JP6341593B2 - グラフト共重合体の製造方法、および熱可塑性樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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しかし、ABS樹脂を構成するゴム成分であるポリブタジエンを乳化重合で得る際、通常は重合開始剤として10時間半減期温度が50〜80℃のものが使用されるが、重合反応終了時に適正であった架橋レベルが時間の経過とともに徐々に上昇することで、耐衝撃性が低下するという問題があった。また、共役ジエン系ゴムであるポリブタジエンは紫外線により分解されやすいことから、ABS樹脂より得られる成形品は耐候性に劣るという欠点があった。
しかし、AAS樹脂より得られる成形品は、ABS樹脂より得られる成形品に比べ一般的に耐衝撃性に劣る傾向にある。
[1] 共役ジエン系ゴム4〜18質量%の存在下に、アルキル(メタ)アクリレート単量体82〜96質量%(ただし、共役ジエン系ゴムとアルキル(メタ)アクリレート単量体の合計を100質量%とする。)を重合して得られる複合ゴム状重合体30〜70質量%に、芳香族ビニル化合物単量体およびシアン化ビニル化合物単量体の少なくとも一方を含む単量体成分30〜70質量%(ただし、該単量体成分と複合ゴム状重合体の合計を100質量%とする。)をグラフト重合するグラフト共重合体の製造方法であって、前記共役ジエン系ゴムは、重合開始剤として10時間半減期温度が50〜80℃である過硫酸塩を用い、当該共役ジエン系ゴムを構成する成分を重合する重合工程と、重合工程の後にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加する工程と、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加した後に平均粒子径が150〜250nmとなるように肥大化する肥大化工程とを経て得られる、グラフト共重合体の製造方法。
[2] 前記共役ジエン系ゴムとアルキル(メタ)アクリレート単量体の合計を100質量%としたときに、共役ジエン系ゴムの割合が6〜14質量%である、[1]に記載のグラフト共重合体の製造方法。
[3] [1]または[2]に記載のグラフト共重合体の製造方法によりグラフト共重合体を得る工程を有する、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、耐候性、および表面外観に優れた成形品を得ることができ、かつ成形加工性に優れる。
なお、以下の説明において、「成形品」とは、本発明のグラフト共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものである。
本発明のグラフト共重合体(E)は、共役ジエン系ゴム(a)の存在下に、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)を重合して得られる複合ゴム状重合体(c)に、芳香族ビニル化合物単量体およびシアン化ビニル化合物単量体の少なくとも一方を含む単量体成分(d)(以下、「(d)成分」ともいう。)をグラフト重合して得られる共重合体である。
複合ゴム状重合体(c)は、共役ジエン系ゴム(a)の存在下に、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)を重合して得られるものである。このようにして得られる複合ゴム状重合体(c)は、共役ジエン系ゴム(a)と、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)を主成分とするポリアルキル(メタ)アクリレート(b)とが複合した複合ゴムである。
ここで、「主成分」とは、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)に由来する単位を80質量%以上含むことである。
(b2)成分の存在下で重合を行う場合、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)に由来する単位と、架橋剤に由来する単位およびグラフト交叉剤に由来する単位の少なくとも一方とを有するポリアルキル(メタ)アクリレート(b)と、共役ジエン系ゴム(a)とが複合した複合ゴム状重合体(c)が得られる。
共役ジエン系ゴム(a)は、ジエン成分(a1)を少なくとも構成成分とするゴム状重合体である。該ゴム状重合体は、ジエン成分(a1)と、該ジエン成分(a1)と共重合可能な他の単量体(a2)とを構成成分としてもよい。
ジエン成分(a1)としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
他の単量体(a2)としては、例えばアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物単量体;スチレン等の芳香族ビニル化合物単量体などが挙げられる。
重合の方法としては特に制限されず、例えば乳化重合などが挙げられる。また、重合の際には、メルカプタン等の連鎖移動剤などを添加してもよい。
このような過硫酸塩としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどが挙げられる。これら過硫酸塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合後にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加して得られた共役ジエン系ゴム(a)を用いることで、成形品の耐衝撃性および耐候性が向上する。かかる理由は以下の通りである。
共役ジエン系ゴムを構成する成分を重合した後にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加すると、重合反応終了時の適正な架橋レベルが、時間が経過しても保持される。その結果、成形品の耐衝撃性および耐候性が向上すると考えられる。
なお、重合が完結する前の段階で反応系中にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートが存在していると、十分な架橋反応が進行せず、耐衝撃性および耐候性の向上効果が得られない。
共役ジエン系ゴム(a)の平均粒子径は、レーザ回折・光散乱法により測定される体積基準の平均粒子径(体積平均粒子径)であり、ラテックスの状態で測定することができる。
また、シード重合により共役ジエン系ゴム(a)の平均粒子径を制御することも可能であるが、シード重合の場合は重合時間が長くなる傾向にある。よって、比較的粒子径が小さい(例えば30〜100nm程度)の共役ジエン系ゴム(a)のラテックスを予め製造し(重合工程)、肥大化操作によって目的の粒子径に肥大化させること(肥大化工程)が好ましい。なお、この場合のナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加するタイミングは、重合反応終了後である。
肥大化操作の方法としては特に制限されないが、酢酸等の酸性水溶液を添加することによる方法、酸基含有共重合体ラテックスを添加することによる方法などが挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)としては、重合性不飽和基を1つ含むアルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、例えばアルキル基の炭素数が1〜12であるアルキル(メタ)アクリレート;フェニル基、ベンジル基などのベンゼン環を有する芳香族(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的にはブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレートなどが挙げられる。
これらアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(b2)成分は、架橋剤およびグラフト交叉剤の少なくとも一方である。
架橋剤としては、重合性不飽和基を2つ以上含む化合物を用いることが好ましく、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどが挙げられる。
グラフト交叉剤としては、重合性不飽和基を2つ以上含む化合物を用いることが好ましく、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルイタコネートなどが挙げられる。
これら架橋剤およびグラフト交叉剤は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
複合ゴム状重合体(c)は、共役ジエン系ゴム(a)のラテックスにアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)を添加し、例えばシード重合することによって得られる。(b2)成分の存在下で重合を行う場合は、共役ジエン系ゴム(a)のラテックスにアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)と(b2)成分とを添加し、例えばシード重合すればよい。
なお、シード重合する際、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)や(b2)成分の全てが共役ジエン系ゴム(a)にシード重合した場合には、共役ジエン系ゴム(a)とポリアルキル(メタ)アクリレート(b)との複合ゴムのみが得られる。一方、シード重合する際の乳化剤などの安定剤の量が過剰な場合や、共役ジエン系ゴム(a)の粒子数が少ない場合などは、必ずしもアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)や(b2)成分の全てが共役ジエン系ゴム(a)にシード重合せず、一部単独のポリアルキル(メタ)アクリレート(b)を形成することもある。後者の場合に、ゴム成分として共役ジエン系ゴム(a)とポリアルキル(メタ)アクリレート(b)との複合ゴム、および単独のポリアルキル(メタ)アクリレート(b)の2種のゴム成分が、複合ゴム状重合体(c)中に存在することになる。従って、本発明においては、上記2種のゴム成分を用いて得られるグラフト共重合体(E)、および該グラフト共重合体(E)を含む熱可塑性樹脂組成物も包含するものとする。
耐衝撃性と耐候性のバランスを考慮すると、共役ジエン系ゴム(a)の使用量は6〜14質量%が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)の使用量は86〜94質量%が好ましい。
本発明のグラフト共重合体(E)は、複合ゴム状重合体(c)に(d)成分をグラフト重合して得られる。
芳香族ビニル化合物単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ハロゲン化スチレンなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル化合物単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、マレオニトリル、フマロニトリルなどが挙げられる。これらの中でも、アクリロニトリルが好ましい。
これら芳香族ビニル化合物単量体およびシアン化ビニル化合物単量体は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
芳香族ビニル化合物単量体およびシアン化ビニル化合物単量体と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート単量体、マレイミド系単量体、アミド系単量体などが挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、(ジ)ブロモフェニル(メタ)アクリレート、クロルフェニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
マレイミド系単量体としては、例えばN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどが挙げられる。
アミド系単量体としては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。
これらアルキル(メタ)アクリレート単量体、マレイミド系単量体、アミド系単量体は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、ラジカル重合を行う際には、得られるグラフト共重合体(E)の分子量やグラフト率を制御するため、各種公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
凝固剤としては、例えば硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸;塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩などが挙げられる。これらの中でも、グラフト共重合体(E)の生産性に優れ、かつ、得られるグラフト共重合体(E)およびこれを含む熱可塑性樹脂組成物の成形時における熱着色に優れることから無機酸が好ましい。
洗浄条件としては特に制限されないが、乾燥後のグラフト共重合体(E)100質量中に含まれる乳化剤残渣量が0.5〜2質量%の範囲となる条件で洗浄することが好ましい。グラフト共重合体(E)中の乳化剤残渣が0.5質量%以上であれば、得られるグラフト共重合体(E)およびこれを含む熱可塑性樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。一方、グラフト共重合体(E)中の乳化剤残渣が2質量%以下であれば、熱可塑性樹脂組成物を高温成形した際にガス発生を抑制できる。
以上説明した本発明のグラフト共重合体(E)は、上述した複合ゴム状重合体(c)に特定量の(d)成分をグラフト重合して得られるものである。複合ゴム状重合体(c)は、共役ジエン系ゴム(a)と、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)を主成分とするポリアルキル(メタ)アクリレート(b)とが複合化したものである。また、共役ジエン系ゴム(a)は、当該共役ジエン系ゴム(a)を構成する成分を重合した後にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加して得られたものであり、かつ平均粒子径が150〜250nmである。このような構成のグラフト共重合体(E)は、耐衝撃性、耐候性、および表面外観に優れた成形品を得ることができ、かつ成形加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物の材料として好適である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述した本発明のグラフト共重合体(E)を含有する。熱可塑性樹脂組成物はグラフト共重合体(E)のみで構成されていてもよいが、グラフト共重合体(E)以外の熱可塑性樹脂(他の熱可塑性樹脂(F))を含有することが好ましい。また、熱可塑性樹脂組成物は添加剤を含有していてもよい。
これら他の熱可塑性樹脂(F)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
以上説明した本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明のグラフト共重合体(E)を含有するので、耐衝撃性、耐候性、および表面外観に優れた成形品を得ることができ、かつ成形加工性に優れる。
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を公知の成形方法によって成形してなるものであり、耐衝撃性、耐候性、および表面外観に優れる。
成形方法としては、例えば射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
成形品の用途としては、車両外装部品、事務機器、家電、建材等が挙げられ、車両外装部品が好適である。
以下の実施例および比較例における各種測定および評価方法は、以下の通りである。
<共役ジエン系ゴムの平均粒子径の測定>
ナノトラック粒度分布計(日機装株式会社製、「UPA−EX150」)を用い、測定溶媒として純水を用いて、共役ジエン系ゴムラテックスの体積基準の平均粒子径を測定した。これを共役ジエン系ゴムの平均粒子径とする。
株式会社東洋精機製作所製の「メルトインデクサーF−F01」を用い、ISO 1133に準拠し、220℃、10kg荷重でのメルトボリュームレート(MVR)を測定した。なお、MVRは熱可塑性樹脂組成物の成形加工性の指標であり、数値が高いほど、成形加工性に優れることを意味する。
ISO 3167に準拠してペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、射出成形機(東芝機械株式会社製、「IS55FP−1.5A」)によって試験片を作製した。この試験片のシャルピー衝撃強度をISO 179に準拠して、23℃雰囲気下で測定した。
スガ試験機株式会社製の「サンシャインスーパーロングライフウェザーメーターWEL−SUN−DCH型」を用い、63℃、サイクル条件;60分(降雨:12分)の環境下に成形品(100×100mm(厚み2mm))を1000時間暴露した。1000時間の暴露前後の成形品の変色の度合い(ΔE)を、色差計を用いて測定した。
スガ試験機株式会社製の「デジタル変角光沢計UGV−5D」を用い、JIS K 7105に準拠して、入射角60°、反射角60°における成形品(100×100mm(厚み2mm))の表面の反射率(%)を測定した。反射率が高いほど表面外観に優れることを意味する。
<製造例1:共役ジエン系ゴム(a−1)の製造>
攪拌機を備えた耐圧容器に脱イオン水150部、1,3−ブタジエン100部、硬化脂肪酸カリ石鹸3.0部、有機スルホン酸ナトリウム0.3部、ターシャルドデシルメルカプタン0.2部、10時間半減期温度が71℃である過硫酸カリウム0.3部、及び水酸化カリウム0.14部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら温度を60℃に上げて重合を開始し、重合率65%のときに過硫酸カリウム0.1部を溶解した脱イオン水5部を上記耐圧容器に加えて重合温度を70℃に上げ、反応時間13時間、重合転化率90%で重合を完結した(重合工程)。その後、上記耐圧容器にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1部を添加し、ポリブタジエンラテックスを得た。得られたポリブタジエンラテックスは、平均粒子径が80nm、固形分が52.0%であった。
ついで、得られたポリブタジエンラテックスに酢酸1.75部を添加して肥大化を行い(肥大化工程)、平均粒子径200nmのポリブタジエンラテックスを得た。これを共役ジエン系ゴム(a−1)のラテックスとする。
重合工程の後でナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加しなかった以外は、製造例1と同様にして、平均粒子径200nmのポリブタジエンラテックスを得た。これを共役ジエン系ゴム(a−2)のラテックスとする。
肥大化工程における酢酸の添加量を表1に示すように変更した以外は、製造例1と同様にして、表1に示す平均粒子径のポリブタジエンラテックスを得た。これらを共役ジエン系ゴム(a−3)〜(a−6)のラテックスとする。
また、表1および後述の表3〜6中の「SFSの添加の有無」は、共役ジエン系ゴム(a)の製造工程において、重合工程の後にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加したかどうかであり、添加した場合を「有り」とし、添加しなかった場合を「無し」とする。
<製造例4:グラフト共重合体(E−1)の製造>
20Lのセパラブルフラスコに、製造例1で得られた共役ジエン系ゴム(a−1)のラテックスを固形分換算で5部と蒸留水160部とを仕込んだ。これに、ブチルアクリレート45部と、アリルメタクリレート0.2部と、ブチレングリコールジメタクリレート0.1部と、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1部とからなる混合物を添加し、十分に攪拌した後、アルケニルコハク酸ジカリウム0.2部を添加し、系内を窒素置換して酸素を除去した。内温を60℃まで昇温させた時点で、ロンガリット0.25部と、硫酸第一鉄0.0002部と、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.0006部と、蒸留水3部とからなる混合物を投入した。重合開始後、内温が約70℃まで上昇した後、75℃で90分撹拌しながら保持してシード重合を行い、複合ゴム状重合体(c)を得た。
引き続き、アルケニルコハク酸ジカリウム0.6部と、ロンガリット0.2部と、蒸留水3部とからなる混合物を投入し、さらに、アクリロニトリル12.5部と、スチレン37.5部と、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.3部と、n−オクチルメルカプタン0.1部とからなる混合物を120分かけて滴下投入させてグラフト重合を行った。滴下終了後、さらに1時間攪拌保持して、グラフト重合反応を完結させた。かかる反応によって得られた重合体に酸化防止剤を添加し、グラフト共重合体(E−1)のラテックスを得た。
得られたグラフト共重合体(E−1)のラテックスを液温50℃の希硫酸水溶液に投入し、その後30分かけて90℃まで昇温し凝固させた後、脱水、洗浄、乾燥させて、粉末状のグラフト共重合体(E−1)を得た。
共役ジエン系ゴムのラテックスの種類および量、ブチルアクリレート、アクリロニトリル、およびスチレンの量を表2に示すように変更した以外は、製造例4と同様にしてグラフト共重合体(E−2)〜(E−16)を得た。
<製造例6:他の熱可塑性樹脂(F−1)の製造>
アクリロニトリル27部およびスチレン73部を公知の懸濁重合により重合し、N,N−ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.61dl/gであるアクリロニトリル−スチレン共重合体を得た。これを他の熱可塑性樹脂(F−1)とする。
ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを構成単位とする、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製の「ユーピロンS2000F」を、他の熱可塑性樹脂(F−2)として用いた。
他の熱可塑性樹脂(F−3)として、三菱レイヨン株式会社製の「タフペットPBTN1100」を用いた。
表3〜6に示す量のグラフト共重合体(E)および他の熱可塑性樹脂(F)と、エチレンビスステアリルアミド1部と、シリコーンオイルSH200(東レ・ダウコーニング株式会社製)0.2部と、アデカスタブAO−60(株式会社ADEKA製)0.2部と、アデカスタブLA−57(株式会社ADEKA製)0.4部とをヘンシェルミキサーを用いて混合した。スクリュー式押出機(株式会社日本製鋼所製、「TEX−30α型二軸押出機」)を用いて、得られた混合物を230℃にて溶融混練した後、ペレタイザーにてペレット化した熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物について成形加工性を評価した。結果を表3〜6に示す。また、得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて成形品を作製し、耐衝撃性、耐候性、および表面外観を評価した。これらの結果を表3〜6に示す。
「(a):(b1)」は、グラフト共重合体(E)の製造に用いた複合ゴム状重合体(c)に含まれる共役ジエン系ゴム(a)とブチルアクリレートとの合計を100質量%とした場合の、共役ジエン系ゴム(a)とブチルアクリレートの使用量(質量%)の比率である。
「(c):(d)」は、グラフト共重合体(E)の製造に用いた複合ゴム状重合体(c)と(d)成分(アクリロニトリルおよびスチレン)との合計を100質量%とした場合の、複合ゴム状重合体(c)と(d)成分の使用量(質量%)の比率である。
具体的には、比較例1の場合、共役ジエン系ゴム(a)の平均粒子径が100nmであったため、耐衝撃性に劣っていた。
比較例2の場合、共役ジエン系ゴム(a)の平均粒子径が300nmであったため、耐候性および表面外観に劣っていた。
比較例3の場合、共役ジエン系ゴム(a)の製造において重合工程の後にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加しなかったため、耐衝撃性および耐候性に劣っていた。
比較例4の場合、共役ジエン系ゴム(a)の量が2質量%であり、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)の量が98質量%であったため、耐衝撃性に劣っていた。
比較例5の場合、共役ジエン系ゴム(a)の量が20質量%であり、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)の量が80質量%であったため、耐候性に劣っていた。
比較例6の場合、複合ゴム状重合体(c)の量が20質量%、(d)成分の量が80質量%であったため、耐衝撃性に劣っていた。
比較例7の場合、複合ゴム状重合体(c)の量が80質量%、(d)成分の量が20質量%であったため、成形加工性、耐衝撃性、耐候性、および表面外観の全てに劣っていた。
Claims (3)
- 共役ジエン系ゴム4〜18質量%の存在下に、アルキル(メタ)アクリレート単量体82〜96質量%(ただし、共役ジエン系ゴムとアルキル(メタ)アクリレート単量体の合計を100質量%とする。)を重合して得られる複合ゴム状重合体30〜70質量%に、芳香族ビニル化合物単量体およびシアン化ビニル化合物単量体の少なくとも一方を含む単量体成分30〜70質量%(ただし、該単量体成分と複合ゴム状重合体の合計を100質量%とする。)をグラフト重合するグラフト共重合体の製造方法であって、
前記共役ジエン系ゴムは、重合開始剤として10時間半減期温度が50〜80℃である過硫酸塩を用い、当該共役ジエン系ゴムを構成する成分を重合する重合工程と、重合工程の後にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加する工程と、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加した後に平均粒子径が150〜250nmとなるように肥大化する肥大化工程とを経て得られる、グラフト共重合体の製造方法。 - 前記共役ジエン系ゴムとアルキル(メタ)アクリレート単量体の合計を100質量%としたときに、共役ジエン系ゴムの割合が6〜14質量%である、請求項1に記載のグラフト共重合体の製造方法。
- 請求項1または2に記載のグラフト共重合体の製造方法によりグラフト共重合体を得る工程を有する、熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
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