JP7459463B2 - ゴム質重合体、グラフト共重合体、熱可塑性樹脂組成物および成形品と、その製造方法 - Google Patents

ゴム質重合体、グラフト共重合体、熱可塑性樹脂組成物および成形品と、その製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐衝撃性、機械特性、成形外観のバランスに優れる成形品を提供し得るゴム質重合体およびグラフト共重合体と、その製造方法に関する。本発明はまた、このグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物および成形品と、その製造方法に関する。
熱可塑性樹脂は、自動車分野、電気・電子機器分野、プリンター等のOA機器をはじめとする多くの分野で使用されている。その中でも、スチレン-アクリロニトリル共重合樹脂、α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合樹脂、スチレン-アクリロニトリル-フェニルマレイミド共重合樹脂等に、これらの樹脂と相溶性を付与させるような単量体をゴム質重合体にグラフト重合して得られるグラフト共重合体を配合したABS樹脂、ASA樹脂等に代表される材料は、耐衝撃性、流動性に優れることから広く使用されてきた。
これらの中でも、ゴム質重合体に飽和ゴムである(メタ)アクリル酸エステルゴム等の成分を用いたASA樹脂は、良好な耐候性を付与し得るという特徴を有する。
しかし、ASA樹脂は、ABS樹脂に比べて耐衝撃性が劣るという欠点がある。そこで、耐衝撃性を改良するために、粒子径の異なる(メタ)アクリル酸エステルゴムを併用したASA樹脂が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、このASA樹脂でも、耐衝撃性の改良効果は十分ではなく、要求される耐衝撃性を発現させるためには、ゴム成分の配合割合を増やす必要があり、ゴム成分の配合割合を増やすことで剛性が低下してしまい、近年の厳しいニーズに十分応え得るものではなかった。
また、耐衝撃性に優れるポリオルガノシロキサンゴムに(メタ)アクリル酸エステルゴムを被覆することで耐衝撃性を向上させる方法も提案されている(特許文献2、3、4)。
しかしながら、ポリオルガノシロキサンゴムは屈折率が低いことから粒子径が大きくなるほど、得られる成形品の外観が低下してしまう欠点がある。その対策として高屈折率のポリオルガノシロキサンを用いることも提案されているものの、この場合には耐衝撃性が低下し、ポリオルガノシロキサン本来の長所が損なわれる結果となる。
特開2012-214734号公報 特開昭64-79257号公報 特許第5848699号公報 国際公開第2017/73294号
本発明は、耐衝撃性、機械特性、成形外観のバランスに優れる熱可塑性樹脂成形品を提供し得る複合ゴム質重合体とこの複合ゴム質重合体を用いたグラフト共重合体、このグラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のシリコーン系ゴム質重合体(S)と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの複合ゴム質重合体(A)と、この複合ゴム質重合体(A)を用いたグラフト共重合体(B)により、上記目的を達成できることを見出した。
すなわち、本発明は以下を要旨とする。
[1] 体積平均粒子径が1~100nmのシリコーン系ゴム質重合体(S)に、(メタ)アクリル酸エステルを複合してなる複合ゴム質重合体(A)であって、体積平均粒子径が250~800nmである複合ゴム質重合体(A)。
[2] [1]に記載の複合ゴム質重合体(A)に、芳香族ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、およびシアン化ビニルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のビニル化合物(b)をグラフト重合してなるグラフト共重合体(B)。
[3] [2]において、前記複合ゴム質重合体(A)10~90質量%に対して、前記ビニル化合物(b)90~10質量%をグラフト重合してなり(ただし、複合ゴム質重合体(A)とグラフト単量体成分との合計を100質量%とする。)、グラフト率10~90%で、体積平均粒子径が260~1000nmであるグラフト共重合体(B)。
[4] [2]又は[3]に記載のグラフト共重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物。
[5] [4]に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
[6] 少なくとも、体積平均粒子径が1~100nmのシリコーン系ゴム質重合体(S)と、(メタ)アクリル酸エステル、水、および乳化剤とを混合して混合物(a)を調製する混合工程と、得られた混合物(a)を、超音波ホモジナイザーおよび圧力式ホモジナイザーのいずれかの方法でミニエマルション化するミニエマルション化工程と、該ミニエマルション化で得られたミニエマルションを重合する重合工程とを含む複合ゴム質重合体(A)の製造方法。
[7] [6]において、前記混合工程は、シリコーン系ゴム質重合体(S)0.1~20質量部、(メタ)アクリル酸エステル10~99.8質量部、架橋剤0.1~6.0質量部、必要に応じて用いられるその他のビニル化合物0~90質量部、炭素数12以上のアルキル基、アルケニル基およびシクロアルキル基から選ばれる炭化水素基を有する疎水性物質0.1~10質量部および乳化剤0.01~3.0質量部(ただし、シリコーン系ゴム質重合体(S)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、架橋剤およびその他のビニル化合物の合計を100質量部とする。)と、水以外の前記混合物(a)100質量部に対して水75~1900質量部とを混合する工程である複合ゴム質重合体(A)の製造方法。
[8] [6]又は[7]において、前記複合ゴム質重合体(A)の体積平均粒子径が250~800nmである複合ゴム質重合体(A)の製造方法。
[9] [6]ないし[8]のいずれかに記載の製造方法で得られた複合ゴム質重合体(A)に、芳香族ビニル、(メタ)アクリル酸エステルおよびシアン化ビニルから選ばれる少なくとも1種をグラフト重合させるグラフト共重合体(B)の製造方法。
[10] [9]に記載の製造方法で得られたグラフト共重合体(B)を用いた熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
[11] [10]に記載の製造方法で得られた熱可塑性樹脂組成物を成形する成形品の製造方法。
本発明の複合ゴム質重合体(A)を用いたグラフト共重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物によれば、耐衝撃性、機械特性、成形外観のバランスに優れた熱可塑性樹脂成形品を提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
なお、本明細書において「単位」とは、重合前の単量体化合物(モノマー)に由来する構造部分をさし、例えば、「(メタ)アクリル酸エステル単位」とは「(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造部分」をさす。重合体中の各単量体単位の含有割合は、当該重合体の製造に用いた単量体混合物中の該単量体の含有割合に該当する。
また、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」と「メタクリル酸」の一方または双方を意味する。「(メタ)アクリレート」についても同様である。
また、「成形品」とは、熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものを意味する。
また、「ミニエマルション」と「プレエマルジョン」は同義である。
本発明に係るシリコーン系ゴム質重合体(S)、複合ゴム質重合体(A)、グラフト共重合体(B)の体積平均粒子径は、後掲の実施例の項に記載の方法で測定された値である。
〔複合ゴム質重合体(A)〕
本発明の複合ゴム質重合体(A)は、体積平均粒子径が1~100nmのシリコーン系ゴム質重合体(S)に、(メタ)アクリル酸エステルを複合してなり、体積平均粒子径が250~800nmのものである。
好ましくは本発明の複合ゴム質重合体(A)は、体積平均粒子径が1~100nmのシリコーン系ゴム質重合体(S)100質量部に(メタ)アクリル酸エステル150~49900質量部、特に400~19900質量部、とりわけ900~9900質量部を複合してなる。
<複合ゴム質重合体(A)の体積平均粒子径>
本発明の体積平均粒子径の体積平均粒子径は、250~800nmで、好ましくは300~600nmであり、より好ましくは350~500nmである。複合ゴム質重合体(A)の体積平均粒子径が250nmを下回ると、この複合ゴム質重合体(A)を用いたグラフト共重合体(B)、このグラフト共重合体(B)を用いた熱可塑性樹脂組成物およびその成形品の耐衝撃性が劣るものとなり、800nmを上回ると、耐衝撃性、成形外観に劣るものとなる。
本発明の複合ゴム質重合体(A)の粒子径分布としては、特に制限はないが、特に低温環境下における耐衝撃性の観点から、単一な粒子径であることが好ましい。単一な粒子径の指標として、後述する粒子径測定器でピークが一つであるものを指す。
複数の粒子径のピークが存在し、かつ粒子径のピークが近い場合、近接したピーク同士が重なって単一の粒子径として表示される場合があるが、以下の方法で単一か否かを判断することができる。
体積平均粒子径(X)をXで表し、粒子径分布曲線における上限からの頻度の累積値が10%になったところの粒子径を頻度上限10%体積粒子径(Y)としてYで表し、粒子径分布曲線における下限からの頻度の累積値が10%になったところの粒子径を頻度下限10%体積粒子径(Z)としてZで表したとき、以下の(1)又は(2)を満たすことで、粒子径が単一であると判断することができる。
(1) 体積平均粒子径(X)がX≦350nmであり、頻度上限10%体積粒子径(Y)がY≦1.60X、頻度下限10%体積粒子径(Z)がZ≧0.60Xである。さらに好ましくは、Y≦1.50X、Z≧0.70Xである。
(2) 体積平均粒子径(X)がX=350~800nmであり、頻度上限10%体積粒子径(Y)がY≦1.70X、頻度下限10%体積粒子径(Z)がZ≧0.50Xである。さらに好ましくは、Y≦1.60X、Z≧0.60Xである。
なお、本発明の複合ゴム質重合体(A)の粒子径の測定方法は、後掲の実施例の項に記載される通りである。
<複合ゴム質重合体(A)の製造方法>
本発明の複合ゴム質重合体(A)は、特に限定されるものではないが、体積平均粒子径が1~100nmのシリコーン系ゴム質重合体(S)(以下、「本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)」と称す場合がある。)、(メタ)アクリル酸エステル、水、および乳化剤を混合してなる原料混合物、好ましくは、シリコーン系ゴム質重合体(S)、(メタ)アクリル酸エステル、架橋剤、必要に応じて用いられるその他のビニル化合物、疎水性物質、乳化剤、および水、より好ましくは更に開始剤を混合してなる原料混合物(以下、「混合物(a)」と称す場合がある。)からミニエマルション(プレエマルション)を調製するミニエマルション化工程と、得られたミニエマルションを重合する重合工程とを含むミニエマルション重合により製造される。
以下に、本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)、(メタ)アクリル酸エステル、疎水性物質、架橋剤、乳化剤、開始剤、および水を含む混合物(a)からプレエマルション(ミニエマルション)を調製し、得られたプレエマルションを重合するミニエマルション重合により、本発明の複合ゴム質重合体(A)を製造する方法について説明する。なお、混合物(a)は、シリコーン系ゴム質重合体(S)と(メタ)アクリル酸エステル以外に、必要に応じて用いられるこれらと共重合可能なその他のビニル化合物を含んでいてもよい。
<ミニエマルション重合>
ミニエマルション重合では、まず、超音波発振機などを利用して強い剪断力をかけることによって、100~1000nm程度のモノマー油滴を調製する。この際、乳化剤分子はモノマー油滴表面に優先的に吸着し、水媒体中にはフリーの乳化剤やミセルがほとんど存在しなくなる。したがって、理想的なミニエマルション系の重合では、モノマーラジカルが水相と油相に分配されることはなく、モノマー油滴が粒子の核になって重合が進行する。その結果、形成されたモノマー油滴はそのままポリマー粒子に変換され、均質なポリマーナノ粒子を得ることが可能となる。
これに対して、一般的な乳化重合で調製したポリマー粒子では、モノマー油滴からミセルへモノマーが移行して反応が進行するため、疎水性の異なるモノマーを複数含有するとミセルへの移行しやすさが異なり、均質なポリマーを形成できない。
本発明の複合ゴム質重合体(A)を製造するミニエマルション重合は、これに限定されるものではないが、例えば、本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)と(メタ)アクリル酸エステル、疎水性物質、および乳化剤、好ましくは更に開始剤、水を混合する混合工程、得られた混合物(a)に剪断力を付与してミニエマルション(プレエマルション)を調製するミニエマルション化工程、ならびにこのミニエマルションを重合開始温度まで加熱して重合させる重合工程を含む。
ミニエマルション化工程では、重合用モノマーと乳化剤とを混合した後、例えば、超音波照射による剪断工程を実施することにより、前記剪断力によりモノマーが引きちぎられ、乳化剤に覆われたモノマー微小油滴が形成される。その後、開始剤の重合開始温度まで加熱することにより、モノマー微小油滴をそのまま重合し、高分子微粒子が得られる。
ミニエマルションを形成させるための剪断力を加える方法は公知の任意の方法を用いることができる。ミニエマルションを形成できる高剪断装置としては、これらに限定されるものではないが、例えば、高圧ポンプおよび相互作用チャンバーからなる乳化装置、超音波エネルギーや高周波によりミニエマルションを形成させる装置等がある。高圧ポンプおよび相互作用チャンバーからなる乳化装置としては、例えば、SPX Corporation APV社製「圧力式ホモジナイザー」、三和エンジニアリング(株)製「ホモゲナイザー」、三丸機械工業(株)製「高圧式ホモジナイザー」、イズミフードマシナリー(株)製「ホモゲナイザー」、(株)パウレック製「マイクロフルイダイザー」等が挙げられる。超音波エネルギーや高周波によりミニエマルションを形成させる装置としては、例えば、Fisher Scient製「ソニックディスメンブレーター」や(株)日本精機製作所製「ULTRASONIC HOMOGENIZER」等が挙げられる。
<シリコーン系ゴム質重合体(S)>
本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)としては特定の体積平均粒子径を有するものであればよく、特に制限はないが、ビニル重合性官能基を有するポリオルガノシロキサンが好ましい。特に、ビニル重合性官能基を含有するシロキサン(ビニル重合性官能基含有シロキサン)単位0.3~3モル%と、ジメチルシロキサン単位97~99.7モル%とで構成され、3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリジメチルシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%以下であるポリオルガノシロキサンが好ましい。
ポリオルガノシロキサンを構成するジメチルシロキサンとしては、例えば、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられる。中でも、3員環~7員環のものが好ましい。具体的にはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられる。これらは1種のみでまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有し、かつ、ジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合しうるものであれば制限されないが、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮すると、ビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好ましい。具体的には、β-メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、∂-メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン;p-ビニルフエニルジメトキシメチルシラン、γ-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンなどが挙げられる。これらのビニル重合性官能基含有シロキサンは、1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
シリコーン系ゴム質重合体(S)には、必要に応じて、構成成分としてシロキサン系架橋剤単位が含まれていてもよい。
シロキサン系架橋剤としては、3官能性または4官能性のシラン系架橋剤、例えばトリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。これらは、1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
シリコーン系ゴム質重合体(S)の製造方法は、限定されない。例えば、以下の方法により製造することができる。
まず、ジメチルシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンとからなるシロキサン混合物に、必要に応じてシロキサン系架橋剤を添加し、次いで、乳化剤および水によって乳化させてシロキサン混合物水性分散体を得る。次いで、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用して、シロキサン混合物水性分散体を微粒子化させる。ここで、ホモジナイザー等の高圧乳化装置を使用すると、シリコーン系ゴム質重合体(S)の粒子径の分布が小さくなるので好ましい。次いで、微粒子化したシロキサン混合物水性分散体を、酸触媒を含む酸水溶液中に添加して高温下で重合させる。そして、反応液を冷却し、さらに苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ナトリウム等のアルカリ性物質で中和することで重合を停止させて、水性分散体に分散したシリコーン系ゴム質重合体(S)を得る。
上記シリコーン系ゴム質重合体(S)の製造において、乳化剤としては、アニオン系乳化剤が好ましい。アニオン系乳化剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどが挙げられる。これらの中でも、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸系の乳化剤が好ましい。これらの乳化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの乳化剤は、シロキサン混合物100質量部(固形分として)に対して、0.05~5質量部程度の範囲で使用される。
重合に用いられる酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸類、および硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸類が挙げられる。これらの酸触媒は、1種でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。これらの中でも、シリコーン系ゴム質重合体(S)の水性分散体の安定化作用に優れているため、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n-ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。また、n-ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸等の鉱酸とを併用すると、シリコーン系ゴム質重合体(S)の水性分散体に使用した乳化剤が、熱可塑性樹脂組成物の発色性に影響を及ぼすことを極力抑えることができる。
本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)は、上記のような乳化重合により、シリコーン系ゴム質重合体(S)を含むラテックスとして製造される。
通常、このシリコーン系ゴム質重合体(S)ラテックスのシリコーン系ゴム質重合体(S)濃度(固形分濃度)は10~40質量%程度である。
本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)の体積平均粒子径は1~100nmであり、好ましくは10~80nm、より好ましくは30~70nmである。体積平均粒子径が1nmを下回るシリコーン系ゴム質重合体は製造が困難であり、100nmを上回ると、これを用いて得られた熱可塑性樹脂成形品の成形外観が劣るものとなる。
本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)の粒子径分布は特に制限ないが、複合ゴム質重合体(A)に均一に分散するよう単一な粒子径であることが好ましい。
なお、シリコーン系ゴム質重合体(S)の体積平均粒子径を制御する方法としては、例えば、特開平5-279434号公報に記載された方法を採用できる。
これらのシリコーン系ゴム質重合体(S)は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造には、このような本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)を、シリコーン系ゴム質重合体(S)と、後述の(メタ)アクリル酸エステル、架橋剤および必要に応じて用いられるその他のビニル化合物の合計100質量部に対して、0.1~40質量部、特に0.5~20質量部、とりわけ1~10質量部となるように用いて、本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)100質量部に対して(メタ)アクリル酸エステルが150~49900質量部、特に400~19900質量部、とりわけ900~9900質量部複合化された複合ゴム質重合体(A)を製造することが好ましい。シリコーン系ゴム質重合体(S)の使用量が上記範囲内であれば耐衝撃性、機械特性に優れる。
<(メタ)アクリル酸エステル>
本発明の複合ゴム質重合体(A)を構成する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ベンジル等のアルキル基の炭素数が1~22のアクリル酸エステル;メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸n-ドデシル等のアルキル基の炭素数1~22のメタクリル酸エステルが挙げられる。得られる複合ゴム質重合体(A)を用いたグラフト共重合体(B)を配合してなる熱可塑性樹脂成形品の耐衝撃性および光沢が向上することから、(メタ)アクリル酸エステルの中でも、アクリル酸n-ブチルが好ましい。これらの(メタ)アクリル酸エステルは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸エステルは、本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)と、(メタ)アクリル酸エステルと後述する架橋剤と必要に応じて用いられる後述のその他のビニル化合物の合計100質量部中の(メタ)アクリル酸エステルの含有量が80~99.8質量部、特に85~99.5質量部、とりわけ90~99質量部となるように用いることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルの使用量が上記範囲内であれば、得られる複合ゴム質重合体(A)を用いたグラフト共重合体(B)を配合してなる熱可塑性樹脂成形品が耐衝撃性に優れたものとなる。
<架橋剤>
本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造に際しては、前述の(メタ)アクリル酸エステルから得られる(メタ)アクリル酸エステル単位部分に架橋構造を導入するために、好ましくは(メタ)アクリル酸エステルと共に架橋剤を用いる。架橋剤を用いて得られる架橋ゴム質重合体(A)であれば、その架橋部分が本発明のグラフト共重合体(B)の製造の際に用いる後述の(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル、およびシアン化ビニルから選ばれる少なくとも1種のビニル化合物(b)とグラフト結合するためのグラフト交叉点としても機能する。
架橋剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、ブチレンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリグリセリンポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋剤の使用量には特に制限はないが、本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)、(メタ)アクリル酸エステルおよび架橋剤と必要に応じて用いられる後述のその他のビニル化合物との合計100質量部に対して、架橋剤の割合が0.1~6.0質量部、特に0.2~2.0質量部となる量であることが好ましい。架橋剤の割合が上記範囲内であれば、得られる複合ゴム質重合体(A)を用いたグラフト共重合体(B)を配合してなる熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品が耐衝撃性に優れたものとなる。
<その他のビニル化合物>
必要に応じて用いられるその他のビニル化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル、架橋剤と共重合可能であれば特に限定されない。例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-,m-またはp-メチルスチレン、ビニルキシレン、p-t-ブチルスチレン、エチルスチレン等の芳香族ビニル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミドなどのマレイミド類や、無水マレイン酸などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
その他のビニル化合物を用いる場合、その他のビニル化合物の使用量は特に制限はないが、本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)、(メタ)アクリル酸エステル、架橋剤およびその他のビニル化合物の合計100質量部に対するその他のビニル化合物の割合が0~90質量部、特に0.1~50質量部、とりわけ0.3~30質量部となるように用いることが好ましい。
<疎水性物質>
本発明では、ミニエマルションを形成させる際に、好ましくは炭素数12以上のアルキル基、アルケニル基およびシクロアルキル基から選ばれる炭化水素基を有する疎水性物質を用いる。この特定の疎水性炭化水素基を有する疎水性物質を用いることで、ミニエマルションの製造安定性を向上させることができる。
本発明で用いる疎水性物質の疎水性の程度は、1-オクタノールに対する濃度〔c1〕と水に対する濃度〔c2〕の比〔c1/c2〕で表される分配係数〔P〕の対数〔logP〕値で表すことができ、本発明で用いる疎水性物質の分配係数〔P〕の対数〔logP〕値は6.0以上、特に7.0以上あることが好ましい。
分配係数〔P〕の対数〔logP〕値が6以上ある疎水性物質としては、重合不可能な疎水性化合物として、例えば炭素数12以上の炭化水素類、炭素数12以上のアルコール類、疎水性モノマーとして、例えば、炭素数14~30のアルコールのビニルエステル、炭素数14~30のアルコールのビニルエーテル、炭素数15~30(好ましくは炭素数15~22)のカルボン酸ビニルエステル、炭素数20~40のp-アルキルスチレン、疎水性の連鎖移動剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明で用いる疎水性物質としては、具体的には、例えば、テトラデカン(logP:6.3)、ペンタデカン(logP:7.7)、ヘキサデカン(logP:8.3)、ヘプタデカン(logP:8.8)、オクタデカン(logP:9.3)、イコサン(logP:10.4)、流動パラフィン(logP>6.0)、流動イソパラフィン(logP>6.0)、パラフィンワックス(logP>6.0)、ポリエチレンワックス(logP>6.0)、オリーブ油(logP>6.0)、セチルアルコール(logP:6.7)、ステアリルアルコール(logP:8.2)、アクリル酸ステアリル(logP:7.7)、メタクリル酸ステアリル(logP:9.6)等が挙げられる。
これらの疎水性物質を用いることにより、オストワルド熟成による粒径の不均一性の増大を抑制し、単分散な複合ゴム質重合体(A)を合成することが可能となる。
疎水性物質の添加量は、本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)、(メタ)アクリル酸エステル、架橋剤および必要に応じて用いられるその他のビニル化合物の合計100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、さらに好ましくは1~3質量部である。
<乳化剤>
本発明の複合ゴム質重合体(A)を製造する際に用いる乳化剤としては、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ロジン酸のアルカリ金属塩、アルケニルコハク酸のアルカリ金属塩等で例示されるカルボン酸系の乳化剤、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどの中から選ばれたアニオン系乳化剤等、公知の乳化剤を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。また、乳化剤の一部は、ラテックスを安定化させるために、ミニエマルション化後および/または重合反応中に適宜添加することができる。
過剰な乳化剤は成形品製造時に金型へのガスの付着を起こしやすくし、生産性を低下させる可能性があるため、乳化剤の添加量としては、本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)、(メタ)アクリル酸エステル、架橋剤および必要に応じて用いられるその他のビニル化合物の合計100質量部に対して0.01~3.0質量部が好ましく、より好ましくは0.02~1.0質量部、さらに好ましくは0.03~0.5質量部である。上記範囲内であれば、安定に複合ゴム質重合体(A)を製造できる。
<開始剤>
開始剤とは、上述の本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)と、(メタ)アクリル酸エステルと架橋剤と必要に応じて用いられるその他のビニル化合物とがラジカル重合するためのラジカル重合開始剤であり、例えば、アゾ重合開始剤、光重合開始剤、無機過酸化物、有機過酸化物、有機過酸化物と遷移金属と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤等が挙げられる。これらのうち、加熱により重合を開始できるアゾ重合開始剤、無機過酸化物、有機過酸化物、レドックス系開始剤が好ましい。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アゾ重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]フォルムアミド、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリックアシッド)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル1,1’-アゾビス(1-シクヘキサンカルボキシレート)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)等が挙げられる。
無機過酸化物としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えばペルオキシエステル化合物が挙げられ、その具体例としては、α,α’-ビス(ネオデカノイルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエート、t-ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ヘキシルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルペルオキシ2-ヘキシルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ2-ヘキシルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシマレイックアシッド、t-ブチルペルオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルオイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルペルオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシ-m-トルオイルベンゾエート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルペルオキシ)イソフタレート、1,1-ビス(t-ヘキシルペルオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロドデカン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、n-ブチル4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシド)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ジイソノナノイルペルオキシド、t-ブチルハイドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ジメチルビス(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ビス(t-ブチルペルオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ブチル-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレラート、2-エチルヘキサンペルオキシ酸t-ブチル、ジベンゾイルペルオキシド、パラメンタンハイドロペルオキシドおよびt-ブチルペルオキシベンゾエート等が挙げられる。
レドックス系開始剤としては、有機過酸化物と硫酸第一鉄、キレート剤および還元剤を組み合わせたものが好ましい。例えば、クメンヒドロペルオキシド、硫酸第一鉄、ピロリン酸ナトリウム、およびデキストロースからなるものや、t-ブチルハイドロペルオキシド、ナトリウムホルムアルデヒトスルホキシレート(ロンガリット)、硫酸第一鉄、およびエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを組み合わせたもの等が挙げられる。
開始剤としては、これらのうち、特に有機過酸化物が好ましい。
開始剤の添加量としては、本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)、(メタ)アクリル酸エステル、架橋剤および必要に応じて用いられるその他のビニル化合物の合計100質量部に対して通常5質量部以下、好ましくは3質量部以下、例えば0.001~3質量部である。
なお、開始剤の添加はプレエマルションを形成させる前後のいずれでもよく、添加方法は、一括、分割、連続のいずれでもよい。
<水>
本発明において、ミニエマルション化の際の水溶媒の使用量は、作業性、安定性、製造性等の観点から、重合後の反応系の固形分濃度が5~58質量%程度となるように、水以外の混合物(a)100質量部に対して75~1900質量部程度とすることが好ましく、より好ましくは80~1000質量部程度、さらに好ましくは90~500質量部程度である。
<ゴム成分>
本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造に際して、プレエマルションを作製する工程に本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)以外の他のゴム成分が存在してもよい。この場合、他のゴム成分としては、ポリブタジエン等のジエン系ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン等のポリオレフィンゴムなどが挙げられる。これらのゴム成分および本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)の存在下で(メタ)アクリル酸エステルと架橋剤をミニエマルション重合することで、本発明のシリコーン系ゴム質重合体(S)に更にアクリル酸ブチルゴム等の(メタ)アクリル酸エステル系ゴムとを複合してなるポリオルガノシロキサン/ポリブタジエン/(メタ)アクリル酸エステル系複合ゴムやポリオルガノシロキサン/ポリオレフィン/(メタ)アクリル酸エステル系複合ゴムをゴム成分とする複合ゴム質重合体(A)が得られる。尚、本発明に係る複合ゴム質重合体(A)はこれらに限定されるものではなく、また、複合させるゴム成分は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
<添加剤>
本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造に際して、プレエマルションを作製する工程に、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。この場合、添加剤としては、例えばポリスチレンやポリ(メタ)アクリル酸エステル、無機物質(シリカ、ジルコニア、マイカ、ワラストナイト、タルク等)、フィラー(ガラス繊維、炭素繊維等)、滑材、顔料(カーボンブラック、酸化チタン等)、染料、耐熱剤、酸化劣化防止剤、耐候剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤等が挙げられ、樹脂組成物や成形品の物性を損なわない範囲において配合することができる。
<反応条件>
上記のプレエマルションを調製する工程は通常常温(10~50℃程度)で5~600分程度行われ、ミニエマルション重合の工程は40~100℃で30~600分程度行われる。
<ゲル含有率・アセトン膨潤度>
本発明の複合ゴム質重合体(A)のゲル含有率は、特に制限はないが、80%以上あることが好ましい。ここで、ゲル含有率とは、次のようにして求められる値である。
即ち、複合ゴム質重合体(A)のラテックスを凝固、乾燥させて、ポリマーを得、このポリマーを約1g精秤(W)し、これを約50gのアセトン中に温度23℃で48時間浸漬して、ポリマーを膨潤させた後、アセトンをデカンテーションにて除き、ここで、膨潤したポリマーを精秤(W)した後、80℃で24時間減圧乾燥して、ポリマーが吸収したアセトンを蒸発、除去し、再び、精秤(W)して、次式によりゲル含有率を算出する。
ゲル含有率(%)=W/W×100
ここで、Wは乾燥したポリマーの重量であり、Wはアセトンに浸漬する前のポリマーの重量である。
ゲル含有率が80%以上の複合ゴム質重合体(A)であれば、この複合ゴム質重合体(A)を用いたグラフト共重合体(B)を配合した熱可塑性樹脂組成物の成形品の耐衝撃性に優れる傾向にある。
また、本発明の複合ゴム質重合体(A)は、500~1200%、特に600~1000%、とりわけ700~900%の範囲のアセトンによる膨潤度を有することが好ましい。ここで、アセトンによる膨潤度とは、次のようにして求められる値である。
即ち、上記のゲル含有率の測定におけると同様の操作をし、次式により膨潤度を算出する。
膨潤度(%)=(W-W)/W×100
ここで、Wは膨潤したポリマーの重量であり、Wは乾燥したポリマーの重量である。
アセトン膨潤度が上記下限以上の複合ゴム質重合体(A)であれば、この複合ゴム質重合体(A)を用いたグラフト共重合体(B)を配合した熱可塑性樹脂組成物の成形品の耐衝撃性が良好であり、上記上限以下の複合ゴム質重合体(A)であれば、成形外観が良好となる傾向にある。
[グラフト共重合体(B)]
本発明のグラフト共重合体(B)は、本発明の複合ゴム質重合体(A)に、芳香族ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、およびシアン化ビニルから選ばれる少なくとも1種のビニル化合物(b)をグラフト重合させてグラフト層を形成したものである。
なお、ビニル化合物(b)は、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル、およびシアン化ビニル以外のその他のビニル化合物を含んでいてもよい。
本発明のグラフト共重合体(B)のグラフト層のグラフト率は以下の方法により算出され、後掲の実施例でもこの方法でグラフト率を求めた。
<グラフト率の算出>
グラフト共重合体(B)2.5gにアセトン80mLを加え65℃の湯浴で3時間還流し、アセトン可溶分の抽出を行う。残留したアセトン不溶物を遠心分離により分離し、乾燥した後質量を測定する。得られたグラフト共重合体(B)中のアセトン不溶物の質量と、該グラフト共重合体(B)の製造に用いた複合ゴム質重合体(A)の質量から、次の式を用いて、グラフト率を算出する。
Figure 0007459463000001
本発明のグラフト共重合体(B)のグラフト率は10~90%、特に30~85%が好ましい。グラフト共重合体(B)のグラフト率が上記範囲内であれば、このグラフト共重合体(B)を用いて良好な耐衝撃性、成形外観の熱可塑性樹脂成形品を得ることができる。
本発明の複合ゴム質重合体(A)にグラフト重合させる(メタ)アクリル酸エステルとしては、本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造に用いる(メタ)アクリル酸エステルとして例示したものの1種または2種以上を用いることができる。また、芳香族ビニル、シアン化ビニルとしては、本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造において、必要に応じて用いられるその他のビニル化合物としてそれぞれ例示した芳香族ビニル、シアン化ビニルの1種または2種以上を用いることができる。
本発明のグラフト共重合体(B)の製造に用いるビニル化合物(b)は、前述の(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル、シアン化ビニル以外のその他のビニル化合物を含有していてもよい。その他のビニル化合物としては、本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造において、必要に応じて用いられるその他のビニル化合物として例示したもののうちの、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル、シアン化ビニル以外のビニル化合物の1種または2種以上が挙げられる。
グラフト共重合体(B)のグラフト層を形成するビニル化合物(b)として、芳香族ビニル、好ましくはスチレンと、シアン化ビニル、好ましくはアクリロニトリルの混合物を使用すると、得られるグラフト共重合体(B)の熱安定性が優れたものとなるため好ましい。この場合、スチレン等の芳香族ビニルとアクリロニトリル等のシアン化ビニルとの割合は、芳香族ビニル50~90質量%に対してシアン化ビニル10~50質量%であることが好ましい(ただし、芳香族ビニルとシアン化ビニルとの合計で100質量%とする)。
グラフト共重合体(B)のグラフト層は、複合ゴム質重合体(A)10~90質量%に対して、ビニル化合物(b)90~10質量%を乳化グラフト重合させて得られるものであると、このグラフト共重合体(B)を用いて得られる熱可塑性樹脂成形品の外観が優れるため好ましい(ただし、複合ゴム質重合体(A)とビニル化合物(b)との合計で100質量%とする。)。この割合は、さらに好ましくは、複合ゴム質重合体(A)30~70質量%で、ビニル化合物(b)70~30質量%である。
複合ゴム質重合体(A)へのビニル化合物(b)のグラフト重合方法としては、ミニエマルション重合により得られた複合ゴム質重合体(A)のラテックスにビニル化合物(b)を添加し、1段又は多段で重合する方法が挙げられる。多段で重合する場合には、複合ゴム質重合体(A)のゴムラテックスの存在下で、ビニル化合物(b)を分割添加又は連続添加して重合することが好ましい。このような重合方法により良好な重合安定性が得られ、且つ所望の粒子径および粒子径分布を有するラテックスを安定に得ることができる。このグラフト重合に用いる重合開始剤としては、前述の本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造方法におけるミニエマルション重合に用いるラジカル重合開始剤と同様のものが挙げられる。
複合ゴム質重合体(A)にビニル化合物(b)を重合する際には、複合ゴム質重合体(A)のラテックスを安定化させ、得られるグラフト共重合体(B)の平均粒子径を制御するために、乳化剤を添加することができる。ここで用いる乳化剤としては、特に限定しないが、前述の本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造方法におけるミニエマルション重合に用いる乳化剤と同様のものが挙げられ、アニオン系乳化剤およびノニオン系乳化剤が好ましい。複合ゴム質重合体(A)にビニル化合物(b)をグラフト重合させる際の乳化剤の使用量としては、特に限定しないが、得られるグラフト共重合体(B)100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。
乳化重合で得られたグラフト共重合体(B)のラテックスから、グラフト共重合体(B)を回収する方法としては、特に限定されないが、下記の方法が挙げられる。
グラフト共重合体(B)のラテックスを、凝固剤を溶解させた熱水中に投入し、グラフト共重合体(B)を固化させる。次いで、固化したグラフト共重合体(B)を、水または温水中に再分散させてスラリーとし、グラフト共重合体(B)中に残存する乳化剤残渣を水中に溶出させ、洗浄する。次いで、スラリーを脱水機等で脱水し、得られた固体を気流乾燥機等で乾燥することによって、グラフト共重合体(B)を粉体または粒子として回収する。
凝固剤としては、無機酸(硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等)、金属塩(塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等)等が挙げられる。凝固剤は、乳化剤の種類に応じて適宜選定される。例えば、乳化剤としてカルボン酸塩(脂肪酸塩、ロジン酸石鹸等)のみを用いた場合、どのような凝固剤を用いてもよい。乳化剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような酸性領域でも安定な乳化力を示す乳化剤を用いた場合、無機酸では不十分であり、金属塩を用いる必要がある。
前述の好ましい体積平均粒子径および粒子径分布の複合ゴム質重合体(A)を用いて上述のようにして製造される本発明のグラフト共重合体(B)の体積平均粒子径は、好ましくは260~1000nm、より好ましくは350~700nmである。
なお、本発明のグラフト共重合体(B)の粒子径の測定方法は、後掲の実施例の項に記載される通りである。
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述した本発明のグラフト共重合体(B)を含有し、通常、本発明のグラフト共重合体(B)と他の熱可塑性樹脂とを混合してなる。本発明の熱可塑性樹脂組成物100質量部中の本発明のグラフト共重合体(B)の含有量は、20~80質量部が好ましく、25~60質量部がより好ましい。熱可塑性樹脂組成物中の本発明のグラフト共重合体(B)の含有量が上記範囲内であれば、流動性(成形性)と、成形品の耐衝撃性、剛性、その他の物性バランスが良好となる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いられる他の熱可塑性樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-N-フェニルマレイミド共重合体、α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、メタクリル酸メチル-N-フェニルマレイミド共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフェニレンエーテル-ポリスチレン複合体などの1種または2種以上が挙げられる。これらのうち、耐衝撃性と流動性の観点から、アクリロニトリル-スチレン共重合体が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、通常の熱可塑性樹脂組成物に配合される添加剤が含まれていてもよい。
添加剤としては、例えば顔料、染料等の着色剤、充填剤(カーボンブラック、シリカ、酸化チタン等)、難燃剤、安定剤、補強剤、加工助剤、耐熱剤、酸化防止剤、耐候剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
これらの添加剤は、前述の通り、本発明の複合ゴム質重合体(A)の製造に際して、プレエマルションを作製する工程に添加してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明のグラフト共重合体(B)と、必要に応じて他の熱可塑性樹脂や添加剤とをV型ブレンダやヘンシェルミキサー等により混合分散させ、これにより得られた混合物を押出機、バンバリーミキサ、加圧ニーダ、ロール等の混練機等を用いて溶融混練することにより製造される。
各成分の混合順序には特に制限はなく、全ての成分が均一に混合されればよい。
[成形品]
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものであり、耐衝撃性、剛性等の機械特性、成形外観に優れる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形機法、押出法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法およびインフレーション成形法等が挙げられる。これらのなかでも、量産性に優れ、高い寸法精度の成形品を得ることができるため、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品は、耐衝撃性、低温耐衝撃性、引張強度、引張伸び等の機械特性、成形外観に優れることから、車両内外装部品、OA機器、建材などに好適である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる本発明の成形品の工業的用途例としては、車両部品、特に無塗装で使用される各種外装・内装部品、壁材、窓枠等の建材部品、食器、玩具、掃除機ハウジング、テレビジョンハウジング、エアコンハウジング等の家電部品、インテリア部材、船舶部材および通信機器ハウジング等が挙げられる。
以下に、合成例、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら制限されるものではない。
なお、以下において、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。
[体積平均粒子径の測定]
合成例、実施例および比較例で製造したシリコーン系ゴム質重合体(S-1)~(S-5)、複合ゴム質重合体(A-1)~(A-15)、およびグラフト共重合体(B-1)~(B-15)の体積平均粒子径は、日機装社製のNanotrac UPA-EX150を用いて動的光散乱法より求めた。
[凝塊物量の測定]
実施例および比較例で製造した複合ゴム質重合体(A-1)~(A-15)と、グラフト共重合体(B-1)~(B-15)のラテックスを100メッシュの金網で濾過し、100メッシュの金網に残った凝塊物を乾燥させて秤量し、各々、複合ゴム質重合体(A-1)~(A-15)、グラフト共重合体(B-1)~(B-15)に対する割合(質量%)を求めた。凝塊物量が少ないほど、複合ゴム質重合体(A-1)~(A-15)、グラフト共重合体(B-1)~(B-15)の製造安定性が良好である。
[シリコーン系ゴム質重合体(S)の製造]
<合成例I-1:シリコーン系ゴム質重合体(S-1)の製造>
オクタメチルシクロテトラシロキサン96部、γ-メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部およびエチルオルソシリケート2部を混合してシロキサン混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.9部を溶解した蒸留水300部を添加し、(株)SMT製「ハイフレックスディスパーサー HG92」にて10000回転で5分間撹拌した後、三丸機械工業(株)製「高圧式ホモジナイザー H3-1D」に20MPaの圧力で2回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
別途、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱器および撹拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸2部、蒸留水98部を注入し、2%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。この水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間にわたって滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し、冷却した。この反応液を室温で48時間放置した後、5%水酸化ナトリウム水溶液で中和して、シリコーン系ゴム質重合体(S-1)のラテックスを得た。シリコーン系ゴム質重合体(S-1)ラテックスの一部を170℃で30分間乾燥して固形分濃度を求めたところ、17.3%であった。また、ラテックス中に分散しているシリコーン系ゴム質重合体(S-1)の体積平均粒子径は30nmであった。
<合成例I-2~I-4:シリコーン系ゴム質重合体(S-2)~(S-4)の製造>
合成例I-1において、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの添加量を下記表1に示す通りに変更した以外は同様にして、それぞれシリコーン系ゴム質重合体(S-2)~(S-4)のラテックスを得た。
<合成例I-5:シリコーン系ゴム質重合体(S-5)の製造>
オクタメチルシクロテトラシロキサン96部、γ-メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部およびエチルオルソシリケート2部を混合してシロキサン混合物100部を得た。蒸留水300部中にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部を溶解した水溶液を、上記混合物中に添加し、(株)SMT製「ハイフレックスディスパーサー HG92」にて10,000rpmで5分間撹拌した後、三丸機械工業(株)製「高圧式ホモジナイザー H3-1D」に20MPaの圧力で2回通し、安定な予備混合エマルションを得た。次いで、冷却コンデンサーを備えた容量内に、上記エマルションを入れた。該エマルションを温度85℃に加熱し、次いで硫酸0.2部と蒸留水49.8部との混合物を3分間にわたり連続的に投入した。温度85℃に加熱した状態を7時間維持して重合反応させた後、室温(25℃)に冷却し、得られた反応液を室温で6時間保持した。その後、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して反応液をpH7.0に中和して、シリコーン系ゴム質重合体(S-5)のラテックスを得た。シリコーン系ゴム質重合体(S-5)ラテックスの一部を170℃で30分間乾燥して固形分濃度を求めたところ、16.8%であった。また、ラテックス中に分散しているシリコーン系ゴム質重合体(S-5)の体積平均粒子径は330nmであった。
合成例I-1~I-5で製造したシリコーン系ゴム質重合体(S-1)~(S-5)の体積平均粒子径を表1にまとめて示す。
Figure 0007459463000002
[複合ゴム質重合体(A)の製造と評価]
<実施例I-1:複合ゴム質重合体(A-1)の製造>
以下の配合で複合ゴム質重合体(A-1)を製造した。
〔配合〕
アクリル酸n-ブチル(BA) 97部
メタクリル酸アリル(AMA) 1部
シリコーン系ゴム質重合体(S-1)ラテックス (固形分として)2部
流動パラフィン(LP) 1部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS-Na) 0.2部
ジラウロイルペルオキシド(LPO) 0.6部
蒸留水 400部
容器にアクリル酸n-ブチル(LogP=1.9)、流動パラフィン(LogP>6.0)、メタクリル酸アリル(LogP=1.5)、シリコーン系ゴム質重合体(S-1)ラテックス、ジラウロイルペルオキシド、蒸留水、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを仕込み、常温下、(株)SMT製「ハイフレックスディスパーサー HG92」を用いて9000rpmで5分撹拌を行うことで混合物を得た。得られた混合物を三丸機械工業(株)製「高圧式ホモジナイザー H3-1D」を用いて、圧力20MPa、流量135L/Hrで2回処理することでプレエマルションを得た。得られたプレエマルションの体積平均粒子径は350nmであった。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器に、得られたプレエマルションを仕込み、反応器内を十分に窒素置換した後、撹拌しながら内温を60℃に昇温し、ラジカル重合を開始した。アクリル酸エステル成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。30分間75℃で維持し、アクリル酸エステル成分の重合を完結させた。製造に要した時間は120分であり、固形分18.5%、体積平均粒子径350nmの複合ゴム質重合体(A-1)のラテックスを得た。得られた複合ゴム質重合体(A-1)のゲル含有率は99%、アセトン膨潤度は800%で、凝塊物量は0.01%であった。
<実施例I-2、I-3、I-5~I-7、参考例I-4、比較例I-1~I-6:複合ゴム質重合体(A-2)~(A-7)、(A-9)~(A-14)の製造>
用いたシリコーン系ゴム質重合体(S)の種類を表2A,2Bに示す通り変更したこと以外は、実施例I-1と同様にして、それぞれ共重合体(A-2)~(A-7)、(A-9)~(A-14)のラテックスを得た。
ただし、比較例I-4,I-5では、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの配合量を表2Bに示す通り変更した。また、比較例I-6では、流動パラフィンを使用せず、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの配合量を表2Bに示す通り変更した。また、比較例I-3ではシリコーン系ゴム質重合体(S)を使用せず、アクリル酸n-ブチルとメタクリル酸アリルを表2Bに示す配合量とした。
参考例I-8:複合ゴム質重合体(A-8)の製造>
以下の配合で共重合体(A-8)を製造した。
〔配合〕
アクリル酸n-ブチル(BA) 97部
メタクリル酸アリル(AMA) 1部
シリコーン系ゴム質重合体(S-2)ラテックス (固形分として)2部
t-ブチルハイドロペルオキシド 0.25部
硫酸第一鉄 0.0002部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.33部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.0004部
ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム 1.0部
蒸留水 400部
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた窒素置換された反応器にシリコーン系ゴム質重合体(S-2)ラテックス2.0部(固形分として)、蒸留水93部、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム0.05部、アクリル酸n-ブチル4.7部、メタクリル酸アリル0.1部、t-ブチルハイドロペルオキシド0.05部を仕込み、60℃に加熱後、硫酸第一鉄、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを添加し60分間反応させた。その後、蒸留水300部、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム0.95部、アクリル酸n-ブチル92.3部、メタクリル酸アリル0.9部、t-ブチルハイドロペルオキシド0.2部の混合液をポンプで420分間にわたって滴下した。滴下終了後30分間75℃で維持し、アクリル酸エステル成分の重合を完結させて複合ゴム質重合体(A-)のラテックスを得た。製造に要した時間は720分であり、得られたラテックス中の複合ゴム質重合体(A-)の固形分は19.1%、凝塊物量0.3%、体積平均粒子径は300nmであった。
得られた複合ゴム質重合体(A-8)のゲル含有率は78%、アセトン膨潤度は1100%であった。
<比較例I-7:複合ゴム質重合体(A-15)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱器及び撹拌装置を備えた反応器内に、シリコーン系ゴム質重合体(S-2)ラテックス16部(固形分として)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム1.0部を仕込み、蒸留水203部を添加し、混合した。その後、アクリル酸n-ブチル84部、メタクリル酸アリル0.3部、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート0.13部およびt-ブチルハイドロペルオキシド0.16部からなる混合物を添加した。この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。反応器の内部の温度が60℃になった時点で、硫酸第一鉄七水塩0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.0003部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.24部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。アクリル酸エステル成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、アクリル酸エステル成分の重合を完結させて、複合ゴム質重合体(A-15)のラテックスを得た。製造に要した時間は120分であり、凝塊物量0.02%、体積平均粒子径は100nmであった。得られた複合ゴム質重合体(A-15)のゲル含有率は75%、アセトン膨潤度は1450%であった。
実施例I-1~I-3、I-5~I-7、参考例I-4、I-8および比較例I-1~I-7で製造された複合ゴム質重合体(A-1)~(A-15)の原料配合と製造時間、凝塊物量、体積平均粒子径、頻度上限10%体積粒子径(Y)、頻度下限10%体積粒子径(Z)、ゲル含有率、アセトン膨潤度を表2A,表2Bにまとめて示す。
Figure 0007459463000003
Figure 0007459463000004
[グラフト共重合体(B)の製造と評価]
<実施例II-1:グラフト共重合体(B-1)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応器に、以下の配合で原料を仕込み、反応器内を十分に窒素置換した後、撹拌しながら内温を75℃まで昇温した。
〔配合〕
水(複合ゴム質重合体(A-1)ラテックス中の水を含む) 230部
複合ゴム質重合体(A-1)ラテックス (固形分として)50部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS-Na) 0.5部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート 0.3部
硫酸第一鉄七水塩 0.001部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.003部
次いで、アクリロニトリル(AN)、スチレン(ST)、t-ブチルハイドロペルオキシドを以下の配合で含む混合液を100分間にわたって滴下しながら、80℃まで昇温した。
〔配合〕
アクリロニトリル(AN) 13部
スチレン(ST) 37部
t-ブチルハイドロペルオキシド 0.2部
滴下終了後、温度80℃の状態を30分間保持した後冷却して、グラフト共重合体(B-1)のラテックスを得た。得られたラテックス中のグラフト共重合体(B-1)の固形分は29.7%、凝塊物量は0.01%、体積平均粒子径は500nm、グラフト率は55%であった。
次いで、1.5%塩化カルシウム水溶液100部を80℃に加熱し、該水溶液を撹拌しながら、該水溶液にグラフト共重合体(B-1)ラテックス100部を徐々に滴下し、グラフト共重合体(B-1)を固化させ、さらに95℃に昇温して10分間保持した。
次いで、固化物を脱水、洗浄、乾燥し、粉末状のグラフト共重合体(B-1)を得た。
<実施例II-2、II-3、II-5~II-7、参考例II-4、II-8、比較例II-1~II-6:グラフト共重合体(B-2)~(B-14)の製造>
複合ゴム質重合体(A-1)のラテックスの代りに、複合ゴム質重合体(A-2)~(A-14)のラテックスをそれぞれ用いたこと以外は、実施例II-1と同様にして、それぞれグラフト共重合体(B-2)~(B-14)を得た。
<比較例II-7:グラフト共重合体(B-15)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱器及び撹拌装置を備えた反応器内に、複合ゴム質重合体(A-15)50部(固形分として)を入れ、反応器内部の液温を60℃にした後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.4部を蒸留水10部に溶解した水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル7.5部、スチレン22.5部及びt-ブチルハイドロペルオキシド0.18部の混合液を約1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後1時間保持した後、硫酸第一鉄七水塩0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.0006部およびナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.25部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加した。次いで、アクリロニトリル5部、スチレン15部およびtーブチルハイドロペルオキシド0.1部の混合液を約40分間にわたって滴下し重合した。滴下終了後1時間保持した後、冷却して、複合ゴム質重合体(A-15)にアクリロニトリル-スチレン共重合体をグラフトさせたグラフト共重合体(B-15)の水性分散体を得た。
次いで、酢酸カルシウムを5%の割合で溶解した水溶液150部を60℃に加熱し撹拌した。その酢酸カルシウム水溶液中にグラフト共重合体(B-15)の水性分散体100部を徐々に滴下して凝固させた。得られた凝固物を分離し、洗浄した後、乾燥させて、グラフト共重合体(B-15)の乾燥粉末を得た。
実施例II-1~II-3、II-5~II-7、参考例II-4、II-8および比較例II-1~II-7で製造されたグラフト共重合体(B-1)~(B-15)の原料配合と製造時間、凝塊物量、体積平均粒子径、グラフト率を表3A,表3Bにまとめて示す。
Figure 0007459463000005
Figure 0007459463000006
[AN-ST系熱可塑性樹脂組成物の製造と評価]
<実施例III-1~III-3、III-5~III-7、参考例III-4、III-8、比較例III-1~III-7:熱可塑性樹脂組成物の製造>
グラフト共重合体(B-1)~(B-15)40部と、懸濁重合法によって製造したアクリロニトリル(AN)-スチレン(ST)共重合体(テクノUMG(株)製「UMG AXS レジン S102N」)60部とをヘンシェルミキサーを用いて混合し、この混合物を240℃に加熱した押出機に供給し、混練してペレット1を得た。
またペレット1の100部とカーボンブラック0.8部とをヘンシェルミキサーを用いて混合し、この混合物を240℃に加熱した押出機に供給し、混練して黒色ペレット2を得た。
<試験片の作製>
上記熱可塑性樹脂組成物のペレット1を用い、各々、4オンス射出成形機(日本製鋼所(株)製)にて、シリンダー温度240℃、金型温度60℃、射出率20g/秒の条件で成形して、長さ80mm、幅10mm、厚み4mmの棒状の成形体1を得た。
同様にして、熱可塑性樹脂組成物の黒色ペレット2をシリンダー温度240℃、金型温度60℃、射出率20g/秒の条件で射出成形して、長さ100mm、幅100mm、厚み3mmの板状の成形体2を得た。
<評価>
(耐衝撃性:シャルピー衝撃値の測定)
ISO 179-1:2013年度版に準拠し、試験温度23℃及び-30℃の条件で、それぞれの成形体1(タイプB1、ノッチ有:形状A シングルノッチ)のシャルピー衝撃強度(打撃方向:エッジワイズ)を測定した。シャルピー衝撃強度が高いほど、耐衝撃性に優れることを意味する。
(流動性:メルトボリュームレート(MVR)の測定)
ISO 1133規格に従い、220℃-98Nの条件でペレット1のMVRを測定した。なお、MVRは熱可塑性樹脂組成物の成形性の目安となる。
(引張強度・伸びの測定)
成形体1について、JIS K7161-1:2014に準じて、引張試験機(株式会社島津製作所製AGS-X)を用いて測定した。なお、引張強度が大きいほど、成形品が固いことを意味し、引張伸びが大きいほど、成形品が応力に対して粘り強い(割れにくい)ことを意味する。
(成形外観:発色性の評価)
成形体2について、分光測色計(コニカミノルタオプティプス社製「CM-3500d」)を用いて、SCE方式にて明度L*を測定した。測定されたL*を「L*(ma)」とする。L*が低いほど黒色となり、発色性が良好と判定した。
「明度L*」とは、JIS Z 8729において採用されているL*a*b*表色系における色彩値のうちの明度の値(L*)を意味する。
「SCE方式」とは、JIS Z 8722に準拠した分光測色計を用い、光トラップによって正反射光を除去して色を測る方法を意味する。
(成形外観:表面光沢の測定)
スガ試験機株式会社製の「デジタル変角光沢計UGV-5D」を用い、JIS K 7105に準拠して、入射角60°、反射角60°における成形体2の表面の反射率(%)を測定した。反射率が高いほど表面外観に優れることを意味する。
実施例III-1~III-3、III-5~III-7、参考例III-4、III-8および比較例III-1~III-1~7の結果を表4A,表4Bに示す。
Figure 0007459463000007
Figure 0007459463000008
各実施例および比較例の結果から、次のことが明らかとなった。
本発明の複合ゴム質重合体(A-1)~(A-3)、(A-5)~(A-)を用いたグラフト共重合体(B-1)~(B-8)は、表3Aに示される通り、凝塊物が少なく、このグラフト共重合体(B-1)~(B-8)を用いた実施例III-1~III-8の熱可塑性樹脂組成物は、表4Aに示される通り、耐衝撃性、低温耐衝撃性、流動性(成形性)、引張特性、発色性、光沢に優れるものであることがわかる。
一方、本発明の範囲外のシリコーン系ゴム質重合体(S)を用いて製造された複合ゴム質重合体(A-9),(A-10)、(A-14)を用いたグラフト共重合体(B-9),(B-10),(B-14)を配合した比較例III-1、III-2、III-6の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、低温耐衝撃性、引張特性、発色性、光沢のいずれかに劣る。
具体的には、比較例III-1では複合ゴム質重合体(A-9)に用いたシリコーン系ゴム質重合体(S-4)の体積平均粒子径が大きすぎるため成形外観に劣る。比較例III-2,III-6では、複合ゴム質重合体(A-10),(A-14)に用いたシリコーン系ゴム質重合体(S-5)の体積平均粒子径が過度に大きすぎるため成形外観と引張特性に劣る。
また、シリコーン系ゴム質重合体(S)を用いていない複合ゴム質重合体(A-11)を用いたグラフト共重合体(B-11)を配合した比較例III-3の熱可塑性樹脂組成物は耐衝撃性、低温耐衝撃性、引張特性に劣る。
また、体積平均粒子径が本発明の範囲外の複合ゴム質重合体(A)を用いて製造されたグラフト共重合体(B-12)、(B-13)、(B-15)を配合した比較例III-4、III-5、III-7の熱可塑性樹脂組成物は、低温耐衝撃性、引張特性、光沢のいずれかに劣る。
[その他の熱可塑性樹脂組成物の製造と評価]
<実施例IV-1、IV-2、比較例IV-1、IV-2>
AN-ST共重合体の代りにポリカーボネート樹脂(三菱ケミカル社製「ユーピロン S-2000」)又はアクリル樹脂(三菱ケミカル社製「アクリペット VH5」)を用い、表5に示す配合としたこと以外は、実施例III-2、比較例III-7と同様に熱可塑性樹脂組成物の製造と評価を行い、結果を表5に示した。
Figure 0007459463000009
実施例IV-1,IV-2から明らかなように、本発明のグラフト共重合体(B)は、種々の熱可塑性樹脂と混合することができ、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂と混合した場合も、得られる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品は、成形性、耐衝撃性、低温耐衝撃性、引張特性、発色性、光沢に優れるものである。
一方、本発明の範囲外の複合ゴム質重合体(A)を用いて製造されたグラフト共重合体(B-15)を配合した比較例IV-1,IV-2の熱可塑性樹脂組成物は、低温耐衝撃性に劣る。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は成形性に優れ、また、その成形品は、耐衝撃性、低温耐衝撃性、引張強度、引張伸び、発色性、光沢が良好なものである。この成形性、耐衝撃性、低温耐衝撃性、引張特性、発色性、光沢のバランスは、従来の熱可塑性樹脂組成物よりなる成形品に比べて非常に優れているので、本発明の熱可塑性樹脂組成物およびその成形品は、各種工業用材料としての利用価値が極めて高い。

Claims (11)

  1. 体積平均粒子径が1~100nmのシリコーン系ゴム質重合体(S)に、(メタ)アクリル酸エステルを複合してなる複合ゴム質重合体(A)であって、体積平均粒子径が250~800nmであり、
    ゲル含有率が80%以上であり、
    シリコーン系ゴム質重合体(S)を、シリコーン系ゴム質重合体(S)と、(メタ)アクリル酸エステル、架橋剤および必要に応じて用いられる芳香族ビニル、シアン化ビニル、マレイミド類及び無水マレイン酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のビニル化合物の合計100質量部に対して、1~20質量部用いて製造された複合ゴム質重合体(A)であり、
    体積平均粒子径(X)をXで表し、粒子径分布曲線における上限からの頻度の累積値が10%になったところの粒子径を頻度上限10%体積粒子径(Y)としてYで表し、粒子径分布曲線における下限からの頻度の累積値が10%になったところの粒子径を頻度下限10%体積粒子径(Z)としてZで表したとき、以下の(1)又は(2)を満たす複合ゴム質重合体(A)。
    (1) 体積平均粒子径(X)がX≦350nmであり、頻度上限10%体積粒子径(Y)がY≦1.60X、頻度下限10%体積粒子径(Z)がZ≧0.60Xである。
    (2) 体積平均粒子径(X)がX=350~800nmであり、頻度上限10%体積粒子径(Y)がY≦1.70X、頻度下限10%体積粒子径(Z)がZ≧0.50Xである。
  2. 請求項1に記載の複合ゴム質重合体(A)に、芳香族ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、およびシアン化ビニルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のビニル化合物(b)をグラフト重合してなるグラフト共重合体(B)。
  3. 請求項2において、前記複合ゴム質重合体(A)10~90質量%に対して、前記ビニル化合物(b)90~10質量%をグラフト重合してなり(ただし、複合ゴム質重合体(A)とグラフト単量体成分との合計を100質量%とする。)、グラフト率10~90%で、体積平均粒子径が260~1000nmであるグラフト共重合体(B)。
  4. 請求項2又は3に記載のグラフト共重合体(B)を含む熱可塑性樹脂組成物。
  5. 請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
  6. 少なくとも、体積平均粒子径が1~100nmのシリコーン系ゴム質重合体(S)と、(メタ)アクリル酸エステル、水、および乳化剤とを混合して混合物(a)を調製する混合工程と、得られた混合物(a)を、超音波ホモジナイザーおよび圧力式ホモジナイザーのいずれかの方法でミニエマルション化するミニエマルション化工程と、該ミニエマルション化で得られたミニエマルションを重合する重合工程とを含む複合ゴム質重合体(A)の製造方法。
  7. 請求項6において、前記混合工程は、シリコーン系ゴム質重合体(S)1~20質量部、(メタ)アクリル酸エステル10~99.8質量部、架橋剤0.1~6.0質量部、必要に応じて用いられる芳香族ビニル、シアン化ビニル、マレイミド類及び無水マレイン酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のビニル化合物0~90質量部、炭素数12以上のアルキル基、アルケニル基およびシクロアルキル基から選ばれる炭化水素基を有する疎水性物質0.1~10質量部および乳化剤0.01~3.0質量部(ただし、シリコーン系ゴム質重合体(S)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、架橋剤および必要に応じて用いられる芳香族ビニル、シアン化ビニル、マレイミド類及び無水マレイン酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のビニル化合物の合計を100質量部とする。)と、水以外の前記混合物(a)100質量部に対して水75~1900質量部とを混合する工程である複合ゴム質重合体(A)の製造方法。
  8. 請求項6又は7において、前記複合ゴム質重合体(A)の体積平均粒子径が250~800nmである複合ゴム質重合体(A)の製造方法。
  9. 請求項6ないし8のいずれかに記載の製造方法で得られた複合ゴム質重合体(A)に、芳香族ビニル、(メタ)アクリル酸エステルおよびシアン化ビニルから選ばれる少なくとも1種をグラフト重合させるグラフト共重合体(B)の製造方法。
  10. 請求項9に記載の製造方法で得られたグラフト共重合体(B)を用いた熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  11. 請求項10に記載の製造方法で得られた熱可塑性樹脂組成物を成形する成形品の製造方法。
JP2019151338A 2019-08-21 2019-08-21 ゴム質重合体、グラフト共重合体、熱可塑性樹脂組成物および成形品と、その製造方法 Active JP7459463B2 (ja)

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