JP2018010176A - 位相差フィルムおよび位相差フィルムの製造方法 - Google Patents

位相差フィルムおよび位相差フィルムの製造方法 Download PDF

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一美 外川
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Abstract

【課題】 固有複屈折の異なる樹脂の混合し形成される位相差フィルムであって、可視光の波長領域内で平坦な波長分散性、または逆波長分散性を有し、透明性に優れる位相差フィルムと、そのような位相差フィルムの製造方法の提供。【解決手段】 正の固有複屈折を有し、構造単位としてノルボルネン系単量体単位を有するノルボルネン系重合体(A)と、負の固有複屈折を有し、構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とする重合体(B)を含み、前記ノルボルネン系重合体(A)の全構成単位に占める前記ノルボルネン系単量体単位の割合が、65重量%以上であり、前記ノルボルネン系重合体(A)と前記重合体(B)が特定の比率で含まれており、測定波長446nm、547nmおよび749nmで測定した面内位相差Re(446nm)、Re(547nm)およびRe(749nm)が特定の関係を満たす位相差フィルム。【選択図】 図1

Description

本発明は、位相差フィルムに関するものであり、詳しくは、可視光の波長領域内で平坦な波長分散性、または逆波長分散性を有し、透明性に優れ、液晶表示装置や有機EL表示装置を構成する光学フィルムとして好適に使用されうる位相差フィルムに関する。また、その位相差フィルムの製造方法に関する。
携帯電話や携帯情報端末などのモバイル機器に用いられる液晶表示装置や有機EL表示装置において、視野角による位相差変化を補償するための視野角拡大フィルム、位相差の波長分散性を補償する逆波長分散フィルム(逆波長分散性とはフィルムを透過する光が短波長になるほど位相差が小さくなる性質のことである)、外光反射を抑制することを役割とする1/4波長板等、様々な位相差フィルムが利用されている。
位相差フィルムとしては、用途に応じ波長分散性が調節されたものが求められており、位相差を補償するためのフィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂からなるフィルムを延伸することによる高分子鎖の配向により生じる複屈折を利用したものがある。
上述したような延伸フィルムからなる位相差フィルムについては、従来から多くの検討がなされている。
例えば、フルオレン骨格を有するポリカーボネート樹脂からなる延伸フィルムがある(特許文献1参照)。しかしながら、フルオレン骨格を有する樹脂は、原料が高価である点で問題があった。
また、正の固有複屈折を有するポリフェニレンエーテル及び負の固有複屈折を有するシンジオタクチック構造を有するポリスチレン系重合体を含む樹脂層とアクリル樹脂または脂環式構造重合体を含む樹脂層とを有するフィルムを延伸してなる、位相差フィルム積層体が提案されている(特許文献2参照)。しかしながら、位相差フィルム積層体は、各層の精密な厚み制御が必要となる点で問題があった。
さらに、単層の位相差フィルムをポリマーブレンドで形成する技術も検討されており、正の固有複屈折のポリマーの少なくとも一種類と負の固有複屈折のポリマーの少なくとも一種類とを含む混合物から形成した位相差フィルムも提案されている(特許文献3参照)。
特開2014−205829 特開2014−186273 特開2001−337222
しかしながら、本発明者等の検討によれば、上記特許文献3で提案されたポリマーブレンドは、各ポリマーが混ざりにくく相分離してしまい、屈折率の異なるポリマーをブレンドしても白濁するため、十分な透明性を有する位相差フィルムを形成することは困難である場合があった。
本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、固有複屈折の異なる樹脂を混合し形成される位相差フィルムであって、可視光の波長領域内で平坦な波長分散性、または逆波長分散性を有し、透明性に優れる位相差フィルムと、そのような位相差フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、正の固有複屈折を有し特定の構造単位を有するノルボルネン系重合体(A)と、負の固有複屈折を有し特定の構成単位を有する重合体(B)とを、所定の割合で含み、所定波長における面内位相差Reが特定の関係を有するフィルムは、可視光の波長領域内で平坦な波長分散性、または逆波長分散性を有し、透明性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1] 正の固有複屈折を有し、構造単位としてノルボルネン系単量体単位を有するノルボルネン系重合体(A)と、負の固有複屈折を有し、構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とする重合体(B)を含み、
前記ノルボルネン系重合体(A)の全構成単位に占める前記ノルボルネン系単量体単位の割合が、65重量%以上であり、
前記ノルボルネン系重合体(A)と前記重合体(B)との混合比が、ノルボルネン系重合体(A):重合体(B)=90乃至50重量部:10乃至50重量部であり、
測定波長446nm、547nmおよび749nmで測定した面内位相差Re(446nm)、Re(547nm)およびRe(749nm)が以下の式(1)および式(2)を満たすことを特徴とする位相差フィルム。
0.950<Re(446nm)/Re(547nm)<1.000 (1)
0.980<Re(749nm)/Re(547nm)<1.030 (2)
[2] 前記重合体(B)が、N−置換マレイミド単位を有することを特徴とする[1]に記載の位相差フィルム。
[3] 前記ノルボルネン系重合体(A)と前記重合体(B)の平均屈折率の差が5.0×10−3以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の位相差フィルム。
[4] 正の固有複屈折を有し、構造単位としてノルボルネン系単量体単位を有するノルボルネン系重合体(A)と、負の固有複屈折を有し、構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とする重合体(B)を含み、
前記ノルボルネン系重合体(A)と前記重合体(B)との混合比が、ノルボルネン系重合体(A):重合体(B)=90乃至50重量部:10乃至50重量部の割合で混合し溶融押出成形して、未延伸フィルムを形成する工程と、
前記未延伸フィルムを延伸する工程を含み、
前記ノルボルネン系重合体(A)の全構成単位に占める前記ノルボルネン系単量体単位の割合が、65重量%以上であることを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
本発明によれば、正の固有複屈折を有し特定の構造単位を有するノルボルネン系重合体(A)と、負の固有複屈折を有し特定の構成単位を有する重合体(B)とを、所定の割合で含み、所定波長における面内位相差Reが特定の関係を有する位相差フィルムは、可視光の波長領域内で平坦な波長分散性、または逆波長分散性を有し、透明性に優れるため、液晶表示装置や有機EL表示装置を構成する位相差フィルムとして好適に使用できる。
以下に本発明の位相差フィルムおよび位相差フィルムの製造方法の実施形態を詳細に説明するが、以下の説明は本発明の実施形態の一例(代表例)を説明するものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
(位相差フィルム)
本発明の位相差フィルムは、正の固有複屈折を有し、構造単位としてノルボルネン系単量体単位を有するノルボルネン系重合体(A)と、負の固有複屈折を有し、構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とする重合体(B)を含み、
前記ノルボルネン系重合体(A)の全構成単位に占める前記ノルボルネン系単量体単位の割合が、65重量%以上であり、
前記ノルボルネン系重合体(A)と前記重合体(B)との混合比が、ノルボルネン系重合体(A):重合体(B)=90乃至50重量部:10乃至50重量部であり、
測定波長446nm、547nmおよび749nmで測定した面内位相差Re(446nm)、Re(547nm)およびRe(749nm)が以下の式(1)および式(2)を満たすことを特徴とする位相差フィルムである。
0.950<Re(446nm)/Re(547nm)<1.000 (1)
0.980<Re(749nm)/Re(547nm)<1.030 (2)
本発明の位相差フィルムは、正の固有複屈折を有し、構造単位としてノルボルネン系単量体単位を有するノルボルネン系重合体(A)と、負の固有複屈折を有し、構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とする重合体(B)を含み、かつ、前記ノルボルネン系重合体(A)の全構成単位に占める前記ノルボルネン系単量体単位の割合が、65重量%以上であるため、ノルボルネン系重合体(A)と重合体(B)が相溶し、得られるフィルムが透明性に優れる。
また、本発明の位相差フィルムは、ノルボルネン系重合体(A)と重合体(B)との混合比が、ノルボルネン系重合体(A):重合体(B)=90乃至50重量部:10乃至50重量部であり、測定波長446nm、547nmおよび749nmで測定した面内位相差Re(446nm)、Re(547nm)およびRe(749nm)が上述の式(1)および式(2)を満たすため、可視光の波長領域内で平坦な波長分散性、または逆波長分散性を有する。
本発明の位相差フィルムは、正の固有複屈折を有し、構造単位としてノルボルネン系単量体単位を有するノルボルネン系重合体(A)と、負の固有複屈折を有し、構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とする重合体(B)を含む。
ここで、固有複屈折が正であるとは、重合体を延伸した場合に重合体が延伸方向に配向し、延伸方向の屈折率が延伸方向に垂直な方向の屈折率よりも大きくなることを意味する。また、固有複屈折が負であるとは、重合体を延伸した場合に重合体が延伸方向に垂直な方向に配向し、延伸方向の屈折率が延伸方向に垂直な方向の屈折率よりも小さくなることを意味する。
例えば、各重合体からなるフィルムを作製し一方向に延伸した後、該延伸したフィルムを位相差測定することで、各重合体の固有複屈折の正負を判別できる。
ノルボルネン系重合体(A)は、正の固有複屈折を有し、構造単位としてノルボルネン系単量体単位を有する。ノルボルネン系重合体(A)としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体、若しくはノルボルネン系単量体と他の単量体との開環共重合体、又はそれらの水素化物;ノルボルネン系単量体の付加重合体、若しくはノルボルネン系単量体と他の単量体との付加共重合体、又はそれらの水素化物を挙げることができる。これらの中でも、熱安定性に優れ、溶融押出成形時に熱劣化しにくいことから、ノルボルネン系単量体の付加(共)重合体水素化物が特に好適である。ここで「(共)重合体」とは、重合体及び共重合体のことをいう。
ノルボルネン系単量体とは、ノルボルネン構造を有する単量体であり、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12、5・17、10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができ、重合体(B)との相溶性の観点から、置換基として極性基を有することが好ましい。また、これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。また、ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子およびハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基およびスルホン酸基などが挙げられる。
これらの中でも、ノルボルネン系重合体(A)と重合体(B)との相溶性を向上させる観点から、カルボキシル基またはエステル基が特に好ましい。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテンおよびシクロオクテンなどのモノ環状オレフィン類およびその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエンなどの環状共役ジエンおよびその誘導体;などが挙げられる。
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との開環共重合体は、例えば、単量体を公知の開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造してもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン並びに1−ブテンなどの炭素数2乃至20のα−オレフィンおよびこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン並びにシクロヘキセンなどのシクロオレフィンおよびこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン並びに5−メチル−1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な他の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体、およびノルボルネン構造を有する単量体と共重合可能な他の単量体との付加共重合体は、例えば、単量体を公知の付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造してもよい。
ノルボルネン系重合体(A)の全構成単位に占めるノルボルネン系単量体単位の割合は、65重量%以上であることが重要である。
ノルボルネン系単量体単位の割合が65重量%以上であれば重合体(B)と相溶しやすく、ノルボルネン系重合体(A)と重合体(B)を含む位相差フィルムの透明性が確保できる。
また、ノルボルネン系重合体(A)の全構成単位に占めるノルボルネン系単量体単位の割合は、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されないが、通常は100重量%以下である。
さらには、ノルボルネン系重合体(A)と重合体(B)の相溶性を向上させ、該重合体(A)および重合体(B)を含む位相差フィルムの透明性が確保する観点から、ノルボルネン系重合体(A)の全構成単位に占める、カルボキシル基またはエステル基を有するノルボルネン系単量体単位の割合が、65重量%以上であることが好ましい。
重合体(B)は、負の固有複屈折を有し、構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とする。
構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とした重合体(B)は、負の固有複屈折を示し、ノルボルネン系重合体(A)と相溶性を示す。
ノルボルネン系重合体(A)と重合体(B)の相溶性を向上させ、該重合体(A)および重合体(B)を含む位相差フィルムの透明性が確保する観点から、ノルボルネン系重合体(A)の全構成単位に占める、カルボキシル基またはエステル基を有するノルボルネン系単量体単位の割合が、65重量%以上であり、かつ重合体(B)は構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とすることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル単位、(メタ)アクリル酸エチル単位、(メタ)アクリル酸n−プロピル単位、(メタ)アクリル酸n−ブチル単位、(メタ)アクリル酸t−ブチル単位、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル単位、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル単位、(メタ)アクリル酸クロロメチル単位、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル単位、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル単位、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル単位、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル単位および(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル単位等が挙げられる。上記構成単位として、これらの1種のみを用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これらの中でも、その重合体が光学特性や熱安定性に優れる点で、メタクリル酸メチル単位が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とするとは、重合体(B)を構成する構成単位の中で(メタ)アクリル酸エステル単位の重量割合が最も大きいことを意味しており、重合体(B)の構成単位に占めるアクリル酸エステル単位の割合は、50重量%以上、100重量%が好ましく、70重量%以上、100質量%以下がより好ましい。
重合体(B)は、N−置換マレイミド単位を有することが好ましい。N−置換マレイミド単位としては、例えば、N−フェニルマレイミド単位、N−シクロヘキシルマレイミド単位およびN−メチルマレイミド単位等が挙げられる。上記構成単位として、これらの1種のみを用いてもよいし、2種以上併用してもよい。これらの中でも、その重合体が耐熱性に優れ、高いガラス転移温度(Tg)を有する点で、N−フェニルマレイミド単位が特に好ましい。
重合体(B)の構成単位に占めるN−置換マレイミド単位の割合は、重合体(B)の耐熱性や加工性の観点から、0.1重量%以上、50重量%以下が好ましく、1重量%以上、30重量%以下がより好ましい。
重合体(B)の構成単位としては、上記以外にも、例えば、スチレン単位、ビニルトルエン単位、α−メチルスチレン単位、アクリロニトリル単位、メチルビニルケトン単位、エチレン単位、プロピレン単位および酢酸ビニル単位等の従来公知の構成単位を含んでもよい。これらの構成単位は1種のみを用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
本発明の位相差フィルムには、ノルボルネン系重合体(A)と重合体(B)以外にも、必要に応じて配合剤を添加することができる。
添加される配合剤は特に限定されず、例えば、可塑剤、滑剤、層状結晶化合物、無機微粒子や、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤および近赤外線吸収剤などの安定剤や、染料、顔料などの着色剤や、帯電防止剤等が挙げられる。配合剤の量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜定めることが出来る。特に滑剤や紫外線吸収剤を添加することで可とう性や耐候性を向上させることができるので好ましい。
滑剤としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、または硫酸ストロンチウム等の無機粒子や、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、セルロースアセテート、またはセルロースアセテートプロピオネート等の有機粒子が挙げられる。本発明では、滑剤としては有機粒子が好ましい。
紫外線吸収剤としては、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、および無機粉体等が挙げられる。
好適な紫外線吸収剤としては、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、および2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンが挙げられ、特に好適なものとしては、2,2’−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール等が挙げられる。
本発明の位相差フィルムにおけるノルボルネン系重合体(A)と重合体(B)との混合比は、ノルボルネン系重合体(A):重合体(B)=90乃至50重量部:10乃至50重量部であることが重要である。
この範囲であれば、上述したノルボルネン系重合体(A)と重合体(B)が相溶しやすく透明性に優れ、かつ、可視光の波長領域内で平坦な波長分散性、または逆波長分散性を有する位相差フィルムが得られる。
また、好ましくはノルボルネン系重合体(A):重合体(B)=80乃至60重量部:20乃至40重量部である。
ノルボルネン系重合体(A)と重合体(B)の平均屈折率差は、5.0×10−3以下であることが好ましい。平均屈折率差が5.0×10−3以下であれば、位相差フィルムにおいてノルボルネン系重合体(A)と重合体(B)が局所的に相溶していない部分が存在したとしても、該部分において光の反射が抑制できるため、結果として位相差フィルムの透明性が優れる傾向にある。
各重合体の平均屈折率は、JIS K7142に準じて測定でき、測定結果から平均屈折率差を算出できる。
また、位相差フィルムの透明性については、例えば全光線透過率またはヘイズ値で表すことができ、全光線透過率またはヘイズ値は、JIS K7361−1またはJIS K7136に準じて測定できる。
本発明の位相差フィルムのガラス転移温度Tg(℃)は、110℃以上であることが好ましい。より好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。110℃以上であれば、高温環境下(例えば80℃)で使用する場合でも耐熱性が確保できる傾向にある。上限は特に限定されないが、例えば200℃以下である。
本発明の位相差フィルムは、測定波長446nm、547nmおよび749nmで測定した面内位相差Re(446nm)、Re(547nm)およびRe(749nm)が以下の式(1)および式(2)を満たすことが重要である。この範囲であると、面内位相差Reが平坦な波長分散性、または逆波長分散性を示すこととなり、例えば、光学補償フィルムとして様々な光学系に利用することができる。
0.950<Re(446nm)/Re(547nm)<1.000 (1)
0.980<Re(749nm)/Re(547nm)<1.030 (2)
ここで、平坦な波長分散性とは、可視光の波長領域において、面内位相差Reが波長に依存せず、ほぼ一定であることを意図しており、具体的には、式(1)および式(2)を満たすことを意図している。
また、逆波長分散性とは、可視光の波長領域において、測定波長が大きくなるに従い、面内位相差Reが大きくなることを意図しており、具体的には、以下の式(3)および式(4)を満たすことを意図している。
0.950<Re(446nm)/Re(547nm)<1.000 (3)
1.000<Re(749nm)/Re(547nm)<1.030 (4)
より平坦な波長分散性を得るために、本発明の位相差フィルムは、以下の式(5)および式(6)を満たすことが好ましい。
0.980<Re(446nm)/Re(547nm)<1.000 (5)
0.980<Re(749nm)/Re(547nm)<1.020 (6)
本発明の位相差フィルムの厚さは、5μm以上、200μm以下であることが好ましい。この範囲であれば、例えば液晶表示装置などに本発明の位相差フィルムを組み込んだ場合でも、装置全体の厚みを増すことなく、要求される光学特性を満たすことができる傾向にある。より好ましくは5μm以上、150μm以下であり、特に好ましくは、10μm以上、100μm以下である。
(位相差フィルムの製造方法)
本発明の位相差フィルムは、以下に説明する、本発明の位相差フィルムの製造方法により製造することができる。
本発明の位相差フィルムの製造方法は、下記工程1および2を含む。
(工程1):ノルボルネン系重合体(A)と重合体(B)を混合し溶融押出成形して、未延伸フィルムを形成する工程。
(工程2):前記未延伸フィルムを延伸する工程。
(工程1)
工程1は、正の固有複屈折を有し、構造単位としてノルボルネン系単量体単位を有するノルボルネン系重合体(A)と、負の固有複屈折を有し、構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とする重合体(B)を含み、前記ノルボルネン系重合体(A)と前記重合体(B)を、ノルボルネン系重合体(A):重合体(B)=90乃至50重量部:10乃至50重量部の割合で混合し溶融押出成形して、未延伸フィルムを形成する工程である。
前記ノルボルネン系重合体(A)の全構成単位に占める前記ノルボルネン系単量体単位の割合が、65重量%以上である。
特定の材料を特定の割合で配合し、溶融押出成形によって透明な未延伸フィルムを得ることができる。
[未延伸フィルムの作製方法]
未延伸フィルムの作製方法としては、公知の方法、例えば、溶液流涎法や、単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ラボプラストミルなどの溶融混合設備を有し、熱プレスによるシート化や、Tダイを用いる押出キャスト法やカレンダー法などを採用することができ、特に限定されるものではないが、本発明においては、ハンドリング性や生産性などの面からTダイを用いる押出キャスト法が好適に用いられる。Tダイを用いる押出キャスト法での成形温度は、用いる樹脂の流動特性や製膜性などによって適宜調整されるが、概ね200乃至300℃、好ましくは220乃至260℃であり、より好ましくは220℃乃至240℃である。
(工程2)
工程2は、工程1で得られた未延伸フィルムを延伸する工程である。
[未延伸フィルムの延伸方法]
本発明では、一般的な一軸延伸方法、つまり、フィルム搬送方向にロール延伸を行う方法やフィルム搬送方向に直交する方向へテンター延伸を行う方法や裁断したフィルムをストレッチャーにより固定端一軸延伸する方法などを採用することができ、特に限定されるものではないが、本発明においては、フィルム搬送方向に直交する方向へテンター延伸を行う方法が好適に用いられる。延伸を実施する際の温度はTg乃至Tg+50℃、好ましくはTg+5℃乃至Tg+30℃、より好ましくはTg+5℃乃至Tg+15℃である。
以下、本発明の位相差フィルムの物性等について具体的に説明する。
(位相差フィルムの面内位相差Re・固有複屈折Δn)
位相差フィルムの面内位相差Reおよび固有複屈折Δnは、以下(7)および(8)式で算出される。ここで、Nxは位相差フィルムの面内における遅相軸方向(フィルム面内において最大の屈折率を示す方向)の屈折率、Nyは位相差フィルムの面内における進相軸方向(フィルム面内におけるNxと垂直な方向)の屈折率、dは位相差フィルムの厚さ(nm)である。
Δn=Nx−Ny (7)
Re=Δn×d (8)
(用途)
本発明の位相差フィルムは正の固有複屈折の樹脂と負の固有複屈折の樹脂のブレンド比、延伸条件等を選択することによって、位相差値を調整することができ、種々の用途に供することができる。例えば、携帯電話や携帯情報端末などのモバイル機器に用いられる液晶表示装置や有機EL表示装置の位相差の波長分散性を補償する逆波長分散フィルムや外光反射を抑制することを役割とする1/4波長板として好適に使用され得る。
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、これらの実施例及び比較例により本発明は制限を受けるものではない。
(評価方法)
以下において、種々の物性等の測定及び評価は次のようにして行った。
[ガラス転移温度(Tg)]
ガラス転移温度(Tg)は示差走査熱量計(パーキンエルマー社製、商品名:Pyris1 DSC)を用いて、JIS K7122に準じて測定した。実施例および比較例で得られた未延伸フィルム約10mgを加熱速度10℃/分で室温から250℃まで昇温し、250℃で5分間保持した後、冷却速度10℃/分で室温まで降温しその後、これを再度加熱速度10℃/分で250℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムからガラス転移温度(Tg)を読み取り、延伸フィルムのガラス転移温度(Tg)とした。
[引張貯蔵弾性率]
実施例1乃至3ならびに比較例2で得られた未延伸フィルム、および比較例2と同様の手順により作製した重合体(B)−1の未延伸フィルムを、JISK−7198A法に記載の動的粘弾性測定法により、アイティー計測制御社製 動的粘弾性測定装置「DVA−200」を用い、チャック間距離25mm、振動周波数10Hz、歪み0.3%にて、昇温速度3℃/分で−100℃から200℃まで測定し、各未延伸フィルムの引張貯蔵弾性率(E’)の温度依存性を確認した。測定結果は、図1に示す。
[面内位相差Reおよび波長分散性]
実施例および比較例で得られた延伸フィルムの面内位相差Reは、位相差測定装置(王子計測機器社製、製品名:KOBRA−WR)を用いて測定した。
具体的には、測定波長446nm、547nmおよび749nmで面内位相差Re(446nm)、Re(547nm)およびRe(749nm)を測定し、Re(446nm)/Re(547nm)およびRe(749nm)/Re(547nm)を算出した。
実施例および比較例で得られた延伸フィルムの波長分散性は、上記算出したRe(446nm)/Re(547nm)およびRe(749nm)/Re(547nm)が、式(1)および式(2)を満たす場合は、面内位相差Reが平坦な波長分散性、または逆波長分散性を示すこととなり、波長分散性:○と評価し、満たさない場合は波長分散性:×と評価した。
[平均屈折率差]
平均屈折率はアタゴ社製アッベ屈折率計を用い、ナトリウムD線(589nm)を光源とし、JIS K7142に準じて測定した。実施例および比較例で用いた原料の平均屈折率を測定した後、平均屈折率差を算出した。
[延伸フィルムの透明性]
実施例および比較例で得られた延伸フィルムの透明性を下記の基準で目視により判定した。
判断基準
○:延伸フィルムの下に文字を記載した紙を置いた際に、霞まずに文字を確認できる。
△:延伸フィルムの下に文字を記載した紙を置いた際に、少し霞むが文字を確認できる。
×:延伸フィルムの下に文字を記載した紙を置いた際に、文字を確認できない。
(構成材料)
以下に、実施例および比較例における延伸フィルムの作製に用いた構成材料を示す。
[ノルボルネン系重合体(A)−1]
製品名:アートンD4540(JSR社製)
平均屈折率:1.522
組成:エチレン単位19重量%、ノルボルネン系単量体単位81重量%
該ノルボルネン系単量体単位は、置換基としてエステル基を有する。
[ノルボルネン系重合体(A)−2]
製品名:TOPAS5013(Polyplastics社製)
平均屈折率:1.530
組成:エチレン単位52重量%、ノルボルネン系単量体単位48重量%
該ノルボルネン系単量体単位は、置換基として極性基を有さない。
[重合体(B)−1]
製品名:ポリイミレックスPML203(日本触媒社製)
平均屈折率:1.518
組成:メタクリル酸メチル単位70.8重量%、N−フェニルマレイミド単位20.9重量%、スチレン単位5.1重量%、N−シクロへキシルマレイミド単位3.2重量%
[重合体(B)−2]
製品名:MM290(PSジャパン社製)
平均屈折率:1.575
組成:メタクリル酸メチル単位5重量%、メタクリル酸単位11重量%、スチレン単位84重量%
[実施例1]
ノルボルネン系重合体(A)−1と重合体(B)−1を、それぞれ80重量部と20重量部の割合で混合し、ラボプラストミルを用いて溶融混練して、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を220℃でプレス成形して厚さ約65μmの未延伸フィルムを作製した。
次に、作製した未延伸フィルムをストレッチャー延伸機を用いて、延伸倍率1.5倍、延伸温度140℃(未延伸フィルムのTg+15℃)で固定端一軸延伸して、厚さ42μmの延伸フィルム(位相差フィルム)を得た。得られた位相差フィルムのガラス転移温度(Tg)、Re(446nm)/Re(547nm)、Re(749nm)/Re(547nm)、透明性については表1に記載する。ノルボルネン系重合体(A)−1と重合体(B)−1との平均屈折率差は、4.0×10−3である。
[実施例2]
ノルボルネン系重合体(A)−1と重合体(B)−1を、それぞれ70重量部と30重量部の割合で混合し、ラボプラストミルを用いて溶融混練して、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を220℃でプレス成形して厚さ約130μmの未延伸フィルムを作製した。
次に、作製した未延伸フィルムをストレッチャー延伸機を用いて、延伸倍率1.5倍、延伸温度140℃(未延伸フィルムのTg+14℃)で固定端一軸延伸して、厚さ85μmの延伸フィルム(位相差フィルム)を得た。得られた位相差フィルムのガラス転移温度(Tg)、Re(446nm)/Re(547nm)、Re(749nm)/Re(547nm)、透明性については表1に記載する。
[実施例3]
上記ノルボルネン系重合体(A)−1と重合体(B)−1を、それぞれ60重量部と40重量部の割合で混合し、ラボプラストミルを用いて溶融混練して、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を220℃でプレス成形して厚さ約170μmの未延伸フィルムを作製した。
次に、作製した未延伸フィルムをストレッチャー延伸機を用いて、延伸倍率1.5倍、延伸温度140℃(未延伸フィルムのTg+13℃)で固定端一軸延伸して、厚さ112μmの延伸フィルム(位相差フィルム)を得た。得られた位相差フィルムのガラス転移温度(Tg)、Re(446nm)/Re(547nm)、Re(749nm)/Re(547nm)、透明性については表1に記載する。
[比較例1]
上記ノルボルネン系重合体(A)−1と重合体(B)−2を、それぞれ80重量部と20重量部の割合で混合し、ラボプラストミルを用いて溶融混練して、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を220℃でプレス成形して厚さ約150μmの未延伸フィルムを作製した。ノルボルネン系重合体(A)−1と重合体(B)−2との平均屈折率差は、5.3×10−2である。
次に、作製した未延伸フィルムをストレッチャー延伸機を用いて、延伸倍率1.5倍、延伸温度140℃(未延伸フィルムのTg+14℃)で固定端一軸延伸して、厚さ97μmの延伸フィルム(位相差フィルム)を得た。得られた位相差フィルムのガラス転移温度(Tg)、Re(446nm)/Re(547nm)、Re(749nm)/Re(547nm)、透明性については表1に記載する。
[比較例2]
上記ノルボルネン系重合体(A)−1をラボプラストミルを用いて溶融混練して、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を220℃でプレス成形して厚さ約100μmの未延伸フィルムを作製した。
次に、作製した未延伸フィルムをストレッチャー延伸機を用いて、延伸倍率1.5倍、延伸温度140℃(未延伸フィルムのTg+15℃)で固定端一軸延伸して、厚さ60μmの延伸フィルム(位相差フィルム)を得た。得られた位相差フィルムのガラス転移温度(Tg)、Re(446nm)/Re(547nm)、Re(749nm)/Re(547nm)、透明性については表1に記載する。
[比較例3]
上記ノルボルネン系重合体(A)−2と重合体(B)−1を、それぞれ80重量部と20重量部の割合で混合し、ラボプラストミルを用いて溶融混練して、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を220℃でプレス成形して厚さ約160μmの未延伸フィルムを作製した。ノルボルネン系重合体(A)−2と重合体(B)−1との平均屈折率差は、1.2×10−2である。
次に、作製した未延伸フィルムをストレッチャー延伸機を用いて、延伸倍率1.5倍、延伸温度155℃(未延伸フィルムのTg+14℃)で固定端一軸延伸して、厚さ104μmの延伸フィルム(位相差フィルム)を得た。得られた位相差フィルムのガラス転移温度(Tg)、Re(446nm)/Re(547nm)、Re(749nm)/Re(547nm)、透明性については表1に記載する。
[比較例4]
上記ノルボルネン系重合体(A)−1と重合体(B)1を、それぞれ40重量部と60重量部の割合で混合し、ラボプラストミルを用いて溶融混練して、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を220℃でプレス成形して厚さ約150μmの未延伸フィルムを作製した。
次に、作製した未延伸フィルムをストレッチャー延伸機を用いて、延伸倍率1.5倍、延伸温度150℃(未延伸フィルムのTg+15℃)で固定端一軸延伸して、厚さ98μmの延伸フィルム(位相差フィルム)を得た。得られた位相差フィルムのガラス転移温度(Tg)、Re(446nm)/Re(547nm)、Re(749nm)/Re(547nm)、透明性については表1に記載する。
実施例1乃至3ならびに比較例2で得られた未延伸フィルム、および比較例2と同様の手順により作製した重合体(B)−1の未延伸フィルムの引張貯蔵弾性率(E’)測定結果を図1に示す。
図1より明らかなように、実施例1乃至3の未延伸フィルムの引張貯蔵弾性率(E’)の曲線は、ノルボルネン系重合体(A)−1および重合体(B)−1のガラス転移温度(Tg)において変曲点を有しておらず、ノルボルネン系重合体(A)−1および重合体(B)−1が相溶していることが読み取れる。
実施例及び比較例の位相差フィルムの評価結果を表1に示す。
Figure 2018010176
表1より明らかなように、比較例1および3において、重合体同士の混合により作製した位相差フィルムは白化したため、光学評価をすることができなかった。一方で実施例1乃至3において作製した位相差フィルムは、比較例1および3の位相差フィルムと比較して良好な透明度であったため、光学評価が可能であった。
また実施例1および2の位相差フィルムは、比較例2および4の位相差フィルムと比較して、より面内位相差Reの波長依存性の低い、平坦な波長分散特性を示すフィルムであり、実施例3の位相差フィルムはフィルムを透過する光が短波長になるほど位相差が小さくなる逆波長分散特性を示すフィルムであった。
上記結果から、正の固有複屈折を有し、構造単位としてノルボルネン系単量体単位を有するノルボルネン系重合体(A)と、負の固有複屈折を有し、構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とする重合体(B)を含み、
前記ノルボルネン系重合体(A)の全構成単位に占める前記ノルボルネン系単量体単位の割合が、65重量%以上であり、
前記ノルボルネン系重合体(A)と前記重合体(B)との混合比が、ノルボルネン系重合体(A):重合体(B)=90乃至50重量部:10乃至50重量部であり、測定波長446nm、547nmおよび749nmで測定した面内位相差Re(446nm)、Re(547nm)およびRe(749nm)が式(1)および式(2)を満たす位相差フィルムであれば、可視光の波長領域内で平坦な波長分散性、または逆波長分散性を有し、透明性に優れることが分かった。
本発明の位相差フィルムは、可視光の波長領域内で平坦な波長分散性、または逆波長分散性を有し、透明性に優れ、高温環境下においても変質しにくい位相差フィルムであり、よって表示装置等の位相差フィルムとして好適に用いることができる。
また、本発明の位相差フィルムは、溶媒キャスト法といった溶媒を使用する製法でなく、溶融押出法により成形できるため、乾燥設備などの大規模な製造設備を必要とせず、低コストで製造することができる。
実施例で得られた未延伸フィルムおよび各種重合体の未延伸フィルムの引張貯蔵弾性率(E’)と温度との関係を示す図である。

Claims (4)

  1. 正の固有複屈折を有し、構造単位としてノルボルネン系単量体単位を有するノルボルネン系重合体(A)と、負の固有複屈折を有し、構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とする重合体(B)を含み、
    前記ノルボルネン系重合体(A)の全構成単位に占める前記ノルボルネン系単量体単位の割合が、65重量%以上であり、
    前記ノルボルネン系重合体(A)と前記重合体(B)との混合比が、ノルボルネン系重合体(A):重合体(B)=90乃至50重量部:10乃至50重量部であり、
    測定波長446nm、547nmおよび749nmで測定した面内位相差Re(446nm)、Re(547nm)およびRe(749nm)が以下の式(1)および式(2)を満たすことを特徴とする位相差フィルム。
    0.950<Re(446nm)/Re(547nm)<1.000 (1)
    0.980<Re(749nm)/Re(547nm)<1.030 (2)
  2. 前記重合体(B)が、N−置換マレイミド単位を有することを特徴とする請求項1に記載の位相差フィルム。
  3. 前記ノルボルネン系重合体(A)と前記重合体(B)の平均屈折率の差が5.0×10−3以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の位相差フィルム。
  4. 正の固有複屈折を有し、構造単位としてノルボルネン系単量体単位を有するノルボルネン系重合体(A)と、負の固有複屈折を有し、構造単位として(メタ)アクリル酸エステル単位を主成分とする重合体(B)を含み、
    前記ノルボルネン系重合体(A)と前記重合体(B)を、ノルボルネン系重合体(A):重合体(B)=90乃至50重量部:10乃至50重量部の割合で混合し溶融押出成形して、未延伸フィルムを形成する工程と、
    前記未延伸フィルムを延伸する工程を含み、
    前記ノルボルネン系重合体(A)の全構成単位に占める前記ノルボルネン系単量体単位の割合が、65重量%以上であることを特徴とする位相差フィルムの製造方法。
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