JP5453512B2 - グラフト共重合体及び熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、耐候性だけでなく、耐衝撃性、及び発色性に優れた熱可塑性樹脂組成物を構成するグラフト共重合体及び該グラフト共重合体から得られた熱可塑性樹脂組成物に関する。
ABS樹脂は、耐衝撃性及び加工性のバランスに優れた樹脂であり、自動車等の車両用内外装部品、各種の家電製品やOA機器のハウジング、その他雑貨分野等、幅広い分野に使用されている。しかし、ABS樹脂は、そのゴム成分として使用するブタジエン系ゴム重合体が紫外線等により分解され易いことから、耐候性に劣るという欠点を有している。そこで、ABS樹脂中のゴム成分をアクリルゴムに置換することで耐候性を改良した、ASA樹脂が実用化されている。しかし、ASA樹脂は耐候性に優れているものの、その反面、耐衝撃性、発色性に劣るという欠点を有している。
特許文献1には耐衝撃性、耐候性、成形加工性が改良された熱可塑性樹脂組成物として、特定の分子量を有するジエン系ゴムとアクリル酸エステル系重合体とで構成される複合ゴムを用いた熱可塑性樹脂組成物が提案されている。しかし、発色性が不十分であるという問題がある。
また、特許文献2には耐熱性、耐候性、成形加工性、さらには成形品の表面外観が改良された熱可塑性樹脂組成物として、共役ジエン系ゴム状重合体とアクリル酸エステル系ゴム状重合体からなる複合ゴムを使用したグラフト共重合体とマレイミド系共重合体から構成される熱可塑性樹脂組成物が提案されている。しかし、発色性が不十分であるという問題がある。
特開平10−77383号
特開平8−73701号
本発明の目的は耐候性だけでなく、耐衝撃性、及び発色性に優れた熱可塑性樹脂組成物を構成するグラフト共重合体及び該グラフト共重合体から得られた熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、従来技術の問題点を解決するために鋭意検討した結果、特定のゴム形態を有する複合ゴムに、シアン化ビニル系単量体、芳香族ビニル系単量体等の単量体混合物を重合して得られるグラフト共重合体を用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は共役ジエン系ゴム状重合体5〜50重量%と架橋アクリル酸エステル系重合体50〜95重量%から構成される複合ゴム10〜80重量部に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体から選ばれた少なくとも一種の単量体20〜90重量部をグラフト重合して得られるグラフト共重合体(A)であって、複合ゴムは多層構造を有しており、内層が共役ジエン系ゴム状重合体もしくは共役ジエン系ゴム状重合体と架橋アクリル酸エステル系重合体を主成分とし、外層が架橋アクリル酸エステル系重合体を主成分とするだけでなく、内層は重量平均粒子径が50〜300nmである共役ジエン系ゴム状重合体を2個以上内包し、外層の平均厚さが5〜100nmであることを特徴とするグラフト共重合体(A)及び該グラフト共重合体(A)から得られた熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
本発明により耐候性だけでなく、耐衝撃性、及び発色性に優れた熱可塑性樹脂組成物を構成するグラフト共重合体(A)及び該グラフト共重合体(A)から得られた熱可塑性樹脂組成物を提供することが出来る。
複合ゴム(a−1)の電子顕微鏡写真のイメージ図である。
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のグラフト共重合体(A)は、共役ジエン系ゴム状重合体と架橋アクリル酸エステル系重合体を主成分とする複合ゴムの存在下に芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体から選ばれた少なくとも一種の単量体をグラフト重合して得られた、グラフト共重合体である。
本発明で使用される複合ゴムは、共役ジエン系ゴム状重合体ラテックスの存在下で、架橋アクリル酸エステル系重合体を構成する単量体(混合物)を乳化重合することによって得ることができる。
本発明で使用される複合ゴムを構成する共役ジエン系ゴム状重合体としては、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ブロックコポリマー、スチレン−(エチレン−ブタジエン)−スチレン(SEBS)ブロックコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、メチルメタクリレート−ブタジエンゴムが挙げられる。特に、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムが好ましい。
本発明で使用される共役ジエン系ゴム状重合体は重量平均粒子径が50〜300nmの共役ジエン系ゴム状重合体を凝集肥大化させることで重量平均粒子径を150〜800nmとした共役ジエン系ゴム状重合体を用いる事が好ましく、重量平均粒子径が200〜600nmである凝集肥大化した共役ジエン系ゴム状重合体を用いる事が特に好ましい。
本発明で使用される複合ゴムを構成する架橋アクリル酸エステル系重合体は、架橋剤の存在下にアルキル基の炭素数が1〜16のアクリル酸エステル系単量体、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等を一種又は二種以上、さらには必要に応じて他の共重合可能な単量体、例えばスチレン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル等を一種又は二種以上を重合して得られる重合体である。
架橋アクリル酸エステル系重合体に用いられる架橋剤としては、例えばジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
本発明で使用される複合ゴムを構成する、共役ジエン系ゴム状重合体と架橋アクリル酸エステル系重合体の比率は、共役ジエン系ゴム状重合体5〜50重量%、架橋アクリル酸エステル系重合体50〜95重量%であることが必要であるが、耐候性、耐衝撃性、発色性とのバランスの観点から共役ジエン系ゴム状重合体が7〜40重量%、架橋アクリル酸エステル系重合体が60〜93重量%であることが好ましく、共役ジエン系ゴム状重合体が10〜30重量%、架橋アクリル酸エステル系重合体70〜90重量%であることがより好ましい。
本発明で使用される複合ゴムは多層構造を有しているが、コア層とシェル層を有するいわゆるコアシェル構造である場合はコア層が内層に該当し、シェル層が外層に該当する。一方、層構造が3層以上である場合は、共役ジエン系ゴム状重合体を主成分とする内層以外の層を外層とする。
本発明で使用される複合ゴムは、内層は共役ジエン系ゴム状重合体もしくは共役ジエン系ゴム状重合体と架橋アクリル酸エステル系重合体を主成分とし、外層は架橋アクリル酸エステル系重合体を主成分としている。さらに、複合ゴムは、内層は重量平均粒子径が50〜300nmである共役ジエン系ゴム状重合体を2個以上内包し、外層の平均厚さが5〜100nmであることを特徴とする。
内層が共役ジエン系ゴム状重合体の単独粒子を主成分としている場合、もしくは2個以上共役ジエン系ゴム状重合体粒子を内包していても、重量平均粒子径が50〜300nmの範囲から外れる場合は耐衝撃性と発色性などの物性バランスに劣る。共役ジエン系ゴム状重合体の重量平均粒子径は70〜200nmであることが好ましく、80〜150nmであることがより好ましい。また、架橋アクリル酸エステル系重合体を主成分とする外層の平均厚さが5nm未満の場合は、共役ジエン系ゴム状重合体部分が紫外線等により分解され易いことから、耐候性が劣り、100nmを超える場合は、発色性が劣る結果となる。外層の平均厚さは7〜80nmであることが好ましく、10〜70nmであることがより好ましい。
架橋アクリル酸エステル系重合体を主成分とする外層の厚さは、共役ジエン系ゴム状重合体にアクリル酸エステル系単量体を乳化重合する際に、共役ジエン系ゴム状重合体粒子中のアクリル酸エステル系単量体の膨潤度を変化させたり、重合途中で重合開始剤を水溶性のものから油溶性のものに置換したり、又は重合途中で開始剤濃度を変化させることで適宜調製することが可能である。具体的には重合初期にアクリル酸エステル系単量体の添加量を多くして共役ジエン系ゴム状重合体粒子に含浸させる方法や、2段重合法において、1段目重合時に油溶性開始剤を使用し、2段目重合時に水溶性開始剤に変更させる方法や、1段目と2段目重合時との開始剤濃度を変更するなどの方法が有効的である。
上述の複合ゴムを重合する際、使用する重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤、クメンハイドロパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等の油溶性重合開始剤を適宜用いることができる。さらに、本発明において好ましく用いられる還元剤の具体例としては、硫酸第一鉄7水塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、ピロ亜硫酸塩、亜ニチオン酸塩、ニチオン酸塩、チオ硫酸塩、ホルムアルデヒドスルホン酸塩、ベンズアルデヒドスルホン酸塩、また、L−アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸などのカルボン酸類、更にはラクトース、デキストロース、サッカロースなどの還元糖類、更にはジメチルアニリン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。またキレート剤としては、ピロリン酸四ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
本発明のグラフト共重合体(A)は、上述の複合ゴムの存在下に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体から選ばれた少なくとも一種の単量体をグラフト重合して得られるグラフト共重合体である。
本発明のグラフト共重合体(A)は該グラフト共重合体(A)100重量部中に複合ゴムが10〜80重量部含まれている必要がある。複合ゴムが10重量部より少ないと耐衝撃性に劣る。また、80重量部を超えると発色性に劣る。グラフト共重合体(A)中の複合ゴムの含有量は30〜70重量部であることが好ましく、40〜60重量部であることがより好ましい。
グラフト共重合体(A)を構成する芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
グラフト共重合体(A)を構成するシアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フマロニトリル等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。特にアクリロニトリルが好ましい。
共重合可能な他のビニル系単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、マレイミド系単量体、アミド系単量体等が挙げられ、一種又は二種以上用いることができる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸4−t−ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸(ジ)ブロモフェニル、(メタ)アクリル酸クロルフェニル等を例示でき、マレイミド系単量体としてはN−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等を例示でき、アミド系単量体としてはアクリルアミド、メタクリルアミド等を例示できる。
複合ゴムとグラフト重合する、上述の単量体の組成比率に特に制限はないが、芳香族ビニル系単量体60〜90重量%、シアン化ビニル系単量体10〜40重量%及び共重合可能な他のビニル系単量体0〜30重量%の組成比率、芳香族ビニル系単量体30〜80重量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体20〜70重量%及び共重合可能な他のビニル系単量体0〜50重量%の組成比率、芳香族ビニル系単量体20〜70重量%、(メタ)アクリル酸エステル系単量体20〜70重量%、シアン化ビニル系単量体10〜60重量%及び共重合可能な他のビニル系単量体0〜30重量%の組成比率等であることが好ましい。
本発明のグラフト共重合体(A)を重合するための手法に特に制限はなく、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法等を用いることが出来る。乳化重合法を用いた場合、上述の複合ゴムに上述の単量体をグラフト重合することによって、グラフト共重合体(A)のラテックスを得ることが出来る。グラフト共重合体(A)のラテックスは、公知の方法により凝固され、洗浄、脱水、乾燥工程を経ることでグラフト共重合体(A)のパウダーを得ることができる。
本発明のグラフト共重合体(A)のグラフト率(グラフト共重合体のアセトン可溶分量と不溶分量及びグラフト共重合体中の複合ゴムの重量から求める。)、及びアセトン可溶分の還元粘度(0.4g/100cc、N,Nジメチルホルムアミド溶液として30℃で測定)に特に制限はなく、要求性能によって任意の構造のものを使用することができるが、物性バランスの観点から、グラフト率は10〜130%であることが好ましく、還元粘度は0.2〜2.0dl/gであることが好ましい。
また、得られたグラフト共重合体(A)は単独で使用できるが、必要に応じて芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、必要に応じてその他の共重合可能な他のビニル系単量体を共重合することで得られる共重合体(B)と混合し、熱可塑性樹脂組成物として使用することもできる。共重合体(B)と混合する場合は熱可塑性樹脂組成物中の複合ゴム含有量が5〜50重量%とすることが物性バランスの観点から好ましく、10〜30重量%とすることがより好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じてヒンダードアミン系の光安定剤、ヒンダードフェノール系、含硫黄有機化合物系、含リン有機化合物系等の酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系等の熱安定剤、ベンゾエート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系の紫外線吸収剤、有機ニッケル系、高級脂肪酸アミド類等の滑剤、リン酸エステル類等の可塑剤、ポリブロモフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A、臭素化エポキシオリゴマー、臭素化等の含ハロゲン系化合物、リン系化合物、三酸化アンチモン等の難燃剤・難燃助剤、臭気マスキング剤、カーボンブラック、酸化チタン、顔料、及び染料等を添加することもできる。更に、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、金属繊維等の補強剤や充填剤を添加することもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述の成分を混合することで得ることができる。混合するために、例えば、押出し機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の公知の混練装置を用いることができる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、実施例中にて示す「部」及び「%」は重量に基づくものである。
表1に示す複合ゴムを用いてグラフト共重合体(A)を作成した。表1で示す各成分は以下の通りである。
共役ジエン系ゴム状重合体ラテックスの製造
小粒子径スチレン−ブタジエンゴムラテックスの製造
10リットルの耐圧容器の内部を窒素で置換後、1,3−ブタジエン97重量部、スチレン3重量部、n−ドデシルメルカプタン0.45重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、不均化ロジン酸ナトリウム1.85重量部、水酸化ナトリウム0.1重量部、脱イオン水155重量部を仕込み、攪拌しつつ70℃で8時間反応させた。その後、不均化ロジン酸ナトリウム0.21重量部、水酸化ナトリウム0.1重量部及び脱イオン水5重量部を添加した。さらに温度を70℃に維持しながら6時間攪拌を継続して反応を終了した。その後、減圧して残存している1,3−ブタジエンを除去し、スチレン−ブタジエンゴムラテックスを得た。得られたスチレン−ブタジエンゴムラテックスを、四酸化オスミウム(OsO)で染色し、乾燥後に透過型電子顕微鏡で写真撮影した。画像解析処理装置(装置名:旭化成(株)製 IP−1000PC)を用いて800個のゴム粒子の面積を計測し、その円相当径(直径)を求め、スチレン−ブタジエンゴムの重量平均粒子径を算出した結果、重量平均粒子径は105nmであった。
凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(1)の製造
10リットルの耐圧容器に、重合水185重量部、小粒子径スチレン−ブタジエンゴムラテックス100重量部(固形分)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.02重量部を添加して10分間攪拌混合した後、5%リン酸水溶液20重量部を10分間にわたり添加した。次いで10%水酸化カリウム水溶液10重量部を添加し、凝集肥大化したスチレン−ブタジエンゴムラテックス(1)を得た。
上述の方法で、凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムの重量平均粒子径を算出した結果、重量平均粒子径は450nmであった。
凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(2)の製造
10リットルの耐圧容器に、重合水185重量部、小粒子径スチレン−ブタジエンゴムラテックス100重量部(固形分)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.05重量部を添加して10分間攪拌混合した後、5%リン酸水溶液20重量部を10分間にわたり添加した。次いで10%水酸化カリウム水溶液10重量部を添加し、凝集肥大化したスチレン−ブタジエンゴムラテックス(2)を得た。
上述の方法で、凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムの重量平均粒子径を算出した結果、重量平均粒子径は233nmであった。
非凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(3)の製造
10リットルの耐圧容器の内部を窒素で置換後、1,3−ブタジエン90重量部、スチレン10重量部、n−ドデシルメルカプタン0.3重量部、過硫酸カリウム0.31重量部、不均化ロジン酸ナトリウム0.20重量部、水酸化ナトリウム0.10重量部、脱イオン水73重量部を仕込み、攪拌しつつ65℃で反応させた。10時間目、20時間目、30時間目、40時間目にそれぞれ不均化ロジン酸ナトリウム0.35重量部、水酸化ナトリウム0.10重量部及び脱イオン水7.5重量部を添加し45時間反応させた。その後、不均化ロジン酸ナトリウム0.2重量部、水酸化ナトリウム0.1重量部及び脱イオン水5重量部を添加した。さらに温度を70℃に維持しながら7時間攪拌を継続して反応を終了した。その後、減圧して残存している1,3−ブタジエンを除去し、スチレン−ブタジエンゴムラテックス(3)を得た。上述の方法で、重量平均粒子径を算出した結果、重量平均粒子径は420nmであった。
複合ゴムの製造
複合ゴムラテックス(a−1)の製造
10Lのガラスリアクターに、上記の凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(1)を20重量部(固形分)、脱イオン水を100重量部仕込み、窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し45℃に到達したところで脱イオン水20重量部にラクトース0.3重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.08重量部及び硫酸第1鉄・7水和物0.001重量部を溶解した水溶液を添加した。さらに、アクリル酸ブチル30重量部、メタクリル酸アリル0.1重量部を添加した。槽内の温度が48℃に到達した後、そのまま1時間保持した。さらに1段目重合として槽内の温度が50℃に到達した後、クメンハイドロパーオキサイド0.2重量部を一括添加し、脱イオン水20重量部にアルケニルコハク酸ジカリウム0.9重量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.08重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル30重量部、メタクリル酸アリル0.05重量部を2時間かけて連続的に滴下した。滴下後、1時間保持して、1段目重合を終了した。さらに2段目重合として槽内の温度が65℃に到達した後、ホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.04重量部を一括添加し、脱イオン水20重量部に過硫酸カリウム0.4重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル20重量部、メタクリル酸アリル0.05重量部を4時間かけて連続的に滴下した。滴下後、転化率が97%以上のところで重合を終了した。凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴム(1)と架橋アクリル酸ブチル重合体から構成される複合ゴムラテックス(a−1)を得た。
複合ゴム(a−1)の外層の厚さの計測は、以下に記載する方法で行った。表2の実施例1に示す組成割合を有する熱可塑性樹脂組成物のペレットを、クライオミクロトームを用いて−85℃の低温で切り出すことで、超薄切片を得た。得られた超薄切片を四酸化ルテニウム(RuO)で染色し、透過電子顕微鏡(JEM−1400:日本電子製)を用いて観察及び写真撮影した。得られた写真は複合ゴム粒子の外層と内層の境界線が濃い色で表されるため、画像解析装置(旭化成 IP−1000PC)を用いて、個々の複合ゴム粒子について、外層を含む面積の計測から、複合ゴム粒子の円相当径(半径)を求め、更に外層を除く内層部分についても、同様に円相当径(半径)を求めた。両者の差が外層の厚さを示すことになる。本発明でいう外層の平均厚さは、複合ゴム粒子15個以上について測定した平均値である。画像解析を行った結果、複合ゴム(a−1)の外層の平均厚さは48nmであった。
複合ゴムラテックス(a−2)の製造
10Lのガラスリアクターに、上記の凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(1)を20重量部(固形分)、脱イオン水を100重量部仕込み、窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し45℃に到達したところで脱イオン水20重量部にラクトース0.35重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.09重量部及び硫酸第1鉄・7水和物0.003重量部、β‐ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩0.001重量部を溶解した水溶液を添加した。さらに、アクリル酸ブチル20重量部、メタクリル酸アリル0.1重量部を添加した。槽内の温度が48℃に到達した後、そのまま0.5時間保持した。さらに1段目重合として槽内の温度が50℃に到達した後、クメンハイドロパーオキサイド0.15重量部を一括添加し、脱イオン水20重量部にアルケニルコハク酸ジカリウム0.9重量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.08重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル25重量部、メタクリル酸アリル0.1重量部を2時間かけて連続的に滴下した。滴下後、1時間保持して、1段目重合を終了した。さらに2段目重合として槽内の温度が65℃に到達した後、ホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.05重量部を一括添加し、脱イオン水20重量部に過硫酸カリウム0.5重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル35重量部、メタクリル酸アリル0.15重量部を4時間かけて連続的に滴下した。滴下後、転化率が97%以上のところで重合を終了した。凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴム(1)と架橋アクリル酸ブチル重合体から構成される複合ゴムラテックス(a−2)を得た。表2の実施例4に示す組成割合を有する熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いた以外は、複合ゴム(a−1)と同様の方法で外層の平均厚さを求めた。外層の平均厚さは82nmであった。
複合ゴムラテックス(a−3)の製造
10Lのガラスリアクターに、上記の凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(1)を48重量部(固形分)、脱イオン水を100重量部仕込み、窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し45℃に到達したところで脱イオン水20重量部にラクトース0.35重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.09重量部及び硫酸第1鉄・7水和物0.003重量部を溶解した水溶液を添加した。さらに、アクリル酸ブチル22重量部、メタクリル酸アリル0.05重量部を添加した。槽内の温度が48℃に到達した後、そのまま1時間保持した。さらに1段目重合として槽内の温度が52℃に到達した後、クメンハイドロパーオキサイド0.15重量部を一括添加し、脱イオン水19重量部にアルケニルコハク酸ジカリウム0.45重量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.08重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル20重量部、メタクリル酸アリル0.05重量部を2時間かけて連続的に滴下した。滴下後、1時間保持して、1段目重合を終了した。さらに2段目重合として槽内の温度が65℃に到達した後、ホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.02重量部を一括添加し、脱イオン水20重量部にt−ブチルハイドロパーオキサイド0.1重量部、アルケニルコハク酸ジカリウム0.25重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル10重量部、メタクリル酸アリル0.01重量部を5時間かけて連続的に滴下した。滴下後、転化率が97%以上のところで重合を終了した。凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴム(1)と架橋アクリル酸ブチル重合体から構成される複合ゴムラテックス(a−3)を得た。表2の実施例5に示す組成割合を有する熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いた以外は、複合ゴム(a−1)と同様の方法で外層の平均厚さを求めた。外層の平均厚さは10nmであった。
複合ゴムラテックス(a−4)の製造
10Lのガラスリアクターに、上記の凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(2)を20重量部(固形分)、脱イオン水を100重量部仕込み、窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し45℃に到達したところで脱イオン水20重量部にラクトース0.3重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.08重量部及び硫酸第1鉄・7水和物0.001重量部を溶解した水溶液を添加した。さらに、アクリル酸ブチル30重量部、メタクリル酸アリル0.1重量部を添加した。槽内の温度が48℃に到達した後、そのまま1時間保持した。さらに1段目重合として槽内の温度が50℃に到達した後、クメンハイドロパーオキサイド0.2重量部を一括添加し、脱イオン水20重量部にアルケニルコハク酸ジカリウム0.55重量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.08重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル30重量部、メタクリル酸アリル0.05重量部を2時間かけて連続的に滴下した。滴下後、1時間保持して、1段目重合を終了した。さらに2段目重合として槽内の温度が65℃に到達した後、ホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.04重量部を一括添加し、脱イオン水20重量部にt−ブチルハイドロパーオキサイド0.25重量部、アルケニルコハク酸ジカリウム0.35重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル20重量部、メタクリル酸アリル0.05重量部を4時間かけて連続的に滴下した。滴下後、転化率が97%以上のところで重合を終了した。凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴム(2)と架橋アクリル酸ブチル重合体から構成される複合ゴムラテックス(a−4)を得た。表2の実施例6に示す組成割合を有する熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いた以外は、複合ゴム(a−1)と同様の方法で外層の平均厚さを求めた。外層の平均厚さは33nmであった。
複合ゴムラテックス(a−5)の製造
10Lのガラスリアクターに、上記の凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(1)を20重量部(固形分)、脱イオン水を100重量部仕込み、窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し45℃に到達したところで脱イオン水20重量部にラクトース0.3重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.08重量部及び硫酸第1鉄・7水和物0.001重量部を溶解した水溶液を添加した。さらに、アクリル酸ブチル30重量部、メタクリル酸アリル0.1重量部を添加した。槽内の温度が48℃に到達した後、そのまま1時間保持した。さらに1段目重合として槽内の温度が50℃に到達した後、過硫酸カリウム0.2重量部を一括添加し、脱イオン水20重量部にアルケニルコハク酸ジカリウム0.9重量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.08重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル30重量部、メタクリル酸アリル0.05重量部を2時間かけて連続的に滴下した。滴下後、1時間保持して、1段目重合を終了した。さらに2段目重合として槽内の温度が65℃に到達した後、ホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.04重量部を一括添加し、脱イオン水20重量部に過硫酸カリウム0.65重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル20重量部、メタクリル酸アリル0.05重量部を4時間かけて連続的に滴下した。滴下後、転化率が97%以上のところで重合を終了した。凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴム(1)と架橋アクリル酸ブチル重合体から構成される複合ゴムラテックス(a−5)を得た。表2の実施例7に示す組成割合を有する熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いた以外は、複合ゴム(a−1)と同様の方法で外層の平均厚さを求めた。外層の平均厚さは61nmであった。
複合ゴムラテックス(a−6)の製造
凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(1)を非凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(3)に変更した以外は、複合ゴムラテックス(a−1)を得る重合方法と同様にして複合ゴムラテックス(a−6)を得た。表2の比較例1に示す組成割合を有する熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いた以外は、複合ゴム(a−1)と同様の方法で外層の平均厚さを求めた。外層の平均厚さは44nmであった。
複合ゴムラテックス(a−7)の製造
10Lのガラスリアクターに、上記の凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(1)を20重量部(固形分)、脱イオン水を110重量部仕込み、窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し45℃に到達したところで脱イオン水20重量部にラクトース0.3重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.08重量部及び硫酸第1鉄・7水和物0.001重量部を溶解した水溶液を添加した。さらに、アクリル酸ブチル50重量部、メタクリル酸アリル0.1重量部を添加した。槽内の温度が48℃に到達した後、そのまま2時間保持した。さらに1段目重合として槽内の温度が48℃で、クメンハイドロパーオキサイド0.4重量部を一括添加し、脱イオン水20重量部にアルケニルコハク酸ジカリウム0.8重量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.1重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル27重量部、メタクリル酸アリル0.1重量部を6時間かけて連続的に滴下した。滴下後、3時間保持して、1段目重合を終了した。さらに2段目重合として槽内の温度が65℃に到達した後、クメンハイドロパーオキサイド0.4重量部を一括添加し、脱イオン水10重量部にホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.025重量部、アルケニルコハク酸ジカリウム0.1重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル3重量部を0.5時間かけて連続的に滴下した。滴下後、転化率が97%以上のところで重合を終了した。凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴム(1)と架橋アクリル酸ブチル重合体から構成される複合ゴムラテックス(a−7)を得た。表2の比較例2に示す組成割合を有する熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いた以外は、複合ゴム(a−1)と同様の方法で外層の平均厚さを求めた。外層の平均厚さは4nmであった。
複合ゴムラテックス(a−8)の製造
10Lのガラスリアクターに、上記の凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(1)を20重量部(固形分)、脱イオン水を100重量部仕込み、窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し45℃に到達したところで脱イオン水20重量部にラクトース0.3重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.08重量部及び硫酸第1鉄・7水和物0.001重量部を溶解した水溶液を添加した。さらに、アクリル酸ブチル3重量部、メタクリル酸アリル0.05重量部を添加した。槽内の温度が48℃に到達した後、そのまま0.1時間保持した。さらに1段目重合として槽内の温度が50℃に到達した後、過硫酸カリウム0.2重量部を一括添加し、脱イオン水20重量部にアルケニルコハク酸ジカリウム0.9重量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.08重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル30重量部、メタクリル酸アリル0.05重量部を2時間かけて連続的に滴下した。滴下後、1時間保持して、1段目重合を終了した。さらに2段目重合として槽内の温度が65℃に到達した後、ホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.05重量部を一括添加し、脱イオン水20重量部に過硫酸カリウム0.65重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル47重量部、メタクリル酸アリル0.15重量部を4時間かけて連続的に滴下した。滴下後、転化率が97%以上のところで重合を終了した。凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴム(1)と架橋アクリル酸ブチル重合体から構成される複合ゴムラテックス(a−8)を得た。表2の比較例3に示す組成割合を有する熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いた以外は、複合ゴム(a−1)と同様の方法で外層の平均厚さを求めた。外層の平均厚さは105nmであった。
複合ゴムラテックス(a−9)の製造
10Lのガラスリアクターに、上記の凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(1)を60重量部(固形分)、脱イオン水を100重量部仕込み、窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し45℃に到達したところで脱イオン水20重量部にラクトース0.3重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.08重量部及び硫酸第1鉄・7水和物0.001重量部を溶解した水溶液を添加した。さらに、アクリル酸ブチル10重量部、メタクリル酸アリル0.1重量部を添加した。槽内の温度が48℃に到達した後、そのまま1時間保持した。さらに1段目重合として槽内の温度が50℃に到達した後、クメンハイドロパーオキサイド0.2重量部を一括添加し、脱イオン水20重量部にアルケニルコハク酸ジカリウム0.5重量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.08重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル25重量部、メタクリル酸アリル0.05重量部を2時間かけて連続的に滴下した。滴下後、1時間保持して、1段目重合を終了した。さらに2段目重合として槽内の温度が65℃に到達した後、ホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.04重量部を一括添加し、脱イオン水20重量部に過硫酸カリウム0.4重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル5重量部、メタクリル酸アリル0.05重量部を0.5時間かけて連続的に滴下した。滴下後、転化率が97%以上のところで重合を終了した。凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴム(1)と架橋アクリル酸ブチル重合体から構成される複合ゴムラテックス(a−9)を得た。表2の比較例4に示す組成割合を有する熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いた以外は、複合ゴム(a−1)と同様の方法で外層の平均厚さを求めた。外層の平均厚さは10nmであった。
複合ゴムラテックス(a−10)の製造
10Lのガラスリアクターに、上記の凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴムラテックス(1)を5重量部(固形分)、脱イオン水を100重量部仕込み、窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し45℃に到達したところで脱イオン水20重量部にラクトース0.3重量部、ピロリン酸四ナトリウム0.08重量部及び硫酸第1鉄・7水和物0.001重量部を溶解した水溶液を添加した。さらに、アクリル酸ブチル30重量部、メタクリル酸アリル0.1重量部を添加した。槽内の温度が48℃に到達した後、そのまま1時間保持した。さらに1段目重合として槽内の温度が50℃に到達した後、クメンハイドロパーオキサイド0.2重量部を一括添加し、脱イオン水20重量部にアルケニルコハク酸ジカリウム0.9重量部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.08重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル30重量部、メタクリル酸アリル0.05重量部を2時間かけて連続的に滴下した。滴下後、1時間保持して、1段目重合を終了した。さらに2段目重合として槽内の温度が65℃に到達した後、ホルムアルデヒドナトリウムスルホシレート0.04重量部を一括添加し、脱イオン水20重量部に過硫酸カリウム0.4重量部を溶解した水溶液とアクリル酸ブチル35重量部、メタクリル酸アリル0.05重量部を4時間かけて連続的に滴下した。滴下後、転化率が97%以上のところで重合を終了した。凝集肥大化スチレン−ブタジエンゴム(1)と架橋アクリル酸ブチル重合体から構成される複合ゴムラテックス(a−10)を得た。表2の比較例5に示す組成割合を有する熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いた以外は、複合ゴム(a−1)と同様の方法で外層の平均厚さを求めた。外層の平均厚さは110nmであった。
グラフト共重合体の製造
グラフト共重合体(A−1)の製造
ガラスリアクターに、複合ゴムラテックス(a−1)45重量部(固形分)を仕込み窒素置換を行った。窒素置換後、槽内を昇温し63℃に到達したところで、アクリロニトリル1重量部、スチレン3重量部、ラクトース0.2重量部、無水ピロリン酸ナトリウム0.1重量部及び硫酸第1鉄0.005重量部を脱イオン水15重量部に溶解した水溶液を添加した。70℃に到達後、アクリロニトリル15重量部、スチレン36重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.09部の混合液及び脱イオン水20重量部にオレイン酸カリウム1.0重量部、クメンハイドロパーオキサイド0.18部、を溶解した乳化剤水溶液を4時間かけて連続的に滴下した。滴下後、3時間保持してグラフト共重合体ラテックス(A−1)を得た。その後、塩析・脱水・乾燥し、グラフト重合体(A−1)のパウダーを得た。
グラフト共重合体(A−2)〜(A−10)の製造
複合ゴムラテックス(a−1)から複合ゴムラテックス(a−2)〜(a−10)に変更した以外はグラフト共重合体(A−1)と同様に製造し、グラフト共重合体ラテックス(A−2)〜(A−10)を得た。その後、塩析・脱水・乾燥し、グラフト重合体(A−2)〜(A−10)のパウダーを得た。
共重合体(B)の製造
窒素置換したガラスリアクターに、脱イオン水149重量部、スチレン7重量部、アクリロニトリル3重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.03重量部、オレイン酸カリウム1.0重量部及び過硫酸カリウム0.3重量部を仕込み、65℃で1時間重合した。その後、スチレン63重量部、アクリロニトリル27重量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.15重量部及びオレイン酸カリウム1.5重量部を含む乳化剤水溶液29重量部を各々3時間かけて連続的に滴下した。滴下後2時間保持して、共重合体ラテックス(B)を得た。その後、塩析・脱水・乾燥し、共重合体(B)のパウダーを得た。
添加剤
光安定剤:ADEKA(株)製 アデカスタブ LA77Y
紫外線吸収剤:住友化学(株)製 スミソーブ200
<実施例1〜7及び比較例1〜5>
表2に示すグラフト共重合体(A)、共重合体(B)、添加剤を混合した後、東芝TEM−35B二軸押出機を用いて240℃にて溶融混練して実施例1〜7及び比較例1〜5のペレットを得た。各実施例及び比較例で得られたペレットを用いて以下の評価に供した。その結果を表2に示す。
耐衝撃性
各実施例及び比較例で得られたペレットを用いISO試験方法294に準拠して各種試験片を成形し、耐衝撃性を測定した。
耐衝撃性はISO179に準拠し、4mm厚みで、ノッチ付きシャルピー衝撃値を測定した。単位:kJ/m
発色性
発色性の評価には、各実施例及び比較例で得られたペレットを、射出成形機(日本製鋼所製 J−150EP シリンダー温度:230℃ 金型温度:60℃)にて成形された成形品(60mm×60mm×2mm)を用いた。JIS−Z8729に準拠した色相測定により得られた成形品の白バック、黒バックの色相差を、成形品の発色性の尺度とした(値が大きいほど発色性に優れる)。分光光度計は、(株)村上色彩研究所社製 CMS−35SPを用いた。
耐候性
耐候性の評価には、各実施例及び比較例で得られたペレットを用い、射出成形機(山城精機製作所製 SAV−30−30 シリンダー温度:210℃ 金型温度:50℃)にて成形された成形品(90mm×55mm×2.5mm)を用いた。スガ試験機(株)製サンシャインスーパーロングライフウェザーメーター、WEL−SUN−HCH−Bを使用し、65℃、雨ありの条件下で500時間の加速曝露試験を行った。その後測色計を用い、曝露前と曝露後の色差(ΔE)を測定した(値が小さいほど耐候性に優れる)。
表2に示すように、実施例1〜7は本発明に関わる熱可塑性樹脂組成物の例であり、耐候性だけでなく耐衝撃性、及び発色性に優れていた。
表2に示すように、比較例1は複合ゴムの内層が共役ジエン系ゴム状重合体粒子単独で構成されていたため、耐衝撃性と発色性に劣った。比較例2は複合ゴム粒子の外層の平均厚さが4nmであったため耐候性に劣った。比較例3は複合ゴム粒子の外層の平均厚さが100nmを超えていたため発色性に劣った。比較例4は複合ゴム中の共役ジエン系ゴム状重合体の含有量が60重量%であったため耐候性に劣った。比較例5は複合ゴム中の共役ジエン系ゴム状重合体の含有量が5重量%であったため耐衝撃性と発色性に劣った。
本発明のグラフト共重合体を用いた熱可塑性樹脂組成物は、耐候性だけでなく耐衝撃性、及び発色性に優れるため車輌用外装部品、屋外で使用される製品等への利用価値が高い。
1:外層
2:外層と内層の境界面
3:重量平均粒子径が50〜300nmである共役ジエン系ゴム状重合体の粒子

Claims (3)

  1. 共役ジエン系ゴム状重合体5〜50重量%と架橋アクリル酸エステル系重合体50〜95重量%から構成される複合ゴム10〜80重量部に、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体及びこれらと共重合可能な他のビニル系単量体から選ばれた少なくとも一種の単量体20〜90重量部をグラフト重合して得られるグラフト共重合体(A)であって、複合ゴムは多層構造を有しており、内層が共役ジエン系ゴム状重合体もしくは共役ジエン系ゴム状重合体と架橋アクリル酸エステル系重合体を主成分とし、外層が架橋アクリル酸エステル系重合体を主成分とするだけでなく、内層は重量平均粒子径が50〜300nmである共役ジエン系ゴム状重合体粒子を2個以上内包し、外層の平均厚さが5〜100nmであることを特徴とするグラフト共重合体(A)
  2. 重量平均粒子径が50〜300nmである共役ジエン系ゴム状重合体を凝集肥大化することによって、重量平均粒子径を150〜800nmとした共役ジエン系ゴム状重合体を用いることを特徴とする請求項1に記載のグラフト共重合体(A)
  3. 請求項1又は2のいずれかに記載のグラフト共重合体(A)と芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、必要に応じてその他の共重合可能な他のビニル系単量体を共重合することで得られる共重合体(B)から構成されることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
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