JP7079116B2 - 重合体、グラフト重合体および熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

重合体、グラフト重合体および熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、重合体、グラフト重合体および熱可塑性樹脂組成物に関する。
アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル(ASA)樹脂、アクリロニトリル-エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体-スチレン(AES)樹脂等の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、成形加工性、2次加工性(めっき、塗装等)、表面外観に優れる成形品が得られることから幅広い分野で使用されている。
熱可塑性樹脂組成物は、グラフト重合体と、グラフト重合体以外の熱可塑性樹脂(以下、「他の熱可塑性樹脂」ともいう。)とを含むものである。グラフト重合体は、ゴム質の重合体(以下、「ゴム質重合体」ともいう。)に、他の熱可塑性樹脂との相溶性を付与するビニル系単量体等の単量体をグラフト重合して得られる重合体である。
グラフト重合体に用いるゴム質重合体としては様々なものが使用されており、例えば、ポリブタジエン、ポリブタジエン-スチレン共重合体、シリコーンゴム、アクリルゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)等のオレフィン系ゴムやこれらを複合させた複合コム等が知られている。これらの中でも、アクリル酸エステルを重合したアクリルゴムは、得られる成形品の耐候性、耐薬品性に優れ、経済性にも優れることから幅広く使用されている。
グラフト重合体におけるゴム質重合体の粒子径は、得られる成形品の物性に大きく影響を与えることが知られている。一般的には他の熱可塑性樹脂の種類によって最適な粒子径があるとされており、絡み合い密度の高いポリカーボネートやポリメチルメタクリレートでは比較的に小粒子径、アクリロニトリル-スチレン樹脂(AS樹脂)では中粒子径、絡み合い密度の低いポリスチレン等では比較的に大粒子径が最適とされている(例えば、非特許文献1参照)。
また、使用環境によっても最適な粒子径が異なり、低温であるほど大粒子径が最適となる傾向にある。
粒子径を制御する際には、粒子径分布は狭い方がよい。粒子径分布が広いと、相対的に目的とする粒子径が少なくなり、物性が発現しにくくなる傾向にある。
ところが、各種の他の熱可塑性樹脂において、物性を発現しやすいとされている粒子径領域である150~600nm程度の粒子径領域の粒子径分布を狭くすると、可視光領域の粒子数が増加することに起因して成形品の発色性が低下することがある。さらに、ゴム質重合体は成形により変形しやすく、その成形条件によって変形度合が変わる。そのため、成形品のゲート付近や成形品の段差などの形状によって流動速度が変化する部分などで、色むら等の成形外観不良が生じることがある。
これらの問題を解決する方法として、大粒子径のゴム質重合体と小粒子径のゴム質重合体を併用する方法が考えられる。しかし、この方法では常温での成形品の耐衝撃性や成形外観は良好となるものの、低温での耐衝撃性などの低温特性が悪化する。
また、ゴム質重合体の架橋度を高くすることで変形を抑制する方法が考えられる。例えば、特定の架橋度を有するEPDMやアクリルゴムをゴム質重合体として用いたグラフト重合体を含む熱可塑性樹脂組成物からは、耐衝撃性に優れる成形品が得られることが知られている(例えば、特許文献1~3参照)。さらに、アクリルゴムの架橋度を調整する方法として、アクリルゴムを製造する際に、分子内に2つ以上の(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等を有する多官能化合物を架橋剤として用い、該架橋剤をアクリル酸エステルと共重合する方法が知られている。
しかし、架橋度の高すぎるゴム質重合体を用いた場合、成形品の耐衝撃性が低下する。
また、グラフト重合体において、ビニル系単量体等の単量体の重合体でゴム質重合体を被覆した割合であるグラフト率が、成形品の諸物性に影響を与えることが知られている。一般的にグラフト率が高い方が成形外観が良好となる傾向にある。グラフト率を高くする方法としては、ゴム質重合体の架橋度を調整する場合に用いる多官能化合物の添加量を増加させる方法が一般的である。
しかし、多官能化合物の添加量を増加させてグラフト率を高めようとすると、ゴム質重合体の架橋度も上がる傾向にあり、成形品の耐衝撃性が低下しやすくなる。
このように、ゴム質重合体の架橋度とグラフト重合体のグラフト率とを高度に制御し、成形品の耐衝撃性および低温特性と、発色性および成形外観とを両立することは困難であった。
特開2012-224670号公報 特開2002-284823号公報 特開2012-214734号公報
井手文雄,"新高分子文庫33 耐衝撃性高分子材料(上)",高分子刊行会,1996年,p.57-79
本発明は、耐衝撃性、低温特性、発色性および成形外観に優れる成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物の材料として好適な、重合体およびグラフト重合体を提供することを目的とする。
また、本発明は、耐衝撃性、低温特性、発色性および成形外観に優れる成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1] アクリル酸エステル(Aa)と、2つ以上のアリル基を有する分岐鎖状の多官能化合物(Ab)とを含む混合物を重合して得られる重合体であって、
前記多官能化合物に含まれる全ての炭素-炭素二重結合がアリル基由来であり、
前記重合体の体積平均粒子径(X)が150~600nmであり、
前記重合体の体積基準の粒子径分布曲線において、粒子径の大きい側からの頻度の累積値が10%となる粒子径を頻度上限10%粒子径(Y)とし、粒子径の小さい側からの頻度の累積値が10%となる粒子径を頻度下限10%粒子径(Z)としたときに、下記式(1)、(2)を満たす、重合体。
(Y)/(X)≦1.8 ・・・(1)
(Z)/(X)≧0.4 ・・・(2)
[2] 前記多官能化合物(Ab)が、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテルおよびトリメチロールプロパンジアリルエーテルからなる群より選ばれる1種以上である、[1]に記載の重合体。
[3] [1]または[2]に記載の重合体に、芳香族ビニル、シアン化ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、N-置換マレイミドおよびマレイン酸からなる群より選ばれる1種以上の単量体をグラフト重合して得られる、グラフト重合体。
[4] [3]に記載のグラフト重合体と、該グラフト重合体以外の熱可塑性樹脂とを含む、熱可塑性樹脂組成物。
本発明の重合体およびグラフト重合体は、耐衝撃性、低温特性、発色性および成形外観に優れる成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物の材料として好適である。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、耐衝撃性、低温特性、発色性および成形外観に優れる成形品が得られる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「成形品」とは、熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものを意味する。
「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」の総称である。
「(メタ)アクリル酸エステル」とは、「アクリル酸エステル」および「メタクリル酸エステル」の総称である。
「重合体」
本発明の重合体(以下、「重合体(A)」ともいう。)は、下記(Aa)成分と、(Ab)成分とを含む混合物(以下、「混合物(α)」ともいう。)を重合して得られるものである。すなわち、重合体(A)は、少なくとも(Aa)成分と(Ab)成分との重合体であり、(Aa)成分単位と(Ab)成分単位とを含む。混合物(α)を重合して得られる重合体(A)は、ゴム質となりやすい。混合物(α)は、成形品が要求される物性に応じて、(Aa)成分および(Ab)成分以外の単量体(以下、「他の単量体」ともいう。)を含んでいてもよい。
(Aa)成分:アクリル酸エステル。
(Ab)成分:2つ以上のアリル基を有する分岐鎖状の多官能化合物であり、該多官能化合物に含まれる全ての炭素-炭素二重結合がアリル基由来である。
なお、重合体(A)においては、(Aa)成分と(Ab)成分とがどのように重合しているか、特定することは必ずしも容易ではない。すなわち、重合体(A)をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的でないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、本発明においては、重合体(A)は「(Aa)成分と、(Ab)成分とを含む混合物を重合して得られるもの」と規定することがより適切とされる。
<(Aa)成分>
(Aa)成分は、アクリル酸エステルである。
(Aa)成分としては、例えばアルキル基の炭素数が1~12であるアクリル酸アルキルエステル;フェニル基、ベンジル基等の芳香族炭化水素基を有するアクリル酸アリールエステルなどが挙げられる。
(Aa)成分としては、より具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸オクチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等が挙げられ、これらの中でも、重合体(A)がゴム質となりやすい点で、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸エチルが好ましい。
これらの(Aa)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(Aa)成分の含有量は、混合物(α)中の(Aa)成分、(Ab)成分および他の単量体の合計(総質量)に対して、80~99.95質量%が好ましく、90.1~99.9質量%がより好ましい。(Aa)成分の含有量が上記範囲内であれば、得られる成形品の耐衝撃性、成形外観がさらに優れる。
<(Ab)成分>
(Ab)成分は、2つ以上のアリル基を有する分岐鎖状の多官能化合物である。該多官能化合物に含まれる全ての炭素-炭素二重結合は、アリル基由来である。
(Ab)成分は、例えば分岐鎖状のポリオールとアリルアルコールとを反応させることで得られる。分岐鎖状のポリオールとしては、例えばペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリメチロールエタンおよびその二量体、トリメチロールプロパンおよびその二量体、トリエチロールプロパンおよびその二量体などが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンが好ましい。
(Ab)成分としては、より具体的には、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、添加量当たりのアリル基が多くなることからペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテルが好ましい。
これらの(Ab)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(Ab)成分の含有量は、混合物(α)中の(Aa)成分、(Ab)成分および他の単量体の合計(総質量)に対して、0.05~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましく、0.12~1.5質量%がさらに好ましい。(Ab)成分の含有量が上記範囲内であれば、得られる成形品の耐衝撃性、低温特性、発色性、成形外観がさらに優れる。
<他の単量体>
混合物(α)が他の単量体を含む場合、重合体(A)は、(Aa)成分単位と(Ab)成分単位と他の単量体単位とを含む。
他の単量体としては、(Aa)成分および(Ab)成分と共重合可能であれば特に制限されないが、例えば芳香族ビニル、シアン化ビニル、メタクリル酸エステル、N-置換マレイミド、マレイン酸が挙げられる。また、重合体(A)の架橋度を調整する目的で、(Ab)成分および芳香族ビニル、メタクリル酸エステル、N-置換マレイミド以外の炭素-炭素二重結合を2つ以上有する化合物を他の単量体として用いてもよい。
芳香族ビニルとしては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-,m-またはp-メチルスチレン、ビニルキシレン、p-t-ブチルスチレン、エチルスチレンなどが挙げられる。
シアン化ビニルとしては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
メタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニルなどが挙げられる。
N-置換マレイミドとしては、例えばN-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミドなどが挙げられる。
炭素-炭素二重結合を2つ以上有する化合物としては、例えばメタクリル酸アリル、エチレングリコールジメタクリル酸エステル、1,3-ブタンジオールジメタクリル酸エステル、1,6-ヘキサンジオールジアクリル酸エステル等のジオールのジ(メタ)アクリル酸エステル、アクリル酸2-プロペニル、ジビニルベンゼン等の炭素-炭素二重結合を2つ有する化合物;芳香族環を有するイソシアヌル酸トリアリル、シアヌル酸トリアリル、トリメット酸トリアリル、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等の炭素-炭素二重結合を3つ以上有する化合物が挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸アリル、アクリル酸2-プロペニル、イソシアヌル酸トリアリル、シアヌル酸トリアリル、ペンタエリスリトールトリメタクリレートが好ましい。
これらの他の単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
混合物(α)が他の単量体として芳香族ビニル、シアン化ビニル、メタクリル酸エステル、N-置換マレイミドおよびマレイン酸からなる群より選ばれる1種以上の単量体を含む場合、その含有量は、混合物(α)中の(Aa)成分、(Ab)成分および他の単量体の合計(総質量)に対して、19.95質量%未満が好ましく、10質量%未満がより好ましい。他の単量体の含有量が上記範囲内であれば、重合体(A)の本来の性能が発現されやすい。
混合物(α)が他の単量体として前記炭素-炭素二重結合を2つ以上有する化合物を含む場合、その含有量は、混合物(α)中の(Aa)成分、(Ab)成分および他の単量体の合計(総質量)に対して、3質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましい。
<重合体(A)の製造方法>
重合体(A)は、例えば塊状重合法、溶液重合法、塊状懸濁重合法、懸濁重合法、乳化重合法、ミニエマルション重合等の公知の方法により製造される。これらの中でも、重合体(A)の粒子径を制御しやすく、また、後述のグラフト重合体も製造しやすいことから、乳化重合、ミニエマルション重合が好ましい。その中でも特に、耐衝撃性が発現されやすく、粒子径分布を制御しやすく、製造安定性にも優れることから、ミニエマルション重合がより好ましい。
ミニエマルション重合では、まず、超音波発振機などを利用して、混合物(α)、乳化剤および水系溶媒などを含む混合液に強い剪断力をかけることによって、100~1000nm程度のモノマー油滴を調製する。この際、乳化剤分子はモノマー油滴表面に優先的に吸着し、水媒体中にはフリーの乳化剤やミセルがほとんど存在しなくなる。したがって、理想的なミニエマルション系の重合では、モノマーラジカルが水相と油相に分配されることはなく、モノマー油滴が粒子の核になって重合が進行する。その結果、形成されたモノマー油滴はそのままポリマー粒子に変換され、粒子径分布の狭いポリマー粒子を得ることが可能となる。
これに対して、一般的な乳化重合で調製したポリマー粒子では、モノマー油滴からミセルへモノマーが移行して反応が進行するため、粒子径分布の制御が難しく、特に150nm以上の粒子では粒径分布の狭いポリマー粒子を得ることが困難となる。
ミニエマルション重合による重合体(A)の製造方法としては特に制限されないが、例えば水系溶媒に(Aa)成分と(Ab)成分と必要に応じて他の単量体とを加えて、さらに乳化剤を添加してこれらを混合する工程(混合工程)、混合工程で得られた混合液に剪断力を付与してプレエマルションを調製する工程(調製工程)、調製工程で得られたプレエマルションを重合開始温度まで加熱して重合させる工程(重合工程)を含む。混合工程では、疎水性化合物やラジカル開始剤をさらに添加することが好ましい。また、混合工程では、連鎖移動剤をさらに添加してもよい。
ミニエマルション重合では、混合液に付与された剪断力によりモノマーが引きちぎられ、乳化剤に覆われたモノマー微小油滴が形成される。その後、重合工程においてラジカル開始剤の重合開始温度まで加熱することにより、モノマー微小油滴がそのまま重合され、高分子微粒子が得られる。
プレエマルションを形成させるための剪断力を混合液に付与する方法は公知の任意の方法を用いることができる。混合液に剪断力を付与する高剪断装置としては特に制限されないが、例えば高圧ポンプおよび相互作用チャンバーからなる乳化装置、超音波エネルギーや高周波によりミニエマルションを形成させる装置などが挙げられる。
高圧ポンプおよび相互作用チャンバーからなる乳化装置としては、例えばSPX Corporation APV社製の「圧力式ホモジナイザー」、三丸機械工業株式会社製の「高圧ホモジナイザー」、株式会社パウレック製の「マイクロフルイダイザー」などが挙げられる。
超音波エネルギーや高周波によりミニエマルションを形成させる装置としては、例えばFisher Scient社製の「ソニックディスメンブレーター」、株式会社日本精機製作所製の「ULTRASONIC HOMOGENIZER」などが挙げられる。
乳化重合やミニエマルション重合に用いる乳化剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
乳化剤としては、より具体的には、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸スルホン酸塩、リン酸塩系(例えば、モノグリセリドリン酸アンモニウム)、脂肪酸塩(例えば、アルケニルコハク酸ジカリウム)、アミノ酸誘導体塩等のアニオン性界面活性剤;通常のポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型等のノニオン性界面活性剤;アニオン部にカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等を有し、カチオン部にアミン塩、第4級アンモニウム塩等を有する両性界面活性剤などが挙げられる。
これらの乳化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
乳化剤の添加量は、混合物(α)100質量部に対して10質量部以下が好ましく、0.01~10質量部がより好ましい。
乳化重合法やミニエマルション重合に用いるラジカル開始剤としては公知のものが使用でき、例えば、アゾ重合開始剤、光重合開始剤、無機過酸化物、有機過酸化物、有機過酸化物と遷移金属と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられる。これらの中でも、加熱により重合を開始できるアゾ重合開始剤、無機過酸化物、有機過酸化物、レドックス系開始剤が好ましい。その中でも特に、粒子径と粒子径分布が制御しやすい点から、アゾ重合開始剤、有機過酸化物がより好ましい。
これらのラジカル開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
アゾ重合開始剤としては、例えば2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]フォルムアミド、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリックアシッド)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ジメチル1,1’-アゾビス(1-シクヘキサンカルボキシレート)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリンー2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)などが挙げられる。
無機過酸化物としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などが挙げられる。
有機過酸化物としては、例えばペルオキシエステル化合物が挙げられ、その具体例としては、α,α’-ビス(ネオデカノイルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシネオデカノエート、t-ヘキシルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ヘキシルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルペルオキシ2-ヘキシルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ2-ヘキシルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシマレイックアシッド、t-ブチルペルオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(m-トルオイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルペルオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシ-m-トルオイルベンゾエート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ビス(t-ブチルペルオキシ)イソフタレート、1,1-ビス(t-ヘキシルペルオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロドデカン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、n-ブチル4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシド)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、ジラウロイルペルオキシドなどが挙げられる。
レドックス系開始剤としては、有機過酸化物と硫酸第一鉄、キレート剤及び還元剤を組み合わせたものが好ましい。例えば、クメンヒドロペルオキシドと、硫酸第一鉄と、ピロリン酸ナトリウムと、デキストロースとからなるものや、後述の実施例で用いたものなどが挙げられる。
ラジカル開始剤の添加量は、混合物(α)100質量部に対して5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、0.001~3質量部がさらに好ましい。
重合体(A)の製造をミニエマルション重合で行う場合には、疎水性化合物を所定の割合で用いることが好ましい。プレエマルションを形成させる際に、疎水性化合物を添加するとミニエマルション重合の製造安定性がより向上する傾向にあり、本発明に好適な重合体(A)を容易に製造することができる。
疎水性化合物としては、例えば炭素数10以上の炭化水素類、炭素数10以上のアルコール、質量平均分子量(Mw)10000未満の疎水性ポリマー、疎水性モノマー、例えば、炭素数10~30のアルコールのビニルエステル、炭素数12~30のアルコールのビニルエーテル、炭素数12~30の(メタ)アクリル酸アルキル、炭素数10~30(好ましくは炭素数10~22)のカルボン酸ビニルエステル、p-アルキルスチレン、疎水性の連鎖移動剤、疎水性の過酸化物などが挙げられる。
これらの疎水性化合物剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
疎水性化合物としては、より具体的には、ヘキサデカン、オクタデカン、イコサン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、オリーブ油、セチルアルコール、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、500~10000の数平均分子量(Mn)を有するポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
疎水性化合物の添加量は混合物(α)100質量部に対して0.1~10質量部が好ましく、1~3質量部がより好ましい。疎水性化合物の添加量が上記範囲内であれば、重合体(A)の粒子径および粒子径分布を制御しやすく、得られる成形品の耐衝撃性、低温特性、成形外観がより優れるものとなる。
重合体(A)の製造時に、必要に応じて連鎖移動剤を添加してもよい。
連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n-またはt-ドデシルメルカプタン、n-ヘキサデシルメルカプタン、n-またはt-テトラデシルメルカプタン等のメルカプタン類;アリルスルフォン酸、メタアリルスルフォン酸、これらのナトリウム塩等のアリル化合物;α-メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。これらの中でも、分子量を調整することが容易な点から、メルカプタン類が好ましい。
これらの連鎖移動剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
連鎖移動剤の添加方法は、一括、分割、連続のいずれでもよい。
連鎖移動剤の添加量は、混合物(α)100質量部に対して2質量部以下が好ましく、0.01~2質量部がより好ましい。
なお、重合体(A)は、重合体(A)以外のゴム質を有する重合体(以下、「他のゴム質重合体」ともいう。)との複合ゴムとして用いることができる。
他のゴム質重合体としては、例えばエチレン・プロピレンゴム(EPR)、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体(EPDM)、エチレン-αオレフィン共重合体、ジエン系ゴム、ポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。
複合ゴムは、例えば他のゴム質重合体の存在下に混合物(α)を重合する方法、重合体(A)と他のゴム質重合体とを共肥大化する方法等、公知の方法により得られる。
<物性>
重合体(A)の体積平均粒子径(X)は、150~600nmであり、200~500nmがより好ましく、230~450nmが特に好ましい。重合体(A)の体積平均粒子径が上記下限値以上であれば、得られる成形品の耐衝撃性および低温特性が向上する。一方、重合体(A)の体積平均粒子径が上記上限値以下であれば、成形品の耐衝撃性、発色性および成形外観が向上する。
重合体(A)の体積平均粒子径(X)は、レーザー回析、散乱方式の粒度分布測定器を用いて体積基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布から算出できる。
重合体(A)の体積平均粒子径(X)を制御する方法としては特に限定されず、公知の方法を使用できる。例えば、重合体(A)の製造において、乳化重合やミニエマルション重合時に使用する乳化剤の添加量を調整する方法、小粒子径の重合体(A)のラテックスを酸や酸基含有共重合体ラテックスで肥大化する方法などが挙げられる。この中でも、粒子径分布を制御しやすことからミニエマルション重合時に使用する乳化剤の添加量を調整する方法が好ましい。
重合体(A)の粒子径分布は以下の通りである。
記重合体の体積基準の粒子径分布曲線において、粒子径の大きい側からの頻度の累積値が10%となる粒子径を頻度上限10%粒子径(Y)とし、粒子径の小さい側からの頻度の累積値が10%となる粒子径を頻度下限10%粒子径(Z)としたときに、下記式(1)、(2)を満たす。
(Y)/(X)≦1.8 ・・・(1)
(Z)/(X)≧0.4 ・・・(2)
(Y)/(X)が1.8以下であれば、得られる成形品の低温特性が向上する。(Y)/(X)は1.6以下が好ましい。
(Z)/(X)が0.4以上であれば、得られる成形品の低温特性が向上する。(Z)/(X)は0.5以上が好ましい。
なお、頻度上限10%粒子径(Y)は「90%累積粒子径(d90)」ともいい、頻度下限10%粒子径(Z)は「10%累積粒子径(d10)」ともいう。
重合体(A)の膨潤度は、重合体(A)のアセトン不溶解分を、アセトン溶媒に浸漬した時の質量の増加倍数で表され、膨潤度が高いほど架橋点間距離が長く、架橋度が低いことを意味し、重合体(A)が柔らかいゴムとなりやすい。重合体(A)の膨潤度は、6~20倍が好ましく、7~12倍がより好ましい。重合体(A)の膨潤度が上記範囲内であれば、得られる成形品の耐衝撃性および低温特性が高くなる傾向にある。
重合体(A)の膨潤度は、具体的には以下のようにして測定できる。すなわち、まず秤量した重合体(A)をアセトンに20時間浸漬し、重合体(A)をアセトンで飽和状態になるまで膨潤させる。その後、14000rpmで遠心分離し、アセトン溶解分とアセトンで膨潤した不溶解分に分離し、アセトンで膨潤した不溶解分の質量を測定する。次いで、アセトンで膨潤した不溶解分を真空乾燥し、乾燥後の不溶解分の質量を測定し、下記式(3)より重合体(A)の膨潤度を求める。
膨潤度(倍)=アセトンで膨潤した不溶解分の質量(g)/乾燥後の不溶解分の質量(g) ・・・(3)
重合体(A)のガラス転移温度は、0℃以下が好ましく、-80~0℃がより好ましい。重合体(A)のガラス転移温度が上記範囲内であれば、得られる成形品の耐衝撃性および低温特性がさらに優れる傾向にある。
重合体(A)のガラス転移温度は、動的粘弾性測定(DMTA)により求められる値であり、具体的には、周波数1Hzで-100℃から5℃/minで昇温させたときに得られる正接損失(tanδ)の極大ピーク時の温度をガラス転移温度とする。
<作用効果>
以上説明した本発明の重合体(A)にあっては、(Aa)成分と、(Ab)成分とを含む混合物(α)を重合して得られる。よって、本発明の重合体(A)は低架橋度でありながら、グラフト率が高いグラフト重合体を得ることができる。かかる理由は定かではないが、以下のように考えられる。
(Ab)成分のアリル基はラジカル付加反応の反応性は低いが、ラジカルによる水素引き抜きが生じやすく、重合の開始点となりやすい。そのため、(Aa)成分と(Ab)成分とを重合すると、(Ab)成分が(Aa)成分の重合体(すなわち、ポリアクリル酸エステル)の分子末端となりやすい。その結果、2つの(Ab)成分間の距離である架橋点間距離が長くなることから、重合体(A)の架橋度が低くなる傾向にある。また、(Ab)成分のアリル基は反応性が低いため、重合体(A)の製造時にアリル基が消費されにくく、ペンダントアリル基が重合体(A)中に残存しやすい。よって、本発明の重合体(A)をグラフト重合体の製造に用いた際に、ペンダントアリル基を重合点としてグラフト重合が進行しやすくなる傾向にある。そのため、本発明の重合体(A)を用いて得られるグラフト重合体はグラフト率が高くなる。
加えて本発明の重合体(A)は、耐衝撃性、低温特性、発色性および成形外観を発現しやすい特定の粒子径、粒子径分布を有する。
よって、本発明の重合体は、耐衝撃性、低温特性、発色性および成形外観に優れる成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物の材料として好適である。
「グラフト重合体」
本発明のグラフト重合体(以下、「グラフト重合体(C)」ともいう。)は、本発明の重合体(A)に、芳香族ビニル、シアン化ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、N-置換マレイミドおよびマレイン酸からなる群より選ばれる1種以上の単量体(以下、「単量体(B)」ともいう。)をグラフト重合して得られるものである。すなわち、グラフト重合体(C)は、重合体(A)部分と、単量体(B)が重合した重合体(B)部分とからなる。
なお、グラフト重合体(C)においては、重合体(A)に単量体(B)がどのように重合しているか、特定することは困難である。例えば、重合体(B)としては、重合体(A)に結合したものと、重合体(A)に結合していないものとが存在する。また、重合体(A)に結合した重合体(B)の分子量、構成単位の割合等を特定することも困難である。すなわち、グラフト重合体(C)をその構造または特性により直接特定することが不可能であるか、またはおよそ実際的でないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、本発明においては、グラフト重合体(C)は「重合体(A)に、単量体(B)をグラフト重合して得られるもの」と規定することがより適切とされる。
<重合体(A)>
重合体(A)は、上述した本発明の重合体(A)であるため、その説明を省略する。
重合体(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
<単量体(B)>
単量体(B)は、芳香族ビニル、シアン化ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、N-置換マレイミドおよびマレイン酸からなる群より選ばれる1種以上の単量体である。
単量体(B)は、後述の他の熱可塑性樹脂(D)との相溶性や、成形品の目的に応じで選択することができる。例えば、単量体(B)として、芳香族ビニルを用いれば成形性が良好となる傾向がある。シアン化ビニルを用いれば、成形品の耐薬品性や耐衝撃性、極性を有する他の熱可塑性樹脂(D)との相溶性を向上させることができる。メタクリル酸エステルを用いれば、得られる成形品の表面硬度や表面外観を向上させることができる。N-置換マレイミドを用いれば、耐熱性を向上させることができる。
芳香族ビニル、シアン化ビニル、N-置換マレイミドとしては、重合体(A)の説明において先に例示した他の単量体のうちの、芳香族ビニル、シアン化ビニル、N-置換マレイミドが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、重合体(A)の説明において先に例示した(Aa)成分や、他の単量体のうちのメタクリル酸エステルが挙げられる。
これらの単量体(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
<グラフト重合体(C)の製造方法>
グラフト重合体(C)は、重合体(A)に、単量体(B)をグラフト重合して得られる。
グラフト重合体(C)は、重合体(A)40~90質量%に、単量体(B)10~60質量%(ただし、重合体(A)と単量体(B)の合計は100質量%である。)をグラフト重合して得られるものであることが好ましい。重合体(A)の割合は45~70質量%がより好ましく、単量体(B)の割合は30~55質量%がより好ましい。重合体(A)と単量体(B)の割合が上記範囲内であれば、グラフト重合体(C)や該グラフト重合体(C)を配合して得られる熱可塑性樹脂組成物の生産性が良好となるとともに、得られる成形品の耐衝撃性、低温特性、成形外観がさらに向上する傾向にある。
単量体(B)を重合体(A)に対してグラフト重合する方法には特に制限はないが、重合体(A)の製造方法が乳化重合やミニエマルション重合が好ましいことから、乳化グラフト重合で行うことが好ましい。
乳化グラフト重合の方法としては、重合体(A)のエマルションの存在下に、単量体(B)を一括で、または連続的、または断続的に添加してラジカル重合する方法が挙げられる。また、グラフト重合の際には、グラフト重合体(C)の分子量調節やグラフト率を制御する目的で連鎖移動剤を使用したり、ラテックスの粘度やpHを調節する目的で公知の無機電解質等を使用したりしてもよい。また、乳化グラフト重合においては、各種の乳化剤やラジカル開始剤を必要に応じて使用することができる。
連鎖移動剤、乳化剤、ラジカル開始剤の種類や添加量については特に制限されない。また、連鎖移動剤、乳化剤、ラジカル開始剤としては、重合体(A)の説明において先に例示した連鎖移動剤、乳化剤、ラジカル開始剤が挙げられる。
乳化グラフト重合によって得られるグラフト重合体(C)は、水性媒体中に分散した状態である。
グラフト重合体(C)を含む水性分散体からグラフト重合体(C)を回収する方法としては、例えば、水性分散体に析出剤を添加し、加熱、撹拌した後、析出剤を分離し、析出したグラフト重合体(C)を水洗、脱水、乾燥する析出法が挙げられる。
析出剤としては、例えば、硫酸、酢酸、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の水溶液が挙げられる。
これらの析出剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
<物性>
グラフト重合体(C)のグラフト率は、30~150%が好ましく、40~100%がより好ましく、50~85%が特に好ましい。グラフト重合体(C)のグラフト率が上記範囲内であれば、得られる成形品の成形外観および後述の熱可塑性樹脂組成物の生産性がさらに良好となる。
グラフト重合体(C)のグラフト率は、具体的には以下のようにして測定できる。すなわち、グラフト重合体(C)をアセトンに添加し、65~70℃にて3時間加熱還流し、得られた懸濁アセトン溶液を14000rpmで遠心分離し、アセトン溶解分とアセトン不溶解分に分離した。次いで、アセトン不溶解分を真空乾燥し、乾燥後のアセトン不溶解分の質量を測定し、下記式(4)よりグラフト重合体(C)のグラフト率を求める。なお、式(4)におけるPは、乾燥後のアセトン不溶解分の質量(g)であり、Qは、グラフト重合体(C)の製造に用いた重合体(A)の質量(g)である。
グラフト率(%)={(P-Q)/Q}×100 ・・・(4)
<作用効果>
以上説明した本発明のグラフト重合体(C)にあっては、上述した本発明の重合体(A)に、単量体(B)をグラフト重合して得られるものであり、重合体(A)の部分は特定の粒子径、粒子径分布を有し、低架橋度でありながら、グラフト率が高い。よって、本発明のグラフト重合体(C)は、耐衝撃性、低温特性、発色性および成形外観に優れる成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物の材料として好適である。
「熱可塑性樹脂組成物」
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明のグラフト重合体(C)と、グラフト重合体(C)以外の熱可塑性樹脂(以下、「他の熱可塑性樹脂(D)」ともいう。)とを含む。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて、各種添加剤等の任意成分を含んでいてもよい。
<グラフト重合体(C)>
熱可塑性樹脂組成物に含まれるグラフト重合体(C)は、上述した本発明のグラフト重合体(C)であるため、その説明を省略する。
グラフト重合体(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<他の熱可塑性樹脂(D)>
他の熱可塑性樹脂(D)としては特に制限はなく、例えばアクリル系樹脂(PMMA)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、メチルメタクリレート-スチレン共重合樹脂(MS樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン)などが挙げられる。
これらの他の熱可塑性樹脂(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
<任意成分>
各種添加剤としては、例えば滑材、顔料、染料、充填剤(カーボンブラック、シリカ、酸化チタン等)、耐熱剤、酸化劣化防止剤、耐候剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤などが挙げられる。
<各成分の含有量>
グラフト重合体(C)の含有量は、グラフト重合体(C)と他の熱可塑性樹脂(D)との合計質量に対して、5~70質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましい。グラフト重合体(C)の含有量が前記下限値以上であれば、得られる成形品の耐衝撃性がさらに優れる。一方、グラフト重合体(C)の含有量が前記上限値以下であれば、他の熱可塑性樹脂(D)が本来持っている機能が充分に発揮されやすくなる。例えば、他の熱可塑性樹脂(D)としてアクリル系樹脂を用いた場合には、成形品の硬度が高くなる傾向にある。他の熱可塑性樹脂(D)としてポリカーボネート樹脂を用いた場合には、成形品の耐熱性が高くなる傾向にある。
他の熱可塑性樹脂(D)の含有量は、グラフト重合体(C)と他の熱可塑性樹脂(D)との合計質量に対して、30~95質量%が好ましく、50~90質量%がより好ましい。他の熱可塑性樹脂(D)の含有量が前記下限値以上であれば、他の熱可塑性樹脂(D)が本来持っている機能が充分に発揮されやすくなる。一方、他の熱可塑性樹脂(D)の含有量が前記上限値以下であれば、得られる成形品の耐衝撃性がさらに優れる。
グラフト重合体(C)と他の熱可塑性樹脂(D)との含有量の合計は、熱可塑性樹脂組成物の総質量に対して、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましい。
<熱可塑性樹脂組成物の製造方法>
熱可塑性樹脂組成物は、グラフト重合体(C)と他の熱可塑性樹脂(D)と必要に応じて任意成分とを用いて、公知の装置を使用した公知の方法で製造できる。例えば、一般的な方法として溶融混合法が挙げられ、この方法で使用する装置としては、押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダーなどが挙げられる。混合には回分式、連続式のいずれを採用してもよい。また、各成分の混合順序などにも特に制限はなく、全ての成分が均一に混合されればよい。
なお、任意成分は、熱可塑性樹脂組成物を成形する際に添加してもよい。
<作用効果>
以上説明した本発明の熱可塑性樹脂組成物にあっては、上述した本発明のグラフト重合体(C)と他の熱可塑性樹脂(D)とを含むので、耐衝撃性、低温特性、発色性および成形外観に優れる成形品を得ることができる。
「成形品」
成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を公知の成形方法によって成形して得られる。
成形方法としては、例えば射出成形法、射出圧縮成形機法、押出法、ブロー成形法、真空成形法、圧空成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法などが挙げられる。これらの中でも、量産性に優れ、高い寸法精度の成形品を得ることができるため、射出成形法、射出圧縮成形法が好ましい。
本発明により得られる成形品は、耐衝撃性、低温特性、発色性および成形外観に優れる。
以下、具体的に実施例を示す。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
以下に記載の「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
以下の実施例における各種測定および評価方法は、以下の通りである。
「測定・評価」
<体積平均粒子径の測定方法>
重合体(A)について、マイクロトラック(日機装株式会社製、「ナノトラック150」)を用い、測定溶媒として純水を用いて体積基準の粒子径分布を測定し、体積平均粒子径(X)を測定した。
また、上記体積基準の粒子径分布において、粒子径の大きい側からの頻度の累積値が10%となる粒子径を頻度上限10%粒子径(Y)、粒子径の小さい側からの頻度の累積値が10%となる粒子径を頻度下限10%粒子径(Z)として求め、(Y)/(X)および(Z)/(X)を算出した。
<膨潤度の測定方法>
重合体(A)のラテックスをメタノールと硫酸で凝固し、メタノールで洗浄後、真空乾燥した。乾燥後の重合体(A)を秤量し、アセトンに20時間浸漬し、重合体(A)をアセトンで飽和状態になるまで膨潤させた。その後、14000rpmで遠心分離し、アセトン溶解分とアセトンで膨潤した不溶解分に分離し、アセトンで膨潤した不溶解分の質量を測定した。次いで、アセトンで膨潤した不溶解分を真空乾燥し、乾燥後の不溶解分の質量を測定し、下記式(3)より重合体(A)の膨潤度を求めた。膨潤度が高いほど架橋度が低いことを意味する。
膨潤度(倍)=アセトンで膨潤した不溶解分の質量(g)/乾燥後の不溶解分の質量(g) ・・・(3)
<グラフト率の測定方法>
グラフト重合体(C)をメタノールで洗浄した後、アセトンに添加し、65℃にて3時間加熱還流した。得られた懸濁アセトン溶液を14000rpmで遠心分離し、アセトン溶解分とアセトン不溶解分に分離した。次いで、アセトン不溶解分を真空乾燥し、乾燥後のアセトン不溶解分の質量を測定し、下記式(4)よりグラフト重合体(C)のグラフト率を求めた。なお、式(4)におけるPは、乾燥後のアセトン不溶解分の質量(g)であり、Qは、グラフト重合体(C)の製造に用いた重合体(A)の質量(g)である。
グラフト率(%)={(P-Q)/Q}×100 ・・・(4)
<耐衝撃性の評価>
熱可塑性樹脂組成物のペレットを230℃で成形し、縦80mm、横10mm、厚さ4mmの成形品(i)を得た。
得られた成形品(i)について、ISO 179-1:2000に準拠し、23℃の条件でシャルピー衝撃試験(短冊試験片(タイプB1)、4mm厚さのVノッチ付(ノッチ形状A)、エッジワイズ衝撃)を行い、成形品のシャルピー衝撃強度を測定した。
<低温特性(低温耐衝撃性)の評価>
耐衝撃性の評価で使用した成形品(i)について、測定条件を-20℃に変更した以外は、耐衝撃性の評価と同様にしてシャルピー衝撃強度を測定した。
<発色性の評価(1)>
熱可塑性樹脂組成物のペレットを230℃、射出速度20g/秒で射出成形し、縦100mm、横100mm、厚さ2mmの成形品(ii)を得た。
得られた成形品(ii)について、分光測色計(コニカミノルタオプティプス社製「CM-3500d」)を用いて成形品(ii)のLをSCE方式にて測定した。こうして測定されたLを「L(ii)」とする。Lが低いほど発色性に優れることを意味する。
<発色性の評価(2)>
熱可塑性樹脂組成物のペレットを230℃、射出速度120g/秒で射出成形し、縦100mm、横100mm、厚さ2mmの成形品(iii)を得た。
得られた成形品(iii)について、分光測色計(コニカミノルタオプティプス社製「CM-3500d」)を用いて成形品(iii)のLをSCE方式にて測定した。こうして測定されたLを「L(iii)」とする。
<成形条件依存性の評価>
成形品(ii)と成形品(iii)のLの差(ΔL=L(iii)-L(ii))を求めた。ΔLが小さいほど成形品形状などにより生じる色むらが生じにくく、成形条件依存性が小さいことを意味する。
<成形外観の評価>
発色性の評価(1)および成形条件依存性の評価結果から、以下の評価基準に基づき、成形外観を評価した。L(ii)が低く、成形条件依存性が小さいほど成形外観に優れることを意味する。
◎:L(ii)≦7、かつΔL≦1
○:7<L(ii)≦8以下、かつΔL≦1
△:L(ii)≦9、かつ1<ΔL≦2
×:9<L(ii)および/または2<ΔL
「実施例1」
<重合体(A)の製造>
(Aa)成分としてアクリル酸n-ブチル99.4%、および(Ab)成分としてペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.6%からなる混合物(α)100部と、疎水性化合物として流動パラフィン2.0部と、乳化剤としてアルケニルコハク酸ジカリウム0.2部と、ラジカル開始剤としてジラウロイルペルオキシド0.6部と、脱イオン水400部と容器に入れ、SMT社製の「ハイフレックスディスパーサー HG92」を用いて9000rpmで5分間撹拌し、混合液を得た(混合工程)。得られた混合液を三丸機械工業株式会社製の「高圧ホモジナイザー H3-1D」を用いて、圧力20MPa、流量135L/hで2回処理することでプレエマルションを得た(調製工程)。
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応容器に、得られたプレエマルションを仕込み、反応容器内を窒素で1時間置換した後、60℃に昇温しラジカル重合を開始させた。ラジカル重合による発熱を確認後、75℃で30分間維持し重合を完結させ(重合工程)、ゴム質の重合体(A1)のラテックスを得た。
得られた重合体(A1)の体積平均粒子径(X)は320nmであり、頻度上限10%粒子径(Y)は483nmであり、頻度下限10%粒子径(Z)は176nmであり、膨潤度は11倍であった。
<グラフト重合体(C)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応容器に、脱イオン水230部と、重合体(A1)のラテックスを固形分換算で50部と、アルケニルコハク酸ジカリウム0.5部と、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部とを仕込み、反応容器内を窒素で1時間置換した後、撹拌しながら70℃まで昇温した。なお、脱イオン水の仕込み量には、重合体(A1)のラテックス中の脱イオン水の質量も含まれる。
次いで、反応容器にアクリロニトリル15部、スチレン35部およびt-ブチルヒドロペルオキシド0.5部からなる混合液を100分にわたって滴下しながら、80℃まで昇温した。滴下終了後、80℃の状態で保持した後、冷却して、グラフト重合体(C1)のラテックスを得た。次いで、グラフト重合体(C1)のラテックスを1.5%硫酸水溶液で凝固し、脱水、洗浄、乾燥することで粉末状のグラフト重合体(C1)を得た。
得られたグラフト重合体(C1)のグラフト率は51%であった。
<熱可塑性樹脂組成物の製造>
グラフト重合体(C)40部と、他の熱可塑性樹脂(D)としてアクリロニトリル-スチレン共重合体(ユーエムジー・エービーエス株式会社製、「AXSレジン 202N」)60部と、エチレンビスステアリルアミド1部と、カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製、「#960」)0.8部とを二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、「TEX-28V」)を用いて、220℃で溶融混練し、ペレット状の熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物を射出成形した成形品について、耐衝撃性、低温特性、発色性、成形条件依存性および成形外観を評価した。結果を表1に示す。
「実施例2~9、比較例1、2、5~8」
(Ab)成分として表1、2に示す種類の化合物を用い、(Aa)成分、(Ab)成分およびアルケニルコハク酸ジカリウムの仕込み量を表1、2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして重合体(A2)~(A11)、(A14)~(A17)を得た。重合体(A2)~(A11)、(A14)~(A17)について、体積平均粒子径(X)、頻度上限10%粒子径(Y)、頻度下限10%粒子径(Z)および膨潤度を測定した。結果を表1、2に示す。
得られた重合体(A2)~(A11)、(A14)~(A17)を用いた以外は、実施例1と同様にしてグラフト重合体(C2)~(C11)、(C14)~(C17)を得た。グラフト重合体(C2)~(C11)、(C14)~(C17)について、グラフト率を測定した。結果を表1、2に示す。
得られたグラフト重合体(C2)~(C11)、(C14)~(C17)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物を射出成形した成形品について、耐衝撃性、低温特性、発色性、成形条件依存性および成形外観を評価した。結果を表1、2に示す。
「比較例3」
<重合体(A)の製造>
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および撹拌装置を備えた反応容器に、脱イオン水300部と、アルケニルコハク酸ジカリウム1.0部と、t-ブチルヒドロペルオキシド0.2部と、(Aa)成分としてアクリル酸n-ブチル99.4部と、(Ab)成分としてペンタエリスリトールトリアリルエーテル0.6部とを加え、反応容器内を窒素で1時間置換した後、55℃に昇温した。
次いで、反応容器にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部と、硫酸第一鉄七水塩0.0001部と、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.0003部と、脱イオン水10部とを添加し、重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃にし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間保持した。得られた重合体の体積平均粒子径は98nmであった。
次いで、得られた重合体のラテックスに、アクリル酸n-ブチル84%、メタクリル酸16%の共重合体のラテックスを肥大化剤として4%(固形分換算)で加え、70℃で30分間撹拌を行うことで、ゴム質の重合体(A12)のラテックスを得た。
得られた重合体(A12)の体積平均粒子径(X)は330nmであり、頻度上限10%粒子径(Y)は661nmであり、頻度下限10%粒子径(Z)は92nmであり、膨潤度は11倍であった。
<グラフト重合体(C)および熱可塑性樹脂組成物の製造>
得られた重合体(A12)を用いた以外は、実施例1と同様にしてグラフト重合体(C12)を得た。グラフト重合体(C12)について、グラフト率を測定した。結果を表2に示す。
得られたグラフト重合体(C12)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物を射出成形した成形品について、耐衝撃性、低温特性、発色性、成形条件依存性および成形外観を評価した。結果を表2に示す。
「比較例4」
<重合体(A)の製造>
疎水性化合物として流動パラフィンを用いない以外は、実施例1と同様にして重合体(A13)を得た。
得られた重合体(A13)の体積平均粒子径(X)は280nmであり、頻度上限10%粒子径(Y)は476nmであり、頻度下限10%粒子径(Z)は98nmであり、膨潤度は11倍であった。
<グラフト重合体(C)および熱可塑性樹脂組成物の製造>
得られた重合体(A13)を用いた以外は、実施例1と同様にしてグラフト重合体(C13)を得た。グラフト重合体(C13)について、グラフト率を測定した。結果を表2に示す。
得られたグラフト重合体(C13)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物を射出成形した成形品について、耐衝撃性、低温特性、発色性、成形条件依存性および成形外観を評価した。結果を表2に示す。
Figure 0007079116000001
Figure 0007079116000002
表1、2中の略号は以下の通りである。
・Ab-1:ペンタエリスリトールトリアリルエーテル
・Ab-2:トリメチロールプロパンジアリルエーテル
・Ab-3:メタクリル酸アリル
・Ab-4:トリアリルイソシアヌレート
・Ab-5:ペンタエリスリトールトリメタクリレート
表1から明らかなように、各実施例で得られた重合体(A)は、適度な架橋度を有していた。また、各実施例の重合体(A)を用いて得られたグラフト重合体(C)は、グラフト率が高かった。さらに、各実施例で得られた成形品は、耐衝撃性および低温衝撃性に優れていた。しかも、各実施例で得られた成形品は、発色性も良好であり、色むら等の成形不良が抑制されていることから成形外観にも優れていた。
一方、表2から明らかなように、体積平均粒子径(X)が150nm未満である重合体(A10)を用いた比較例1の場合、成形品の耐衝撃性および低温特性に劣っていた。
体積平均粒子径(X)が600nmを超える重合体(A11)を用いた比較例2の場合、成形品の耐衝撃性、発色性および成形外観に劣っていた。
(Y)/(X)が1.8を超え、(Z)/(X)が0.4未満である重合体(A12)を用いた比較例3の場合、成形品の低温特性に劣っていた。
(Z)/(X)が0.4未満である重合体(A13)を用いた比較例4の場合、成形品の低温特性に劣っていた。
(Ab)成分として、アリル基を1つ有する多官能化合物を用いた比較例5、6の場合、重合体(A)の架橋度が低い場合はグラフト重合体(C)のグラフト率が低く、グラフト率の高いグラフト重合体(C)を得ようとすると、重合体(A)の架橋度も高くなる傾向にあった。比較例5、6で得られた成形品は、耐衝撃性と低温衝撃性、または発色性と成形外観のいずれかが劣っていた。
(Ab)成分として、3つのアリル基を有するものの分岐鎖状ではなく環状構造である多官能化合物を用いた比較例7の場合、重合体(A)の架橋度が高く、成形品の耐衝撃性および低温特性に劣っていた。
アリル基を有さない多官能化合物を用いた比較例8の場合、重合体(A)からはグラフト率の高いグラフト重合体(C)は得られなかった。また、重合体(A)の架橋度が高くなりすぎ、成形品の耐衝撃性、低温特性、発色性および成形外観に劣っていた。
本発明の重合体は低架橋度でありながら、グラフト率が高いグラフト重合体を得ることができる。よって、本発明の重合体から得られるグラフト重合体は、耐衝撃性、低温特性、発色性、成形外観に優れる成形品が得られる熱可塑性樹脂組成物の材料として好適である。本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、耐衝撃性、低温特性、発色性、成形外観に優れる成形品が得られる。

Claims (4)

  1. (Aa)成分:アクリル酸エステル(Aa)と、
    (Ab)成分:2つ以上のアリル基を有する分岐鎖状の多官能化合物(Ab)とを含む混合物を重合して得られる重合体であって、
    前記混合物は、前記(Aa)成分および前記(Ab)成分以外の他の単量体を含んでいてもよく、
    前記他の単量体が、芳香族ビニル、シアン化ビニル、メタクリル酸エステル、N-置換マレイミド、マレイン酸、および炭素-炭素二重結合を2つ以上有する化合物(ただし、前記(Ab)成分、前記芳香族ビニル、前記メタクリル酸エステルおよび前記N-置換マレイミドを除く。)からなる群より選ばれる1種以上であり、
    前記(Aa)成分の含有量が、前記(Aa)成分、前記(Ab)成分および前記他の単量体の合計(総質量)に対して、80~99.95質量%であり、
    前記(Ab)成分の含有量が、前記(Aa)成分、前記(Ab)成分および前記他の単量体の合計(総質量)に対して、0.05~5質量%であり、
    前記他の単量体が、前記芳香族ビニル、前記シアン化ビニル、前記メタクリル酸エステル、前記N-置換マレイミドおよび前記マレイン酸からなる群より選ばれる1種以上の単量体である場合、前記他の単量体の含有量が、前記(Aa)成分、前記(Ab)成分および前記他の単量体の合計(総質量)に対して、19.95質量%未満であり、
    前記他の単量体が、前記炭素-炭素二重結合を2つ以上有する化合物である場合、前記他の単量体の含有量が、前記(Aa)成分、前記(Ab)成分および前記他の単量体の合計(総質量)に対して、3質量%未満であり、
    かつ、前記多官能化合物に含まれる全ての炭素-炭素二重結合がアリル基由来であり、
    前記重合体の体積平均粒子径(X)が150~600nmであり、
    前記重合体の体積基準の粒子径分布曲線において、粒子径の大きい側からの頻度の累積値が10%となる粒子径を頻度上限10%粒子径(Y)とし、粒子径の小さい側からの頻度の累積値が10%となる粒子径を頻度下限10%粒子径(Z)としたときに、下記式(1)、(2)を満たす、重合体。
    (Y)/(X)≦1.8 ・・・(1)
    (Z)/(X)≧0.4 ・・・(2)
  2. 前記(Ab)成分が、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテルおよびトリメチロールプロパンジアリルエーテルからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の重合体。
  3. 請求項1または2に記載の重合体40~90質量%に、芳香族ビニル、シアン化ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、N-置換マレイミドおよびマレイン酸からなる群より選ばれる1種以上の単量体(B)10~60質量%(ただし、前記重合体と前記単量体(B)の合計が100質量%である。)をグラフト重合して得られる、グラフト重合体。
  4. 請求項3に記載のグラフト重合体と、該グラフト重合体以外の熱可塑性樹脂とを含む、熱可塑性樹脂組成物。
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