニル化合物、アクリル酸エステル、およびメタクリル酸エステルと共重合可能な他のビニル系単量体を任意成分として含む単量体混合物である。
メタクリル酸エステルの含有率は、得られる成形品の耐引っ掻き傷性、発色性の点から、ビニル系単量体混合物(m3)100質量%中50〜100質量%が好ましい。
特にビニル系単量体混合物(m3)100質量%中のメタクリル酸エステルの含有率が50〜94質量%、マレイミド系化合物の含有率が5〜49質量%、芳香族ビニル化合物の含有率が1〜45質量%の範囲内、とりわけビニル系単量体混合物(m3)100質量%中のメタクリル酸エステルの含有率が60〜90質量%、マレイミド系化合物の含有率が9〜30質量%、芳香族ビニル化合物の含有率が1〜10質量%の範囲内であれば、得られる成形品の耐引っ掻き傷性、発色性、耐衝撃性、耐熱性がさらに優れたものとなる。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等が挙げられ、得られる成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸エチルの少なくとも1種が好ましい。メタクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
マレイミド系化合物としては、例えば、N−アルキルマレイミド(N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド等)、N−シクロアルキルマレイミド(N−シクロヘキシルマレイミド等)、N−アリールマレイミド(N−フェニルマレイミド、N−アルキル置換フェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド等)等が挙げられ、得られる成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、N−アリールマレイミド、N−シクロアルキルマレイミドが好ましく、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドが特に好ましい。マレイミド系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−またはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられ、得られる成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられ、得られる成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、アクリル酸メチルが好ましい。アクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のビニル系単量体としては、例えば、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)等が挙げられる。他のビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<メタクリル酸エステル樹脂(G)>
メタクリル酸エステル樹脂(G)は、ビニル系単量体混合物(m3)を重合することによって得られる。
重合方法は、限定されない。重合方法としては、公知の重合方法(乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法等)が挙げられる。
乳化重合法によるメタクリル酸エステル樹脂(G)の製造方法としては、例えば、反応器内にビニル系単量体混合物(m3)と乳化剤と重合開始剤と連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、メタクリル酸エステル樹脂(G)を含む水性分散体から析出法によってメタクリル酸エステル樹脂(G)を回収する方法が挙げられる。
乳化剤としては、通常の乳化重合用乳化剤(ロジン酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)が挙げられる。
重合開始剤としては、有機、無機の過酸化物系開始剤が挙げられる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、テルペン類等が挙げられる。
析出法としては、水性分散体からグラフト共重合体(D)を回収するときと同様の方法を採用できる。
懸濁重合法によるメタクリル酸エステル樹脂(G)の製造方法としては、例えば、反応器内にビニル系単量体混合物(m3)と、懸濁剤、懸濁助剤、重合開始剤および連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、スラリーを脱水、乾燥してメタクリル酸エステル樹脂(G)を回収する方法が挙げられる。
懸濁剤としては、トリカルシウムフォスファイト、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
懸濁助剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
重合開始剤としては、有機ペルオキシド類が挙げられる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、テルペン類等が挙げられる。
<ビニル系単量体混合物(m4)>
ビニル系単量体混合物(m4)は、少なくとも芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含む単量体混合物である。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−またはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられ、熱可塑性樹脂組成物の流動性、得られる成形品の発色性、耐衝撃性の点から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体混合物(m4)100質量%中15〜95質量%が好ましい。芳香族ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、得られる成形品の耐衝撃性がさらに向上する。
シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。シアン化ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シアン化ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体混合物(m4)100質量%中5〜85質量%が好ましい。シアン化ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、得られる成形品の耐衝撃性がさらに向上する。
ビニル系単量体混合物(m4)は、必要に応じて、メタクリル酸エステル、マレイミド系化合物を含んでいてもよい。
メタクリル酸エステル、マレイミド系化合物としては、ビニル系単量体混合物(m3)において例示したものが挙げられる。
<スチレン系共重合体(H)>
スチレン系共重合体(H)は、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体混合物(m4)を重合して得られる。
ビニル系単量体混合物(m4)の重合方法は、限定されない。重合方法としては、公知の重合方法(乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法等)が挙げられ、得られる成形品の耐熱性の点から、懸濁重合法、塊状重合法が好ましい。
<他の熱可塑性樹脂>
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド(ナイロン)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<各種添加剤>
各種添加剤としては、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、顔料、充填剤、シリコーンオイル、パラフィンオイル等が挙げられる。
<平均粒子径>
本発明の熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(D)に含まれるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の平均粒子径は、0.20〜0.60μmであり、0.30〜0.50μmが好ましい。平均粒子径が0.20μmよりも小さい場合には、得られる成形品の耐衝撃性、耐寒衝撃性が劣るものとなる。平均粒子径が0.60μmよりも大きい場合には、得られる成形品の耐衝撃性、耐寒衝撃性、発色性、耐擦り傷性、潤滑性が劣るものとなる。エチレン・α−オレフィン共重合体(A)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の平均粒子径が0.30μm〜0.50μmであれば、得られる成形品の耐衝撃性、耐寒衝撃性、発色性、潤滑性、耐擦り傷性がさらに優れたものとなる。
前述したように、本発明者は、水性分散体に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(A)や架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の平均粒子径が、そのまま熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)や架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の平均粒子径を示すことを、電子顕微鏡写真の画像処理によって確認している。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(F)に含まれるジエン系ゴム状重合体(E)の平均粒子径は、0.05〜0.18μmであり、0.07〜0.15μmが好ましい。平均粒子径が0.05μmよりも小さい場合、得られる成形品の耐衝撃性、耐寒衝撃性が劣るものとなる。平均粒子径が0.18μmよりも大きい場合、得られる成形品の耐衝撃性、耐寒衝撃性、発色性が劣るものとなる。
本発明者らは、ジエン系ゴム状重合体(E)についても、水性分散体に分散しているジエン系ゴム状重合体(E)の平均粒子径が、そのまま熱可塑性樹脂組成物中のジエン系ゴム状重合体(E)の平均粒子径を示すことを、電子顕微鏡写真の画像処理によって確認している。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)およびジエン系ゴム状重合体(E)の平均粒子径の測定方法については、後掲の実施例の項に示す通りである。
<各成分の含有量>
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の割合は、熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)およびジエン系ゴム状重合体(E)の合計(100質量%)のうち、15〜85質量%であり、30〜70質量%が好ましい。
ジエン系ゴム状重合体(E)の割合は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)およびジエン系ゴム状重合体(E)の合計(100質量%)のうち、85〜15質量%であり、30〜70質量%が好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)およびジエン系ゴム状重合体(E)の割合が前記範囲内であれば、少ないゴム含有量で耐衝撃性、耐寒衝撃性を発現させることができ、さらに耐傷付き性、発色性、潤滑性にも優れたものとなる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)およびジエン系ゴム状重合体(E)の合計の含有量(ゴム含有量)は、熱可塑性樹脂組成物100質量%中5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%がより好ましい。ゴム含有量が前記範囲内であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性、得られる成形品の耐衝撃性、耐寒衝撃性、耐傷付き性、発色性、潤滑性がさらに優れたものとなる。
グラフト共重合体(D)およびグラフト共重合体(F)の合計の含有量は、グラフト共重合体(D)、グラフト共重合体(F)、メタクリル酸エステル樹脂(G)および必要に応じて含有されるスチレン系共重合体(H)の合計100質量%中5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。グラフト共重合体(D)およびグラフト共重合体(F)の合計の含有量が前記範囲内であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性、得られる成形品の耐傷付き性、耐衝撃性、耐寒衝撃性、発色性、潤滑性、耐熱性等の物性バランスが優れたものとなる。
メタクリル酸エステル樹脂(G)の含有量は、グラフト共重合体(D)、グラフト共重合体(F)、メタクリル酸エステル樹脂(G)およびスチレン系共重合体(H)の合計100質量%中95〜60質量%が好ましく、90〜70質量%がより好ましい。メタクリル酸エステル樹脂(G)の含有量が前記範囲内であれば、熱可塑性樹脂組成物の流動性、得られる成形品の耐傷付き性、耐衝撃性、耐寒衝撃性、発色性、潤滑性、耐熱性等の物性バランスが優れたものとなる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は更にスチレン系共重合体(H)を含有していてもよく、スチレン系共重合体(H)の含有量は、グラフト共重合体(D)、グラフト共重合体(F)、メタクリル酸エステル樹脂(G)およびスチレン系共重合体(H)の合計100質量%中0〜40質量%が好ましく、熱可塑性樹脂組成物の流動性、得られる成形品の耐衝撃性、耐寒衝撃性、耐熱性の点から、1〜40質量%がより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物が更に他の熱可塑性樹脂を含む場合、その含有量は、熱可塑性樹脂組成物の流動性、得られる成形品の耐傷付き性、耐衝撃性、耐寒衝撃性、発色性、潤滑性、耐熱性等の物性バランスを良好に維持する観点から、グラフト共重合体(D)、グラフト共重合体(F)、メタクリル酸エステル樹脂(G)および必要に応じて含有されるスチレン系共重合体(H)の合計100質量部に対して40質量部以下が好ましい。
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、グラフト共重合体(D)、グラフト共重合体(F)、メタクリル酸エステル樹脂(G)および必要に応じて用いられるスチレン系共重合体(H)は、それぞれ1種のみを用いてもよく、物性や成分組成等の異なるものの2種以上を混合して用いてもよい。
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(D)とグラフト共重合体(F)とメタクリル酸エステル樹脂(G)と必要に応じて含有されるスチレン系共重合体(H)およびその他の熱可塑性樹脂や添加剤とを混合することにより得られる。
<作用効果>
以上説明した本発明の熱可塑性樹脂組成物にあっては、質量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)が特定の範囲内にあるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の存在下にビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたグラフト共重合体(D)と、ジエン系ゴム状重合体(E)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られたグラフト共重合体(F)と、メタクリル酸エステル樹脂(G)とを含み、熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)とジエン系ゴム状重合体(E)とが特定の平均粒子径であり、熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)とジエン系ゴム状重合体(E)とが特定の割合であるため、流動性が良好であり、また、耐傷付き性、発色性、耐衝撃性、耐寒衝撃性、潤滑性に優れる成形品を得ることができる。また、メタクリル酸エステル樹脂(G)として特定の共重合組成のものを用いたり、更にスチレン系共重合体(H)を配合することにより、耐熱性にも優れたものとすることができ、この場合においても、耐衝撃性を損なうことがない。
[成形品]
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を公知の成形方法によって成形加工して得られる。
成形方法としては、例えば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品は、耐傷付き性、発色性、耐衝撃性、耐寒衝撃性、潤滑性に優れ、更には耐熱性にも優れたものとすることができ、幅広い用途に有効に適用可能である。本発明の成形品の用途としては、車輌内外装部品、事務機器、家電、建材等が挙げられる。
以下、具体的に実施例を示す。ただし、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下に記載の「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
[測定・評価方法]
以下の実施例および比較例における各種測定および評価方法は、以下の通りである。
<質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)の測定方法>
GPC(GPC:Waters社製「GPC/V2000」、カラム:昭和電工社製「Shodex AT−G+AT−806MS」)を用い、o−ジクロロベンゼン(145℃)を溶媒として、ポリスチレン換算での質量平均分子量(Mw)、数平均分子量分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
<結晶化度の測定方法>
理学電機(株)製、広角X線回折装置RAD−RX型を用いて測定したX線回折スペクトルより求めた。
<平均粒子径の測定方法>
マイクロトラック(日機装社製「ナノトラック150」)を用い、測定溶媒として純水を用いて測定した体積平均粒子径(MV)を平均粒子径とした。
なお、オレフィン樹脂水性分散体(B)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(A)や、水性分散体に分散している架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)や、水性分散体に分散しているジエン系ゴム状重合体(E)の平均粒子径が、そのまま熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)や架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)やジエン系ゴム状重合体(E)の平均粒子径を示すことが、電子顕微鏡の画像解析によって確認されている。
<ゲル含有率の測定方法>
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の水性または溶媒分散体に希硫酸を添加して凝固させ、水洗、乾燥して得られる凝固粉試料[Cx]0.5gを、200mL、110℃のトルエン中に5時間浸漬し、次いで、200メッシュ金網にて濾過し、残渣を乾燥し、その乾燥物[Cy]の質量を測定し、下記式(1)から、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のゲル含有率を求めた。
ゲル含有率(%)=乾燥物質量[Cy](g)/凝固粉試料質量[Cx](g)
×100 …(1)
<グラフト率の測定方法>
グラフト共重合体(D)1gを80mLのアセトンに添加し、65〜70℃にて3時間加熱還流し、得られた懸濁アセトン溶液を遠心分離機(日立工機社製「CR21E」)にて14,000rpm、30分間遠心分離して、沈殿成分(アセトン不溶成分)とアセトン溶液(アセトン可溶成分)を分取した。そして、沈殿成分(アセトン不溶成分)を乾燥させてその質量(Y(g))を測定し、下記式(2)からグラフト率を算出した。なお、式(2)におけるYは、グラフト共重合体(D)のアセトン不溶成分の質量(g)、Xは、Yを求める際に用いたグラフト共重合体(D)の全質量(g)、ゴム分率は、グラフト共重合体(D)のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の固形分の含有割合である。
グラフト率(%)={(Y−X×ゴム分率)/(X×ゴム分率)}×100…(2)
<溶融混練1>
実施例および比較例に示す成分配合でグラフト共重合体(D)、グラフト共重合体(F)、メタクリル酸エステル樹脂(G)、および必要に応じて他の成分を混合し、30mmφの真空ベント付き2軸押出機(池貝社製「PCM30」)で、シリンダー温度200〜260℃、93.325kPa真空にて溶融混練を行い、熱可塑性樹脂組成物(1)を得た。また、必要に応じて溶融混練後に、ペレタイザー(創研社製「SH型ペレタイザー」)を用いてペレット化を行った。
<溶融混練2>
実施例および比較例に示す成分配合でグラフト共重合体(D)、グラフト共重合体(F)、メタクリル酸エステル樹脂(G)、および必要に応じて他の成分を混合した合計量100部に対して、カーボンブラック0.8部を混合し、30mmφの真空ベント付き2軸押出機(池貝社製「PCM30」)で、シリンダー温度200〜260℃、93.325kPa真空にて溶融混練を行い、熱可塑性樹脂組成物(2)を得た。また、必要に応じて溶融混練後に、ペレタイザー(創研社製「SH型ペレタイザー」)を用いてペレット化を行った。
<メルトボリュームレート(MVR)の測定>
熱可塑性樹脂組成物(1)について、ISO 1133規格にしたがい、230℃でMVRを測定した。なお、MVRは熱可塑性樹脂組成物の流動性の目安となる。
<射出成形1>
溶融混練して得られた熱可塑性樹脂組成物(1)のペレットを射出成形機(東芝機械社製「IS55FP−1.5A」)によりシリンダー温度200〜270℃、金型温度60℃の条件で、縦80mm、横10mm、厚さ4mmの成形品を成形し、シャルピー衝撃試験用成形品、荷重たわみ温度測定用成形品(成形品(Ma1))として用いた。
<射出成形2>
溶融混練して得られた熱可塑性樹脂組成物(2)のペレットを射出成形機(東芝機械社製「IS55FP−1.5A」)によりシリンダー温度200〜270℃、金型温度60℃の条件で、縦100mm、横100mm、厚さ3mmの成形品を成形し、発色性評価用成形品、耐傷付き性評価用成形品(成形品(Ma2))として用いた。
<射出成形3>
溶融混練して得られた熱可塑性樹脂組成物(1)のペレットを射出成形機(住友重機工業製「SG150−SYCAPM IV」)によってシリンダー温度200〜260℃、金型温度60℃の条件で、図2に示す試験片構造の成形品を成形し、潤滑性評価用成形品(成形品(Ma3))として用いた。
<耐衝撃性の評価:シャルピー衝撃試験>
成形品(Ma1)について、ISO 179規格にしたがい、23℃の条件でシャルピー衝撃試験(ノッチ付)を行い、シャルピー衝撃強度を測定した。
<耐寒衝撃性の評価:落球衝撃試験>
−30℃に温調した成形品(Ma1)について、JIS K7211にしたがい、落球衝撃強度を測定した。重さ230gの鋼球を10cmの高さから落下させ、割れなければ10cm毎に落下高さを高くして割れや亀裂発生の有無を確認した。試料3枚中、割れや亀裂が3枚とも発生しなかった落下高さを耐寒落球衝撃高さとした。耐寒落球衝撃高さが50cm以上のとき耐寒落球衝撃性に優れると判断できる。
<耐熱性の評価:荷重たわみ温度>
成形品(Ma1)について、ISO試験法75規格に準拠し、1.83MPa、4mm、フラットワイズ法で荷重たわみ温度(℃)を測定した。
<発色性の評価:明度L
成形品(Ma2)について、分光測色計(コニカミノルタオプティプス社製「CM−3500d」)を用いて明度Lを、SCE方式にて測定した。こうして測定されたLを「L(ma)」とする。Lが低いほど黒色となり、発色性が良好である。
<耐引っ掻き傷性の評価>
鉛筆硬度試験機を用い、750gの荷重で、3Hの硬度の鉛筆を成形品(Ma2)の表面に押しつけ、その状態で成形品(Ma2)を5cmほど移動させることによって、成形品(Ma2)の表面を鉛筆で引っ掻き、成形品(Ma2)に傷を付けた。傷を付けた成形品(Mb)の表面の明度Lを、上記発色性の評価におけると同様に分光測色計を用いて、SCE方式にて測定した。こうして測定されたLを「L(mb)」とする。
(耐引っ掻き傷性の判定1)
成形品(Mb)の傷の目立ちやすさの判定指標ΔL(mb−ma)を下記式(3)から算出した。ΔL(mb−ma)の絶対値が大きいほど傷が目立ちやすい。
ΔL(mb−ma)=L(mb)−L(ma) …(3)
ΔL(mb−ma)の絶対値が3.0以下のとき、傷が目立たず、成形品の意匠性を損なわない。
ΔL(mb−ma)の絶対値が3.0超〜7.0以下のとき、傷は目立ちにくく、成形品の意匠性を損なわない。
ΔL(mb−ma)の絶対値が7.0超のとき、傷が目立ち、成形品の意匠性を損なう。
(耐引っ掻き傷性の判定2)
成形品(Ma2)の傷の入りやすさの判定指標として、形状測定レーザーマイクロスコープ(キーエンス社製「VK−9700」)にて、上記の鉛筆硬度試験機で傷を付けた成形品(Mb)の10点平均粗さ(Rz jis)を測定した。Rz jisの値が大きいほど傷が入りやすい。
<耐擦り傷性の評価>
図1に示すように、先端部11が半球形に形成された棒状の治具10を用意し、先端部11に、ガーゼを8枚重ねた積層シート12を被せた。成形品(Ma2)13の表面に対して、棒状の治具10が直角になるように、積層シート12が被せられた先端部11を接触させ、先端部11を成形品(Ma2)13の表面において水平方向(図中矢印方向)に摺動させ、100回往復させた。その際、加える荷重は1kgとした。100回往復させた後、傷を付けた成形品(Mc)の表面の明度Lを、上記発色性の評価におけると同様に分光測色計を用いて、SCE方式にて測定した。こうして測定されたLを「L(mc)」とする。
(耐擦り傷性の判定)
成形品(Mc)の傷の目立ちやすさの判定指標ΔL(mc−ma)を下記式(4)から算出した。ΔL(mc−ma)の絶対値が大きいほど傷が目立ちやすい。
ΔL(mc−ma)=L(mc)−L(ma) …(4)
ΔL(mc−ma)の絶対値が3.0以下のとき、傷が目立たず、成形品の意匠性を損なわない。
ΔL(mc−ma)の絶対値が3.0超〜7.0以下のとき、傷は目立ちにくく、成形品の意匠性を損なわない。
ΔL(mc―ma)の絶対値が7.0超のとき、傷が目立ち、成形品の意匠性を損なう。
<潤滑性の評価>
(脱脂前)
成形品(Ma3)において、図2に示すリブ構造21aを有する試験片21および平面部分を有する試験片22を用い、荷重500gまたは1kgをかけながら往復運動を行ったときに、きしみ音が発生するか否かを調べ、下記基準で評価した。△以上を潤滑性があるとした。
◎:荷重500gと1kgのいずれでもきしみ音が発生しない。
○:荷重1kgの場合は小さなきしみ音が発生するが、荷重500gの場合は発生しな
い。
△:荷重500gと荷重1kgのいずれでも小さなきしみ音が発生する。
×:荷重500gと荷重1kgのいずれでもきしみ音が発生する。
(脱脂後)
成形品(Ma3)において、図2に示すリブ構造21aを有する試験片21および平面部分を有する試験片22を60℃にて10日間アニールした後、試験片21および試験片22の表面をイソプロピルアルコールで脱脂することによってブリード成分を取り除いた。脱脂後のきしみ音の発生を、脱脂前の潤滑性評価方法と同様にして調べ、下記基準で評価した。△以上を潤滑性の永続性があるとした。
◎:荷重500gと1kgのいずれでもきしみ音が発生しない。
○:荷重1kgの場合は小さなきしみ音が発生するが、荷重500gの場合は発生しな
い。
△:荷重500gと荷重1kgのいずれでも小さなきしみ音が発生する。
×:荷重500gと荷重1kgのいずれでもきしみ音が発生する。
[各成分]
以下の例では、下記のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)、オレフィン樹脂水性分散体(B)、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)、グラフト共重合体(D)、ジエン系ゴム状重合体(E)、グラフト共重合体(F)、メタクリル酸エステル樹脂(G)、スチレン系共重合体(H)を用いた。
<エチレン・α−オレフィン共重合体(A)>
(エチレン・プロピレン共重合体(A−1)の調製)
20L撹拌機付きステンレス重合槽を十分に窒素置換した後に、脱水精製したヘキサン10Lを添加し、8.0mmol/Lに調整したエチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C1.5・Cl1.5)のヘキサン溶液を、5L/hの量で連続的に1時間供給した後、さらに触媒として0.8mmol/Lに調整したVO(OC)Clのヘキサン溶液を5L/hの量で、ヘキサンを5L/hの量で連続的に供給した。一方、重合槽上部から、重合槽内の重合液が常に10Lになるように重合液を連続的に抜き出した。バブリング管を用いてエチレンを2000L/hの量で、プロピレンを1000L/hの量で、水素を90L/hの量で供給し、35℃で重合反応を行って、エチレン・プロピレン共重合体(A−1)を含む重合溶液を得た。
得られた重合溶液を、塩酸で脱灰した後に、メタノールに投入して析出させた後、乾燥させ、エチレン・プロピレン共重合体(A−1)を得た。エチレン・プロピレン共重合体(A−1)のポリマーの性状を表1−1に示す。
(エチレン・プロピレン共重合体(A−2)〜(A−5)の調製)
表1−1に示すように水素の供給量を変更した以外は、エチレン・プロピレン共重合体(A−1)と同様にして、エチレン・プロピレン共重合体(A−2)〜(A−5)を得た。エチレン・プロピレン共重合体(A−2)〜(A−5)のポリマーの性状を表1−1に示す。
(エチレン・プロピレン共重合体(A−6)の調製)
20L撹拌機付きステンレス重合槽を十分に窒素置換した後に、脱水精製したヘキサン10Lを添加し、プロピレン110L(標準状態)、水素800mLを添加した。40℃まで加熱した後に、全圧が0.6MPa[gage]となるようにエチレンで加圧した。内圧が0.6MPa[gage]になったところで、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)の1.0mM/mLヘキサン溶液10mLを窒素で圧入した。あらかじめ調製しておいた、トリフェニルカルベニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレートをホウ素換算で0.16mM、[ジメチル(t−ブチルアミド)(テトラメチル−η5−シクロペンタジエニル)シラン]チタンクロリドを0.0004mMの量で含むトルエン溶液30mLを、窒素で圧入し重合を開始した。その後、5分間、40℃になるように温度調整し、かつ圧力が0.6MPa[gage]となるようにエチレンの供給を行なった。重合開始5分後、メタノール50mLを挿入して重合を停止し、大気圧まで脱圧し、エチレン・プロピレン共重合体(A−6)を含む重合溶液を得た。
得られた重合溶液は、塩酸で脱灰した後に、メタノールに投入して析出させた後、乾燥させ、エチレン・プロピレン共重合体(A−6)を得た。エチレン・プロピレン共重合体(A−6)のポリマーの性状を表1−2に示す。
(エチレン・プロピレン共重合体(A−8)の調製)
触媒としてVO(OC)Clに代えてVClを用いた以外はエチレン・プロピレン共重合体(A−3)と同様にして、エチレン・プロピレン共重合体(A−8)を得た。エチレン・プロピレン共重合体(A−8)のポリマーの性状を表1−2に示す。
(エチレン・プロピレン共重合体(A−7)の調製)
エチレン・プロピレン共重合体(A−3)30部とエチレン・プロピレン共重合体(A−8)70部とを混合し、30mmφの真空ベント付き2軸押出機(池貝社製、「PCM30」)で200℃、93.325kPa真空にて溶融混練し、エチレン・プロピレン共重合体(A−7)を調製した。エチレン・プロピレン共重合体(A−7)のポリマーの性状を表1−2に示す。
Figure 0006459367
<オレフィン樹脂水性分散体(B)>
(オレフィン樹脂水性分散体(B−1)の調製)
エチレン・プロピレン共重合体(A−1)100部と、酸変性オレフィン重合体として無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学社製「三井ハイワックス 2203A」、質量平均分子量:2,700、酸価:30mg−KOH/g)20部と、アニオン系乳化剤としてオレイン酸カリウム5部とを混合した。
この混合物を2軸スクリュー押出機(池貝社製「PCM30」、L/D=40)のホッパーから4kg/hで供給し、該2軸スクリュー押出機のベント部に設けた供給口より、水酸化カリウム0.5部とイオン交換水2.4部を混合した水溶液を連続的に供給しながら、220℃に加熱して溶融混練して押出した。溶融混練物を2軸スクリュー押出機の先端に取り付けた冷却装置に連続的に供給し、90℃まで冷却した。そして、2軸スクリュー押出機先端より吐出させた固体を、80℃の温水中に投入し、連続的に分散させて、固形分濃度40%付近まで希釈して、オレフィン樹脂水性分散体(B−1)を得た。オレフィン樹脂水性分散体(B−1)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の平均粒子径を表2に示す。
(オレフィン樹脂水性分散体(B−2)〜(B−8)の調製)
表2に示すように、エチレン・プロピレン共重合体(A−1)をエチレン・プロピレン共重合体(A−2)〜(A−8)に変更した以外は、オレフィン樹脂水性分散体(B−1)の調製と同様にして、オレフィン樹脂水性分散体(B−2)〜(B−8)を得た。
各オレフィン樹脂水性分散体(B−2)〜(B−8)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の平均粒子径を表2に示す。
(オレフィン樹脂水性分散体(B−9)〜(B−16)の調製)
表2に示すように、乳化する際の水酸化カリウムの添加部数、イオン交換水の添加部数を変更した以外は、オレフィン樹脂水性分散体(B−3)と同様にして、オレフィン樹脂水性分散体(B−9)〜(B−16)を得た。
各オレフィン樹脂水性分散体(B−9)〜(B−16)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の平均粒子径を表2に示す。
Figure 0006459367
<架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)>
(架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−1)の調製)
オレフィン樹脂水性分散体(B−1)(固形分として100部)に固形分濃度が35%になるようにイオン交換水を加え、有機過酸化物としてt−ブチルクミルペルオキシド0.5部、多官能性化合物としてジビニルベンゼン1部を添加し、130℃で5時間反応させて、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−1)を調製した。架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−1)のゲル含有率、平均粒子径を表3−1に示す。
(架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−2)〜(C−20)の調製)
表3−1,3−2に示すようにオレフィン樹脂水性分散体(B)の種類とt−ブチルクミルペルオキシドの添加量を変更した以外は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−1)と同様にして、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−2)〜(C−20)を得た。架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−2)〜(C−20)のゲル含有率、平均粒子径を表3−1,3−2に示す。
(架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−21)の調製)
エチレン・α−オレフィン共重合体(A−3)100部に対し、有機過酸化物としてα,α’−ジ(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(「DtBPDIPB」と略記する。)0.5部と、ジビニルベンゼン1部とを混合し、30mmφの真空ベント付き2軸押出機(池貝社製、「PCM‐30」)で、220℃、93.325kPa真空にて溶融混練を行った後、細かく粉砕することで、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−21)を得た。架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−21)のゲル含有率、平均粒子径を表3−2に示す。
Figure 0006459367
<グラフト共重合体(D)>
(グラフト共重合体(D−1)の調製)
撹拌機付きステンレス重合槽に、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−1)(エチレン・プロピレン共重合体(A−1)の固形分として70部)を入れ、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−1)に固形分濃度が30%になるようにイオン交換水を加え、硫酸第一鉄0.006部、ピロリン酸ナトリウム0.3部およびフラクトース0.35部を仕込み、温度を80℃とした。スチレン23.4部、アクリロニトリル6.6部およびクメンヒドロペルオキシド0.6部を150分間連続的に添加し、重合温度を80℃に保ち乳化重合を行った。重合後、グラフト共重合体(D−1)を含む水性分散体に酸化防止剤を添加し、硫酸にて固形分の析出を行い、洗浄、脱水、乾燥の工程を経て、粉状のグラフト共重合体(D−1)を得た。グラフト共重合体(D−1)のグラフト率を測定したところ30%であった。結果を表4−1に示す。
(グラフト共重合体(D−2)〜(D−20)の調製)
表4−1,4−2に示すように架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の種類を変更した以外は、グラフト共重合体(D−1)と同様にして、グラフト共重合体(D−2)〜(D−20)を得た。グラフト共重合体(D−2)〜(D−20)のグラフト率を表4−1,4−2に示す。
(グラフト共重合体(D−21)の調製)
撹拌機付きステンレス重合槽に、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−21)70部、トルエン300部を仕込み、内容物を70℃で1時間撹拌して均一に溶解した。十分に窒素置換を行った後、スチレン23.4部、アクリロニトリル6.6部、t−ドデシルメルカプタン0.24部、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート0.22部を添加し、内温を110℃まで昇温し、4時間反応させた。その後、内温を120℃に昇温し、2時間反応させた。重合後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した。反応混合物を抜き出し、水蒸気蒸留によって未反応物と溶媒を留去した。30mmφの真空ベント付き2軸押出機(池貝社製「PCM30」)で220℃、93.325kPa真空にて、揮発分を実質的に脱揮させ、ペレット化し、グラフト共重合体(D−21)を得た。グラフト共重合体(D−21)のグラフト率を測定したところ26%であった。電子顕微鏡により、熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の平均粒子径を確認したところ、0.39μmであった。結果を表4−2に示す。
(グラフト共重合体(D−22)の調製)
表4−2に示すように架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)をオレフィン樹脂水性分散体(B−3)(エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の固形分として70部)に変更した以外は、グラフト共重合体(D−1)と同様にして、グラフト共重合体(D−22)を得た。グラフト共重合体(D−22)のグラフト率を表4−2に示す。
Figure 0006459367
<ジエン系ゴム状重合体(E)>
(ジエン系ゴム状重合体(E−1)の調製)
撹拌機を備えた耐圧容器に脱イオン水150部、ブタジエンモノマー100部、硬化脂肪酸カリ石鹸3.0部、有機スルホン酸ソーダ0.3部、ターシャルドデシルメルカプタン0.2部、過硫酸カリウム0.3部、及び水酸化カリウム0.14部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら温度を60℃に上げて重合を開始し、重合率65%のときに過硫酸カリウム0.1部を溶解した脱イオン水5部を上記耐圧容器に加えて重合温度を70℃に上げ、反応時間13時間、重合転化率95%で重合を完結し、平均粒子径0.03μm、固形分52.0%のジエン系ゴム状重合体(E−1)のラテックスを得た。
(ジエン系ゴム状重合体(E−2)〜(E−9)の調製)
ジエン系ゴム状重合体(E−1)のラテックスに、12%の酢酸水溶液を使用し、肥大化操作を行って、ジエン系ゴム状重合体(E−2)〜(E−9)のラテックスを得た。
<グラフト共重合体(F)>
(グラフト共重合体(F−1)の調製)
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器内に、イオン交換水200部(ポリブタジエンラテックス中の水も含む)、不均化ロジン酸カリウム0.3部(固形分)、硫酸第一鉄七水塩0.01部、ピロリン酸ナトリウム0.2部、結晶ブドウ糖0.5部を仕込み、完全に溶解した後に、ジエン系ゴム状重合体(E−1)のラテックスを固形分量として50部添加、混合した。
反応器内の内容物を撹拌しながら60℃まで昇温させ、スチレン39部、アクリロニトリル11部のビニル系単量体混合物(m2)を2時間かけて連続的に滴下、供給してグラフト重合させた。その間、反応器内温を60℃に保つようにジャケット温度を制御した。滴下終了後70℃まで昇温させ、さらに1時間保ってグラフト重合反応を完結させた。冷却後、酸化防止剤(ジラウリルチオジプロピオネート)を添加し、グラフト共重合体(F−1)のラテックスを得た。
得られたグラフト共重合体(F−1)ラテックスを、その1倍量の2.5%硫酸水溶液(80℃)中に撹拌下で投入し、さらに90℃で5分間保持して凝固させてグラフト共重合体(F−1)のスラリーを得た。そして、そのスラリーの水洗と脱水を2度繰り返した後、一晩70℃で静置し、乾燥して乳白色粉末のグラフト共重合体(F−1)を得た。
(グラフト共重合体(F−2)〜(F−9)の調製)
表5に示すようにジエン系ゴム状重合体(E)の種類を変更した以外は、グラフト共重合体(F−1)と同様にして、グラフト共重合体(F−2)〜(F−9)を得た。グラフト共重合体(F−2)〜(F−9)に用いたジエン系ゴム状重合体の平均粒子径を表5に示す。
Figure 0006459367
<メタクリル酸エステル樹脂(G)>
(メタクリル酸エステル樹脂(G−1)の調製)
撹拌機付きステンレス重合槽にイオン交換水150部、メタクリル酸メチル99部、アクリル酸メチル1部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2部、n−オクチルメルカプタン0.25部、カルシウムヒドロオキシアパタイト0.47部、アルケニルコハク酸カリウム0.003部を仕込んだ。重合槽の内温を75℃にして3時間反応させた後、90℃に昇温し1時間反応させた。内容物を抜き出し、遠心脱水機で洗浄し、乾燥させて粉状のメタクリル酸エステル樹脂(G−1)を得た。メタクリル酸エステル樹脂(G−1)に用いたビニル系単量体混合物(m3)のビニル系単量体組成を表6に示す。
(メタクリル酸エステル樹脂(G−2)の調製)
撹拌機付きステンレス重合槽にイオン交換水150部、メタクリル酸メチル82部、N−フェニルマレイミド12部、スチレン6部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2部、n−オクチルメルカプタン0.25部、ポリビニルアルコール0.7部を仕込んだ。重合槽の内温を75℃にして3時間反応させた後、90℃まで昇温し1時間反応させた。内容物を抜き出し、遠心脱水機で洗浄し、乾燥させて粉状のメタクリル酸エステル樹脂(G−2)を得た。メタクリル酸エステル樹脂(G−2)に用いたビニル系単量体混合物(m3)のビニル系単量体組成を表6に示す。
(メタクリル酸エステル樹脂(G−3)〜(G−4)の調製)
表6に示すようにビニル系単量体混合物(m3)のビニル系単量体の種類と量を変更した以外は、メタクリル酸エステル樹脂(G−2)と同様にして、メタクリル酸エステル樹脂(G−3)〜(G−4)を得た。
Figure 0006459367
<スチレン系共重合体(H)>
(スチレン系共重合体(H−1)の調製)
窒素置換した撹拌機付きステンレス重合槽に、イオン交換水120部、ポリビニルアルコール0.1部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.3部、アクリロニトリル25部、スチレン75部、t−ドデシルメルカプタン0.35部を仕込み、開始温度60℃として5時間反応させた後、120℃に昇温し、4時間反応させた。内容物を取り出し、スチレン系共重合体(H−1)を得た。
(スチレン系共重合体(H−2)の調製)
撹拌機付きステンレス重合槽に、イオン交換水150部、メタクリル酸メチル10部、アクリロニトリル22部、スチレン68部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2部、n−オクチルメルカプタン0.25部、カルシウムヒドロオキシアパタイト0.47部、アルケニルコハク酸カリウム0.003部を仕込み、内温を75℃まで昇温し、3時間反応させた。その後、90℃まで昇温し、60分間保持することで反応を完結させた。内容物を取り出し、遠心脱水機での洗浄、脱水を繰り返し、乾燥させてスチレン系共重合体(H−2)を得た。
(スチレン系共重合体(H−3)の調製)
撹拌機付きステンレス重合槽に、イオン交換水150部、N−フェニルマレイミド30部、アクリロニトリル15部、スチレン50部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2部、n−オクチルメルカプタン0.25部、カルシウムヒドロオキシアパタイト0.47部、アルケニルコハク酸カリウム0.003部を仕込み、内温を75℃まで昇温し、3時間反応させた。その後、90℃まで昇温し、60分間保持することで反応を完結させた。内容物を取り出し、遠心脱水機での洗浄、脱水を繰り返し、乾燥させてスチレン系共重合体(H−3)を得た。
スチレン系共重合体(H−1)〜(H−3)に用いたビニル系単量体混合物(m4)のビニル系単量体組成を表7に示す。
Figure 0006459367
<他の熱可塑性樹脂>
ポリカーボネート:三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ノバレックス7025R」
[実施例1]
グラフト共重合体(D−2)10部、グラフト共重合体(F−5)14部、メタクリル酸エステル樹脂(G−2)76部を混合し、30mmφの真空ベント付き2軸押出機(池貝社製「PCM30」)で240℃、93.325kPa真空にて溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を調製した。熱可塑性樹脂組成物のMVRを表8に示す。
熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、各種成形品を成形し、耐衝撃性、耐寒衝撃性、発色性、耐引っ掻き傷性、耐擦り傷性、耐熱性、潤滑性(きしみ音)を評価した。結果を表8に示す。
[実施例2〜48、比較例1〜14]
樹脂組成物配合を表8〜13に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を調製し、MVRを測定した。
熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、各種成形品を成形し、耐衝撃性、耐寒衝撃性、発色性、耐引っ掻き傷性、耐擦り傷性、耐熱性、潤滑性(きしみ音)を評価した。結果を表8〜13に示す。
なお、以下の表8〜表13中の「(A)成分または(C)成分の割合(%)」とは、熱可塑性樹脂組成物に含まれる、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)とジエン系ゴム状重合体(E)の合計100質量%に対する、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の含有率(質量%)を意味する。
また、以下の表8〜表13中の「ゴム成分の割合(%)」とは、熱可塑性樹脂組成物100質量%中の、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)とジエン系ゴム状重合体(E)の合計の含有量(質量%)を意味する。
Figure 0006459367
Figure 0006459367
Figure 0006459367
Figure 0006459367
Figure 0006459367
Figure 0006459367
以上の結果から明らかなように、実施例1〜48の熱可塑性樹脂組成物は流動性に優れていた。また、実施例1〜48で得られた成形品は、潤滑性(きしみ音)、耐衝撃性、耐寒衝撃性、耐熱性、発色性、耐引っ掻き傷性、耐擦り傷性が優れていた。
したがって、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、流動性が優れており、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いると、潤滑性(きしみ音)、耐衝撃性、耐寒衝撃性、発色性、耐引っ掻き傷性、耐擦り傷性に優れた成形品が得られ、車輌内外装部品、事務機器、家電、建材等の用途に好適に適用できることがわかる。
一方、比較例1〜14の結果から、本発明の範囲外のものは、潤滑性(きしみ音)の特性が得られなかったり、成形品の耐衝撃性、耐寒衝撃性、耐擦り傷性が低かったりして、物性に劣ることが分かる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品は、車輌内外装部品、事務機器、家電、建材等として有用である。
10 治具
12 積層シート
13 成形品
21,22 試験片

Claims (13)

  1. 質量平均分子量(Mw)が17×10〜35×10であり、分子量分布(Mw/Mn)が1〜3であるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の存在下にビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたグラフト共重合体(D)と、ジエン系ゴム状重合体(E)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られたグラフト共重合体(F)と、メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(m3)を重合して得られたメタクリル酸エステル樹脂(G)とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、
    該熱可塑性樹脂組成物は更に芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体混合物(m4)を重合してなるスチレン系共重合体(H)を含有していてもよく、
    熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(D)に含まれるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の平均粒子径が0.20μm〜0.60μmであり、
    熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(F)に含まれるジエン系ゴム状重合体(E)の平均粒子径が0.05μm〜0.18μmであり、
    エチレン・α−オレフィン共重合体(A)およびジエンゴム状重合体(E)の合計100質量%のうち、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の割合が15〜85質量%であり、ジエン系ゴム状重合体(E)の割合が85〜15質量%である熱可塑性樹脂組成物であり、
    該ビニル系単量体混合物(m1)は、芳香族ビニル化合物65〜82質量%と、シアン化ビニル化合物18〜35質量%(ビニル系単量体混合物(m1)100質量%)を含み、
    ビニル系単量体混合物(m2)は、 芳香族ビニル化合物65〜82質量%と、シアン化ビニル化合物18〜35質量%(ビニル系単量体混合物(m2)100質量%)を含み、
    該熱可塑性樹脂組成物におけるグラフト共重合体(D)およびグラフト共重合体(F)の合計の含有量は、グラフト共重合体(D)、グラフト共重合体(F)、メタクリル酸エステル樹脂(G)および必要に応じて含有されるスチレン系共重合体(H)の合計100質量%中5〜54.9質量%であり、
    該熱可塑性樹脂組成物におけるメタクリル酸エステル樹脂(G)の含有量は、グラフト共重合体(D)、グラフト共重合体(F)、メタクリル酸エステル樹脂(G)および必要に応じて含有されるスチレン系共重合体(H)の合計100質量%中95〜38質量%である、熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)が架橋処理した架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のゲル含有率が35〜75質量%であることを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)は、前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)、または前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を水性媒体に分散させてなり、該エチレン・α−オレフィン共重合体(A)100質量部に対して乳化剤1〜8質量部と、酸変性オレフィン重合体1〜40質量部とを含むオレフィン樹脂水性分散体(B)に、有機過酸化物を添加して加熱することにより得られることを特徴とする請求項2又は3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、該エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を水性媒体に分散させてなり、該エチレン・α−オレフィン共重合体(A)100質量部に対して乳化剤1〜8質量部と、酸変性オレフィン重合体1〜40質量部とを含むオレフィン樹脂水性分散体(B)として、前記ビニル系単量体混合物(m1)との重合に供されることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 前記エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の全構成単位100質量%中のエチレン単位の含有率が45〜65質量%で、結晶化率が0〜30%であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  7. 前記グラフト共重合体(D)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)50〜80質量%の存在下にビニル系単量体混合物(m1)20〜50質量%(ただし、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)とビニル系単量体混合物(m1)との合計で100質量%)を重合して得られた、グラフト率20〜100質量%のグラフト共重合体であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  8. 前記グラフト共重合体(F)は、ジエン系ゴム状重合体(E)20〜80質量%の存在下にビニル系単量体混合物(m2)20〜50質量%(ただし、ジエン系ゴム状重合体(E)とビニル系単量体混合物(m2)との合計で100質量%)を重合して得られたグラフト共重合体であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  9. 前記ビニル系単量体混合物(m3)100質量%中に、メタクリル酸エステルを50〜100質量%含むことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  10. 前記ビニル系単量体混合物(m3)100質量%中に、メタクリル酸エステルを50〜94質量%、マレイミド系化合物を5〜49質量%、芳香族ビニル化合物を1〜45質量%含むことを特徴とする請求項9に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  11. 熱可塑性樹脂組成物100質量%中、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)およびジエン系ゴム状重合体(E)の合計の含有量が5〜30質量%であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  12. 前記グラフト共重合体(D)、グラフト共重合体(F)、メタクリル酸エステル樹脂および必要に応じて含有されるスチレン系共重合体(H)の合計100質量%中、グラフト共重合体(D)およびグラフト共重合体(F)の合計の含有量が5〜40質量%であり、メタクリル酸エステル樹脂(G)の含有量が95〜60質量%であり、スチレン系共重合体(H)の含有量が0〜40質量%であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  13. 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
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