JP2024068383A - ブロック共重合体、熱可塑性樹脂組成物、及び成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体からなる、相溶化剤として有用なブロック共重合体を提供する。【解決手段】芳香族ビニル単量体が重合したブロック部分(a-1)と、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体が、芳香族ビニル単量体:シアン化ビニル単量体=4:1~2:1の質量比で共重合したブロック部分(a-2)とからなるブロック共重合体(A)であり、数平均分子量Mnが30万以下、かつ、分子量分布Mw/Mnが1.0~2.5である、ブロック共重合体。【選択図】なし

Description

本発明は、ブロック共重合体、熱可塑性樹脂組成物、及び成形品に関する。
芳香族系の熱可塑性樹脂は、製品の筐体や容器などに広く使用される材料である。さらに熱可塑性樹脂はリサイクル性が高く環境負荷が低い材料でもある。リサイクルする際は、それぞれの樹脂を分別して使用しなくてはならず、違う種類の樹脂が混入していると機械的物性などが劣ることがある。しかしながら、同じ芳香族系の熱可塑性樹脂であるポリスチレンとABS樹脂を破砕された混合物から完全に分別することは難しく、これらが混合していると機械的物性が低下することがある。
芳香族系の熱可塑性樹脂をリサイクルする場合、混入する樹脂を相溶化させることで、機械物性の低下を抑えることができる。また、リサイクルされる芳香族系の熱可塑性樹脂はリサイクル前の使用状況や成型時の熱履歴等により物性、特に機械強度が低下することがある。この場合、芳香族系の熱可塑性樹脂に機械強度の優れるABS樹脂をブレンドした時の相溶性が重要となる。
従来、芳香族系の熱可塑性樹脂であるポリスチレンのリサイクル材を使用する場合、機械強度の優れるABS樹脂などのゴム強化樹脂をブレンドすることが検討されてきた。しかしながら、芳香族系の熱可塑性樹脂の多くは、ABS樹脂などのゴム強化樹脂との相溶性が低く、単純にブレンドしただけでは、芳香族系の熱可塑性樹脂とゴム強化樹脂が分離して偏在し、ブレンド樹脂中のゴム強化樹脂の粒子の大きさも不均一で、界面相の形状もいびつで安定していない。結果として、このリサイクル材のポリスチレンは、機械強度を保持することができない。
そのため、芳香族系の熱可塑性樹脂とゴム強化樹脂の相溶性を高める相溶化材の需要は多く、各種の検討がなされている(例えば、特許文献1)。ただし、リサイクル性を考えた場合、反応型の相溶化剤よりも非反応型の相溶化剤を主に用いることが好まれる。
特開平8-59763号公報
本発明者らが鋭意検討したところ、相溶化剤として共重合体を用いる場合、ブレンドする樹脂同士の界面構造の安定性を高めるためにはランダム共重合体よりグラフト共重合体が好ましく、さらにはブロック共重合体がより好ましいことが分かった。
本発明は、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体からなる、相溶化剤として有用なブロック共重合体を提供すること、および、このブロック共重合体と芳香族系の重合体とゴム強化樹脂を含み、種々の物性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明は以下の態様を有する。
[1] 芳香族ビニル単量体が重合したブロック部分(a-1)と、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体が、芳香族ビニル単量体:シアン化ビニル単量体=4:1~2:1の質量比で共重合したブロック部分(a-2)とからなるブロック共重合体(A)であり、数平均分子量Mnが30万以下、かつ、分子量分布Mw/Mnが1.0~2.5である、ブロック共重合体。
[2] [1]に記載のブロック共重合体(A)と、芳香族構造を有する単量体由来の繰り返し単位を含む重合体(B)と、ゴム強化グラフト共重合体(C)と、を含む熱可塑性樹脂組成物(D)であり、前記ゴム強化グラフト共重合体(C)は、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体が、芳香族ビニル単量体:シアン化ビニル単量体=4:1~2:1の質量比で共重合したグラフト構造が備えられたゴム質重合体であり、前記ゴム強化グラフト共重合体(C)の重量平均分子量Mwが5~25万である、熱可塑性樹脂組成物。
[3] 前記熱可塑性樹脂組成物(D)の総質量に対する、前記ブロック共重合体(A)の含有量が5~55質量%である、[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4] 前記重合体(B)が芳香族ビニル単量体の重合体であり、前記ブロック共重合体(A)の含有量5~30質量部に対して、前記重合体(B)の含有量が20~75質量部であり、前記ゴム強化グラフト共重合体(C)の含有量が20~70質量部であり、前記ブロック共重合体(A)、前記重合体(B)及び前記ゴム強化グラフト共重合体(C)の合計の含有量が100質量部である、[2]又は[3]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5] 前記重合体(B)がフェノール単量体又はその誘導体の重合体であり、前記ブロック共重合体(A)の含有量15~45質量部に対して、前記重合体(B)の含有量が25~55質量部であり、前記ゴム強化グラフト共重合体(C)の含有量が20~35質量部であり、前記ブロック共重合体(A)、前記重合体(B)及び前記ゴム強化グラフト共重合体(C)の合計の含有量が100質量部である、[2]又は[3]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[6] [2]~[5]の何れか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
本発明によれば、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体からなる、相溶化剤として有用なブロック共重合体を提供すること、および、このブロック共重合体と芳香族系の重合体とゴム強化樹脂を含み、種々の物性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
実施例2および比較例2で作製した成形品の断面の電子顕微鏡像である。 実施例9および比較例7で作製した成形品の断面の電子顕微鏡像である。
本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量はそれぞれ、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」とも記す。)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
分子量分散度は、重量平均分子量を数平均分子量で除した値である。
本明細書では、重量平均分子量を「Mw」とも記し、数平均分子量を「Mn」とも記し、分子量分布(分子量分散度)を「Mw/Mn」とも記す。
体積基準累積50%粒子径(以下、単に「50%粒子径」とも記す。)は、動的光散乱法により測定される体積基準の粒子径分布において累積値が50%となる粒子径である。
体積基準累積90%粒子径(以下、単に「90%粒子径」とも記す。)は、動的光散乱法により測定される体積基準の粒子径分布において累積値が90%となる粒子径である。
≪ブロック共重合体(A)≫
本発明の第一態様は、芳香族ビニル単量体が重合したブロック部分(a-1)と、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体が、芳香族ビニル単量体:シアン化ビニル単量体=4:1~2:1の質量比で共重合したブロック部分(a-2)とからなるブロック共重合体(A)である。
ブロック共重合体(A)の数平均分子量Mnは、好ましくは30万以下、より好ましくは5~25万、さらに好ましくは10~20万であり、かつ、その分子量分布Mw/Mnは、好ましくは1.0~2.5、より好ましくは1.1~2.4、さらに好ましくは1.2~2.3である。
Mn及びMw/Mnが上記範囲であることにより、ブロック共重合体(A)の相溶化剤としての機能がより一層高まる。
上記Mn及びMw/Mnの範囲において、ブロック共重合体(A)の重量平均分子量Mwは、好ましくは55万以下、より好ましくは10~50万、さらに好ましくは12~45万である。
Mwが上記範囲であることにより、ブロック共重合体(A)の相溶化剤としての機能がより一層高まる。
芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体の具体例として、後述のブロック共重合体(A)の製造方法における材料が挙げられる。
ブロック共重合体(A)のブロック部分(a-1)は、化学構造が類似する後述の重合体(B)との相溶性が高く、ブロック部分(a-2)は、化学構造が類似する後述のゴム強化グラフト共重合体(C)との相溶性が高い。このため、ブロック共重合体(A)の存在下で、重合体(B)とゴム強化グラフト共重合体(C)を混合すると、これらの相溶性が高まり、アロイ化した熱可塑性樹脂組成物(D)が得られる。
ブロック部分(a-1)における芳香族ビニル単量体に由来する繰り返し単位の含有量は、ブロック部分(a-1)を構成する全モノマー単位100質量%に対して、80~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましく、95~100質量%がさらに好ましい。芳香族ビニル単位の含有量が上記範囲内であれば、ブロック共重合体(A)の相溶化剤としての機能がより一層高まる。
ブロック部分(a-1)またはブロック部分(a-2)の繰り返し単位に、その他の単量体単位が含まれていても構わない。その他の単量体は、芳香族ビニル単量体またはシアン化ビニル単量体と共重合可能な化合物であればよく、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、N置換マレイミド、(メタ)アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。その他の単量体は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ブロック部分(a-2)における芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体に由来する繰り返し単位の含有量は、ブロック部分(a-2)を構成する全モノマー単位100質量%に対して、80~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましく、95~100質量%がさらに好ましい。芳香族ビニル単位の含有量が上記範囲内であれば、ブロック共重合体(A)の相溶化剤としての機能がより一層高まる。
ブロック部分(a-2)は、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体が、芳香族ビニル単量体:シアン化ビニル単量体=4:1~2:1の質量比で共重合体したものであることが好ましい。これにより、ブロック共重合体(A)の相溶化剤としての機能がより一層高まる。
<ブロック共重合体(A)の製造方法>
本態様のブロック共重合体(A)の製造方法は特に制限されないが、次に説明する製造方法であると、Mw、Mn及びMw/Mnを所望の範囲にすることが容易なので好ましい。
[ミニエマルション化工程]
まず、ラジカル重合性の芳香族ビニル単量体(m1)の重合体(a-1)を含む粒子の水分散体を製造する。
芳香族ビニル単量体(m1)と、RAFT剤と、疎水性物質と、水と、乳化剤とを含む混合液をミニエマルション化し、50%粒子径が50~300nmのミニエマルションを得る。ミニエマルション中にて芳香族ビニル単量体(m1)を重合することにより、重合体(a-1)の粒子の水分散液を得る。
前記混合液は必要に応じて開始剤をさらに含んでいてもよい。
『芳香族ビニル単量体(m1)』
芳香族ビニル単量体(m1)としては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-,m-又はp-メチルスチレン、ビニルキシレン、p-t-ブチルスチレン、エチルスチレン等が挙げられる。他に、アリール基(フェニル基等)、アラルキル基(ベンジル基等)等の芳香族炭化水素基を有するラジカル重合性モノマーが挙げられる。
芳香族ビニル単量体(m1)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
『RAFT剤』
RAFT剤(可逆的付加開裂連鎖移動剤)は、RAFT重合を生じる化合物であり、一般的には、下記式1で示される構造を有する化合物(ジチオベンゾエート、トリチオカーボネート、ジチオカルバメート、キサンタート等のチオカルボニルチオ化合物)が用いられる。
Figure 2024068383000001
ZはC=S結合の反応性を制御し、ラジカルの付加・開裂速度に影響する官能基であり、Rは重合反応を再開し、成長ラジカルに対して良好なホモリシス型脱離基である。
RAFT剤の具体例として、例えば、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸、S,S-ジベンジルトリチオ炭酸、4-シアノ-4-(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニルペンタン酸、2-{[(2-カルボキシエチル)スルファニルチオカルボニル]スルファニル}プロパン酸、2’-シアノブタン-2’-イル4-クロロ-3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボジチオエート、4-[(2-カルボキシエチルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]-4-シアノペンタン酸、3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボジチオ酸2’-シアノブタン-2’-イル、3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボジチオ酸シアノメチル、N-メチル-N-フェニルジチオカルバミン酸シアノメチル、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸メチル、トリチオ炭酸=ビス[4-(アリルオキシカルボニル)ベンジル]、トリチオ炭酸=ビス[4-(2,3-ジヒドロキシプロポキシカルボニル)ベンジル]、トリチオ炭酸=ビス{4-[エチル-(2-アセチルオキシエチル)カルバモイル]ベンジル}、トリチオ炭酸ビス{4-[エチル-(2-ヒドロキシエチル)カルバモイル]ベンジル}、トリチオ炭酸=ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンジル]等が挙げられる。
『疎水性物質』
疎水性物質は、ミニエマルションの分散安定性等に寄与する。
ミニエマルションの重合では一般に、超音波発振機や圧力ホモジナイザー等を利用して強い剪断力をかけることによって、50~1000nm程度のモノマー油滴(モノマー粒子)を含むミニエマルションを調製する。理想的なミニエマルション重合では、モノマー粒子が形成されるポリマー粒子の核になって重合が進行する。その結果、ミニエマルション中のモノマー粒子はそのままポリマー粒子に変換され、均質なポリマー粒子を得ることが可能となる。
疎水性物質としては、例えば炭素数10以上の炭化水素類、炭素数10以上のアルコール、Mw10000以下の疎水性ポリマー、疎水性モノマー(例えば、炭素数10~30のアルコールのビニルエステル、炭素数12~30のアルコールのビニルエーテル、炭素数12~30の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、炭素数10~30(好ましくは炭素数10~22)のカルボン酸のビニルエステル、p-アルキルスチレン)、疎水性の連鎖移動剤、疎水性の過酸化物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
疎水性物質としては、より具体的には、ヘキサデカン、オクタデカン、イコサン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、オリーブ油、セチルアルコール、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、Mw500~10000のポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
『乳化剤』
乳化剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。具体的には、高級アルコール(例えば炭素数6~30のアルコール)の硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸スルホン酸塩、リン酸塩系(例えば、モノグリセリドリン酸アンモニウム)、脂肪酸塩(例えば、アルケニルコハク酸ジカリウム)、アミノ酸誘導体塩等のアニオン性界面活性剤;ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型等のノニオン性界面活性剤;アニオン部にカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩等を有し、カチオン部にアミン塩、第4級アンモニウム塩等を有する両性界面活性剤等が挙げられる。これらの乳化剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
『開始剤』
開始剤としては、例えば、アゾ重合開始剤、光重合開始剤、無機過酸化物、有機過酸化物、有機過酸化物と遷移金属と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤、等の公知のラジカル重合開始剤が挙げられる。これらのうち、加熱により重合を開始できる点で、アゾ重合開始剤、無機過酸化物、有機過酸化物、レドックス系開始剤が好ましく、アゾ重合開始剤、有機過酸化物がより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
『混合液』
前記混合液において、芳香族ビニル単量体(m1)100質量部に対するRAFT剤の配合割合は、0.1~1.5質量部が好ましく、0.2~1.0質量部がより好ましい。
RAFT剤の割合が前記下限値以上であれば、ブロック共重合体(A)のMn及びMw/Mnを好ましい範囲としやすい。
芳香族ビニル単量体(m1)100質量部に対する疎水性物質の配合割合は、0.1~20質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、2~8質量部がさらに好ましい。疎水性物質の割合が前記下限値以上であれば、モノマー粒子の粒子径の制御が容易であり、重合体(a-1)の粒子の生産性が優れる。また、リビングラジカル重合が進行しやすく、重合体(a-1)のMw/Mnを小さくしやすい。疎水性物質の含有量が前記上限値以下であれば、ブロック共重合体(A)の物性がより良好となる。
芳香族ビニル単量体(m1)100質量部に対する乳化剤の割合は、0.01~10質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~5質量部がさらに好ましい。乳化剤の割合が前記下限値以上であれば、モノマー粒子の粒子径を小さくしやすく、重合体(a-1)の生産性に優れる。また、重合体(a-1)の粒子中に残る未反応の芳香族ビニル単量体(m1)が少なくなる。乳化剤の割合が前記上限値以下であれば、重合体(a-1)の粒子の水分散体中に残留する乳化剤が、重合体(a-1)やブロック共重合体(A)の物性に影響しにくい。
芳香族ビニル単量体(m1)100質量部に対する開始剤の配合割合は、0.03~2質量部が好ましい。また、RAFT剤1モルに対する開始剤の割合は、1モル未満であることが好ましい。
開始剤の含有量が多くなると重合速度が向上するが、通常の乳化重合や、リビングラジカル重合の停止反応等の副反応が生じやすく、ブロック共重合体(A)のMw/Mnが広くなったり、重合体(a-1)の粒子中に残る未反応の芳香族ビニル単量体(m1)が多くなったりする傾向がある。開始剤の含有量が前記上限値以下であれば、ブロック共重合体(A)のMw/Mnを前記上限値以下としやすい。また、重合体(a-1)の粒子中に残る未反応の芳香族ビニル単量体(m1)が少なくなり、ブロック共重合体(A)の組成に影響しにくい。
混合液の固形分濃度は、作業性、安定性、製造性等の観点から、混合液の総質量に対し、5~50質量%程度が好ましい。
水の含有量は、固形分濃度が前記範囲内となるように、固形分100質量部に対して100~2000質量部程度が好ましい。
混合液の固形分は、水以外の成分の合計である。
混合液は、芳香族ビニル単量体(m1)、RAFT剤、疎水性物質、水、乳化剤、必要に応じて開始剤を混合することにより調製できる。
混合方法は特に限定されないが、例えば、芳香族ビニル単量体(m1)、RAFT剤、疎水性物質、必要に応じて開始剤を混合して油相を調製し、油相に乳化剤、水を添加して混合する方法が挙げられる。乳化剤と水は、別々に添加してもよく、それらを予め混合し乳化剤水溶液として添加してもよい。
得られる混合液においては、芳香族ビニル単量体(m1)及び疎水性物質を含む油滴が水中に分散している。
『エマルション化』
前記混合液に対し、せん断処理を施すことにより、芳香族ビニル単量体(m1)及び疎水性物質を含む油滴が引きちぎられ、乳化剤に覆われた微小油滴(モノマー粒子)が形成される。これにより、モノマー粒子のミニエマルションが得られる。
せん断処理方法としては、公知の任意の方法を用いることができ、例えば高せん断装置を用いる方法が挙げられる。
ミニエマルションの50%粒子径は、例えば50~300nmであり、50~230nmが好ましく、60~160nmがより好ましく、60~120nmがさらに好ましい。ミニエマルションの50%粒子径が前記下限値以上であれば、ブロック共重合体(A)のMw/Mnを小さくできる。ミニエマルションの50%粒子径が前記上限値以下であれば、反応速度が良好で生産性に優れる。また、重合体(a-1)の粒子中に芳香族ビニル単量体(m1)が残りにくい。
ミニエマルションの50%粒子径の調整方法としては、例えば、乳化剤の含有量、水の含有量、圧力ホモジナイザーの圧力等を変更し、高せん断装置のせん断力を調整する方法が挙げられる。
ミニエマルションの90%粒子径は、70~500nm以下が好ましく、70~300nm以下がより好ましく、70~170nm以下がさらに好ましい。90%粒子径が前記上限値以下であれば、芳香族ビニル単量体(m1)の反応速度が良好で生産性に優れる。また、重合体(a-1)の粒子中に芳香族ビニル単量体(m1)が残りにくく、所望の組成のブロック共重合体(A)が得られやすい。
[重合工程]
ミニエマルションを重合開始温度まで加熱すると、モノマー粒子中の芳香族ビニル単量体(m1)が重合し、重合体(a-1)の粒子が生成する。
重合開始温度は、開始剤の種類によっても異なるが、例えば50~120℃である。
重合は、モノマー転化率が70~100%、好ましくは80~98%となるまで行う。
得られる粒子水分散体は、重合体(a-1)及び疎水性物質を含む粒子と、水と、乳化剤とを含む。
重合体(a-1)は、芳香族ビニル単量体(m1)に基づく繰り返し単位からなるポリマー鎖と、ポリマー鎖の末端に結合した末端基とを有し、末端基は、RAFT剤由来の構造、例えばジチオカーボネート又はトリチオカーボネート構造を含む。
RAFT剤が前記式1で示されるものである場合、ジチオカーボネート又はトリチオカーボネート構造は、Z-C(=S)-S-で表される。Z-C(=S)-S-で表される構造は、Zの結合末端原子(隣接する炭素原子に結合する原子)が硫黄原子(-S-)である場合はトリチオカーボネート構造であり、Zの結合末端が硫黄原子以外の原子である場合はジチオカーボネート構造である。
トリチオカーボネート構造を有する重合体(a-1)は、例えば、RAFT剤としてトリチオカーボネートを用いることで得られる。
ジチオカーボネート構造を有する重合体(a-1)は、例えば、RAFT剤としてジチオベンゾエート、ジチオカルバメート及びキサンタートからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることで得られる。
重合体(a-1)は、末端変性ポリマーであってもよい。末端変性ポリマーは、末端基にカルボキシ基等の官能基を有する。末端変性ポリマーは、官能基を有するRAFT剤を用いることにより得られる。
重合体(a-1)のMwは、5~50万が好ましく、6~40万がより好ましく、7~30万がさらに好ましい。上記範囲であると、相溶化剤としての機能に優れたブロック共重合体(A)が得られやすい。
重合体(a-1)のMnは、6~20万が好ましく、7~15万がより好ましく、8~12万がさらに好ましい。上記範囲であると、相溶化剤としての機能に優れたブロック共重合体(A)が得られやすい。
重合体(a-1)のMw/Mnは1.0~2.5が好ましい。重合体(a-1)のMw/Mnが2.5以下であれば、RAFT剤由来の末端構造を有しない重合体(a-1)が少なく、ブロック共重合体(A)が効率的に得られる。
重合体(a-1)の粒子の水分散体の固形分濃度は、作業性、安定性、製造性等の観点から、その水分散体の総質量に対し、5~50質量%程度が好ましい。
水の含有量は、固形分濃度が前記範囲内となるように、固形分100質量部に対して100~2000質量部程度が好ましい。
前記固形分は、水以外の成分の合計である。
得られた重合体(a-1)の粒子の水分散体は、そのまま、後述するブロック共重合体(A)の粒子の水分散体の製造に用いることができる。
[ブロック共重合体(A)の水分散体の製造方法]
重合体(a-1)の水分散体中に、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体(以下、まとめて「混合モノマー(m2)」ともいう。)を配合し、重合すると、重合体(a-1)のRAFT剤由来の構造(例えばジチオカーボネート又はトリチオカーボネート構造)と、重合体(a-1)との間に、混合モノマー(m2)に由来する繰り返し単位からなる重合体(a-2)が形成される。つまり、重合体(a-1)からなるブロック部分(a-1)と、重合体(a―2)からなるブロック部分(a-2)とを有するブロック共重合体(A)が生成する。これにより、ブロック共重合体(A)の水分散体が得られる。
混合モノマー(m2)を構成する芳香族ビニル単量体としては、芳香族ビニル単量体(m1)と同様のものが例示される。
混合モノマー(m2)を構成するシアン化ビニル単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
混合モノマー(m2)中の芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体の混合比を、質量基準で芳香族ビニル単量体:シアン化ビニル単量体=4:1~2:1とすることにより、ブロック部分(a-2)にこの質量比を反映させることができる。
混合モノマー(m2)の配合量は、重合体(a-1)100質量部に対し、50~200質量部が好ましく、70~150質量部がより好ましく、90~120質量部がさらに好ましい。前記下限値以上であれば、ブロック共重合体(A)の相溶化剤としての機能が高まり、前記上限値以下であれば、ブロック共重合体(A)の水分散体の製造時の反応系の安定性、反応速度が良好である。
重合体(a-1)の水分散体中に混合モノマー(m2)を添加し、重合開始温度まで加熱することによりブロック部分(a-2)を形成することができる。
混合モノマー(m2)は、一括で添加してもよく、連続的又は断続的に滴下してもよい。反応系の安定性の点では滴下することが好ましい。
重合開始温度は、開始剤の種類によっても異なるが、例えば50~120℃である。
重合は、モノマー転化率が70~100%、好ましくは80~98%となるまで行う。
得られたブロック共重合体(A)の水分散体からブロック共重合体(A)を固形分として回収する方法としては、例えば、(i)凝固剤を溶解させた熱水中に水分散体を投入して、ブロック共重合体(A)をスラリー状態に凝析することによって回収する方法(湿式法)、(ii)加熱雰囲気中に水分散体を噴霧することにより、半直接的にブロック共重合体(A)を回収する方法(スプレードライ法)等が挙げられる。
≪熱可塑性樹脂組成物(D)≫
本発明の第二態様は、第一態様のブロック共重合体(A)と、芳香族構造を有する単量体由来の繰り返し単位を含む重合体(B)と、ゴム強化グラフト共重合体(C)と、を含む熱可塑性樹脂組成物(D)である。
<芳香族構造を有する単量体由来の繰り返し単位を含む重合体(B)>
重合体(B)としては、例えば、芳香族ビニル単量体の重合体、フェノール単量体又はその誘導体の重合体等が挙げられる。具体的には、例えば、ポリビニル芳香族炭化水素、ポリアリーレンエーテル等が挙げられる。
ポリビニル芳香族炭化水素としては、例えば、上述の芳香族ビニル単量体の1種以上が重合してなる重合体が挙げられる。好ましくは、スチレンに由来する繰り返し単位の含有量が全モノマー単位の質量(ポリマー総質量)に対して70質量%以上であるポリスチレン系樹脂である。
ポリアリーレンエーテルとしては、例えば、ポリフェニレンエーテルが挙げられる。
本態様で用いる重合体(B)は、熱可塑性樹脂組成物(D)中での相溶性を高める観点から、次の分子量に関する物性を有することが好ましい。
また、同様の観点から、重合体(B)の分子量分布Mw/Mnは、1.0~3.0が好ましい。
<ゴム強化グラフト共重合体(C)>
ゴム強化グラフト共重合体(C)は、ゴム質重合体に単量体成分(g)がグラフト重合した共重合体である。
グラフト共重合体(C)においては、ゴム質重合体に単量体成分(g)がどのように重合しているか特定することは容易ではない。すなわち、グラフト共重合体(C)については、その構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的ではないという事情(不可能・非実際的事情)が存在する。したがって、グラフト共重合体(C)は「ゴム質重合体に単量体成分(g)がグラフト重合した」と規定することがより適切とされる。
(ゴム質重合体)
グラフト共重合体(C)を構成するゴム質重合体としては、例えばポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル-ブタジエン共重合体等のブタジエン系ゴム;スチレン-イソプレン共重合体等の共役ジエン系ゴム;ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム;エチレン-プロピレン共重合体等のオレフィン系ゴム;ポリオルガノシロキサン等のシリコーン系ゴムなどが挙げられる。なお、これらゴム質重合体は、未重合のモノマーを含んでいてもよい。ゴム質重合体は複合ゴム構造やコア/シェル構造をとってもよい。ゴム質重合体としては、耐衝撃性が良好である点から、ブタジエン系ゴム、アクリル系ゴム、又はそれらの複合ゴム質重合体が好ましい。
ゴム質重合体の平均粒子径は、例えば0.20~0.50μmが好ましく、0.25~0.40μmがより好ましい。ゴム質重合体の平均粒子径が上記範囲であると、ゴム強化グラフト共重合体(C)の熱可塑性樹脂組成物(D)中での相溶性を高められる。
ゴム質重合体の平均粒子径は、粒度分布測定器を用いて質量基準の粒子径分布を測定し、得られた粒子径分布より算出することができる。ゴム質重合体の平均粒子径は、ゴム質重合体の製造時の重合条件(温度、時間など)や、モノマーの種類とその配合割合を調整することで制御できる。
(単量体成分(g))
ゴム強化グラフト共重合体(C)のグラフト構造を形成する単量体成分(g)は、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体を含む。芳香族ビニル単量体:シアン化ビニル単量体=4:1~2:1の質量比で共重合することにより、グラフト構造を形成することができる。単量体成分(g)には、必要に応じて他のビニル単量体を含んでも構わない。
単量体成分(g)における芳香族ビニル単量体として、例えばスチレン、αメチルスチレン、ビニルトルエン類(p-メチルスチレン等)、ハロゲン化スチレン類(p-ブロモスチレン、p-クロロスチレン等)、p-tert-ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらの中でもスチレンが好ましい。これら芳香族ビニル単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体成分(g)におけるシアン化ビニル単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。これらの中でもアクリロニトリルが好ましい。これらシアン化ビニル単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
他のビニル単量体は、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体と共重合可能なビニル化合物である。このようなビニル化合物としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキルエステル;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸化合物等などが挙げられる。これら他のビニル単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム強化グラフト共重合体(C)の総質量に対するゴム質重合体の含有量は、ゴム質重合体の含有割合は30~80質量%が好ましく、40~75質量%がより好ましく、50~70質量%がさらに好ましい。上記範囲であると、ゴム強化グラフト共重合体(C)の熱可塑性樹脂組成物(D)中での相溶性を高められる。
本態様で用いるゴム強化グラフト共重合体(C)は、熱可塑性樹脂組成物(D)中での相溶性を高める観点から、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体が、芳香族ビニル単量体:シアン化ビニル単量体=4:1~2:1の質量比で共重合したグラフト構造がゴム質重合体に対して形成されたものであることが好ましい。
また、同様の観点から、ゴム強化グラフト共重合体(C)の重量平均分子量Mwは、5~25万が好ましく、7~15万がより好ましい。
また、同様の観点から、ゴム強化グラフト共重合体(C)の数平均分子量Mnは、2~10万が好ましく、3~7万がより好ましい。
また、同様の観点から、ゴム強化グラフト共重合体(C)の分子量分布Mw/Mnは、1.0~3.0が好ましい。
(製造方法)
ゴム強化グラフト共重合体(C)は、ゴム質重合体の存在下で単量体成分(g)をグラフト重合する公知方法により得られる。グラフト重合を行う方法としては特に制限されないが、反応が安定して進行するように制御可能であることから乳化重合が好ましい。乳化重合で得られるゴム強化グラフト共重合体(C)は、通常、ラテックスの状態である。重合条件は、例えば30~95℃で1~10時間であってよい。
<配合割合>
本態様の熱可塑性樹脂組成物(D)の総質量に対する、第一態様のブロック共重合体(A)の含有量は5~55質量%が好ましい。この範囲であると、重合体(B)とゴム強化グラフト共重合体(C)の相溶性を充分に高めることができる。
前記含有量は、例えば、5~50質量%、5~40質量%、5~30質量%、5~20質量%、5~10質量%、10~50質量%、10~40質量%、10~30質量%、10~20質量%、20~50質量%、20~40質量%、または20~30質量%の範囲であってもよい。
重合体(B)が芳香族ビニル単量体の重合体(ただし、フェノール単量体又はその誘導体の重合体を除く。)である場合、ブロック共重合体(A)の含有量5~30質量部に対して、重合体(B)の含有量が20~75質量部であり、ゴム強化グラフト共重合体(C)の含有量が20~70質量部であることが好ましい。ここで、ブロック共重合体(A)、重合体(B)及びゴム強化グラフト共重合体(C)の合計の含有量は100質量部である。
上記範囲であると、重合体(B)とゴム強化グラフト共重合体(C)の相溶性をより一層高めることができる。
重合体(B)がフェノール単量体又はその誘導体の重合体である場合、ブロック共重合体(A)の含有量15~45質量部に対して、重合体(B)の含有量が25~55質量部であり、ゴム強化グラフト共重合体(C)の含有量は20~35質量部であることが好ましい。ここで、ブロック共重合体(A)、重合体(B)及びゴム強化グラフト共重合体(C)の合計の含有量は100質量部である。
上記範囲であると、重合体(B)とゴム強化グラフト共重合体(C)の相溶性をより一層高めることができる。
熱可塑性樹脂組成物(D)は、ブロック共重合体(A)、重合体(B)、及びゴム強化グラフト共重合体(C)、並びに必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲から選ばれるその他の成分を所望の配合割合で混ぜ、公知の方法で溶融混錬することにより製造することができる。
≪成形品≫
本発明の第三態様の成形品は、第二態様の熱可塑性樹脂組成物(D)を成形したものである。その成形方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法、インサート成形法、真空成形法、ブロー成形法などが挙げられる。
成形品は、第二態様の熱可塑性樹脂組成物(D)を用いているため、種々の物性、例えば、引張強度、耐熱性、耐衝撃性、成形性等が優れる。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の例中の「%」及び「部」は、明記しない限りは質量基準である。
以下の例における各種測定及び評価方法は以下の通りである。
<重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、分子量分布Mw/Mn>
GPC(GPC:Waters社製「GPC/V2000」、カラム:昭和電工社製「Shodex AT-G+AT-806MS」)を用い、試料をテトラヒドロフランに溶解し、ポリスチレン換算での重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、および、分子量分布Mw/Mnを測定した。
<荷重たわみ温度(HDT)の測定>
ISO75-2に準拠して成形品のHDTを測定した。荷重は1.8MPaとした。
成形品の荷重たわみ温度が高いほど、耐熱性に優れる。
<引張強度の測定>
ISO527に準拠し、23℃、引張速度50mm/minの条件で成形品の引張強度(MPa)を測定した。測定値が高いほど、成形品の引張強度が優れる。
<粒子径>
モノマー微粒子の50%粒子径および90%粒子径、ビニル系重合体(c-1)の50%粒子径、ゴム強化グラフト共重合体(C)の50%粒子径は、マイクロトラック(日機装社製「ナノトラック150」)を用い、測定溶媒としてイオン交換水を用いて測定した。
<モノマー転化率>
重合反応後の1gの反応液を130℃で15分間加熱することで水分及び未反応モノマーを揮発させ、残存した固形分からモノマー転化率を求めた。
<衝撃試験>
ISO試験法179に準拠し、測定温度23℃、試験片厚さ4mmの条件で、Vノッチ付きシャルピー衝撃強さ(kJ/m)を測定した。
<剥離試験>
後述の熱可塑性樹脂組成物(D)のペレットを株式会社日本製鋼製の射出成型機「J85AD」によりシリンダー温度220~300℃、金型温度60℃の条件で、縦100cm、横100cm、厚さ3mm、ゲート1点の成形品を成形した。そのゲート切断面に剥離が生じるか否か観察し、以下の評価基準に基づいて判定した。
〇:剥離が確認されなかった。
△:剥離が確認された。
×:剥離が確認され、ゲート付近が破損した。
<重合体(a-1)-1の製造>
スチレン50質量部、流動パラフィン1.0質量部、過酸化ラウロイル0.1質量部、RAFT剤である2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸0.15質量部を混合し溶解させた。得られた溶液を、脱イオン水200質量部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2質量部を溶解させた水溶液に添加し、ホモミキサー装置(SMT製HIGH-FLEX DISPERSER HG92)で5分間撹拌することで分離しない程度に乳化させた。得られた乳化液を、小型圧力ホモジナイザー(三丸機械工業(株)製エコナイザー02)を用い、50MPaで4回処理することでミニエマルション(モノマー微粒子の水分散体)を得た。
得られたミニエマルションにおけるモノマー微粒子の50%粒子径は70nm、90%粒子径は90nmであった。
得られたミニエマルションを冷却管、ジャケット加熱機及び攪拌装置を備えた反応器に入れて窒素置換した後、80℃で360分反応させることでスチレンからなる重合体(a-1)-1のラテックスを得た。モノマー転化率は93%、Mwは233,000、Mnは97,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。
<ブロック共重合体(A)-1の製造>
得られた重合体(a-1)-1のラテックスに80℃でスチレン37.5質量部、アクリロニトリル12.5質量部を60分かけて滴下したのち、さらに80℃で300分反応させることで、重合体(a-1)-1のブロックに、スチレン及びアクリロニトリルからなる共重合体(a-2)-1のブロックが共重合した、ブロック共重合体(A)-1のラテックスを得た。モノマー転化率は96%、ブロック共重合体(A)-1のMwは416,000、Mnは181,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.3であった。
<ブロック共重合体(A)-2の製造>
前記重合体(a-1)を得るのと同様にして、重合体(a-1)-2を得た。ただし、流動パラフィンを2.5質量部、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸を0.3質量部に変更した。さらに、前記ブロック共重合体(A)-1の製造と同様の操作を行い、重合体(a-1)-2を用い、ブロック共重合体(A)-2を得た。
重合体(a-1)-2のラテックスを得る際のモノマー転化率は93%、そのMwは77,000、Mnは55,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.4であった。
共重合体(a-2)-2のブロックを共重合させる際のモノマー転化率は96%であり、ブロック共重合体(A)-2のMwは147,000、Mnは105,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.4であった。
<ブロック共重合体(A)-3の製造>
前記重合体(a-1)を得るのと同様にして、重合体(a-1)-3を得た。ただし、重合体(a-1)-3を得る際、流動パラフィンを0質量部、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸を0.075質量部に変更した。さらに、前記ブロック共重合体(A)1の製造と同様の操作を行い、重合体(a-1)-3を用い、ブロック共重合体(A)-3を得た。
重合体(a-1)-3のラテックスを得る際のモノマー転化率は93%、そのMwは900,000、Mnは200,000、分子量分布(Mw/Mn)は4.5であった。
共重合体(a-2)-3のブロックを共重合させる際のモノマー転化率は96%であり、ブロック共重合体(A)-3のMwは1800,000、Mnは400,000、分子量分布(Mw/Mn)は4.5であった。
<ブロック共重合体(A)-4の製造>
前記重合体(a-1)を得るのと同様にして、重合体(a-1)-4を得た。ただし、重合体(a-1)-4を得る際、流動パラフィンを1.0質量部、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸を0.05質量部に変更した。さらに、前記ブロック共重合体(A)-1の製造と同様の操作を行い、重合体(a-1)-4を用い、ブロック共重合体(A)-4を得た。
重合体(a-1)-4のラテックスを得る際のモノマー転化率は93%、そのMwは720,000、Mnは300,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.4であった。
共重合体(a-2)-4のブロックを共重合させる際のモノマー転化率は96%であり、ブロック共重合体(A)-4のMwは1500,000、Mnは600,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.5であった。
<ブロック共重合体(A)-5の製造>
前記重合体(a-1)を得るのと同様にして、重合体(a-1)-5を得た。ただし、重合体(a-1)-5を得る際、流動パラフィンを0質量部、2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン酸を0.15質量部に変更した。さらに、前記ブロック共重合体(A)-1の製造と同様の操作を行い、重合体(a-1)-5を用い、ブロック共重合体(A)―5を得た。
重合体(a―5)-1のラテックスを得る際のモノマー転化率は93%、そのMwは450,000、Mnは100,000、分子量分布(Mw/Mn)は4.5であった。
共重合体(a―5)-2のブロックを共重合させる際のモノマー転化率は96%であり、ブロック共重合体(A)-5のMwは900,000、Mnは200,000、分子量分布(Mw/Mn)は4.5であった。
<芳香族構造を有する単量体を含む重合体(B)>
下記の重合体(B)を用いた。
芳香族ビニル重合体:ポリスチレン(製品名679、PSジャパン株式会社製)。
芳香族ポリエーテル重合体:ポリフェニレンエーテル(製品名ユピエースPX100F、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製)。
<ビニル系重合体(c-1)の製造>
攪拌装置、温度計及びジャケット式温度調節器を有した反応器に、脱イオン水400部、アルケニルコハク酸ジカリウム(花王株式会社製、「ラテムルASK」)0.2部、ブタジエン100部、t-ブチルヒドロパーオキシド0.2部を撹拌下で仕込んだ。次いで、反応器内を攪拌しながら窒素置換した後、内容物を55℃まで昇温した。内温55℃にて、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.3部、硫酸第一鉄七水和物0.00016部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.00048部、脱イオン水0.5部からなる水溶液を添加し、重合を開始させた。重合発熱が確認された後、ジャケット温度を75℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続し、さらに1時間保持し、50%粒子径が0.28μmのビニル系重合体(c-1)のラテックス(ポリブタジエン)を得た。
<ゴム強化グラフト共重合体(C)の製造>
攪拌装置、温度計及びジャケット式温度調節器を有した反応器に、ビニル系重合体(c-1)のラテックス60部(固形分として)、脱イオン水(ビニル系重合体(c-1)のラテックス中の水を含む)210部、アルケニルコハク酸ジカリウム(花王株式会社製、「ラテムルASK」)0.9部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート)0.3部を仕込んだ。次いで、反応器内を攪拌しながら窒素置換した後、内容物を70℃まで昇温した。次いで、アクリロニトリル10部、スチレン30部、t-ブチルヒドロパーオキシド0.2部からなる混合液を100分間にわたって滴下しながら、80℃まで昇温した。滴下終了後、温度80℃の状態を30分間保持した後、冷却し、50%粒子径が0.3μmのゴム強化グラフト共重合体(C)を得た。モノマー転化率は93%、Mwは95,000、Mnは33,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.8であった。
[熱可塑性樹脂組成物(D)の製造]
上記で得た(A)~(C)の樹脂を二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX-28V)で溶融混錬することで、表1に示す組成の熱可塑性樹脂組成物(D)のペレットを得て、上述の通り、成形品を作製した。
得られた成形品について、引張強度若しくは荷重たわみ温度、耐衝撃性、ゲート剥離性を評価した。結果を表1~2に示す。また、実施例2、比較例2それぞれの熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品の電子顕微鏡像を図1、図2に示す。
Figure 2024068383000002
Figure 2024068383000003
本発明に係る実施例1~10の熱可塑性樹脂組成物(D)からなる成形品にあっては、その引張強度、耐熱性、耐衝撃性、成形性等が向上している。これらの優れた物性が得られた要因として、芳香族構造を有する単量体由来の繰り返し単位を含む重合体(B)と、ゴム強化グラフト共重合体(C)との相溶性が、ブロック共重合体(A)の存在によって向上していることが挙げられる。このことは、図1~2に示した電子顕微鏡写真から明らかである。すなわち同図において、実施例にあってはポリスチレン又はポリフェニレンエーテルのマトリックス中にABS樹脂の粒子が比較的均一に分散している。一方、比較例にあってはこれらのマトリックス中でABS樹脂の粒子が凝集しており、分散が不均一である。
比較例1ではブロック共重合体(A)を含まないので相溶性が劣る。比較例2ではブロック共重合体(A-3)の数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnが大きいので相溶性が劣る。比較例3ではブロック共重合体(A-4)の数平均分子量Mnが大きいので相溶性が劣る。比較例4ではブロック共重合体(A-5)の分子量分布Mnが大きいので相溶性が劣る。比較例5~6ではブロック共重合体(A)を含まないので相溶性が劣る。比較例7~8ではブロック共重合体(A-3)の数平均分子量Mn及び分子量分布Mw/Mnが大きいので相溶性が劣る。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を用いた成形品は、車両部品、OA機器、家電部品等として有用であり、ABS樹脂と、ポリスチレン又はポリフェニレンエーテルとのポリマーブレンドにおいて特に有用である。

Claims (6)

  1. 芳香族ビニル単量体が重合したブロック部分(a-1)と、
    芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体が、芳香族ビニル単量体:シアン化ビニル単量体=4:1~2:1の質量比で共重合したブロック部分(a-2)とからなるブロック共重合体(A)であり、
    数平均分子量Mnが30万以下、かつ、分子量分布Mw/Mnが1.0~2.5である、ブロック共重合体。
  2. 請求項1に記載のブロック共重合体(A)と、
    芳香族構造を有する単量体由来の繰り返し単位を含む重合体(B)と、
    ゴム強化グラフト共重合体(C)と、
    を含む熱可塑性樹脂組成物(D)であり、
    前記ゴム強化グラフト共重合体(C)は、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル単量体が、芳香族ビニル単量体:シアン化ビニル単量体=4:1~2:1の質量比で共重合したグラフト構造が備えられたゴム質重合体であり、
    前記ゴム強化グラフト共重合体(C)の重量平均分子量Mwが5~25万である、熱可塑性樹脂組成物。
  3. 前記熱可塑性樹脂組成物(D)の総質量に対する、前記ブロック共重合体(A)の含有量が5~55質量%である、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記重合体(B)が芳香族ビニル単量体の重合体であり、
    前記ブロック共重合体(A)の含有量5~30質量部に対して、前記重合体(B)の含有量が20~75質量部であり、前記ゴム強化グラフト共重合体(C)の含有量が20~70質量部であり、
    前記ブロック共重合体(A)、前記重合体(B)及び前記ゴム強化グラフト共重合体(C)の合計の含有量が100質量部である、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 前記重合体(B)がフェノール単量体又はその誘導体の重合体であり、
    前記ブロック共重合体(A)の含有量15~45質量部に対して、前記重合体(B)の含有量が25~55質量部であり、前記ゴム強化グラフト共重合体(C)の含有量が20~35質量部であり、
    前記ブロック共重合体(A)、前記重合体(B)及び前記ゴム強化グラフト共重合体(C)の合計の含有量が100質量部である、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項2~5の何れか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形してなる成形品。
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