JP6341593B2 - グラフト共重合体の製造方法、および熱可塑性樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

グラフト共重合体の製造方法、および熱可塑性樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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本発明は、グラフト共重合体の製造方法、および熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。
車両外装用途などに用いられる樹脂材料やその成形品には、従来求められている成形加工性や表面外観といった特性に加え、近年では軽量化やデザイン性を重視した設計を満たす特性が求められることも多い。つまり耐衝撃性、耐候性、成形加工性、表面外観といった複数の特性を高いレベルで併せ持った樹脂材料やその成形品のニーズが高まっている。
耐衝撃性に優れた成形品が得られる熱可塑性樹脂として代表的なものに、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)が知られている。
しかし、ABS樹脂を構成するゴム成分であるポリブタジエンを乳化重合で得る際、通常は重合開始剤として10時間半減期温度が50〜80℃のものが使用されるが、重合反応終了時に適正であった架橋レベルが時間の経過とともに徐々に上昇することで、耐衝撃性が低下するという問題があった。また、共役ジエン系ゴムであるポリブタジエンは紫外線により分解されやすいことから、ABS樹脂より得られる成形品は耐候性に劣るという欠点があった。
成形品の耐候性を改良するために、アクリル酸エステル系ゴムをゴム成分とするアクリレート−スチレン−アクリロニトリル共重合体(AAS樹脂)が使用されている。
しかし、AAS樹脂より得られる成形品は、ABS樹脂より得られる成形品に比べ一般的に耐衝撃性に劣る傾向にある。
耐衝撃性、耐候性および成形性に優れる熱可塑性樹脂組成物として、例えば特許文献1には、酸基含有ラテックスで肥大化した共役ジエン系ゴムと、アクリル酸エステル系ゴムとを複合化させた特殊AAS樹脂が開示されている。
特開平3−247612号公報
しかしながら、特許文献1に記載の特殊AAS樹脂より得られる成形品は、表面外観に対する近年の高い要求レベルを十分に満足するものではなかった。また、耐衝撃性および耐候性についても、必ずしも満足するものではなかった。
本発明は、耐衝撃性、耐候性、および表面外観に優れた成形品を得ることができ、かつ成形加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物の材料として好適なグラフト共重合体、および熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、グラフト共重合体に使用する共役ジエン系ゴムとして特定の方法で製造した共役ジエン系ゴムを用い、かつその平均粒子径と使用量を規定することで、上記の課題を解消できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
[1] 共役ジエン系ゴム4〜18質量%の存在下に、アルキル(メタ)アクリレート単量体82〜96質量%(ただし、共役ジエン系ゴムとアルキル(メタ)アクリレート単量体の合計を100質量%とする。)を重合して得られる複合ゴム状重合体30〜70質量%に、芳香族ビニル化合物単量体およびシアン化ビニル化合物単量体の少なくとも一方を含む単量体成分30〜70質量%(ただし、該単量体成分と複合ゴム状重合体の合計を100質量%とする。)をグラフト重合するグラフト共重合体の製造方法であって、前記共役ジエン系ゴムは、重合開始剤として10時間半減期温度が50〜80℃である過硫酸塩を用い、当該共役ジエン系ゴムを構成する成分を重合する重合工程と、重合工程の後にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加する工程と、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加した後に平均粒子径が150〜250nmとなるように肥大化する肥大化工程とを経て得られる、グラフト共重合体の製造方法
[2] 前記共役ジエン系ゴムとアルキル(メタ)アクリレート単量体の合計を100質量%としたときに、共役ジエン系ゴムの割合が6〜14質量%である、[1]に記載のグラフト共重合体の製造方法
[3] [1]または[2]に記載のグラフト共重合体の製造方法によりグラフト共重合体を得る工程を有する、熱可塑性樹脂組成物の製造方法
本発明のグラフト共重合体は、耐衝撃性、耐候性、および表面外観に優れた成形品を得ることができ、かつ成形加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物の材料として好適である。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性、耐候性、および表面外観に優れた成形品を得ることができ、かつ成形加工性に優れる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、以下の説明において、「成形品」とは、本発明のグラフト共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物を成形してなるものである。
「グラフト共重合体」
本発明のグラフト共重合体(E)は、共役ジエン系ゴム(a)の存在下に、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)を重合して得られる複合ゴム状重合体(c)に、芳香族ビニル化合物単量体およびシアン化ビニル化合物単量体の少なくとも一方を含む単量体成分(d)(以下、「(d)成分」ともいう。)をグラフト重合して得られる共重合体である。
<複合ゴム状重合体(c)>
複合ゴム状重合体(c)は、共役ジエン系ゴム(a)の存在下に、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)を重合して得られるものである。このようにして得られる複合ゴム状重合体(c)は、共役ジエン系ゴム(a)と、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)を主成分とするポリアルキル(メタ)アクリレート(b)とが複合した複合ゴムである。
ここで、「主成分」とは、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)に由来する単位を80質量%以上含むことである。
共役ジエン系ゴム(a)とアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)との重合は、架橋剤およびグラフト交叉剤の少なくとも一方(以下、これらを総称して「(b2)成分」ともいう。)の存在下で行うことが好ましい。(b2)成分の存在下で重合を行えば、成形品の発色性を改善できる。
(b2)成分の存在下で重合を行う場合、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)に由来する単位と、架橋剤に由来する単位およびグラフト交叉剤に由来する単位の少なくとも一方とを有するポリアルキル(メタ)アクリレート(b)と、共役ジエン系ゴム(a)とが複合した複合ゴム状重合体(c)が得られる。
(共役ジエン系ゴム(a))
共役ジエン系ゴム(a)は、ジエン成分(a1)を少なくとも構成成分とするゴム状重合体である。該ゴム状重合体は、ジエン成分(a1)と、該ジエン成分(a1)と共重合可能な他の単量体(a2)とを構成成分としてもよい。
ジエン成分(a1)としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
他の単量体(a2)としては、例えばアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物単量体;スチレン等の芳香族ビニル化合物単量体などが挙げられる。
共役ジエン系ゴム(a)としては、例えばポリブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、低温特性に優れている点で、ポリブタジエンゴムが好ましい。
共役ジエン系ゴム(a)は、10時間半減期温度が50〜80℃である過硫酸塩の存在下に、共役ジエン系ゴム(a)を構成する成分、すなわち、ジエン成分(a1)と必要に応じて他の単量体(a2)とを重合することによって、水等の重合溶媒に分散したラテックスの状態で得られる。
重合の方法としては特に制限されず、例えば乳化重合などが挙げられる。また、重合の際には、メルカプタン等の連鎖移動剤などを添加してもよい。
重合に用いる重合開始剤としては、10時間半減期温度が50〜80℃である過硫酸塩を用いる。10時間半減期温度が50℃未満の過硫酸塩では、重合初期に大量のラジカルが生じるため、重合後期に十分な量のラジカルが確保できずに未反応のジエン成分が残存してしまう。一方、10時間半減期温度が80℃を超える過硫酸塩では、乳化重合時の重合温度では重合開始剤としての機能が十分に得られない。
このような過硫酸塩としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどが挙げられる。これら過硫酸塩は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明においては、共役ジエン系ゴムを構成する成分を重合した後にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加して得られた共役ジエン系ゴム(a)を用いる。
重合後にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加して得られた共役ジエン系ゴム(a)を用いることで、成形品の耐衝撃性および耐候性が向上する。かかる理由は以下の通りである。
共役ジエン系ゴムを構成する成分を重合した後にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加すると、重合反応終了時の適正な架橋レベルが、時間が経過しても保持される。その結果、成形品の耐衝撃性および耐候性が向上すると考えられる。
なお、重合が完結する前の段階で反応系中にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートが存在していると、十分な架橋反応が進行せず、耐衝撃性および耐候性の向上効果が得られない。
共役ジエン系ゴム(a)の平均粒子径は、150〜250nmである。平均粒子径が150nm未満であると成形品の耐衝撃性が低下し、250nmを超えると成形品の表面外観および耐候性が低下する。
共役ジエン系ゴム(a)の平均粒子径は、レーザ回折・光散乱法により測定される体積基準の平均粒子径(体積平均粒子径)であり、ラテックスの状態で測定することができる。
共役ジエン系ゴム(a)の平均粒子径を制御する方法としては、重合に用いる乳化剤の種類または使用量、共役ジエン系ゴム(a)を構成する成分の種類または配合量、混練時に加えるせん断力、温度条件等を調整する方法が挙げられる。
また、シード重合により共役ジエン系ゴム(a)の平均粒子径を制御することも可能であるが、シード重合の場合は重合時間が長くなる傾向にある。よって、比較的粒子径が小さい(例えば30〜100nm程度)の共役ジエン系ゴム(a)のラテックスを予め製造し(重合工程)、肥大化操作によって目的の粒子径に肥大化させること(肥大化工程)が好ましい。なお、この場合のナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加するタイミングは、重合反応終了後である。
肥大化操作の方法としては特に制限されないが、酢酸等の酸性水溶液を添加することによる方法、酸基含有共重合体ラテックスを添加することによる方法などが挙げられる。
(アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1))
アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)としては、重合性不飽和基を1つ含むアルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、例えばアルキル基の炭素数が1〜12であるアルキル(メタ)アクリレート;フェニル基、ベンジル基などのベンゼン環を有する芳香族(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体的にはブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレートなどが挙げられる。
これらアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
((b2)成分)
(b2)成分は、架橋剤およびグラフト交叉剤の少なくとも一方である。
架橋剤としては、重合性不飽和基を2つ以上含む化合物を用いることが好ましく、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなどが挙げられる。
グラフト交叉剤としては、重合性不飽和基を2つ以上含む化合物を用いることが好ましく、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルイタコネートなどが挙げられる。
これら架橋剤およびグラフト交叉剤は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(複合ゴム状重合体(c)の製造)
複合ゴム状重合体(c)は、共役ジエン系ゴム(a)のラテックスにアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)を添加し、例えばシード重合することによって得られる。(b2)成分の存在下で重合を行う場合は、共役ジエン系ゴム(a)のラテックスにアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)と(b2)成分とを添加し、例えばシード重合すればよい。
なお、シード重合する際、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)や(b2)成分の全てが共役ジエン系ゴム(a)にシード重合した場合には、共役ジエン系ゴム(a)とポリアルキル(メタ)アクリレート(b)との複合ゴムのみが得られる。一方、シード重合する際の乳化剤などの安定剤の量が過剰な場合や、共役ジエン系ゴム(a)の粒子数が少ない場合などは、必ずしもアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)や(b2)成分の全てが共役ジエン系ゴム(a)にシード重合せず、一部単独のポリアルキル(メタ)アクリレート(b)を形成することもある。後者の場合に、ゴム成分として共役ジエン系ゴム(a)とポリアルキル(メタ)アクリレート(b)との複合ゴム、および単独のポリアルキル(メタ)アクリレート(b)の2種のゴム成分が、複合ゴム状重合体(c)中に存在することになる。従って、本発明においては、上記2種のゴム成分を用いて得られるグラフト共重合体(E)、および該グラフト共重合体(E)を含む熱可塑性樹脂組成物も包含するものとする。
シード重合を行う方法としては特に制限されないが、反応を安定して制御可能である乳化重合で行うことが好ましく、具体的には、随時重合させながらアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)と必要に応じて(b2)成分(以下、これらを総称して「単量体混合物(b’)」という。)を重合系に滴下する方法;予め単量体混合物(b’)を共役ジエン系ゴム(a)に含浸させた後にラジカル重合開始剤などを添加して重合させる方法;単量体混合物(b’)を含浸させた後重合させるという操作を、各段における単量体混合物(b’)の組成を変えながら何回か続けて行う方法などが挙げられる。また、シード重合の際には、重合系の安定性を向上させる目的で新たに乳化剤を加えることも可能である。
シード重合に用いるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、酸化剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられる。これらの中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄とエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩とロンガリッドとハイドロパーオキサイドとを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
シード重合に用いる乳化剤としては特に制限されないが、乳化重合時のラテックスの安定性が優れ、重合率を高められることから、サルコシン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸等の各種カルボン酸塩が好ましい。これらの中では、得られるグラフト共重合体(E)およびこれを含む熱可塑性樹脂組成物を高温成形した際にガス発生を抑制できることから、アルケニルコハク酸ジカリウムが好ましい。
共役ジエン系ゴム(a)の使用量は4〜18質量%であり、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)の使用量は82〜96質量%(ただし、共役ジエン系ゴム(a)とアルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)の合計を100質量%とする。)である。共役ジエン系ゴム(a)の使用量が4質量%未満であり、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)の使用量が96質量%超であると、成形品の耐衝撃性が低下する。一方、共役ジエン系ゴム(a)の使用量が18質量%超であり、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)の使用量が82質量%未満であると、成形品の耐候性が低下する。
耐衝撃性と耐候性のバランスを考慮すると、共役ジエン系ゴム(a)の使用量は6〜14質量%が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)の使用量は86〜94質量%が好ましい。
また、(b2)成分の存在下で重合を行う場合、(b2)成分の使用量は、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましく、0.2〜1質量部がさらに好ましい。
このようにして得られる複合ゴム状重合体(c)の粒子径分布については特に制限されないが、得られるグラフト共重合体(E)を含む熱可塑性樹脂組成物を高温成形して得られる成形体の耐衝撃性および光沢性がより向上することから、粒子径が100nm未満の粒子の割合が、5〜20質量%であることが好ましい。粒子径が100nm未満の粒子の割合が5質量%以上であれば成形品の耐衝撃性がより向上する傾向にあり、20質量%以下であれば成形品の光沢がより向上する傾向にある。
<グラフト共重合体(E)の製造方法>
本発明のグラフト共重合体(E)は、複合ゴム状重合体(c)に(d)成分をグラフト重合して得られる。
(d)成分は、芳香族ビニル化合物単量体およびシアン化ビニル化合物単量体の少なくとも一方を含む。
芳香族ビニル化合物単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ハロゲン化スチレンなどが挙げられる。これらの中でも、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
シアン化ビニル化合物単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、マレオニトリル、フマロニトリルなどが挙げられる。これらの中でも、アクリロニトリルが好ましい。
これら芳香族ビニル化合物単量体およびシアン化ビニル化合物単量体は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(d)成分には、芳香族ビニル化合物単量体およびシアン化ビニル化合物単量体と共重合可能な他の単量体が含まれていてもよい。
芳香族ビニル化合物単量体およびシアン化ビニル化合物単量体と共重合可能な他の単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート単量体、マレイミド系単量体、アミド系単量体などが挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、(ジ)ブロモフェニル(メタ)アクリレート、クロルフェニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
マレイミド系単量体としては、例えばN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどが挙げられる。
アミド系単量体としては、例えばアクリルアミド、メタクリルアミドなどが挙げられる。
これらアルキル(メタ)アクリレート単量体、マレイミド系単量体、アミド系単量体は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
グラフト重合を行う方法としては特に制限されないが、反応を安定して制御可能である乳化重合で行うことが好ましく、具体的には、複合ゴム状重合体(c)に(d)成分を一括して仕込んだ後に重合する方法;複合ゴム状重合体(c)に(d)成分の一部を先に仕込み、随時重合させながら残部を重合系に滴下する方法;複合ゴム状重合体(c)に(d)成分の全量を滴下しながら随時重合する方法などが挙げられ、これらを1段ないしは2段以上に分けて行うことができる。また、各段における(d)成分の種類や組成比を変えて行うことも可能である。
複合ゴム状重合体(c)の使用量は30〜70質量%であり、(d)成分の使用量は30〜70質量%(ただし、複合ゴム状重合体(c)と(d)成分との合計を100質量%とする。)である。複合ゴム状重合体(c)の使用量が30質量%未満であり、(d)成分の使用量が70質量%超であると、成形品の耐衝撃性が低下する。一方、複合ゴム状重合体(c)の使用量が70質量%超であり、(d)成分の使用量が30質量%未満であると、グラフト成分((d)成分)の割合が不足してゴム成分(複合ゴム状重合体(c))の分散状態が悪くなり、熱可塑性樹脂組成物の成形加工性や、成形品の耐衝撃性、耐候性、および表面外観が低下する。
また、グラフト重合に使用される(d)成分の組成比率は特に制限されないが、得られる熱可塑性樹脂組成物や成形品の物性バランスの観点から、芳香族ビニル化合物単量体の割合が60〜90質量%であり、シアン化ビニル化合物単量体の割合が10〜40質量%であり、これらと共重合可能な他の単量体の割合が0〜30質量%(ただし、各単量体の合計を100質量%とする。)であることが好ましい。
ラジカル重合に用いるラジカル重合開始剤および乳化剤としては、複合ゴム状重合体(c)の製造方法の説明において先に例示したラジカル重合開始剤および乳化剤などが挙げられる。
また、ラジカル重合を行う際には、得られるグラフト共重合体(E)の分子量やグラフト率を制御するため、各種公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
グラフト共重合体(E)は、通常、ラテックスの状態で得られる。グラフト共重合体(E)のラテックスからグラフト共重合体(E)を回収する方法としては、凝固剤を溶解させた熱水中にラテックスを投入して、凝析、固化することによって回収する方法(湿式法);加熱雰囲気中にラテックスを噴霧することによって、半直接的にグラフト共重合体(E)を回収する方法(スプレードライ法)などが挙げられる。
凝固剤としては、例えば硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸;塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩などが挙げられる。これらの中でも、グラフト共重合体(E)の生産性に優れ、かつ、得られるグラフト共重合体(E)およびこれを含む熱可塑性樹脂組成物の成形時における熱着色に優れることから無機酸が好ましい。
湿式法の場合、凝固剤を使用して固化させたグラフト共重合体(E)を、水または温水中に再分散させてスラリー状とし、グラフト共重合体(E)中に残存する乳化剤残渣を水中に溶出させ、洗浄することが好ましい。洗浄後、スラリーを脱水機等で脱水し、得られた固体を気流乾燥機等で乾燥することで、グラフト共重合体(E)が粒子状で得られる。
洗浄条件としては特に制限されないが、乾燥後のグラフト共重合体(E)100質量中に含まれる乳化剤残渣量が0.5〜2質量%の範囲となる条件で洗浄することが好ましい。グラフト共重合体(E)中の乳化剤残渣が0.5質量%以上であれば、得られるグラフト共重合体(E)およびこれを含む熱可塑性樹脂組成物の流動性がより向上する傾向にある。一方、グラフト共重合体(E)中の乳化剤残渣が2質量%以下であれば、熱可塑性樹脂組成物を高温成形した際にガス発生を抑制できる。
<作用効果>
以上説明した本発明のグラフト共重合体(E)は、上述した複合ゴム状重合体(c)に特定量の(d)成分をグラフト重合して得られるものである。複合ゴム状重合体(c)は、共役ジエン系ゴム(a)と、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)を主成分とするポリアルキル(メタ)アクリレート(b)とが複合化したものである。また、共役ジエン系ゴム(a)は、当該共役ジエン系ゴム(a)を構成する成分を重合した後にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加して得られたものであり、かつ平均粒子径が150〜250nmである。このような構成のグラフト共重合体(E)は、耐衝撃性、耐候性、および表面外観に優れた成形品を得ることができ、かつ成形加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物の材料として好適である。
「熱可塑性樹脂組成物」
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述した本発明のグラフト共重合体(E)を含有する。熱可塑性樹脂組成物はグラフト共重合体(E)のみで構成されていてもよいが、グラフト共重合体(E)以外の熱可塑性樹脂(他の熱可塑性樹脂(F))を含有することが好ましい。また、熱可塑性樹脂組成物は添加剤を含有していてもよい。
他の熱可塑性樹脂(F)としては、例えばアクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−ジエン−スチレン共重合体(AES樹脂)、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−ブタジエン(SBR)、水素添加SBS、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)等のスチレン系エラストマー、各種オレフィン系エラストマー、各種ポリエステル系エラストマー、ポリスチレン、メチルメタクリレート−スチレン共重合体(MS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、ポリアセタール樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、PPS樹脂、PES樹脂、PEEK樹脂、ポリアリレート、液晶ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン)などが挙げられる。
これら他の熱可塑性樹脂(F)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
添加剤としては、酸化防止剤や光安定剤等の各種安定剤、滑剤、可塑剤、離型剤、染料、顔料、帯電防止剤、無機充填剤などが挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物中のグラフト共重合体(E)の含有量は20〜60質量%であることが好ましく、他の熱可塑性樹脂(F)の含有量は40〜80質量%(ただし、グラフト共重合体(E)と他の熱可塑性樹脂(F)の合計を100質量%とする。)であることが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(E)と、他の熱可塑性樹脂(F)と、必要に応じて添加剤とをV型ブレンダやヘンシェルミキサー等により混合分散させ、これにより得られた混合物をスクリュー式押出機、バンバリーミキサ、加圧ニーダ、ミキシングロール等の溶融混練機等を用いて溶融混練することにより製造される。また、必要に応じてペレタイザー等を用いて溶融混練物をペレット化してもよい。
<作用効果>
以上説明した本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明のグラフト共重合体(E)を含有するので、耐衝撃性、耐候性、および表面外観に優れた成形品を得ることができ、かつ成形加工性に優れる。
「成形品」
本発明の成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を公知の成形方法によって成形してなるものであり、耐衝撃性、耐候性、および表面外観に優れる。
成形方法としては、例えば射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法等が挙げられる。
成形品の用途としては、車両外装部品、事務機器、家電、建材等が挙げられ、車両外装部品が好適である。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の例中の「%」および「部」は明記しない限りは質量基準である。
以下の実施例および比較例における各種測定および評価方法は、以下の通りである。
「測定・評価」
<共役ジエン系ゴムの平均粒子径の測定>
ナノトラック粒度分布計(日機装株式会社製、「UPA−EX150」)を用い、測定溶媒として純水を用いて、共役ジエン系ゴムラテックスの体積基準の平均粒子径を測定した。これを共役ジエン系ゴムの平均粒子径とする。
<成形加工性の評価>
株式会社東洋精機製作所製の「メルトインデクサーF−F01」を用い、ISO 1133に準拠し、220℃、10kg荷重でのメルトボリュームレート(MVR)を測定した。なお、MVRは熱可塑性樹脂組成物の成形加工性の指標であり、数値が高いほど、成形加工性に優れることを意味する。
<耐衝撃性の評価>
ISO 3167に準拠してペレット状の熱可塑性樹脂組成物から、射出成形機(東芝機械株式会社製、「IS55FP−1.5A」)によって試験片を作製した。この試験片のシャルピー衝撃強度をISO 179に準拠して、23℃雰囲気下で測定した。
<耐候性の評価>
スガ試験機株式会社製の「サンシャインスーパーロングライフウェザーメーターWEL−SUN−DCH型」を用い、63℃、サイクル条件;60分(降雨:12分)の環境下に成形品(100×100mm(厚み2mm))を1000時間暴露した。1000時間の暴露前後の成形品の変色の度合い(ΔE)を、色差計を用いて測定した。
<表面外観の測定>
スガ試験機株式会社製の「デジタル変角光沢計UGV−5D」を用い、JIS K 7105に準拠して、入射角60°、反射角60°における成形品(100×100mm(厚み2mm))の表面の反射率(%)を測定した。反射率が高いほど表面外観に優れることを意味する。
「共役ジエン系ゴム(a)」
<製造例1:共役ジエン系ゴム(a−1)の製造>
攪拌機を備えた耐圧容器に脱イオン水150部、1,3−ブタジエン100部、硬化脂肪酸カリ石鹸3.0部、有機スルホン酸ナトリウム0.3部、ターシャルドデシルメルカプタン0.2部、10時間半減期温度が71℃である過硫酸カリウム0.3部、及び水酸化カリウム0.14部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら温度を60℃に上げて重合を開始し、重合率65%のときに過硫酸カリウム0.1部を溶解した脱イオン水5部を上記耐圧容器に加えて重合温度を70℃に上げ、反応時間13時間、重合転化率90%で重合を完結した(重合工程)。その後、上記耐圧容器にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1部を添加し、ポリブタジエンラテックスを得た。得られたポリブタジエンラテックスは、平均粒子径が80nm、固形分が52.0%であった。
ついで、得られたポリブタジエンラテックスに酢酸1.75部を添加して肥大化を行い(肥大化工程)、平均粒子径200nmのポリブタジエンラテックスを得た。これを共役ジエン系ゴム(a−1)のラテックスとする。
<製造例2:共役ジエン系ゴム(a−2)の製造>
重合工程の後でナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加しなかった以外は、製造例1と同様にして、平均粒子径200nmのポリブタジエンラテックスを得た。これを共役ジエン系ゴム(a−2)のラテックスとする。
<製造例3:共役ジエン系ゴム(a−3)〜(a−6)の製造>
肥大化工程における酢酸の添加量を表1に示すように変更した以外は、製造例1と同様にして、表1に示す平均粒子径のポリブタジエンラテックスを得た。これらを共役ジエン系ゴム(a−3)〜(a−6)のラテックスとする。
Figure 0006341593
なお、表1中の「SFS」は、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートである。
また、表1および後述の表3〜6中の「SFSの添加の有無」は、共役ジエン系ゴム(a)の製造工程において、重合工程の後にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加したかどうかであり、添加した場合を「有り」とし、添加しなかった場合を「無し」とする。
「グラフト共重合体(E)」
<製造例4:グラフト共重合体(E−1)の製造>
20Lのセパラブルフラスコに、製造例1で得られた共役ジエン系ゴム(a−1)のラテックスを固形分換算で5部と蒸留水160部とを仕込んだ。これに、ブチルアクリレート45部と、アリルメタクリレート0.2部と、ブチレングリコールジメタクリレート0.1部と、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1部とからなる混合物を添加し、十分に攪拌した後、アルケニルコハク酸ジカリウム0.2部を添加し、系内を窒素置換して酸素を除去した。内温を60℃まで昇温させた時点で、ロンガリット0.25部と、硫酸第一鉄0.0002部と、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.0006部と、蒸留水3部とからなる混合物を投入した。重合開始後、内温が約70℃まで上昇した後、75℃で90分撹拌しながら保持してシード重合を行い、複合ゴム状重合体(c)を得た。
引き続き、アルケニルコハク酸ジカリウム0.6部と、ロンガリット0.2部と、蒸留水3部とからなる混合物を投入し、さらに、アクリロニトリル12.5部と、スチレン37.5部と、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.3部と、n−オクチルメルカプタン0.1部とからなる混合物を120分かけて滴下投入させてグラフト重合を行った。滴下終了後、さらに1時間攪拌保持して、グラフト重合反応を完結させた。かかる反応によって得られた重合体に酸化防止剤を添加し、グラフト共重合体(E−1)のラテックスを得た。
得られたグラフト共重合体(E−1)のラテックスを液温50℃の希硫酸水溶液に投入し、その後30分かけて90℃まで昇温し凝固させた後、脱水、洗浄、乾燥させて、粉末状のグラフト共重合体(E−1)を得た。
<製造例5:グラフト共重合体(E−2)〜(E−16)の製造>
共役ジエン系ゴムのラテックスの種類および量、ブチルアクリレート、アクリロニトリル、およびスチレンの量を表2に示すように変更した以外は、製造例4と同様にしてグラフト共重合体(E−2)〜(E−16)を得た。
Figure 0006341593
「他の熱可塑性樹脂(F)」
<製造例6:他の熱可塑性樹脂(F−1)の製造>
アクリロニトリル27部およびスチレン73部を公知の懸濁重合により重合し、N,N−ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.61dl/gであるアクリロニトリル−スチレン共重合体を得た。これを他の熱可塑性樹脂(F−1)とする。
<他の熱可塑性樹脂(F−2)>
ジヒドロキシ化合物としてビスフェノールAを構成単位とする、三菱エンジニアリングプラスチック株式会社製の「ユーピロンS2000F」を、他の熱可塑性樹脂(F−2)として用いた。
<他の熱可塑性樹脂(F−3)>
他の熱可塑性樹脂(F−3)として、三菱レイヨン株式会社製の「タフペットPBTN1100」を用いた。
「実施例1〜13、比較例1〜7」
表3〜6に示す量のグラフト共重合体(E)および他の熱可塑性樹脂(F)と、エチレンビスステアリルアミド1部と、シリコーンオイルSH200(東レ・ダウコーニング株式会社製)0.2部と、アデカスタブAO−60(株式会社ADEKA製)0.2部と、アデカスタブLA−57(株式会社ADEKA製)0.4部とをヘンシェルミキサーを用いて混合した。スクリュー式押出機(株式会社日本製鋼所製、「TEX−30α型二軸押出機」)を用いて、得られた混合物を230℃にて溶融混練した後、ペレタイザーにてペレット化した熱可塑性樹脂組成物を得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物について成形加工性を評価した。結果を表3〜6に示す。また、得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて成形品を作製し、耐衝撃性、耐候性、および表面外観を評価した。これらの結果を表3〜6に示す。
Figure 0006341593
Figure 0006341593
Figure 0006341593
Figure 0006341593
表3〜6中の「(a)の平均粒子径」は、グラフト共重合体(E)の製造に用いた複合ゴム状重合体(c)に含まれる共役ジエン系ゴム(a)の平均粒子径である。
「(a):(b1)」は、グラフト共重合体(E)の製造に用いた複合ゴム状重合体(c)に含まれる共役ジエン系ゴム(a)とブチルアクリレートとの合計を100質量%とした場合の、共役ジエン系ゴム(a)とブチルアクリレートの使用量(質量%)の比率である。
「(c):(d)」は、グラフト共重合体(E)の製造に用いた複合ゴム状重合体(c)と(d)成分(アクリロニトリルおよびスチレン)との合計を100質量%とした場合の、複合ゴム状重合体(c)と(d)成分の使用量(質量%)の比率である。
表3〜6に示すように、各実施例で得られた熱可塑性樹脂組成物は成形加工性に優れていた。また、各実施例で得られた熱可塑性樹脂組成物からは、耐衝撃性、耐候性、および表面外観に優れた成形品が得られた。
一方、比較例1〜7の場合、熱可塑性樹脂組成物の成形加工性、成形品の耐衝撃性、耐候性、表面外観のいずれかの項目において劣るものであった。
具体的には、比較例1の場合、共役ジエン系ゴム(a)の平均粒子径が100nmであったため、耐衝撃性に劣っていた。
比較例2の場合、共役ジエン系ゴム(a)の平均粒子径が300nmであったため、耐候性および表面外観に劣っていた。
比較例3の場合、共役ジエン系ゴム(a)の製造において重合工程の後にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加しなかったため、耐衝撃性および耐候性に劣っていた。
比較例4の場合、共役ジエン系ゴム(a)の量が2質量%であり、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)の量が98質量%であったため、耐衝撃性に劣っていた。
比較例5の場合、共役ジエン系ゴム(a)の量が20質量%であり、アルキル(メタ)アクリレート単量体(b1)の量が80質量%であったため、耐候性に劣っていた。
比較例6の場合、複合ゴム状重合体(c)の量が20質量%、(d)成分の量が80質量%であったため、耐衝撃性に劣っていた。
比較例7の場合、複合ゴム状重合体(c)の量が80質量%、(d)成分の量が20質量%であったため、成形加工性、耐衝撃性、耐候性、および表面外観の全てに劣っていた。
本発明によれば、耐衝撃性、耐候性、および表面外観に優れた成形品を得ることができ、かつ成形加工性に優れた熱可塑性樹脂組成物の材料として好適なグラフト共重合体、および該グラフト共重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。特に成形品の耐衝撃性、耐候性、および表面外観のバランスは、従来の熱可塑性樹脂組成物を成形した成形品では得られない非常に高いレベルであり、車両用外装部品、OA機器、電気・電子機器等、各種工業用材料としての利用価値は極めて高い。

Claims (3)

  1. 共役ジエン系ゴム4〜18質量%の存在下に、アルキル(メタ)アクリレート単量体82〜96質量%(ただし、共役ジエン系ゴムとアルキル(メタ)アクリレート単量体の合計を100質量%とする。)を重合して得られる複合ゴム状重合体30〜70質量%に、芳香族ビニル化合物単量体およびシアン化ビニル化合物単量体の少なくとも一方を含む単量体成分30〜70質量%(ただし、該単量体成分と複合ゴム状重合体の合計を100質量%とする。)をグラフト重合するグラフト共重合体の製造方法であって、
    前記共役ジエン系ゴムは、重合開始剤として10時間半減期温度が50〜80℃である過硫酸塩を用い、当該共役ジエン系ゴムを構成する成分を重合する重合工程と、重合工程の後にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加する工程と、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートを添加した後に平均粒子径が150〜250nmとなるように肥大化する肥大化工程とを経て得られる、グラフト共重合体の製造方法
  2. 前記共役ジエン系ゴムとアルキル(メタ)アクリレート単量体の合計を100質量%としたときに、共役ジエン系ゴムの割合が6〜14質量%である、請求項1に記載のグラフト共重合体の製造方法
  3. 請求項1または2に記載のグラフト共重合体の製造方法によりグラフト共重合体を得る工程を有する、熱可塑性樹脂組成物の製造方法
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