JP2013014661A - 黒色樹脂組成物および黒色成形品 - Google Patents

黒色樹脂組成物および黒色成形品 Download PDF

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Abstract

【課題】耐衝撃性、流動性、表面硬度、耐熱性に優れ、高級漆器のような質感と透明感を備えた漆黒の外観を有する特定のビスフェノール構造単位から誘導された芳香族ポリカーボネート樹脂に着色剤を添加した黒色樹脂組成物、および黒色成形品を提供する。
【解決手段】(A)全芳香族ジヒドロキシ成分の90モル%以上が、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン成分(成分a−1)および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン成分(成分a−2)であり、成分a−1と成分a−2との割合がモル比で40:60〜90:10の範囲である芳香族ジヒドロキシ成分から得られた粘度平均分子量が1.8×10〜3.2×10である芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、着色剤(B成分)0.01〜5重量部を含有する黒色に着色された樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、漆黒性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる樹脂成形品に関する。更に詳しくは耐衝撃性、流動性、耐傷擦性、耐熱性に優れ、特定のビスフェノール構造単位から誘導された芳香族ポリカーボネート樹脂に着色剤を添加した高級漆器のような質感と透明感を備えた漆黒の外観を有する黒色樹脂組成物および黒色成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性に優れていることから、エンジニアリングプラスチックとして、電気・電子・OA機器の筐体や部品、自動車用内装・外装部品、家具、楽器、雑貨類などの幅広い分野で使用されている。
一方、ポリカーボネート樹脂はJIS K5600−5−4に記載の塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)に準拠して測定した鉛筆硬度は2B程度に過ぎず、表面が軟らかく傷つきやすい。特に、携帯電話、液晶テレビ、スピーカー、携帯ゲーム機、ノートパソコンに代表される電気・電子・OA機器の筐体やインテリアパネル、ドアハンドル、ステアリング、カーオーディオ・カーナビゲーションフレーム、シフトノブに代表される自動車用内装、ルーフスポイラー、ウィンドウガーニッシュ等に代表される自動車外装部品、家具、楽器類では、高級感を醸し出すために、高級漆器のような質感と透明感のある漆黒性が求められており、表面の引っかき傷は致命的な外観不良となる。
ポリカーボネート樹脂の耐傷擦性を向上させる方法として、一般的に樹脂表面に塗装することにより、漆黒性と耐傷つき防止性を付与させることが知られている。しかしながら、塗料の樹脂表面に対する濡れ性や塗装工程の環境条件の影響によってピンホール、クラック、ハジキ、ゆず肌(オレンジピール)といった外観不良や塗装の密着不良が発生し、塗装工程の歩留まりが著しく低下し、生産性が劣ることが課題である。
また、塗装をせずにポリカーボネート樹脂の耐傷擦性を向上させる手法として、樹脂表面にアクリル樹脂フィルム、またはシートを積層する方法が知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、アクリル樹脂はポリカーボネート樹脂よりも耐熱性が低く、更に吸水しやすいため、温湿度による寸法変化が大きく、最終製品に反りが発生することが課題である。さらに、アクリル樹脂フィルム、またはシートの膜厚分布により、外観斑が生じ、漆黒調の高級感が損なわれることも問題である。
そこで、耐傷擦性に優れる共重合ポリカーボネート樹脂(例えば、特許文献2)に着色剤を添加した樹脂組成物、および樹脂成形体を用いることが知られている。しかしながら、該共重合ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性が大きく劣ることが課題であり、実用化に至っていない。
さらに、黒色顔料であるカーボンブラックを分散させたポリカーボネート樹脂に、PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン)を混合させた樹脂組成物を用いると表面硬度が向上するが、耐衝撃性が著しく低下するとともに、それを補うために衝撃改質剤を添加すると漆黒性が低下するという課題がある(例えば、特許文献3)。
したがって、塗装を必要とせず、耐衝撃性、流動性、耐傷擦性、耐熱性に優れ、高級漆器のような質感と透明感を備えた漆黒の外観を有する黒色樹脂組成物、および黒色成形品は未だ存在しないのが現状である。
特開2007−160892号公報 特表2009−500195号公報 特開平11−106518号公報
本発明の目的は、耐衝撃性、流動性、表面硬度、耐熱性に優れ、高級漆器のような質感と透明感を備えた漆黒の外観を有する特定のビスフェノール構造単位から誘導された芳香族ポリカーボネート樹脂に着色剤を添加した黒色樹脂組成物、および黒色成形品を提供することにある。
本発明によれば、上記課題は、下記構成により解決される。
(構成1):(A)全芳香族ジヒドロキシ成分の90モル%以上が、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン成分(成分a−1)および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン成分(成分a−2)であり、成分a−1と成分a−2との割合がモル比で40:60〜90:10の範囲である芳香族ジヒドロキシ成分から得られた粘度平均分子量が1.8×10〜3.2×10である芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、着色剤(B成分)0.01〜5重量部を含有する黒色に着色された樹脂組成物であって、該樹脂組成物は下記(1)〜(4)の特性を満たすことを特徴とする黒色樹脂組成物。
(1)JIS K5600−5−4に則して測定された鉛筆硬度がF〜2Hである
(2)ISO 6603に則して測定された高速面衝撃試験における衝撃エネルギーが25J以上で、かつ破壊形態が延性破壊である
(3)IS0 527−1および527−2に則して測定された23℃における引張強度測定において、破壊呼び歪が60〜180%であり、かつ破壊応力が40〜80MPaである
(4)ISO 1133に則して測定された300℃、1.2kg荷重のメルトボリュームフローレイトが5〜40cm/10分である
(構成2):着色剤(B成分)がカーボンブラック(B−1成分)であり、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、B−1成分0.1〜5重量部を含有する前項1記載の黒色樹脂組成物。
(構成3):着色剤(B成分)が染料(B−2成分)であり、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、B−2成分0.01〜1重量部を含有する前項1記載の黒色樹脂組成物。
(構成4):前項1〜3のいずれか1項に記載の黒色樹脂組成物を成形してなる黒色成形品。
本発明の黒色樹脂組成物、および黒色成形品は、優れた漆黒性を有し、耐衝撃性、流動性、耐傷擦性、耐熱性に優れることから、電子・電気・OA機器外装部品、自動車内外装部品、家具、楽器等外観高級化が要求される用途に適応される。したがって、その奏する産業上の効果は格別である。
以下、本発明を詳細に説明する。
<芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)>
本発明の黒色樹脂組成物に用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂は、全芳香族ジヒドロキシ成分の90モル%以上が、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン成分(成分a−1)および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン成分(成分a−2)であり、成分a−1と成分a−2との割合がモル比で40:60〜90:10の範囲である芳香族ジヒドロキシ成分から得られた芳香族ポリカーボネート樹脂である。
全芳香族ジヒドロキシ成分の95モル%以上が成分a−1および成分a−2であることが好ましく、全芳香族ジヒドロキシ成分の100モル%が成分a−1および成分a−2であることがより好ましい。
また、成分a−1と成分a−2との割合はモル比で50:50〜80:20の範囲が好ましい。成分a−1の割合が40モル%未満では、耐擦傷性が不十分であり、成分a−1の割合が90モル%超過であれば、耐衝撃性が劣るため好ましくない。かかる成分a−1と成分a−2との割合は、異なる組成割合の共重合ポリカーボネート樹脂の混合により達成されていてもよい。
また、他の芳香族ジヒドロキシ成分として、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、1,3−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン、1,4−ビス{2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル}ベンゼン等が挙げられる。
本発明の黒色樹脂組成物に用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂は二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。芳香族ポリカーボネート樹脂はいかなる製造方法によって製造されたものでもよく、界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。芳香族ポリカーボネート樹脂は前記二価フェノールに加えて、3官能以上の例えば3官能フェノール類の如き多官能フェノール類を重合させた分岐ポリカーボネートであってもよい。更に、脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、ポリオルガノシロキサン成分、並びにビニル系単量体を共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。
カーボネート前駆物質として例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。
カーボネート前駆物質として例えば炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られた芳香族ポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、m−メチルフェノール、p−メチルフェノール、m−プロピルフェノール、p−プロピルフェノール、1−フェニルフェノール、2−フェニルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、イソオクチルフェノール、p−長鎖アルキルフェノール等が挙げられる。
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は粘度平均分子量で表して1.8×10〜3.2×10であり、好ましくは1.9×10〜3.0×10であり、より好ましくは2.0×10〜2.6×10である。分子量が前記範囲の下限未満では、耐衝撃性が不十分であり、前記範囲の上限超過であれば、流動性が劣るため好ましくない。かかる分子量は、異なる分子量の芳香族ポリカーボネート樹脂の混合により達成されてもよいが、かかる混合においてはその分子量差を1.0×10以内とすることが好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mを算出する。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
<着色剤(B成分)>
本発明の黒色に着色された樹脂組成物においては、上記芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、着色剤(B成分)0.01〜5重量部を含有する。着色剤(B成分)の含有量は0.1〜4重量部が好ましく、1〜4重量部が好ましい。0.01重量部未満であると漆黒感が得られず、5重量部を超えると機械特性が低下するため好ましくない。着色剤は、取り扱いを容易にさせる、または、分散性を向上させる目的でマスターバッチを作成し、顆粒化や分散剤の添加を施してもよい。
着色剤(B成分)としては、黒色無機顔料であるカーボンブラック(B−1成分)および/または黒色染料(B−2成分)を使用することができる。B−1成分とB−2成分とを併用して使用することが好ましい。
黒色無機顔料であるカーボンブラック(B−1成分)は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部を含有することが好ましく、0.5〜4重量部を含有することがより好ましく、1〜3重量部を含有することがさらに好ましい。上記下限以上であると、漆黒感が得られず、上記上限以下であると、加熱時の熱分解による分子量低下や機械特性の低下が生じ難くなるため好ましい。
黒色染料(B−2成分)は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、0.01〜1重量部を含有することが好ましく、0.03〜0.5重量部を含有することがより好ましく、0.05〜0.3重量部を含有することがさらに好ましい。上記範囲であると深みのある漆黒性を得ることができる。
黒色染料は、2種以上の染料の組み合わせで構成されることが好ましい。黒色染料を構成する染料としては、アンスラキノン系、ペリノン系、ペリレン系、アゾ系、メチン系、キノリン系等の染料が挙げられる。これらの染料を組み合わせて使用することで、特に漆黒性に優れる黒色樹脂組成物を得ることが出来る。染料としては、具体的には次のような染料が例示される。
アンスラキノン系染料としては、Solvent Red 52、Solvent Red 111、Solvent Red 149、Solvent Red 150、Solvent Red 151、Solvent Red 168、Solvent Red 191、Solvent Red 207、Disperse Red 22、Disperse Red 60、Disperse Violet 31、Solvent Blue 35、Solvent Blue 36、Solvent Blue 63、Solvent Blue 78、Solvent Blue 83、Solvent Blue 87、Solvent Blue 94、Solvent Blue 97、Solvent Green 3、Solvent Green 20、Solvent Green 28、Disperse Violet 28、Solvent Violet 13、Solvent Violet 14、Solvent Violet 36等のカラーインデックスで市販されている染料が挙げられる。
ペリノン系染料としては、Solvent Orange 60、Solvent Orange 78、Solvent Orange90、 Solvent Violet 29、Solvent Red 135、Solvent Red162、Solvent Red 179等のカラーインデックスで市販されている染料が挙げられる。
ペリレン系染料としては、Solvent Green 3、Solvent Green 5、Solvent Orange 55、Vat Red15、Vat Orange7、F Orange240、F Red305、F Red339、F Yellow83等のカラーインデックスで市販されている染料が挙げられる。
アゾ系染料としては、Solvent Yellow 14、Solvent Yellow 16、Solvent Yellow 21、Solvent Yellow 61、Solvent Yellow 81、Solvent Red 23、Solvent Red 24、Solvent Red 27、Solvent Red 8、Solvent Red 83、Solvent Red 84、Solvent Red 121、Solvent Red 132、Solvent Violet21、Solvent Black 21、 Solvent Black 23、Solvent Black 27、Solvent Black 28、Solvent Black 31、Solvent Orange37、 Solvent Orange 40、 Solvent Orange 45等のカラーインデックスで市販されている染料が挙げられる。
メチン系染料としては、Solvent Orange 80、Solvent Yellow 93等のカラーインデックスで市販されている染料が、またキノリン系染料としては、Solvent Yellow 33、Solvent Yellow 98、Solvent Yellow 157、Disperse Yellow 54、Disperse Yellow 160等のカラーインデックスで市販されている染料が挙げられる。
本発明に用いる黒色染料としては、中でもアンスラキノン系染料とメチン系染料とを用いることが好ましく、中でもアンスラキノン系染料としては、紫、青、緑等の濃色系染料を、そしてメチン系染料としては黄色等の明色系染料を用いることで、深みと清澄感が高く、漆黒性に優れる黒色樹脂組成物が得られるので好ましい。
<添加剤>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、より好適には以下の離型剤、熱安定剤、酸化防止剤などを配合することができる。
(i)離型剤
離型剤としては公知のものが使用できる。例えば、脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1−アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、シリコーン化合物、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。これらの中でも入手の容易さ、離型性および透明性の点から脂肪酸エステルが好ましい。かかる離型剤は芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.005〜0.2重量部、より好ましくは0.007〜0.1重量部、更に好ましくは0.01〜0.06重量部である。添加量が前記範囲の下限未満では、離型性の改善が十分ではなく、上限を超える場合、ブリードアウトなど外観不良を起こしやすい。
上記の中でも好ましい離型剤として脂肪酸エステルが挙げられる。かかる脂肪酸エステルは、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルである。かかる脂肪族アルコールは1価アルコールであっても2価以上の多価アルコールであってもよい。また該アルコールの炭素数としては、好適には3〜32の範囲、より好適には5〜30の範囲である。かかる一価アルコールとしては、例えばドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、テトラコサノール、セリルアルコール、およびトリアコンタノールなどが例示される。かかる多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリグリセロール(トリグリセロール〜ヘキサグリセロール)、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどが挙げられる。本発明で好ましく使用される脂肪酸エステルにおいては多価アルコールがより好ましい。
一方、脂肪族カルボン酸は炭素数3〜32であることが好ましく、特に炭素数10〜22の脂肪族カルボン酸が好ましい。該脂肪族カルボン酸としては、例えばデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸、およびドコサン酸(ベヘン酸)などの飽和脂肪族カルボン酸、並びにパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、およびセトレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。上記の中でも脂肪族カルボン酸は、炭素原子数14〜20であるものが好ましい。なかでも飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。かかる脂肪族カルボン酸は通常、動物性油脂(牛脂および豚脂など)や植物性油脂(パーム油など)などの天然油脂類から製造されるため、これらの脂肪族カルボン酸は、通常炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物である。したがって本発明で好ましく使用される脂肪族カルボン酸の製造においてもかかる天然油脂類から製造され、他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなる。脂肪酸エステルにおける酸価は、20以下(実質的に0を取り得る)であることが好ましい。しかしながら全エステル(フルエステル)の場合には、離型性を向上させるため、少なくからず遊離の脂肪酸を含有することが好ましく、この点においてフルエステルにおける酸価は3〜15の範囲が好ましい。また脂肪酸エステルのヨウ素価は、10以下(実質的に0を取り得る)が好ましい。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
上記脂肪酸エステルは、部分エステルおよびフルエステルのいずれであってもよい。本発明においてより好ましくは良好な離型性および耐久性の点で部分エステルである。中でもグリセリンモノエステルが好ましい。グリセリンモノエステルは、グリセリンと脂肪酸のモノエステルが主成分であり、好適な脂肪酸としてはステアリン酸、パルチミン酸、ベヘン酸、アラキン酸、モンタン酸、およびラウリン酸等の飽和脂肪酸やオレイン酸、リノール酸、およびソルビン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられ、特にステアリン酸、ベヘン酸、およびパルチミン酸のグリセリンモノエステルを主成分としたものが好ましい。尚、かかる脂肪酸は、天然の脂肪酸から合成されたものであり、上述のとおり混合物となる。グリセリンモノエステルは、他の離型剤、殊に脂肪酸フルエステルとの併用が可能であるが、併用した場合でもグリセリンモノエステルを主成分とすることが好ましい。即ち、離型剤100重量%中、60重量%以上とすることが好ましい。
尚、部分エステルは、熱安定性の点ではフルエステルに対して劣る場合が多い。かかる部分エステルの熱安定性を向上するため、部分エステルは、好ましくは20ppm未満、より好ましくは5ppm未満、更に好ましくは1ppm未満のナトリウム金属含有量とすることが好ましい。ナトリウム金属含有量が1ppm未満の脂肪酸部分エステルは、脂肪酸部分エステルを通常の方法で製造した後、分子蒸留などにより精製して製造することができる。
具体的には、スプレーノズル式脱ガス装置によりガス分および低沸点物質を除去した後に流下膜式蒸留装置を用い蒸留温度120〜150℃、真空度0.01〜0.03kPaの条件にてグリセリン等の多価アルコール分を除去し、更に遠心式分子蒸留装置を用いて、蒸留温度160〜230℃、真空度0.01〜0.2Torrの条件にて高純度の脂肪酸部分エステルを留出分として得る方法などがあり、ナトリウム金属は蒸留残渣として除去できる。得られた留出分に対し、繰り返し分子蒸留を行うことにより、更に純度を上げ、ナトリウム金属含有量の更に少ない脂肪酸部分エステルを得ることもできる。また前もって適切な方法にて分子蒸留装置内を十分に洗浄し、また気密性を高めるなどにより外部環境からのナトリウム金属成分の混入を防ぐことも肝要である。かかる脂肪酸エステルは、専門業者(例えば理研ビタミン(株))から入手可能である。
(ii)リン系熱安定剤
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、その成形加工時の熱安定性を向上させることを主たる目的として各種のリン系熱安定剤が更に配合されることが好ましい。かかるリン系熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステルなどが例示される。更にかかるリン系熱安定剤は第3級ホスフィンを含む。
具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は前記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
第3級ホスフィンとしては、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、およびジフェニルベンジルホスフィンなどが例示される。特に好ましい第3級ホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。
前記リン系熱安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。前記リン系熱安定剤の中でも、ホスファイト化合物またはホスホナイト化合物が好ましい。殊にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましい。またこれらとホスフェート化合物との併用も好ましい態様である。
(iii)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、その成形加工時の熱安定性、および耐熱老化性を向上させることを主たる目的としてヒンダードフェノール系酸化防止剤を配合することができる。かかるヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
前記(ii)リン系安定剤および/または(iii)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.0001〜1重量部、より好ましくは0.001〜0.1重量部、さらに好ましくは0.005〜0.1重量部である。前記範囲よりも少なすぎる場合には良好な安定化効果を得ることが難しく、前記範囲を超えて多すぎる場合は、逆に材料の物性低下や、ブリードアウト等の外観不良を起こす場合がある。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、適宜前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の他の酸化防止剤を使用することができる。かかる他の酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール−3−ステアリルチオプロピオネートなどが挙げられる。これら他の酸化防止剤の使用量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.05重量部が好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、他にも、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、熱線吸収剤、難燃剤、加水分解改良剤、無機充填材、抗菌剤、光触媒系防汚剤、光拡散剤、および光高反射用白色顔料などを含有することができる。これらは、本発明の効果に支障のない剤および配合量を適宜選択して含有することができる。
<黒色樹脂組成物、黒色樹脂成形品>
本発明の黒色樹脂組成物の製造に当たっては、その製造方法は特に限定されるものではなく公知の製造方法を利用することができる。通常、芳香族ポリカーボネート樹脂および添加剤、着色剤を予備混合した後、押出機に投入して溶融混練した後、押出されたスレッドを冷却し、ペレタイザーにより切断して、ペレット状の成形材料が製造される。押出機は単軸押出機、および二軸押出機のいずれもが利用できるが、生産性や混練性の観点からは二軸押出機が好ましい。かかる二軸押出機の代表的な例としては、ZSK(Werner & Pfleiderer社製、商品名)を挙げることができる。同様のタイプの具体例としてはTEX((株)日本製鋼所製、商品名)、TEM(東芝機械(株)製、商品名)、KTX((株)神戸製鋼所製、商品名)などを挙げることができる。押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
更に添加剤、着色剤は、独立して押出機に供給することもできるが、前述のとおり樹脂原料と予備混合することが好ましい。かかる予備混合の手段には、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、および押出混合機などが例示される。より好適な方法は、例えば原料の一部と添加剤とをヘンシェルミキサーの如き高速攪拌機で混合してマスター剤を作成した後、かかるマスター剤物を残る全量の樹脂原料とナウターミキサーの如き高速でない攪拌機で混合する方法である。
押出機より押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。更にかかるペレットの製造においては、既に提案されている様々な方法を用いて、ペレットの形状分布の狭小化、ミスカット物の更なる低減、運送または輸送時に発生する微小粉の更なる低減、並びにストランドやペレット内部に発生する気泡(真空気泡)の低減を行うことが好ましい。ミスカットの低減には、ペレタイザーでの切断時のスレッドの温度管理、切断時のイオン風の吹きつけ、ペレタイザーのすくい角の適正化、および離型剤の適切な配合などの手段、並びに切断されたペレットと水との混合物を濾過してペレットと水およびミスカットとを分離する方法などが挙げられる。その測定方法の一例は例えば特開2003−200421号公報に開示されている。これらの処方により成形のハイサイクル化、およびシルバーの如き不良発生割合の低減を行うことができる。
本発明の黒色樹脂組成物は、射出成形、射出圧縮成形、インジェクションブロー成形、押出成形またはブロー成形などの方法により目的の成形品を得ることもできる。
本発明の黒色樹脂組成物は、JIS K5600−5−4に記載の塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)に則して測定した鉛筆硬度がF〜2Hである。鉛筆硬度がF未満では、成形体表面に引っかき傷が生じやすく好ましくない。
本発明の黒色樹脂組成物は、ISO 6603に即して測定された高速面衝撃試験による衝撃エネルギーが25J以上であり、30J以上であることが好ましい。さらに、破壊形態が延性破壊であることが必要である。衝撃エネルギーが25J未満では、脆性破壊を生じ、耐衝撃性が劣るため好ましくない。衝撃エネルギーは50J以下であれば十分である。
本発明の黒色樹脂組成物は、ISO527−1および527−2に即して測定された23℃における引張り強度測定において、破壊呼び歪みが60〜180%であり、70〜150%が好ましい。さらに破壊応力が40〜80MPaであり、50〜75MPaであることが好ましい。破壊呼び歪みや破壊応力が上記下限未満では、成形品組み込み時の強度不足を招くため、好ましくない。
本発明の黒色樹脂組成物は、ISO 1133に則して測定された300℃、1.2kg荷重のメルトボリュームフローレイトが5〜40cm/10分であり、10〜30cm/10分であることが好ましい。上記下限未満では、流動性が不足するため好ましくない。
本発明の黒色樹脂組成物から形成された成形品は、JIS K7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に則して測定した入射受光角20°と60°における光沢度は85以上が好ましく、90以上がより好ましい。上記下限未満では、外観の漆黒性が劣るため好ましくない。
本発明の黒色樹脂組成物から形成された成形品は、JIS K7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に則して測定した明度(L)は10以下が好ましく、8以下がより好ましく、5以下がさらに好ましい。上記下限未満では、外観の漆黒性が劣るため好ましくない。a値は−0.1以下で且つb値は1以上が好ましく、a値は−0.15以下で且つb値は1.5以上がより好ましい。a値が上記上限超過またはb値が上記下限未満では外観の漆黒性が劣るため好ましくない。
以下、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、何らこれに限定されるものではない。なお実施例、比較例中の物性評価、漆黒性評価は下記の方法に従った。
<物性評価>
(1)粘度平均分子量
比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c (但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4 Mv0.83
c=0.7
(2)メルトボリュームフローレイト
ISO1133に則して東洋精機製セミオートメルトエンデクサーにより温度300℃、荷重1.2kgfで10分間に流出したポリマー量(cm)を測定した。
(3)鉛筆硬度
算術平均粗さ(Ra)が0.03μmとしたキャビティ面を持つ金型を使用し、日本製鋼所製射出成形機J−75E3を用いて、シリンダ温度280℃、金型温度80℃の条件で、保圧時間20秒および冷却時間20秒にて幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3mm(長さ20mm)、2mm(長さ45mm)、1mm(長さ25mm)である3段型プレートを成形した。かかる3段型プレートの厚み2mm部における鉛筆硬度をJIS K5600に則して測定した。
(4)耐熱性評価(荷重たわみ温度)
ペレットを120℃で5時間乾燥後、日本製鋼所製射出成形機J−75E3により、シリンダ温度280℃で射出成形した試験片を用い、ISO178に則して荷重たわみ温度を測定した。荷重:1.80MPa。(試験片形状;長さ80mm×幅10mm×厚み4mm)
(5)引張試験
日本製鋼所製射出成形機J−75E3を用いて、シリンダ温度280℃、金型温度80℃の条件で成形したダンベル型試験片を用い、IS0 527−1および527−2に則して、23℃における引張強度を測定し、破壊呼び歪および破壊応力を求めた。
(6)高速面衝撃試験
ISO6603に則して実施した。島津ハイドロショットHTM−1を使用し、試験速度7m/秒、衝撃芯半径6.4mmで、鉛筆硬度の測定の際に得られた3段型プレートの厚み2mm部にて衝撃エネルギーを測定し、目視にて破壊形態を観察した。
(7)耐衝撃性評価(ノッチ付シャルピー衝撃強度)
ISO179に則して23℃における試験片のノッチ付シャルピー衝撃強度を測定した。
[実施例1]
温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器に、48%水酸化ナトリウム水溶液3844部およびイオン交換水22,380部を仕込み、これに2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(Bis−C、本州化学製)1,992部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(Bis−A、新日鐵化学製)1,773部、およびハイドロサルファイト7.53部(和光純薬製)を溶解した後、塩化メチレン13,210部を加え、撹拌下、15〜25℃でホスゲン2,000部を約60分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液640部およびp−tert−ブチルフェノール93.2部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン3.24部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。
反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を得た。次いで、この溶液を目開き0.3μmのフィルターに通過させ、さらに軸受け部に異物取出口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート樹脂をフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダーを得た。
その後、該パウダー100重量部に対して、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.05重量部、ステアリン酸モノグリセリドを0.1重量部添加し、着色剤として、黒色顔料であるカーボンブラック(三菱化成工業製#3600)2重量部、および黒色染料であるNUBIAN BLACK PC−5857(住友化学工業製;2種類以上の染料の混合物)0.1重量部を均一に混合した後、かかるパウダーをベント式二軸押出機[(株)神戸製鋼所製KTX−46]により脱気しながら溶融混錬押出し、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。該ペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
[実施例2]
p−tert−ブチルフェノールを81.6重量部に変更した以外は、実施例1と同様の手法にて芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。該ペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
[実施例3]
p−tert−ブチルフェノールを69.9重量部に変更した以外は、実施例1と同様の手法にて芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。該ペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
[実施例4]
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン1,593部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2,128部に変更した以外は、実施例1と同様の手法にて芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。該ペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
[実施例5]
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン3,187部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン709部に変更した以外は、実施例1と同様の手法にて芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。該ペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
[実施例6]
着色剤として、黒色顔料であるカーボンブラック(三菱化成工業製#3600)のみを4重量部使用した以外は、実施例1と同様の手法にて芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。該ペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
[実施例7]
着色剤として、黒色染料であるNUBIAN BLACK PC−5857(オリエント化学工業製;2種類以上の染料の混合物)のみを1.0重量部使用した以外は、実施例1と同様の手法にて芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。該ペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
[比較例1]
芳香族ポリカーボネート樹脂パウダーとして、帝人化成製パンライトL−1225WX(ビスフェノールAより得られた芳香族ポリカーボネート樹脂)を使用した以外は、実施例1と同様の手法にて芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。該ペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
[比較例2]
2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン1,195部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2,483部に変更した以外は、実施例1と同様の手法にて芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。該ペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
[比較例3]
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを使用せず、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン3,984部に変更した以外は、実施例1と同様の手法にて芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。該ペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
[比較例4]
p−tert−ブチルフェノールを116.6重量部に変更した以外は、実施例1と同様の手法にて芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。該ペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
[比較例5]
p−tert−ブチルフェノールを46.4重量部に変更した以外は、実施例1と同様の手法にて芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。該ペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
[比較例6]
温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器に、48%水酸化ナトリウム水溶液5236部およびイオン交換水20,000部を仕込み、これに1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(Bis−OC−Z)4704部、およびハイドロサルファイト9.4部を溶解した後、塩化メチレン17,540部を加え、撹拌下、15〜25℃でホスゲン2,200部を約60分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液654部およびp−tert−ブチルフェノール81.6部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン4.32部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。
反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を得た。次いで、この溶液を目開き0.3μmのフィルターに通過させ、さらに軸受け部に異物取出口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート樹脂をフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダーを得た。
その後、該パウダー100重量部に対して、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.0025重量部、ステアリン酸モノグリセリドを0.1重量部添加し、着色剤として、黒色顔料であるカーボンブラック(三菱化成工業製#3600)2重量部、および黒色染料であるNUBIAN BLACK PC−5857(オリエント化学工業製;2種類以上の染料の混合物)0.1重量部を均一に混合した後、かかるパウダーをベント式二軸押出機[(株)神戸製鋼所製KTX−46]により脱気しながら溶融混錬押出し、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。該ペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
[比較例7]
温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器に、48%水酸化ナトリウム水溶液5236部およびイオン交換水20,000部を仕込み、これに1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(Bis−OC−Z)2,533部、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(Bis−A)1948部およびハイドロサルファイト9.4部を溶解した後、塩化メチレン17,540部を加え、撹拌下、15〜25℃でホスゲン2,200部を約60分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液654部およびp−tert−ブチルフェノール102部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン4.32部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。
反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を得た。次いで、この溶液を目開き0.3μmのフィルターに通過させ、さらに軸受け部に異物取出口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート樹脂をフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダーを得た。
その後、該パウダー100重量部に対して、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.0025重量部、ステアリン酸モノグリセリドを0.1重量部添加し、着色剤として、黒色顔料であるカーボンブラック(三菱化成工業製#3600)2重量部、および黒色染料であるNUBIAN BLACK PC−5857(オリエント化学工業製;2種類以上の染料の混合物)0.1重量部を均一に混合した後、かかるパウダーをベント式二軸押出機[(株)神戸製鋼所製KTX−46]により脱気しながら溶融混錬押出し、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。該ペレットを用いて評価した結果を表1に示した。
[比較例8]
三菱レイヨン製アクリペット(登録商標)VH001)を用いて、評価した結果を表1に示した。
<漆黒性評価>
(1)光沢度評価
鉛筆硬度の測定の際に得られた黒色成形品(3段型プレート、厚み2mm部)を使用し、JIS K7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に則して光沢計(HORIBA IG−331、HORIBA社製)を用いて、入射受光角20度と60度の光沢度を測定した。
(2)色差評価
鉛筆硬度の測定の際に得られた黒色成形品(3段型プレート、厚み2mm部)を使用し、JIS K7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に則して積分球分光光度計CE−7000A(X−Rite社)を用いて、D65光源、反射法、視野角10°、色差式CIE1976における色差(L)を測定した。
[実施例8]
実施例1で得られた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを用いて成形した黒色成形品の漆黒性評価を実施した。評価結果を表2に示した。
[比較例9]
着色剤として、黒色顔料であるカーボンブラック(三菱化成工業製#3600)8重量部とした以外は、実施例1と同様の手法にて芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを用いて成形した黒色成形品の漆黒性評価を実施した。評価結果を表2に示した。
[比較例10]
着色剤として、黒色染料であるNUBIAN BLACK PC−5857(オリエント化学工業製)8重量部とした以外は、実施例1と同様の手法にて芳香族ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを用いて成形した黒色成形品の漆黒性評価を実施した。評価結果を表2に示した。
[参考例1]
市販の高級ガラス漆器(100mm角、厚み2mm、漆黒調、艶有り)を用いて漆黒性評価を実施した。評価結果を表2に示した。
Figure 2013014661
Figure 2013014661
表1および表2の結果から明らかなように、本発明の黒色樹脂組成物からなる黒色樹脂成形品は、耐衝撃性、流動性、表面硬度、耐熱性に優れ、市販の高級ガラス漆器と同等の漆黒性を有する。一方、汎用されるポリカーボネート樹脂では表面硬度が劣り、汎用されるポリメチルメタクリレート樹脂では耐衝撃性が劣るため、かかる有用な特性が得られないことが分かる。また、従来の知見では、共重合ポリカーボネート樹脂はシャルピー衝撃試験の結果、いずれも汎用されるポリカーボネート樹脂に比べて耐衝撃性が大きく劣ると考えられてきたが、高速面衝撃試験結果を比較すると、特許文献2記載の変性ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性が大きく劣ることが確認された。即ち、本発明によれば、汎用されるポリカーボネート樹脂やポリメチルメタクリレート樹脂、特許文献2記載の変性ポリカーボネート樹脂では得られない黒色樹脂組成物および黒色樹脂成形品が得られることが分かる。
本発明の黒色樹脂組成物から形成される黒色樹脂成形品は、携帯電話、液晶テレビ、スピーカー、携帯ゲーム機、ノートパソコンに代表される電気・電子・OA機器の筐体やインテリアパネル、ドアハンドル、ステアリング、カーオーディオ・カーナビゲーションフレーム、シフトノブに代表される自動車用内装、ルーフスポイラー、ウィンドウガーニッシュ等に代表される自動車外装部品、家具、楽器類に利用できる。

Claims (4)

  1. (A)全芳香族ジヒドロキシ成分の90モル%以上が、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン成分(成分a−1)および2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン成分(成分a−2)であり、成分a−1と成分a−2との割合がモル比で40:60〜90:10の範囲である芳香族ジヒドロキシ成分から得られた粘度平均分子量が1.8×10〜3.2×10である芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、着色剤(B成分)0.01〜5重量部を含有する黒色に着色された樹脂組成物であって、該樹脂組成物は下記(1)〜(4)の特性を満たすことを特徴とする黒色樹脂組成物。
    (1)JIS K5600−5−4に則して測定された鉛筆硬度がF〜2Hである
    (2)ISO 6603に則して測定された高速面衝撃試験における衝撃エネルギーが25J以上で、かつ破壊形態が延性破壊である
    (3)IS0 527−1および527−2に則して測定された23℃における引張強度測定において、破壊呼び歪が60〜180%であり、かつ破壊応力が40〜80MPaである
    (4)ISO 1133に則して測定された300℃、1.2kg荷重のメルトボリュームフローレイトが5〜40cm/10分である
  2. 着色剤(B成分)がカーボンブラック(B−1成分)であり、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、B−1成分0.1〜5重量部を含有する請求項1記載の黒色樹脂組成物。
  3. 着色剤(B成分)が染料(B−2成分)であり、芳香族ポリカーボネート樹脂(A成分)100重量部に対して、B−2成分0.01〜1重量部を含有する請求項1記載の黒色樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の黒色樹脂組成物を成形してなる黒色成形品。
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