JP3945861B2 - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐衝撃性、耐候性および顔料着色性に優れた耐衝撃性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂材料の耐衝撃性を向上させることは、材料の用途の拡大だけでなく成形品の薄肉化や大型化への対応を可能にするなど、工業的な有用性は非常に大きく、これまで様々な手法によって開発がなされてきた。
【0003】
特に、ガラス転移温度(Tg)や弾性率の低いゴム成分を樹脂マトリック中に分散させた樹脂材料はその優れた耐衝撃性を特長として工業化に至っている。
【0004】
このうち、ゴム成分として耐候性、耐衝撃性および熱安定性に優れたポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムを含むグラフト共重合体を用いた樹脂材料が特開平1−190746号公報および特許2558126号公報等に提案され、さらにその顔料着色性の改良技術について、特開平8−41149号公報には特定のポリジメチルシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムにビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体とアクリロニトリル−スチレン共重合体を構成成分とする樹脂組成物が、特開平8−199025号公報には特定のポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムにビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体とマレイミド系共重合体を構成成分とする樹脂組成物が、さらに特開平8−283524号公報にはポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムにビニル単量体がグラフト重合したグラフト共重合体とポリメチルメタクリレート樹脂を構成成分とする樹脂組成物が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平8−41149号公報に提案されている樹脂組成物は、耐衝撃性および溶融成形時の流動性には優れるものの、マトリックスとしてアクリロニトリル−スチレン共重合体を用いているため、光および降雨曝露によって成形品の変色および光沢度の低下が大きく、このように耐候性に劣る樹脂材料は変色の目立つ色調では使用することができない等、屋外使用の用途に制限が生じるため、工業的利用価値が低い。
【0006】
また、特開平8−199025号公報に提案されている樹脂組成物は、耐衝撃性および耐熱性には優れるものの、マトリックスとしてマレイミド系共重合体を用いているため、光および降雨曝露によって成形品の変色および光沢度の低下が大きく、このように耐候性に劣る樹脂材料は変色の目立つ色調では使用することができない等、屋外使用の用途に制限が生じるため、工業的利用価値が低い。
【0007】
一方、特開平8−283524号公報に提案されている樹脂組成物は、光および降雨曝露による成形品の変色および光沢度の低下は少なく、良好な耐候性を有しているものの、マトリックスとしてポリメチルメタクリレート樹脂を用いているため耐衝撃性が低く、例えば自動車部材のように高度な耐衝撃性が必要となる用途には使用することが困難となるため、工業的利用価値が低い。
【0008】
すなわち、従来はポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムを含むグラフト共重合体と熱可塑性樹脂を構成成分とする樹脂組成物において、良好な顔料着色性、良好な耐衝撃性と光および降雨曝露に対して変色および光沢度の低下の少ない良好な耐候性を有する材料は未だ見出されておらず、これらを同時に満足する樹脂材料の開発が強く望まれていた。
【0009】
本発明の目的は、耐衝撃性、耐候性および顔料着色性に優れた耐衝撃性樹脂組成物を得ることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ゴム質重合体を含むグラフト共重合体と熱可塑性樹脂とからなる樹脂組成物について、マトリックス樹脂の成分構成と得られる樹脂組成物の耐候性、顔料着色性および耐衝撃性について鋭意検討した結果、驚くべきことに、特定の構成成分によって構成される重合体をマトリックスに用いることによって、従来にない優れた顔料着色性、耐衝撃性および耐候性を示すことを見出し本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明の要旨とするところは、ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴム質重合体に、芳香族アルケニル化合物、(メタ)アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の単量体がグラフト重合されたグラフト共重合体(A)およびアクリロニトリル成分を5〜50重量%含むアクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体(B)からなる熱可塑性樹脂組成物にある。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に係るグラフト共重合体(A)を構成するゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−スチレン共重合体、シリコーンゴム、アルキル(メタ)アクリレートゴム、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム、ポリブタジエンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムおよびポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴム等が挙げられ、このうちグラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐候性と耐衝撃性の両方を考慮するとポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムが好ましい。
【0013】
さらに樹脂組成物の耐候性、成形外観および耐衝撃性を考慮すると、グラフト共重合体(A)を構成するゴム質重合体としてポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムを用い、さらにポリオルガノシロキサン(A-1)として、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンを用いることが好ましい。さらに好ましくは、ビニル重合性官能基含有シロキサン単位0.3〜3モル%およびジメチルシロキサン単位97〜99.7モル%からなり、さらに3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリジメチルシロキサン(A-1)中の全ケイ素原子に対し1モル%以下であるポリオルガノシロキサン(A-1)とアルキル(メタ)アクリレートゴム(A-2)とからなる複合ゴム((A-1)+(A-2))を用いることが好ましい。
【0014】
ポリオルガノシロキサン(A-1)中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位が0.3モル%未満では、アルキル(メタ)アクリレ−トゴム(A-2)との複合化が不十分となり、グラフト共重合体(A)を含む樹脂組成物成形品の表面におけるポリオルガノシロキサンのブリードアウトに由来する外観不良が発生しやすい。また、ポリオルガノシロキサン(A-1)中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位が3モル%を超える、または3個以上のシロキサン結合を有するケイ素原子がポリオルガノシロキサン中の全ケイ素原子に対し1モル%を超える場合は、グラフト共重合体(A)を含む樹脂組成物の耐衝撃性が低くなりやすい。
【0015】
さらにグラフト共重合体(A)を含む樹脂組成物の耐衝撃性と成形外観の両方を考慮すると、好ましくはポリオルガノシロキサン(A-1)中のビニル重合性官能基含有シロキサン単位を0.5〜2モル%さらに好ましくは0.5〜1モル%である。
【0016】
また、複合ゴム((A-1)+(A-2))中のポリオルガノシロキサン(A-1)の量は1〜20重量%であることが好ましい。1重量%未満ではポリオルガノシロキサン量が少ないため耐衝撃性が低くなりやすく、20重量%を超えるとグラフト共重合体(A)を含む樹脂組成物成形品の顔料着色性が低下する傾向を示す。また、グラフト共重合体(A)を含む樹脂組成物の耐衝撃性と顔料着色性の両方を考慮すると、複合ゴム((A-1)+(A-2))中のポリオルガノシロキサン(A-1)の量は好ましくは6〜20重量%、さらに好ましくは10〜20重量%である。
【0017】
上記ポリオルガノシロキサン(A-1)の製法としては、ジメチルシロキサンとビニル重合性官能基含有シロキサンからなる混合物またはさらに必要に応じてシロキサン系架橋剤を含む混合物を乳化剤と水によって乳化させたラテックスを、高速回転による剪断力で微粒子化するホモミキサーや、高圧発生機による噴出力で微粒子化するホモジナイザー等を使用して微粒子化した後、酸触媒を用いて高温下で重合させ、次いでアルカリ性物質により酸を中和するものである。重合に用いる酸触媒の添加方法としては、シロキサン混合物、乳化剤および水とともに混合する方法と、シロキサン混合物が微粒子化したラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法等があるが、ポリオルガノシロキサンの粒子径の制御のしやすさを考慮するとシロキサン混合物が微粒子化したラテックスを高温の酸水溶液中に一定速度で滴下する方法が好ましい。
【0018】
ポリオルガノシロキサン粒子の大きさは特に限定されないが、グラフト共重合体(A)を含む樹脂組成物の顔料着色性を考慮すると、重量平均粒子径が0.2μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.1μm以下である。
【0019】
また、ポリオルガノシロキサン(A-1)の製造に用いるジメチルシロキサンとしては、3員環以上のジメチルシロキサン系環状体が挙げられ、3〜6員環のものが好ましい。具体的にはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられるが、これらは単独でまたは二種以上混合して用いられる。
【0020】
また、ビニル重合性官能基含有シロキサンとしては、ビニル重合性官能基を含有しかつジメチルシロキサンとシロキサン結合を介して結合しうるものであり、ジメチルシロキサンとの反応性を考慮するとビニル重合性官能基を含有する各種アルコキシシラン化合物が好ましい。具体的には、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシランおよびδ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等のメタクリロイルオキシシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等のビニルシロキサン、p−ビニルフェニルジメトキシメチルシランさらにγ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトシロキサンが挙げられる。
【0021】
なお、これらビニル重合性官能基含有シロキサンは、単独で、または二種以上の混合物として用いることができる。
【0022】
シロキサン系架橋剤としては、3官能性または4官能性のシラン系架橋剤、例えばトリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等が用いられる。
【0023】
また、本発明に係るポリオルガノシロキサン(A-1)製造の際用いる乳化剤としては、アニオン系乳化剤が好ましく、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエ−テル硫酸エステルナトリウムなどの中から選ばれた乳化剤が使用される。特にアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸系の乳化剤が好ましい。これらの乳化剤は、シロキサン混合物100重量部に対して0.05〜5重量部程度の範囲で使用される。使用量が少ないと分散状態が不安定となり微小な粒子径の乳化状態を保てなくなる。また、使用量が多いとこの乳化剤に起因する樹脂組成物成形品の着色が甚だしくなり不都合である。
【0024】
シロキサン混合物、乳化剤、水および/または酸触媒を混合する方法は、高速撹拌による混合、ホモジナイザーなどの高圧乳化装置による混合などがあるが、ホモジナイザーを使用した方法は、ポリオルガノシロキサンラテックスの粒子径の分布が小さくなるので好ましい方法である。
【0025】
ポリオルガノシロキサン(A-1)の重合に用いる酸触媒としては、脂肪族スルホン酸、脂肪族置換ベンゼンスルホン酸、脂肪族置換ナフタレンスルホン酸などのスルホン酸類および硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸類が挙げられる。これらの酸触媒は一種でまたは二種以上を組み合わせて用いられる。また、これらの中では、ポリオルガノシロキサンラテックスの安定化作用にも優れている点で脂肪族置換ベンゼンスルホン酸が好ましく、n−ドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。また、n−ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸などの鉱酸とを併用すると、ポリオルガノシロキサンラテックスの乳化剤成分に起因する樹脂組成物の着色を低減させることができる。
【0026】
ポリオルガノシロキサンの重合温度は、50℃以上が好ましく、さらに好ましくは80℃以上である。
【0027】
ポリオルガノシロキサン(A-1)の重合時間は、酸触媒をシロキサン混合物、乳化剤および水とともに混合、微粒子化させて重合する場合は2時間以上、さらに好ましくは5時間以上であり、酸触媒の水溶液中にシロキサン混合物が微粒子化したラテックスを低下する方法では、ラテックスの滴下終了後1時間程度保持することが好ましい。
【0028】
重合の停止は、反応液を冷却、さらにラテックスを苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ナトリウムなどのアルカリ性物質で中和することによって行うことができる。
【0029】
また、グラフト共重合体(A)を構成するゴム質重合体の好ましい例であるポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴムに用いるアルキル(メタ)アクリレートゴム(A-2)としては、アルキル(メタ)アクリレートと多官能性アルキル(メタ)アクリレートとの重合物であり、複合ゴム((A-1)+(A-2))はポリオルガノシロキサンラテックスにアルキル(メタ)アクリレートとおよび多官能アルキル(メタ)アクリレートからなるアルキル(メタ)アクリレート成分を含浸させた後重合させることによって製造することができる。アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートおよびヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられ、特にn−ブチルアクリレートの使用が好ましい。
【0030】
多官能性アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばアリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。また、多官能性アルキル(メタ)アクリレートの使用量は、アルキル(メタ)アクリレート成分中0.1〜20重量%、好ましくは0.2〜5重量%、さらに好ましくは0.2〜1重量%である。アルキル(メタ)アクリレートや多官能性アルキル(メタ)アクリレートは単独でまたは二種以上併用して用いられる。
【0031】
ポリオルガノシロキサン(A-1)とアルキル(メタ)アクリレートゴム(A-2)からなる複合ゴム((A-1)+(A-2))は、ポリオルガノシロキサン(A-1)成分のラテックス中へ上記アルキル(メタ)アクリレート成分を添加し、通常のラジカル重合開始剤を作用させて重合することによって調製できる。アルキル(メタ)アクリレートを添加する方法としては、ポリオルガノシロキサン(A-1)成分のラテックスと一括で混合する方法とポリオルガノシロキサン(A-1)成分のラテックス中に一定速度で滴下する方法がある。なお、得られるグラフト共重合体(A)を含む樹脂組成物の耐衝撃性を考慮するとポリオルガノシロキサン(A-1)成分のラテックスを一括で混合する方法が好ましい。また、重合に用いるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。この中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸にナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
【0032】
本発明に係るグラフト共重合体(A)中において芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物から選ばれる少なくとも一種の単量体(A-3)がグラフト重合されたグラフト成分の量は特に限定されるものではないが、好ましくは50〜80重量%、より好ましくは50〜70重量%、さらに好ましくは50〜60重量%である。50重量%未満ではグラフト共重合体(A)を含む樹脂組成物成形品の顔料着色性が低下する傾向を示し、また、80重量%を超えるとゴム量が低くなるため耐衝撃性が低くなりやすい。
【0033】
上記芳香族アルケニル化合物としては例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等であり、メタクリル酸エステルとしては例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等であり、アクリル酸エステルとしては例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等であり、シアン化ビニル化合物としては例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等である。このうち、グラフト共重合体(A)を含む樹脂組成物の熱安定性を考慮するとスチレンおよびアクリロニトリルの混合物が好ましい。
【0034】
グラフト重合は、ゴム質重合体のラテックスに芳香族アルケニル化合物、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物から選ばれた少なくとも一種の単量体(A-3)を加え、ラジカル重合技術により一段であるいは多段で行うことができるが、得られるグラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性および顔料着色性を考慮すると二段以上で重合を行うことが好ましい。
【0035】
また、グラフト重合において用いる単量体中にはグラフトポリマーの分子量やグラフト率を調製するための各種連鎖移動剤を添加することができる。
【0036】
また、上記のごとく調製されるグラフト共重合体(A)の粒子径は特に限定されるものではないが、得られるグラフト共重合体を含む樹脂組成物の耐衝撃性と顔料着色性の両方を考慮すると、数平均粒子径が0.10〜0.5μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.10〜0.30μm、さらに好ましくは0.10〜0.15μm、である。
【0037】
グラフト重合が終了した後、ラテックスを酢酸カルシウムまたは硫酸アルミニウム等の金属塩あるいは硫酸等の酸を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固することによりグラフト共重合体を分離し、回収することができる。
【0038】
本発明に係る共重合体(B)は、少なくともシアン化ビニル化合物および(メタ)アクリル酸エステルを構成成分とする共重合体であって、必要に応じてこれらと共重合可能なビニル単量体成分を含むことができる。
【0039】
このうち、シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、マレオニトリル等が挙げられ、(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸グリシジル等が挙げらる。
【0040】
また、これらと共重合可能なビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族アルケニル化合物、N−置換マレイミド化合物、無水マレイン酸等の不飽和酸無水物、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物、エチレン、プロピレン等の不飽和炭化水素およびアクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。
【0041】
また、共重合体(B)としてシアン化ビニル化合物成分を含まず、(メタ)アクリル酸エステル化合物成分およびこれと共重合可能なビニル単量体成分とからなる共重合体(例えばメタクリル樹脂)を構成成分として用いた場合は、得られる樹脂組成物の耐衝撃性が低いために工業的利用価値が低い。
【0042】
また、共重合体(B)として(メタ)アクリル酸エステル化合物成分を含まず、シアン化ビニル化合物成分およびこれと共重合可能なビニル単量体成分とからなる共重合体(例えばポリアクリロニトリル)を構成成分として用いた場合は、得られる樹脂組成物の熱安定性および流動性が低いために工業的利用価値が低い。
【0043】
すなわち、樹脂組成物を構成するマトリックスとして、シアン化ビニル化合物成分および(メタ)アクリル酸エステル化合物成分を必須成分とする共重合体(B)を用いることで、これとグラフト共重合体(A)とからなる樹脂組成物が従来にない優れた耐衝撃性、耐候性、および熱安定性を同時に示すものである。
【0044】
本発明に係る共重合体(B)を構成するシアン化ビニル化合物成分および(メタ)アクリル酸エステル化合物成分の含有量としては特に限定されるものではないが、得られる樹脂組成物の流動性、耐候性、耐衝撃性および熱安定性を考慮すると、シアン化ビニル化合物成分が5〜50重量%、(メタ)アクリル酸エステル化合物成分が30〜95重量%および共重合可能な他のビニル単量体成分が0〜20重量%となる範囲が好ましい。さらには、シアン化ビニル化合物成分が10〜30重量%、(メタ)アクリル酸エステル化合物成分が70〜90重量%および共重合可能な他のビニル単量体成分が0〜20重量%となる範囲が好ましい。
【0045】
本発明に係る共重合体(B)の好ましい例としては、アクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体である。
【0046】
本発明に係る共重合体(B)の分子量は特に限定されるものではないが、これを含む熱可塑性樹脂組成物の流動性、耐候性、機械特性を考慮すると、重量平均分子量が50,000〜500,000の範囲が好ましく、さらに好ましくは50,000〜300,000の範囲である。
【0047】
本発明に係る共重合体(B)は、通常公知の乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法および塊状重合法によって行うことができる。このうち得られる共重合体の熱安定性および生産性を考慮すると懸濁重合法および溶液重合法を用いて製造することが好ましい。
【0048】
本発明に係る樹脂組成物中のグラフト共重合体(A)成分および共重合体(B)成分の含有量は特に限定されるものではないが、該樹脂組成物の耐衝撃性、剛性、流動性および耐候性を考慮すると、好ましい含有量の範囲はグラフト共重合体(A)が0.1〜99.8重量部、共重合体(B)が99.9〜0.2重量部であり、さらに好ましい含有量の範囲はグラフト共重合体(A)が10〜70重量部、共重合体(B)が30〜90重量部である。さらに好ましい含有量の範囲はグラフト共重合体(A)が20〜50重量部、共重合体(B)が50〜80重量部である。
【0049】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、通常、公知の混合混練方法、例えば粉末、ビーズ、またはペレット状態の樹脂を所定量秤量して混合し、得られた混合物を溶融混練する方法により得ることができる。溶融混練する際には、押出機またはバンバリーミキサー、加圧ニーダー、ロール等の混練機等を用いればよい。
【0050】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、そのまま成形品の原料に供することができる。さらに、必要に応じて染料、顔料、安定剤、補強剤、充填材、難燃剤等を配合することができる。
【0051】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、射出成形機法、押出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法およびインフレーション成形法等の各種成形方法によって、目的の成形品とされる。
【0052】
【実施例】
以下実施例により本発明を説明する。なお、参考例、実施例および比較例において『部』および『%』は特に断らない限り『重量部』および『重量%』を意味する。
【0053】
参考例におけるラテックス中のポリオルガノシロキサンの重量平均粒子径およびラテックス中のグラフト共重合体の重量平均粒子径は、大塚電子(株)社製DLS−700型を用いた動的光散乱法により求めた。
【0054】
実施例および比較例におけるアイゾット衝撃強度の測定は、ASTM D258に準拠した方法により行った。
【0055】
また、実施例および比較例における樹脂組成物の耐候性は、100mm×100mm×3mm白着色板をサンシャインウエザーメーター(スガ試験機(株)製)で1000時間処理した後の色差計で測定した変色の度合い(ΔE)および下記式(1)で算出した光沢度保持率により評価した。
【0056】
光沢度保持率(%)=100×(1000時間曝露後光沢度−曝露前光沢度)/曝露前光沢度
また、顔料着色性は、東芝機械(株)製射出成形機IS−100ENを用いて成形した100mm×100mm×3mmの黒着色板を用いてJISZ8729に準拠した色相測定によって測定した。
【0057】
(参考例1)グラフト共重合体(A−1)の製造
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部を溶解した蒸留水300部を添加し、ホモミキサ−にて10000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザーに300kg/cm2の圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
【0058】
一方、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と蒸留水90部とを注入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。
【0059】
この水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間に亘って滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し、冷却した。次いでこの反応物を苛性ソーダ水溶液で中和した。
【0060】
このようにして得られたラテックスを170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、17.7%であった。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサンの重量平均粒子径は0.05μmであった。
【0061】
次に、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、上記ポリオルガノシロキサンラテックス53.3部、N−ラウロイルザルコシンナトリウム0.3部を採取し、蒸留水258.5部を添加混合した後、ブチルアクリレート57部、アリルメタクリレート0.3部、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート0.1部およびキュメンヒドロパーオキサイト0.14部の混合物を添加した。
【0062】
この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。内部の液温が60℃となった時点で、硫酸第一鉄0.0001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0003部およびロンガリット0.24部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始せしめた。アクリレート成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、アクリレート成分の重合を完結させポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムとの複合ゴムのラテックスを得た。
【0063】
反応器内部の液温が60℃に低下した後、ロンガリット0.4部を蒸留水10部に溶解した水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル12.9部、スチレン38.8部およびキュメンヒドロパーオキサイト0.23部の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後、硫酸第一鉄0.0002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0006部およびロンガリット0.23部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル7.4部、スチレン22.2部およびキュメンヒドロパーオキサイト0.13部の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後冷却し、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレートゴムとからなる複合ゴムに、アクリロニトリル、スチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体のラテックスを得た。
【0064】
動的光散乱法より求めたラテックス中のグラフト共重合体の重量平均粒子径は、0.13μmであった。
【0065】
次いで酢酸カルシウムを1%の割合で溶解した水溶液150部を60℃に加熱し撹拌した。この中へグラフト共重合体のラテックス100部を徐々に滴下し凝固した。次いで析出物を分離し、洗浄した後乾燥し、グラフト共重合体(A−1)を得た。
【0066】
(参考例2)共重合体(B−1)の製造
冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた耐圧反応器内に、水150部、アクリロニトリル25部、メタクリル酸メチル75部、アゾビスイソブチロニトリル0.20部、ターシャリードデシルメルカプタン0.4部およびポリビニルアルコール0.7部を仕込み、碇型攪拌棒を用いて400回転毎分の条件で攪拌した。次いで、ジャケット加熱機により内温を75℃まで昇温し、2時間重合を行った。次に、再びジャケット加熱機により内温を110℃まで昇温し、20分間保持することで反応を完結させた。
【0067】
内容物を冷却後、遠心脱水機を用いて洗浄、脱水を繰り返し、さらに得られた固形物を乾燥し、白色粒状の共重合体(B−1)を得た。
【0068】
この得られた重合体(B−1)の重量平均分子量は150,000であった。
【0069】
(参考例3)共重合体(B−2)の製造
参考例2における共重合体の製造手順のうち、用いるアクリロニトリルを15部、メタクリル酸メチル85部に変更する以外は同様の方法で白色粒状の共重合体(B−2)を得た。
【0070】
この得られた重合体(B−2)の重量平均分子量は160,000であった。
【0071】
(参考例4)共重合体(B−3)の製造
冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた耐圧反応器内に、水150部、アクリロニトリル25部、スチレン75部、アゾビスイソブチロニトリル0.20部、ターシャリードデシルメルカプタン0.4部およびポリビニルアルコール0.7部を仕込み、碇型攪拌棒を用いて400回転/毎分の条件で攪拌した。次いで、ジャケット加熱機により内温を75℃まで昇温し、2時間重合反応を行った。次に、再びジャケット加熱機により内温を110℃まで昇温し、20分間保持することで反応を完結させた。
【0072】
内容物を冷却後、遠心脱水機を用いて洗浄、脱水を繰り返し、さらに得られた固形物を乾燥し、白色粒状の共重合体(B−3)を得た。
【0073】
この得られた重合体(B−3)の重量平均分子量は84,000であった。
【0074】
(参考例5)共重合体(B−4)の製造
冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた耐圧反応器内に、水250部、メタクリル酸メチル99部、アクリル酸メチル1部、アゾビスイソブチロニトリル0.20部、n−オクチルメルカプタン0.4部およびメタクリル酸メチル30%とメタクリル酸カリウム70%とからなる重合体0.15部およびメタクリル酸メチル25%、メタクリル酸カリウム10%および2−スルホエチルメタクリル酸ソーダ65%とからなる重合体0.5部を仕込み、碇型攪拌棒を用いて400回転毎分の条件で攪拌した。次いで、ジャケット加熱機により内温を80℃まで昇温し、3時間重合反応を行った。次に、再びジャケット加熱機により内温を100℃まで昇温し、20分間保持することで反応を完結させた。
【0075】
内容物を冷却後、遠心脱水機を用いて洗浄、脱水を繰り返し、さらに得られた固形物を乾燥し、白色粒状の共重合体(B−4)を得た。
【0076】
この共重合体(B−4)のGPC測定より求めた重量平均分子量は90,000であった。
【0077】
(実施例1〜2)
参考例にて製造したグラフト共重合体(A−1)および共重合体(B−1〜B−2)を表1に示す割合でそれぞれ混合し、さらに熱安定剤としてアデカスタブC(旭電化(株)製)を0.3部、離型剤としてステアリン酸バリウムを0.4部、滑剤としてEBSを0.4部、光安定剤としてアデカスタブLA−63P(旭電化(株)製)0.2部、アデカスタブLA−36(旭電化(株)製)0.2部さらに着色剤として酸化チタン(CR60−2:石原産業(株)製)を3.0部添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて十分混合した。これら混合物をバレル温度230℃に設定した二軸押出機で賦形し、ペレットを作製した。得られたペレットをシリンダ温度230℃、金型温度60℃に設定した射出成形機によって100mm×100mm×3mmの平板を成形した。この成形板を用いて、耐候性評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
また、得られたペレットを用いてアイゾット衝撃強度およびロックウェル硬度測定用試験片を射出成形法により作製し、これを用いてアイゾット衝撃強度およびロックウェル硬度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0079】
また、着色剤をカーボンブラック(三菱化学(株)製)0.8部に変更し、それぞれ同様のブレンド、賦形を行い黒着色したペレットを得た。このペレットを用いて100mm×100mm×3mmの成形板を射出成形により得た。この成形板を用いて顔料着色性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0080】
(比較例1〜4)
参考例にて製造したグラフト共重合体(A−1)、共重合体(B−3)〜、共重合体(B−4)、ポリスチレン樹脂(PSt)(スミブライトM140:住友化学(株)社製)、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体(MS)(エスチレンMS−200:新日鐵化学(株)社製)を表1に示す割合でそれぞれ混合し、さらに熱安定剤としてアデカスタブC(旭電化(株)製)を0.3部、離型剤としてステアリン酸バリウムを0.4部、滑剤としてEBSを0.4部、光安定剤としてアデカスタブLA−63P(旭電化(株)製)0.2部、アデカスタブLA−36(旭電化(株)製)0.2部さらに着色剤として酸化チタン(CR60−2:石原産業(株)製)を3.0部添加した後、ヘンシェルミキサーを用いて十分混合した。これら混合物をバレル温度230℃に設定した二軸押出機で賦形し、ペレットを作製した。得られたペレットをシリンダ温度230℃、金型温度60℃に設定した射出成形機によって100mm×100mm×3mmの平板を成形した。この成形板を用いて、耐候性評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
また、得られたペレットを用いてアイゾット衝撃試験片を射出成形法により作製し、これを用いてアイゾット衝撃強度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0082】
また、着色剤をカーボンブラック(三菱化学(株)製)0.8部に変更し、それぞれ同様のブレンド、賦形を行い黒着色したペレットを得た。このペレットを用いて100mm×100mm×3mmの成形板を射出成形により得た。この成形板を用いて顔料着色性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
実施例および比較例より、次のことが明らかとなった。
【0085】
1)実施例1〜2のグラフト共重合体(A−1)とアクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体(B−1〜B−2)を構成成分とする樹脂組成物は、いずれも高いアイゾット衝撃強度と良好な顔料着色性を示すと同時に、耐候性試験において優れた光沢度保持率と良好な耐変色性を示す。このように、優れた耐衝撃性、発色性および耐候性を同時に満足する樹脂材料は、例えば自動車外装等の高いレベルの耐衝撃性、意匠性および耐候性を必要とする用途に使用することができ、工業的価値が極めて高い。
【0086】
2)比較例1のグラフト共重合体(A−1)とスチレン−アクリロニトリル共重合体(B−3)を構成成分とする樹脂組成物は、高いアイゾット衝撃強度を示すものの、耐候性試験において変色(ΔE)の度合いが大きく、このように耐候性試験において変色の大きい樹脂材料は、例えば自動車外装等の高いレベルの耐候性を必要とする用途に使用する際に、変色の目立つ淡色系の色調で使用することが困難であるため、工業的利用価値が低い。
【0087】
3)比較例2のグラフト共重合体(A−1)とメタクリル酸メチル系重合体(B−4)樹脂を構成成分とする樹脂組成物は、耐候性試験において良好な光沢度保持率、耐変色性および良好な顔料着色性を示すものの、アイゾット衝撃強度が低く、このように耐衝撃性に劣る樹脂材料は、例えば自動車外装等の高いレベルの耐衝撃性を必要とする用途に使用することができないため、工業的利用価値が低い。
【0088】
4)比較例3のグラフト共重合体(A−1)とポリスチレン(PSt)を構成成分とする樹脂組成物は、アイゾット衝撃強度および顔料着色性ともに低く、また耐候性試験において低い光沢度保持率および大きい変色(ΔE)を示し、このように耐衝撃性および耐候性に劣る樹脂材料は、例えば自動車外装等の高いレベルの耐衝撃性および耐候性を必要とする用途に使用することができないため、工業的利用価値が低い。
【0089】
5)比較例4のグラフト共重合体(A−1)とスチレン−メタクリル酸メチル共重合体(MS)を構成成分とする樹脂組成物は、耐候性試験において良好な光沢度保持率、耐変色性および良好な顔料着色性を示すものの、アイゾット衝撃強度が低く、このように耐衝撃性に劣る樹脂材料は、例えば自動車外装等の高いレベルの耐衝撃性を必要とする用途に使用することができないため、工業的利用価値が低い。
【0090】
【発明の効果】
本発明は以上説明した通りであり、次のように特別に顕著な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
【0091】
1)本発明に係る樹脂組成物は、高い耐衝撃性、良好な顔料着色性および良好な耐候性を同時に示す。
【0092】
2)特にそのバランスは、従来知られているポリオルガノシロキサンとアクリレートゴムからなる複合ゴムをゴム源とした樹脂材料では得られない非常に高いレベルであり、各種工業用材料としての利用価値は極めて高い。
Claims (1)
- ポリオルガノシロキサンとアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなる複合ゴム質重合体に、芳香族アルケニル化合物、(メタ)アクリル酸エステルおよびシアン化ビニル化合物からなる群から選ばれた少なくとも一種の単量体がグラフト重合されたグラフト共重合体(A)およびアクリロニトリル成分を5〜50重量%含むアクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体(B)からなる熱可塑性樹脂組成物。
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