JP6218319B2 - 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents
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Description
・直射日光にさらされても変色しにくいこと(耐候性)。
・塗装と同等の良好な発色性を有すること。
・傷が付かない、または傷が目立たないこと(耐傷付き性)。
発色性の良好な成形品としては、透明性の高い樹脂材料を用いたものが知られている。
耐傷付き性の良好な成形品としては、ゴム質重合体の割合を低くして成形品の表面を硬くしたもの、潤滑剤(シリコーンオイル、オレフィンワックス等)を添加して成形品の表面の滑り性を良くしたもの等が知られている。
(1)ゴム質重合体の存在下に(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分を重合して得られたグラフト共重合体の単独、または該グラフト共重合体と(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分の(共)重合体との混合物からなるゴム強化熱可塑性樹脂と、(メタ)アクリル酸エステルおよびマレイミド系化合物の共重合体とを含み、ゴム強化熱可塑性樹脂と共重合体との屈折率差が小さい熱可塑性樹脂組成物(特許文献1)。
(2)スチレン系エラストマーであるゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体混合物を重合して得られたグラフト共重合体と、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を重合して得られたスチレン系樹脂とを含み、グラフト共重合体とスチレン系樹脂との屈折率差が小さい熱可塑性樹脂組成物(特許文献2)。
(3)ゴム質重合体の存在下に芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体混合物を重合して得られたグラフト共重合体と、硬質樹脂とを含み、かつゴム質重合体の割合を低くした熱可塑性樹脂組成物(特許文献3)。
(4)エチレン−プロピレン系ゴムに芳香族ビニル系化合物およびシアン化ビニル系化合物を重合してなるグラフト重合体(AES樹脂等)と、アクリル酸エステル系ゴムに芳香族ビニル系化合物およびシアン化ビニル系化合物を重合してなるグラフト重合体(ASA樹脂等)と、マレイミド系共重合体とを含み、樹脂組成物中のゴム成分の含有量と、エチレン−プロピレン系ゴムとアクリル酸エステル系ゴムの比率を特定範囲にした車輌外装用樹脂組成物(特許文献4)。
(3)の熱可塑性樹脂組成物を用いた場合、成形品の表面の硬度が上がるために引っ掻き傷に対する耐傷付き性は改良されるものの、ゴム質重合体の割合が低くなるために成形品の衝撃強度が低下する。
(4)の車輌外装用樹脂組成物を用いた場合、成形品の発色性は向上する。しかし、AES樹脂とASA樹脂を併用した場合、AES樹脂のみを用いた場合に比べて成形品の耐衝撃性が劣る。
このように、成形品の耐衝撃性と、発色性(透明性)および耐傷付き性とを両立させることは困難であり、改良が求められている。
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いたものである。
本発明の成形品は、耐傷付き性、発色性、透明性、耐衝撃性に優れる。
「構成単位」とは、単量体が重合することによって形成された単量体分子から構成される単位を意味する。
「ブロック」とは、重合体の一部で、複数の構成単位からなり、その隣接する部分には存在しない特徴を少なくとも1種有するものを意味する。
「主体とする」とは、1つのブロックにおける特定の構成単位の割合が、該ブロックを構成するすべての構成単位のうち50モル%以上であることを意味する。
「水素添加物」とは、重合体中の不飽和結合の少なくとも一部に水素添加したものを意味する。
「水性分散体」とは、樹脂成分を水性媒体に分散させたものを意味する。
「水性媒体」とは、水、または水溶性有機溶媒を含む水を意味する。
「明度(L*)」とは、JIS Z 8729において採用されているL*a*b*表色系における色彩値のうちの明度の値(L*)を意味する。
「SCE方式」とは、JIS Z 8722に準拠した分光測色計を用い、光トラップによって正反射光を除去して色を測る方法を意味する。
「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
「成形品」とは、熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものを意味する。
「耐傷付き性」とは、爪等の硬く尖ったもので成形品の表面を引っ掻いたときに生じる傷(引っ掻き傷)に対する傷付きにくさ(耐引っ掻き傷性)および軍手、ガーゼ、布等の柔らかいもので成形品の表面を擦ったときに生じる傷(擦り傷)に対する傷付きにくさ(耐擦り傷性)の両方を意味する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(D)とグラフト共重合体(F)とメタクリル酸エステル樹脂(G)とを含む。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、スチレン系共重合体(H)、他の熱可塑性樹脂、各種添加剤を含んでいてもよい。
(α)架橋ゴム質重合体(C)の存在下に、ビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたもの。
(β)ゴム質重合体(A)を架橋処理して得られた架橋ゴム質重合体(C)。
(γ)芳香族ビニル系樹脂水性分散体(B)中のゴム質重合体(A)を架橋処理して得られた架橋ゴム質重合体(C)を含む水性分散体。
(δ)架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られたもの。
(ε)ビニル系単量体混合物(m3)を重合して得られたもの。
(ζ)ビニル系単量体混合物(m4)を重合して得られたもの。
以下、各成分((A)〜(H)、(m1)〜(m4)等)について説明する。
ゴム質重合体(A)は、芳香族ビニル化合物に基づく構成単位を主体とするブロックと共役ジエン系化合物に基づく構成単位を主体とするブロックとを有するブロック共重合体の水素添加物である。
共役ジエン系化合物に基づく構成単位を主体とするブロックにおける共役ジエン系化合物に基づく構成単位の割合は、50モル%以上であり、本発明の効果を十分に発揮する点からは、100モル%が特に好ましい。
水添率は、実施例に記載された方法によって測定される。
ランダム化剤としては、エーテル化合物(ジメチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等)、アミン化合物(トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、環状第三級アミン等)、リン系化合物(トリフェニルホスフィン、ヘキサメチルホスホロアミド等)等が挙げられる。
重合温度は、通常、−10〜150℃である。
水素添加触媒としては、金属(ニッケル、白金、パラジウム、ルテニウム等)を担体(カーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等)に担持させた担持型不均一系触媒、金属(ニッケル、コバルト、鉄、クロム等)の有機酸塩と還元剤(有機アルミニウム等)とを組み合わせたチーグラー型均一触媒が挙げられる。
芳香族ビニル系樹脂水性分散体(B)は、ゴム質重合体(A)を水性媒体に分散させたものである。
乳化剤の添加量は、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱着色を抑制でき、芳香族ビニル系樹脂水性分散体(B)の粒子径制御が容易である点から、乳化剤としてオレイン酸カリウムを用いる場合、ゴム質重合体(A)100質量部に対して1〜15質量部が好ましい。
ゴム質重合体(A)と酸変性オレフィン重合体との混合方法は、特に限定されない。混合方法としては、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機を用いた溶融混練法等が挙げられる。
芳香族ビニル系樹脂水性分散体(B)に分散しているゴム質重合体(A)の体積平均粒子径が、そのまま水性分散体中の架橋ゴム質重合体(C)の体積平均粒子径やグラフト共重合体(D)中の架橋ゴム質重合体(C)の体積平均粒子径を示すことは、電子顕微鏡写真の画像処理によって確認している。
架橋ゴム質重合体(C)は、ゴム質重合体(A)を架橋処理したものである。ゴム質重合体(A)を架橋処理することによって、成形品の耐衝撃性、発色性、透明性、耐傷付き性がさらに優れる。
ゲル含有率は、実施例に記載された方法によって測定される。
有機過酸化物および多官能性化合物の添加量、加熱温度、加熱時間等を調整することによって、架橋ゴム質重合体(C)のゲル含有率を調整できる。
加熱温度は、有機過酸化物の種類によって異なる。加熱温度は、有機過酸化物の10時間半減期温度の−5℃〜+30℃が好ましい。
加熱時間は、3〜15時間が好ましい。
水性分散体に分散している架橋ゴム質重合体(C)の体積平均粒子径が、そのままグラフト共重合体(D)中の架橋ゴム質重合体(C)の体積平均粒子径を示すことは、電子顕微鏡写真の画像処理によって確認している。
ビニル系単量体混合物(m1)は、少なくとも芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含む単量体混合物である。
芳香族ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体混合物(m1)100質量%のうち60〜82質量%が好ましく、73〜80質量%がより好ましく、75〜80質量%がさらに好ましい。芳香族ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、成形品の発色性、透明性、耐衝撃性がさらに優れる。
シアン化ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体混合物(m1)100質量%のうち18〜40質量%が好ましく、20〜27質量%がより好ましく、20〜25質量%がさらに好ましい。シアン化ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、成形品の発色性、透明性、耐衝撃性がさらに優れる。
他の単量体としては、アクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等)、メタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等)、マレイミド系化合物(N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等)等が挙げられる。他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グラフト共重合体(D)は、架橋ゴム質重合体(C)の存在下に、ビニル系単量体混合物(m1)を重合することによって得られる。
グラフト率は、実施例に記載された方法によって測定される。
有機過酸化物としては、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。
レドックス系開始剤としては、クメンヒドロペルオキシドと、硫酸第一鉄と、ピロリン酸ナトリウムと、デキストロースとからなるものがより好ましい。
連鎖移動剤の添加方法は、一括、分割、連続のいずれでもよい。
連鎖移動剤の添加量は、ビニル単量体混合物(m1)100質量部に対して2.0質量部以下が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸スルホン酸塩、リン酸系塩、脂肪酸塩、アミノ酸誘導体塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、通常のポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アニオン部にカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等を有し、カチオン部にアミン塩、第4級アンモニウム塩等を有するものが挙げられる。
乳化剤の添加量は、ビニル単量体混合物(m1)100質量部に対して10質量部以下が好ましい。
析出剤としては、例えば、硫酸、酢酸、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の水溶液が挙げられる。析出剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グラフト共重合体(D)を含む水性分散体に、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。
架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E)は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位と、架橋剤に由来する単位およびグラフト交叉剤に由来する単位のいずれか一方または両方を有する共重合体である。架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E)の水性分散体は、ポリブタジエン等の他のゴム成分の水性分散体を含んでもよい。
架橋剤としては、ジメタクリレート系化合物、具体例には、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
グラフト交叉剤としては、アリル化合物、具体的には、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル等が挙げられる。
水性分散体中の架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E)の体積平均粒子径を制御する方法としては、乳化剤の種類または使用量を調整する方法等が挙げられる。
ビニル系単量体混合物(m2)は、少なくとも芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含む単量体混合物である。
芳香族ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体混合物(m2)100質量%中65〜82質量%が好ましく、73〜80質量%がより好ましく、75〜80質量%がさらに好ましい。芳香族ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れる。
シアン化ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体混合物(m2)100質量%中18〜35質量%が好ましく、20〜27質量%がより好ましく、20〜25質量%がさらに好ましい。シアン化ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れる。
他の単量体としては、例えば、メタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ペンジル、メタクリル酸フェニル等)、マレイミド系化合物(N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−シクロアルキルマレイミド(N−シクロヘキシルマレイミド等)、N−アリールマレイミド(N−フェニルマレイミド、N−アルキル置換フェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド等)、N−アラルキルマレイミド等)、アクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等)等が挙げられる。他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グラフト共重合体(F)は、架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E)の存在下にビニル系単量体(m2)を重合することによって得られる。
グラフト重合終了後にグラフト共重合体(F)を含む水性分散体に、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。
ビニル系単量体混合物(m3)は、少なくともメタクリル酸エステルを必須成分として含み、マレイミド系化合物、芳香族ビニル化合物、アクリル酸エステル、およびメタクリル酸エステルと共重合可能な他のビニル系単量体を任意成分として含む単量体混合物である。
メタクリル酸エステルの含有率が50〜94質量%、マレイミド系化合物の含有率が5〜49質量%、芳香族ビニル化合物の含有率が1〜45質量%の範囲内であれば、成形品の耐引っ掻き傷性、発色性、透明性、耐衝撃性、耐熱性がさらに優れる。
メタクリル酸エステル樹脂(G)は、ビニル系単量体混合物(m3)を重合することによって得られる。ただし、スチレン系共重合体(H)を除く。
重合法は、限定されない。重合法としては、公知の重合法(乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法等)が挙げられる。
乳化剤としては、通常の乳化重合用乳化剤(ロジン酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)が挙げられる。
重合開始剤としては、有機、無機の過酸化物系開始剤が挙げられる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、テルペン類等が挙げられる。
析出法としては、水性分散体からグラフト共重合体(D)を回収するときと同様の方法を採用できる。
懸濁剤としては、トリカルシウムフォスファイト、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
懸濁助剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
重合開始剤としては、有機ペルオキシド類が挙げられる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、テルペン類等が挙げられる。
ビニル系単量体混合物(m4)は、少なくとも芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含む単量体混合物である。
芳香族ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体混合物(m4)100質量%のうち15〜95質量%が好ましい。芳香族ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、成形品の耐衝撃性がさらに向上する。
シアン化ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体混合物(m4)100質量%のうち5〜85質量%が好ましい。シアン化ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、成形品の耐衝撃性がさらに向上する。
メタクリル酸エステル、マレイミド系化合物としては、ビニル系単量体混合物(m3)において例示したものが挙げられる。
スチレン系共重合体(H)は、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体混合物(m4)を重合して得られる。
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド(ナイロン)等が挙げられる。
各種添加剤としては、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、顔料、充填剤、シリコーンオイル、パラフィンオイル等が挙げられる。
架橋ゴム質重合体(C)の割合は、架橋ゴム質重合体(C)および架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E)の合計(100質量%)のうち、15〜85質量%であり、30〜70質量%が好ましい。
架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E)の割合は、架橋ゴム質重合体(C)および架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E)の合計(100質量%)のうち、85〜15質量%であり、30〜70質量%が好ましい。
架橋ゴム質重合体(C)の割合および架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E)の割合が前記範囲内であれば、少ないゴム含有量で成形品の耐衝撃性を発現することができ、さらに、成形品の耐傷付き性、発色性、透明性にも優れる。
熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(D)とグラフト共重合体(F)とメタクリル酸エステル樹脂(G)と、必要に応じてスチレン系共重合体(H)とを混合することにより得られる。
以上説明した本発明の熱可塑性樹脂組成物にあっては、芳香族ビニル化合物に基づく構成単位を主体とするブロックと共役ジエン系化合物に基づく構成単位を主体とするブロックとを有するブロック共重合体の水素添加物であるゴム質重合体(A)を架橋処理した架橋ゴム質重合体(C)の存在下に、ビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたグラフト共重合体(D)と;架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られたグラフト共重合体(F)と;メタクリル酸エステル樹脂(G)とを含み;熱可塑性樹脂組成物中の架橋ゴム質重合体(C)と架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E)とが特定の体積平均粒子径であり;熱可塑性樹脂組成物中の架橋ゴム質重合体(C)と架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E)とが特定の割合であるため、流動性が良好であり、また、耐傷付き性、発色性、透明性、耐衝撃性に優れる成形品を得ることができる。また、成形品に耐熱性を付与しても、耐衝撃性を損なうことがない。
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を公知の成形方法によって成形加工して得られる。
成形方法としては、例えば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
成形品の用途としては、車輌内装部品、車輌外装部品、事務機器、家電、建材等が挙げられる。
以下に記載の「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
以下の実施例および比較例における各種測定および評価方法は、以下の通りである。
水素添加前のブロック共重合体をクロロホルムに溶解した後、ヨウ化カリウムによってヨウ素価を測定した。また、水素添加後のゴム質重合体(A)をクロロホルムに溶解した後、ヨウ化カリウムによってヨウ素価を測定した。下記式(1)から水添率を算出した。
水添率(%)=100−(ゴム質重合体(A)のヨウ素価/ブロック共重合体のヨウ素価×100) ・・・(1)
マイクロトラック(日機装社製、「ナノトラック150」)を用い、測定溶媒として純水を用いて、芳香族ビニル系樹脂水性分散体または他のゴム質重合体水性分散体中のゴム質重合体の体積平均粒子径(MV)を測定した。
架橋ゴム質重合体の水性または溶媒分散体を希硫酸にて凝固させ、水洗乾燥して得られる凝固粉試料[D1]0.5gを、200mL、110℃のトルエン中に5時間浸漬し、次いで、200メッシュ金網にて濾過し、残渣を乾燥し、その乾燥物[D2]の質量を測定し、下記式(2)から架橋ゴム質重合体のゲル含有率を算出した。
ゲル含有率(%)=乾燥物質量[D2](g)/凝固粉試料質量[D1](g)×100 ・・・(2)
グラフト共重合体の1gを80mLのアセトンに添加し、65〜70℃にて3時間加熱還流し、得られた懸濁アセトン溶液を遠心分離機(日立工機社製、「CR21E」)にて14,000rpm、30分間遠心分離して、沈殿成分(アセトン不溶成分)とアセトン溶液(アセトン可溶成分)を分取した。そして、沈殿成分(アセトン不溶成分)を乾燥させてその質量(Y(g))を測定し、下記式(3)からグラフト率を算出した。なお、式(3)におけるYは、グラフト共重合体のアセトン不溶成分の質量(g)、XはYを求める際に用いたグラフト共重合体(D)の全質量(g)、ゴム分率は、グラフト共重合体中のゴム成分(架橋ゴム質重合体(C)、ゴム質重合体(A)等)の固形分換算での含有割合である。
グラフト率(%)={(Y−X×ゴム分率)/X×ゴム分率}×100 ・・・(3)
グラフト共重合体と硬質樹脂を混合し、30mmφの真空ベント付き2軸押出機(池貝社製、「PCM30」)で、シリンダー温度200〜260℃、93.325kPa真空にて溶融混練を行い、熱可塑性樹脂組成物(1)を得た。また、必要に応じて溶融混練後に、ペレタイザー(創研社製、「SH型ペレタイザー」)を用いてペレット化を行った。
グラフト共重合体と硬質樹脂との合計量100部に対して、カーボンブラック(三菱化学社製、「三菱カーボンブラック#960」)0.5部を加えて混合し、30mmφの真空ベント付き2軸押出機(池貝社製、「PCM30」)で、シリンダー温度200〜260℃、93.325kPa真空にて溶融混練を行い、熱可塑性樹脂組成物(2)を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物(2)について、ペレタイザー(創研社製、「SH型ペレタイザー」)を用いてペレット化を行った。
熱可塑性樹脂組成物(1)について、ISO 1133規格にしたがいMVRを測定した。なお、MVRは熱可塑性樹脂組成物の流動性の目安となる。
熱可塑性樹脂組成物(1)のペレットを、射出成形機(東芝機械社製、「IS55FP−1.5A」)を用いてシリンダー温度200〜260℃、金型温度60℃の条件で、縦80mm、横10cm、厚さ4mmの成形品(Ma1)に成形した。成形品(Ma1)をシャルピー衝撃試験用成形品として用いた。
熱可塑性樹脂組成物(1)のペレットを、射出成形機(東芝機械社製、「IS55FP−1.5A」)を用いてシリンダー温度200〜260℃、金型温度60℃の条件で、縦10cm、横10cm、厚さ2mmの平板(成形品(Ma2))に成形した。成形品(Ma2)を透明性評価用成形品として用いた。
熱可塑性樹脂組成物(2)のペレットを、射出成形機(東芝機械社製、「IS55FP−1.5A」)を用いてシリンダー温度200〜260℃、金型温度60℃の条件で、縦10cm、横10cm、厚さ2mmの黒着色平板(成形品(Ma3))に成形した。成形品(Ma3)を発色性評価用成形品、耐引っ掻き傷性評価用成形品、耐擦り傷性評価用成形品として用いた。
成形品(Ma1)について、ISO試験法75規格に準拠し、1.83MPa、4mm、フラットワイズ法で荷重たわみ温度(℃)を測定した。
成形品(Ma1)について、ISO 179規格にしたがい、23℃の条件でシャルピー衝撃試験(ノッチ付)を行い、シャルピー衝撃強度を測定した。
成形品(Ma3)について、分光測色計(コニカミノルタオプティクス社製、「CM−3500d」)を用い、d/8(拡散照明/8度受光方式)光学系で、明度L*をSCE方式にて測定した。こうして測定されたL*を「L*(ma)」とする。L*が低いほど発色性に優れることを意味する。
成形品(Ma2)について、Hazeメーターを用い、曇価(Haze)を測定した。曇価が低いほど、透明性が高いことを意味する。曇価が50%未満であれば、透明性に優れ、曇価が25%未満であれば、透明性が充分に優れる。
鉛筆硬度試験機を用い、7.35Nの荷重で、3Hの硬度の鉛筆を成形品(Ma3)の表面に押しつけ、その状態で成形品(Ma3)を5cmほど移動させることによって、成形品(Ma3)の表面を鉛筆で引っ掻き、成形品(Ma3)に傷を付けた。傷を付けた成形品(Mb)の表面の明度L*を、分光測色計を用いて、SCE方式にて測定した。こうして測定されたL*を「L*(mb)」とする。
ΔL*(mb−ma)=L*(mb)−L*(ma) ・・・(4)
ΔL*(mb−ma)の絶対値が3.0超〜7.0以下のとき、傷は目立ちにくく、成形品の意匠性を損なわない。
ΔL*(mb−ma)の絶対値が7.0超のとき、傷が目立ち、成形品の意匠性を損なう。
図1に示すように、先端部11が半球形に形成された棒状の治具10を用意し、先端部11に、ガーゼを8枚重ねた積層シート12を被せた。成形品(Ma3)13の表面に対して、棒状の治具10が直角になるように、積層シート12が被せられた先端部11を接触させ、先端部11を成形品(Ma3)13の表面において水平方向(図中矢印方向)に摺動させ、100回往復させた。その際、加える荷重は9.8Nとした。100回往復させた後、傷を付けた成形品(Mc)の表面の明度L*を、分光測色計を用いて、SCE方式にて測定した。こうして測定されたL*を「L*(mc)」とする。
ΔL*(mc−ma)=L*(mc)−L*(ma)・・・(5)
ΔL*(mc−ma)の絶対値が3.0超〜7.0以下のとき、傷は目立ちにくく、成形品の意匠性を損なわない。
ΔL*(mc―ma)の絶対値が7.0超のとき、傷が目立ち、成形品の意匠性を損なう。
以下の例では、下記のゴム質重合体(A)、芳香族ビニル系樹脂水性分散体(B)、架橋ゴム質重合体(C)、グラフト共重合体(D)、架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E)、グラフト共重合体(F)、メタクリル酸エステル樹脂(G)、スチレン系共重合体(H)を用いた。
(ゴム質重合体(A−1))
オートクレーブ中に、脱気、脱水したシクロヘキサン400部、スチレン2部、テトラヒドロフラン0.05部、n−ブチルリチウム0.04部を投入し、60℃で4時間重合し、さらに、イソプレン96部を加え、60℃で4時間重合し、最後にスチレン2部を加え、60℃で4時間重合した。得られた活性重合体をメタノールで失活させ、重合体溶液をジャケット付きの反応器に移し、水素添加触媒として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.15部、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド0.07部、n−ブチルリチウム0.15部、エチルアルミニウムクロライド0.28部を添加し、100℃で0.98MPaの水素ガス圧力にて1時間水素添加反応を行った。スチームストリッピングにより溶媒を除去し、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(以下、SISと記す。)の水素添加物であるゴム質重合体(A−1)を得た。結果を表1に示す。
スチレンの仕込量を変えた以外は、ゴム質重合体(A−1)と同様にしてゴム質重合体(A−2)〜(A−13)を得た。結果を表1、表2に示す。
オートクレーブ中に、脱気、脱水したシクロヘキサン400部、スチレン15部、テトラヒドロフラン0.05部、n−ブチルリチウム0.04部を投入し、60℃で4時間重合し、さらに、1,3−ブタジエン70部を加え、60℃で4時間重合し、最後にスチレン15部を加え、60℃で4時間重合した。得られた活性重合体をメタノールで失活させ、重合体溶液をジャケット付きの反応器に移し、水素添加触媒として、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.15部、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド0.07部、n−ブチルリチウム0.15部、エチルアルミニウムクロライド0.28部を添加し、100℃で0.98MPaの水素ガス圧力にて1時間水素添加反応を行った。スチームストリッピングにより溶媒を除去し、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(以下、SBSと記す。)の水素添加物であるゴム質重合体(A−14)を得た。結果を表2に示す。
オートクレーブ中に、脱気、脱水したシクロヘキサン400部、スチレン15部、テトラヒドロフラン0.05部、n−ブチルリチウム0.04部を投入し、60℃で4時間重合し、さらに、イソプレン70部を加え、60℃で4時間重合し、最後にスチレン15部を加え、60℃で4時間重合した。得られた活性重合体をメタノールで失活させ、重合体溶液を得た。スチームストリッピングにより溶媒を除去し、SISである他のゴム質重合体(A’−15)を得た。結果を表2に示す。
イソプレンを1,3−ブタジエンに変えた以外は、他のゴム質重合体(A’−15)と同様にしてSBSである他のゴム質重合体(A’−16)を得た。結果を表2に示す。
撹拌機付き20Lステンレス重合槽を十分に窒素置換した後に、脱水精製したヘキサン10Lを添加し、8.0mmol/Lに調製したエチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C2H5)1.5・Cl1.5)のヘキサン溶液を、5L/hの量で連続的に1時間供給した後、さらに触媒として0.8mmol/Lに調製したVO(OC2H5)Cl2のヘキサン溶液を5L/hの量で、ヘキサンを5L/hの量で連続的に供給した。一方、重合槽上部から、重合槽内の重合液が常に10Lになるように重合液を連続的に抜き出した。バブリング管を用いてエチレンを2000L/hの量で、プロピレンを1000L/hの量で、水素を8L/hの量で供給し、重合反応を35℃で行い、重合溶液を得た。得られた重合溶液を、塩酸で脱灰した後、メタノールに投入して重合体を析出させた後、乾燥させ、エチレン・プロピレン共重合体(以下、EPRと記す。)である他のゴム質重合体(A’−17)を得た。結果を表2に示す。
(芳香族ビニル系樹脂水性分散体(B−1))
ゴム質重合体(A−1)100部と、酸変性オレフィン重合体として無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学社製、「三井ハイワックス 2203A」、質量平均分子量:2,700、酸価:30mg/g)15部と、アニオン系乳化剤としてオレイン酸カリウム3部とを混合した。
この混合物を2軸スクリュー押出機(池貝社製、「PCM30」、L/D=40)のホッパーから4kg/hで供給し、水酸化カリウム14%水溶液を240g/hで連続的に供給しながら、220℃に加熱して溶融混練し、得られた溶融混練物を押出した。溶融混練物を押出機の先端に取り付けた冷却装置に連続的に供給し、90℃まで冷却した。取り出した固体を80℃の温水中に投入し、連続的に分散させて、体積平均粒子径が0.40μmの芳香族ビニル系樹脂水性分散体(B−1)を得た。結果を表3に示す。
ゴム質重合体(A−1)を、ゴム質重合体(A−2)〜(A−14)、他のゴム質重合体(A’−15)〜(A’−17)に変えた以外は、芳香族ビニル系樹脂水性分散体(B−1)と同様にして、芳香族ビニル系樹脂水性分散体(B−2)〜(B−14)、他のゴム質重合体水性分散体(B’−15)〜(B’−17)を得た。結果を表3、表4に示す。
水酸化カリウムの仕込量、イオン交換水の仕込量を変更した以外は、芳香族ビニル系樹脂水性分散体(B−1)と同様にして、芳香族ビニル系樹脂水性分散体(B−19)〜(B−22)、他のゴム質重合体水性分散体(B’−18)、(B’−23)を得た。結果を表5に示す。
(架橋ゴム質重合体(C−1))
芳香族ビニル系樹脂水性分散体(B−7)(固形分として100部)に、有機過酸化物としてt−ブチルクミルペルオキシド0.1部、多官能性化合物としてジビニルベンゼン1.0部を添加し、130℃で5時間反応させて、架橋ゴム質重合体(C−1)の水性分散体を調製した。結果を表6に示す。
t−ブチルクミルペルオキシドの添加量を変更した以外は、架橋ゴム質重合体(C−1)の製造方法と同様にして、架橋ゴム質重合体(C−2)〜(C−7)の水性分散体を得た。結果を表6に示す。
芳香族ビニル系樹脂水性分散体(B−7)を、芳香族ビニル系樹脂水性分散体(B−1)〜(B−6)、(B−8)〜(B−14)、(B−19)〜(B−22)、他のゴム質重合体水性分散体(B’−15)〜(B’−18)、(B’−23)に変えた以外は、架橋ゴム質重合体(C−1)の製造方法と同様にして、架橋ゴム質重合体(C−8)〜(C−20)、(C−25)〜(C−28)、他の架橋ゴム質重合体(C’−21)〜(C’−24)、(C’−29)の水性分散体を得た。結果を表7〜表9に示す。
ゴム質重合体(A−7)100部に、有機過酸化物としてα,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン0.5部、ジビニルベンゼン1.0部を加え、30mmφの真空ベント付き2軸押出機(池貝社製、「PCM30」)で、220℃、93.325kPa真空にて溶融混練を行った後、細かく粉砕することによって、架橋ゴム質重合体(C−30)を得た。結果を表9に示す。
α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼンの添加量を変えた以外は、架橋ゴム質重合体(C−30)の製造方法と同様にして、架橋ゴム質重合体(C−31)、(C−32)を得た。結果を表9に示す。
(グラフト共重合体(D−1))
撹拌機付きステンレス重合槽に、イオン交換水180部、架橋ゴム質重合体(C−1)の水性分散体(固形分として40部)、硫酸第一鉄0.006部、ピロリン酸ナトリウム0.3部およびデキストロース0.35部を仕込み、温度を80℃とした。アクリロニトリル13.2部、スチレン46.8部およびクメンヒドロペルオキシド0.6部を150分連続的に添加し、重合温度を80℃一定に保ち、乳化重合を行った。重合後、グラフト共重合体(D−1)を含む水性分散体に酸化防止剤を添加し、硫酸にて固形分の析出を行い、洗浄、脱水、乾燥の工程を経て、粉状のグラフト共重合体(D−1)を得た。結果を表10に示す。表中、STはスチレン、ANはアクリロニトリルの略号である。
架橋ゴム質重合体(C)の水性分散体およびビニル系単量体混合物(m1)の仕込量を変えた以外は、グラフト共重合体(D−1)の製造方法と同様にして、グラフト共重合体(D−2)〜(D−5)を得た。結果を表10に示す。
架橋ゴム質重合体(C)の水性分散体の種類を変えた以外は、グラフト共重合体(D−4)の製造方法と同様にして、グラフト共重合体(D−6)〜(D−24)、(D−29)〜(D−32)、他のグラフト共重合体(D’−25)〜(D’−28)、(D’−33)を得た。結果を表11〜表14に示す。
撹拌機付き重合槽に、架橋ゴム質重合体(C−30)70部、キシレン180部、硫酸第一鉄0.006部、ピロリン酸ナトリウム0.3部、およびデキストロース0.35部を仕込み、温度を80℃とした。アクリロニトリル6.6部、スチレン23.4部およびクメンヒドロペルオキシド0.6部を200分連続的に添加し、重合温度を80℃に保ち溶液重合を行った。重合後、酸化防止剤を添加し、水蒸気蒸留により残留単量体、溶媒等の揮発分を留去した後に、細かく粉砕することによって、粉状のグラフト共重合体(D−34)を得た。結果を表15に示す。
架橋ゴム質重合体(C−30)を、架橋ゴム質重合体(C−31)、(C−32)、ゴム質重合体(A−7)に変えた以外は、グラフト共重合体(D−34)の製造方法と同様にして、グラフト共重合体(D−35)、(D−36)、他のグラフト共重合体(D’−37)を得た。結果を表15に示す。
架橋ゴム質重合体(C−4)の水性分散体を、芳香族ビニル系樹脂水性分散体(B−7)に変えた以外は、グラフト共重合体(D−4)の製造方法と同様にして、他のグラフト共重合体(D’−38)を得た。結果を表15に示す。
(他のグラフト共重合体(F’−1)の調製)
アルケニルコハク酸ジカリウム1.2部、イオン交換水175部、アクリル酸n−ブチル50部、メタクリル酸アリル0.16部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.08部、およびt−ブチルヒドロペルオキシド0.1部の混合物を反応器に投入した。反応器に窒素気流を通じることによって、反応器内を窒素置換し、60℃まで昇温した。内温が50℃となった時点で、硫酸第一鉄0.00015部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00045部、ロンガリット0.24部、およびイオン交換水5部からなる水溶液を添加して重合を開始させ、内温を75℃に上昇させた。さらにこの状態を1時間維持し、他の架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E’−1)の水性分散体を得た。水性分散体に分散している他の架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E’−1)の体積平均粒子径は0.04μmであった。
アルケニルコハク酸ジカリウム1.08部、イオン交換水175部、アクリル酸n−ブチル50 部、メタクリル酸アリル0.16部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.08部、およびt−ブチルヒドロペルオキシド0.1部の混合物を反応器に投入した。反応器に窒素気流を通じることによって、反応器内を窒素置換し、60℃まで昇温した。内温が50℃となった時点で、硫酸第一鉄0.00015部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00045部、ロンガリット0.24部、およびイオン交換水5部からなる水溶液を添加して重合を開始させ、内温を75℃に上昇させた。さらにこの状態を1時間維持し、架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E−2)の水性分散体を得た。水性分散体に分散している架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E−2)の体積平均粒子径は0.06μmであった。
アルケニルコハク酸ジカリウム0.97部、イオン交換水175部、アクリル酸n−ブチル50部、メタクリル酸アリル0.16部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.08部、およびt−ブチルヒドロペルオキシド0.1部の混合物を反応器に投入した。反応器に窒素気流を通じることによって、反応器内を窒素置換し、60℃まで昇温した。内温が50℃となった時点で、硫酸第一鉄0.00015部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00045部、ロンガリット0.24部、およびイオン交換水5部からなる水溶液を添加して重合を開始させ、内温を75℃に上昇させた。さらにこの状態を1時間維持し、架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E−3)の水性分散体を得た。水性分散体に分散している架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E−3)の体積平均粒子径は0.082μmであった。
アルケニルコハク酸ジカリウム0.73部、イオン交換水175部、アクリル酸n−ブチル50部、メタクリル酸アリル0.16部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.08部、およびt−ブチルヒドロペルオキシド0.1部の混合物を反応器に投入した。反応器に窒素気流を通じることによって、反応器内を窒素置換し、60℃まで昇温した。内温が50℃となった時点で、硫酸第一鉄0.00015部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00045部、ロンガリット0.24部、およびイオン交換水5部からなる水溶液を添加して重合を開始させ、内温を75℃に上昇させた。さらにこの状態を1時間維持し、架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E−4)の水性分散体を得た。水性分散体に分散している架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E−4)の体積平均粒子径は0.12μmであった。
アルケニルコハク酸ジカリウム0.62部、イオン交換水175部、アクリル酸n−ブチル50部、メタクリル酸アリル0.16部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.08部、およびt−ブチルヒドロペルオキシド0.1部の混合物を反応器に投入した。反応器に窒素気流を通じることによって、反応器内を窒素置換し、60℃まで昇温した。内温が50℃となった時点で、硫酸第一鉄0.00015部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00045部、ロンガリット0.24部、およびイオン交換水5部からなる水溶液を添加して重合を開始させ、内温を75℃に上昇させた。さらにこの状態を1時間維持し、架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E−5)の水性分散体を得た。水性分散体に分散している架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E−5)の体積平均粒子径は0.16μmであった。
アルケニルコハク酸ジカリウム0.45部、イオン交換水175部、アクリル酸n−ブチル50部、メタクリル酸アリル0.16部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.08部、およびt−ブチルヒドロペルオキシド0.1部の混合物を反応器に投入した。反応器に窒素気流を通じることによって、反応器内を窒素置換し、60℃まで昇温した。内温が50℃となった時点で、硫酸第一鉄0.00015部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00045部、ロンガリット0.24部、およびイオン交換水5部からなる水溶液を添加して重合を開始させ、内温を75℃に上昇させた。さらにこの状態を1時間維持し、他の架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E’−6)の水性分散体を得た。水性分散体に分散している他の架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E’−6)の体積平均粒子径は0.21μmであった。
(メタクリル酸エステル樹脂(G−1)の調製)
撹拌機付きステンレス重合槽にイオン交換水150部、メタクリル酸メチル99部、アクリル酸メチル1部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2部、n−オクチルメルカプタン0.25部、カルシウムヒドロオキシアパタイト0.47部、アルケニルコハク酸カリウム0.003部を仕込んだ。重合槽の内温を75℃にして3時間反応させ、90℃に昇温し1時間反応させた。内容物を抜き出し、遠心脱水機で洗浄し、乾燥させて粉状のメタクリル酸エステル樹脂(G−1)を得た。
撹拌機付きステンレス重合槽にイオン交換水150部、メタクリル酸メチル82部、N−フェニルマレイミド12部、スチレン6部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2部、n−オクチルメルカプタン0.25部、ポリビニルアルコール0.7部を仕込んだ。重合槽の内温を75℃にして3時間反応させ、90℃まで昇温し1時間反応させた。内容物を抜き出し、遠心脱水機で洗浄し、乾燥させて粉状のメタクリル酸エステル樹脂(G−2)を得た。
表16、表17に示すようにビニル系単量体混合物(m3)の種類を変更した以外は、メタクリル酸エステル樹脂(G−2)と同様にして、メタクリル酸エステル樹脂(G−3)〜(G−11)を得た。
(スチレン系共重合体(H−1)の調製)
窒素置換した撹拌機付きステンレス重合槽に、イオン交換水120部、ポリビニルアルコール0.1部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.3部、アクリロニトリル25部、スチレン75部、t−ドデシルメルカプタン0.35部を仕込み、開始温度60℃として5時間反応させた。120℃に昇温し、4時間反応させた。内容物を取り出し、スチレン系共重合体(H−1)を得た。
撹拌機付きステンレス重合槽に、イオン交換水150部、メタクリル酸メチル7部、アクリロニトリル23部、スチレン70部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2部、n−オクチルメルカプタン0.25部、カルシウムヒドロオキシアパタイト0.47部、アルケニルコハク酸カリウム0.003部を仕込み、内温を75℃まで昇温し、3時間反応させた。90℃まで昇温し、60分間保持することで反応を完結させた。内容物を取り出し、遠心脱水機での洗浄、脱水を繰り返し、乾燥させてスチレン系共重合体(H−2)を得た。
表18に示すようにビニル系単量体混合物(m4)の量を変更した以外は、スチレン系共重合体(H−2)と同様にして、スチレン系共重合体(H−3)〜(H−5)を得た。
グラフト共重合体(D−1)17.5部、グラフト共重合体(F−1)14部、メタクリル酸エステル樹脂(G−2)68.5部を混合し、30mmφの真空ベント付き2軸押出機(池貝社製、「PCM30」)で240℃、93.325kPa真空にて溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を調製し、MVRを測定した。
熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、各種成形品を成形し、耐熱性、耐衝撃性、発色性、透明性、耐引っ掻き傷性、耐擦り傷性を評価した。結果を表19に示す。
表19〜表25に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を調製し、MVRを測定した。
熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、各種成形品を成形し、耐熱性、耐衝撃性、発色性、透明性、耐引っ掻き傷性、耐擦り傷性を評価した。結果を表19〜表25に示す。
表26〜表28に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を調製し、MVRを測定した。
熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、各種成形品を成形し、耐熱性、耐衝撃性、発色性、透明性、耐引っ掻き傷性、耐擦り傷性を評価した。結果を表26〜表28に示す。
したがって、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、流動性が優れており、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いると、耐衝撃性、発色性、透明性、耐引っ掻き傷性、耐擦り傷性に優れた成形品が得られ、車輌の内装及び外装部品、事務機器、家電、建材等の用途に適用できることがわかる。
一方、比較例1〜24の結果から、本発明以外のものは、成形品の発色性、透明性、耐衝撃性、耐擦り傷性が低かったりした。
11 先端部
12 積層シート
13 成形品(Ma3)
Claims (3)
- 芳香族ビニル化合物に基づく構成単位を主体とするブロックと共役ジエン系化合物に基づく構成単位を主体とするブロックとを有するブロック共重合体の水素添加物を架橋処理した架橋ゴム質重合体(C)の存在下に、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたグラフト共重合体(D)と、 架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E)の存在下に、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られたグラフト共重合体(F)と、
メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(m3)を重合して得られたメタクリル酸エステル樹脂(G)と
を含み、
芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含むビニル系単量体混合物(m4)を重合して得られたスチレン系共重合体(H)を含んでいてもよく、
熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(D)に含まれる架橋ゴム質重合体(C)の体積平均粒子径が、0.2μm〜0.6μmであり、
熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(F)に含まれる架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E)の体積平均粒子径が、0.05μm〜0.18μmであり、
架橋ゴム質重合体(C)および架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E)の合計(100質量%)のうち、架橋ゴム質重合体(C)の割合が、15〜85質量%であり、架橋アクリル酸エステル系ゴム状重合体(E)の割合が、85〜15質量%であり、
グラフト共重合体(D)およびグラフト共重合体(F)の合計の含有量は、グラフト共重合体(D)、グラフト共重合体(F)、メタクリル酸エステル樹脂(G)およびスチレン系共重合体(H)の合計100質量%のうち5〜40質量%であり、
メタクリル酸エステル樹脂(G)の含有量は、グラフト共重合体(D)、グラフト共重合体(F)、メタクリル酸エステル樹脂(G)およびスチレン系共重合体(H)の合計100質量%のうち95〜60質量%である、熱可塑性樹脂組成物。 - 前記共役ジエン系化合物が、イソプレンである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品。
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