JP2004099724A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐衝撃性、顔料着色性、光および降雨曝露に対して変色および光沢度の低下の少ない良好な耐候性、高い流動性(成形加工性)、耐熱性を全て満足する熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ゴム状重合体に、芳香族アルケニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(A)と、シアン化ビニル化合物単位と(メタ)アクリル酸エステル単位とを構成単位として含有し、前記シアン化ビニル化合物単位の含有割合が4質量%以下である共重合体(B)とを含む熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】ゴム状重合体に、芳香族アルケニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(A)と、シアン化ビニル化合物単位と(メタ)アクリル酸エステル単位とを構成単位として含有し、前記シアン化ビニル化合物単位の含有割合が4質量%以下である共重合体(B)とを含む熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐衝撃性に優れ、しかも顔料着色性、耐候性、流動性(成形加工性)、耐熱性をも兼ね備えた熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂材料の耐衝撃性を向上させることは、材料の用途の拡大だけでなく成形品の薄肉化や大型化への対応が可能になることから、工業的な有用性が非常に大きく、これまで様々な手法によって検討がなされてきた。
特に、ガラス転移温度(Tg)や弾性率の低いゴム成分を樹脂マトリックス中に分散させた樹脂材料は、その優れた耐衝撃性を特長として工業化に至っている。
【0003】
このような技術としては、ゴム成分として耐候性、耐衝撃性および熱安定性に優れたポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムを含むグラフト共重合体を用いた樹脂材料が提案されている(例えば、特許文献1および2参照。)。
また、このような樹脂材料の顔料着色性を改良する技術として、特定のポリジメチルシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムにビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体と、アクリロニトリル−スチレン共重合体とを構成成分とする樹脂組成物(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。また、特定のポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムにビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体と、マレイミド系共重合体とを構成成分とする樹脂組成物(例えば、特許文献4参照)、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムにビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体と、ポリメチルメタクリレート樹脂とを構成成分とする樹脂組成物(例えば、特許文献5参照。)が提案されている。
また、特定のグラフト共重合体と、シアン化ビニル系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位から構成される共重合体とを配合した樹脂組成物も開示されている(例えば、特許文献6参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平1−190746号公報
【特許文献2】
特許2558126号公報
【特許文献3】
特開平8−41149号公報
【特許文献4】
特開平8−199025号公報
【特許文献5】
特開平8−283524号公報
【特許文献6】
特開平11−43579号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献3に提案されている樹脂組成物は、耐衝撃性および溶融成形時の流動性には優れるものの、マトリックスとしてアクリロニトリル−スチレン共重合体を用いているため、光および降雨曝露によって成形品の変色および光沢度の低下が大きかった。このように耐候性に劣る樹脂材料は、変色の目立つ色調では使用することができない等、屋外使用の用途に制限が生じ、工業的利用価値が低かった。
また、特許文献4に提案されている樹脂組成物は、耐衝撃性および耐熱性には優れるものの、マトリックスとしてマレイミド系共重合体を用いているため、光および降雨曝露によって成形品の変色および光沢度の低下がやはり大きく、特許文献3の技術と同様の問題を有していた。
一方、特許文献5に提案されている樹脂組成物は、光および降雨曝露による成形品の変色および光沢度の低下は少なく、良好な耐候性を有していた。しかしながら、この樹脂組成物は流動性が低く、例えば自動車外装部材のように大型な形状なものや複雑な形状を有する部材の成型が困難であった。
また、特許文献6に例示された熱可塑性樹脂組成物は、衝撃強度、顔料着色性および耐候性は良好であるものの、耐熱性が低かった。
【0006】
すなわち、従来、ゴム成分を含むグラフト共重合体と熱可塑性樹脂とを構成成分とする樹脂組成物において、耐衝撃性、顔料着色性、光および降雨曝露に対して変色および光沢度の低下の少ない良好な耐候性、高い流動性、耐熱性を全て満足できる材料は未だ見出されておらず、これらを同時に満足する樹脂材料の開発が強く望まれていた。
本発明の目的は、これらの特性を兼ね備えた熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ゴム状重合体を含むグラフト共重合体と熱可塑性樹脂とからなる樹脂組成物について、マトリックスである熱可塑性樹脂と、これを用いて得られる樹脂組成物の耐候性、顔料着色性、耐衝撃性、流動性および耐熱性との関係について鋭意検討した結果、驚くべきことに、特定の構成の熱可塑性樹脂をマトリックスとして使用することによって、耐衝撃性、顔料着色性、耐候性、流動性、耐熱性がいずれも優れる、従来にない樹脂組成物が得られることを見出し本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム状重合体に、芳香族アルケニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(A)と、シアン化ビニル化合物単位と(メタ)アクリル酸エステルとを構成単位として含有し、前記シアン化ビニル化合物単位の割合が4質量%以下である共重合体(B)とを含むことを特徴とする。
前記ゴム状重合体としては、アルキル(メタ)アクリレート系ゴムが好ましく、特に、アルキル(メタ)アクリレートゴムとポリオルガノシロキサンとの複合ゴムが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)と、共重合体(B)とを含有する。
[グラフト共重合体(A)]
グラフト共重合体(A)は、ゴム状重合体に、芳香族アルケニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の単量体がグラフト重合したものである。
ここでゴム状重合体としては特に制限はないが、例として、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、シリコーンゴム、アルキル(メタ)アクリレート系ゴムなどが挙げられる。
【0010】
これらのなかでは、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐候性が特に優れることから、アルキル(メタ)アクリレート系ゴムが好ましい。アルキル(メタ)アクリレート系ゴムとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートなどから選ばれる1種以上の各種アルキル(メタ)アクリレート単位からなるアルキル(メタ)アクリレートゴムの他、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムのような、アルキル(メタ)アクリレートゴムと他のゴムとの複合ゴム等が挙げられるが、これらのなかでは、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と顔料着色性とのバランスに優れることから、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムがより好ましい。
【0011】
さらに好ましくは、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐候性、成形外観および耐衝撃性が優れることから、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムのうち、特にポリオルガノシロキサンとして、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンを用いる。より好ましくは、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位0.3〜3モル%およびジメチルシロキサン単位97〜99.7モル%からなり、さらに3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリジメチルシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%以下であるポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムを用いることが好ましい。
【0012】
ジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ、3〜6員環のものが好ましい。具体的にはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられ、これらは単独でまたは二種以上混合して用いられる。
また、ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有し、かつジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合しうるものであり、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮するとビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好ましい。具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシランおよびδ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン、p−ビニルフェニルジメトキシメチルシランさらにγ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンが挙げられる。
なお、これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、単独でまたは二種以上の混合物として用いることができる。
【0013】
ポリオルガノシロキサン中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位が0.3モル%未満では、アルキル(メタ)アクリレ−トゴムとの複合化が不十分となり、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形品の表面におけるポリオルガノシロキサンのブリードアウトに由来する外観不良が発生しやすい。また、ポリオルガノシロキサン中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位が3モル%を超えるか、または3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%を超える場合は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低くなりやすい。
さらに得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と成形外観の両方を考慮すると、好ましくは、ポリオルガノシロキサン中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位は0.5〜2モル%、さらに好ましくは0.5〜1モル%である。
【0014】
また、ここで複合ゴム中のポリオルガノシロキサンの量は1〜20質量%であることが好ましい。1質量%未満ではポリオルガノシロキサン量が少ないため、複合ゴム自体の耐衝撃性が低くなりやすく、20質量%を超えると熱可塑性樹脂組成物の成形品の顔料着色性が低下する傾向を示す。熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と顔料着色性の両方を考慮すると、複合ゴム中のポリオルガノシロキサンの量は好ましくは6〜20質量%、さらに好ましくは10〜20質量%である。
【0015】
上記ポリオルガノシロキサンの製法としては、ジメチルシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンからなる混合物、または、さらに必要に応じてシロキサン系架橋剤を含む混合物を乳化剤と水によって乳化させたラテックスを、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用して微粒子化した後、酸触媒を用いて高温下で重合させ、次いでアルカリ性物質により酸を中和する方法が挙げられる。
重合に用いる酸触媒の添加方法としては、シロキサン混合物、乳化剤および水とともに混合する方法と、シロキサン混合物が微粒子化したラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法等があるが、ポリオルガノシロキサンの粒子径を制御する容易さを考慮すると、シロキサン混合物が微粒子化したラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法が好ましい。
なお、ポリオルガノシロキサン粒子の大きさは特に限定されないが、熱可塑性樹脂組成物の顔料着色性を考慮すると、質量平均粒子径は0.2μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.1μm以下である。
【0016】
ここで使用されるシロキサン系架橋剤としては、3官能性または4官能性のシラン系架橋剤、例えばトリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が用いられる。
また、乳化剤としては、アニオン系乳化剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ−テル硫酸エステルナトリウムなどの中から選ばれた乳化剤が使用される。特にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸系の乳化剤が好ましい。これらの乳化剤は、シロキサン混合物100質量部に対して0.05〜5質量部程度の範囲で使用される。使用量が0.05質量部未満であると分散状態が不安定となり微小な粒子径の乳化状態を保てなくなる。また、使用量が5質量部を越えると、この乳化剤に起因する樹脂組成物成形品の着色が甚だしくなり不都合である。
ポリオルガノシロキサンの重合に用いる酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類および硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸類が挙げられる。これらの酸触媒は一種でまたは二種以上を組み合わせて用いられる。また、これらの中では、ポリオルガノシロキサンラテックスの安定化作用にも優れている点で脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。また、n−ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸などの鉱酸とを併用すると、ポリオルガノシロキサンラテックスの乳化剤成分に起因する樹脂組成物の着色を低減させることができる。
【0017】
ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムに用いられるアルキル(メタ)アクリレートゴムは、アルキル(メタ)アクリレートと多官能性アルキル(メタ)アクリレートとの重合物である。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートおよびヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられ、特にn−ブチルアクリレートの使用が好ましい。
多官能性アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばアリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。また、多官能性アルキル(メタ)アクリレートの使用量は、アルキル(メタ)アクリレートと多官能性アルキル(メタ)アクリレートの合計中0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜5質量%、さらに好ましくは0.2〜1質量%である。アルキル(メタ)アクリレートや多官能性アルキル(メタ)アクリレートは単独でまたは二種以上併用して用いられる。
【0018】
ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムは、上述した方法で得られたポリオルガノシロキサンラテックスに、アルキル(メタ)アクリレートおよび多官能アルキル(メタ)アクリレートからなるアルキル(メタ)アクリレート成分を含浸させた後、重合させることによって製造できる。
具体的には、ポリオルガノシロキサン成分のラテックス中へ上記アルキル(メタ)アクリレート成分を添加し、通常のラジカル重合開始剤を作用させて重合する。アルキル(メタ)アクリレート成分を添加する方法としては、ポリオルガノシロキサン成分のラテックスと一括で混合する方法とポリオルガノシロキサン成分のラテックス中に一定速度で滴下する方法があるが、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性を考慮すると、ポリオルガノシロキサン成分のラテックスを一括で混合する方法が好ましい。また、用いられるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。この中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸にナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
【0019】
上述したゴム状重合体にグラフト重合するグラフト成分は、芳香族アルケニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル(メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル)、シアン化ビニル化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体である。グラフト成分の量は特に限定されないが、好ましくは、グラフト共重合体(A)中50〜80質量%、より好ましくは50〜70質量%、さらに好ましくは50〜60質量%である。50質量%未満では、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形品の顔料着色性が低下する傾向を示し、80質量%を超えるとゴム状重合体量が低くなるために、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低くなりやすい。
【0020】
グラフト成分である芳香族アルケニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等であり、メタクリル酸エステルとしては例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等であり、アクリル酸エステルとしては例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等であり、シアン化ビニル化合物としては例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等であり、これらを単独で、あるいは2種以上混合して使用することが可能であるが、これらのうち、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱安定性を考慮すると、スチレンとアクリロニトリルの混合物が好ましい。
【0021】
グラフト重合は、ゴム状重合体のラテックスに芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物から選ばれた少なくとも一種の単量体を加え、ラジカル重合技術により一段であるいは多段で行うことができるが、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性および顔料着色性を考慮すると二段以上で重合を行うことが好ましい。
また、グラフト重合で用いられる単量体中には、グラフトポリマーの分子量やグラフト率を調製するための各種連鎖移動剤を添加することができる。
【0022】
このようにして調製されるグラフト共重合体(A)の粒子径は特に限定されるものではないが、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と顔料着色性の両方を考慮すると、数平均粒子径が0.10〜0.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.10〜0.30μm、さらに好ましくは0.10〜0.15μmである。
グラフト共重合体(A)の粒子は、グラフト重合が終了した後、ラテックスを酢酸カルシウムまたは硫酸アルミニウム等の金属塩あるいは硫酸等の酸を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固することにより分離し、回収することができる。
【0023】
[共重合体(B)]
共重合体(B)は、少なくともシアン化ビニル化合物単位と、(メタ)アクリル酸エステル単位とを構成単位として含有し、かつ、シアン化ビニル化合物単位の含有割合が4質量%以下である共重合体である。共重合体(B)は、シアン化ビニル化合物単位および(メタ)アクリル酸エステル単位と共重合可能なビニル単量体単位を、必要に応じて含んでいてもよい。
このうち、シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、マレオニトリル等が挙げられ、(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル等が挙げらる。
また、これらと共重合可能なビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族アルケニル化合物、N−置換マレイミド化合物、無水マレイン酸等の不飽和酸無水物、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物、エチレン、プロピレン等の不飽和炭化水素およびアクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。
【0024】
ここで共重合体(B)がシアン化ビニル化合物単位を構成単位として含有せず、(メタ)アクリル酸エステル化合物単位およびこれと共重合可能なビニル単量体単位のみからなる、例えばメタクリル樹脂などの共重合体であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性か流動性のいずれかが低くなる。一方、共重合体(B)が(メタ)アクリル酸エステル単位を構成単位として含まず、シアン化ビニル化合物単位およびこれと共重合可能なビニル単量体単位のみからなる、例えばアクリロニトリル−スチレン共重合体であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐候性および顔料着色性が悪くなる。
【0025】
すなわち、熱可塑性樹脂組成物のマトリックスである共重合体(B)として、シアン化ビニル化合物単位および(メタ)アクリル酸エステル単位を必須単位とすることで、耐衝撃性、耐候性そして顔料着色性の良い熱可塑性樹脂組成物が得られ、特にこの際、共重合体(B)中のシアン化ビニル化合物単位の含有量を4質量%以下の範囲とすることによって、これとグラフト共重合体(A)とを組み合わせた熱可塑性樹脂組成物が、従来にない特段に優れた耐衝撃性、耐候性、および耐熱性を同時に示すものとなる。
【0026】
具体的には、シアン化ビニル化合物単位が0を超え4質量%以下の範囲で、(メタ)アクリル酸エステル単位が76を超え100質量%未満の範囲で、共重合可能な他のビニル単量体単位が必要に応じて20質量%以下の範囲で使用されることが好ましい。さらに好ましくは、シアン化ビニル化合物単位が0.5〜3質量%の範囲で、(メタ)アクリル酸エステル単位が77を超え99.5質量%未満の範囲で、共重合可能な他のビニル単量体単位が必要に応じて20質量%以下の範囲で使用されることが好ましい。
共重合体(B)の好ましい具体例としては、アクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体やアクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル三元共重合体が挙げられる。
【0027】
共重合体(B)の分子量は特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂組成物の流動性および機械特性を考慮すると、質量平均分子量が30,000〜500,000の範囲が好ましく、より好ましくは40,000〜150,000、さらに好ましくは50,000〜80,000の範囲である。
【0028】
共重合体(B)は、通常公知の乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法および塊状重合法によって行うことができる。このうち得られる共重合体(B)の熱安定性および生産性を考慮すると、懸濁重合法および溶液重合法を用いて製造することが好ましい。
【0029】
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述のグラフト共重合体(A)と、上述の共重合体(B)とを含有するものであって、これらの含有量は特に限定されないが、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、剛性および流動性を考慮すると、グラフト共重合体(A)と共重合体(A)の合計を100質量部とした場合、好ましくは、グラフト共重合体(A)0.1〜99.8質量部に対して、共重合体(B)が99.9〜0.2質量部であり、さらに好ましくは、グラフト共重合体(A)10〜70質量部に対して、共重合体(B)が30〜90質量部である。さらに好ましくは、グラフト共重合体(A)20〜50質量部に対して、共重合体(B)が50〜80質量部である。
【0030】
この熱可塑性樹脂組成物は、通常、公知の混合混練方法、例えば粉末、ビーズ、またはペレット状態のグラフト共重合体(A)および共重合体(B)と、必要に応じて染料、顔料、安定剤、補強剤、充填材、難燃剤等の添加剤を所定量秤量して混合し、得られた混合物を溶融混練する方法により得ることができる。溶融混練する際には、押出機またはバンバリーミキサー、加圧ニーダー、ロール等の混練機等を用いればよい。また、この熱可塑性樹脂組成物は、そのまま、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法およびインフレーション成形法等の各種成形方法の原料に使用され、各種成形品とされる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、優れた耐衝撃性、顔料着色性および耐候性を同時に満足し、しかも流動性、耐熱性にも優れているので、例えば、複雑な形状で意匠性を有するとともに、耐衝撃性、耐候性、耐熱性、流動性(成形加工性)などの特性も要求される、自動車外装や建材等の用途に特に適している。
【0031】
【実施例】
以下実施例により本発明を説明する。なお、参考例、実施例および比較例において『部』および『%』は特に断らない限り『質量部』および『質量%』を意味する。
なお、参考例におけるラテックス中のポリオルガノシロキサンの質量平均粒子径およびラテックス中のグラフト共重合体の質量平均粒子径は、大塚電子(株)社製DLS−700型を用いた動的光散乱法により求めた。
実施例および比較例におけるIzod衝撃強度の測定は、ASTM D256に準拠した方法で行った。
また、実施例および比較例における樹脂組成物の耐候性は、100mm×100mm×3mm白着色板をサンシャインウエザーメーター(スガ試験機(株)製)で1,000時間処理した後の色差計で測定した変色の度合い(ΔE)および下記式(1)で算出した光沢度保持率により評価した。
光沢度保持率(%)=100×(1,000時間曝露後光沢度/曝露前光沢度)・・・(1)
顔料着色性は、東芝機械(株)製射出成形機IS−100ENを用いて成形した100mm×100mm×3mmの黒着色板を用いてJIS Z8729に準拠した色相測定によって測定した。
ビカット軟化点温度(VST)の測定はISO306に準拠した方法で行った。
メルトフローレート(MFR)はASTM D1238(B法)に準拠した方法により、バレル温度220℃、荷重98N(10kgf)の条件で測定した。
【0032】
(参考例1)グラフト共重合体(A−1)の製造
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部を溶解した蒸留水300部を添加し、ホモミキサ−にて10,000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに30MPaの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
一方、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と蒸留水90部とを注入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。
この水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間に亘って滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し、冷却した。次いでこの反応物を苛性ソーダ水溶液で中和した。
このようにして得られたラテックスを170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、17.7%であった。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサンの質量平均粒子径は0.05μmであった。
【0033】
次に、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、上記ポリオルガノシロキサンラテックス53.3部、N−ラウロイルサルコシンナトリウム0.3部を採取し、蒸留水258.5部を添加混合した後、ブチルアクリレート57部、アリルメタクリレート0.3部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.1部およびキュメンヒドロパーオキサイト0.14部の混合物を添加した。
この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。内部の液温が60℃となった時点で、硫酸第一鉄0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0003部およびロンガリット0.24部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。アクリレート成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、アクリレート成分の重合を完結させポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムとの複合ゴムのラテックスを得た。
反応器内部の液温が60℃に低下した後、ロンガリット0.4部を蒸留水10部に溶解した水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル12.9部、スチレン38.8部およびキュメンヒドロパーオキサイト0.23部の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後、硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部およびロンガリット0.23部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル7.4部、スチレン22.2部およびキュメンヒドロパーオキサイト0.13部の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後冷却し、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムとからなる複合ゴムに、アクリロニトリル、スチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体のラテックスを得た。
動的光散乱法より求めたラテックス中のグラフト共重合体の質量平均粒子径は、0.13μmであった。
次いで酢酸カルシウムを1%の割合で溶解した水溶液150部を60℃に加熱し撹拌した。この中へグラフト共重合体のラテックス100部を徐々に滴下し凝固した。次いで析出物を分離し、洗浄した後乾燥し、グラフト共重合体(A−1)を得た。
【0034】
(参考例2)共重合体(B−1)の製造
冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた耐圧反応器内に、水150部、アクリロニトリル3部、メタクリル酸メチル97部、アゾビスイソブチロニトリル0.20部、n−オクチルメルカプタン0.5部およびポリビニルアルコール0.7部を仕込み、碇型攪拌棒を用いて400回転毎分の条件で攪拌した。次いで、ジャケット加熱機により内温を75℃まで昇温し、2時間重合を行った。次に、再びジャケット加熱機により内温を110℃まで昇温し、20分間保持することで反応を完結させた。
内容物を冷却後、遠心脱水機を用いて洗浄、脱水を繰り返し、さらに得られた固形物を乾燥し、白色粒状の共重合体(B−1)を得た。
この得られた共重合体(B−1)の質量平均分子量は66,000であった。
【0035】
(参考例3)共重合体(B−2)の製造
参考例2における共重合体の製造手順のうち、用いるアクリロニトリルを2部、メタクリル酸メチルを92部、スチレンを6部に変更する以外は同様の方法で白色粒状の共重合体(B−2)を得た。
この得られた共重合体(B−2)の質量平均分子量は67,000であった。
【0036】
(参考例4)共重合体(B−3)の製造
冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた耐圧反応器内に、水150部、アクリロニトリル25部、スチレン75部、アゾビスイソブチロニトリル0.20部、ターシャリードデシルメルカプタン0.4部およびポリビニルアルコール0.7部を仕込み、碇型攪拌棒を用いて400回転/毎分の条件で攪拌した。次いで、ジャケット加熱機により内温を75℃まで昇温し、2時間重合反応を行った。次に、再びジャケット加熱機により内温を110℃まで昇温し、20分間保持することで反応を完結させた。
内容物を冷却後、遠心脱水機を用いて洗浄、脱水を繰り返し、さらに得られた固形物を乾燥し、白色粒状の共重合体(B−3)を得た。
この得られた共重合体(B−3)の質量平均分子量は84,000であった。
【0037】
(参考例5)共重合体(B−4)の製造
冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた耐圧反応器内に、水250部、メタクリル酸メチル99部、アクリル酸メチル1部、アゾビスイソブチロニトリル0.20部、n−オクチルメルカプタン0.4部およびメタクリル酸メチル30%とメタクリル酸カリウム70%とからなる重合体0.15部およびメタクリル酸メチル25%、メタクリル酸カリウム10%および2−スルホエチルメタクリル酸ソーダ65%とからなる重合体0.5部を仕込み、碇型攪拌棒を用いて400回転毎分の条件で攪拌した。次いで、ジャケット加熱機により内温を80℃まで昇温し、3時間重合反応を行った。次に、再びジャケット加熱機により内温を100℃まで昇温し、20分間保持することで反応を完結させた。
内容物を冷却後、遠心脱水機を用いて洗浄、脱水を繰り返し、さらに得られた固形物を乾燥し、白色粒状の共重合体(B−4)を得た。
この共重合体(B−4)のGPC測定より求めた質量平均分子量は90,000であった。
【0038】
(参考例6)共重合体(B−5)の製造
参考例2における共重合体の製造手順のうち、用いるアクリロニトリルを15部、メタクリル酸メチルを85部、n−オクチルメルカプタン0.5部をtert−ドデシルメルカプタン0.4部に変更する以外は同様の方法で白色粒状の共重合体(B−5)を得た。
この得られた共重合体(B−5)の質量平均分子量は160,000であった。
【0039】
(参考例7)共重合体(B−6)の製造
参考例5における共重合体の製造手順のうち、用いるn−オクチルメルカプタンの量を0.7部に変更する以外は同様の方法で白色粒状の共重合体(B−6)を得た。
この得られた共重合体(B−6)の質量平均分子量は47,000であった。
【0040】
(実施例1〜2および比較例1〜4)
参考例にて製造したグラフト共重合体(A−1)および共重合体(B−1〜B−6)を表1に示す割合でそれぞれ混合し、さらに熱安定剤としてアデカスタブC(旭電化(株)製)を0.3部、離型剤としてステアリン酸バリウムを0.4部、滑剤としてEBSを0.4部、光安定剤としてアデカスタブLA−63P(旭電化(株)製)0.2部、アデカスタブLA−36(旭電化(株)製)0.2部、さらに着色剤として酸化チタン(CR60−2:石原産業(株)製)を3.0部添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて十分混合した。
これら混合物をバレル温度230℃に設定した二軸押出機で賦形し、ペレットを作製した。
得られたペレットをシリンダ温度230℃、金型温度60℃に設定した射出成形機によって100mm×100mm×3mmの平板を成形した。この成形板を用いて、耐候性評価を行った。結果を表1に示す。
また、得られたペレットを用いてアイゾット衝撃強度およびビカット軟化点温度(VST)測定用試験片を射出成形法により作製し、これを用いてアイゾット衝撃強度およびビカット軟化点温度の測定を行った。結果を表1に示す。
また、着色剤をカーボンブラック(三菱化学(株)製)0.8部に変更し、それぞれ同様のブレンド、賦形を行い黒着色したペレットを得た。このペレットを用いて100mm×100mm×3mmの成形板を射出成形により得て、これを用いて顔料着色性の評価を行った。その結果を表1に示す。
得られたペレットをシリンダ温度230℃、金型温度60℃に設定した射出成形機によって100mm×100mm×3mmの平板を成形した。この成形板を用いて、耐候性評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例および比較例より、次のことが明らかとなった。
1)実施例1〜2の熱可塑性樹脂組成物は、共重合体(B)として、シアン化ビニル化合物単位と(メタ)アクリル酸エステル単位とを構成単位として含有し、シアン化ビニル化合物単位の含有割合が4質量%以下であるものを使用しているので、いずれも高いアイゾット衝撃強度と良好な顔料着色性を示すと同時に、耐候性試験において優れた光沢度保持率と良好な耐変色性を示した。さらに高いメルトフローレートおよびビカット軟化点温度をも有した。したがって、これらの熱可塑性樹脂組成物は自動車外装などへの使用に適していて工業的利用価値が高い。
2)共重合体(B)としてスチレン−アクリロニトリル共重合体(B−3)を使用した比較例1の熱可塑性樹脂組成物は、アイゾット衝撃強度、メルトフローレート、ビカット軟化点温度がいずれも高いものの、顔料着色性に劣るだけでなく耐候性試験において変色(ΔE)の度合いが大きかった。このように耐候性試験において変色の大きい樹脂材料は、例えば自動車外装等の高い耐候性を必要とする用途に使用する際には、変色の目立つ淡色系の色調で使用することが困難であるため、工業的利用価値が低い。
3)比較例2、4の熱可塑性樹脂組成物は、メタクリル酸メチル系重合体(B−4)、(B−6)を共重合体(B)として使用しているため、耐候性試験において良好な光沢度保持率、耐変色性および良好な顔料着色性を示すものの、メルトフローレートかアイゾット衝撃強度のいずれかが低かった。このように流動性か耐衝撃性に劣る樹脂材料は、例えば自動車外装等の大型成型品や複雑な形状を有する成形品の成形加工、あるいは、高いレベルの耐衝撃性を必要とする用途に使用することができないため、工業的利用価値が低い。
4)比較例3の熱可塑性樹脂組成物は、共重合体(B)としてアクリロニトリル単位比率の高い共重合体(B−5)を使用しているので、高いアイゾット衝撃強度および優れた顔料着色性、良好な耐候性および高い流動性を示すものの、耐熱性が低かった。このような熱可塑性樹脂組成物は、例えば自動車外装等の高い耐熱性を要求される用途に使用できないため、工業的利用価値が低い。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の熱可塑性樹脂組成物は、次のように顕著な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大きい。
1)本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、高い耐衝撃性、良好な顔料着色性と耐候性、高い流動性と耐熱性を全て満足できる。
2)また、上記特性のバランスは、従来知られている、例えばポリオルガノシロキサンとアクリレートゴムからなる複合ゴムをゴム状重合体として含む樹脂材料では得られない非常に高いレベルであり、各種工業用材料としての利用価値は極めて高い。
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐衝撃性に優れ、しかも顔料着色性、耐候性、流動性(成形加工性)、耐熱性をも兼ね備えた熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂材料の耐衝撃性を向上させることは、材料の用途の拡大だけでなく成形品の薄肉化や大型化への対応が可能になることから、工業的な有用性が非常に大きく、これまで様々な手法によって検討がなされてきた。
特に、ガラス転移温度(Tg)や弾性率の低いゴム成分を樹脂マトリックス中に分散させた樹脂材料は、その優れた耐衝撃性を特長として工業化に至っている。
【0003】
このような技術としては、ゴム成分として耐候性、耐衝撃性および熱安定性に優れたポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムを含むグラフト共重合体を用いた樹脂材料が提案されている(例えば、特許文献1および2参照。)。
また、このような樹脂材料の顔料着色性を改良する技術として、特定のポリジメチルシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムにビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体と、アクリロニトリル−スチレン共重合体とを構成成分とする樹脂組成物(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。また、特定のポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムにビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体と、マレイミド系共重合体とを構成成分とする樹脂組成物(例えば、特許文献4参照)、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムにビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体と、ポリメチルメタクリレート樹脂とを構成成分とする樹脂組成物(例えば、特許文献5参照。)が提案されている。
また、特定のグラフト共重合体と、シアン化ビニル系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位から構成される共重合体とを配合した樹脂組成物も開示されている(例えば、特許文献6参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平1−190746号公報
【特許文献2】
特許2558126号公報
【特許文献3】
特開平8−41149号公報
【特許文献4】
特開平8−199025号公報
【特許文献5】
特開平8−283524号公報
【特許文献6】
特開平11−43579号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献3に提案されている樹脂組成物は、耐衝撃性および溶融成形時の流動性には優れるものの、マトリックスとしてアクリロニトリル−スチレン共重合体を用いているため、光および降雨曝露によって成形品の変色および光沢度の低下が大きかった。このように耐候性に劣る樹脂材料は、変色の目立つ色調では使用することができない等、屋外使用の用途に制限が生じ、工業的利用価値が低かった。
また、特許文献4に提案されている樹脂組成物は、耐衝撃性および耐熱性には優れるものの、マトリックスとしてマレイミド系共重合体を用いているため、光および降雨曝露によって成形品の変色および光沢度の低下がやはり大きく、特許文献3の技術と同様の問題を有していた。
一方、特許文献5に提案されている樹脂組成物は、光および降雨曝露による成形品の変色および光沢度の低下は少なく、良好な耐候性を有していた。しかしながら、この樹脂組成物は流動性が低く、例えば自動車外装部材のように大型な形状なものや複雑な形状を有する部材の成型が困難であった。
また、特許文献6に例示された熱可塑性樹脂組成物は、衝撃強度、顔料着色性および耐候性は良好であるものの、耐熱性が低かった。
【0006】
すなわち、従来、ゴム成分を含むグラフト共重合体と熱可塑性樹脂とを構成成分とする樹脂組成物において、耐衝撃性、顔料着色性、光および降雨曝露に対して変色および光沢度の低下の少ない良好な耐候性、高い流動性、耐熱性を全て満足できる材料は未だ見出されておらず、これらを同時に満足する樹脂材料の開発が強く望まれていた。
本発明の目的は、これらの特性を兼ね備えた熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ゴム状重合体を含むグラフト共重合体と熱可塑性樹脂とからなる樹脂組成物について、マトリックスである熱可塑性樹脂と、これを用いて得られる樹脂組成物の耐候性、顔料着色性、耐衝撃性、流動性および耐熱性との関係について鋭意検討した結果、驚くべきことに、特定の構成の熱可塑性樹脂をマトリックスとして使用することによって、耐衝撃性、顔料着色性、耐候性、流動性、耐熱性がいずれも優れる、従来にない樹脂組成物が得られることを見出し本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ゴム状重合体に、芳香族アルケニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(A)と、シアン化ビニル化合物単位と(メタ)アクリル酸エステルとを構成単位として含有し、前記シアン化ビニル化合物単位の割合が4質量%以下である共重合体(B)とを含むことを特徴とする。
前記ゴム状重合体としては、アルキル(メタ)アクリレート系ゴムが好ましく、特に、アルキル(メタ)アクリレートゴムとポリオルガノシロキサンとの複合ゴムが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)と、共重合体(B)とを含有する。
[グラフト共重合体(A)]
グラフト共重合体(A)は、ゴム状重合体に、芳香族アルケニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の単量体がグラフト重合したものである。
ここでゴム状重合体としては特に制限はないが、例として、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、シリコーンゴム、アルキル(メタ)アクリレート系ゴムなどが挙げられる。
【0010】
これらのなかでは、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐候性が特に優れることから、アルキル(メタ)アクリレート系ゴムが好ましい。アルキル(メタ)アクリレート系ゴムとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートなどから選ばれる1種以上の各種アルキル(メタ)アクリレート単位からなるアルキル(メタ)アクリレートゴムの他、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムのような、アルキル(メタ)アクリレートゴムと他のゴムとの複合ゴム等が挙げられるが、これらのなかでは、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と顔料着色性とのバランスに優れることから、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムがより好ましい。
【0011】
さらに好ましくは、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐候性、成形外観および耐衝撃性が優れることから、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムのうち、特にポリオルガノシロキサンとして、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンを用いる。より好ましくは、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位0.3〜3モル%およびジメチルシロキサン単位97〜99.7モル%からなり、さらに3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリジメチルシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%以下であるポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムを用いることが好ましい。
【0012】
ジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ、3〜6員環のものが好ましい。具体的にはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられ、これらは単独でまたは二種以上混合して用いられる。
また、ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有し、かつジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合しうるものであり、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮するとビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好ましい。具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシランおよびδ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン、p−ビニルフェニルジメトキシメチルシランさらにγ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンが挙げられる。
なお、これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、単独でまたは二種以上の混合物として用いることができる。
【0013】
ポリオルガノシロキサン中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位が0.3モル%未満では、アルキル(メタ)アクリレ−トゴムとの複合化が不十分となり、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形品の表面におけるポリオルガノシロキサンのブリードアウトに由来する外観不良が発生しやすい。また、ポリオルガノシロキサン中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位が3モル%を超えるか、または3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%を超える場合は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低くなりやすい。
さらに得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と成形外観の両方を考慮すると、好ましくは、ポリオルガノシロキサン中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位は0.5〜2モル%、さらに好ましくは0.5〜1モル%である。
【0014】
また、ここで複合ゴム中のポリオルガノシロキサンの量は1〜20質量%であることが好ましい。1質量%未満ではポリオルガノシロキサン量が少ないため、複合ゴム自体の耐衝撃性が低くなりやすく、20質量%を超えると熱可塑性樹脂組成物の成形品の顔料着色性が低下する傾向を示す。熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と顔料着色性の両方を考慮すると、複合ゴム中のポリオルガノシロキサンの量は好ましくは6〜20質量%、さらに好ましくは10〜20質量%である。
【0015】
上記ポリオルガノシロキサンの製法としては、ジメチルシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンからなる混合物、または、さらに必要に応じてシロキサン系架橋剤を含む混合物を乳化剤と水によって乳化させたラテックスを、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用して微粒子化した後、酸触媒を用いて高温下で重合させ、次いでアルカリ性物質により酸を中和する方法が挙げられる。
重合に用いる酸触媒の添加方法としては、シロキサン混合物、乳化剤および水とともに混合する方法と、シロキサン混合物が微粒子化したラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法等があるが、ポリオルガノシロキサンの粒子径を制御する容易さを考慮すると、シロキサン混合物が微粒子化したラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法が好ましい。
なお、ポリオルガノシロキサン粒子の大きさは特に限定されないが、熱可塑性樹脂組成物の顔料着色性を考慮すると、質量平均粒子径は0.2μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.1μm以下である。
【0016】
ここで使用されるシロキサン系架橋剤としては、3官能性または4官能性のシラン系架橋剤、例えばトリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が用いられる。
また、乳化剤としては、アニオン系乳化剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ−テル硫酸エステルナトリウムなどの中から選ばれた乳化剤が使用される。特にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸系の乳化剤が好ましい。これらの乳化剤は、シロキサン混合物100質量部に対して0.05〜5質量部程度の範囲で使用される。使用量が0.05質量部未満であると分散状態が不安定となり微小な粒子径の乳化状態を保てなくなる。また、使用量が5質量部を越えると、この乳化剤に起因する樹脂組成物成形品の着色が甚だしくなり不都合である。
ポリオルガノシロキサンの重合に用いる酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類および硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸類が挙げられる。これらの酸触媒は一種でまたは二種以上を組み合わせて用いられる。また、これらの中では、ポリオルガノシロキサンラテックスの安定化作用にも優れている点で脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。また、n−ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸などの鉱酸とを併用すると、ポリオルガノシロキサンラテックスの乳化剤成分に起因する樹脂組成物の着色を低減させることができる。
【0017】
ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムに用いられるアルキル(メタ)アクリレートゴムは、アルキル(メタ)アクリレートと多官能性アルキル(メタ)アクリレートとの重合物である。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートおよびヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられ、特にn−ブチルアクリレートの使用が好ましい。
多官能性アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばアリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。また、多官能性アルキル(メタ)アクリレートの使用量は、アルキル(メタ)アクリレートと多官能性アルキル(メタ)アクリレートの合計中0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜5質量%、さらに好ましくは0.2〜1質量%である。アルキル(メタ)アクリレートや多官能性アルキル(メタ)アクリレートは単独でまたは二種以上併用して用いられる。
【0018】
ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムは、上述した方法で得られたポリオルガノシロキサンラテックスに、アルキル(メタ)アクリレートおよび多官能アルキル(メタ)アクリレートからなるアルキル(メタ)アクリレート成分を含浸させた後、重合させることによって製造できる。
具体的には、ポリオルガノシロキサン成分のラテックス中へ上記アルキル(メタ)アクリレート成分を添加し、通常のラジカル重合開始剤を作用させて重合する。アルキル(メタ)アクリレート成分を添加する方法としては、ポリオルガノシロキサン成分のラテックスと一括で混合する方法とポリオルガノシロキサン成分のラテックス中に一定速度で滴下する方法があるが、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性を考慮すると、ポリオルガノシロキサン成分のラテックスを一括で混合する方法が好ましい。また、用いられるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。この中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸にナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
【0019】
上述したゴム状重合体にグラフト重合するグラフト成分は、芳香族アルケニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル(メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル)、シアン化ビニル化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体である。グラフト成分の量は特に限定されないが、好ましくは、グラフト共重合体(A)中50〜80質量%、より好ましくは50〜70質量%、さらに好ましくは50〜60質量%である。50質量%未満では、得られる熱可塑性樹脂組成物の成形品の顔料着色性が低下する傾向を示し、80質量%を超えるとゴム状重合体量が低くなるために、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低くなりやすい。
【0020】
グラフト成分である芳香族アルケニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等であり、メタクリル酸エステルとしては例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等であり、アクリル酸エステルとしては例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等であり、シアン化ビニル化合物としては例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等であり、これらを単独で、あるいは2種以上混合して使用することが可能であるが、これらのうち、得られる熱可塑性樹脂組成物の熱安定性を考慮すると、スチレンとアクリロニトリルの混合物が好ましい。
【0021】
グラフト重合は、ゴム状重合体のラテックスに芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物から選ばれた少なくとも一種の単量体を加え、ラジカル重合技術により一段であるいは多段で行うことができるが、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性および顔料着色性を考慮すると二段以上で重合を行うことが好ましい。
また、グラフト重合で用いられる単量体中には、グラフトポリマーの分子量やグラフト率を調製するための各種連鎖移動剤を添加することができる。
【0022】
このようにして調製されるグラフト共重合体(A)の粒子径は特に限定されるものではないが、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と顔料着色性の両方を考慮すると、数平均粒子径が0.10〜0.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.10〜0.30μm、さらに好ましくは0.10〜0.15μmである。
グラフト共重合体(A)の粒子は、グラフト重合が終了した後、ラテックスを酢酸カルシウムまたは硫酸アルミニウム等の金属塩あるいは硫酸等の酸を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固することにより分離し、回収することができる。
【0023】
[共重合体(B)]
共重合体(B)は、少なくともシアン化ビニル化合物単位と、(メタ)アクリル酸エステル単位とを構成単位として含有し、かつ、シアン化ビニル化合物単位の含有割合が4質量%以下である共重合体である。共重合体(B)は、シアン化ビニル化合物単位および(メタ)アクリル酸エステル単位と共重合可能なビニル単量体単位を、必要に応じて含んでいてもよい。
このうち、シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、マレオニトリル等が挙げられ、(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル等が挙げらる。
また、これらと共重合可能なビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族アルケニル化合物、N−置換マレイミド化合物、無水マレイン酸等の不飽和酸無水物、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物、エチレン、プロピレン等の不飽和炭化水素およびアクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。
【0024】
ここで共重合体(B)がシアン化ビニル化合物単位を構成単位として含有せず、(メタ)アクリル酸エステル化合物単位およびこれと共重合可能なビニル単量体単位のみからなる、例えばメタクリル樹脂などの共重合体であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性か流動性のいずれかが低くなる。一方、共重合体(B)が(メタ)アクリル酸エステル単位を構成単位として含まず、シアン化ビニル化合物単位およびこれと共重合可能なビニル単量体単位のみからなる、例えばアクリロニトリル−スチレン共重合体であると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐候性および顔料着色性が悪くなる。
【0025】
すなわち、熱可塑性樹脂組成物のマトリックスである共重合体(B)として、シアン化ビニル化合物単位および(メタ)アクリル酸エステル単位を必須単位とすることで、耐衝撃性、耐候性そして顔料着色性の良い熱可塑性樹脂組成物が得られ、特にこの際、共重合体(B)中のシアン化ビニル化合物単位の含有量を4質量%以下の範囲とすることによって、これとグラフト共重合体(A)とを組み合わせた熱可塑性樹脂組成物が、従来にない特段に優れた耐衝撃性、耐候性、および耐熱性を同時に示すものとなる。
【0026】
具体的には、シアン化ビニル化合物単位が0を超え4質量%以下の範囲で、(メタ)アクリル酸エステル単位が76を超え100質量%未満の範囲で、共重合可能な他のビニル単量体単位が必要に応じて20質量%以下の範囲で使用されることが好ましい。さらに好ましくは、シアン化ビニル化合物単位が0.5〜3質量%の範囲で、(メタ)アクリル酸エステル単位が77を超え99.5質量%未満の範囲で、共重合可能な他のビニル単量体単位が必要に応じて20質量%以下の範囲で使用されることが好ましい。
共重合体(B)の好ましい具体例としては、アクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体やアクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル三元共重合体が挙げられる。
【0027】
共重合体(B)の分子量は特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂組成物の流動性および機械特性を考慮すると、質量平均分子量が30,000〜500,000の範囲が好ましく、より好ましくは40,000〜150,000、さらに好ましくは50,000〜80,000の範囲である。
【0028】
共重合体(B)は、通常公知の乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法および塊状重合法によって行うことができる。このうち得られる共重合体(B)の熱安定性および生産性を考慮すると、懸濁重合法および溶液重合法を用いて製造することが好ましい。
【0029】
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上述のグラフト共重合体(A)と、上述の共重合体(B)とを含有するものであって、これらの含有量は特に限定されないが、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、剛性および流動性を考慮すると、グラフト共重合体(A)と共重合体(A)の合計を100質量部とした場合、好ましくは、グラフト共重合体(A)0.1〜99.8質量部に対して、共重合体(B)が99.9〜0.2質量部であり、さらに好ましくは、グラフト共重合体(A)10〜70質量部に対して、共重合体(B)が30〜90質量部である。さらに好ましくは、グラフト共重合体(A)20〜50質量部に対して、共重合体(B)が50〜80質量部である。
【0030】
この熱可塑性樹脂組成物は、通常、公知の混合混練方法、例えば粉末、ビーズ、またはペレット状態のグラフト共重合体(A)および共重合体(B)と、必要に応じて染料、顔料、安定剤、補強剤、充填材、難燃剤等の添加剤を所定量秤量して混合し、得られた混合物を溶融混練する方法により得ることができる。溶融混練する際には、押出機またはバンバリーミキサー、加圧ニーダー、ロール等の混練機等を用いればよい。また、この熱可塑性樹脂組成物は、そのまま、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法およびインフレーション成形法等の各種成形方法の原料に使用され、各種成形品とされる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、優れた耐衝撃性、顔料着色性および耐候性を同時に満足し、しかも流動性、耐熱性にも優れているので、例えば、複雑な形状で意匠性を有するとともに、耐衝撃性、耐候性、耐熱性、流動性(成形加工性)などの特性も要求される、自動車外装や建材等の用途に特に適している。
【0031】
【実施例】
以下実施例により本発明を説明する。なお、参考例、実施例および比較例において『部』および『%』は特に断らない限り『質量部』および『質量%』を意味する。
なお、参考例におけるラテックス中のポリオルガノシロキサンの質量平均粒子径およびラテックス中のグラフト共重合体の質量平均粒子径は、大塚電子(株)社製DLS−700型を用いた動的光散乱法により求めた。
実施例および比較例におけるIzod衝撃強度の測定は、ASTM D256に準拠した方法で行った。
また、実施例および比較例における樹脂組成物の耐候性は、100mm×100mm×3mm白着色板をサンシャインウエザーメーター(スガ試験機(株)製)で1,000時間処理した後の色差計で測定した変色の度合い(ΔE)および下記式(1)で算出した光沢度保持率により評価した。
光沢度保持率(%)=100×(1,000時間曝露後光沢度/曝露前光沢度)・・・(1)
顔料着色性は、東芝機械(株)製射出成形機IS−100ENを用いて成形した100mm×100mm×3mmの黒着色板を用いてJIS Z8729に準拠した色相測定によって測定した。
ビカット軟化点温度(VST)の測定はISO306に準拠した方法で行った。
メルトフローレート(MFR)はASTM D1238(B法)に準拠した方法により、バレル温度220℃、荷重98N(10kgf)の条件で測定した。
【0032】
(参考例1)グラフト共重合体(A−1)の製造
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部を溶解した蒸留水300部を添加し、ホモミキサ−にて10,000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに30MPaの圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
一方、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と蒸留水90部とを注入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。
この水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間に亘って滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し、冷却した。次いでこの反応物を苛性ソーダ水溶液で中和した。
このようにして得られたラテックスを170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、17.7%であった。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサンの質量平均粒子径は0.05μmであった。
【0033】
次に、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、上記ポリオルガノシロキサンラテックス53.3部、N−ラウロイルサルコシンナトリウム0.3部を採取し、蒸留水258.5部を添加混合した後、ブチルアクリレート57部、アリルメタクリレート0.3部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.1部およびキュメンヒドロパーオキサイト0.14部の混合物を添加した。
この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。内部の液温が60℃となった時点で、硫酸第一鉄0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0003部およびロンガリット0.24部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始させた。アクリレート成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、アクリレート成分の重合を完結させポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムとの複合ゴムのラテックスを得た。
反応器内部の液温が60℃に低下した後、ロンガリット0.4部を蒸留水10部に溶解した水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル12.9部、スチレン38.8部およびキュメンヒドロパーオキサイト0.23部の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後、硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部およびロンガリット0.23部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル7.4部、スチレン22.2部およびキュメンヒドロパーオキサイト0.13部の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後冷却し、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムとからなる複合ゴムに、アクリロニトリル、スチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体のラテックスを得た。
動的光散乱法より求めたラテックス中のグラフト共重合体の質量平均粒子径は、0.13μmであった。
次いで酢酸カルシウムを1%の割合で溶解した水溶液150部を60℃に加熱し撹拌した。この中へグラフト共重合体のラテックス100部を徐々に滴下し凝固した。次いで析出物を分離し、洗浄した後乾燥し、グラフト共重合体(A−1)を得た。
【0034】
(参考例2)共重合体(B−1)の製造
冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた耐圧反応器内に、水150部、アクリロニトリル3部、メタクリル酸メチル97部、アゾビスイソブチロニトリル0.20部、n−オクチルメルカプタン0.5部およびポリビニルアルコール0.7部を仕込み、碇型攪拌棒を用いて400回転毎分の条件で攪拌した。次いで、ジャケット加熱機により内温を75℃まで昇温し、2時間重合を行った。次に、再びジャケット加熱機により内温を110℃まで昇温し、20分間保持することで反応を完結させた。
内容物を冷却後、遠心脱水機を用いて洗浄、脱水を繰り返し、さらに得られた固形物を乾燥し、白色粒状の共重合体(B−1)を得た。
この得られた共重合体(B−1)の質量平均分子量は66,000であった。
【0035】
(参考例3)共重合体(B−2)の製造
参考例2における共重合体の製造手順のうち、用いるアクリロニトリルを2部、メタクリル酸メチルを92部、スチレンを6部に変更する以外は同様の方法で白色粒状の共重合体(B−2)を得た。
この得られた共重合体(B−2)の質量平均分子量は67,000であった。
【0036】
(参考例4)共重合体(B−3)の製造
冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた耐圧反応器内に、水150部、アクリロニトリル25部、スチレン75部、アゾビスイソブチロニトリル0.20部、ターシャリードデシルメルカプタン0.4部およびポリビニルアルコール0.7部を仕込み、碇型攪拌棒を用いて400回転/毎分の条件で攪拌した。次いで、ジャケット加熱機により内温を75℃まで昇温し、2時間重合反応を行った。次に、再びジャケット加熱機により内温を110℃まで昇温し、20分間保持することで反応を完結させた。
内容物を冷却後、遠心脱水機を用いて洗浄、脱水を繰り返し、さらに得られた固形物を乾燥し、白色粒状の共重合体(B−3)を得た。
この得られた共重合体(B−3)の質量平均分子量は84,000であった。
【0037】
(参考例5)共重合体(B−4)の製造
冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた耐圧反応器内に、水250部、メタクリル酸メチル99部、アクリル酸メチル1部、アゾビスイソブチロニトリル0.20部、n−オクチルメルカプタン0.4部およびメタクリル酸メチル30%とメタクリル酸カリウム70%とからなる重合体0.15部およびメタクリル酸メチル25%、メタクリル酸カリウム10%および2−スルホエチルメタクリル酸ソーダ65%とからなる重合体0.5部を仕込み、碇型攪拌棒を用いて400回転毎分の条件で攪拌した。次いで、ジャケット加熱機により内温を80℃まで昇温し、3時間重合反応を行った。次に、再びジャケット加熱機により内温を100℃まで昇温し、20分間保持することで反応を完結させた。
内容物を冷却後、遠心脱水機を用いて洗浄、脱水を繰り返し、さらに得られた固形物を乾燥し、白色粒状の共重合体(B−4)を得た。
この共重合体(B−4)のGPC測定より求めた質量平均分子量は90,000であった。
【0038】
(参考例6)共重合体(B−5)の製造
参考例2における共重合体の製造手順のうち、用いるアクリロニトリルを15部、メタクリル酸メチルを85部、n−オクチルメルカプタン0.5部をtert−ドデシルメルカプタン0.4部に変更する以外は同様の方法で白色粒状の共重合体(B−5)を得た。
この得られた共重合体(B−5)の質量平均分子量は160,000であった。
【0039】
(参考例7)共重合体(B−6)の製造
参考例5における共重合体の製造手順のうち、用いるn−オクチルメルカプタンの量を0.7部に変更する以外は同様の方法で白色粒状の共重合体(B−6)を得た。
この得られた共重合体(B−6)の質量平均分子量は47,000であった。
【0040】
(実施例1〜2および比較例1〜4)
参考例にて製造したグラフト共重合体(A−1)および共重合体(B−1〜B−6)を表1に示す割合でそれぞれ混合し、さらに熱安定剤としてアデカスタブC(旭電化(株)製)を0.3部、離型剤としてステアリン酸バリウムを0.4部、滑剤としてEBSを0.4部、光安定剤としてアデカスタブLA−63P(旭電化(株)製)0.2部、アデカスタブLA−36(旭電化(株)製)0.2部、さらに着色剤として酸化チタン(CR60−2:石原産業(株)製)を3.0部添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて十分混合した。
これら混合物をバレル温度230℃に設定した二軸押出機で賦形し、ペレットを作製した。
得られたペレットをシリンダ温度230℃、金型温度60℃に設定した射出成形機によって100mm×100mm×3mmの平板を成形した。この成形板を用いて、耐候性評価を行った。結果を表1に示す。
また、得られたペレットを用いてアイゾット衝撃強度およびビカット軟化点温度(VST)測定用試験片を射出成形法により作製し、これを用いてアイゾット衝撃強度およびビカット軟化点温度の測定を行った。結果を表1に示す。
また、着色剤をカーボンブラック(三菱化学(株)製)0.8部に変更し、それぞれ同様のブレンド、賦形を行い黒着色したペレットを得た。このペレットを用いて100mm×100mm×3mmの成形板を射出成形により得て、これを用いて顔料着色性の評価を行った。その結果を表1に示す。
得られたペレットをシリンダ温度230℃、金型温度60℃に設定した射出成形機によって100mm×100mm×3mmの平板を成形した。この成形板を用いて、耐候性評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例および比較例より、次のことが明らかとなった。
1)実施例1〜2の熱可塑性樹脂組成物は、共重合体(B)として、シアン化ビニル化合物単位と(メタ)アクリル酸エステル単位とを構成単位として含有し、シアン化ビニル化合物単位の含有割合が4質量%以下であるものを使用しているので、いずれも高いアイゾット衝撃強度と良好な顔料着色性を示すと同時に、耐候性試験において優れた光沢度保持率と良好な耐変色性を示した。さらに高いメルトフローレートおよびビカット軟化点温度をも有した。したがって、これらの熱可塑性樹脂組成物は自動車外装などへの使用に適していて工業的利用価値が高い。
2)共重合体(B)としてスチレン−アクリロニトリル共重合体(B−3)を使用した比較例1の熱可塑性樹脂組成物は、アイゾット衝撃強度、メルトフローレート、ビカット軟化点温度がいずれも高いものの、顔料着色性に劣るだけでなく耐候性試験において変色(ΔE)の度合いが大きかった。このように耐候性試験において変色の大きい樹脂材料は、例えば自動車外装等の高い耐候性を必要とする用途に使用する際には、変色の目立つ淡色系の色調で使用することが困難であるため、工業的利用価値が低い。
3)比較例2、4の熱可塑性樹脂組成物は、メタクリル酸メチル系重合体(B−4)、(B−6)を共重合体(B)として使用しているため、耐候性試験において良好な光沢度保持率、耐変色性および良好な顔料着色性を示すものの、メルトフローレートかアイゾット衝撃強度のいずれかが低かった。このように流動性か耐衝撃性に劣る樹脂材料は、例えば自動車外装等の大型成型品や複雑な形状を有する成形品の成形加工、あるいは、高いレベルの耐衝撃性を必要とする用途に使用することができないため、工業的利用価値が低い。
4)比較例3の熱可塑性樹脂組成物は、共重合体(B)としてアクリロニトリル単位比率の高い共重合体(B−5)を使用しているので、高いアイゾット衝撃強度および優れた顔料着色性、良好な耐候性および高い流動性を示すものの、耐熱性が低かった。このような熱可塑性樹脂組成物は、例えば自動車外装等の高い耐熱性を要求される用途に使用できないため、工業的利用価値が低い。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の熱可塑性樹脂組成物は、次のように顕著な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大きい。
1)本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、高い耐衝撃性、良好な顔料着色性と耐候性、高い流動性と耐熱性を全て満足できる。
2)また、上記特性のバランスは、従来知られている、例えばポリオルガノシロキサンとアクリレートゴムからなる複合ゴムをゴム状重合体として含む樹脂材料では得られない非常に高いレベルであり、各種工業用材料としての利用価値は極めて高い。
Claims (3)
- ゴム状重合体に、芳香族アルケニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、シアン化ビニル化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の単量体がグラフト重合したグラフト共重合体(A)と、
シアン化ビニル化合物単位と(メタ)アクリル酸エステル単位とを構成単位として含有し、前記シアン化ビニル化合物単位の含有割合が4質量%以下である共重合体(B)とを含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - 前記ゴム状重合体が、アルキル(メタ)アクリレート系ゴムであることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 前記アルキル(メタ)アクリレート系ゴムが、アルキル(メタ)アクリレートゴムとポリオルガノシロキサンとの複合ゴムであることを特徴とする請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20060110 |