JP2018095722A - 熱可塑性樹脂組成物、その製造方法および成形品 - Google Patents

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幸作 垰
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Abstract

【課題】耐衝撃性、発色性、耐傷付き性、色調安定性、きしみ音抑制効果に優れる成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法、ならびに耐衝撃性、発色性、耐傷付き性、色調安定性、きしみ音抑制効果に優れる成形品を提供する。【解決手段】エチレン・α−オレフィン共重合体の存在下に芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれた少なくとも一種のビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたグラフト共重合体(D)と;メタクリル酸エステル樹脂(G)と;メチン系合成染料(Ha)と、アントラキノン系合成染料、ペリノン系合成染料、アゾ系合成染料およびキノリン系合成染料からなる群から選ばれた少なくとも一種の原色染料(Hb)とが黒色になるように調合された有機染料(H)とを含む熱可塑性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物、その製造方法およびその成形品に関する。
成形品の耐衝撃性を向上させることによって、成形品の用途が拡大するだけでなく、成形品の薄肉化や大型化への対応が可能になるなど、工業的な有用性が非常に高くなる。そのため、成形品の耐衝撃性の向上については、これまでに様々な手法が提案されている。これら手法のうち、ゴム質重合体と硬質樹脂とを組み合わせた樹脂材料を用いることによって、硬質樹脂に由来する特性を保持しつつ、成形品の耐衝撃性を高める手法は、すでに工業化されている。このような樹脂材料としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル(ASA)樹脂、アクリロニトリル−エチレン・α−オレフィン−スチレン(AES)樹脂、またはこれらをさらに硬質樹脂に添加した熱可塑性樹脂組成物等が挙げられる。
硬質樹脂に由来する特性を保持しつつ、耐衝撃性が向上した成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物としては、例えば、下記のものが知られている。
(1)硬質樹脂であるメタクリル酸エステル樹脂に、ASA樹脂を添加した熱可塑性樹脂組成物(特許文献1)。
(2)硬質樹脂であるメタクリル酸エステル樹脂に、AES樹脂を添加した熱可塑性樹脂組成物(特許文献2)。
これらの熱可塑性樹脂組成物は、複数の原色合成染料が黒色になるように調合された有機染料によって黒色に着色されている。
特開2000−327880号公報 特開2005−132970号公報
しかし、(1)の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品においては、成形品の洗浄時に洗車タオル等による擦り傷が付きやすい問題がある。
(2)の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品においては、成形品洗浄時の擦り傷をある程度抑制できるものの、成形品に傷が付いた時に、傷部分の変色が大きい問題がある。また、光源変更時の色調の変化が大きく、時間帯や場所によっては成形品の意匠性が低下する問題もある。
本発明は、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性、色調安定性、きしみ音抑制効果に優れる成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物およびその製造方法、ならびに耐衝撃性、発色性、耐傷付き性、色調安定性、きしみ音抑制効果に優れる成形品を提供する。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1]エチレン・α−オレフィン共重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれた少なくとも一種のビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたグラフト共重合体(D)と、
メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(m3)を重合して得られたメタクリル酸エステル樹脂(G)と、
メチン系合成染料(Ha)と、アントラキノン系合成染料、ペリノン系合成染料、アゾ系合成染料およびキノリン系合成染料からなる群から選ばれた少なくとも一種の原色染料(Hb)とが黒色になるように調合された有機染料(H)と、を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
[2]前記エチレン・α−オレフィン共重合体が、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)である、[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]ポリオルガノシロキサン(Ea)と、(メタ)アクリル酸エステル由来の単位と架橋剤由来の単位およびグラフト交叉剤由来の単位のいずれか一方または両方とを含有するポリ(メタ)アクリル酸エステル(Eb)とからなる複合ゴム状重合体(E)の存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれた少なくとも一種のビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られたグラフト共重合体(F)をさらに含む、[1]または[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品。
[5]エチレン・α−オレフィン共重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれた少なくとも一種のビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(m1)を重合してグラフト共重合体(D)を得る工程と、
メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(m3)を重合してメタクリル酸エステル樹脂(G)を得る工程と、
メチン系合成染料(Ha)と、アントラキノン系合成染料、ペリノン系合成染料、アゾ系合成染料およびキノリン系合成染料からなる群から選ばれた少なくとも一種の原色染料(Hb)とが黒色になるように調合された有機染料(H)と、前記グラフト共重合体(D)と、前記メタクリル酸エステル樹脂(G)とを混合して熱可塑性樹脂組成物を得る工程と、を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
[6]前記エチレン・α−オレフィン共重合体が、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)である、[5]に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
[7]ポリオルガノシロキサン(Ea)と、(メタ)アクリル酸エステル由来の単位と架橋剤由来の単位およびグラフト交叉剤由来の単位のいずれか一方または両方とを含有するポリ(メタ)アクリル酸エステル(Eb)とからなる複合ゴム状重合体(E)の存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれた少なくとも一種のビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(m2)を重合してグラフト共重合体(F)を得る工程をさらに含み、
前記熱可塑性樹脂組成物を得る工程で、前記有機染料(H)と、前記グラフト共重合体(D)と、前記メタクリル酸エステル樹脂(G)と、前記グラフト共重合体(F)とを混合する[5]または[6]に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性、色調安定性、きしみ音抑制効果に優れる成形品が得られる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法によれば、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性、色調安定性、きしみ音抑制効果に優れる成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物を製造できる。
本発明の成形品は、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性、色調安定性、きしみ音抑制効果に優れる。
洗車タオル磨耗による耐擦り傷性試験を説明する概略図である。 きしみ音抑制効果の評価方法を説明する概略図である。
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを意味する。
「成形品」とは、熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものを意味する。
「耐傷付き性」とは、爪や鉛筆等の硬く尖ったもので成形品の表面を引掻いたときに生じる傷(引掻き傷)に対する傷付きにくさ(耐引掻き傷性)および軍手、洗車タオル、布等の柔らかいもので成形品の表面を擦ったときに生じる傷(擦り傷)に対する傷付きにくさ(耐擦り傷性)の両方を意味する。
「明度(L)」とは、JIS Z 8729において採用されているL表色系における色彩値のうちの明度の値(L)を意味する。
「SCE方式」とは、JIS Z 8722に準拠した分光測色計を用い、光トラップによって正反射光を除去して色を測る方法を意味する。
「熱可塑性樹脂組成物」
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(D)と、メタクリル酸エステル樹脂(G)と、有機染料(H)とを含む。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、グラフト共重合体(F)、他の熱可塑性樹脂、各種添加剤を含んでいてもよい。
グラフト共重合体(D)は、エチレン・α−オレフィン共重合体の存在下にビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたものである。
エチレン・α−オレフィン共重合体は、未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)、または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)である。
つまりグラフト共重合体(D)は、下記(α)または(β)である。
(α)未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の存在下にビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたもの。
(β)架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の存在下にビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたもの。
前記(α)としては、具体的には下記のものが挙げられる。
(α1)未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)を含む溶液中にてビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたもの。
(α2)未架橋のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)を含むオレフィン樹脂水性分散体(B)中にてビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたもの。
前記(β)としては、具体的には下記のものが挙げられる。
(β1)架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)を含む溶液中にてビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたもの。
(β2)架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)を含む水性分散体中にてビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたもの。
グラフト共重合体(F)は、下記(γ)である。
(γ)ポリオルガノシロキサン(Ea)とポリ(メタ)アクリル酸エステル(Eb)とからなる複合ゴム状重合体(E)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られたもの。
メタクリル酸エステル樹脂(G)は、下記(δ)である。
(δ)ビニル系単量体混合物(m3)を重合して得られたもの。
以下、各成分((A)〜(H)、(m1)〜(m3)等)について説明する。
<エチレン・α−オレフィン共重合体(A)>
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、エチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンとを公知の重合方法によって共重合することによって得られた、エチレン単位とα−オレフィン単位とを含む共重合体である。エチレン・α−オレフィン共重合体(A)は未架橋、つまり架橋構造を有しないものである。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)は非共役ジエン単位をさらに含んでもよい。
α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−イコセン、1−ドコセン等が挙げられ、成形品の耐衝撃性の点から、炭素数が3〜20のα−オレフィンが好ましく、プロピレンが特に好ましい。
非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−シクロヘプタジエン、1,5−シクロオクタジエン等が挙げられる。中でも、得られる成形品の耐衝撃性や耐擦り傷性がさらに優れることから、ジシクロペンタジエンおよび/または5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)のエチレン単位の含有率は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を構成する全ての構成単位の合計を100質量%としたときに、45〜80質量%が好ましく、50〜75質量%がより好ましい。エチレン単位の含有率が前記範囲内であれば、成形品の耐擦り傷性、耐衝撃性のバランスがさらに優れる。
エチレン単位とα−オレフィン単位の合計の含有率は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を構成する全ての構成単位の合計を100質量%としたときに、90〜100質量%が好ましく、95〜99質量%がより好ましい。エチレン単位とα−オレフィン単位の合計の含有率が前記範囲内であれば、成形品の耐擦り傷性、耐衝撃性のバランスがさらに優れる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は、4×10〜35×10が好ましく、17×10〜32×10がより好ましい。質量平均分子量(Mw)が前記範囲内であれば、成形品の耐擦り傷性、発色性、耐衝撃性、きしみ音抑制効果がさらに優れる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の分子量分布(Mw/数平均分子量(Mn))は、1.0〜5.0が好ましく、1.9〜4.0がより好ましい。分子量分布(Mw/Mn)が前記範囲内であれば、成形品の耐擦り傷性、耐衝撃性、きしみ音抑制効果がさらに優れる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定し、標準ポリスチレンで換算した値である。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の製造方法は、限定されない。エチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、通常、メタロセン触媒またはチーグラー・ナッタ触媒を用いてエチレンとα−オレフィンとを、またはエチレンとα−オレフィンと非共役ジエンとを共重合することによって製造される。
メタロセン触媒としては、遷移金属(ジルコニウム、チタン、ハフニウム等)にシクロペンタジエニル骨格を有する有機化合物、ハロゲン原子等が配位したメタロセン錯体と、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物等とを組み合わせた触媒が挙げられる。
チーグラー・ナッタ触媒としては、遷移金属(チタン、バナジウム、ジルコニウム、ハフニウム等)のハロゲン化物と、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物等とを組み合わせた触媒が挙げられる。
重合方法としては、触媒(メタロセン触媒またはチーグラー・ナッタ触媒)の存在下に、エチレンとα−オレフィンとを、またはエチレンとα−オレフィンと非共役ジエンとを溶媒中で共重合させる方法が挙げられる。溶媒としては、例えば、炭化水素溶媒(ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等)が挙げられる。炭化水素溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、原料のα−オレフィンを溶媒として用いてもよい。重合の際、水素等の分子量調節剤を用いてもよい。
エチレン、α−オレフィン、非共役ジエンそれぞれの供給量、分子量調節剤の種類や量、触媒の種類や量、反応温度、圧力等の反応条件を変更することによって、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)のエチレン単位の含有率、質量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を調整することができる。
<オレフィン樹脂水性分散体(B)>
オレフィン樹脂水性分散体(B)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を水性媒体に分散させたものである。
オレフィン樹脂水性分散体(B)は、その他の成分として、乳化剤、酸変性オレフィン重合体等を含有してもよい。
水性媒体としては、水、水と混和する有機溶剤(以下、「水混和性有機溶剤」ともいう。)、およびこれらの混合物が挙げられる。水混和性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム類等が挙げられる。水性媒体としては、水のみを用いるか、または水と水混和性有機溶剤との混合物を用いることが好ましい。
乳化剤としては、公知のものが挙げられ、例えば、長鎖アルキルカルボン酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。
オレフィン樹脂水性分散体(B)中の乳化剤の含有量は、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱着色を抑制でき、オレフィン樹脂水性分散体(B)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の粒子径制御が容易である点から、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)100質量部に対して1〜8質量部が好ましい。
酸変性オレフィン重合体としては、質量平均分子量が1,000〜5,000のオレフィン重合体を、官能基を有する化合物で変性したものが挙げられる。
オレフィン重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
官能基を有する化合物としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノアミド等の不飽和カルボン酸化合物等が挙げられる。
酸変性オレフィン重合体の酸価は、20〜40mgKOH/gが好ましい。
オレフィン樹脂水性分散体(B)中の酸変性オレフィン重合体の含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)100質量部に対して、1〜40質量部が好ましい。酸変性オレフィン重合体の添加量が前記範囲内であれば、成形品の耐傷付き性と耐衝撃性のバランスがさらに優れる。
オレフィン樹脂水性分散体(B)の調製方法は、限定されない。調製方法としては、例えば、(b1)公知の溶融混練手段(ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機等)でエチレン・α−オレフィン共重合体(A)を溶融混練し、機械的せん断力を与えて分散させ、水性媒体に添加する方法;(b2)エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を炭化水素溶媒(ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等)に溶解し、水性媒体に添加して乳化させた後、充分に撹拌し、炭化水素溶媒を留去する方法等が挙げられる。オレフィン樹脂水性分散体(B)の調製の際に、その他の成分として酸変性オレフィン重合体、乳化剤等を添加してもよい。
前記(b1)の方法において、溶融混練する際の温度条件としては、150〜250℃が好ましい。
酸変性オレフィン重合体の添加方法は、限定されない。例えば、前記(b1)の方法において、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)と酸変性オレフィン重合体とを混合し、溶融混練する方法、前記(b2)の方法において、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)と酸変性オレフィン重合体とを炭化水素溶媒に溶解する方法等が挙げられる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)と酸変性オレフィン重合体との混合方法は、特に限定されない。混合方法としては、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機等を用いた溶融混練法等が挙げられる。この場合、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)と酸変性オレフィン重合体とを混合する工程が、それらの混合物を溶融混練する工程を兼ねてもよい。
乳化剤の添加方法は、特に限定されない。例えば、酸変性オレフィン重合体の添加方法と同様の方法が挙げられる。また、前記(b1)または(b2)の方法において、水性媒体に乳化剤を添加する方法、前記(b2)の方法において、炭化水素溶媒に乳化剤を溶解する方法等が挙げられる。
オレフィン樹脂水性分散体(B)中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の体積平均粒子径は、成形品の耐衝撃性と発色性がより優れる点から、0.2〜0.6μmが好ましく、0.3〜0.5μmがより好ましい。
体積平均粒子径は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
なお、グラフト共重合体(D)がオレフィン樹脂水性分散体(B)を用いて得られたものである場合、オレフィン樹脂水性分散体(B)中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の体積平均粒子径が、そのまま熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の体積平均粒子径を示すことを、電子顕微鏡の画像解析によって確認している。
オレフィン樹脂水性分散体(B)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の体積平均粒子径を制御する方法としては、乳化剤の種類または使用量、酸変性オレフィン重合体の種類または含有量、混練時に加えるせん断力、温度条件等を調整する方法が挙げられる。
<架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)>
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)は、架橋構造を有するエチレン・α−オレフィン共重合体である。具体的には、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)に架橋構造を形成したものである。架橋構造を有することで、成形品の耐衝撃性がさらに優れる。
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のゲル含有率は、成形品の耐衝撃性の点から、35〜75質量%が好ましく、40〜70質量%がより好ましい。
本発明におけるゲル含有率とは、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)をトルエンで膨潤させた場合の、膨潤前の架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)に対する、乾燥させたトルエン不溶解分の割合である。詳しくは、実施例に記載の方法により求められる。
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)またはオレフィン樹脂水性分散体(B)を架橋処理することによって得られる。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)またはオレフィン樹脂水性分散体(B)の架橋処理は、公知の方法によって行うことができる。架橋処理の方法としては、(a)有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加して架橋処理を行う方法、(b)電離性放射線によって架橋処理を行う方法等が挙げられ、成形品の耐衝撃性、発色性の点から、(a)の方法が好ましい。
(a)の方法としては、具体的には、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)またはオレフィン樹脂水性分散体(B)に、有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加し、加熱する方法等が挙げられる。
例えば、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)に、有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加し、溶融混練し、粉砕すると、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の粉体が得られる。オレフィン樹脂水性分散体(B)に、有機過酸化物と、必要に応じて多官能性化合物とを添加して架橋処理すると、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の水性分散体が得られる。
有機過酸化物および多官能性化合物の添加量、加熱温度、加熱時間等を調整することによって、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のゲル含有率を調整できる。
加熱温度は、有機過酸化物の種類によって異なる。加熱温度は、有機過酸化物の10時間半減期温度の−5℃〜+30℃が好ましい。
加熱時間は、3〜15時間が好ましい。
有機過酸化物は、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)に架橋構造を形成させるためのものである。有機過酸化物としては、例えば、ペルオキシエステル化合物、ペルオキシケタール化合物、ジアルキルペルオキシド化合物等が挙げられる。有機過酸化物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
有機過酸化物としては、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のゲル含有率を調整しやすい点から、ジアルキルペルオキシド化合物が特に好ましい。
ジアルキルペルオキシド化合物の具体例としては、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3等が挙げられる。
有機過酸化物の添加量は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のゲル含有率を35〜75質量%の範囲に調整しやすい点から、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。
多官能性化合物は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のゲル含有率を調整するために、必要に応じて有機過酸化物と併用されるものである。
多官能性化合物としては、ジビニルベンゼン、メタクリル酸アリル、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等が挙げられ、ゲル含有率を調整しやすい点から、ジビニルベンゼンが好ましい。多官能性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能性化合物の添加量は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のゲル含有率を35〜75質量%に調整しやすい点から、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)100質量部に対して0.1〜5質量部が好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を架橋処理して架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)を得る場合、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)に酸変性オレフィン重合体が添加されてもよい。
酸変性オレフィン重合体は、オレフィン樹脂水性分散体(B)の説明で挙げたものと同様である。酸変性オレフィン重合体の添加量は、オレフィン樹脂水性分散体(B)中の酸変性オレフィン重合体の含有量と同様に、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)100質量部に対して、1〜40質量部が好ましい。
酸変性オレフィン重合体の添加方法は、限定されない。エチレン・α−オレフィン共重合体(A)と酸変性オレフィン重合体とを混合した後に架橋処理をしてもよいし、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)と酸変性オレフィン重合体とをそれぞれ架橋処理した後に混合してもよい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)と酸変性オレフィン重合体との混合方法は、限定されない。混合方法としては、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機等を用いた溶融混練法等が挙げられる。
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の体積平均粒子径、または水性分散体中の架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の体積平均粒子径は、成形品の耐衝撃性と発色性が優れる点から、0.2〜0.6μmが好ましく、0.3〜0.5μmがより好ましい。
なお、オレフィン樹脂水性分散体(B)を有機過酸化物によって架橋処理した架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の水性分散体中の架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の平均粒子径は、オレフィン樹脂水性分散体(B)中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の平均粒子径に対して変化はない。
また、グラフト共重合体(D)が架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の水性分散体を用いて得られたものである場合、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の水性分散体中の平均粒子径が、そのまま熱可塑性樹脂組成物中の架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の平均粒子径を示すことを、電子顕微鏡の画像解析によって確認している。
<ビニル系単量混合物(m1)>
ビニル系単量体混合物(m1)は、単量体として少なくとも、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれた少なくとも1種を含む。
ビニル系単量体混合物(m1)は、必要に応じて、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステル以外の他のビニル系単量体をさらに含んでもよい。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−またはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。成形品の発色性、耐衝撃性の点から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。シアン化ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等)、メタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等)等が挙げられる。成形品の発色性、耐衝撃性の点から、メタクリル酸メチルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のビニル系単量体としては、例えば、マレイミド系化合物(N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等)等が挙げられる。他のビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ビニル系単量体混合物(m1)は、上記の中でも、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含むことが好ましい。
ビニル系単量体混合物(m1)において、芳香族ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体混合物(m1)の総質量(100質量%)に対し、60〜85質量%が好ましく、62〜80質量%がより好ましい。芳香族ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れる。
シアン化ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体混合物(m1)の総質量(100質量%)に対し、15〜40質量%が好ましく、20〜38質量%がより好ましい。シアン化ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れる。
<グラフト共重合体(D)>
グラフト共重合体(D)は、エチレン・α−オレフィン共重合体の存在下にビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたものである。グラフト共重合体(D)としては、例えば、前記の(α1)、(α2)、(β1)、(β2)が挙げられる。
なお、グラフト共重合体(D)は、エチレン・α−オレフィン共重合体とビニル系単量体混合物(m1)とがどのように重合しているか、特定することは困難である。すなわち、グラフト共重合体(D)をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的でないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、「エチレン・α−オレフィン共重合体の存在下にビニル系単量体成分(m1)を重合することによって得られたもの」と規定することがより適切とされる。
グラフト共重合体(D)は、エチレン・α−オレフィン共重合体50〜80質量%の存在下に、ビニル系単量体混合物(m1)20〜50質量%(ただし、エチレン・α−オレフィン共重合体とビニル系単量体混合物(m1)との合計は100質量%である)を重合して得られたものであることが好ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体の含有割合が50〜80質量%であれば、成形品の耐衝撃性、発色性の物性バランスがさらに優れる。
グラフト共重合体(D)のグラフト率は、成形品の耐衝撃性、発色性のバランスの点から、20〜100質量%が好ましい。
グラフト率は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
グラフト共重合体(D)は、エチレン・α−オレフィン共重合体(エチレン・α−オレフィン共重合体(A)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C))の存在下にビニル系単量体混合物(m1)を重合することにより得られる。例えば前記の(α1)、(α2)、(β1)、(β2)はそれぞれ、下記の方法(α1’)、(α2’)、(β1’)、(β2’)により得られる。
(α1’)エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を含む溶液中にてビニル系単量体混合物(m1)を重合する方法。
(α2’)エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を含むオレフィン樹脂水性分散体(B)中にてビニル系単量体混合物(m1)を重合する方法。
(β1’)架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)を含む溶液中にてビニル系単量体混合物(m1)を重合する方法。
(β2’)架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)を含む水性分散体中にてビニル系単量体混合物(m1)を重合する方法。
ビニル系単量体混合物(m1)の重合方法としては、公知の重合方法(乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法等)が挙げられる。
乳化重合法によるグラフト共重合体(D)の製造方法としては、例えば、ビニル系単量体混合物(m1)に有機過酸化物を混合したものを、エチレン・α−オレフィン共重合体の水性分散体(例えばオレフィン樹脂水性分散体(B)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の水性分散体)に対して連続的に添加する方法が挙げられる。
乳化重合の重合条件は、特に限定されず、例えば、50〜90℃で1.5〜3.5時間の重合条件が挙げられる。
有機過酸化物は、有機過酸化物と遷移金属と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤として用いるのが好ましい。
重合の際に、連鎖移動剤、乳化剤等を状況に応じて用いてもよい。
レドックス系開始剤としては、重合反応条件を高温下にする必要がなく、エチレン・α−オレフィン共重合体の劣化等を避け、成形品の耐衝撃性の低下を回避できる点から、有機過酸化物と硫酸第一鉄−キレート剤−還元剤を組み合わせたものが好ましい。
有機過酸化物としては、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド等が挙げられる。
レドックス系開始剤としては、クメンヒドロペルオキシドと、硫酸第一鉄と、ピロリン酸ナトリウムと、デキストロースとからなるものがより好ましい。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類(オクチルメルカプタン、n−またはt−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−またはt−テトラデシルメルカプタン等)、アリル化合物(アリルスルフォン酸、メタアリルスルフォン酸、これらのナトリウム塩等)、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられ、分子量を調整することが容易な点から、メルカプタン類が好ましい。連鎖移動剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
連鎖移動剤の添加方法は、一括、分割、連続のいずれでもよい。
連鎖移動剤の添加量は、ビニル単量体混合物(m1)100質量部に対して2.0質量部以下が好ましい。
乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸スルホン酸塩、リン酸系塩、脂肪酸塩、アミノ酸誘導体塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、通常のポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アニオン部にカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等を有し、カチオン部にアミン塩、第4級アンモニウム塩等を有するものが挙げられる。
乳化剤の添加量は、ビニル系単量体混合物(m1)100質量部に対して10質量部以下が好ましい。
乳化重合法によって得られるグラフト共重合体(D)は、水中に分散した状態である。
グラフト共重合体(D)を含む水性分散体からグラフト共重合体(D)を回収する方法としては、例えば、水性分散体に析出剤を添加し、加熱、撹拌した後、析出剤を分離し、析出したグラフト共重合体(D)を水洗、脱水、乾燥する析出法が挙げられる。
析出剤としては、例えば、硫酸、酢酸、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の水溶液が挙げられる。析出剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
グラフト共重合体(D)を含む水性分散体に、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。
溶液重合法によるグラフト共重合体(D)の製造方法としては、例えば、エチレン・α−オレフィン共重合体(例えばエチレン・α−オレフィン共重合体(A)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C))を溶媒に溶解した溶液に、重合開始剤およびビニル系単量体混合物(m1)を添加する方法が挙げられる。
溶媒としては、通常のラジカル重合で使用される不活性重合溶剤を用いることができ、例えばエチルベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、ジクロロメチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
溶液重合に用いられる重合開始剤は、一般的な開始剤を用いることができ、例えば、ケトンパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。
重合開始剤の添加方法は、特に限定されず、例えば一括または連続的に添加する方法が挙げられる。
グラフト共重合体(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<ポリオルガノシロキサン(Ea)>
ポリオルガノシロキサン(Ea)としては特に制限はないが、ビニル重合性官能基を有するポリオルガノシロキサンが好ましく、ポリオルガノシロキサンを構成する全構成単位の総モル数に対し、ビニル重合性官能基を含有するシロキサン単位0.3〜3モル%と、ジメチルシロキサン単位97〜99.7モル%とを含み、ポリジメチルシロキサン中の全ケイ素原子の総モル数に対し、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子が1モル%以下であるポリオルガノシロキサンがより好ましい。
ポリオルガノシロキサン(Ea)を構成するジメチルシロキサンとしては、例えば、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられる。中でも、3員環〜7員環のものが好ましい。具体的にはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。これらは1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
ビニル重合性官能基を有するシロキサンとしては、ビニル重合性官能基を有し、かつ、ジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合しうるものであれば特に制限されないが、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基を有するアルコキシシラン化合物が好ましい。具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシランおよび∂−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン、p−ビニルフェニルジメトキシメチルシラン等のビニルフェニルシロキサン等が挙げられる。これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
ポリオルガノシロキサン(Ea)には、必要に応じて、構成成分としてシロキサン系架橋剤が含まれていてもよい。
シロキサン系架橋剤としては、3官能性または4官能性のシラン系架橋剤、例えばトリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。
ポリオルガノシロキサン(Ea)の製造方法は、限定されない。例えば、以下の方法により製造できる。
まず、ジメチルシロキサンとビニル重合性官能基を有するシロキサンとからなるシロキサン混合物に、必要に応じてシロキサン系架橋剤を添加し、次いで、乳化剤および水によって乳化させて、水性媒体にシロキサン混合物が分散したシロキサン混合物水性分散体を得る。次いで、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用して、シロキサン混合物水性分散体に対し微粒子化処理を行って、シロキサン混合物水性分散体中の分散粒子(シロキサン混合物)を微粒子化させる。ここで、ホモジナイザー等の高圧乳化装置を使用すると、ポリオルガノシロキサン(Ea)の粒子径の分布が小さくなるので好ましい。次いで、微粒子化処理したシロキサン混合物水性分散体を、酸触媒を含む酸水溶液中に添加して高温下で重合させる。そして、反応液を冷却し、さらに苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ナトリウム等のアルカリ性物質で中和することで重合を停止させて、水性分散体にポリオルガノシロキサン(Ea)が分散した水性分散体を得る。
上記ポリオルガノシロキサン(Ea)の製造において、乳化剤としては、アニオン系乳化剤が好ましい。アニオン系乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸系の乳化剤が好ましい。
乳化剤の使用量は、シロキサン混合物100質量部(固形分として)に対して、0.05〜5質量部程度が好ましい。
重合に用いられる酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸類、および硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸類が挙げられる。これらの酸触媒は、1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン(Ea)の水性分散体の安定化作用に優れているため、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。また、n−ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸等の鉱酸とを併用すると、ポリオルガノシロキサン(Ea)の水性分散体に使用した乳化剤が、熱可塑性樹脂組成物の発色性に影響を及ぼすことを極力抑えることができる。
水性分散体中のポリオルガノシロキサン(Ea)の体積平均粒子径は、成形品の発色性、耐擦り傷性が優れること、ポリオルガノシロキサン(Ea)を製造する際の水性分散体の粘度上昇や凝塊物 (コアギュラム)発生を防止できることから、0.01〜0.09μmが好ましく、0.02〜0.08μmがより好ましい。
なお、ポリオルガノシロキサン(Ea)の体積平均粒子径を制御する方法としては、例えば、特開平5−279434号公報に記載された方法を採用できる。
<ポリ(メタ)アクリル酸エステル(Eb)>
ポリ(メタ)アクリル酸エステル(Eb)は、(メタ)アクリル酸エステル由来の単位と、架橋剤由来の単位およびグラフト交叉剤由来の単位のいずれか一方または両方とを有する共重合体である。
なお、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(Eb)において、架橋剤またはグラフト交叉剤に相当する(メタ)アクリル酸エステルは、架橋剤またはグラフト交叉剤であり、(メタ)アクリル酸エステルには該当しないものとする。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アルキル基の炭素数が1〜12である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;フェニル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸エチルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルは、1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
架橋剤およびグラフト交叉剤はそれぞれ、成形品の耐衝撃性、発色性を改善する。
架橋剤としては、ジメタクリレート系化合物、具体例には、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
グラフト交叉剤としては、アリル化合物、具体的には、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル等が挙げられる。
ポリ(メタ)アクリル酸エステル(Eb)中、架橋剤由来の単位およびグラフト交叉剤由来の単位の合計量は、成形品の耐衝撃性、発色性が優れ、グラフト共重合体(F)製造時の凝塊物(コアギュラム)が少なくなることから、ポリ(メタ)アクリル酸エステル(Eb)を構成する全単位の合計100質量%のうち、0.1〜5質量%が好ましく、0.2〜3質量%がより好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。
<複合ゴム状重合体(E)>
複合ゴム状重合体(E)は、ポリオルガノシロキサン(Ea)とポリ(メタ)アクリル酸エステル(Eb)とからなる。
複合ゴム状重合体(E)の総質量(100質量%)に対するポリオルガノシロキサン(Ea)の含有率は、1〜20質量%が好ましく、3〜18質量%がより好ましい。ポリオルガノシロキサン(Ea)の含有率が前記範囲の下限値以上であれば、成形品の耐衝撃性、耐擦り傷性がより優れ、前記範囲の上限値以下であれば、耐衝撃性がより優れる。
複合ゴム状重合体(E)の製造方法としては特に制限されない。例えば、別々に製造したポリオルガノシロキサン(Ea)の水性分散体とポリ(メタ)アクリル酸エステル(Eb)の水性分散体とをヘテロ凝集または共肥大化する方法、ポリオルガノシロキサン(Ea)の水性分散体およびポリ(メタ)アクリル酸エステル(Eb)の水性分散体のいずれか一方の中で、他方の重合体を形成させて複合化させる方法等が挙げられる。これらの方法により、複合ゴム状重合体(E)の水性分散体が得られる。
複合ゴム状重合体(E)の製造方法としては、成形品の耐衝撃性および発色性がより優れることから、ポリオルガノシロキサン(Ea)の水性分散体中で、(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、架橋剤およびグラフト交叉剤のいずれか一方または両方とを含む単量体混合物を乳化重合させる方法が好ましい。例えば、室温下、ポリオルガノシロキサン(Ea)の水性分散体に、乳化剤と、前記単量体混合物とを加えて40〜80℃に昇温し、ラジカル重合開始剤を加えて0.5〜3時間程度重合させることにより、複合ゴム状重合体(E)の水性分散体が得られる。
乳化重合で使用される乳化剤の好ましい具体例としては、オレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸のナトリウムまたはカリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
乳化剤としては、熱可塑性樹脂組成物の成形時のガス発生をより抑制できる点から、一分子中に官能基を二つ以上有する酸型乳化剤またはその塩が好ましく、中でも、アルケニルコハク酸ジカリウム又はアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等が挙げられる。これらのうち、レドックス系開始剤が好ましく、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が特に好ましい。
水性分散体に分散している複合ゴム状重合体(E)の体積平均粒子径は、成形品の耐衝撃性と発色性が優れる点から、0.05〜0.18μmが好ましく、0.07〜0.15μmがより好ましい。
複合ゴム状重合体(E)の体積平均粒子径を制御する方法として、特に制限されないが、乳化剤の種類または使用量を調整する方法等が挙げられる。
なお、グラフト共重合体(F)が複合ゴム状重合体(E)の水性分散体を用いて得られたものである場合、前記水性分散体中の複合ゴム状重合体(E)の平均粒子径が、そのまま熱可塑性樹脂組成物中の複合ゴム状重合体(E)の体積平均粒子径を示すことを、電子顕微鏡の画像解析によって確認している。
<ビニル系単量混合物(m2)>
ビニル系単量体混合物(m2)は、単量体として少なくとも、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
ビニル系単量体混合物(m2)は、必要に応じて、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステル以外の他のビニル系単量体をさらに含んでもよい。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−またはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられ、成形品の発色性、耐衝撃性の点から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シアン化ビニル化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。シアン化ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、アクリル酸エステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等)、メタクリル酸エステル(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等)等が挙げられ、成形品の発色性、耐衝撃性の点から、メタクリル酸メチルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のビニル系単量体としては、マレイミド系化合物(N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等)等が挙げられる。他のビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ビニル系単量体混合物(m2)は、上記の中でも、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物を含むことが好ましい。
ビニル系単量体混合物(m2)において、芳香族ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体混合物(m2)の総質量(100質量%)に対し、60〜85質量%が好ましく、62〜80質量%がより好ましい。芳香族ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れる。
シアン化ビニル化合物の含有率は、ビニル系単量体混合物(m2)の総質量(100質量%)に対し、15〜40質量%が好ましく、20〜38質量%がより好ましい。シアン化ビニル化合物の含有率が前記範囲内であれば、成形品の発色性、耐衝撃性がさらに優れる。
<グラフト共重合体(F)>
グラフト共重合体(F)は、複合ゴム状重合体(E)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)を重合することによって得られたものである。
なお、グラフト共重合体(F)は、複合ゴム状重合体(E)とビニル系単量体混合物(m2)とがどのように重合しているか、特定することは困難である。すなわち、グラフト共重合体(F)をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的でないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、「複合ゴム状重合体(E)の存在下にビニル系単量体成分(m2)を重合することによって得られたもの」と規定することがより適切とされる。
グラフト共重合体(F)は、複合ゴム状重合体(E)20〜90質量%の存在下に、ビニル系単量体混合物(m2)10〜80質量%(ただし、複合ゴム状重合体(E)とビニル系単量体混合物(m2)との合計は100質量%である)を重合して得られたものであることが好ましく、複合ゴム状重合体(E)25〜85質量%の存在下に、ビニル系単量体混合物(m2)15〜75質量%を重合して得られたものであることがより好ましく、複合ゴム状重合体(E)30〜80質量%の存在下に、ビニル系単量体混合物(m2)20〜70質量%を重合して得られたものであることがさらに好ましい。
複合ゴム状重合体(E)とビニル系単量体混合物(m2)との合計100質量%中の複合ゴム状重合体(E)の含有率が前記範囲内であれば、グラフト共重合体(F)の生産性が良好であるとともに、成形品の発色性、耐衝撃性がより優れる。
グラフト共重合体(F)は、複合ゴム状重合体(E)の存在下にビニル系単量体混合物(m2)を重合することにより得られる。
ビニル系単量体混合物(m2)の重合方法としては、例えば乳化重合法が挙げられる。
乳化重合法によるグラフト共重合体(F)の製造は、例えば、複合ゴム状重合体(E)の水性分散体にビニル系単量体混合物(m2)を加え、乳化剤の存在下でビニル系単量体混合物(m2)をラジカル重合させることにより行うことができる。これにより、グラフト共重合体(F)の水性分散体が得られる。
重合の際、グラフト率およびグラフト成分の分子量を制御するため、各種公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
ラジカル重合の重合条件は、特に限定されず、例えば60〜90℃で1〜4時間の重合条件が挙げられる。
ラジカル重合の際に用いるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等が挙げられる。これらのうち、レドックス系開始剤が好ましく、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が特に好ましい。
乳化剤としては、複合ゴム状重合体(E)を乳化重合法で製造する際に用いる乳化剤と同様のものが挙げられる。複合ゴム状重合体(E)の水性分散体に含まれる乳化剤をそのまま用い、ビニル系単量体混合物(m2)の重合の際に乳化剤を追加しなくてもよいし、必要に応じてビニル系単量体混合物(m2)の重合の際に乳化剤を追加してもよい。
グラフト共重合体(F)の水性分散体からグラフト共重合体(F)を回収する方法としては、(i)凝固剤を溶解させた熱水中にグラフト共重合体(F)の水性分散体を投入して、スラリー状態に凝析することによって回収する方法(湿式法)、(ii)加熱雰囲気中にグラフト共重合体(F)の水性分散体を噴霧することにより、半直接的にグラフト共重合体(F)を回収する方法(スプレードライ法)、等が挙げられる。
凝固剤としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩等が挙げられる。凝固剤は、重合で用いた乳化剤に対応させて選定される。すなわち、脂肪酸石鹸、ロジン酸石鹸等のカルボン酸石鹸のみを用いた場合、どのような凝固剤を用いてもよい。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の酸性領域でも安定な乳化力を示す乳化剤が含まれている場合、金属塩を用いる必要がある。
スラリー状態のグラフト共重合体(F)から乾燥状態のグラフト共重合体(F)を得る方法としては、洗浄によって、スラリーに残存する乳化剤残渣を水中に溶出させた後に、以下の(i−1)または(i−2)の処理を行う方法等が挙げられる。
(i−1)前記スラリーを遠心脱水機またはプレス脱水機で脱水し、さらに気流乾燥機等で乾燥する。
(i−2)圧搾脱水機、押出機等で前記スラリーの脱水と乾燥とを同時に実施する。
乾燥後には、グラフト共重合体(F)は、粉体または粒子状で得られる。また、圧搾脱水機または押出機から排出されたグラフト共重合体(F)を直接、熱可塑性樹脂組成物を製造する押出機または成形機に送ることもできる。
グラフト共重合体(F)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<ビニル系単量体混合物(m3)>
ビニル系単量体混合物(m3)は、単量体として少なくとも、メタクリル酸エステルを含む。
ビニル系単量体混合物(m3)は、必要に応じて、マレイミド系化合物、芳香族ビニル化合物、アクリル酸エステル、およびメタクリル酸エステルと共重可能な他のビニル系単量体からなる群から選ばれた少なくとも1種のビニル系単量体をさらに含んでもよい。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等が挙げられる。成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸エチルの少なくとも一方を含むことが好ましい。メタクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
マレイミド系化合物としては、例えば、N−アルキルマレイミド(N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−i−ブチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド等)、N−シクロアルキルマレイミド(N−シクロヘキシルマレイミド等)、N−アリールマレイミド(N−フェニルマレイミド、N−アルキル置換フェニルマレイミド、N−クロロフェニルマレイミド等)等が挙げられる。成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、N−アリールマレイミドが好ましく、N−フェニルマレイミドが特に好ましい。マレイミド系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−またはp−メチルスチレン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。成形品の耐熱性および耐衝撃性がさらに優れる点から、アクリル酸メチルが好ましい。アクリル酸エステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のビニル系単量体としては、例えば、シアン化ビニル化合物(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)等が挙げられる。他のビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
より優れた耐熱性が成形品に要求される場合には、ビニル系単量体混合物(m3)は、メタクリル酸エステルに加えて、マレイミド系化合物および芳香族ビニル化合物のいずれか一方または両方をさらに含むことが好ましい。
ビニル系単量体混合物(m3)において、メタクリル酸エステルの含有率は、成形品の耐引掻き傷性、発色性、きしみ音抑制効果がさらに優れる点から、ビニル系単量体混合物(m3)の総質量(100質量%)に対し、50〜100質量%が好ましい。
ビニル系単量体混合物(m3)としては、ビニル系単量体混合物(m3)の総質量(100質量%)に対し、メタクリル酸エステルの含有率が50〜98質量%、マレイミド系化合物の含有率が1〜30質量%、芳香族ビニル化合物の含有率が1〜15質量%であるものが特に好ましい。メタクリル酸エステル、マレイミド系化合物、芳香族ビニル化合物それぞれの含有率が前記範囲内であれば、成形品の耐引掻き傷性、発色性、耐熱性がさらに優れる。
<メタクリル酸エステル樹脂(G)>
メタクリル酸エステル樹脂(G)は、ビニル系単量体混合物(m3)を重合することによって得られたものであり、少なくともメタクリル酸エステル由来の単位を含む。
メタクリル酸エステル樹脂(G)におけるメタクリル酸エステル由来の単位の含有率は、成形品の耐引掻き傷性、発色性、きしみ音抑制効果がさらに優れる点から、メタクリル酸エステル樹脂(G)を構成する全単位の合計質量(100質量%)に対し、50〜100質量%が好ましい。
メタクリル酸エステル樹脂(G)としては、全単位の合計質量(100質量%)に対し、メタクリル酸エステル由来の単位の含有率が50〜98質量%、マレイミド系化合物由来の単位の含有率が1〜30質量%、芳香族ビニル化合物由来の単位の含有率が1〜15質量%である共重合体が特に好ましい。メタクリル酸エステル樹脂(G)がこのような共重合組成を有するものであれば、成形品の耐引掻き傷性、発色性、耐熱性がさらに優れる。
なお、ビニル系単量体混合物(m3)が2種以上の単量体を含む場合、メタクリル酸エステル樹脂(G)は、典型的には、これら2種以上の単量体由来の単位がランダムに配列したランダム共重合体である。
メタクリル酸エステル樹脂(G)の質量平均分子量は、100,000〜300,000が好ましく、120,000〜220,000がより好ましい。
メタクリル酸エステル樹脂(G)の質量平均分子量(Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定し、標準ポリスチレンで換算した値である。
メタクリル酸エステル樹脂(G)は、ビニル系単量体混合物(m3)を重合することにより得られる。
ビニル系単量体混合物(m3)の重合方法は、特に限定されない。重合方法としては、公知の重合方法(乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法等)が挙げられる。
乳化重合法によるメタクリル酸エステル樹脂(G)の製造方法としては、例えば、反応器内にビニル系単量体混合物(m3)と乳化剤と重合開始剤と連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、メタクリル酸エステル樹脂(G)を含む水性分散体から析出法によってメタクリル酸エステル樹脂(G)を回収する方法が挙げられる。
乳化重合の重合条件は、特に限定されず、例えば、40〜120℃で1〜15時間の重合条件が挙げられる。
乳化剤としては、通常の乳化重合用乳化剤(ロジン酸カリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等)が挙げられる。
重合開始剤としては、有機、無機の過酸化物系開始剤が挙げられる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、テルペン類等が挙げられる。
析出法としては、水性分散体からグラフト共重合体(D)を回収するときと同様の方法を採用できる。
懸濁重合法によるメタクリル酸エステル樹脂(G)の製造方法としては、例えば、反応器内にビニル系単量体混合物(m3)と懸濁剤と懸濁助剤と重合開始剤と連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、スラリーを脱水、乾燥してメタクリル酸エステル樹脂(G)を回収する方法が挙げられる。
懸濁重合の重合条件は、特に限定されず、例えば、40〜120℃で1〜15時間の重合条件が挙げられる。
懸濁剤としては、トリカルシウムフォスファイト、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
懸濁助剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
重合開始剤としては、有機ペルオキシド類が挙げられる。
連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、テルペン類等が挙げられる。
メタクリル酸エステル樹脂(G)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<有機染料(H)>
有機染料(H)は、メチン系合成染料(Ha)と、アントラキノン系合成染料、ペリノン系合成染料、アゾ系合成染料およびキノリン系合成染料からなる群から選ばれた少なくとも一種の原色染料(Hb)とが、黒色になるように調合されたものである。
メチン系合成染料(Ha)の具体例としては、Solvent Orange 80、Solvent Orenge 107、Solvent Yellow 93のカラーインデックスで市販されているメチン系合成染料が挙げられる。
アントラキノン系合成染料の具体例としては、Solvet Blue 35、Solvent Green 3、Solvent Orange 28、Solvent Red 111、Solvent Red 168、Solvent Red 207、Disperse Red 22、Solvent Red 52、Disperse Red 60、Disperse Violet 31、Solvent Blue 36、Solvent Blue 83、Solvent Blue 97、Solvent Blue 78、Solvent Blue 94、Solvent Blue 63、Solvent Blue 87、Solvent Red 149、Solvent GREEN 28、Solvent Red 151、Solvent Red 150等のカラーインデックスで市販されているアントラキノン系合成染料が挙げられる。
ペリノン系合成染料の具体例としては、Solvent Orange 60、Solvent Red 135、Solvent Red 179のカラーインデックスで市販されているペリノン系合成染料が挙げられる。
アゾ系合成染料の具体例としては、Solvent Yellow 14、Solvent Yellow 16、Solvent Red 23、Solvent Red 24、Solvent Red 27のカラーインデックスで市販されているアゾ系合成染料が挙げられる。
キノリン系合成染料の具体例としては、Solvent Yellow 33、Solvent Yellow 157、Disperce Yellow 54、Disperse Yellow 160のカラーインデックスで市販されているキノリン系合成染料が挙げられる。
これらの合成染料はそれぞれ、一種単独では黒色ではなく、色調の異なる複数種が組み合わされることで黒色を呈する。複数種の合成染料の組み合わせおよびそれらの質量比は、各合成染料の色調に応じて、それらを混合したときに黒色を呈するように適宜設定される。色調の組み合わせの例としては、特に限定するものではないが、オレンジ色と緑色と赤色との組み合わせが挙げられる。例えば、Solvent Orange 107とSolvent Green 3とSolvent Red 52とを、Solvent Orange 107:Solvent Green 3:Solvent Red 52=1:1:1の質量比で混合することで、黒色を呈する有機染料が得られる。
<他の熱可塑性樹脂>
他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリアミド(例えばナイロン)等が挙げられる。
<各種添加剤>
各種添加剤としては、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、顔料、充填剤、シリコーンオイル、パラフィンオイル等が挙げられる。
<各成分の含有量>
熱可塑性樹脂組成物において、グラフト共重合体(D)に含まれるエチレン・α−オレフィン共重合体(エチレン・α−オレフィン共重合体(A)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C))と、グラフト共重合体(F)に含まれる複合ゴム状重合体(E)との合計質量(100質量%)に対する前記エチレン・α−オレフィン共重合体の割合は、1〜85質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体と前記複合ゴム状重合体(E)との合計質量(100質量%)に対する前記複合ゴム状重合体(E)の割合は、15〜99質量%が好ましく、30〜70質量%がより好ましい。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体および前記複合ゴム状重合体(E)の割合がそれぞれ前記範囲内であれば、成形品の耐衝撃性、発色性、耐擦り傷性、色調安定性、きしみ音抑制効果がさらに優れる。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体と前記複合ゴム状重合体(E)との合計の含有量(ゴム含有量)は、成形品の耐衝撃性、耐熱性、発色性、耐引っ掻き傷性のバランスに優れる点から、熱可塑性樹脂組成物の総質量(100質量%)に対し、5〜25質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。
グラフト共重合体(D)とグラフト共重合体(F)との合計の含有量は、成形品の耐衝撃性、耐熱性、発色性、耐引っ掻き傷性のバランスに優れる点から、グラフト共重合体(D)とグラフト共重合体(F)とメタクリル酸エステル樹脂(G)との合計質量(100質量%)に対し、7〜50質量%が好ましく、14〜40質量%がより好ましい。
なお、グラフト共重合体(D)とグラフト共重合体(F)とメタクリル酸エステル樹脂(G)との合計質量は、グラフト共重合体(F)を含まない場合は、グラフト共重合体(D)とメタクリル酸エステル樹脂(G)との合計質量に等しい(以下同様)。
メタクリル酸エステル樹脂(G)の含有量は、成形品の耐衝撃性、耐熱性、発色性、耐引っ掻き傷性のバランスに優れる点から、グラフト共重合体(D)とグラフト共重合体(F)とメタクリル酸エステル樹脂(G)との合計質量(100質量%)に対し、93〜50質量%が好ましく、86〜60質量%がより好ましい。
有機染料(H)の含有量は、グラフト共重合体(D)とグラフト共重合体(F)とメタクリル酸エステル樹脂(G)との合計100質量部に対し、0.1〜3質量部が好ましく、0.1〜2.5質量部がより好ましい。有機染料(H)の含有量が前記範囲内であれば、成形品の耐傷付き性、発色性のバランスが優れる。
有機染料(H)中のメチン系合成染料(Ha)の含有量は、グラフト共重合体(D)とグラフト共重合体(F)とメタクリル酸エステル樹脂(G)との合計100質量部に対し、0.01〜2質量部が好ましく、0.1〜2.0質量部がより好ましい。メチン系合成染料(Ha)の含有量が前記範囲内であれば、成形品の耐傷付き性、発色性、色調安定性のバランスに優れる。
<体積平均粒子径>
熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(D)に含まれるエチレン・α−オレフィン共重合体(エチレン・α−オレフィン共重合体(A)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C))の体積平均粒子径は、成形品の耐衝撃性と発色性が優れる点から、0.2〜0.6μmが好ましく、0.3〜0.5μmがより好ましい。
熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(F)に含まれる複合ゴム状重合体(E)の体積平均粒子径は、成形品の耐衝撃性と発色性が優れる点から、0.05〜0.18μmが好ましく、0.07〜0.15μmがより好ましい。
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(D)と、メタクリル酸エステル樹脂(G)と、有機染料(H)と、必要に応じて他の成分(グラフト共重合体(F)、他の熱可塑性樹脂、添加剤)を混合することにより得られる。
グラフト共重合体(D)、メタクリル酸エステル樹脂(G)、グラフト共重合体(F)はそれぞれ、前記の手順で得たものを用いることができる。
有機染料(H)は、予め前記メチン系合成染料(Ha)と前記原色染料(Hb)とが混合されているものを用いてもよく、前記メチン系合成染料(Ha)および前記原色染料(Hb)をそれぞれ個別にグラフト共重合体(D)等に添加して混合してもよい。
<作用効果>
以上説明した本発明の熱可塑性樹脂組成物にあっては、エチレン・α−オレフィン共重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれた少なくとも一種のビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたグラフト共重合体(D)と;メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(m3)を重合して得られたメタクリル酸エステル樹脂(G)と;前記メチン系合成染料(Ha)と前記原色染料(Hb)とが黒色になるように調合された有機染料(H)とを含むため、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性、色調安定性、きしみ音抑制効果に優れる成形品を得ることができる。また、メタクリル酸エステル樹脂(G)として特定の共重合組成(例えば前記段落0114に記載の組成)のものを用いれば、耐熱性にも優れる。さらに、成形品に耐熱性を付与しても、耐衝撃性を損なうことがない。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐傷付き性や色調安定性、きしみ音抑制効果に優れる成形品を得ることができるため、車両内外装部品での使用も可能である。
「成形品」
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を公知の成形方法によって成形加工して得られる。
成形方法としては、例えば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
成形品の用途としては、車輌内装・外装部品、事務機器、家電、建材等が挙げられ、車輌内装・外装部品が好適である。
以上説明した本発明の成形品にあっては、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いているため、耐衝撃性、発色性、耐傷付き性、色調安定性、きしみ音抑制効果に優れる。さらに、メタクリル酸エステル樹脂(G)として特定の共重合組成のものを用いれば、耐熱性にも優れる。
以下、具体的に実施例を示す。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
以下に記載の「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
以下の実施例および比較例における各種測定および評価方法は、以下の通りである。
<エチレン・α−オレフィン共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)の測定方法>
GPC装置(GPC:Waters社製「GPC/V2000」、カラム:昭和電工社製「Shodex AT−G+AT−806MS」)を用い、o−ジクロロベンゼン(145℃)を溶媒として、ポリスチレン換算での質量平均分子量(Mw)、数平均分子量分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
<メタクリル酸エステル樹脂(G)の質量平均分子量(Mw)の測定方法>
GPC(GPC:東ソー社製「HLC8220」、カラム:東ソー社製「TSK GEL SuperHZM−H」を用い、テトラヒドロフラン(THF:40℃)の溶媒として、ポリスチレン換算での質量平均分子量(Mw)を測定した。
<酸価の測定方法>
JIS K 2501に準拠して酸価を測定した。
<体積平均粒子径の測定方法>
マイクロトラック(日機装社製「ナノトラック150」)を用い、測定溶媒として純水を用いて体積平均粒子径(MV)を測定した。
なお、オレフィン樹脂水性分散体(B)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(A)や、水性分散体に分散している架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)や、水性分散体に分散している複合ゴム状重合体(E)の体積平均粒子径が、そのまま熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)や架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)や複合ゴム状重合体(E)の体積平均粒子径を示すことを、電子顕微鏡の画像解析によって確認している。
<ゲル含有率の測定方法>
架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の水性または溶媒分散体を希硫酸にて凝固させ、水洗、乾燥して得られる凝固粉試料[D1]0.5gを、200mL、110℃のトルエン中に5時間浸漬し、次いで、200メッシュ金網にて濾過し、残渣を乾燥し、その乾燥物[D2]の質量を測定し、下記式(1)から、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のゲル含有率を求めた。
ゲル含有率(%)=乾燥物質量[D2](g)/凝固粉試料質量[D1](g)×100 ・・・(1)
<グラフト率の測定方法>
グラフト共重合体(D)1gを80mLのアセトンに添加し、65〜70℃にて3時間加熱還流し、得られた懸濁アセトン溶液を遠心分離機(日立工機社製「CR21E」)にて14,000rpm、30分間遠心分離して、沈殿成分(アセトン不溶成分)とアセトン溶液(アセトン可溶成分)を分取した。そして、沈殿成分(アセトン不溶成分)を乾燥させてその質量(Y(g))を測定し、下記式(2)からグラフト率を算出した。なお、式(2)におけるYは、グラフト共重合体(D)のアセトン不溶成分の質量(g)、Xは、Yを求める際に用いたグラフト共重合体(D)の全質量(g)、ゴム分率は、グラフト共重合体(D)のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)または架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の固形分の含有割合である。
グラフト率(%)={(Y−X×ゴム分率)/(X×ゴム分率)}×100 ・・・(2)
<溶融混練>
後述する表8〜11に示す配合でグラフト共重合体(D)、メタクリル酸エステル樹脂(G)、必要に応じてグラフト共重合体(F)や他の成分を混合し、グラフト共重合体(D)とグラフト共重合体(F)とメタクリル酸エステル樹脂(G)の合計100部に対して、表8〜11に示す配合量で有機染料(H)を混合して着色し、30mmφの真空ベント付き2軸押出機(池貝社製「PCM30」)で、シリンダー温度200〜260℃、93.325kPa真空にて溶融混練を行い、熱可塑性樹脂組成物を得た。また、必要に応じて溶融混練後に、ペレタイザー(創研社製「SH型ペレタイザー」)を用いてペレット化を行った。
<物性評価用成形品の作成1>
各例で得た熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成型機(東芝機械社製、「IS55FP−1.5A」)によりシリンダー温度200〜270℃、金型温度60℃の条件で射出成形して、100×100mm(厚さ3mm)の黒着色板を得た。これを成形品(Ma)とした。
<物性評価用成形品の作成2>
各例で得た熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成型機(東芝機械社製、「IS55FP−1.5A」)によりシリンダー温度200〜270℃、金型温度60℃の条件で射出成形して、縦80mm、横10mm、厚さ4mmの荷重たわみ温度測定用成形品を得た。これを成形品(Ma2)とした。
<物性評価用成形品の作成3>
各例で得た熱可塑性樹脂組成物のペレットを、射出成形機(住友重機工業製「SG150−SYCAPM IV」)によりシリンダー温度200〜260℃、金型温度60℃の条件で射出成形して、図2に示す構造の2種の成形品(リブ構造21aを有する試験片21および平面部分を有する試験片22)を得た。
<発色性の評価>
成形品(Ma)について、分光測色計(コニカミノルタオプティプス社製「CM−3500d」)を用いて、D65光源における明度Lを、SCE方式にて測定した。こうして測定されたLを「L(ma)」とする。Lが低いほど黒色となり、発色性が良好である。
<色調安定性の評価>
成形品(Ma)について、前記分光測色計を用いて、D65光源における明度L、彩度a,bを、SCE方式にて測定した。こうして測定されたLを「L(D65)」、aを「a(D65)」、bを「b(D65)」とする。
成形品(Ma)について、前記分光測色計を用いて、A光源における明度L、彩度a,bを、SCE方式にて測定した。こうして測定されたLを「L(A)」、aを「a(A)」、bを「b(A)」とする。
(色調安定性の判定)
色調安定性の判定指標ΔE(A−D65)を下記式(3)から算出した。ΔE(A−D65)の絶対値が大きいほど色調安定性に劣る。
ΔE(A−D65)={[L(A)−L(D65)]+[a(A)−a(D65)]+[b(A)−b(D65)]1/2 ・・・(3)
A光源の光は夕日に近く、D65光源の光は昼の北窓の光に近い。
ΔE(A−D65)の絶対値が0.3以下のとき、光源変更時の色調変化が目立たず、時間や場所によって成形品の意匠性が低下することは無い。
ΔE(A−D65)の絶対値が0.3超〜0.5以下のとき、光源変更時の色調変化が目立ちにくい。
ΔE(A−D65)の絶対値が0.5超のとき、光源変更時の色調変化が目立ち、時間や場所によって成形品の意匠性が低下する。
<耐衝撃性の評価:落球衝撃強度測定>
−30℃に温調した成形品(Ma)を試料とし、この試料の3枚それぞれについて、落球衝撃強度を測定した。重さ200gの鋼球を10cmの高さから落下させ、割れなければ10cm毎に落下高さを高くして割れや亀裂発生の有無を確認した。試料3枚中、割れや亀裂が2枚以上発生しなかった落下高さを落球衝撃高さとした。落球衝撃高さが高いほど、耐衝撃性に優れる。
<耐引っ掻き傷性の評価>
鉛筆硬度試験機を用い、750g(7.35N)の荷重で、3Hの硬度の鉛筆を成形品(Ma)の表面に押しつけ、その状態で成形品(Ma)を5cmほど移動させることによって、成形品(Ma)の表面を鉛筆で引っ掻き、成形品(Ma)に傷を付けた。成形品(Ma)に傷を付けたものを成形品(Mb)とした。傷を付けた成形品(Mb)の表面の明度Lを、前記分光測色計を用いて、D65光源で、SCE方式にて測定した。こうして測定されたLを「L(mb)」とする。
(耐引っ掻き傷性の判定)
成形品(Mb)の傷の目立ちやすさの判定指標ΔL(mb−ma)を下記式(4)から算出した。ΔL(mb−ma)の絶対値が大きいほど傷が目立ちやすい。
ΔL(mb−ma)=L(mb)−L(ma) ・・・(4)
ΔL(mb−ma)の絶対値が3.0以下のとき、傷が目立たず、成形品の意匠性を損なわない。
ΔL(mb−ma)の絶対値が3.0超〜7.0以下のとき、傷は目立ちにくく、成形品の意匠性を損なわない。
ΔL(mb−ma)の絶対値が7.0超のとき、傷が目立ち、成形品の意匠性を損なう。
<耐擦り傷性の評価>
図1に示すように、先端部11が半球形に形成された棒状の治具10を用意し、先端部11に、洗車タオル12(株式会社ジョイフル製洗車用タオル3p)を被せた。成形品(Ma)13の表面に対して、棒状の治具10が直角になるように、洗車タオル12が被せられた先端部11を接触させ、先端部11を成形品(Ma)13の表面において水平方向(図中、双方向矢印方向)に摺動させ、100回往復させて成形品(Ma)に傷を付けた。その際、加える荷重は1kg(9.8N)とした。成形品(Ma)に傷を付けたものを成形品(Mc)とした。傷を付けた成形品(Mc)の表面の明度L、彩度a,bを、前記分光測色計を用いて、D65光源で、SCE方式にて測定した。こうして測定されたLを「L(mc)」、aを「a(mc)」、bを「b(mc)」とする。
(耐擦り傷性の判定)
成形品(Mc)の傷の目立ちやすさの判定指標ΔE(mc−D65)を下記式(5)から算出した。ΔE(mc−D65)の絶対値が大きいほど傷が目立ちやすい。
ΔE(mc−D65)={[L(mc)−L(D65)]+[a(mc)−a(D65)]+[b(mc)−b(D65)]1/2 ・・・(5)
ΔE(mc−D65)の絶対値が4.5以下のとき、傷が目立たず、成形品の意匠性を損なわない。
ΔE(mc−D65)の絶対値が4.5超〜7.0以下のとき、傷は目立ちにくく、成形品の意匠性を損なわない。
ΔE(mc―D65)の絶対値が7.0超のとき、傷が目立ち、成形品の意匠性を損なう。
<きしみ音抑制効果の評価>
図2に示すように、平面部分を有する試験片22の上に、リブ構造21aを有する試験片21を配置し、試験片21の上から荷重500g(4.9N)または1kg(9.8N)をかけながら、試験片22を水平方向(図中、双方向矢印方向)に往復運動させた。このときに、きしみ音が発生するか否かを調べ、下記基準で評価した。△以上をきしみ音抑制効果があるとした。
◎:荷重500g(4.9N)と1kg(9.8N)のいずれでもきしみ音が発生しない。
○:荷重1kg(9.8N)の場合は小さなきしみ音が発生するが、500g(4.9N)の場合は発生しない。
△:荷重500g(4.9N)と1kg(9.8N)のいずれでも小さなきしみ音がする。
×:荷重500g(4.9N)と1kg(9.8N)のいずれでもきしみ音が発生する。
<耐熱性の評価>
成形品(Ma2)について、ISO 75−1:2004に準拠し、1.83MPa、4mm、フラットワイズ法で荷重たわみ温度(℃)を測定した。
<各成分>
以下の例では、下記のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)、オレフィン樹脂水性分散体成分(B)、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)、グラフト共重合体(D)、ポリオルガノシロキサン(Ea)、複合ゴム状重合体(E)、グラフト共重合体(F)、メタクリル酸エステル樹脂(G)、有機染料(H)を用いた。
<エチレン・α−オレフィン共重合体(A)>
(エチレン・プロピレン共重合体(A−1)の調製)
20L撹拌機付きステンレス重合槽を十分に窒素置換した後に、脱水精製したヘキサン10Lを添加し、8.0mmol/Lに調製したエチルアルミニウムセスキクロリド(Al(C1.5・Cl1.5)のヘキサン溶液を、5L/hの量で連続的に1時間供給した後、さらに触媒として0.8mmol/Lに調整したVO(OC)Clのヘキサン溶液を5L/hの量で、ヘキサンを5L/hの量で連続的に供給した。一方、重合槽上部から、重合槽内の重合液が常に10Lになるように重合液を連続的に抜き出した。バブリング管を用いてエチレンを2000L/hの量で、プロピレンを1000L/hの量で、水素を8L/hの量で供給し、重合反応を35℃で行った。
前記条件で重合反応を行い、エチレン・プロピレン共重合体(A−1)を含む重合溶液を得た。得られた重合溶液を、塩酸で脱灰した後に、メタノールに投入して析出させた後、乾燥させ、エチレン・プロピレン共重合体(A−1)を得た。エチレン・プロピレン共重合体(A−1)のポリマーの性状を表1に示す。
Figure 2018095722
<オレフィン樹脂水性分散体成分(B)>
(オレフィン樹脂水性分散体(B−1)の調製)
エチレン・プロピレン共重合体(A−1)100部と、酸変性オレフィン重合体として無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井化学社製、「三井ハイワックス 2203A」、質量平均分子量:2,700、酸価:30mg/g)20部と、アニオン系乳化剤としてオレイン酸カリウム5部とを混合した。
この混合物を2軸スクリュー押出機(池貝社製、「PCM30」、L/D=40)のホッパーから4kg/hで供給し、該2軸スクリュー押出機のベント部に設けた供給口より、水酸化カリウム0.5部とイオン交換水2.4部を混合した水溶液を連続的に供給しながら、220℃に加熱して溶融混練して押出した。溶融混練物を2軸スクリュー押出機の先端に取り付けた冷却装置に連続的に供給し、90℃まで冷却した。そして、2軸スクリュー押出機先端より吐出させた固体を、80℃の温水中に投入し、連続的に分散させて、固形分濃度40質量%付近まで希釈して、オレフィン樹脂水性分散体(B−1)を得た。オレフィン樹脂水性分散体(B−1)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の体積平均粒子径を表2に示す。
(オレフィン樹脂水性分散体(B−2)〜(B−5)の調製)
表2に示すように、乳化する際の水酸化カリウムの添加部数、イオン交換水の添加部数を変更した以外は、オレフィン樹脂水性分散体(B−1)と同様にして、オレフィン樹脂水性分散体(B−2)〜(B−5)を得た。
各オレフィン樹脂水性分散体(B−2)〜(B−5)に分散しているエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の体積平均粒子径を表2に示す。
Figure 2018095722
<架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)>
(架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−1)の調製)
オレフィン樹脂水性分散体(B−1)(固形分として100部)に固形分濃度が35%になるようにイオン交換水を加え、有機過酸化物としてt−ブチルクミルペルオキシド0.2部、多官能性化合物としてジビニルベンゼン1部を添加し、130℃で5時間反応させて、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−1)の水性分散体を調製した。架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−1)のゲル含有率、体積平均粒子径を表3に示す。
(架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−2)〜(C−5)の調製)
表3に示すように、t−ブチルクミルペルオキシドの添加量を変更した以外は、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−1)の調製と同様にして、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−2)〜(C−5)の水性分散体を得た。架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C−2)〜(C−5)のゲル含有率、体積平均粒子径を表3に示す。
Figure 2018095722
<グラフト共重合体(D)>
(グラフト共重合体(D−1)の調製)
撹拌機付きステンレス重合槽に、オレフィン樹脂水性分散体(B−1)(エチレン・プロピレン共重合体(A−1)の固形分として70部)を入れ、オレフィン樹脂水性分散体(B−1)に固形分濃度が30%になるようにイオン交換水を加え、硫酸第一鉄0.006部、ピロリン酸ナトリウム0.3部およびフラクトース0.35部を仕込み、温度を80℃とした。スチレン23.4部、アクリロニトリル6.6部およびクメンヒドロペルオキシド0.6部を150分間連続的に添加し、重合温度を80℃に保ち乳化重合を行い、平均粒子径0.41μmのグラフト共重合体(D−1)を含む水性分散体を得た。グラフト共重合体(D−1)を含む水性分散体に酸化防止剤を添加し、硫酸にて固形分の析出を行い、洗浄、脱水、乾燥の工程を経て、粉状のグラフト共重合体(D−1)を得た。グラフト共重合体(D−1)のグラフト率を測定したところ30%であった。
また、後述する実施例において、グラフト共重合体(D−1)を用いた熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の平均粒子径を電子顕微鏡により確認したところ、0.41μmであった。
(グラフト共重合体(D−2)〜(D−5)の調製)
表4に示すようにオレフィン樹脂水性分散体(B)の種類を変更した以外は、グラフト共重合体(D−1)の調製と同様にして、グラフト共重合体(D−2)〜(D−5)を得た。グラフト共重合体(D−2)〜(D−5)のグラフト率を表4に示す。
(グラフト共重合体(D−6)〜(D−10)の調製)
表4に示すようにオレフィン樹脂水性分散体(B)を架橋エチレン・α―オレフィン共重合体(C)の水性分散体に変更した以外は、グラフト共重合体(D−1)の調製と同様にして、グラフト共重合体(D−6)〜(D−10)を得た。グラフト共重合体(D−6)〜(D−10)のグラフト率を表4〜5に示す。
(グラフト共重合体(D−11)の調製)
撹拌機付きステンレス重合槽に、エチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)70部、トルエン300部を仕込み、内容物を70℃で1時間撹拌して均一に溶解した。十分に窒素置換を行った後、スチレン23.4部、アクリロニトリル6.6部、t−ドデシルメルカプタン0.24部、t−ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート0.22部を添加し、内温を110℃まで昇温し、4時間反応させた。内温を120℃に昇温し、2時間反応させた。重合後、内温を100℃まで冷却し、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)−プロピオネート0.2部を添加した。反応混合物を抜き出し、水蒸気蒸留によって未反応物と溶媒を留去した。30mmφの真空ベント付き2軸押出機(池貝社製、「PCM30」)で220℃、93.325kPa真空にて、揮発分を実質的に脱揮させ、ペレット化し、グラフト共重合体(D−11)を得た。グラフト共重合体(D−11)のグラフト率を測定したところ30%であった。
また、後述する実施例において、グラフト共重合体(D−11)を用いた熱可塑性樹脂組成物中のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の平均粒子径を電子顕微鏡により確認したところ、0.4μmであった。
(グラフト共重合体(D−12)の調製)
表5に示すように、スチレンとアクリロニトリルを、スチレンとメタクリル酸メチルに変更した以外は、グラフト共重合体(D−1)の調製と同様にして、グラフト共重合体(D−12)を得た。グラフト共重合体(D−12)のグラフト率を表5に示す。
Figure 2018095722
Figure 2018095722
(グラフト共重合体(D−13)の調製)
アルケニルコハク酸ジカリウム0.7部、イオン交換水175部、アクリル酸n−ブチル100部、メタクリル酸アリル0.26部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.14部、およびt−ブチルヒドロペルオキシド0.2部の混合物を反応器に投入した。反応器に窒素気流を通じることによって、反応器内を窒素置換し、60℃まで昇温した。内温が50℃となった時点で、硫酸第一鉄0.00026部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0008部、ロンガリット0.45部、およびイオン交換水10部からなる水溶液を添加して重合を開始させ、内温を75℃に上昇させた。さらにこの状態を1時間維持し、平均粒子径0.096μmのゴム状重合体(D−13−a)を得た。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱器及び撹拌装置を備えた反応器内に、ゴム状重合体(D−13−a)の分散体(固形分50部)を入れ、ロンガリット0.15部、アルケニルコハク酸ジカリウム0.65部、およびイオン交換水10部からなる水溶液を添加し、ついで、アクリロニトリル6.3部、スチレン18.7部、およびt−ブチルヒドロペルオキシド0.11部からなる混合液を1時間にわたって滴下し、グラフト重合させた。滴下終了から5分後に、硫酸第一鉄0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部、ロンガリット0.15部、およびイオン交換水5部からなる水溶液を添加し、ついで、アクリロニトリル6.2部、スチレン18.8部、t−ブチルヒドロペルオキシド0.19部、およびn−オクチルメルカプタン0.014部からなる混合液を1時間にわたって滴下しグラフト重合させた。滴下終了後、内温を75℃に10分間保持した後、冷却し、内温が60℃となった時点で、酸化防止剤(吉富製薬工業社製、アンテージW500)0.2部およびアルケニルコハク酸ジカリウム0.2部をイオン交換水5部に溶解した水溶液を添加した。ついで、反応生成物の水性分散体を硫酸水溶液で凝固、水洗した後、乾燥してグラフト共重合体(D−13)を得た。
<グラフト共重合体(F)>
(ポリオルガノシロキサン(Ea)の調製)
オクタメチルテトラシクロシロキサン96部、γ−メタクリルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部及びエチルオルソシリケート2部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部を溶解したイオン交換水300部を添加し、ホモミキサーにて10000回転/2分間撹拌した後、ホモジナイザーに30MPaの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサン水性分散体を得た。
また、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱器及び撹拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸2部とイオン交換水98部とを注入し、2%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。この水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサン水性分散体を4時間にわたって滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し冷却した。この反応液を室温で48時間放置した後、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、ポリオルガノシロキサン(Ea)の水性分散体を得た。ポリオルガノシロキサン(Ea)水性分散体の一部を170℃で30分間乾燥して固形分濃度を求めたところ、17.3%であった。また、水性分散体に分散しているポリオルガノシロキサン(Ea)の体積平均粒子径は0.05μmであった。
(グラフト共重合体(F−1)の調製)
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱器及び撹拌装置を備えた反応器内に、ポリオルガノシロキサン(Ea)水性分散体68.3部、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム0.75部を仕込み、イオン交換水203部を添加し、混合した。その後、n−ブチルアクリレート61.8部、アリルメタクリレート0.21部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.11部及びターシャリーブチルハイドロパーオキサイド0.13部からなる混合物を添加した。この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。反応器の内部の温度が60℃になった時点で、硫酸第一鉄0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0003部及びロンガリット0.24部をイオン交換水10部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。アクリレート成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、アクリレート成分の重合を完結させて、ポリオルガノシロキサン(Ea)と、(メタ)アクリル酸エステル系単量体由来の単位と架橋剤および/またはグラフト交叉剤由来の単位とを含有するポリ(メタ)アクリル酸エステルとからなる複合ゴム状重合体(E−1)の水性分散体を得た。また、水性分散体に分散している複合ゴム状重合体(E−1)の体積平均粒子径は0.096μmであった。
反応器内部の液温が60℃に低下した後、ロンガリット0.4部をイオン交換水10部に溶解した水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル11.1部、スチレン33.2部及びターシャリーブチルハイドロパーオキサイド0.2部の混合液を約1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後1時間保持した後、硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部及びロンガリット0.25部をイオン交換水10部に溶解させた水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル7.4部、スチレン22.2部及びターシャリーブチルハイドロパーオキサイド0.1部の混合液を約40分間にわたって滴下し重合した。滴下終了後1時間保持した後、冷却して、複合ゴム状重合体(E−1)にアクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフトさせたグラフト共重合体(F−1)の水性分散体を得た。次いで、酢酸カルシウムを5%の割合で溶解した水溶液150部を60℃に加熱し撹拌した。その酢酸カルシウム水溶液中にグラフト共重合体(F−1)の水性分散体100部を徐々に滴下して凝固させた。得られた凝固物を分離し、洗浄した後、乾燥させて、グラフト共重合体(F−1)の乾燥粉末を得た。
表6に、複合ゴム状重合体(E−1)の水性分散体を得る際に用いたポリオルガノシロキサン(Ea)の使用量、乳化剤の使用量、得られた複合ゴム状重合体(E−1)の体積平均粒子径を示す。
Figure 2018095722
<メタクリル酸エステル樹脂(G)>
(メタクリル酸エステル樹脂(G−1)の調製)
撹拌機付きステンレス重合槽にイオン交換水150部、メタクリル酸メチル99部、アクリル酸メチル1部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2部、n−オクチルメルカプタン0.25部、カルシウムヒドロオキシアパタイト0.47部、アルケニルコハク酸カリウム0.003部を仕込んだ。重合槽の内温を75℃にして3時間反応させ、90℃に昇温し1時間反応させた。内容物を抜き出し、遠心脱水機で洗浄し、乾燥させて粉状のメタクリル酸エステル樹脂(G−1)を得た。用いた単量体を表7に示す。
(メタクリル酸エステル樹脂(G−2)の調製)
撹拌機付きステンレス重合槽にイオン交換水150部、メタクリル酸メチル98部、N−フェニルマレイミド2部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2部、n−オクチルメルカプタン0.25部、ポリビニルアルコール0.7部を仕込んだ。重合槽の内温を75℃にして3時間反応させ、90℃まで昇温し1時間反応させた。内容物を抜き出し、遠心脱水機で洗浄し、乾燥させて粉状のメタクリル酸エステル樹脂(G−2)を得た。用いた単量体を表7に示す。
(メタクリル酸エステル樹脂(G−3)の調製)
撹拌機付きステンレス重合槽にイオン交換水150部、メタクリル酸メチル82部、N−フェニルマレイミド12部、スチレン6部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2部、n−オクチルメルカプタン0.25部、ポリビニルアルコール0.7部を仕込んだ。重合槽の内温を75℃にして3時間反応させ、90℃まで昇温し1時間反応させた。内容物を抜き出し、遠心脱水機で洗浄し、乾燥させて粉状のメタクリル酸エステル樹脂(G−3)を得た。用いた単量体を表7に示す。
(メタクリル酸エステル樹脂(G−4)の調製)
撹拌機付きステンレス重合槽にイオン交換水150部、メタクリル酸メチル56部、N−フェニルマレイミド29部、スチレン15部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2部、n−オクチルメルカプタン0.25部、ポリビニルアルコール0.7部を仕込んだ。重合槽の内温を75℃にして3時間反応させ、90℃まで昇温し1時間反応させた。内容物を抜き出し、遠心脱水機で洗浄し、乾燥させて粉状のメタクリル酸エステル樹脂(G−4)を得た。用いた単量体を表7に示す。
(メタクリル酸エステル樹脂(G−5)の調製)
撹拌機付きステンレス重合槽にイオン交換水150部、メタクリル酸メチル53部、N−フェニルマレイミド31部、スチレン16部、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)0.2部、n−オクチルメルカプタン0.25部、ポリビニルアルコール0.7部を仕込んだ。重合槽の内温を75℃にして3時間反応させ、90℃まで昇温し1時間反応させた。内容物を抜き出し、遠心脱水機で洗浄し、乾燥させて粉状のメタクリル酸エステル樹脂(G−5)を得た。用いた単量体を表7に示す。
Figure 2018095722
<有機染料(H)>
メチン系合成染料(Ha−1):ランクセス(株)製「Solvent Orange 107」。
アントラキノン系合成染料(Hb−1):ランクセス(株)製「Solvent Green 3」。
アゾ系合成染料(Hb−2):ランクセス(株)製「Solvent Red 23」。
ペリノン系合成染料(Hb−3):ランクセス(株)製「Solvent Orange 60」。
アントラキノン系合成染料(Hb−4):ランクセス(株)製「Solvent Red 52」。
[実施例1]
グラフト共重合体(D−1)23部、メタクリル酸エステル樹脂(G−1)77部、メチン系合成染料(Ha)0.01部、アントラキノン系合成染料(Hb−1)0.4部、アントラキノン系合成染料0.4部を混合し、30mmφの真空ベント付き2軸押出機(池貝社製、「PCM30」)で240℃、93.325kPa真空にて溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を調製した。
熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、各種成形品を成形し、耐衝撃性、耐熱性、発色性、耐引っ掻き傷性、耐擦り傷性、色調安定性、きしみ音抑制効果を評価した。結果を表8に示す。
[実施例2〜28]
表8〜10に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を調製した。
熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、各種成形品を成形し、耐衝撃性、耐熱性、発色性、耐引っ掻き傷性、耐擦り傷性、色調安定性、きしみ音抑制効果を評価した。結果を表8〜10に示す。
[比較例1〜6]
表11に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を調製した。
熱可塑性樹脂組成物をペレット化し、各種成形品を成形し、耐衝撃性、耐熱性、発色性、耐引っ掻き傷性、耐擦り傷性、色調安定性、きしみ音抑制効果を評価した。結果を表11に示す。
Figure 2018095722
Figure 2018095722
Figure 2018095722
Figure 2018095722
実施例1〜28の熱可塑性樹脂組成物で得られた成形品は、耐衝撃性、耐熱性、発色性、耐引っ掻き傷性、耐擦り傷性、色調安定性、きしみ音抑制効果が優れていた。
したがって、本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いると、耐衝撃性、耐熱性、発色性、耐引っ掻き傷性、耐擦り傷性、色調安定性、きしみ音抑制効果に優れた成形品が得られ、車輌内外装部品、事務機器、家電、建材等の用途に適用できることがわかる。
一方、熱可塑性樹脂組成物を黒色に着色するための有機染料としてメチン系合成染料を含まないものを用いた比較例1〜5では、有機染料が適切でないため、成形品の耐擦り傷性、色調安定性が劣っていた。それらのうち、エチレン・α−オレフィン共重合体を含まないグラフト共重合体を用いた比較例1〜2では、耐衝撃性、きしみ音抑制効果も低く、特に比較例1では発色性も低かった。比較例1における有機染料を、メチン系合成染料を含むものに変更した比較例6では、発色性、色調安定性は改善したが、耐衝撃性、きしみ音抑制効果は依然として低かった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品は、車輌内外装部品、事務機器、家電、建材等として有用である。
10 治具
11 先端部
12 洗車タオル
13 成形品(Ma)
21 試験片
21a リブ構造
22 試験片

Claims (7)

  1. エチレン・α−オレフィン共重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれた少なくとも一種のビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(m1)を重合して得られたグラフト共重合体(D)と、
    メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(m3)を重合して得られたメタクリル酸エステル樹脂(G)と、
    メチン系合成染料(Ha)と、アントラキノン系合成染料、ペリノン系合成染料、アゾ系合成染料およびキノリン系合成染料からなる群から選ばれた少なくとも一種の原色染料(Hb)とが黒色になるように調合された有機染料(H)と、を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記エチレン・α−オレフィン共重合体が、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. ポリオルガノシロキサン(Ea)と、(メタ)アクリル酸エステル由来の単位と架橋剤由来の単位およびグラフト交叉剤由来の単位のいずれか一方または両方とを含有するポリ(メタ)アクリル酸エステル(Eb)とからなる複合ゴム状重合体(E)の存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれた少なくとも一種のビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(m2)を重合して得られたグラフト共重合体(F)をさらに含む、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品。
  5. エチレン・α−オレフィン共重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれた少なくとも一種のビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(m1)を重合してグラフト共重合体(D)を得る工程と、
    メタクリル酸エステルを含むビニル系単量体混合物(m3)を重合してメタクリル酸エステル樹脂(G)を得る工程と、
    メチン系合成染料(Ha)と、アントラキノン系合成染料、ペリノン系合成染料、アゾ系合成染料およびキノリン系合成染料からなる群から選ばれた少なくとも一種の原色染料(Hb)とが黒色になるように調合された有機染料(H)と、前記グラフト共重合体(D)と、前記メタクリル酸エステル樹脂(G)とを混合して熱可塑性樹脂組成物を得る工程と、を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  6. 前記エチレン・α−オレフィン共重合体が、架橋エチレン・α−オレフィン共重合体(C)である、請求項5に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  7. ポリオルガノシロキサン(Ea)と、(メタ)アクリル酸エステル由来の単位と架橋剤由来の単位およびグラフト交叉剤由来の単位のいずれか一方または両方とを含有するポリ(メタ)アクリル酸エステル(Eb)とからなる複合ゴム状重合体(E)の存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれた少なくとも一種のビニル系単量体を含むビニル系単量体混合物(m2)を重合してグラフト共重合体(F)を得る工程をさらに含み、
    前記熱可塑性樹脂組成物を得る工程で、前記有機染料(H)と、前記グラフト共重合体(D)と、前記メタクリル酸エステル樹脂(G)と、前記グラフト共重合体(F)とを混合する請求項5または6に記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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